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バトルオブフラワーズ⑦〜ヘヴィメタルを打ち砕け！

作者：秋葉シュンイチ

●轟く爆音
　そのアルパカ怪人は完全にヘヴィメタルの信奉者であるようだった。ヘヴィメタルの轟音に乗せて勇壮な歌詞の歌を歌いながら、「システムフラワーズ」に至る「ザ・ステージ」のなかの「サウンドステージ」の一角を占拠していた。耳がおかしくなりそうなほどの爆音を轟かせながら、アルパカ怪人のオンステージが繰り広げられているのである。

●ヘヴィメタルを打ち砕け！
「歌を歌える猟兵はちょっとこっちに来てくれたまえ」
　グリモア猟兵である赤城・傀（人鬼・f02857）はグリモアベースで猟兵に呼びかけた。
「キマイラフューチャーがいま、大変なことになっているということは皆々承知のこと思う。システムフラワーズへの到達が我々の目的だが、そこに至るまでには、障害も多い」
　傀は真剣な表情で説明を続ける。
「今回、皆に攻略してもらいたいのは、そのシステムフラワーズへの道中のサウンドステージだ。そこにはヘヴィメタルかぶれのアルパカ怪人が居座り、轟音を撒き散らしている。そして、厄介なことにこの戦場には『パッショネイトソング』というルールが有る」
　そこで言葉を区切った傀は、少し苦い表情を浮かべた。
「この戦場では常に『自分自身を奮い立たせる歌』を歌い続けていないと、怪人にダメージを与えることが出来ないのだ。怪人の発する爆音の重金属音楽に負けないくらいに強い思いを……そうだな、『秘密にしている事をカミングアウト』したり『恋人への告白を歌にして捧げる』歌などは効果が高いだろうね。そういう歌を歌いながら戦闘をする――だから、歌を歌える猟兵の力を借りたいのだ」
　ヘヴィメタルの爆音に負けずに己を奮い立たせる歌を歌いながら戦闘する――なかなかに厄介そうだということが、猟兵にも伝わったようだ。
　だがそこで、傀は不敵な笑みを浮かべてみせた。
「だがまぁ、怪人の奏でる音楽は、ただたた煩いだけのものだよ。君たちの強い思いが乗せられた歌の前では、そんなものは無力だ。重金属を魂のこもった歌で、打ち砕いてみせてくれ！」

第1章 ボス戦 『怪人アルパカマッスル』

POW   :    ポージング 自身の【肉体美の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。 SPD   :    鋼の筋肉 全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。 WIZ   :    つぶらな瞳 【つぶらな瞳で見つめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞳から放たれるビーム】で攻撃する。 イラスト：ヤマトイヌル 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●相対するは、恨み節
　グリモアの力で、転送されてきた猟兵たち。戦場には怪人の出す轟音が響き、音に弱い者ならば、それだけで辟易してしまうほどだった。
「ここがサウンドステージか……にしても、たしかに煩いね」
アルファ・ユニ（愛染のレコーディングエンジニア・f07535）はさっそく、バンシーを呼び出した。今回のユニの作戦は、バンシーに攻撃を一任するというものだった。普段から酷使しているユニの精霊。さぞ、恨みつらみが溜まっていることだろう。
「さぁ、ユニに対しての恨み辛み全部吐き出せ、バンシー！」
　呼び出されたバンシーはさっそく、絶唱ともいえる金切声で歌い始めた。その内容は、今までにユニから受けた酷い仕打ちの諸々。
　サラウンドの大合唱、史上最強最悪の絶叫哀歌。

「ぐぁ、やめろぉ！　俺のメタルを邪魔するなぁ！」
　怪人の奏でる重金属音楽を上回るボリュームで叫ばれる悲哀の歌に、アルパカマッスルは苦悶の表情を浮かべた。鼓膜と精神をだいぶやられている様子だった。
「よし。ユニも殴っておこう」
　UDCの国歌で軽く自分を鼓舞したユニのトンファーでの打撃も加わる。9割方はバンシーの与えたダメージだが、アルパカマッスルはかなり弱った様子だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●気合と根性、愛を乗せて
「シャルを取り巻く全ての人達が居るから、シャルは絶対に負けない！」
　戦場へと足を踏み入れた清川・シャル（ピュアアイビー・f01440）は、早速行動に移った。インカムとスピーカーを召喚すると、ボリュームを最大にして、己を鼓舞する歌を歌い始める。
「ぬおぉ！　俺のメタルを邪魔するなぁ！」
　アルパカマッスルは音楽邪魔されたことに怒り狂い、その瞳からビームを放って、シャルに攻撃を仕掛けた。
「そんな攻撃、当たりませんよ！」
　飛んでくるビームを、厚底高下駄である櫻鬼に仕込んだ魔力のジェットでもってダッシュ加速して華麗に回避しながら。アルパカマッスルに急接近していく。真正面から飛来するビームをチェーンソードモードにした金棒、そーちゃんで弾き返しすと、そのままの勢いで投擲する。
「ぐおっ！？」
　金棒を真正面から食らったアルパカマッスルは態勢を大きく崩す。
「いまです!」
　己を鼓舞する歌も最高潮、サビに差し掛かる。
　シャルはメリケンの桜雅乱舞で殴りつけ、櫻鬼で蹴り上げ、時たま放たれる怪人の攻撃を逆に合気道の要領で投げ返す。
「決め手とは行かなくても致命傷くらいには！」

　歌が終わると、シャルは怪人から間合いをとり、一息入れる。その時には、アルパカマッスルはかなりの深手を負っていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●想いよ届け、爆音を奏で
「ぐ、ぐぐ……俺のメタルを邪魔するんじゃねぇ……！」
　猟兵たちの攻撃にだいぶ弱った様子のアルパカマッスルだったが、相変わらずに爆音を鳴らし続けていた。この戦場の特性である『パッショネイトソング』は怪人にも作用する。己を鼓舞し続ける限りは、爆音は響き続けるのだ。

　【SWEET SOUNDZ】の森園・巧（アースジャパン人間のサンソルの破戒僧・f03705）とフローライト・ルチレイテッド（重なり合う音の色・f02666）は目配せし、タイミングを図りながら戦場に躍り出た。
「歌声よ、あの空に届け！　悲しくても笑え、大切なあなたを、笑って見送る為に！」
　フローライトの言葉をキッカケにして、彼のギター＆ヴォーカル、巧のベース＆コーラス、そして、フローライトのユーベルコード『星標～蛍火』で召喚された不足パートを補う、楽器を演奏する妖精たち。
「サポートは任されたよ」
　巧は浮遊型スピーカー「MB-2012」を展開すると、怪人の周りを巡らせるように配置する。
「何をぅ――！？」
　それに気を取られ、一瞬怪人の放つ音圧が下がる。

　戦いの分かれ目はそこだった。

　フローライトのダブルネックギターの奏でる旋律とそれを確かな技術で支える巧のベース。音にメリハリをつけつつも、ふたりの猟兵の演奏の邪魔にはならないサポートの妖精たち――一瞬のあとには、怪人が今まで放っていた爆音がすかすかに感じられるほどの、濃密な音の弾幕が怪人に叩き込まれる！！
「ぐおぉ、や、やめろぉ！」
　アルパカマッスルは瞳からビームを乱射して、猟兵たちの演奏を阻害しようとする――が、それは無駄なことだった。フローライトと巧は音に身を任せながら、完璧なステップで怪人の放った攻撃を回避していく。
　怪人が今まで轟かせていたヘヴィメタルのサウンドは、たしかに一聴すればメタルだった。が、それは上辺をなぞっただけの薄っぺらいものだということが、ふたりの演奏で完全に露呈した――本物のロックはこういうものだ、と猟兵たちの奏でるサウンドは、物語る以上に雄弁にそれを示してみせたのだ。
「フローライト！　決めよう！」
　巧の目配せに、フローライトは頷く。そして、演奏は最高潮に達した。
『I'm a smiling　遥か遠い空へ届くように♪　 I'm a smiling　笑ってさ　見送るよ　歌声で♪』
　巧のユーベルコード『ロックショウ』で強化されたフローライトのユーベルコード『笑顔の葬列-Smiling funeral-』。

100を超える虹の光が一斉に放たれ、怪人を討つ！

「お、俺のメタルが負け――ぐあぁぁぁ！！」
　フローライトと巧の連携したユーベルコードを食らったアルパカマッスルは、断末魔を上げて爆発四散した。
「いつかあなたに貰ったよ　大切な宝物
だからぼくは歌うんだ　差し込んだ　光見上げ
空を彩る　虹の色　雨上がり　煌いて
思い出歌う　歌声は　空の果てへ　流れていく」
　サビの続きを歌い上げたフローライトと巧は、アウトロを演奏して、演奏を終了した。そして、戦いに参加した猟兵たちにむけて、一礼する。
「最善のステージ……だったかな？」
「ええ。最高だったよ」
　フローライトと巧はハイタッチをひとつして、お互いを称える。

　重金属はこうして、見事に砕かれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月14日