バトルオブフラワーズ⑨〜そうぞうりょくの化け物
システム・フラワーズ。
名前の通り、多種多様、季節関係なく、あるいは見たこともないような様々な花が咲き乱れる。
その領域に、奴は居た。
集まった花々の足場に寝転ぶようにしているそいつは、ふあ、と大きなあくびをしてから、ゆっくりと立ち上がる。
「無駄無駄、ミーを倒し尽くすことなど出来まセーン! ミーの想像力を超えることなど不可能なのデース!」
●
「ついにザ・ステージの攻略を終えて……システム・フラワーズへの道が開かれた」
「システム・フラワーズは、色んな花が咲き乱れてる不思議な空間だ。花が集まって足場になってくれる仕組みなんだけど……そこに奴がいる。敵の幹部の一人、エイプモンキー!
「エイプモンキーがいる限り、全ての花の足場はエイプモンキーに通じてしまう。つまり、エイプモンキーを倒さなければ、その先へは進めない」
「例によって、彼は何度倒しても骸の海から蘇る。けれど、無限じゃない。倒し続ければ限界が来る」
「エイプモンキーはシステム・フラワーズの中を転々としているけど、このタイミングでなら捉えられる。皆には即・急行して倒してほしい」
「ただし、エイプモンキーは“そうぞうりょくの化け物”だ。ふざけた外見と言動に惑わされちゃいけない。奴は“想像できる範囲でならどんなものでも創造できる”力を持っている」
「こちらのユーベルコードの理屈を暴き、理論を並べ、これを叩き潰してくる。ただ挑むだけじゃ絶対勝てない。なら、どうするか?」
「……こちらも想像力だ! “エイプモンキーが先読みして、こちらのユーベルコードを潰すためにするであろう行動”を上回る対策を立てる! そう……“読まれることを前提にそれを攻略する作戦”が必要なんだ」
「ある意味、自分の弱点と向きあうこと……なのかもしれない。強敵だ。けれど、倒さなければ、この世界に明日はない」
「頼むよ猟兵達。そうぞうりょくのばけものを、倒してくれ!」
甘党
ついにボス戦と相成りました。
エイプモンキーは想像力の化け物です。
ですが、猟兵の皆さんはそれ以上の想像力を持っていることと思います。
注意事項をよく読んでプレイングをどうぞ。
なお今回は、成功●が溜まった時点で終了となります。
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エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
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第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エルネスト・ポラリス
【○】
幹部の登場ですね。
こちらの弱点を突いてくる……ええ、紛れもない強敵です。
ですが、私のユーベルコードはザ・根性論!
こんな頭悪い力に対する対抗策などたかが知れて……?
そういや、私の見栄や根性の源泉ってのがありますか。
弟にしろ、妹にしろ。
もし、あの子たちがもう戦わなくていいとか言ってきて、故郷で静かに暮らせればそれで良いなんて言うのなら。
たとえそれが偽物でも、私は、それでも戦意を保ち続けることができるのでしょうか……。
……知るかそんなもん!!
私、兄! 兄だから偉い! 兄だから強い!
私の見栄も意地も誇りも勇気も! 全部あの子達に胸を張るためにある!
どけエテ公! 犬猿の仲にケリつけてやりますよ!
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ACT.1
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……その領域で最初にエイプモンキーと遭遇したのは、エルネスト・ポラリス(いつか満月の下で・f00066)だった。
二人が見合った瞬間、花が床を作るように集ってゆく。ふわりとした踏み心地は、若干心もとないなれど、確かに体重を支えてくれている。
「…………フゥー」
だが。
猟兵を前にしたエイプモンキーの仕草は……退屈を示す、ため息だった。
「……ずいぶんと余裕そうですね?」
眉間に皺が寄るのも仕方ない事だろう。
如何に敵の幹部とはいえ。
如何に強大なオブリビオンであるとはいえ。
侮られる理由にはならない。
侮られては、腹が立つ。
「フゥン。ミーとしては別に構わないッキー
ちっちっち、と機械の指を左右に振って。
エイプモンキーは嘲笑った。
「ただ、ミーの想像力を凌駕する事態は起こりえないだろう、というのが退屈だと言うだけウッキー!」
「――――やってみろ」
即座に、エルネストは踏み出した。
花を切り裂くように、足元から出現した、錆びた金属片が全身を包み込む。
人狼が纏う煤けたそれらは、彼の意思に応じて力を増す彼だけの鎧。
ヒ ロ イ ッ ク ・ ザ ン ・ ドリ ー マ ー
《されど錆びぬその意思は》は、その単純な性質故に対策され難い。
エルネストは、そう思っていた。
「クククー! 言ったはずデース! ミーにはお見通しウッキー!」
パチン、と、エイプモンキーが指を鳴らす。
空間が歪む。何処からともなく現れたパーツ群が一瞬で組み上がり、新たなマニアックウェポンを“創造”した。
黒い機械の箱が、ウィンウィンと音を立てた。
「っ」
ちくりと、頭に僅かな痛みを感じる。だが、その程度でひるむわけにはいかない。
「何が来ようと!」
「本当にそう言い切れるッキー?」
にちゃり、と猿面の口元が歪んだ。
それは、自らの想像力が相手を蹂躙する事を確信した、歪んだ笑み。
続いて、システム・フラワーズを形成する花びらが浮き上がり、四角い枠を作った。その中に、湖面のような波紋が生まれる。
即席の鏡だ。ただし、映すのは、対峙する相手ではない。
「な――――!」
エルネストの動きが止まった。
彼が戦う理由。
彼が戦える理由。
小さな男の子と女の子、エルネスト・ポラリスの弟と妹が、その鏡の中にいた。
◆
「フッフッフーン、ミーにはわかっているッキー! ユーのユーベルコードの正体は“見栄”――家族に対する虚栄デース!」
「な……っ」
「格好いいお兄ちゃんでありたい! 強いお兄ちゃんだと思われたい! その思いが力の源泉!」
ギラリと光るサングラスの向こうに、嗜虐的な、暗い瞳が見えた。
箱を踏み潰すような真似はしない。
感情を力に変える相手なのだから、怒りを買う必要はない。
戦意を削ぎ落とし。
闘志をへし折るだけでよいのだ。
「――――見栄を張る相手が居なくなったら、おしまいウッキー」
その意図に沿う様に、二人が声をあげた。
『お兄ちゃん』
『もうやめてよ』
『知ってるんだよ』
『お兄ちゃんが戦って、傷ついてること』
『もういいんだよ、僕たちのためにがんばらないで』
『一緒に故郷に戻ろうよ』
『僕たち』
『お兄ちゃんに』
『戦ってほしくないよ』
『傷ついてほしくないよ』
『一緒に居てよ』
『寂しいよ』
『どこにもいかないでよ』
『帰ってきてよ』
そもそもエイプモンキーはエルネストの家族の顔を知らないはずなのだ。
なのに何で、二人の姿を映し出せる?
本物の彼らの、本物の言葉だったら?
――――何のために、これ以上戦う?
油が紙にこびりつくように、言葉が心に落とせない汚れをつけていく。
体が重い。己の一部であるはずの金属片が、こんなにも重い。
「ハッーッハッハッハァー! 戦う理由を他人に預ければこうもなるッキー! それじゃあお別れの時間と行くッキー!」
エイプモンキーが、太い腕を振り上げた。
エルネスト向けて振り下ろされる、強力無比な一撃。
「ハハハハハハハハハハ――――ハ」
ガキン、と金属同士がぶつかりあう音。
鈍い感触は、敵を打ち倒した物ではない。
「……知るかそんなもん」
エルネストの構えた腕が、エイプモンキーの一撃を防いでいた。
いや……押しのけて行く。押し込んでいく!
「知るか、そんなもんっ!!」
咆哮と共に、金属の塊が前へ踏み出した。
「な、何――――」
「私、兄! 兄だから偉い! 兄だから強い!」
それは己にかける暗示のようなものだ。
エルネストは兄だから。
たとえどんな時であっても、膝をつくわけには行かない。
負ける姿を見せる訳にはいかない。
何故なら。
「私の見栄も意地も誇りも勇気も! 全部あの子達に胸を張るためにある! もしもあの子達が“本物”だったとしたら!」
それこそ、見栄を張り続けなければならないに決まっている。
「私はあの子達の格好いい――――自慢のお兄ちゃんなんですよ!!」
「ウッキーーーーーー!」
走りながらの一撃が、飛び退いたエイプモンキーの後方にあった黒い箱にぶちあたった。
「アーーーーーー! ミーのマニアックウェポンがァー!!!」
「……成程」
途端、頭に感じていた、僅かな違和感が解けて消えた。
同時に、鏡の向こうにいた、エルネストの家族も。
「私の記憶を読み取って、投影する装置だったって事ですか。――――幹部のくせにちゃちなトリックを使うもんだなっ!」
「何ぃー!? ミーの想像力をバカにするつもりッキー!?」
「はっ! 何が想像力だ! 教えてやりますよエテ公! あなたの想像力なんて大したことないってね!」
「――――あぁ!?」
「だって私を止められなかった! その程度なんですよあなたは! 何が想像力の化物だ、聞いて呆れる!」
「テメェ」
エイプモンキーは。
「断言してあげますよ、あなたはここで敗北します。ええ――――私程度を止められない想像力で、他の猟兵を相手に出来るとでも?」
「殺してやる」
その全力を持って、エルネストを破壊すると決めた。
◆
結論から述べるなら。
エルネストは善戦し、戦闘継続ができなくなるその時まで、エイプモンキーと渡り合った。
エイプモンキーは、エルネストのユーベルコードを止めることが出来なかった。
だから。
「ウッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
たとえ戦場に残ることが出来なくても、この戦いは、エルネスト・ポラリスの勝利だ。
成功
🔵🔵🔴
煌燥・瑠菜
◯
何ですかこの俺ツエー系チート猿!こっちは搦め手苦手なんですよ!!あー、腹たってきました、ぶっ飛ばしてやります!!!
出し惜しみは無しです!私の拳の一撃でぶっ飛ばします!
……弱点は、まあ多いですよ?射程短い、当たらなければどうという事ない、衝撃吸収とか威力減衰されるとダメダメ、他にもあるでしょうね……
それなら本体以外を狙えばいいんですよ!
情報収集、世界知識で状況を把握。ここは花の足場の上、ならばそれを拳で壊して足場ごと落とせばいい!
一撃では無理ですから猿に当てるフリして力溜めて怪力込めて破壊工作!
その間は見切り第六感野生の勘で時間稼ぎしましょう!
痛いのは気合いで耐えます!今度こそ力を活かすんや!
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ACT.2
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「何ですかこの俺ツエー系チート猿!」
「ウッキー! 全然通じないッキー!」
煌燥・瑠菜(続き綴る御噺の欠片・f02583)が殴りかかる拳を、エイプモンキーは避けようともしなかった。
エイプモンキーが作り出したマニアックウェポンは、周囲を対空する、漆黒の平面体……名付けて衝撃吸収板!
瑠菜の拳が放たれる度、平面体が立ちはだかる。拳が突き刺さると、ぐにょん、と凄まじい弾力が生じ、衝撃がそのまま吸収されてしまった。
「ただ殴りかかってくるなんて、想像力を働かせるまでもないウッキー!」
「がっ」
その隙を突くように放たれた豪腕が、瑠菜の横腹に突き刺さる。
肺の中身を、強制的に空にする、強力無比な一撃。
「っぐ、こっちは搦め手苦手なんですよ……あー……腹たってきました、絶対ぶっ飛ばしてやります……!」
腹部を押さえながら立ち上がる瑠菜を、エイプモンキーは、退屈そうに肩をすくめた。
「これ以上やっても無駄ウッキー? 大人しく殺されるならあまり痛くなくしてやるッキー」
「何勝った気でいるんですか……このぉおおおおおおおお!」
片足で踏み込む。烈風靴が唸りを上げて、足場となった花びらを巻き散らかしながら、少女の体を高速で押し進めた。
、、
左手に力を込めて、全力で殴りかかる!
「おっ! これは中々速いウッキー?」
「やああああああああああああああっ!」
「けど想像の範疇を超えてないッキー」
衝撃吸収板が、またもエイプモンキーの眼前に現れる。
瑠菜の拳は、その柔らかさに、再度受け止められて――――。
「オラッ!」
「ぐっ」
顎をかちあげられ。
「それじゃ、これでおしまいウッキー!」
鋼鉄の拳を固めて、振り下ろす。
華奢な少女の首めがけて――当たれば、骨が折れる程度では済まないかも知れない。
「……想像の範疇?」
だったら。
「これは想像、出来てんですかっ!」
衝撃吸収板は、瑠菜の左拳を受け止めた。
だから、力を込め続けた、右拳はまだ自由。
「!」
「だあああああああああああああああっ!」
裂帛の気合と共に、右拳が放たれる。
が。
「なぁんて。それも見抜いてたッキー?」
ひょい、と気軽な動作で、エイプモンキーは身を翻した。
すか、と瑠菜の拳が宙を舞う。
ゲラゲラゲラ、猿面が嘲笑う。
ははっ、と少女も笑う。
「――――うううううううらああああああっ!」
拳を振り抜いた勢いで。
体を回転させる。
「……は?」
角度を変えて、そのまま拳が突き立った。
花の、大地に。
「は――――――――あああああああああああああ!?」
その破壊の力は、速やかに、システム・フラワーズを形成する足場を吹き飛ばした。
数多の花弁が、まるで最初からそういうものであったかのように、一斉に渦を巻いて巻き上がる。
足場がなくなった今、二人の体を受け止めるものも、またない。
両者の体が、同時に落ちる。
「こ、こいつ、何考えてるッキー!」
「――――あぁ、なんだ、想像してなかったんですか?」
拳による攻撃は単純故に、対策も簡単だ。
避けられればあたらない。射程も短い。衝撃を吸収されたらそれで終わり。
だったら。
避けられなくて、拳の届く範囲に、衝撃を吸収されない場所に打ち込んでやればよいのだ。
「ちなみにこっちは!」
空中に足を踊らせる。舞い散る花びらに、強く左足を踏み込む。
「予習済みですよ…………女子高生ですから!」
烈風靴が、再度風を巻き上げた。投げ出された体が、空中で軌道を変えた。
「ン――――――!?」
「さんざボコってくれましたね…………お返しじゃボケがぁ!」
瑠菜の渾身の右拳が、今度こそエイプモンキーをとらえた。
風を推進力に、ひねりを加えて、ライフル弾のように突き進んで。
シャクコウゴウケンゲキ
《 灼 煌 豪 拳 撃 》
おおよそ、今時の女子高生スタイル精霊術士が放ってはいけないその一撃が。
花の足場をまとめて吹き飛ばしてしまうような威力のそれが。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
猿の化性の腹部に、深々と突き刺さった!
成功
🔵🔵🔴
サフィリアリス・エレクトラガント
想像力勝負だなんて、ただの街娘には荷が重すぎるでしょう
でも私も猟兵の一員ですので精一杯務めさせていただきましょう
使用するユーベルコードは「光の女神様はあなたの味方」
このユーベルコードは『恐怖』を抱かなければ起動しません
でも恐怖を抱かないなんてできるのでしょうか?
だって、生物は恐怖するから生きるために色々試行錯誤するのです
死を恐怖するから相手の攻撃を防ぐユーベルコードを防ぐのでしょう?
あっ、それとも、怖くないでしょうか?恐怖なんて無いからどんな攻撃でもうけて立っちゃいますか?
それとも私の攻撃を『恐怖』するから回避しますか?
うふふ……さあ、悩んでください
一かけらでも『恐怖』したら、あなたの最期です
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
◎
このユーベルコードの弱点は「敵意」も持たない相手には発動できないことだから、感情の動きを抑える方法を用意してくるのかも。もしそうなら、「コレ」で……!
お猿さんを見つけたら、持ってきた大量の「バナナの皮」を投げつけるわ。
念動力でキャノピーを覆うくらい貼り付けちゃえば視界も封じられるし、バナナが好きなお猿さんなら、皮だけをぶつけられたらきっと怒って敵意を剥き出しにしてくる筈よ。一石二鳥ね。
確実に怒らせられるように、悪口も言っておこうかな、えっと……ばーかばーか! けむくじゃら! チンパンジー! マントヒヒ!!それから、それから……すごい能力持ってるくせに幹部止まり!!
悔しかったら降りてきなさい!
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ACT.3
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「あー、ひどい目にあったッキー!」
腹を擦りながら、新たに構築された花の足場に、エイプモンキーはしっかりと着地した。
しばらく待ったが、先程の猟兵は落ちてこない。そのまま転移して逃げたか……。
「チィ…………いや、別にミーの想像力が負けたわけじゃないウッキー。ああいう馬鹿は時々理屈を超えた事をするってだけで……」
ぶつぶつと独り言を言いながら歩きだす、が。
「それ、誰に対する言い訳なんです?」
反応するものが居た。
微笑んで、その戦場に立っていた。
「……まぁた猟兵ウッキー?」
「ええ――単なる街娘ですけれど」
優雅にスカートの裾をつまんで、丁寧な一礼。
所作は丁寧で、見るものを思わず、ほうと、感じさせるだけの力があるのに。
どことなく、底冷えする印象を与える女だった。
「サフィリアリスと申します――お見知りおきくださいね」
サフィリアリス・エレクトラガント(魔王様の仰せのままに・f13217)は、そう名乗りを上げた。
「あ、あのっ!」
後を追うように、ひょこっと、サフィリアリスの背後から顔を出した、褐色肌の少女も、手をブンブンと振って自らの存在をアピールする。
「マリアもいるわっ! あ、あなたなんて、やっつけちゃうんだから!」
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)は、そう言うと、そそくさとサフィリアリスの背後に戻った。
「めっちゃ逃げてるウッキー!」
「ち、違うわ、準備をしているのよ! よいしょ、よいしょ……」
「はぁーん、何をしようが無駄ウッキー。お前たちが何をしてくるか、ミーにはお見通しウッキー!」
エイプモンキーの双眼が光る。
どの様な能力を持ち、どう対処すればよいのか。
「フッフッフーン? なるほどなるほど……ククッ、簡単ウッキー?」
「あら、どういう意味です?」
首を傾げたサフィリアリスに、エイプモンキーは歯をむき出しにして嘲笑った。
背後で、黒い四角形が浮き上がり、完成する。マニアックウェポン。
、、、、、、、
「格下の雑魚相手に恐怖する理由がないウッキー」
機械仕掛けの腕が振り下ろされる。
華奢な体が軋みを上げて吹き飛ばされる。
二度、三度、花の足場を転がって、ゆっくりと身を起こそうとして。
「や、やめなさいっ!」
割り込むように、アヴァロマリアが立ちふさがった。
「馬鹿め。馬鹿の馬鹿ウッキー。お前はそもそも相手にしなきゃあいいんだッキー!」
――サフィリアリスのユーベルコードは、相手が『恐怖』の感情を抱くことをトリガーとする。
――アヴァロマリアのユーベルコードは、相手が『敵意』の感情を抱くことをトリガーとする。
エイプモンキーは、そのどちらも抱かなかった。
感情の動きを制御するマニアックウェポンが、エイプモンキーの意識の波を抑える。
上に振れず。下にも振れず。
恐れ、怖がる必要はない。格下の弱者なのだから。
敵意など抱く必要がない。車が路傍の雑草を轢き潰す時、感情を抱くか?
そういう話なのだ。
だから、エイプモンキーは容赦なく、そして感情を動かさぬまま、障害物を取り除く心持ちで、アヴァロマリアを殴り飛ばそうとした。
「え、えいっ!」
その、一瞬前に、アヴァロマリアは動いた。
感情を止めたが故に、その行動を妨害することが出来なかった。
対応するというのであれば、それは“何かされるかもしれない”という恐怖からだし。
その行動そのものが、アヴァロマリアへの敵意になってしまうかも知れないから。
動けなかった。
動くことが出来なかった。
感情を抱かせないことで、行動を制御した、といってもよいかもしれない。
そして、アヴァロマリアがぶちまけたのは、黄色く、甘い香りのする――――。
「バナナの、皮よっ!」
少女の念動力によって、エイプモンキーのキャノピーに、余すこと無く張り付いた。
◆
「――――え、何これ」
「だってあなた、お猿さんじゃない!」
少女は……腰に手を当て、ドヤ顔で言いきった。
「中身のないバナナの皮をぶつけられたら、すっごく腹が立つでしょう!」
「………………」
いやいやいやいや。
別にこれぐらいでね?
ミー、今感情とか無いから。
前見えないぐらいのものでしか無いし。
「……え、嘘、ダメなの?」
むしろマジで行けると思ってた事に驚いたよミー。
でもとりあえず首の骨折って殺すね?
「だ、だったら……えっと、けむくじゃら! チンパンジー! マントヒヒー!」
「…………………………」
いやいやいやいやいやいやい。
え、何、罵倒? 罵倒なのこれ。
誰がけむくじゃらか? この格好いい鋼鉄のボディが見えないのか?
マニアックさ極まってんだぞ? ん?
いや、キレてない、キレてないですよ。
このエイプモンキー様をキレさせたら大したもんですよ。
「それから、それから……」
まったく怒ってないので、敵意も抱かないし。
でもとりあえず首の骨折ったあと引きちぎって晒し者にするね?」
「それから――――すごい能力持ってるくせに、こんな所で足止めやらされてる、幹部止まりっ!」
「だぁれが幹部止まりの出世街道外れじゃあああああああああああああああああ! あ」
アヴァロマリアの背後に発生した光り輝く鳥の群れが、凄まじい勢いでエイプモンキーに襲いかかった。
◆
「あだだだだだだだだ! ウッキー!!!」
殺到する鳥達は、アヴァロマリアを守護する聖なる光だ。
彼女を傷つけようとする意思の一切合財を許さない。
「このっ! 貴様調子に乗ってんじゃ――――ウキキキキキ!」
感情を制御していてなお、抱いてしまった敵意を消すのは難しい。
これ以上感情制御を強力にすると、今度は自我が何処かふわっとしてしまう恐れがある――――!
「だったら先にテメェをくびり殺してやるッキー!」
「きゃあっ!」
とはいえ、エイプモンキーは強力なオブリビオンだ。
ダメージ覚悟で突っ込んで、まずこの小娘を殺してしまえば良い。
そう判断し、飛びかかった直後。
「……ふう」
エイプモンキーが鳥に襲われる中で。
ゆっくりと、サフィリアリスは起き上がった。
頭から血を流し、腕も折れて見えるのに。
平然と、痛みなど感じていない風に。
「ひどい事を、するんですね。まったく……」
「…………っ!」
とどめを刺そうとしていた相手が、再度動き出したことで。
エイプモンキーは反射的に警戒した。
なにかするかも知れない、と思ってしまった。
まだそれは、恐怖という名前で呼ぶには、いささか弱い種火だった。
が。
「………………」
にこ、と。
その状況下に置いて、サフィリアリスは柔らかく微笑んだ。
「…………!?」
意味がわからない。
何故笑う。
今まさに、お前の仲間をこの手で殺そうとしているんだぞ。
「だってあなた」
その心の声が聞こえたと言わんばかりに。
「死ぬのが怖いんじゃないですか?」
エレクトラガント
《 魔 王 》は、尋ねた。
◆
生物は。
死を恐怖するから、鍛え、戦う。
死ぬのが恐ろしいから、ユーベルコードを防いで、己の想像力こそが最良最善だと証明しようとする。
つまりはそういうことだ。
立ち向かうという行為は。
怯えを内包している。
故に、魔王に相対したものは、皆等しく恐怖する。
もしかしたら今日。
己は。
死んでしまうのではないかという。
圧倒的な、現実を前に。
◆
「キェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
誤算があるとすれば。
恐怖を増幅された獣は、それなりに手強いということだ。
サフィリアリスのはなった光の刃によって。
恐怖を増幅され、恐慌状態に陥ったエイプモンキーが暴れに暴れた結果。
「あ、あの、だ、大丈夫、すぐに治すから……!」
アヴァロマリアをかばって、“ずたずた”にされたサフィリアリスは、それでも静かに笑っていた。
「ありがとう、ふふ……ねえ、怖いでしょう? けどね」
もうその場に居ないエイプモンキーに語りかけるように。
手負いの魔王は、それでも微笑むのをやめない。
「もっと怖い化物が、たくさんいるのよ? ふふ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
壥・灰色
『壊鍵』とは魔術回路の名称
魔術回路である以上、魔力を流さねば機能しない
敵がそれを解するならば、魔力を除去する、起動させない、という策を採るだろう
おれならばそうする
だが、抜け道はある
壊鍵のために、おれが心臓の魔術炉心から生み出す魔力が消し去られるならば、地を踏み駆けるエネルギーを
敵が振り下ろしてくる打撃攻撃の運動エネルギーを
複合魔術論理式により魔力に転化
敵が消した魔力量をほんのわずかにでいい、凌駕し
わずかでもいい、吸収される前に壊鍵に流し込む
壊鍵……起動!!
魔力を加速、増幅し、ただ一発の『衝撃』として右拳に装填!
全てが目論見通り行ったとて一発が限度!
しかしそれで充分だ!
おれは、お前を破壊する!
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ACT.4
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「ウッキイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
イライラする。
とにかくイライラする。
なんなんだあいつらは。
どうしてミーの邪魔をする。
尽く立ち塞がってくる。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして――――。
「自分の想像力の上を行く、か?」
◆
エイプモンキーの視線の先に、一人の男が居た。
おおよそ、全体に色彩というものが欠如している――“灰色”が。
「簡単なことだ――――お前は発想が貧困なんだ」
「アァ!?」
もはやエイプモンキーに、余裕はなかった。
想像力と創造力。
己の絶対的な力のはずなのに。
何故この体は傷ついている?
「だからここに居る。そして」
男は、両の拳を構えた。
何の細工もない、ただ『殴る』という行為の前準備。
「おれは、お前を破壊する」
「――――生意気言ってんじゃあねえぞクソが!」
エイプモンキーが指を鳴らす。背後に、歯車でできた巨大な装置が生成される。
途端。
「!」
がくん、と男の体から力が抜けた。
心臓から組み上げる魔力の一切が、消失している。
「ハハハハハハ! テメェが魔力無しに戦えねぇのはわかってんだよクソ猟兵!」
勝ち誇った咆哮と共に、エイプモンキーが豪腕を振り上げた。
「お見通し、か」
「アァそうだよ! 浅いんだよテメェらはよぉ! よぉくわかるぜウッキッキッキッキ!」
「おれの事を、理解しているということだよな」
「そうとも! テメェの能力は確かに強いよなぁ、応力と衝撃の支配! だがそれは魔力が体の回路を通ればの話だろぉ!?」
既の所で見切って避ける、が、詰将棋のようなものだ。
数手先を、エイプモンキーは読んでいる。あえて避けさせて、致命打までの道に追い立ててゆく。
「だったら魔力なんぞ消してやらァ! どうだ想像できたか!? テメェの力がどれだけクソ雑魚でこのミーがどれだけ強いかわかったかぁぁぁぁぁ!」
回避が間に合わない。
満を持して、両手を組んだエイプモンキーは、狂気の笑顔と共に鉄槌を振り下ろした。
両腕を交差させる。
その破壊を、受け止めんと。
「無駄な抵抗ォーーーー!!! ウッキーーー!!!」
ゴグッ、と鈍い音が響いた。
おおよそ、人体から響いてはいけない、死の音。
ズンと両足がめり込んで、花の足場を深く揺らした。
「そうだ、これこそがエイプモンキー! これこそがミー! ミーの想像力に勝てるものなど居ないウッキー!!」
「そうか」
声がする。
叩き潰してやった筈の男の声だ。
「…………は?」
「じゃあ、次はおれの番だな」
男の体を巡る魔術回路。
魔力を運動エネルギーとして出力し、変換し、支配するシステム。
ならば。
逆だって可能だろう。
エイプモンキーは強大なオブリビオンだ。
振るう力もまた、絶対的だ。
比類なき怪力がもたらすエネルギーはどれほどになるだろう。
例えばそれは。
己が作り出した、魔力を消失させるシステムを上回るほど。
圧倒的で、暴力的な破壊に違いない。
、、、
だから。
「――――壊鍵」
足で踏み込むその“衝撃”すら、体をつたい、心臓を経由し、収束して拳に伝う。
足場となっていた花は、揺らがなかった。そんな僅かな無駄すら許さない。
たった一瞬、たった一度、回路が動きさえすれば。
自らに通じる全ての衝撃を、一点に集めることが出来る。
収束し、解き放つことが出来る。
「起動」
◆
猟兵とは。
絶望の未来を覆す為に戦う者だ。
、、、、、、、、、、
決定した悲劇を防ぐ為に、数多の思考を重ねる者だ。
予知した者は。
自らが知り得たにもかかわらず、己の手では解決できないから。
仲間に解決を委ねる、その道筋を試行錯誤する。
幾度も、何度も、重ね続ける。
それは例えば、分たれるはずだった双子の少女たちの運命。
それは例えば、虐殺の末に全てを奪われるはずだった鍛冶師の村の宿命。
答えなき答えを見つけるのに、どれほどの想像が必要だろう。
そうして受け取ったバトンを手にした者たちは。
自分に何が出来るかを考える。
どうすれば、示された運命を変えられるかを考える。
己の力をどう使って、どう挑むかを。
託された想いを創造するのに、どれだけの挑戦が必要だろう。
ずっとだ。
ずっとそうしてきた。
元より、その猿面に挑む存在は。
「き、貴様らァアアアアアアアアアアアアアア!」
「自覚がないなら教えてやる。今お前が相手をしているおれ達こそが――――」
、、、、、、、
そうぞうりょくの、化物だ。
愚直に、誠実に。
的確に、適切に。
ただ一発に全てを込めて。
右拳が放たれた。
避けられる訳がない。
避けられる筈もない。
だってこいつは想像してないのだ。
いつだって、自分が凌駕されることなど。
「消えろ――――猿知恵」
顔面を打ち抜く。猿面を吹き飛ばす。
想像で創造された、機械仕掛けの仕組みごと。
一拍おいて、戦いの結末を告げるように、足場となっていた花が吹雪となって、戦場を染め上げた。
色彩が舞う世界に残っていたのは――――名前なき灰色、ただ一人。
大成功
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