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バトルオブフラワーズ③〜スクラップとリッチ軍団

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●残骸とマニーギャザラーズ
『こんな残骸、俺の金庫頭に比べたら鉄くずだな』
 足元の兵器だった残骸を拾い上げ、金庫が吐き捨てる。
『軽い軽い。俺のおサイフ頭の方がずっしりだ』
 サイフ頭が残骸を放り投げる。
『所詮残骸……私のジュエリー頭の美しさには敵わない』
 ジュエリー頭に至っては、残骸を拾おうともしない。
 そんな、何かリッチな感じの怪人トリオが何部隊も集まり、『ザ・ステージ』の1つに大軍団を作ろうとしていた。

●タワーダイセンリャク
「キマイラフューチャーの戦況だけど、順調だと思う。この調子なら、システム・フラワーズへの道が拓くのも遠くない」
 だけれども。
 その言葉を口にして、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は集まった猟兵達に話の続きを始めた。
「それでも、また『ザ・ステージ』に行ってきて欲しいんだ。怪人達も『ザ・ステージ』を奪い返そうとしてくるからね」
 もし1つでも奪い返されてしまえば、システム・フラワーズへの道は再び閉ざされてしまう。
 安定して攻め込む為には、『ザ・ステージ』を取り戻して終わりではなく、取り戻した状態を維持する必要もあるのだ。
「今回行って貰いたいのは、ザ・ビルドステージの1つだ。そこに、怪人の大軍団が攻め寄せてくると判った」
 転移先のエリアでは、『タワーダイセンリャク』という特殊ルールが適用される。
 その空間では、猟兵と言えど本来の戦闘力を発揮できない。
「普通に戦うと碌に攻撃が通らないと思った方がいい。代わりに使えるのが、そこかしこに積み上げられいる兵器の残骸だよ」
 それらを使って作った『防衛施設』ならば、怪人達にダメージを与えられる。
「時間的に、作れる防衛施設は1人1つ。動かせるものより、動かせないものを作った方が有利になるみたいだ」
 移動可能な防衛施設を作ると、どうしても耐久面で脆くなる。
 もしも防衛施設を破壊されても空間から弾き出されたりはしないが、その後の戦果は望めないだろう。
「エリアにある残骸は、あの世界では古い兵器の部類のものらしい。けれど、数と種類は豊富だから、皆のアイディア次第で色々な防衛施設が作れる筈だよ」
 私からすると結構な技術に思えるのだけれど、と付け足してルシルは掌からグリモアを出そうと――。
「ああ、あと。攻めてくる怪人軍団だけど、金庫怪人とおサイフ怪人とジュエリー怪人のトリオ。通称、マニーギャザラーズ、だよ」
 リッチ軍団に金が全てではないと教えてやるといい。
 そう猟兵達に伝えると、ルシルは今度こそ転移の準備を始めた。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。
 戦力がマイナスになった戦場も多いですが、放っておくとまた戻ってしまいますので、今回の戦争では戦力がマイナスになった戦場も、継続的に攻略が必要です。
 と言う事で、1つお届けします。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結する、バトルオブフラワーズ⑧の戦場のシナリオとなります。
 『システム・フラワーズ』の周囲を守る6つの『ザ・ステージ』の1つ、ザ・ビルドステージが戦場です。

●タワーダイセンリャク
 今回の戦場には『タワーダイセンリャク』という特殊戦闘ルールが適用されます。
 通常の戦闘行動では、戦果は出せません。

 戦場には、様々な兵器の残骸が積みあがっています。
 これらの兵器の残骸から、『防衛施設』を作成して頂きます。
 どんな防衛施設を作るは、自由です。プレイングのアイディア次第です。
 トンでも施設や捏造、どんと来い。(但し、使える残骸の技術水準は現実世界の第二次大戦以前程度ですので、あんまりにもオーバーテクノロジー気味だとマスタリング入るかも知れません)

 また、作成できる『防衛施設』は、1人1つまでです。
 『防衛施設』は基本的に『移動不可』で作成するのが有利です。
 移動できる施設も作れますが、耐久力が大幅に低下してしまいます。ご注意下さい。

 作成した『防衛施設』を使って『マニーギャザラーズ』の大軍団を迎撃すれば成功となります。
 どんな施設を作るのか。作った施設をどう使うのか。
 その辺りがプレイングにあると良いかと思います。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『マニーギャザラーズ』

POW   :    金庫怪人・ウェポン
【金庫兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    おサイフ怪人・ジェノサイド
【おサイフ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    ジュエリー怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ジュエリー】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イリーツァ・ウーツェ
【POW】
足止めしつつ攻撃する施設の作成か。
兵器は大凡金属製。金属もまた大地に属する物。
ならばこの技が使えるだろう。
防衛施設を作成し、UCを使って強化。
施設タイプは防壁。
遠距離用には大型のグレネードランチャー。
近距離用にはマシンガンの砲台を数門設置。
弾丸は周囲の残骸からUCを使用して作成。
できる限り、相手の足を遅くするためにも、
威圧を重視しつつ、運用していきたい所だな。
(恐怖を与える)



●大地と鉄の支配者
「こんなモノも見つかるとはな」
 板状の鉄材を中心に組み上げた鉄臭い防壁の中で、イリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)は、窓から外を覗いていた。
 目の高さに組み込んだのは、ガラスの嵌った鉄板。恐らくは、装甲車のドア部分。
 UDCアースでタクシードライバーを生業とするイリーツァがそれを見つけたのも、ある意味、必然な偶然と言える。
『防壁を作ったか!』
『そんな残骸を積んだだけのもの、直ぐに崩してやる!』
 防壁の向こうから聞こえる声。
「さて……この技なら使える筈だが」
 ガラスの向こうに迫り来る怪人の群れが見えても、イリーツァは慌てる事無く、防壁の内側に愛用の魔杖“竜宮”を突き立てた。

「天に星、奈落に九泉、間の坤は頭を垂れよ」

 紡ぐ言葉は、大地と、それに類する物を支配するもの。謂わば言霊。
 兵器の残骸は、その大部分に金属が使われている。
 そして金属は多くが地中にて生まれる――即ち『大地に類するもの』である筈だ。
 イリーツァがそうと決めて業を振るうのなら竜宮を通じた【坤号自在・天支玄壌】の力が、残骸に及ばぬ筈がない。
『食らえ、金庫ヘッド!』
 先頭の金庫怪人が頭から突っ込んで来るのを見やり、イリーツァは杖から手を放して防壁の間に仕込んだ旧式のマシンガンの引鉄を引いた。
 ガッガッガッ!
 響く銃声。金庫頭を撃ち抜かれた金庫怪人が、吹っ飛ばされる。
 イリーツァが『天支玄壌』の力で残骸から作り上げた弾丸は、弾芯を真鍮ではなく鋼で覆った硬度の高いフルメタルジャケット弾のようなものになっていた。
 それを放つ砲身も、見た目は古い機関銃だが内側の砲金の純度が高められている。
「連射速度は遅めだが、行けるな」
 防壁の隙間から弾丸の効果を確認したイリーツァは、両手で機関銃の引鉄を引いた。
 ガッガッガッガッ!
『ぎゃぁ! 小銭たっぷりのサイフ頭がぁ!』
『宝石頭が撃ち抜かれるだとー!?』
 重たい銃声が響く度に、マニーギャザラーズの怪人達が弾丸に撃ち抜かれて次々と倒れていく。
『くっ。迂闊に近寄るな! 死ぬぞ!』
「距離を取るのは想定内だ」
 マニーギャザラーズたちの間に恐怖が走りつつあるのを見逃さず、イリーツァは頭上に設置した擲弾銃の引鉄を引いた。
 放たれた擲弾が弧を描いて、防壁から距離を取る怪人達の間に着弾する。カッと光が溢れて、爆発が数体の怪人達を蹴散らした。
『よしっ! ここは後回しだ』
『そうだな、他のエリアに行こう』
『戦略的撤退と言うやつだな!』
 まさに蜘蛛の子を散らすように、マネーギャザラーズはイリーツァの防壁の前から撤退していく。
「……ま、戻ってこないとも限らんか」
 それを見送りながら、硝煙を上げる防壁の中でイリーツァは淡々と呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ
【GOATia】
なんというジャラジャラリッチ怪人!
でもダイヤもお金もコンコンで出てくるから
あんまり価値って無いわよね…よもぎちゃん、目が¥になってる…?

さて、アタシが作るのは「広告塔」よ!
ブランドの服の広告を外周にぐるり貼り付け
きらきらとした照明で目立ちつつCMソングを流す…
そう、怪人達の興味を引きおびき寄せ集める塔よ

塔の周りには試供品として
怪人の嗜好に合わせ金銀細工を豪華にあしらった衣装を無料配布してるわ!
…趣味悪い気がするけれど作戦よ作戦
この服は糊じゃなくて着火剤を
金銀は火薬を薄い金銀の紙で覆った物を使用してるのよ
着れば大惨事よ

攻撃はせずとも
引き付けと服が仲間との連携を生むの
後は任せたわ!


ショコラ・リング
【GOATia】の皆さんと参加

コンコンを死守するためにもここは負けられませんね!

ボクはGOATia防衛施設の一端として、ワイヤーと射出機構をかき集めてワイヤート塔ラップを作るのですよ
見えやすく移動阻害を含めたダミーワイヤーと、つや消しの見えにくい振れるとトラップ作動用のワイヤーを張るのです
トラップの内容は矢が飛んでくるものでございますね
これぞ端くれではありますが、狩人魂なのです
シンプルですが侵攻し辛く逃がさないそんなトラップで、相手の動きを阻害して皆様のトラップの底上げでございます

み、皆様のトラップ派手派手で凄いでございますね
(多分吹っ飛んでる怪人を見ながら)


クシナ・イリオム
アドリブ歓迎
【GOATia】
コンコンができなくなるとキマフュ製品を使いまくってるうちの旅団としては死活問題なんだよね。
自分で言うのもなんだけど私のご飯は高カロリーの割に味気ないから自炊は避けたい……。

火炎放射器はあると思うから可能な限り集め、
魔法罠即席設計で作成するトラップに組み込んで敵を火柱……リダン風に言うなら炎の塔にするよ。
麻仁が飛ばす不発弾が誘爆してもいいようにトラップは地中に埋め込んでおこう。

ショコラが流れ弾に当たりそうだったら私が掴んで空を飛ぼうかな?
小柄とはいえ妖精とキマイラだから服を持ってぶら下げる感じになりそう。

私本体が暇な時は矢とか燃料とか消耗品の補充でもやっとこ。


四方城・麻仁
チーム【GOATia】(計4名)
コンコンが無くなるとキマフュのブティックが軒並み潰れるってことじゃ…?
守護らねば…。

やっぱり攻城兵器といったら投石器、だよね。
兵器の残骸を使って、高台に何でも発射できる巨大なスリングショット……そう、カタパル塔を作成。
飛ばすのは岩や兵器の残骸。
不発弾とか落ちていたら丁度イイかもね。
それらを念動力(UC)で装填。MAXまで引き絞ってー……発射!

リダンさんが集めてくれてる敵や、みんなが討ち漏らした敵を
【第六感】で狙うよ。
大丈夫……精度いいから!……多分。

よくみたらコイツら超リッチじゃん…!
ふははは! 金目のもの置いていけー!



●第1の塔――広告塔
 歌が聞こえる。
 ~~♪
『む? むむ?』
『お前も聞こえたか』
 兵器の残骸を踏み越え、せっせと侵略していたマニーギャザラーズの耳に、どこからか軽快な音楽が聞こえてきた。
 耳に馴染みのある音楽と言うわけでもない。けれど。
『何処かで聞いたような……妙に気になる音楽だな』
『どこから聞こえてくるんだ?』
 ふらふらと、音の聞こえてくる方に引き寄せられていくマニ―ギャザラーズ達。

 その先に見えてきたのは、『GOATia』と言うロゴとブランド服の広告画が描かれたキラキラ輝く大きな看板であった。

 それこそが、ファッションブランド『GOATia』のデザイナーであるリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)の作り上げた防衛施設――広告塔である。
 兵器の残骸を柱上に組み合わせた上に頂くは、鉄板を繋ぎ合わせた看板。
 ブランドの服の広告を貼り付けた看板には残骸を削った鉄粉を重ね、更に遠くからも目立つように下からライトを当てて輝かせている。
 マニーギャザラーズを引き寄せていた音楽も、ブランドのCMソングだ。
「ハロー、ジャラジャラリッチさん達。ブランド衣装の無料配布してるんだけど、ちょっと寄ってかない」
 広告塔の根元に立ったリダンは、音に引き寄せられた怪人達を呼びかける。
 宇宙山羊族独特の星空を封じたような角は、広告塔と一緒に照明を浴びてキラキラと輝いていた。
『ブランド衣装だと?』
『果たして、そこはかとなくリッチな俺たちに見合うものかな?』
『こ、これは!』
 案山子の様に組んだ残骸に着せて飾られていた衣装は、宝石を合わせた金銀細工の飾りを随所にあしらった、キラッキラのラメスーツであった。
「どう? あなた達に合わせて誂えたデザインよ」
 スーツに群がり繁々と見つめる怪人達に、リダンは声をかける。
「着ていいわよ。こんな『豪華な衣装』を『着こなせる』のは『リッチなあなた達』以外にはいないんじゃない?」
『それもそうだな……ちょっと着てみるか』
『まあ待て金庫怪人。ここはこのおサイフ怪人が』
『いや、ジュエリー怪人が着てやろう』
 リダンの言葉ですっかりその気になった怪人達が、ラメスーツに手を伸ばす。
(「……正直、趣味悪い気がするけれど、作戦よ作戦」)
 時に特定の嗜好にあわせるのも、デザイナーの匙加減。
 看板に鉄粉を重ねたのは、ラメスーツに印象を寄せる狙い。響かせるCMソングも、怪人達にかける言葉も、彼らの精神に暗示をかける為。
 デザイナーとして、暗示師として。全ては衣装を着る様にマニーギャザラーズを操るための、リダンの手練手管。
 後は最後の仕上げを残すのみ。
『おい見ろ、あっちにも何か塔があるぞ』
 特製スーツを着てすっかり気を良くしたマニーギャザラーズの1体が、視線の先に聳えている『別の塔』に気づいた。
『あれもブランドのか?』
「行けば判るわ」
 問われたリダンは敢えて答えを濁しながら、広告塔の照明をこっそり操作する。
 看板に向けていた光を、一度真っ直ぐ上空へ向けてから広告塔の周囲を照らす向きに変える動きは、仲間への合図。
(「仕込みは充分。後は任せたわ! 皆!」)

●第2第3の塔――ワイヤートラップと炎の塔
(「! 合図が来ました!」)
 自らが作った防衛施設の中でリンダの光の合図を見たショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)は、今立っている床の端を、ガツンッと蹴り飛ばした。
 止め具が外れて、抑えるものがなくなった床を、その下に仕込んでいた大きなバネが一気に持ち上げる。
 それと同時に、床に括り付けられていた細長い鉄線――ワイヤーも持ち上がった。その反対側は、周囲の瓦礫の奥深くに括りつけられている。
 ショコラのいる塔を中心として、蜘蛛の巣が斜めになった様な形でワイヤーが張り巡らされた。
『ここにあるブランド商品はなんだ? 俺がもらったぁ!』
 そこに、先の広告塔でスーツにありつけなかった金庫怪人が一目散に走ってきて。
『おうっ!?』
 見え見えのワイヤーに足を引っ掛けて、派手に転倒した怪人の体が、転んだ先にあった別のワイヤーに引っかかって、押し潰す。

 ヒュッ!

 次の瞬間、風を斬る小さな音が鳴り、飛来した矢が金庫怪人の膝に突き刺さった。
『膝に矢を受けてしまったか……』
『あいつはもうダメだな』
 哀れみを込めて呟きながら、そこから一歩下がったジュエリー怪人の足に、クンッと何かが引っかかる感覚が伝わった。
 ヒュッ!
『ぐはっ!?』
 気づいた直後、また別の矢が、ジュエリー怪人に突き刺さる。
 ショコラが仕込んだワイヤーは2種類。
 1つは、何も見た目に関わる処理をしていないワイヤー。移動阻害と、本命を隠すためのダミーの役割。
 もう1つが、今しがたジュエリー怪人が踏んづけた、つや消しして迷彩処理を施したトラップ作動用の本命のワイヤーである。
(「……ダミーにいきなり引っかかるとは、思いませんでしたけれど」)
 胸中で呟きながら、ショコラは空いた弓に残骸を削って作った矢を仕込み直す。
 ショコラが作った施設は、ワイヤーと射出機構をかき集めて作った、ワイヤートラップ塔とでも言うべきもの。
 塔の中にはワイヤーと連動して、番えた矢を放つトラップが幾つも仕込まれている。弓の罠はシンプルであるが故に、ワイヤーが切れない限り、矢を再装填すれば使い続ける事も可能という優れものだ。
『くっ、あの塔は罠か!』
 流石に怪人達も異変に気づいて逃げようとするが、更に外に広がっていたワイヤーを踏んだその背中に、矢が突き刺さる。
(「端くれではありますが、これぞ狩人魂なのです」)
 トラップに弓矢を選んだショコラは、とある森の聖域を守護する一族の中でも群を抜く弓の使い手。
 狩人にして森の守護者の防衛施設は、侵攻を止め、且つ逃がさない為のモノ。

「感応系構築……効果体設置…………トラップ起動」

 更にトラップ塔の中では、クシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)が自分の仕掛けの最後の仕上げにかかっていた。
 【魔法罠即席設計】、発動。
 召喚された『魔法で作ったトラップ』が現れた先は、怪人達には決して見えない所。クシナが先ほど埋めていた兵器のすぐ近く。
 そして、その上をマニーギャザラーズの怪人が通った瞬間。
 ゴウッ!
『うわちゃちゃちゃちゃっ!?』
 その足元から突如立ち昇った炎の柱が、おサイフ怪人の全身を包み込んでいた。
 クシナが残骸に埋めていた兵器は、火炎放射器の類だ。召喚した魔法トラップは、重みに反応して火炎放射器を作動させる類のものだった。
 ショコラのワイヤートラップを超えても、その先は炎のトラップ地帯だ。
『この金庫は耐火性……でも体は熱い!!!』
『ももも燃えてるぅぅぅぅぅ』
 あっちこっちから火の手が上がり、マニーギャザラーズの悲鳴が響きだす。
「これはまた、盛大に引っかかってくれてるね。リダン風に言うなら炎の塔、かな」
 様子を伺うついでに追加の矢を拾いに、クシナがトラップ塔から顔を出す。
 その表情は普段の無表情と殆ど変わっていなかったが、口の端はほんの僅か、笑むような形に傾いていた。
「――おや?」
 だが、それもクシナが首を傾げると同時に消える。
 視線の先では、炎が立ち昇ると同時にジュエリー怪人がドカンと爆発していた。
「クシナ様のトラップ、派手派手で凄いでございますね」
「いや、私、爆薬は仕込んでないよ。あれはリダンだね。爆発してるの、あの衣装を着てるのだけだし」
 目を丸くするショコラに、追加の矢を持って戻ってきたクシナが告げる。
 そう。リダンが無償配布していたラメスーツ。
 アレには糊に混ぜた燃焼剤やら、金銀細工に仕込んだ火薬やらが混ざっていた。
 言わば、爆弾を着ているようなものだ。どれも、兵器の残骸の中から抽出したものだから、怪人達にも効いているというわけである。
「コンコンができなくなると、キマイラフュチャーの製品を使いまくってるうちの旅団としては死活問題だからね。皆、気合いも入れるよ」
「そうですね。コンコンを死守するためにも、ここは負けられませんね!」
 クシナの言葉に、ショコラも矢を込めなおしながら頷く。
「自分で言うのはなんだけど、自炊は避けたいんだよね。私のご飯は、高カロリーの割に味気ないから」
 クシナには個人的な事情もありそうだが、それはそれ。
「それに、もっと派手なのがそろそろ飛んでくるんじゃないかな?」
 クシナがそう告げた直後だった。
 猛スピードで飛んで来た戦闘機の翼らしきものが、ズガァンッと重たい音が響かせ、火炎放射機地帯の外に出た怪人達に直撃したのは。
「麻仁さんも、張り切ってますね」
 ショコラがひょこりとトラップ塔の天辺から顔を出すと、高台の向こうから今度はタイヤを鉄柱で繋げたものが飛んできていた。

●第4の塔――カタパル塔
「うんうん。やっぱり攻城兵器といったら投石器、だよね」
 矢が飛び炎が立ち昇る場所から少し離れた高台から、ぶん投げたタイヤが狙い通りに怪人達が蹴散らしたのを高台から見下ろして、四方城・麻仁(サイキッカーJK・f14117)が満足げに頷く。
「どちらかと言うと、城を作ったのアタシ達よね?」
 その声に麻仁が振り向くと、リダンの姿。広告塔から避難して来たのだ。
「それがよもぎちゃんの作ったやつね」
「ええ。何でも発射できる巨大なスリングショット……カタパル塔よ」
 頷く麻仁がいるその場所は、戦車と思しき残骸など、大きく硬く丈夫そうな残骸を積んだ塔の上だった。
 固めた土台の上にあるのが投石器。鉄骨をYの字に組み合わせたものにギヤベルトなどのゴム材を繋ぎ合わせたものを結んだシンプルな作りだ。
 平たく言えば巨大なパチンコと言える。
 だが、その威力は中に凄まじかった。高所からの攻撃は、放たれる怪人達にしてみれば小さな隕石のようなものだ。
「コンコンが無くなるとキマフュのブティックが軒並み潰れるかもってこと……」
 錆び付いたドラム缶が、ぽーんと宙を舞い、金庫怪人が吹っ飛ぶ。
「なんとしても、守護らねば……いっけぇーっ!」
 次は岩ほどの鉄塊が、ジュエリー怪人の頭を砕いた。
 カタパル塔の要たる砲弾代わりを操るのは、麻仁の意志と心の力による念動力。
「リダンさんの照明があるから、ここからでも狙い易いし」
 故にカタパル塔からの攻撃は、1発放つ度にその精度が上がっていた。
 投げたものの大凡の重さと大きさ、投げて描いた軌道から、麻仁は自らが作った兵器のクセを学習していた。敵の動きは第六感で読んでいる。
『うわーっ!?』
 ズガァンッ!
『よ、避け――ぐわっ!』
 ズガァンッ!
 麻仁の眼下で投げた残骸が砕け散るたびに、マニーギャザラーズも数体吹っ飛んで、宝石の欠片やら、おサイフ頭の中の小銭やら金庫の中身やらが飛び散っていく。
「……。よく見たらアイツら、超リッチじゃん……!」
「あ、うん。でも、ここだとダイヤもお金もコンコンで出てくるから、あんまり価値って無いわよね?」
(「よもぎちゃん、目が¥になってる…?」)
 赤くなった麻仁の瞳の中に¥のマークが見えた気がして、リダンがそっと告げる。
「ふ……ふははは! 金目のもの置いていけー!」
 だが、聞こえているのかいないのか。
 念動力の勢いを更に増した麻仁は戦車の残骸なんてものをカタパル塔にセットして、眼下へぽーんとぶん投げた。
 普段のクールを気取って落ち着いている麻仁の面影は、あんまりない。
「まだいるわね……なら、取って置きのこれ!」
 麻仁が念動力で持ち上げたのは、かなり大きな不発弾。
「動……けぇーっ!」
 弾が重ければ、ゴムを引くのに必要な力も重くなる。麻仁は強く固めた意志でそれを引ききって――不発弾が放物線を描いて飛んでった。
「あんな大きな不発弾、下の2人が巻き込まれないと良いんだけど」
「大丈夫……しょこりんの塔からは離れた所を狙ったから……」
 ちょっと不安そうなリダンに、流石に息を切らせた麻仁が返す。

 そんな会話を交わした2人から離れた所で、なんだか凄まじい大爆発が起きた。

 世の中には色々な偶然が起こり得るものである。
 確かに麻仁は、ショコラのトラップ塔とも、クシナの炎の塔地帯とも、外れた場所を狙って不発弾を投げた。
 そこが、マニーギャザラーズの残りが多く集まっていたからでもある。
 丁度その辺りの残骸の中に、別の不発弾が埋まっていて、それが誘爆するなんて。
 膨れ上がる光と炎。耳を劈く爆発音。立ち昇るはキノコ雲。不発弾2発分の爆発は、クシナが補充していた火炎放射器の燃料も巻き込んで。
 誰もの予想を超える大きな爆発がエリアを揺るがせた。
「流れ弾くらいは来るかもとは思ってたけど……」
 上空から爆発を見やり、クシナが目を瞬かせる。
「もっと派手派手があったとは、驚きでございます……!」
 そのすぐ下には、ショコラも驚きを露わに目を丸くしていた。
 小さいクシナの方がショコラの服を掴んで飛ぶという構図で、2人は爆発が起きる寸前にトラップ塔から避難していたのだ。
「……金目のものまで吹っ飛んじゃった……」
「コンコンが戻れば、出せるわよ」
 ショコラを連れたクシナが高台に降りると、大金星なのにちょっと残念そうな麻仁の背中に、リダンが呟いていた。
 4人の眼下に、動くものは誰も何も残っていなかった。

 GOATia――UDCアースの一角を拠点に活動しているブランドの、その名前の由来は悪魔の辞典。
 普段は悪魔とは程遠い緩い日々を送っているのだが、この日、そのブランド名は色々な意味でキマイラフューチャーに轟いたかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月12日


挿絵イラスト