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一攫千金のからくり屋敷

#サムライエンパイア

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「よろしくお願いしまーす」
 ある晴れた日のことだった。愛くるしい顔立ちの少女が往来でビラを配っている。その声は明るく愛想がいいので、通行人は一人また一人と足を止め、差し出されたビラを受け取っていた。
「なになに……『からくり屋敷に挑戦』?」
 通行人の男は受け取ったビラに目を走らせると、訝しげな顔で少女に訊ねる。
「嬢ちゃん、これ挑戦するのに幾ら掛かるんだ?」
「タダですよー」
 当然だと言わんばかりの笑顔で少女が答えた。
「タダ? 誰でもやれんのか? 俺は銭なんざ持ってねえぜ?」
「もっちろーん!」
 少女は自慢げに胸を張る。
「当からくり屋敷は誰でもうぇるかむ! 老いも若きも男も女も、お金はもちろん家柄や身分だって関係なし!」
「それで、その……ここなんだけどよ」
 男は手にしたビラの一点を指して言葉を続ける。
「この『見事からくり屋敷を完走した人には金十両』っていうのは本当か?」
「ええ、もちろん」
「なら『その中でも一位の方には金百両を贈呈します』ってのも……」
「本当だよ!」
 少女はにっこりと微笑む。だが、すぐにその表情を曇らせた。
「あ、でも……」
「でも、なんだ?」
「これはねぇ、招待券を持っている人しか挑戦できないんだ。逆にそれがないと、どれだけお金持ちでも身分のお高い方でも駄目なの」
「じゃあ俺にも招待券をくれよ」
「私にも一枚ちょうだい!」
「ワシにもおくれ」
 ビラを手にした人々が殺到する中で、少女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんね、もう残ってないんだ。そこの人たちに配った分で全部なの」
 そういって少女が指し示した辺りには、ちらほらと招待券を手にした者たちの姿があった。皆の視線が集中し、彼らは気圧されたように後ずさる。
「おい、それちょっと見せてくれ」
「これは俺のだ、あっち行けよ」
「ねぇ、私に譲って! お願い!」
「どうせあんたじゃ無理だろう。俺が代わりにやってやるから」
「ふざけんじゃねぇ! 他の奴に言えよ」
「一両出すから、な? こっちに寄越せ」
「やったなてめえ! この野郎!」
 相談や交渉が罵倒に変わり、とうとう喧嘩へと発展していく。少女はそれを小馬鹿にした様子で眺めていた。
「……こんなのに引っ掛かるんだ。単純だなぁ」
 そう呟いた少女は乱闘騒ぎの中を器用にすり抜け、鼻歌交じりで立ち去っていく。


「このビラを配ってた子がさ、どうもオブリビオンらしいんだよね」
 上崎・真鶴は眉間にしわを寄せながら、集まった猟兵たちに説明を続ける。
「ただしその招待券を何枚か適当に配って、すぐにどっか行っちゃったみたいだから今は追っても無駄だよ。皆には先に招待券の奪い合いをどうにかしてほしい」
 賞金付きからくり屋敷への招待券。これを奪い合っているのは老若男女様々で、欲しがっている理由もまた様々だ。生活が苦しい、賞金で買いたい物がある、借金を返す為、単に娯楽に飢えている、券を配っていた美少女にまた会いたい等々。
「喧嘩してる人たちを大人しくさせる手段も、彼らから招待券を手に入れる方法も好きにやっていいよ。ただし、余計な騒ぎや面倒を起こさない範囲内でね」
 招待券を賭けた腕相撲勝負を申し込む、周囲にバレないようちょろまかす、この話自体が怪しいことを訴えて譲ってもらうなど、やり方は幾らでもある。自分が得意な方法、得意な相手を探してやってみるといいかもしれない。
「まあね、実際招待券なんか無くってもからくり屋敷には行けるだろうけどさ。確実にオブリビオンを倒すために、最後の最後までは話に乗ってるフリをしてほしいわけ」
 たとえばからくり屋敷を破壊する、招待券を持たずに無理矢理入るなどの行動を取った場合、オブリビオンは異常を察知して逃走してしまう可能性があると真鶴は言う。からくり屋敷に挑戦し、それをクリアして主催者に接触するという段階を踏む必要があるのだ。
「だから招待券は必須。んで、皆にはその争奪戦に参加しつつ喧嘩騒ぎを収拾してほしいの。よろしくね」
 そう言って説明を締め括ると、真鶴は笑顔で猟兵たちを送り出した。


若林貴生
 こんにちは。若林貴生です。

 ほとんどの一般人は天下自在符を見せれば平伏してくれますが、今回喧嘩している人たちはそれぞれ理由があって争っているので、徳川の威光のみでは簡単に言うことを聞いてくれません。
 様々な人が喧嘩しているので『こういう人を探して、こんな風に説得する』といったようなプレイングでOKです。その人がちゃんと招待券を持っています。
 また、OPで招待券を持っていないとからくり屋敷に挑戦出来ないとありますが、これは第1章に参加して招待券を入手しないと第2章以降に参加出来ないという意味ではありません。第2章からでも問題無く参加出来ます。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『火事と喧嘩は江戸の華』

POW   :    喧嘩と言えば両成敗。とりあえず全員叩きのめす。

SPD   :    力尽くは粋じゃない。口から出まかせ嘘八百で気勢を殺ぐ。

WIZ   :    筋道を立てて説得するしかない。誠心誠意尽してみよう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カイム・クローバー
愛くるしい顔立ちの少女…金百両…愛くるしい顔立ちの少女…金百両…。
黄金小判がザックザクは確かに魅力的な話だぜ?けど、愛くるしい少女ってのも捨てがたい!オブリビオンだって話は聞いてるし、未来予知を疑っちゃいねぇが、少女を実はオブリビオンが乗っ取ったとか、実はそーいう理由があるかもしれねぇよな!よーし、待ってろ少女と金百両!!俺が直ぐに助け出してやるぜ!!
何はともあれ招待券を手に入れねぇと。SPDで【聞き耳】使って喧嘩してる集団に近づいて【盗む】。対象は喧嘩で集団になってる所が狙い目だな。目立ちにくいだろ。万一の場合はコードと【逃げ足】発動で全力逃走。二手に分かれるぜ。あばよ!とっつぁん~ってな!




 カイム・クローバーは悩んでいた。
(「愛くるしい顔立ちの少女に金百両か……」)
 オブリビオンだという話だが、美少女と言われたら気にはなる。何か深い事情があるのかもしれないし、オブリビオンに乗っ取られているとか、利用されているといった可能性も無くは無い。
「よーし、待ってろ少女と金百両!! 俺が直ぐに助け出してやるぜ!!」
 カイムは両の掌をこすり合わせながら、そんな甘い未来予想図を描く。
「さーて、と」
 気持ちを切り替えてカイムは獲物を物色し始めた。目立たず仕事を済ませるには、それなりの人数で喧嘩になっているところが狙い目だ。
(「お、あれなんか良さげだな」)
 カイムが目を付けたのは、数人の若い男が盛んに議論している姿だった。彼らと目線を合わせないようにしながら、そっと近付いて聞き耳を立てる。
「お梅ちゃんには悪いがよ、さっきの子はすげえ別嬪だったぜ」
「てめえ、昨日までお梅ちゃんお梅ちゃんて、そればっかりだったくせに」
「お前はさっきの子を見てねえから、そんなことが言えるんだよ」
「見比べられねぇんじゃ決めようがねえだろう」
 どうやら彼らは招待券を配っていた少女と、彼らが贔屓にしている水茶屋の看板娘と、どちらが可愛いのかで言い争っているらしい。今はまだ議論と呼べなくもないが、殴り合いに発展するのは時間の問題だろう。
「だからよ、こいつがあればもう一回会えるんだって」
 そう言いながら輪の中にいた男の一人が、ぽんぽんと懐を叩く。
(「なるほど、あいつか」)
 カイムは招待券の持ち主を確認すると、すっと近寄ってさり気なく彼にぶつかった。
「おっと、ごめんよ」
 そしてぶつかった瞬間、彼の懐から一枚の紙を探り出す。
「おい、何だてめえ! いてえじゃねぇか」
「悪い悪い、大事な話の途中だったんだろ? 続けてくれよ」
 男は一瞬むっとしたが『大事な話』という言葉に反応し、仲間たちに向き直ると再び議論を白熱させていった。カイムは誰にも気付かれなかったことを確認し、その場を後にする。
「ちょいと簡単過ぎたかな」
 あまりに上手くことが運んだおかげで、まだまだ時間に余裕がある。酒場にでも寄って行こうかと考えた時、先程の男たちが話していたことを思い出した。
(「そういや水茶屋の子が可愛いんだったな。……顔くらい見ていくか」)
 ついでに団子も食べて行こうか。評判の店ならば花も団子もイケるに違いない。そう思いながらカイムは鼻歌交じりで水茶屋のある通りへと足を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神々廻・朏
さてと、頭に血が上った人を静めるのはどうしたもんか…
と、思いつつとりあせず暴れてる人のとこへ向かう
あっぶな!当たったら怪我しちゃうよ?
と、言いつつ自分が攻撃される対象になったら絶望の福音で回避しつつ
こちらからは攻撃せず相手が疲れて動けなくなるのを待つ
動けなくなったところで
よく考えてごらんよ。タダより高いものは無いっていうじゃない?
さっきの子の言葉、本当に信じて大丈夫?
と疑心暗鬼にさせようと揺さぶりかけ
揺らいでたら、行くの不安だったら僕が試しに行ってきてあげる
何かあったら全部君にあげるよ、と甘い言葉も
そこでも頑なに信じてるなら、これ以上口で言ってもダメだね?大怪我させない程度で拳と拳で語り合うか




 往来は人で溢れていた。まるで祭りのような人混みだが、実際に行われているのは喧嘩騒ぎだ。その証拠にあちこちから悲鳴と怒声が聞こえて来る。
(「あの人でいいかな」)
 視線の先で如何にも力自慢といった男が暴れていた。男の手に件の招待券があるのを確認すると、神々廻・朏は彼に近付いていく。
「あっぶな! 当たったら怪我しちゃうよ?」
 すぐ近くまで寄った朏がわざとらしく声に出すと、その男はぎょろりとこちらを睨み付けてきた。 
「なんだ、てめえ」
「危ないって言ったんだけど。聞こえなかった?」
「ああ? てめえもこれを狙ってんのか?」
 頭に血が上っているのだろう。男は招待券をひらひらと見せびらかしながら声を荒げる。
「欲しけりゃ取ってみろよ。けどな、言っとくが俺ぁ女相手だって容赦しねえぞッ!」
 そう怒鳴りながら男は朏に殴り掛かった。しかし朏はあっさりとそれをかわす。
「なに!?」
 一発で終わらせるつもりだったのか、男は勢い余ってたたらを踏んだ。
「てめえ……」
 男は朏を睨み付けると再び殴り掛かったが、その拳はまたもや空を切る。それが二度三度と続くと、男の顔が怒りと屈辱で真っ赤になった。
「くそっ、当たらねえぞ! 畜生!」
 男は額に汗を浮かべながら必死で何度も拳を振るうが、当たるどころか掠りもしない。
(「頃合いだね」)
 男は完全に息が上がっているし、動きも随分と鈍くなっていた。周りの人たちも喧嘩を止めてこちらに注目している。朏は疲れて大振りになった男のパンチをかわすと彼の足を軽く払った。
「うおっ!」
 体勢を崩した男がよろめき、そのまま地面に転がる。男はすぐさま立ち上がろうとしたものの、疲れ切っているらしくそのままへたり込んだ。
「はぁ……はぁ……てめえ……」
 朏は荒い息を吐く男の前に屈み込むと、彼の顔を覗き込むようにして言った。
「よく考えてごらんよ。タダより高いものは無いっていうじゃない?」
「……招待券の……ことか?」
「うん。それを配っていた子の言葉、本当に信じて大丈夫?」
 疲れているせいか、男は黙ったまま聞いている。もう一押しだ、と朏は思った。
「もし不安に思う気持ちが少しでもあるなら、僕が試しに行ってきてあげる。もちろん何かあったら全部君にあげるよ」
 それでも男は無言のままだ。しかしその目は打算と損得に揺れ動き、最初のような鋭い光は消えていた。
「それとも拳と拳で語り合う?」
 それが駄目押しの一言だった。
「……分かった、持ってけよ」
 賞金をそっくり譲るという言葉を信じたのか、それとも群衆の前で殴り倒されることを恐れたのか。男は諦めたように大きく息を吐き、朏に招待券を差し出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイツ・ディン
【POW】
「さて、どうしたものか。混乱の中スリとることも出来なくはなさそうだが……」『面倒な、力で制圧すればよかろう!』
POW思考の竜槍『ディロ』の言葉に思いついて勝負事を思いつく。
(なおディロはペットのトカゲということにする。本竜はプライド高いし怒りそうだが。)

からくり屋敷といえば反射神経、それと足腰の強さ。すなわち速さが一番大事だろ。ということで町中で競走(屋根の上とかそういう不安定足場)で勝負させてもらおうか。

「まさか、俺みたいなちっこい奴相手に怖気づいたわけないよな?」と挑発してみる。」
足の速さは《逃げ足2》、不安定足場は《ジャンプ3》《第六感4》、一般人に負ける要素は無いな?




「さて、どうしたものか。混乱の中スリとることも出来なくはなさそうだが……」
 からくり屋敷の招待券。これをどうやって手に入れるべきか、ナイツ・ディンは思案中だった。その傍らには竜槍のディロが佇んでいる。
『面倒な、力で制圧すればよかろう!』
「ああ、そう言うと思った。相変わらずだな、ディロは……」
 ナイツは呆れたように言葉を返したが、ふと真顔になって考え込む。そして何かを思いついたように、にやりと笑った。
「よし、それで行くか」

「なあ、そこのあんた。からくり屋敷に挑戦するつもりなのか?」
 招待券を手にした若い男を見付け、ナイツはそう声を掛けた。
「……それがどうした」
 男の様子を見る限りでは、かなりこちらを警戒しているようだ。恐らくナイツが来る前にも招待券の取り合いがあったのだろう。
「その招待券を賭けて俺と勝負しないか?」
「勝負だと?」
 ナイツの申し出に、男は眉をひそめた。
「からくり屋敷といえば反射神経だよな? それと足腰の強さ。すなわち速さが一番大事だろ」
「何が言いたい」
 男は苛立ったように話の先を促す。
「競争で勝負と行かないか? ……そうだな、屋根の上を走るっていうのはどうだ?」
「屋根?」
「足場の不安定なところでやった方が互いの実力をきっちり測れる。違うか?」
 自信満々なナイツを見て、それまで不機嫌そうにしていた男の表情が緩んだ。
「おうおう、いいのかよ。俺の一歩はお前にとっちゃ十歩はあるぜ?」
「そんなにないさ、せいぜい五歩だろ」
 男の煽りを軽くいなすと、ナイツは逆に男を挑発する。
「まさか、俺みたいなちっこい奴相手に怖気づいたわけないよな?」
「いいだろう、やってやるよ」
 負けるわけがないと思ったか、男はあっさりと承諾した。そして梯子を用意すると、ナイツと二人で通りに面した町屋の屋根に上がる。普段ならば誰かが止めるのだろうが、今は皆が喧嘩騒ぎに興じているせいか注意をする者はいなかった。
「あの角までで勝負だ。それでいいな?」
「ああ」 
 そうして二人は同時に走り出した。最初こそ男の方が先に進んでいたものの、瓦葺の屋根はナイツの言う通り不安定だ。男が足元に気を付けながら走るのに比べ、ナイツの足は軽やかに飛ぶように速くなっていく。追い抜かれそうになった男は焦って速度を上げようとしたが、その途端に足を滑らせた。
「おい、大丈夫か?」
 ナイツが後ろを振り返ると、男はどうにか屋根の上で踏み止まっていた。勝負を諦めたのか、男はそのまま動かない。
「どうした、怪我でもしたのか?」
「いや……」
 心配するナイツに、男は首を横に振って答えた。そして力なく笑うと、からくり屋敷の招待券をナイツに差し出す。
「確かに……どうやら俺にからくり屋敷は無理そうだ。あんたにやるよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

日和見・カナタ
お宝の噂を聞きつけてやってきました!
ひゃくりょー…はちょっと分かりませんが、きっと凄い大金なんですよね?
もちろん嘘の可能性はありますけど、行ってみる価値はありますよー!

私は【SPD】を活かして招待券を手に入れます!
まずは喧嘩してる人たちを一旦落ち着かせる──体で、【盗み攻撃】で招待券を奪っちゃいましょう!
彼らが落ち着いた後は【優しさ】を使って、これ以上喧嘩を続ければお縄になって本末転倒になってしまうことと、オブリビオンが暗躍している可能性があることを伝えて喧嘩を止めてもらいます!

その後は招待券が無くなってることに気が付かないうちにその場を去ります!
やっぱり善いことをすると良い気分になりますね!




(「ひゃくりょー……って、どれくらいの金額なんでしょう」)
 それが日和見・カナタには、いまいち分からなかった。しかし大勢の人がここまで躍起になっていることを考えれば相当な大金に違いない。まだ見ぬお宝を求め、カナタは心の中でグッと拳を握り込む。そんなカナタが見付けたのは、今まさに取っ組み合い中の女性三人組だった。お互いに髪や着物を引っ張り合ったのだろうか、三人とも髪や着衣が乱れ、一人は腕に引っ掻き傷まで作っている。その怪我をした女性が例の招待券をぎゅっと握り締めていた。
(「一旦落ち着かせないと駄目ですね」)
 そう思ったカナタが声を掛けようと近付くと、三人が一斉にキッと睨み付けてきた。
「何よ、あんた」
「関係ない奴は引っ込んでなさいよ」
「横から口を出さないでくれる?」
 相当殺気立っているのか、三人が三人ともカナタに敵意を向けて来る。このままでは埒が明かない。仕方なくカナタは天下自在符を取り出して彼女たちに差し出した。
「別に怪しい者じゃないです。ただ、ちょっと話を聞いてほしくて」
 そう言うと彼女たちは気勢を殺がれたのか黙り込んでしまった。しかし目には警戒の色が残っている。招待券を握り締めていた女性は、そそくさとそれを仕舞い込んだ。
「とにかく、これ以上はもうやめた方がいいと思うんですよ」
 あくまで善意の助言といった体でカナタは言った。
「ほら、見て下さい」
 カナタは周囲の様子を指し示しながら言葉を続ける。
「こんなに騒いでいたら御役人も来るに違いないですし、そうなれば本末転倒でしょう?」
 もっともな話だと思ったのか、三人は困惑した様子で顔を見合わせる。
「あと、これはここだけの話ですけど……」
 そう言ってカナタが声を潜めると、興味を引かれたのか三人はカナタの傍に寄って来た。彼女らの意識が逸れたその瞬間、カナタは素早く招待券を盗み取る。そして何食わぬ顔で話を続けた。
「この一件、実は結構危ない話かもしれないんです。念のために早く逃げた方がいいですよ」
「本当かい?」
 女の一人が疑わしそうに眉根を寄せたが、少なくとも落ち着きは取り戻しているようだ。
「まあ……まるっきりの嘘ってわけじゃないんだろうねぇ」
「そういうことなら仕方がないね」
「新しい簪が欲しかったんだけど、お縄になるかもっていうんじゃねぇ……」
 一切の敵意を見せなかったカナタの態度はもちろん、天下自在符の効果もあったのだろう。完全に納得したわけではないようだが、三人は手早く身繕いをすると逃げるように去って行った。その背中を見送ったカナタは彼女たちと逆方向に歩き出す。一先ず喧嘩は収まったものの、招待券が消えたことに気付けばまた三人集まって喧嘩を始めるかもしれない。万が一その場に居合わせてしまったら、間違いなくこちらが疑われて面倒なことになる。
「やっぱり善いことをすると良い気分になりますね!」
 招待券を盗んだのは確かだが、後々のことを思えばこれが彼女たちの為でもあるはずだ。そう思いながらカナタは清々しい気分で青い空を見上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

羽重・やち
【SPD】
力尽く、で、奪い去るも、手っ取り早いで、ありんすが。
波風立てるも、如何なものか。

【聞き耳】、立てて、適当に、女好きそな、男【誘惑】。

からくり屋敷、ずっと行ってみとう、ござんした。
賤に、譲って、くんなまし?
賤、は、金は必要、ありんせん。ので、
もし、手に入ったら、それ持って、また、先生のところに…。

会いに行きたい、とか、そんな感じ、で、見つめておく。
まあ、そんなつもりは、ありんせんが。




 からくり屋敷の招待券を取り合う喧嘩騒ぎはまだ続いていた。通りのあちこちで激しい言い争いが起こり、掴み合いや殴り合いになっている者たちも少なくない。その流れに巻き込まれないよう注意して、羽重・やちは目当ての人物を探し続けていた。その結果見付けたのが、招待券を持った遊び人らしき若い男だ。やちは彼に流し目を送り微笑んでみせると、騒がしい通りから逃げるように裏路地へ入って行く。当然、相手からすれば誘っているように見えるだろう。男は好色そうな笑みを浮かべ、いそいそとこちらにやって来た。
「俺に用かい?」
 男は楽しげな顔で、やちの隣に立つ。
「それを、賤に、くんなまし」
「ん? ああ……なんだ、これが欲しいのか」
 やちが招待券を指すと、物目当てと知って男は少しがっかりしたようだった。
「からくり屋敷、ずっと行ってみとう、ござんした」
 そう言ってやちは男にしなだれかかる。男の心を迷わせ蕩かすような声だった。彼はごくりと生唾を飲み込むと、おっかなびっくりといった様子でやちの肩を抱く。
「そ、そうかい」
「賤に、譲って、くんなまし?」
 白く陶器のように滑らかな肌。ぬばたまの如き漆黒の髪。そして紅玉のように赤く濡れた瞳が男の心をしっかりと捉えていく。
「うん、そうか……俺も譲ってやりてぇとは思っちゃいるんだがな……」
 迷っているような態度を取ってはいるが、男の気持ちは既に大きく傾いていた。
「先生」
 やちは上目遣いで男の顔を覗き込む。
「賤、は、金は必要、ありんせん。ので……」
 やちは男の袖を優しく引っ張りながら、男に顔を近付けていく。
「お、おう」
 どぎまぎしている男の耳元に口を寄せ、やちはそっと囁いた。
「もし、手に入ったら、それ持って、また、先生のところに……」
「また会えるかい?」
 やちは男の顔をじっと見詰め、こくりと頷く。
「じゃあ、あんたにやるよ。気を付けてな」
 そう言って男は招待券をやちに渡しながら手を握ってくる。やちもその手をそっと握り返した。
「ありがとうござりんした」
「へへ、いいってことよ」
 男は夢心地でこちらに笑顔を向けている。だが、恐らく彼と再び会うことは無いだろう。それを一切表には出さぬまま、やちも男に微笑んでみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ビードット・ワイワイ
金を求めて暴れし者よここは一つ我の言葉を聞いてみぬか?

【存在感】と【恐怖を与える】を併用しまずは民の目を我に集中させよう。

そも金を得るには対価が必要となりしは分かりけり?対価、汝らの体だとは考えず?到達したのち金を得る、その保証はどこにあり?戻らなぬこと、それ即ち金得たためと思わぬか?

見たり見たり見たり、汝らの破滅を見たり。欲にて曇りし思考にままで穴があろうと進みけり。終着点こそ穴とは知らず。我は幕府より勅命を受けし勅使なり。此度は人拐いの兆しありと聞きてここに来たり。それなるは手がかりなり。渡してはくれぬか?

口と雰囲気と符にて【言いくるめ】よう。くれぐれも他言せぬように。


ヘスティア・イクテュス
お宝!?ええっと十両で今の価値で換算すると………
目指せ完走!んん…えぇ招待券の奪い合いをどうにかするのよね?わかってるわ…

わたしは口でなんとかしようかしら【コミュ力】
狙うはお金に困ってなさそうな人達
そういう人はリスクがあるなら手放す可能性が高いしね

ビラを持っておかしくないかしら?と一言

からくり屋敷側に得がないこと
もし酔狂な人がやろうとしてても、そんな人なら少しは名が知れ渡ってること
最後にもしかしたら釣られた人を捕まえて売ったり他ひどい目に合わされるんじゃないかと不安を煽る

の3つの論法よ

後は奉行所で調べてもらうという体で招待券を受け取って去るわ
多めに貰えたら他の入手出来なかった猟兵用にね?




 ヘスティア・イクテュスが説得する相手として考えていたのは裕福な人間だった。そういった人間ならば多少の金銭に惑わされることもない。話の怪しさを説けば高い確率で招待券を手放すだろうと踏んだからだ。
(「なかなか見当たらないわね」)
 ヘスティアが思うような人物であれば喧嘩に参加しているとは思えない。喧嘩を避けて通りの端に寄っている人から、条件に合う者を探して着物の仕立てや履物をチェックしていく。そうやって身なりが良く招待券を持った人間がいないか見ていると、一際大きな人影が近付いて来ることに気付いた。その身長は周囲の人々よりもかなり高く、遠目からでもすぐ分かる。しかもただ歩くだけで人波が左右に割れていくその様子は否応なく目立っていた。そしてその人物──ビードット・ワイワイは周囲の注目を浴びる中、重々しく口を開く。
「金を求めて暴れし者よ。ここは一つ我の言葉を聞いてみぬか?」
 朗々と響く声が群衆の心を捉える。それだけの存在感が彼にはあった。恐怖にも似た謎の威圧感によって皆がしんと静まり返った時、これを機と見たヘスティアが声を上げた。
「おかしくないかしら?」
 静寂の中でヘスティアの凛とした声がよく通る。周囲の視線がヘスティアと彼女が手にしたビラに集まった。
「これは一見すごく美味しい話よ。けれどおかしい点が一つ……いえ、幾つもあるわ」
「そりゃ何だい?」
 町人の一人がヘスティアに質問する。話を聞く姿勢に入った町人が何人かいることに満足しながらヘスティアは言葉を続けた。
「まず、からくり屋敷の側に得が無いことね」
「どうして分かる」
 そう訊ねた男の前にビードットが立つ。
「そも金を得るには対価が必要となりしは分かりけり?」
「そ、そりゃまあ普通はそうだがよ……」
 男はビードットの迫力に気圧されて、やや怯えたような声を出した。
「対価、汝らの体だとは考えず?」
「ん? そりゃつまり、からくり屋敷を完走することが対価ってこと……だよな?」
 男は答えを求めるようにビードットとヘスティアの顔を交互に見やる。
「本当にそう思う?」
 逆にヘスティアが訊き返すと、男は困ったように頭を掻いた。
「まあ確かに話が美味すぎるとは思うが……」
「本当に美味しい話というのは表に出て来ないものよ」
 そう言ってヘスティアはくすりと笑う。
「大体、賞金はもちろん屋敷の普請にも相当な元手が掛かるはずなのに誰がこんな事をするの? どこの大名か豪商か知らないけれど、酔狂にも程があると思わない?」
 ヘスティアは集まっている人たちを見回した。
「これまでそんな噂を聞いたり実際にそんな仕事を請け負ったりした人っているかしら」
「いや……聞いたことねえな」
「そういやこの券を配ってた娘も初めて見る顔だったな」
「確かによく考えてみりゃ怪しいことだらけだ」
 からくり屋敷を建てたのは誰なのか。誰が金を払ってくれるのか。何の為にこんなことをするのか。それは配られていたビラにも招待券にも書かれていない。少なくともこの場には噂話ですら知っている者はいなかった。
「見たり見たり見たり、汝らの破滅を見たり」
 ビードットは町人たちの目を見据えながら言う。
「欲にて曇りし思考のままで穴があろうと進みけり。終着点こそ穴とは知らず」
「俺たちが罠に嵌められるってぇのか?」
「然り」
 男の問いにビードットが頷く。
「到達したのち金を得る、その保証はどこにあり?」
 ビードットのもっともな問い掛けに町人たちは黙り込んだ。
「多分、最初から払うつもりが無いんだと思うの」
 真剣な顔でヘスティアが言う。
「でもここまでする以上、遊びでもない。儲け話に釣られて屋敷に行けば盗賊や人買いの類が待ち受けている、なんて可能性も考えられるわ」
 ヘスティアが不安を煽ると、周囲の人々がざわめいた。そこに再びビードットが進み出る。
「我らは幕府より勅命を受けし勅使なり。此度は人拐いの兆しありと聞きてここに来たり」
 天下自在符を取り出して声を張るビードットに町人たちは次々と平伏した。
「それなるは手がかりなり。渡してはくれぬか?」
 そう言いながらビードットが手を伸ばすと、町人の一人が恐る恐る招待券を差し出した。他の持ち主も一人また一人と姿を見せ、ビードットに招待券を渡していく。
「ご苦労様。後は奉行所で調べてもらうわ」
 ヘスティアがそう言い放つと人々は再び平伏した。最早喧嘩を続けている者は一人もおらず、往来は日常を取り戻しつつある。畏怖の対象となったビードットと理屈で押していくヘスティア。二人の説得が功を奏し、この場の喧嘩騒ぎは見事に収まったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『からくり屋敷への誘い』

POW   :    仕掛けや罠を物理的に打ち破る

SPD   :    忍者のように華麗に移動

WIZ   :    建物の構造から罠や隠し扉を看破

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

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 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 そのからくり屋敷は町から三里ほど離れた山中にひっそりと佇んでいた。三階建ての大きな屋敷だが、全体に妖しい気配が漂っている。恐らく何らかの呪術や法力が備わっているのだろう。入口は正面に大きな門が一つだけ。猟兵たちは周囲をぐるりと回ってみたが、他に入れそうな場所は存在しなかった。唯一の入り口である正門の前には高札が立てられ、そこにはこう書いてある。

 からくり屋敷『沼』にようこそ。
 壁、床、天井など至る所に様々なからくりが御座います。
 回廊は少々複雑になっております。迷わぬようお気を付け下さい。
 また当方自慢のからくり人形もどうぞご覧下さいますよう。
 賞金は最上階の奥座敷に到達した方にのみお支払い致します。
 それでは、ご堪能下さいませ。
ナイツ・ディン
【SPD】
「沼か。まあ俺は飛べるし足を取られることはあんまないけど。どんな罠があるやら。」『全て潰せばよかろう!』
相変わらずのPOW思考の竜槍『ディロ』は放っておいて、罠が無いか調べていく。ディロは武器状態で。竜槍は長物(1フィート)、壁をつついて罠を作動させたり、登るときに道具として使えるだろう。
旅人(=シーフ)らしく、目立たない、第六感、鍵開け、クライミング、ジャンプ、封印を解く、視力、暗視、逃げ足、忍び足、ダッシュとやれることに関しては多いぞ。ショートカットやら天井裏やら壁抜けやら、関係者以外立ち入り禁止な扉とかこじ開けたりな。
『我を道具として使うな!』「いやお前武器だろう、一応。」




「沼か」
 門前に立てられた高札を横目に、ナイツ・ディンは正門を潜った。そしてそのまま特に何もなく屋敷に足を踏み入れる。
「まあ俺は飛べるし足を取られることはあんまないけど。どんな罠があるやら」
 そう言いながらナイツは辺りを見回した。造りの見た目だけなら普通の屋敷と言っていいだろう。だが回廊はあちこちに伸びて無駄に折れ曲がり、細かく入り組んでいるようだ。
『全て潰せばよかろう!』
「お前もたまには力押し以外の手段を考えたらどうだ?」
 ドラゴンランスのディロと他愛もない会話をしつつ廊下を進んでいく。
『それは性に合わん』
「知ってるさ。言ってみただけだ」
 一応辺りを見回しながら進んでいるのだが、見るだけではよく分からない。ナイツは既にランス状態の相棒を使い、床や壁をコンコンと叩きながら進むことにした。
「おっと」
 ランスの先端で叩いた途端、床に落とし穴が開く。だが飛んでいるナイツにとっては無意味だった。中を覗き込むと穴の底には無数の竹槍が突き立っている。
「古典的だな」
 落とし穴を飛んで避け、今度は壁を叩きながら進む。すると一ヶ所だけ音の違う部分が見付かった。
「当たりか?」
 調べてみると壁板が外れ、新たな通路がぽっかりと口を開けた。だが通路というのはあくまでナイツの体格から見ての話だ。
「通風孔……なわけはないか」
 もしこれが通風孔なら隠されているのは不自然極まりない。
「行ってみるか」
 普通の人間なら這って進むような狭い場所だが、ナイツにとっては普通の道も同然だ。念のため、ここでもディロを使って四方を叩き確認しながら前進する。
『我を道具として使うな!』
 ディロが不満そうに声を荒げた。どうやら罠探しの棒代わりに使われたのが気に入らないようだ。
「いやお前武器だろう、一応」
『ならばせめて武器として我を振るえ!』
「戦うような相手がいればな」
 そうこうするうちに狭い通路は終わりを告げ、二人は再び広い場所に出る。すると、それを待ち構えていたかのように一体のからくり人形が飛び掛かってきた。
「敵か!」
 短刀を手に突っ込んできた人形を、ナイツは槍で一突きにした。串刺しにされた人形は、あっさりと動きを止める。
「どうする、次は天井裏にでも行くか?」
『敵を避ける必要などない。たた真っ直ぐに進めばよい!』
 ディロがそう言った途端、今度はどこからか女性らしき声が響いてきた。
『残念、普通の人ならあれで終わるんだけどな』
 それだけ言うと声はぷつりと途切れた。しばらく待ってみたが、それ以上は何も聞こえてこない。
「今のは何だ?」
『分からん。だが注意しろ!』
「お前の口から『注意しろ』なんて言葉が出てくるとはな」
 どこかに伝声管でも通っているのか、それとも何らかの呪術によるものか。どうやら自分たちは見張られているらしい。ナイツは油断なく周囲の気配を探り、どちらに進むべきかを考え始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

羽重・やち
【SPD】
随分と、人目につかない、場所、にありんすな。

沼、という名、も、気になるところ、で、ありんすが。
…からくり“人形”か。
周囲の仕掛け、には、【三姫】に探らせつつ、【見切り】に気を配る、として。
【聞き耳】と【忍び足】、で、人形に気を付け、つつ、最上階、目指す。




 羽重・やちは耳を澄ませ、出来る限り足音を消しながら、板張りの廊下を進んでいく。右に左にと折れ曲がり、時には引き返しながら進んでいくと、8畳ほどの小さな座敷に辿り着いた。やちは慎重に足を踏み入れ、ぐるりと視線を巡らせる。
(「何も、ない、か」)
 少なくとも入っただけでは何も起こらないようだ。座敷を抜けた奥には上に続く階段が見える。そのまま通り過ぎて奥に向かってもいいのだが、念のため三姫に室内を探らせると掛け軸の裏、壁面の一部に不自然な凹みが見付かった。どうやら何かのスイッチらしい。罠か、それとも隠し通路の類か。警戒しつつ三姫にスイッチを押させてみたが、特に何も起こらない。だがその時、集中していたやちの耳にカタカタという音が聞こえ始めた。
(「あれは、なんで、ありんしょう」)
 何かのからくりだろうか。複数の何かがカタカタと音を立てながら少しずつ近付いている。
(「外?」)
 そう思ったやちが廊下に出てみると、そこには十数体もの茶運び人形がこちらに向かってくるところだった。見た目だけなら愛らしいと表現してもいいかもしれない。しかしここがオブリビオンの居る屋敷であることを思えば、その愛らしさはかえって不気味でもある。だが異常なのはここからだった。やちを目にした茶運び人形たちは、急に速度を増してこちらに突っ込んできたのだ。
「これ、は……」
 人形たちが迫ってきた途端、強烈な油の臭いが鼻を突いた。おそらく人形が運んでいる茶碗の中身だろう。やち目掛けて突進した人形たちは、辺り一面に油を振り撒いた。やちは咄嗟に身を翻して逃れたが、人形たちの行動はまだ終わらない。茶運び人形の顔が二つに割れ、そこから火を噴き出したのだ。撒かれた油に火が点き、一気に燃え広がる。
「まず、こちを」
 やちは火を避け、煙を吸わぬよう口元を覆いながら三姫を操り、片っ端から茶運び人形を破壊していく。人形自体は決して強い相手ではない。数だけは多かったものの、それほど苦もなく倒し切ることに成功する。
「……?」
 茶運び人形たちを片付けて辺りを見回すと、廊下や壁、畳などには黒い焦げ跡が付いているものの、燃え盛っていたはずの火は何故か消えていた。ユーベルコードのような力と同じものだったのだろうか。
「無駄、で、ありんした」
 やちは座敷を抜けて奥へ進む。そして先を行く三姫の後について、用心深く階段を上って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
いやー水茶屋のお梅ちゃん、可愛かったぜ!団子片手に美人と談笑、これこそ至福の一時だ。噂の少女ってのはあのお梅ちゃんよりも上っつーんだから、こりゃ期待も高まるってモンだぜ!(右拳グッ)
んで、腹ごなしに運動の時間か。『沼』って何だよ。ま、行ってみりゃ分かるか。
SPD判定。ユーベルコードを使ってもう一人の俺と共に行動。もう一人の俺に先行させて、【忍び足】【見切り】を使わせつつ進むぜ。最悪の場合は分身が身代わりになってくれるって寸法さ。問題は忍者屋敷みたいなトコにある二重罠だ。どんな罠があるか分からねーし用心するぜ。金百両の事考えりゃ、急ぐべきなんだろーが、失格になったんじゃ本題は果たせねぇしよ。




 からくり屋敷の二階。やや狭苦しいその回廊を、二人のカイム・クローバーが歩いていく。双子のように瓜二つだが、片方は罠を警戒したカイムのドッペルゲンガーだ。そのドッペルゲンガーを先に立たせ、カイムは注意深く進んでいた。
(「ただ急いでも意味がないからな」)
 それでも目に付く場所全てを調べるというわけにはいかない。目視でチェックしつつ、カイムの経験上『臭い』と感じた場所は入念に調べていく。そして先に罠を発見したドッペルゲンガーが、こちらを振り返った。
(「あったか?」)
 ドッペルゲンガーは声を出さずに壁と足元を指して知らせてくる。床の一部を踏むと、壁から矢が飛び出してくるものらしい。だが、それを踏まないよう廊下の端に寄って歩き始めた瞬間、ドッペルゲンガーの足元が二つに割れて落とし穴が現れた。
「くっ!」
 落下しそうになったドッペルゲンガーは咄嗟にフック付きワイヤーを投げ、壁の柱にフックを引っ掛ける。
「平気か?」
「ああ」
 カイムはドッペルゲンガーに手を貸して彼を引き上げる。どうやら最初の矢が飛び出す罠は、発見されることを前提にしていたものだったようだ。それを避けようとすると落とし穴に嵌る、という仕掛けらしい。
「道理で……矢穴の位置がわざとらしいと思ったんだ」
「危ない場所の前後も危ない、か」
 カイムは苦笑しつつ、落とし穴を覗いてみた。穴は意外に深く、底には水が溜まっている。
「けど、これが『沼』ってわけじゃないよな」
 下が水ならば落ちたところで平気かもしれないが、ただの水かどうかを試してみる気はない。そして試す暇も無かった。何故なら唐突に天井の板が外れ、そこから黒ずくめの忍者が三人降りてきたからだ。
「お客さんか?」
「なら歓迎しなくっちゃな!」
 襲い掛かってきたのは忍者の姿をしたからくり人形だった。背丈は人間の半分もない。それなりに素早くはあったがカイムたちの動きはそれ以上に速く、正確さで人形たちを圧倒していた。二人は愛用のダガーを振るい、忍者たちを一蹴する。
「二重の罠じゃ足りずに人形まで嗾けてくるか。ここを作った奴の性格がよく分かるな、まったく」
 そう言ってカイムがにやりと笑う。するとどこからか女性の声が響いてきた。
『……君、顔覚えたからね』
 こちらの声が届いているのだろうか。やや不機嫌そうなその声を聴いてカイムたちは再び笑みを浮かべた。
「聞こえたか?」
「ああ、なかなか可愛い声だったな」
 今のが噂の少女だろうか。カイムは賞金とまだ見ぬ少女の姿を思い浮かべると、拳をグッと握って先を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
目指せ、1番乗り!ほら、一応賞金がしっかりと用意されてる可能性もあるわけだし…ね?

【フェアリーズ】を展開。先行させることで罠の場所を把握
わたしはティターニアで飛行【空中戦とジャンプ】
できるだけ床に触れることなければ罠も起動する可能性も減るわよね?

無論着地時は足元をフェアリーズに調べさせることを忘れないわ

どこかで見て手動で発動させてる可能性も考慮
ホログラムと迷彩で姿を隠すと同時に位置を誤認させて回避よ!【残像+迷彩】

もし罠を起動させたらフルブースト【逃げ足】
一気に駆け抜けて回避よ!

からくり人形はミスティルティンで撃ち抜くわ
これ、高く売れないかしら?




 無数の妖精型ドローンがヘスティア・イクテュスを囲むように浮かんでいる。ヘスティアはそれを手足のように操り、四方八方を調べながら進んでいた。
「これは……何のワイヤーかしら」
 ヘスティアは妖精を通して、回廊の先に張られていた細いワイヤーを見付けた。何らかの罠であることは間違いないだろう。ヘスティアはジェットパックのティターニアを起動して、難なく罠を飛び越えた。
「分かれ道、ね」
 しばらく回廊を進むと、道が左右に分かれていた。
「どちらかが当たりってことなんでしょうけど……」
 だが特に差異があるようには見えない。ヘスティアは様子を窺いながら、ひとまず右に進む。しかし先行していたフェアリーズが何かに引っ掛かったらしく、ヘスティアの目の前で天井が崩れ落ちてきた。
「……っ! 危ないわね」
 ヘスティア自身には傷一つないが、崩落によって回廊が塞がれてしまい、先に進むのは無理のようだ。仕方なく引き返して、先程の分かれ道を左に進む。するとこちらも行き止まりだった。
「うーん……」
 ヘスティアは突き当りの壁をじっと見つめる。不自然に歪んでいるような気がしたからだ。試しに壁を押してみると、どんでん返しになっていた扉が開き、その奥に階段が現れた。
「なるほど、こっちで合ってたのね」
 ヘスティアはジェットパックで飛びながら階段を上っていくが、何気なく手摺りに振れた瞬間、いきなり階段の踏み面がスロープに変化した。普通に歩いていれば下まで転げ落ちていたかもしれない罠だ。しかし飛行していたヘスティアは何の問題もなく上の階に上がる。
「ここが最上階、でいいのよね」
 三階に上がったヘスティアは、フェアリーズを飛ばして辺りを探る。と、そこに待っていたのは鎧武者の姿をした小型のからくり人形たちだった。彼らは槍や刀を手に、次々と襲い掛かってくる。
「来なさい! フェアリーズ!」
 人形たちをフェアリーズで迎撃しつつ、ヘスティア自身もミスティルテインで応戦する。
(「これ、高く売れないかしら?」)
 ヘスティアは足元に転がった人形の精密さを見て一瞬そう思ったが、すぐに無理だと思い直した。仮に工芸品や骨董品としての価値があったにしても、ここまで破壊してしまえば修復は不可能だろう。下手をすれば修理代の方が高くつく。
「……あと半分ってところかしら」
 休みなく鎧武者たちを撃ち抜き、半数近くを倒したその時だった。不意に壁から槍が飛び出し、穂先がドローンを串刺しにする。おそらくあちこちに転がっている人形の残骸によって罠のスイッチが入ってしまったのだろう。天井や床からも次々に槍が射出され始める。
「のんびりしてる暇はないみたいね」
 ヘスティアはティターニアで一気に加速すると、罠が作動するよりも早くその場を駆け抜けて離脱した。

「ここは……?」
 鎧武者たちを振り切ったヘスティアが辿り着いたのは、三階の最奥らしき扉の前だった。辺りに人の気配はない。
(「これ、ひょっとしてわたしが一番かしら」)
 確か一番で辿り着いた者に金百両という話だったはずだ。だが相手はオブリビオンだ。十中八九支払われないだろうが、万が一ということもある。ほんの僅かな期待を胸に、ヘスティアは眼前の扉を押し開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『妖狐』明日香』

POW   :    妖狐の炎
レベル×1個の【妖狐の力 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    野生の開放
【真の妖狐の力 】に覚醒して【九尾の狐】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    スコールシザーズ
自身が装備する【鋏 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠暁・碧です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 からくり屋敷の最上階。その奥まった場所にオブリビオンの居る座敷があった。
「あれ、思ったより早かったね」
 猟兵たちが座敷に入ると、一人の少女が立ち上がってこちらを振り返る。
「私は明日香。よろしくね」
 そう言って彼女はにこりと微笑んだ。しかし、すぐにその笑顔を引っ込めて猟兵たちを睨み付ける。
「それにしても君たち、どうせならもっと普通に歩いてきてよね。そうしたら地下室まで一気に落としてあげたのに……」
 明日香は憮然とした顔でそう愚痴ると、再び笑みを浮かべて鋏を取り出した。
「まあ、いいか。ここまで無事に来てくれたおかげで直接お礼ができるしね!」
カイム・クローバー
……っ!?美人…いや、すげぇ可愛いって感じだな。正統派美少女って感じ?胸は控えめだが、肩を露出した服装に魅力を感じるぜ(明日香ちゃんに向かって親指グッ)
んで、ここからが本題だ。やっぱオブリビオンなのかね?可能性として少女が人質取られたりとか寄生虫みてーなヤツに浸かれてるとかない?
……ねーか。ちっと運命感じたんだけどなー(珍しく溜息)ま、分かってたコトだからよ、しゃーねぇけどな…。
SPD判定で【フェイント】【二回攻撃】ユーベルコード発動で戦闘。どっちかというと囮役として戦闘やるのと狙いがもう一つ。【盗み攻撃】であの鋏を吹き飛ばす。トドメは俺は刺す気にならねぇわ。倒すべき敵なのは分かるんだけどよ…


ヘスティア・イクテュス
あら、わたしの世界ではあれが普通に歩くなのよ?ごめんなさいね(大嘘)
それで百両は頂けないのかしら?


ビームセイバーを抜いて戦闘よ
近接戦は苦手なのっとティンク・アベルに自身の姿をホログラムとして出させて【残像】
自身の位置を誤認【フェイント】
ビームセイバーによる斬撃で攻撃よ【2回攻撃】
人を騙す人には嘘のお返しをってね。

相手の攻撃は【見切り】でセイバーで切り払う【武器受け】
受けきれそうにないならガーディアンで受けるわ【盾受け&オーラ防御&火炎耐性】


アドリブ&絡み歓迎


ナイツ・ディン
「普通に歩いたらそれこそ串刺し沼にでも落とすつもりだったんだろうが。」『財宝は頂くぞ!』
やっと壊していい『モノ』を見つけて血気盛んな紅竜『ディロ』。しゃーねぇな、と言いつつ同じく暴れていいのを喜ぶナイツ。似たもの同士。

エアライド・ディロでディロに騎乗、もう一本の槍『ローア』で駆る(騎乗8、封印を解く3、空中戦4)。ディロの速度をあわせて槍で貫くぞ。(串刺し7)

「しっぽが邪魔だな、落とさせてもらう!」『喰われろ、女狐が!』
攻撃に対しては第六感が使えるだろうか。ジャンプでディロと分離して、また騎乗とかフェアリーらしくアクロバットに。目立たないがあるから分離したら気づかれにくそうだしな。




「普通に歩いたらそれこそ串刺し沼にでも落とすつもりだったんだろうが」
「当ったり前でしょ、そのためにわざわざこんな屋敷まで用意したんだから!」
 非難するナイツに明日香は胸を張って答える。しかしすぐに不満そうな顔で頬を膨らませた。
「……結局ほとんど無駄になったけどね」
「あら、わたしの世界ではあれが普通に歩くなのよ? ごめんなさいね」
 くすくすと笑いながらヘスティアが言う。
「それよりも百両は頂けないのかしら?」
「そんなの本当に用意するわけないじゃない」
 明日香は悪びれる様子もなくあっさりと答えた。ヘスティアは座敷の中を見回したが、確かに金目の物は見当たらない。 
「……まあ、そうでしょうね」
 ヘスティアは肩を竦め、諦めたように小さく溜息をついた。
「ちょっといいか?」
 そう言ってカイムが軽く手を挙げる。
「まだ何かあるの?」
 明日香は訝しげな視線をカイムに向けた。
「明日香ちゃんてさ、美人つーか、すげぇ可愛いって感じだよな。正統派美少女って感じ?」
「は?」
 予想だにしない内容だったのか、明日香はぽかんとしてカイムの顔を見返した。
「胸は控えめだが、肩を露出した服装に魅力を感じるぜ」
「え? あ、うん」
 グッと親指を突きだしたカイムの笑顔を見て、明日香は毒気を抜かれたように生返事をする。
「んで、ここからが本題だ。やっぱ明日香ちゃんはオブリビオンなのか?」
 そう訊ねるカイムの顔付きは、一転して真剣なものになっていた。
「オブリビオン……ね。そうだね、私は君たちの敵だよ。分かってるんじゃないの? 目の前にいるのが敵だって」
 問い掛けに答える明日香の声も冷たく鋭いものになる。
「少なくとも私は分かるよ。君たちは私の敵!」
 カイムたちを睨みつけ、明日香は断言した。
「なら遠慮する必要はないな!」
『問答の時間は終わりだ!』
 戦闘の口火を切ったのは、やはりナイツだった。飛竜の姿を取ったディロに跨り、ランス形態の『ローア』を構えて一直線に突っ込んでいく。
「燃えろっ!」
 明日香の周囲に無数の狐火が浮かび上がると、それは火の雨となってナイツに降り注いだ。
「遅いな!」
 ナイツは迫り来る炎の弾幕を掻い潜って突進し、明日香の脇腹を抉る。
「いったいなあ、もう……」
「なあ、人質を取られて脅されてるとか、変な寄生虫みてーなヤツに操られてるとか……」
 再度明日香に語り掛けるカイム。だが明日香はカイムの言葉を最後まで聞くことなく、苛立たしげに睨み付けてきた。
「しつこい男は嫌われるよっ!」
 明日香は脇腹を押さえながら、火の玉を生み出しカイムを狙う。
「当たれっ!」
 十数個の狐火が一斉に放たれてカイムを包囲するが、カイムは不規則な動きで襲い来る狐火をかわし続けていた。
「……ねーか。ちっと運命感じたんだけどなー」
 自分に向けられた火の玉を全て回避すると、カイムはやや肩を落として溜息をつく。
「ま、分かってたコトだからよ、しゃーねぇけどな……」
「だったら、とっとと掛かってきなさい!」
 そう息巻いた明日香に、今度はヘスティアが斬り掛かる。
「このっ!」
 真っ直ぐ突っ込むヘスティアを狙って明日香は炎の塊を放った。しかしヘスティアに直撃したはずの炎は、彼女の身体をすり抜けて座敷の壁を焼く。
「うそ、偽者っ!?」
 明日香がヘスティアだと思っていたものは、ヘスティアそっくりのホログラムだったのだ。本物のヘスティアは既に明日香の後背へと回り込んでいる。
「嘘吐きはお互い様、でしょ?」
 間合いを詰めたヘスティアは、明日香にビームセイバーの連撃を叩き込んだ。
「くそっ」
 ヘスティアの斬撃を浴びて明日香がよろめいたところを、ナイツとディロが高速で飛び回り攪乱しながら槍を振るう。
「君たち、さっきから邪魔!」
 明日香は鋏で応戦しようとするが、いつの間にか近寄っていたカイムがその鋏を素早く奪い取った。
「まだ戦うのか?」
「うるさい! そんなの、まだまだあるんだから!」
 明日香は大量の鋏を出すと、そのまま全方位に射出する。しかしろくに狙いも定めずに放った攻撃が当たるほど猟兵たちも甘くない。
「この程度……!」
 ヘスティアは飛来する鋏を次から次へと切り払い、さらに大きく踏み込んで明日香自身をも斬り付ける。ナイツは鋏を避けながら距離を取り、再び突撃を仕掛けた。
「しっぽが邪魔だな、落とさせてもらう!」
『喰われろ、女狐が!』
「そっちこそ!」
 向かってくるナイツを狙い、明日香は無数の狐火を一つに束ねて放つ。だがナイツは炎塊を避けずに突貫し、勢いのままに明日香の尻尾を刺し貫いた。
「痛っ!」
 痛みで明日香の表情が歪む。
「……こうなったら、こっちも本気を出すよ」
 そう告げた明日香の目が妖しい光を放ち、その口元からは鋭い牙が覗く。さらに尻尾が2本3本と増え始め、最後には9本の尾を持つ黄金色の狐へと変化した。
「さあ、ここからが本当の勝負だよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
(口笛を吹きつつ)…うへぇ、本気になりやがった。少女の姿取られるよりは戦い易くなった感じはするけどよ…やれやれだ。
【フェイント】【二回攻撃】ユーベルコード発動で戦闘。正面からは戦わず、【ダッシュ】を使って背後取りして基本的に死角に入り込んで戦うぜ。
尻尾は九本って事だが、何本か落とすと魔獣形態も解けるのか?そんな都合のいいモンじゃねーだろーけど、何本か落とせば明日香ちゃんも余裕無くなるだろ。って訳で狙いはそのモフモフの尻尾だ。俺も猟兵として来た以上は仕事果たすか。攻撃に対しては【見切り】で回避するぜ
終われば、水茶屋の団子食いに行くぜ。美味かったしよ、看板娘のお梅ちゃんともまた会いてぇし…な。




 九尾の狐となった明日香を囲むように大量の炎が浮かび上がり、続けざまに撃ち出された。カイム・クローバーは横に跳んでそれを避けたが、続いて飛び掛かってきた明日香の尻尾が大きく弧を描く。
「ぐはっ!」
 肩口に打ち下ろされた尻尾の一撃は、カイムの身体を思い切り畳の上に叩きつけた。
(「動きを読まれた? いや、火炎の弾幕は囮か」)
「本気を出すって言ったよね?」
 地に伏したカイムを一瞥し、明日香は無数の鋏を生み出した。その切っ先は全てこちらに向いている。
「チッ!」
 カイムは咄嗟に床を蹴りつつ身を捻った。畳に突き刺さる大量の鋏を横目に見ながら素早く立ち上がる。
「逃がさないよ!」
 明日香の声に従って鋏たちが追いすがる。
(「真正面からやり合うのはリスクが高過ぎるな」)
 距離を取るのも良くない、とカイムは思った。直撃こそ避けているものの、縦横無尽に飛び回る鋏は少しずつカイムの手足を刻んでいく。
「ま、女の子の姿よりは戦い易いけどよ」
 カイムは不敵な笑みを浮かべ、そのまま明日香の正面に走り込んだ。自棄を起こしたように見えたのか、明日香は勝ち誇ったような顔で笑う。
「終わりだよっ!」
 明日香の狐火が寄り集まって特大の火球に姿を変えた。それが放たれる寸前、カイムは獣のような身のこなしで明日香の背後に回り込み、愛用のダガーを振るう。高速で繰り出された斬撃が、一本の尻尾を深々と切り裂いた。
「くっ、そぉ……」
 尻尾を切り落とされた明日香は、苦痛に呻きながらカイムに噛み付こうと振り返る。カイムは反射的に身を引いて後ろに跳び退った。
「このまま尻尾を落としていけば元に戻る……なんてことはないよな?」
「よくも……!」
 カイムは額の汗を手の甲で拭いながら息を吐く。対する明日香の顔は悔しさと憎しみで大きく歪んでいた。
「さて、そろそろ終わらせるか。こっちも色々とお楽しみが待ってるんでな」
 そう言うとカイムは愛用のダガーを握り直し、眼前の敵に意識を集中させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・ノイナイ
からくり旅館に身を置くものとして、遊び程度のからくりならともかくこの屋敷は見過ごせないな!助太刀する。

手数を増やす技をよく使うようだな。こちらも数と面で対抗しよう。
「少しの間、動かないでくれよ」
と味方に言い置いて、サムライブレイドの刃を鈴蘭の嵐に変えて
妖狐と妖狐の使役武器(炎や鋏)にぶつける。
少しは奴を消耗させられるか……!?

「金と遊戯で人を釣り死の罠に導く、残酷な本性そのものの姿か。
あんたのような獣と通わせる心は無い」




「みんな焼き殺してやる!」
 鬼のような形相で叫ぶ明日香の頭上に火球が出現し、大きく膨れ上がっていく。そして次の瞬間、それが弾け飛んで炎の雨が降り注いだ。
「手数を増やす技が得意なようだな」
 攻撃の範囲こそ広いものの、火炎の一つ一つはそれほど大きくない。ナイ・ノイナイは向かってきた狐火を片っ端から叩き切ったが、すべてを切り伏せるには数が多すぎた。狐火の幾つかはナイの身体を掠めて彼の肌を焼く。
「まだまだ……次はこっちだよ!」
 こちらを仕留めきれないと見るや、明日香の周囲に再び銀色の鋏が湧き出した。それを見てナイは僅かに眉根を寄せる。分散しているおかげで威力こそ大したことはないが、こうも広範囲に攻撃を散らされては回避もままならない。
「少しの間、動かないでくれよ」
 他の猟兵たちにそう言い置くと、ナイの手にしたサムライブレイドが鈴蘭の白い花びらとなって解けていく。
「さて、こちらも数と面で対抗しよう」
 ナイの言葉と共に無数の花びらが嵐となって荒れ狂い、辺りが花の香りで満たされた。そして舞い踊る花弁は、迫り来る鋏の一斉射撃を受け止め相殺していく。
「その程度で止められるとでも?」
 明日香も黙ってはいない。彼女の操る鋏は複雑な軌道を描き、鈴蘭の花びらを掻い潜ってナイの足を切り裂いた。
「……このまま削り落として細切れにしてやるわ」
 明日香は意地悪そうに口の端をつり上げる。疲れ切っているらしく息は乱れていたが、目付きだけは鋭く殺意にぎらついていた。
「金と遊戯で人を釣り死の罠に導く、残酷な本性そのものの姿か。あんたのような獣と通わせる心は無い」
 遊び程度ならいざ知らず、殺戮を目的としたこの屋敷とオブリビオンを見逃すわけにはいかない。ナイは射抜くような目で明日香を見据えると、再び鈴蘭の嵐で辺りを埋め尽くした。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
本気を出したって言ってるだけあって手強いぜ。距離を選ばす仕掛けられる弾幕みてーな狐火に凶器の鋏。鋏は何本も飛んできて回避は容易じゃねーし。けどそろそろ見切ったぜ。悪いな。こっちも猟兵として仕事中だからよ。キッチリとカタを付けさせてもらうぜ?
SPD判定でダガーを使った接近戦…と見せかけて【フェイント】使用して、最近仕入れた二丁銃をぶっ放すぜ。【クイックドロウ】【二回攻撃】【零距離射撃】【鎧砕き】ユーベルコード含めて攻撃。必要があるなら【早業】でリロードだ。
…オブリビオンと仲良くできるとは思っちゃいねぇよ。けど、猟兵とオブリビオンなんて関係じゃ無けりゃもうちょい仲良く出来たかもな…ま、戯言だけどよ


アレクシア・アークライト
 あいつも念動力を使うのよね。炎も飛ばすし……離れて戦うのはちょっと不利か。
 見えない攻撃を混ぜながら(サイコキネシス)、落ちてる鋏を投げつけて(念動力)、あいつが遠距離戦に対応しようとしたら一気に距離を詰めて(空中戦)、接近戦に持ち込みましょ(グラップル)。
 尻尾の攻撃は念動力で防いで(多重障壁)、隙を見せたら全力で殴る!(捨て身の一撃、全力の一撃)

 こんな屋敷まで作って罠に掛けようだなんて、この世界のオブリビオンは随分とコストパフォーマンスが低いことをやってるのね。
 うちの邪神と比べると、貴方がやろうとしたことなんてお遊びにしか思えないけど……悲しいけどこれ、貴方達と私達との戦争なのよね。




「いい加減死になさいよっ!」
 激昂した明日香の周囲に無数の鉄鋏が生まれた。鋏は天井近くまで浮かび上がると座敷内を埋め尽くさんばかりに降り注ぐ。幾つかの鋏は鈴蘭の嵐をすり抜けてくるが、カイム・クローバーはそれをダガーで難なく切り払った。
「それもそろそろ見切ったぜ」
「ちぃっ! それなら……!」
 明日香は忌々しそうに表情を歪めると、大量の狐火を生み出して己の周囲に張り巡らせた。盾として使うか、あるいは近付いた者を集中的に狙い撃つつもりなのだろう。
「こんな屋敷まで作って罠に掛けようだなんて、この世界のオブリビオンは随分とコストパフォーマンスが低いことをやってるのね」
 やや呆れたようにそう言うと、アレクシア・アークライトは畳に突き刺さっていた無数の鋏を念動力で一斉に引き抜いた。宙を舞う鋏の群れは一直線に明日香を目指し、彼女を守る狐火の盾を射抜いていく。その隙を衝いてカイムは距離を詰めようとしたが、明日香はそれを見逃さなかった。
「寄るなっ!」
 尻尾を切り落とされて警戒しているのだろう。牽制のつもりか二人に向けて鋏を飛ばし、明日香は大きく後ろに跳んで距離を取る。
「行くと思ったか?」
 しかしカイムは近付く素振りを見せただけだった。赤と黒、二挺の拳銃を抜き放つと、飛来する鋏を次々に撃ち落とす。
「なにっ!?」
「甘いわね」
 意表を突かれた明日香の動きが止まり、そこにアレクシアの拳が叩き込まれた。念動力を纏い強化された拳は、妖狐の身体を軽々と吹き飛ばす。
「くっ!」
 畳の上を転がる明日香。慌てて新たな鋏を生み出すが、それを放つよりも早くカイムの銃弾が鋏を撃ち砕いていく。
「こうなったら……」
「遅い!」
 アレクシアは立ち上がり反撃しようとした明日香の前脚を払った。明日香は体勢を崩しながらもアレクシアに尻尾を叩き付けたが、それも念動力の壁に阻まれる。
「……っ!」
 必死の一撃を防がれた明日香は、険しい顔で座敷の出入り口に目をやった。傷付き追い込まれた彼女の脳裏に撤退の二文字が過る。しかし明日香の逃走を察したカイムが彼女の四肢を撃ち抜いた。
「ぐあっ!」
「悪いが、これで詰みだ」
 カイムは倒れ伏して呻く明日香に銃口を押し付ける。そして反撃の暇を与えずに残弾をすべて撃ち込んだ。
「……オブリビオンと仲良くできるとは思っちゃいねぇよ。けど──」
 力尽き消えていく明日香を見下ろしながらカイムは溜息をつく。
「猟兵とオブリビオンなんて関係じゃなけりゃ、もうちょい仲良く出来たかもな……ま、戯言だけどよ」
 呟くようにそう付け加えると、カイムは背を向けて頭を掻いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月11日


挿絵イラスト