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バトルオブフラワーズ④~トウガラシ・パラダイス~

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●到る処、赤き山あり
『ウム!実にいい赤色だ!!』
 獣の爪のように細く尖った、ルビーのように赤い実をオブリビオンたちが摘み取る。
『眩しいほどに赤い!素晴らしい!!』
 収穫カゴいっぱいに赤。赤。赤。こんもりと溢れんばかりに盛られたそれは、さながら火炎に包まれる山のようだった。
『あれだけの量があれば、食べきれないほどの料理ができるな!』
 実の零れ落ちそうなコンテナをゆっくりと運び、既に成人キマイラの腰あたりほどの高さにまで達した山の頂上でひっくり返す。
『想像しただけで胃が汗をかいてしまうね!』
 オブリビオンたちは喜びの色を一層強めた。目の奥を突き刺すほどに鮮やかなトウガラシの山を眺めながら。

●キマイラフューチャーの危機を救え
『皆さん、すでに聞いている人もいるかもしれないでありますが……』
 ノエラ・ビュイヤール(碧水のマジックナイト・f09610)が紙一枚を片手に猟兵たちへと声をかける。彼女はまた仕事を持ってきたのだ。
 しかし、今回は少しばかり様子が違っていた。
『キマイラフューチャーが、割れたのであります』
 一つの世界が割れた。それだけでもすでに異常事態であることは猟兵たちに伝わったことだろう。
 ノエラが言うにはこうだ。「割れた」と言っても、まだ破壊されたわけではなく、キマイラフューチャーのコア部分──いわゆる「システム・フラワーズ」と呼ばれている。──にオブリビオンの親玉の一人が侵入し、メンテナンスルートが開いたのだという。そして、このメンテナンスルートを通させまいと、オブリビオンたちが再び閉じようとしているというのだ。
 星の中枢に至ったオブリビオンを放っておけばどうなるかは、もはや想像に難くない。
『それで、そのコアに巣食う悪の親玉を倒さなければならなくったわけでありますが、
 今回自分からお願いするのは、その前哨戦といったところであります』

 ノエラは続ける。
『皆さんに行って頂くのは、キマイラフューチャにある、トウガラシ畑であります。
 ここでトウガラシの収穫をしているオブリビオンたちを一掃してほしいわけであります……が!』
 が!と同じタイミングで、立てていた人差し指をひとつ振る。以降に述べる内容が今回の重要なポイントであることを意味していた。
『今回の戦いでは、オブリビオンたちに少々特殊な力が働いているのであります。
 たった今言ったとおり、彼らはひたすらトウガラシの収穫をしているわけでありますが、
 収穫をしている間、なんと、彼らにはあらゆる攻撃が通用しないのであります!』
 特殊な力の理由はわかっていた。今回の戦闘の舞台は先述のメンテナンスルートへと至る途上、「シュウカクフードバトル」というフィールドにあるためだ。
『奴らにダメージを与えるためには、収穫を中断させればいい。
 しかし、力づくでは中断させることができない……。ならば、どうするか?
 シンプルであります。奴らの収穫したトウガラシを使った料理を作って食べさせればいいのであります!』
 幸い、かのオブリビオンたちは、トウガラシが大好きにして食欲も旺盛なようである。つまり、トウガラシを使った料理で注意を引けば、収穫の手が止まる。ひいては、彼らに攻撃が通る。ノエラが言ったのはこういうことであった。

『あくまで前哨戦でありますが、この結果が多かれ少なかれ今後の状況に関わってくる可能性もあります』
 一通りの説明を終えたノエラは、やや崩していた姿勢を正しながら言う。
『今回の戦いは特に失敗が許されないであります。キマイラの方々、いやキマイラフューチャーそのものの危機なのでありますから!』
 ノエラの拳に思わず力が入り、その中にあった紙がクシャッと音を立てる。
『……と、いうわけで皆さん、どうかよろしくお願いするであります』


比留川資源
 こんにちは。辛い料理系のフードフェスタは基本外さない比留川です。

 トウガラシを収穫しているオブリビオンたちを退治してください。

●勝利条件
 オブリビオン(炭水化物トリオ) 11体をすべて倒す。

●失敗条件
 オブリビオンに畑のトウガラシをすべて収穫される。

●特殊ルール「シュウカクフードバトル」
 オープニングに記載させていただいたとおり、オブリビオンがトウガラシを収穫している間は、一切の武器・攻撃系技能・ユーベルコードが通用しません。
 トウガラシを使った料理を作って収穫を中断させることによって、ダメージを与えることができるようになります。
 もし彼らが収穫を再開するようなことがあれば、当然攻撃無効化の効果は復活してしまいます。

 その他、以下の行動は絶対に良い結果にはなりませんのでご注意ください。
 オブリビオンによる収穫を中断させないまま、トウガラシで武器を即席で作って攻撃する。
 オブリビオンによる収穫を中断させる以外の方法で「シュウカクフードバトル」の効果を消そうとする。
 オブリビオンよりも先にトウガラシを収穫する。(上記の敗北条件につながります)
 トウガラシ畑そのものを消し去る。(上記の敗北条件につながります)
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第1章 集団戦 『炭水化物トリオ』

POW   :    炊きたてごはん怪人・ウェポン
【炊きたてごはん兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    焼きたてパン怪人・ジェノサイド
【焼きたてパン攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    蒸したて中華まん怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【蒸したて中華まん】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●働く汗って素晴らしい
 それは、世界の危機を忘れさせるほどにありふれた、牧歌的な風景だった。
 紺碧の下に広がるトウガラシ畑は、葉の緑に負けじとばかりに実の赤が主張し、さながら晩秋の山ような色彩を帯びている。その広さは、仮に人を隙間なく並べたならばおよそ500人ほどは収まるだろうか。
 その中に、汗を輝かせながら、希望を全身に溢れさせたような軽やかさで働く者たちの姿があった。トウガラシを摘んではコンテナに放り、コンテナを運んでは赤い山を作り、空になったコンテナを元の場所へ。そんなシンプルな循環が続いていた。
 すっかりリゾート化の進んだキマイラフューチャーの中にありて、人の手による仕事が、伝統的な活動がこうして受け継がれている。無機と自然の共存。彼らのようなエネルギッシュな人材がその鍵となり、この生産活動を支えていくのはどんなに素晴らしいことだろう。
 もっとも残念なことに、彼らがオブリビオンでなかったならば、という仮定が伴うのだが。
 いや本当に、なにナチュラルに楽しくやっているんだ君たちは。
アルフェミナ・オルフェナウス
えっ、やだ、なにこれ……トウガラシばっかりじゃないですか!
こんなにトウガラシを食べたら体に悪いんじゃ……あ、でも食べるのはオブリビオンだから良いのかな?
じゃあ、私辛いの苦手なんですけど、精一杯頑張ります!

えっと、じゃあ……トウガラシ油をまず作りましょう。
大鍋に油を注いで火にかけて、種を取ったトウガラシを油の中に入れていきます!
トウガラシが揚がったら、種と一緒にすり潰して、再び油に沈めていきます。
……とても辛そうです。

後はこの油で炒め物をするだけで激辛油炒めです!
油に沈んだトウガラシの粉も一緒にどうぞ!
「はい、どうぞ召し上がれ!」

攻撃出来るようになったら【エレメンタルスラッシュ】でなぎ払いです!



●赤い油は炎の味
「えっ、やだ、なにこれ……トウガラシばっかりじゃないですか!こんなに食べたら体に悪いんじゃ……」
 眼前に広がるトウガラシ畑、そして腰のあたりにまで形成されたトウガラシの山を見てアルフェミナ・オルフェナウス(heilige blatt・f09594)が吃驚するのも無理からぬ話だ。多くの人にとって、これほどまでにトウガラシの溢れる光景など見たことはないはずなのだから。とりわけ、彼女のように辛いものが苦手ならばなおのことである。
「……あ、でも食べるのはオブリビオンだから良いのかな?」
 少し萎縮はしたものの、そんな言葉を小さくこぼした途端いくばくか気分が軽くなった。今回は別に自分がこれらを口にするわけではない。口にすることとなるのは、向こうに見えるあのオブリビオンたちなのだ。
「ま、いっか。どちらにせよ、精一杯頑張ります!」
 自分に言い聞かせるよう、アルフェミナは両の拳に力を込め、脇を締めて気合いを入れる。二つにまとめた黒髪がふわりと揺れた。
 
 簡易的に作られた調理台の前に立ち、袖をまくって準備は万端。
 トウガラシの山からまず一掴みを拝借。いや、これだけあるのだしもう一掴み。せっかくだしもうちょっと。
 そうしてまな板に移された二掴み(と少し)のトウガラシ。アルフェミナはまずこれらの種取りに着手した。頭の部分を包丁で切り、実を指で押せば、黄色いゴマのような種がぽろぽろと飛び出す。これらは後ほど使うので、いったん端に。
 続いて登場したのは、小指ほどの高さにまで油が注がれた大きな鉄の鍋。すでによく熱され、ゆらゆらと流動しているのが見える。そこへ、トウガラシの身をざっと投入。油の中でトウガラシの一つ一つが艶やかに踊り、パチパチと弾ける音を立て始めた。
 一方、畑の中にあったオブリビオンたちの聴覚もその音を捉えていた。
「ん?あれは、何をしているんだ?」
 一斤の食パンのような形をした頭を持つ一体が、音のするほうを向いて声を発する。
「ああ、きっと頑張っている俺たちのために、誰かが何か作ってくれているんだろう」
 それに答えたのは、白米の盛られた茶碗のような頭を持つ別の一体。どうやら、彼らにアルフェミナの調理を妨害するような気は今のところないようだ。
「こんな感じかな……?」
 トウガラシを投入してからだいたい30ほどを数えた頃、アルフェミナが水分が抜けしわの寄った実を一旦取り出す。金色だった油は琥珀色へと変化し、香ばしさを漂わせていた。
 さて取り出したるトウガラシの次なる行方は、すり鉢の中。ここで、先に取っておいた種と実が再会を果たす。すりこぎを両の手で握ったアルフェミナは、すり鉢の中に山となった実と種を砕き、すり潰す。油を吸ったトウガラシとその種が、しんなりとした粉末に変貌を遂げていく。この粉末を先ほどの油に沈めれて混ぜれば、トウガラシ油の出来上がりである。
「……とても辛そうです」
 かき混ぜるほどに朱色に染まっていく油を見て小さく戦慄するアルフェミナ。出来そのものは上々であるものの、やはり自分では口にする気になれない様子だ。
 これを使って、あらかじめ用意しておいた豚のバラ肉と長ネギを炒める。菓子作りなら慣れたものである一方、料理の方はまだ修行中。しかし、そうはいっても調理器具の扱いには一切の迷いなく、皿に盛られた炒め物はこってりと光沢を放ち、力強い香りを微風に乗せた。

「おう、いい匂いがするじゃないか」
「味見なら任せてくれよ。我ら炭水化物トリオ、辛い物は大好きだ!」
 調理を終えて手を拭うアルフェミナの元へ、ちょうど3体のオブリビオンが寄ってきた。彼女の背筋が緊張でピンと伸びる。至って友好的に接触してきたとはいえ、彼らは紛うかたなき敵、世界に仇なす存在だ。こちらの意図を悟られてはならない。
「旨そうな炒め物だ!トウガラシの収穫を頑張っている俺たちへの礼として、こうして料理を作ってくれたんだよな!」
 アルフェミナは曖昧な笑顔で応じた。結局のところ礼としてではないわけだが、その点を除けば大まかには間違っていなかったので首を横に振るわけにもいかなかった。
「じゃあ、食べていいのか?」
「あ、はい、どうぞ召し上がれ!」
 オブリビオンの問いに明るく答えるアルフェミナ。その途端、彼らは携帯していた箸で、彼女の作った炒め物に手を伸ばした。豚バラと長ネギを包むトウガラシ油の艶、全体に黒々と散らされた揚げトウガラシの粉末が、食欲をそそる。
「くーっ、辛い!だが旨い旨い」
「トウガラシの辛さと豚バラの脂のコクがたまらん!」
「ああ、それにしても辛いな!水はないか?水は」
 炭水化物トリオは炒め物を夢中で頬張り、口々に感想を述べる。
「水ですか?ちょっと待っててくださいね」
 にこりにこりとしつつも機を探っていたアルフェミナは、水を取りに行く振りをして彼らの背後に歩いていく。
 そして──
「ごめんなさい!」
 氷の魔法を込めた剣による一閃。
 彼女の迷いのない横薙ぎは、完全に油断していた3体の背へとひとしく致命傷を負わせることに成功した。呻き声と共に地に臥したオブリビオンは、風に浚われるがごとく消滅する。
 いまだ向こうで収穫を続けるオブリビオンたちをちらと見遣り、どうやらまだ勘づかれてはいないらしいことを知ったアルフェミナは、安堵感によるものか大きく息を一つ吐いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エダ・サルファー
辛い味は嫌いじゃないけど、度が過ぎるとお腹壊しそうなのがなぁ。
あの怪人たちは、舌だけじゃなくお腹も丈夫なんだねぇ。
そんな奴らに振り向いてもらうってなると、大変そうだなぁ。

まあいいや、さっさと調理しちゃおう!
さて、作るのは台湾ラーメンだよ。
何故なら私が耐えられる辛さがこのくらいだからだよ!
鶏ガラベースの醤油ラーメンの上に、豚ミンチ・ニラ・にんにく・たっぷりのトウガラシを炒めたものを乗っければ完成!
これで怪人たちがやってきてくれたなら、片っ端からドロップキックの餌食にするよ!

……元祖へのリスペクトで抜いといたけど、残ったら炒めたもやしを足して食べるよ。
やっぱり私はこれくらいのほうが食べやすいわ。



●辛いものには食べやすさもプラス
 相も変わらずトウガラシの収穫を続ける8体の怪人たち。ある者は笑い、ある者は腕で汗を拭い、またある者は咆哮を上げながら競うように実を摘んでいる。
 ああ本当に、君たちがオブリビオンでさえなければ、全身タイツのような色の身体にパンや白米や中華まんの頭という妙ちきりんな容貌でさえなければ、どんなに和やかな風景であったことだろう!
「あの怪人たちは、舌だけじゃなくお腹も丈夫なんだねぇ」
 エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)は、そんなオブリビオンたちと近くにあるトウガラシの山を交互に眺め、感心とも呆れとも取れるようなトーンで言う。辛いものは彼女も決して嫌いではないが、それでもこの量を実際に見ると、わずかながらも躊躇の色が滲んでしまう。
「うーん、まあいいや、さっさと調理しちゃおう!」
 エダはつとめて声の調子を強め、眼鏡をくいと上げる。このトウガラシを使って何を作るかは、既に決まっていた。

 まずは二つの鍋で湯を沸かし、一方の鍋へ鶏ガラスープの素、ニンニク、ショウガを投入する。もしも時間があったならば本物の鶏ガラで作ってもよかったが、その間にオブリビオンたちがトウガラシを採り尽くしては本末転倒、角を矯めて牛を殺すことになる。よって此度は是非もなし、時短レシピでご勘弁。透明な湯が、旨味を含んで薄く濁り始める。
 続いてもう一方の鍋の上からは、中華麺がばらばらと散ぎ落ちる。黄色く太いたくさんの糸が湯の中で優雅に舞い廻り、それをはやし立てるかのごとく鍋が泡をふつふつと吹かす。
 さて、麺をゆで始めたならば、ここから先は急ピッチ。同じく調理台のまな板の上では、ニラとニンニク、そして、すでに山から拝借した二掴みほどのトウガラシが、リズミカルな包丁の音と共に刻まれ細かくなっていく。これらがフライパンの中、熱した油の中に飛び込めば、食欲を掻き立てる香りが一気に広がる。さらにそこへ豚ひき肉も加わり、あたりには拍手の雨にも似た音が響いた。
 そのとき、エダの視界の隅、こちらに顔を向ける怪人の姿をいくつか捉えた。──うんうん、おいしそうだろう?もっと近くにおいでよ。──彼女は炒める手を動かしつつ、にんまりと口角を上げた。
 調理はいよいよ佳境へと突入。醤油の入った丼にプラチナ色の鶏ガラスープが注がれ、混ざり合い、穏やかなカラメル色で満たされる。そこへ、金色の麺が、スープの表面を揺らしながら、今、ランデヴーを果たした。最後に、今回のもう一つの主役であるトウガラシをたっぷり使った豚ひき肉を豪快に乗せれば──
「ほい!台湾ラーメンの出来上がりっと!」
 冒険者として世界をまわっていたこの小柄なドワーフは、料理の腕前も確かであった。炒めたひき肉からしみ出したトウガラシの赤い油の玉がスープの表面を漂う、見るからに辛そうなラーメンだ。しかし丼はただ真っ赤に染まらず、ニラの緑、ニンニクと麺の黄色も負けずに主張し、彩りの華やかな一品となった。

 そこへ、3つの足音が近くで止まる。それはもはや疑うべくもなく、怪人たちのものだった。
「おっ、お前、おいしそうなもん作ってるな!どれ俺たちにも味びぼッ!?」
 3体の中で最も近くにいた怪人が言葉を発しきる前に、その顔面をエダの脚が打った。思わぬ一撃に、無防備だった怪人は大きく舞い上げられ、畑の隅の土に頭から着地した。
「あっ!お前、いきなり何をするんだ!」
 残る2体が身を構える。対するエダはといえば、ラーメンを背に仁王立ちだ。
「誰が食べさせてあげるって言った?お前たちにはやらないよ!これは私のだからな!」
 はん、と鼻で笑いながら怪人たちを挑発するエダ。正直に言えば当初はうまくいくか、一抹の不安もなくはなかった。しかしふたを開けてみれば、この料理にしたのは非常によい選択であったらしく、効果は抜群、ものの見事に引っかかってくれたのだ。あとはこれを、叩き伏せるばかり。
「なっ、なんだと!一人だけ食ってずるいぞ!」
「ええい、寄越すんだ!!」
 2体の怪人はついに怒って、エダに組みかかろうと駆けだした。が、小柄なドワーフでありかつ代々受け継がれる格闘術を叩きこまれてきた彼女に対して、それは賢明な手ではなかった。エダは冷静に飛び上がり、怪人たちの肩を踏み台にしてそのまま彼らの背後へ。そして着地のばねを生かし、怪人たち目がけて再び跳躍、空気のうなるようなスピードで両足を突き出した。
「ぶっ飛べ!!」
 激しい熱を帯びたエダのドロップキックは、なんと2体の怪人の腹を一度に捉えた。
「ほごぁッ!?」
「ごべッ!?」
 全力の蹴りと焼けるような熱により、ごはん怪人の白米は乾き、中華まん怪人の皮は焼け焦げた。そして2体はそのまま空の彼方へとフェードアウト。
 磨かれた格闘術で蹴り、そして祈りの力で焼き焦がす。これぞ、聖職者式ドロップキック!!

「ふぅ……さて、と」
 向かい来る悪をあっさりと蹴散らしたエダはお手製のラーメンに再び視線を移した。麺はまだ伸びていない。これで完成のつもりだったが、せっかくだからもうひと手間。熱したフライパンに油を引き、もやしをさっと炒める。油を熱を含んでわずかにしんなりしたところで、ラーメンの上へと重ね、今度こそ完成だ。
 ようやく腰を落ち着け、両手を合わせるエダ。
 まずは箸でもやしをスープに少々浸して一口。程よく心地よいシャキシャキ感が彼女の心を緩めた。二口めはもやしとひき肉、そして麺を一緒にいただく。麺の固さもバッチリ。やはり辛くはあるが、油をまとったもやしがそれを適度に和らげてくれる。
「うん、やっぱり私はこれくらいのほうが食べやすいわ」
 トウガラシ畑の隅に、すする音が響く。快晴の下、彼女の午餐はまだ始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天月・鳴海
ここは絶対にハズれない(自分基準)おはぎとコラボ行ってみようか!
名付けて、レッドホットおはぎだよ!!(バーンと赤みを帯びたおはぎ)
甘さと辛さが合わさり殿様級の美味しさに違いないよ!

収穫を中断してもらうのに、食べたいと思える様にまずは自分で食べてアピール頑張るね!
「トウガラシの刺激を甘さが優しく包み込んでいて美味しいのだよー♪」(美味しそうにバクバク食べるおはぎ大好きっ子

食べた後に「美味しいよね、よね?おかわりもあるよ!」(と、ぶりっ子気味にNoと言えない雰囲気を作って丸めこみ、更に食べさせようとする
攻撃されたら心眼覚醒で回避。

隙(味に悶絶やおかわり等)ができたら防御無視の連撃をお見舞いするよ!



●甘くて辛い、はんごろし
「ム、そういえば」
 ふと、いまだトウガラシ畑の中にある焼きたてパン怪人の一人が投げかけた。
「さっき向こうのほうに行った我が仲間たち、まだ戻ってきていないな?」
 彼は異変に気づいていた。11体いたはずの怪人のうち実に半数がふらり、ふらりと収穫の場を離れ、しばらく経っても戻ってこないという異変に。
「確かに……。奴ら、なにをやっているんだ?」
 炊き立てごはん怪人が小さく頭を縦に振る。
「もしかしたら、日光にやられたのかもしれん」
 中華まん怪人の一人が落ち着いた様子で答える。
「日光にやられたのならば、仕方がないな!」
 パン怪人はすぐさま納得した。彼らは極めて楽観的であった。
 と、そのとき。
「んー!おはぎ、おいしぃー!」
 ある少女の声が、一部の怪人たちの耳に届く。
 
 さかのぼること15分ほど前、天月・鳴海(Red memories・f05858)は鼻歌まじりに蒸した米を麺棒で潰していた。ゴン、ゴンと音を立てて調理台が揺れ、乗っていた器具たちがそれに合わせてわずかに飛び上がる。そして麺棒を受ける器の傍らには、黒々と輝く上質の粒あん……にトウガラシの粉末を混ぜて赤く色づいたトウガラシ粒あん。粉末は無論、怪人たちが築いたトウガラシの山からいただいたもので作った、出来たてのものだ。甘味に辛味、それは決してありふれた組み合わせではない。この餡が果たして如何様なものに変化を遂げるのか、それを知るのは、笑顔で麺棒を握る鳴海だけであった。
 そんな彼女が潰していた米は、今や半殺し(粒が残る程度に潰された状態)となっていた。そこへ、残ったトウガラシの粉末を少々、軽く混ぜて全体になじませる。絹のように白かった米が、黄昏時の空のような薄い橙色に染まっていく。
 鳴海はキッチンペーパーの上に、子供の拳ほどの大きさに分けて丸めた10個のトウガラシ粒あんを並べていく。そのうちの一つを平たく潰し、小判のようになった粒あんに先の米を乗せ、くるり。
 そう、鳴海が作っていたのは、おはぎだったのだ。
 普段からおはぎの大好きな彼女はこの調理台に立った当初から考えていた。私の大好きなおはぎならば、トウガラシだってきっと素敵なアクセントになってくれる。たとえばほら、ある国ではデザートのバニラアイスにコショウを振って食べるという話があるじゃない。これだって、甘さと辛さが合わさり殿様級のおいしさになるに違いないよ!
 キッチンペーパーの上に並ぶ、深く赤い10個の小惑星。鳴海はそのうちの一つに手を伸ばし、あんぐりとかじる。
 甘い。甘い。甘い。辛い!
 咀嚼をしているうちに、彼女の舌をトウガラシの刺激がじわり広がった。その辛さに少しだけ目を細めるが、それもすぐに満悦の表情に変わった。
「んー!おはぎ、おいしぃー!」

 至福の中にある鳴海の声を聞きつけ様子を見にやってきたのは、パン怪人と中華まん怪人だ。
「な、なんだそれは」
「見たところ、あんこのようにも見えるが、色が普通のあんこじゃないぞ!?」
 2体のオブリビオンは、彼女の正面に静かに控える9個のおはぎ、そして今しがた1個目の咀嚼を終えたばかりの彼女の顔を見る。さしもの彼らも警戒の色を隠せないようだ。
「そう!これはおはぎ、名付けてレッドホットおはぎだよ!!」
 鳴海は屈託のない声で、ずいっとおはぎを差し出した。
「れ、レッドホット、おはぎだとぉ……!?」
「うん、トウガラシの刺激を甘さが優しく包み込んでいて美味しいのだよー♪」
 半ば戦慄するような声で復唱する怪人を前に、2個目をぱくりとやろうとする。辛い物が好きなはずの彼らであったが、おはぎにトウガラシという衝撃的な組み合わせを目の当たりにし、その思考はフリーズしかけていた。
「どう?おいしいよ?」
「あ……あいにくだが、我々は遠慮しておく!」
 完全に逃げ腰の怪人たち。しかし猟兵としては、このまま彼らを畑のほうへと帰させるわけにはいかない。
「いらないの……?すごく頑張ってるあなたたちのために作ったのに……」
 演技か本心か、怪人たちの拒否反応に対して視線を落としてしょげる鳴海。そのしおらしさに、怪人たちの中に存在するほんの小さな良心がチクリと痛んだ。
「う、う……」
 彼らは改めて、鳴海の差し出した皿の上のおはぎに目をやる。何度見ても、あんこが赤い。彼女の言うとおり、辛いことは確かなのだろう。中には、輪切りにしたトウガラシを目や口のように表面にあしらったものや、明らかにトウガラシの種と思われる黄色い粒ががまぶされたものまである。それは、14歳の少女のちょっとした遊び心。
「くっ」
 パン怪人は意を決して、おはぎの一つを掴む。
 おい、行くのか!?──中華まん怪人のそんな視線を受けながら、恐る恐る一口。
「……。」
 慎重におはぎを咀嚼をするパン怪人、それを固唾を呑んで見守る中華まん怪人。そして期待のまなざしを送る鳴海。
「……ふぐっ!」
 パン怪人は突然天を仰いだ。おいしくないのではない。確かにいい小豆を使っているので風味はいい。米も同じだ。ただ、トウガラシなのだ。滑らかな粒あんが、粘り気のある米が、トウガラシの辛さを引っ提げて口の中全体にしがみつく。
 辛いものには塩っ気のあるもの、そんな先入観が今、彼の頭の中でサンドバッグのように激しく打たれ──。
「……あ、でも、これはこれでアリかも」
 そして彼は、未知なる世界を受け入れた。
「お前、本気か!?」
「でしょ!おいしいよね、よね?おかわりもあるよ!ね、あなたも食べてみて?」
 衝撃を受ける中華まん怪人に、鳴海はぐいぐいと押し付けんばかりの勢いでおはぎを勧める。
「い、いや、俺は今、腹がいっぱいだかあむぐっ!?」
「いいから食べてみろって。意外と悪くないぞ!」
 首を振る中華まん怪人の口におはぎを放りこんだのは、なんとパン怪人だった。しかもよりにもよって、トウガラシの種がびっしりとまぶされた1個を。
 あまりの辛さに悶絶する中華まん怪人。そしてそれを見て笑うパン怪人。
 そして鳴海はこの隙を逃さなかった。
「ごめんね!」
 左に乱れ、右に咲き。霊刀【紅夜叉】による連撃のもと、暢気な2体の怪人は瞬く間に斬り伏せられたのだった。
 そして、刃を鞘に収めた鳴海は、6個めのおはぎに手を着けようとするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

片瀬・栞
んー。唐辛子料理かあ。
あ、アレなら簡単か。よし、作ってみよー!

>行動
【SPD】アレンジ歓迎
ペペロンチーノを作るよ!唐辛子は多めだけど極端には使わない
まず食べて貰わないとね。代わりにニンニクも多めで!

他の料理と唐辛子畑からおもいっきり離して別な所にテーブルを置き
大皿で沢山ペペロンチーノ置くよ
離すことに他意はないよ!ニンニクの匂い凄いしね!
畑に匂いシミ付くと悪いし、他の料理の香りも台無しにしそうだからね!

さ、どうぞー!
美味しいー?(そっと距離置き)
ちょっと辛かったー?(だんだん距離置き)
パイナップルとかデザートにあるよー?(めっちゃ距離置き)
はーい!召し上がれー!(フラググレネード沢山投擲)



●辛いものには、弾けるデザートを
「んー。唐辛子料理かあ」
 片瀬・栞(白蓮天弓・f17024)は、その長い黒髪にヘアゴムを通し、一つにまとめながら考えた。頭を軽く振れば、その大きな髪の一房と、頭の横にあった小さな一房がシンクロするように揺れる。既に調理台の前にありてやる気は十分、されども何を作るか、肝心のそれを決めあぐねていた。
 自身のレパートリーを、そしてそれにトウガラシを使うかどうかを、頭の中で一つ一つ指なぞり──。
「あっ」
 ふとひらめいたしるしに、視線を上げた。
 そうだ、アレもトウガラシを使っていたっけ。アレなら簡単だし、あまり時間も掛けずにすぐできる。
 栞の視界が晴れ渡る。
 自前のエプロンの紐を背から前に回し、大きな蝶結びを作って。
「よし、ペペロンチーノ作ってみよー!」
 蝶結びの端をくっと引き、身と気が締まった。

 まずは沸騰した湯にパスタを投入する。鍋の中、花のようにパッと開いた糸が、すぐに湯を吸って沈んでいく。菜箸を軽く躍らせ、一旦置いておく。
 続いて栞はまな板の前。取り出したるは一玉のニンニク。野性的な風味を与えるのに欠かせない存在だ。ぺり、ぺりとその乾いた皮を剥けば、なめらかな実が露わになる。生まれた塊のうち、3つを包丁の腹で上から叩く。くしゃっと砕けた実からスパイシーな香りが溢れた。
 ここでトウガラシを拝借する。向こうに見える怪人たちの数を考えて──2本使えば十分だろうが──贅沢に10本ほど使ってみることにした。中の種は、今回は出番なし。
 パスタの様子を見つつ、次の工程へ。栞は改めて腕をまくり直し、一つ息を吐く。
 熱したフライパンにオリーブオイルを二回し。間もなく、食材を今か今かと待ち受けるように細かな泡が立つ。ニンニク、トウガラシをまな板から滑り落とすと、たちまち高く弾ける音が広がった。熱い舞台の上、2つの主役が共演する。香ばしい香りを放ちながらニンニクは狐色に変わり、トウガラシはそれを盛り立てるように躍る。
 さらにそこへパスタの茹で汁を降らせると、喝采はより一層大きくなった。そのままフライパンをくるり、くるりと傾け、水分を飛ばしつつオイルを広げる。
 上から塩を一振り二振りして火を止め、しばらく置いたパスタの鍋の元へ再び寄った栞は、薄黄色になった1本を歯の先で切る。まだ固めだが、これからまだ熱を加えるので、かえって具合はいい。
 湯から引き上げたたくさんのパスタは、空気に触れて乾く前にガーリックオイルソースと合体する。程よく遠心力を与えたフライパンの上をパスタが滑り、オイルをまとって翻る。下に隠れたトウガラシやニンニクのかけらもすぐに顔を出し、見た目は再び華やかになった。
 仕上げにパセリの葉を軽く散らせば、完成。薄黄色に赤と緑の程よく主張するペペロンチーノが、皿に山と盛られる。湯気がふわり、オリーブオイルとガーリックの香りを運ぶ。
 
 栞は完成したペペロンチーノの皿を高く掲げた。見据える先は当然、トウガラシ畑で収穫を続ける怪人たち。その香りに気づいたのか、1体がこちらへ顔を向け、もう1体の肩をとんと叩いている。さらにそれに気づいた別1体の視線も彼らから、栞の掲げる山のようなペペロンチーノへと移された。どうやら自分たちのためのものであることはわかったらしい。しかし、しばらくして3体は互いの顔を見ていた。

 こちらはトウガラシ畑の中。
「あれ、食いに行くか?」
「うまそうだな。食いに行きたい」
 怪人たちは、栞の料理に心を惹かれていた。
「だが我々が行ったら、トウガラシを摘む者が誰もいなくなってしまうぞ?」
「ううむ…」
 食欲と使命感が相克する。
「というか、他の奴らは本当にどこへ行ったんだ?」
「分からん。が、もしかしたらと休憩に行ったのかもしれん」
「休憩ならば、仕方がないな!」
 残念、君たちの仲間が戻ってこないのは、そのほとんどが猟兵によっておびき出され、倒されたからだ。そして君たちが見ていたあの少女も猟兵だ。
「……ならば我々も、休憩しに行くか。少しの間だけ」
「せっかく少女もメシを用意してくれていることだしな」
「うまそうだしな」
 怪人たちは小走りで少女の元へと近づいていった。

 駆け寄る3つの姿を確認すると、栞はペペロンチーノをテーブルに置く。
「おう少女!それは我々のぶんか?」
「もちろん!お仕事お疲れさま」
 怪人の問いに満面の笑みで答えながら、パスタを3つに盛り分ける。しめしめ、うまくいっている。あとはタイミングを見て『実行』に移すばかり。
 するすると、パスタを口の中に運ぶ怪人たち。太陽の下、今日ばかりはパスタの作法も大目に。
「美味しいー?」
 背後、2歩ほど離れた位置から話しかける栞。
「うむ、辛くてうまいな!」
 炊きたてご飯怪人は親指を立てて勢いよく答える。
「ちょっと辛かったー?」
 もう2歩ほど離れて話しかける栞。
「いや、我々にはこのくらいが丁度いい!辛いものは大好きだからな!」
 蒸したて中華まん怪人はがっつくように食しながら答える。
「パイナップルとかデザートにあるよー?」
 さらに5歩ほど離れて話しかける栞。
「おお、デザートとは気が利くな!せっかくだから頂くぞ!」
 焼きたてパン怪人は振り向くこともなく、一心不乱にがっつきながら答える。
「はーい、ちょっと待っててねー!」
 怪人たちとどんどん距離を取っていく棗。いつしか、二者の隔たりは30メートル以上になっていた。

 少女は、言ったとおりにパイナップルを手に持った。
「召し上がれーーーーーーー!!」
 その叫び声の距離に違和感を覚えた怪人の1体は、ここでようやく背後を向いた。彼の目に飛び込んできたのは一人の少女の姿ではなく──。
「のわーーーーーーーーっ!!」
 耳を突くような重い音とともに、怪人たちは一気に広がる炎と煙に包まれた。
 栞が投げていたのは、そのポーチに仕舞っていた、グレネード。
 その形から、一部では「パイナップル」の通称で知られている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

硲・葎
リヴェちゃん(f00299)と。
【P】
唐辛子を収穫している間は待ってあげよう。リヴェちゃんのご飯美味しい!
ごはん兵器は見切りで避けつつ、ダッシュで近づいてカウンターで2回攻撃を入れよう。
パンには残像で高速攻撃を外させ、忍び足で背後に近づいて先制攻撃。
Skullcapを投げつけて火属性攻撃。
「じょーずに焼けましたー!」
激痛耐性をつけてそのまま彼岸花之葬を使って捨て身の一撃で、パンを一刀両断。
中華まんはダッシュ、スライディングで避けつつ真正面に。うさたゃんリュックでロープワークを使い、中華まんを捕縛。
「つ、か、ま、え、た」
UC発動で零距離射撃と吹き飛ばしでおもいっきり飛ばす!
「ご馳走様でした♡」


リヴェンティア・モーヴェマーレ
葎(f01013)さんと
とても大切なお友達

▼アドリブ大歓迎

▼本日のメインの子
カラくん(サングラスがお似合いの普通のハムスター)

▼【WIZ】
中華まんも主食なのでしょうカ…?(ご飯とパンは分かると言う顔)
と、言うのは置いて置いて!料理なら得意なノデ頑張りたい気持ち!ブータン料理を作れば間違いなさそうですかネ?
さぁさぁ!辛さの奥に隠れているシャイなあの子(甘さ)に出会ってくだサイ!これこそが隠れた真髄なのデス!(若干前のめり)
葎さんも食べてみますカ?

カラ君も食べたいですカ?(欲張って食べてみて火を噴くハムスター

…こんな感じに最高に辛いデス!
戦闘は葎さんのサポ

最後はやっぱりこの言葉
『ご馳走様でした♪』



●ご飯を平らげた後は
「ううっ……はっ!俺の身に一体何が……」
 さて覚えているだろうか。先の猟兵の強烈な一撃で地中に頭から突入した1体の怪人を。覚えていなくても一切問題ないが、その彼、中華まん怪人が、ここにきて意識を取り戻したのだ。土で汚れた肩を頭を手で払い立ち上がると、彼は本来の労働のことを思い出した。
 そうだ、トウガラシを収穫せねばならない。
 元いた畑に再び足を踏み入れるが、周囲に同胞は誰もいない。焼き立てパン怪人も、炊きたてごはん怪人も、目を凝らせど、360度見回せど、彼らの姿を確認することができない。はたしてどこへ行ったのか。不意の一撃を受けたせいでそれも、また彼自身が何をされたのかも分からなかった。
 ともかく、トウガラシだ。洗いざらい、収穫しつくさねば。そこにトウガラシが実る限り。まだ茎を離れぬトウガラシがある限り。
「ふふ、唐辛子を収穫している間は待ってあげよう」
 ロリポップを含み、硲・葎(流星の旋律・f01013)はそんな怪人を遠くから見て小さく宣言した。
「ただし、リヴェちゃんのご飯に誘われたら、もう待たないよ」
 言葉を加えながら、ヘッドフォンを耳から外す。料理は友に任せ、自身はそれに誘われた怪人を討つまで。
 そんな彼女の友、リヴェちゃん──リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)が人差し指を立てて首を横に傾ける。
「中華まんも主食なのでしょうカ…?」
 ただささやかな疑問。料理を拵えるにも、怪人を掃滅するにも、それは一切の手がかりとなりはしないのだけれども。一つの事実として、彼女の肩に乗る、膝よりも低い身丈の小さな小さな友達、ハムスターの『カラくん』が、それを聞いて手を眉間に当てる姿があった。オイオイご主人、言わせるなよ、主食に決まってるだろう?中華まんだぞ?そんなことを言いたげな表情で得意げに。
「と、言うのは置いて置いて!料理なら得意なノデ頑張りたい気持ち!」
 カラくんを調理台の端に移し、気合十分、声を発する。
「うん、リヴェちゃん、なにを作るの?」
 葎は、トウガラシの山を見て尋ねる。リヴェンティアは人差し指を額にあて、脳内にあるデータベースを探る。料理名と材料、そのおおよその分量が紐付けられたデータベースと、今の自身が用意している材料を比較する。導き出された結果は──。
「ブータン料理を作れば間違いなさそうですかネ?」
「ブータン料理?」
 リヴェンティアの言葉にきょとんとする葎。それは、このキマイラフューチャーにおいて、いにしえに存在したといわれる国の料理の総称。

 まずは下ごしらえ。リヴェンティアは大根を輪切りにしはじめた。ざく、ざくと気持ちのいい音が伝わる。そしてこれを半月切り。ドームのようなシルエットの大根が次々と生まれていく。
 続いてトウガラシとニンニク。一掴み取った細く長く赤い爪を二つに折れば、乾いた柑橘のような断面が露わになる。一方、ニンニクの白い身はトントンと薄切りに。
 更に姿を表したのは、大きな豚バラ肉。
「わ、すごいお肉だね!」
 葎は大きな肉を見て目を輝かせる。
「ふっふっふ、これヲ使ってボリュームのあるお料理にしまスよ!」
 彼女の言葉に得意げなリヴェンティアがぐっぐっと肉に包丁を入れる。塊肉が、一口大に分かれていった。
「バターの方はいい具合だよ」
 コンロの前、熱した鍋の中滑るバターを見ていた葎が声を掛けると、リヴェンティアは切った肉をその中に流し入れた。刹那、熱に触れた肉が高い音を鳴らす。赤かった肉が、次第に白く、間もなく狐色の焦げ目をまとっていった。
「さ、これに水を加えて煮ていキますよー」
 肉が隠れる程度にまで流れ込んだ水はバターの油分と肉汁を浚ってほんのり白く濁る。
 そのまま火を加え続けると、やがて生まれた対流に乗って、細かな泡とともに肉が湯の中を泳ぎはじめた。
 ここで先程切った大根を沈め、トウガラシとニンニクも投入。さらには塩を一振り二振りし、あとはこの状態で煮込み続ける。
 トウガラシの赤みを吸い、徐々に鍋全体が紅葉のように染まっていく。ここまでくれば、もう少し、もう少し。ふつふつと泡が遊び散る音を聞きながら、2人は鍋を見つめていた。

 15分ほどが経っただろうか、リヴェンティアはレードルで鍋を探り、大根の一つを引き上げる。熱と旨味辛味を吸った大根は、しっとりと色づいていた。
「オッケー、そろそろよそいたい気持ち!」
 その一声を合図に、葎は待機していた皿を差し出した。味の染みた大根、そして豚バラ肉が湯上がりの蒸気を立てて皿の上に転がり込む。ごろっと重量の感じる動きで次々と重なっていく食材が、まろやかな香りを醸し出す。
「はい、パクシャパの完成でス!!」
「わあおいしそーう!リヴェちゃんやっぱりお料理上手だね!」
「ふふん!」
 葎の称賛に胸を張るリヴェンティア。主人の料理の一部始終を調理台の上で見ていたカラくんも皿のそばに寄り、鼻をヒクヒクと上下させる。
「カラくんも食べたいですカ?辛いので気をつけてくだサイね」
 リヴェンティアは、箸で大根の角を切り、その小さな友達の顔へと近づける。彼は口でそれを受け取り、歯を細かく上下させて咀嚼する。しばらく見ていると、突然、ぽっと小さな火を噴いた。見た目の色を裏切らず、とても辛く仕上がったようだ。
「さぁさぁ!葎さんも、辛さの奥に隠れているシャイなあの子(甘さ)に出会ってくだサイ!これこそが隠れた真髄なのデス!」
「んー!辛くておいしい!リヴェちゃんのご飯すごくおいしいよ!」
 豚バラ肉の重みをトウガラシとニンニクの香りが引き締め、バターのこっくりとした味が丸くまとめる。白米が進みそうなその味わいを、葎は目をきゅっと閉じて堪能する。
「えへへ、そんなに嬉しそうに食べてもらえると、私もすごく嬉しい気持ち!」
 頬を赤らめて喜ぶリヴェンティア。和やかな食事風景が広がろうとしていた。

 ざっ、と2人のそばで足を止める音が一つ。
「そこの女たち、旨そうなものを食っているところ悪いんだが……」
「うん?」
 大根や豚肉を頬張る2人がその声に応じる。
「我が同胞たちの行方を知らないか?ちょうど俺のように、メシやパンの頭をしている者たちが何人もいたはずなんだが」
 声の主は、ただ独り、トウガラシを収穫し続けていた中華まん怪人だ。葎はもしやと思い立ち上がり、畑の方を見遣った。
 豊かな葉の上に実っていた数多のトウガラシは──いまだ2割ほどが茎に残っていた。
 それは、最後に残っていたオブリビオンが目的を完遂していないことの証左。そして、そのオブリビオンは畑を離れ、こうして猟兵たちの前にいる。
 戦いの分は、猟兵たちのほうにあった。
「あ、あー」
 葎は後ろに隠した片手で、Vサインを作った。それを横目に見たリヴェンティアも、そのサインが良い意味であることを確信した。
「たぶんだけどね、怪人さん。他の怪人さんたちは、猟兵がやっつけちゃったんだよ」
「な、なんだとッ!?」
 愕然とする中華まん怪人に、リヴェンティア。
「そうでスねー、たとえば、なにかでおびき出サれて、その隙を突かれたトカ……」
「なっ……さてはお前たちも……」
 怪人の曖昧な問いに、目をあわせる2人。臨戦態勢を取るときが間もなく来る、そんな認識が互いに一致した瞬間だった。
「く、くそっ、せめてお前たちだけでも俺が!!」
 中華まん怪人はひとつ後方に飛んで間合いを取ると、手指を鋭く立てて構えた。対する葎はその背に負ったリュックに手を寄せて攻撃に備え、リヴェンティアは自身に取り付けられた釦をパチンと押す。
「thb@dwhq@xえ、」
 リヴェンティアの中から唸るような音が発せられた。それは、自身の身体能力を一時的に飛躍させるトリガー、倒すべきと認めた相手を仕留め、その安息を願う歌のように。
「はぁぁッ!!」
 憤怒に身を任せた怪人は、奇を衒わず一直線に葎のもとへと駆け出して素早い蹴撃を繰り出す。顔の中央めがけて襲い来る先制攻撃に対し、葎は地を蹴り、身を低く前方に滑り込ませた。怪人の一撃が、紙一重、彼女の髪をかすめるようにしてその頭上を飛び行く。
 好機だった。葎は背のリュックから1本のロープをぐいと引き出すと、鞭のように素早く怪人へ叩きつける。横腹に当たったロープが、その勢いのままに怪人に巻きつく。
「くっ……!」
 巻き付いたロープにバランスを崩され、怪人は地面へと背を着く。
「つ、か、ま、え、た」
 ロープの端を握りながら、不敵に言う葎。その背後から、リヴェンティアが素早く飛び出し、怪人の向こう側へ。
「逃さナイですよ!」
 リヴェンティアもまた、鞭を大上段から流線的な軌道で振り下ろす。ぱっと広がる青と紫の花片の隙間を縫うようにして、棘のある鞭がやはり怪人の身に絡まる。
「く…そぉ!」
 怪人を中央にし、乙女2人がその身を縛りつける。もがけばもがくほどに棘が食い込み、振り解けるほどの力が入らない。
「葎さん!今デス!」
 しばらくの後、リヴェンティアはその叫びと共に鞭を握る手をぐるり回す。怪人を捉えた棘の鞭は離れ、その身は再び1本のロープで支えられる。
「おいで!!」
 葎が力任せにロープを引き寄せた。すると、両腕を封じられていた怪人は踏みこらえきれず、弓なりになりながら彼女の元へ飛び込む。そして彼女の腕に内蔵された射出口が姿を見せる。
「カラくん!!」
 それを見たリヴェンティアもまた叫ぶ。すると、調理台の上から小さなハムスターが、葎の頭を踏み台として、その小さな足を怪人に突き出した。
「うッ!?」
 小さな、けれども勢いのある一撃は、怪人の顔面を的確に捉えた。そして。
「バイバイ!」
 葎の腕から、噴射音を立てて小さなロケットのようなものが飛び出し、怪人の腹を空に押し上げた。
「うおぉぉぉ!?」
 既に葎の手を離れたロープは、怪人が打ち上げられてもなおその身を拘束し続けた。ロケットはいつまでも高みを目指し、やがて怪人を巻き込みながら、炸裂した。
 爆発の残響が止むまで、リヴェンティアと葎、そしてカラくんはロケットの先の空を見ていた。
「……もー、食事の邪魔をしたら失礼だって教わらなかったのかな」
 葎が腕を組んで第一声を放つ。
「まアまあ、退治できタんですから、いいじゃないデスか」
 それをなだめるリヴェンティアは、調理台のコンロに戻り、鍋の中を除く。
「お肉、まだありまスよ。食べますカ?」
「あっ、食べる食べる!」
 彼女の言葉に、葎は再び笑顔になった。

 かくして、システム・フラワーズに至るための小さな戦いの一つは、猟兵たちの勝利により幕を閉じた。
「ご馳走様でした♪」
「ご馳走様でした❤」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月11日


挿絵イラスト