#ダークセイヴァー
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降り頻る雪は絶え間なく、小さな村を白い世界に塗り替えていく。
山間に位置するその村は、冬の時期には雪が多く積もって、見渡す限りの景色が覆われる程。それでも村人たちは逞しく生活し、年明けを迎えるこの時期は、村中でランタンを灯して星に祈りを捧げる祭りが催されていた。
光の射さない世界にあって、常世の闇を照らす地上と空の灯火に、人々は思いを込めてその年の幸福を願っていたのだと。
しかし村人たちのささやかな平和を願う日常は、ある日を境に一変してしまう――。
村に焚べられた火は、絶望を齎す地獄の業火。上がった火の手に家屋が焼かれ、助けを求めて逃げる村人たちに亡者の群れが忍び寄り、行く手を阻むように襲い掛かる。
「い……い、いやあああああああっ!?」
恐怖に怯えて立ち竦む、一人の少女が逃げ遅れて崩れる家屋の中に残されてしまう。
煙に飲み込まれ、薄れる意識の中で、娘は不気味に揺らめく黒い影を見る。
やがて広がる炎の海が、瞬く間に村の一部を灼き焦がし。その中心に、一人佇む黒衣の少女がそこにいた。
フードに隠れた顔ははっきり見えず、茫洋と虚ろう眸で一瞥し、踵を返すと、亡者を引き連れ闇夜の中に消えてゆく。
――この日から、決して抗うことのできない絶対的な恐怖が村人たちを支配した。
斯くして村から希望の光が奪われて、深くて昏い漆黒の闇に閉ざされてしまう。
「炎は本能的に恐れを抱かせる。そうして人の心を支配して、従わせるのがオブリビアンのやり方ね」
ヴァンパイアが跋扈するダークセイヴァーの世界において、オブリビアンに虐げられている村や領地は数知れない。
ノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)は淡々と抑揚のない口調で語り出し、今回向かってもらう場所はそうした不幸な村の一つだと告げる。
村の支配者であるヴァンパイア――正確に言えば、支配者と思わしき少女が纏った黒衣こそが、どうやら本体であるようだ。
その黒衣は、女吸血鬼の邪悪な意志を宿した呪いの衣。人に憑依し、自我を塗り潰し、心も体も奪ってしまう。村が襲撃された際、黒衣が少女を狙って取り憑いて、彼女を乗っ取っているのが事の真相だ。
「まるで寄生虫みたいに嫌らしい奴ね。でも、完全に同化するには至ってないみたい」
そこで黒衣だけを引き剥がして滅ぼしさえすれば、憑依が解かれて少女も救出できるとノエマは言う。
オブリビオンが根城としている領主館は警備が厳しく、迂闊に近寄ることさえできない状況だ。だが今は、近隣の村に配下を向かわせている為、館の警備が手薄になっている。
従って、襲撃するならこの時こそが絶好の機会というわけだ。
「ただし多少は配下が残っているから、まずはそいつらから倒さないといけないわ」
配下を撃破しながら奥へと進み、領主である黒衣の少女の許に辿り着く。
そうして黒衣も倒し、少女を無事に救出したら、彼女を村に送り届けるついでに少し寛いでいくのもいいだろう。
「……村の人たちも、抑圧されて今日まで生きてきた。だから明日のことはどうなっても構わないから、祭りを実行しようと企てているそうよ」
日常を取り戻した暁には、祭りの準備を手伝っていけば彼らも喜ぶかもしれない。
炎の恐怖に抗う村人たちの心が、それで晴れるなら――。
「どう手伝うかは皆に任せるわ。新しく出し物を加えてみるのも、いいと思うから」
ノエマの翳した手の中に、小さなグリモアが浮かび上がると、まばゆい光が猟兵たちを包み込む。
彼女の黄昏色を帯びた瞳に映る未来――人々の生きる希望をその手で繋いでいく為に。
朱乃天
朱乃天(あけの・そら)と申します。以後お見知りおきの程、宜しくお願い致します。
今回のシナリオは、手薄になった領主館を襲撃しつつ、領主である黒衣の少女の撃破を目指します。
●現場について
山間部にある雪が降り積もる村。
領主館には難なく突入できますので、派手に暴れてもらって構いません。
●敵情報について
最初は配下オブリビアンとの戦闘です。
そこを無事に乗り切れば、館の奥で黒衣の少女とのボス戦に移ります。
少女は纏った黒衣をどうにかすれば、助けることが可能です。
●お祭りについて
ボス撃破後は、村でお祭りを楽しみながら過ごせます。
村中でランタンを灯して、迎える年の幸福を星に願うというものですが、皆様のアイデア次第で色々と手を加えることもできたりします。
また、もしお祭りにノエマをお誘いしたい場合は、プレイングを掛けて下されば対応させて頂きます。
皆様も良き年を迎えられますように。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしています。
第1章 集団戦
『篝火を持つ亡者』
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POW : 篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シオン・ハートブレイク
村の子達が明日の事は置いといて祭の準備をってのは、ねぇ。
祭って、まぁなにはともあれ楽しまなきゃ、じゃない?
あとほら。根っこは神様とか自然への感謝がどーたらとか。
ただ騒ぐことが目的でもないし、やけっぱちなんてもってのほかって言うか。
人の信心や歴史まで雑に扱わせちゃうとか、オブリビアンってのも罪な子達だなーって、こう……義心的なものを燃え上がっちゃうわ。ホントよ?
そう言うわけで、お姉さんは自然を愛するエルフ様らしくそういう状況を戒めよーとダガーを振うのです。
とりあえず、SPDメインで素早く動いて敵ぶっ殺す感じで。
……あんまり時間かけるのは苦手だしね。
葉月・零
あー、人に憑依して、とかさー、なんかやり方が気に入らないなぁ。
自分の手を汚さないのとか、うん、考えてたらなんかちょっと腹立ってきた。
だから、助けるために今、この時を頑張らなきゃね。
協力できそうな猟兵さんたちがいたら共に。
1人じゃダメでも協力したらできることも広がると思うんだ。
影に触れられると回避されちゃうんなら影を作らせなきゃ良いんじゃない?
同じように松明とかで灯りを作れば向こうからの影は来なくなるんじゃないかな?って思うので手に松明持って。
エレメンタル・ファンタジアで水の竜巻起こして相手の灯を消せないかな。
消せたらラッキー、かな。
残念だったね、君の影は届かないんだ。
オブリビアンによる侵攻が、人の心や歴史までもを変えてしまう。
村に伝わる祭りの行事も、神や自然に対する畏敬の念が根本にある。
そうした地域に根差した信仰心すら失わせ、恐怖で人間たちを従わせるやり方に、シオン・ハートブレイク(はぐれエルフ・f04237)は憤りを隠せずにはいられない。
「オブリビアンってのも罪な子達だなーって、こう……義心的なものが燃え上がっちゃうわ。ホントよ?」
髪を無造作に掻きながら、気怠い態度を見せるシオンがそう言っても説得力はあまり感じないだろう。普段はものぐさで、やる気の欠片も見せない彼女であるが、心の底では咎人殺しの血が燻っている。
「あー、確かに人に憑依して、とかさー、なんかやり方が気に入らないよなぁ」
そんなシオンに葉月・零(オラトリオの死霊術士・f01192)が、間延びした口調で言葉を返す。
零もシオンと同様に、怠惰な性質なのだろう。だからこそ、彼女と共感できる部分があるのか、色々と考えているうちに怒りが胸の奥から込み上げてきたようだ。
そんなマイペースな二人だが、いざ戦闘ともなれば人が変わったように力を発揮する。
領主館は手薄になっているとはいえ、残った配下の亡者が館の中で待ち受けている。
館に乗り込む猟兵たちを見つけると、館中から亡者の群れが現れて、侵入者を屋敷の奥に進ませまいと襲い掛かってくる。
「あんまりお姉さんを怒らすと、容赦しないよ?」
シオンが薄ら開いた退廃的な赤い瞳で、群がる亡者を鋭く睨み、素早い動きでダガーを振るって斬り倒す。
だが敵も、篝火を照らして暗がりの中に鮮明な影を浮かび上がらせて。篝火が造るシオンの影に、亡者が触れると相手の動きを予測し、身を翻してダガーを避ける。
「影に触れられると回避されちゃうんなら、影を作らせなきゃ良いんじゃない?」
妙案がふと頭に浮かんだのか、零が不敵に笑みを漏らして魔力を籠める。
亡者に向けて掌翳して念じると、水の精霊たちが召喚されて、虚空を泳ぎ回ると精霊たちは巨大な渦と化す。
「残念だったね。これでもう、君たちの影は届かないんだ」
零の魔術によって作り出された水の竜巻が、亡者の炎を消して影の効果を弱らせる。
その隙に、シオンが防具を脱ぎ捨て身を軽くして、加速を増した刃が亡者を一体、また一体と討ち取っていく。
「良い具合に温まってきたようね。でも時間はかけたくないから、早く終わらせるわよ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橙樹・千織
さてさて、派手に暴れていいとの許可も下りていることですし…
その言の葉の通りとさせてもらいましょう。
見切りや残像、野生の勘を活かして攻撃の回避を試みます。
猟兵を舐めてもらっては困りますねぇ…
マヒ攻撃や鎧砕き等で敵の戦闘条件を悪くし、私達の戦闘条件が有利になるよう、試みます。
村の人々の恐怖を消し去るのが私達の役目。
お前達にも…ここの領主にも消えてもらう!!
敵が複数なら歌唱による催眠を使い、同士討ちしてもらうことでこちらの負担軽減を狙ってみましょう。
お前達を一人一人相手をする必要は無いな、私達も時間が惜しい!
また、無理をしない範囲で篝火を持つ手を狙って攻撃してみましょう
オルハ・オランシュ
ランタンに幸せを託していたんでしょ?
炎は村の人達にとって、恐れを抱かせるものじゃなかったはずだよ
それなのに……
オブリビオンの犯した罪は大きいね
女の子も可哀想、早く助けてあげなきゃ
篝火の影に触れないように気を付けるけど
触れちゃったらあとは回避されないように工夫するしかないかな
槍投げは見切られるリスクが高そう
それなら、可能な限り近くまで距離を詰めた勢いのまま
【早業】の【2回攻撃】でフィロ・ガスタ
1発でも当たれば儲けもの!
ほんの少しでも敵の体勢が崩れたら他の猟兵に繋げるよ
今が追撃のチャンスだよ!お願い!
連携を意識して、私達の隙を見せないように戦っていこう
村人たちにとって炎は、幸せを灯す光であったはず。
だがオブリビアンに村を燃やされて、支配されるようになって以降は、炎は恐怖の対象でしかなくなっていた。
「……オブリビオンの犯した罪は大きいね。女の子も可哀想だし早く助けてあげなきゃ」
オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)が語る言葉には、必ず女の子を救出できるといった確信めいたものがある。
それは彼女自身が楽観的だからというだけではない。おそらくはこれまで培ってきた経験則に基づくものであろう。例え亡者の群れを前にしても怯まない、どんな状況だろうと平常心で臨めるところがオルハの強さなのである。
「さてさて、派手に暴れていいとの許可も下りていることですし……。その言の葉の通りとさせてもらいましょう」
片や橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は、柔和な笑みを浮かべる和服美人。
こちらも落ち着き払った態度で亡者と相対し、ふわりとウェーブがかった黒髪靡かせ、刀を手にして斬りかかる。
「村の人々の恐怖を消し去るのが私たちの役目。お前たちにはここで消えてもらう!」
先程までとは人が変わったように、千織が凛然と勇ましく立ち向かう。
『藍焔華』の黒く耀く刀身が、襤褸布纏った亡者の屍肉を一刀両断。しかし倒れた亡者に別の亡者が力を与え、再び起き上がって猟兵たちに迫り来る。
「この様子じゃキリがなさそうね。でもこっちも隙を見せるわけにはいかないからね」
オルハの緑色の瞳が真剣味を帯びる。その鋭い眼光は、暗殺者としての彼女のもう一つの顔を覗かせて、機敏な動作を活かした戦い方で亡者を翻弄させていく。
亡者が篝火の影を作ろうとする、それより先に相手を制し、間合いを詰めて押し通す。
「見切れるなんて、思わないでくれる?」
風を纏って加速した、オルハの動きに亡者が付いてこれようはずはなく。軽量化させた三叉槍から放つ超高速の突きが、亡者の腹を抉って貫き、力潰えた亡者は屍に戻って倒れ伏す。
「今が追撃のチャンスだよ! お願い!」
オルハが声を張り上げ合図する。彼女の言葉に千織が応じ、剣に意識を集中させる。
「――はらりと舞うは、櫻花と面影。共に散らさん、汝が魂」
千織が舞うかのように剣を振るえば、刃が薄紅色の花弁となって虚空に舞い、渦巻く花の嵐が刃の如く亡者の群れを切り刻み――纏めて一網打尽に斬り伏せる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エル・クーゴー
『m’aiderを受信』
『躯体番号L-95、発進』
『積極支援を展開します』
●WIZ
まず敵布陣地目掛けサーチドローン・マネギ(親機)を送り込み[情報収集]を
ネックである被発見率の高さを[迷彩・目立たない]改修により一定の解決を図った謹製の僚機です
マネギ(親機)からの報告で敵布陣を把握次第[先制攻撃]的にユーベルコード使用
マックス75体召喚、敵集団へ順次殺到させ、殲滅ではなく「まとわり付いての拘束」を[時間稼ぎ]的に敢行します
これは「新たなる亡者」による増殖警戒対策です
この解決には面制圧攻撃による一挙殲滅が適解と判断
範囲攻撃の運用者を支援するよう、まとめて殲滅し易いよう、当機はデバフ役を務めます
神宮時・蒼
「…祭事。…きっと、素敵な、お祭り、なの、でしょう。…新しい、年を、くらい、気持ちで、迎えてしまうのは、…いただけ、ません、ね」
篝火の動きに注意しましょう。攻撃する際に、何らかの動きがある筈です。
篝火の影に触れると攻撃が避けられてしまうようなので、やや離れた位置に陣取ります。
狙えるのならば、篝火をその手から落としてしまいましょう。
手もとを狙ってユーベルコードを使用します
もし、POWの攻撃が命中してしまったら、即消火。衣類を脱げば消せるならそちらを、無理ならば地面を転がって消火
器物に当たってしまっては致命的なのです
ペイン・フィン
・・・・・・お祭り、か。
この苦しい世界の、ほんのわずかな喜びを、遮る者がいるならば、
・・・・・・いや、それでもやっぱり、嫌だな・・・・・・。
配下に対してコードを使用。
複製した全ての装備中の拷問具で攻撃。
配下が複数居る場合は、その全てに対して攻撃する。
「……祭事。……きっと、素敵な、お祭り、なのでしょう。……新しい、年を、くらい、気持ちで、迎えてしまうのは……いただけ、ません、ね」
神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)は感情乏しく、表情こそ変わらぬものの。ぽつりと呟く言葉の端々に、僅かながらもオブリビアンに対する憤りを滲ませていた。
「……お祭り、か。この苦しい世界の、ほんのわずかな喜びを、遮る者がいるならば……いや、それでもやっぱり、嫌だな……」
こちらも淡々と、途切れ途切れに言葉を紡ぐ少年、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)。
元は『指潰し』の拷問具であったペインに対し、蒼は『呪い』を齎すとされた氷晶石と琥珀のブローチに、御霊が宿った存在だ。
互いに曰く付きのヤドリガミである少女と少年が、オブリビアンの野望を打破する為に力を合わせて立ち向かう。
「――前方に敵の姿を確認しました。これより積極支援を展開します」
先行して館内の偵察活動を行っていたエル・クーゴー(L95・f04770)が、徘徊している亡者の影を発見し、戦闘態勢へと移行する。
「友軍を展開します」
エルは偵察用に飛行させていた、羽を生やしたふくよかな猫型兵器『マネギ』に命じ、75体の戦闘小型マネギを召喚させて敵集団に突撃させる。
エルの仕掛けた攻撃に、亡者は不意を突かれて狼狽える。そこへ蒼とペインが隙を狙って奇襲を掛けて、まだ態勢が整っていない間に畳み掛ける算段だ。
「……ほんと、嫌だな……」
ペインが本体でもある親指潰しを始め、装備している全ての拷問具を複製し、それらを自在に操り亡者の群れを薙ぎ払う。
「……警告。……此処から、近づかないで、ください……」
蒼が発する言葉は静かだが、それは決して脅しなどではない。少女の身体が影のように揺らいで神霊体と化し、その手には、茉莉花の花と蔦が絡んだ、不思議な光彩虚ろう巨大な鎌が握られていた。
この技は、己の命を削る禁忌の技だ。それでも少女は我が身を厭わず鎌を振るい、嘆きの刃の斬撃が、亡者の罪を、紛い物の生を断ち。描く軌跡の後には、甘やかなる血の芳香が、戦場中に広がった。
敵も反撃するものの、エルが飛ばしたマネギに纏わりつかれ、その対応に手間取っているせいもあってか、猟兵たちに苦戦を強いられてしまう。
「このまま一気に殲滅します」
エルの演算能力から導き出された勝利の方程式が、確信へと変わったか。彼女の目元を覆うマスクの光が一層強まり、エルはシステムに従うがまま指示を出す。
ミレナリィドールとして命を得た人造人形は、無機質で言動も機械的ではあるのだが。二人のヤドリガミもまた、元は作られた存在だからだろうか、却って息が合うようで。
猟兵たちの巧みな連携攻撃が、功を奏して亡者の群れを次から次へと討ち倒す。
そして一通りの亡者を排除し終えたその直後、戦闘状態から解除された蒼は、技の消耗からか身体がふらつき、壁に凭れかかるように座り込む。
「……大丈夫、です。……少し、疲れただけ、なので」
だから休めば良くなると、伝える蒼の表情は、戦う前と変わっていない。しかし彼女の琥珀の瞳の輝きは、少し鮮やかに満たされていたようだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
POW
炎……たしかに、破壊と死を齎す一面もあります
ですが、それだけではありません
輝く炎は闇を照らし、凍える身体を温める
徒に破壊のみを撒き散らす者を、私は赦しはしません
【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎を纏い、攻撃力を増大
聖なる炎よ、悪しき炎を討つ力を私に――!
館に全速力で駆け込む(【ダッシュ】)
有象無象の亡者へ、槍を【怪力】で【なぎ払い】、まとめて吹き飛ばす(【衝撃波】)
放たれる炎の軌跡を強化された【視力】で【見切り】、聖槍に纏った炎で打ち消す(【武器受け】【オーラ防御】【火炎耐性】)
聖なる炎に護られた私に、邪悪な炎は効きません!
浮世・綾華
館がどんな広さかは知んねーが地形の利用で上手く立ち回る
篝火が造る影に触れないよう注意
なぎ払いやフェイント
カウンターで回避できる攻撃は回避
敵を盾にすんのもいーだろ
ホラ、お前、弾除けになれよ
嗚呼俺、お前らみたいな奴に容赦はないんで?
お前らみてぇな雑魚
相手にしてる暇、ねーんだけど?
な。大人しくしててネ
咎力封じで動きを封じたら
傷口を抉ってダメージを
(食べ物はちゃんと口にしているだろうか
体力は、精神力はーー
この世界の現状は知っているが
それでも思う)
ーー子供は幸せじゃきゃなんねぇ
そう、彼女がすぐに口にできそうな
彩りの飴玉をそっと懐に忍ばせて
館の奥へと進むに連れて、敵の抵抗が激しさを増してくる。
だが侵入者をこれ以上先には通させまいとする、亡者たちのその行動こそが、いよいよ領主の近くに迫ってきている証なのである。
亡者の篝火が、赤々と燃える炎となって猟兵たちに放たれる。しかし浮世・綾華(美しき晴天・f01194)が倒したばかりの亡者を掴み上げ、それを盾代わりにして篝火からの炎を回避する。
「嗚呼俺、お前らみたいな奴に容赦はないんで?」
綾華は炎で焼け爛れた亡者の屍を、物でも扱うように投げ捨てて。相手を射殺すような赤く鋭い眼光で、残った亡者の群れを睨め付ける。
「炎……たしかに、破壊と死を齎す一面もあります。ですが、それだけではありません」
亡者が手にする篝火を、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が柔和な笑みを携えながら見る。
シスターらしく紡ぐ言葉は穏やかではあるが、武器たる槍を構える姿は勇ましく。溢れるオーラは炎を纏い、聖なる輝き放って彼女に加護の力を付与させる。
「輝く炎は闇を照らし、凍える身体を温める。――徒に破壊のみを撒き散らす者を、私は赦しはしません」
この世に未練を残して彷徨う亡霊に、本当の死を与えることこそ救いだと。オリヴィアが地を蹴りながら距離を詰め、亡者を槍で突き刺し、常人離れした力で持ち上げて。槍に刺さった亡者を振り抜くように投げ飛ばす。
「別嬪さんの割に、やるこたぁえげつねぇな」
清楚な見た目と対照的なオリヴィアの戦いぶりに、綾華は口角を吊り上げながら愉しげに笑む。
亡者の集団が、二人を取り囲もうと形振り構わず襲い掛かる。綾華は敵の動きを見定めながら、亡者の血で染まった小さな鳥籠を、枷の形に変えて相手の四肢を抑え込む。
「お前らみてぇな雑魚、相手にしてる暇、ねーんだけど? な。大人しくしててネ」
動きを封じた亡者に、オリヴィアが白銀に煌めく槍を向け――哀れな死者に裁きの時を下さんとする。
「聖なる炎よ、悪しき炎を討つ力を私に――!」
炎の魔力に包まれた、黄金色の刃が亡者の胸を刺し穿ち――刃を抜くと同時に、亡者の身体も崩れ落ち、二度と動くなく死を迎えたのだった。
その後も猟兵たちは残りの亡者も撃破して、彼らは遂に奥の部屋へと辿り着く。
この扉を開けたその先に、黒衣の少女が待っているのだろうか。
綾華は少女の身を案じるように、懐に忍ばせていた飴玉の入った包み袋に手を添える。
ーー子供は幸せじゃきゃなんねぇ。
そう、少女に罪は何もない。悪の元凶である黒衣を倒し、全てを終わらせる。
猟兵たちはそれぞれに、決意と誓いを込めて、更なる戦いへの一歩を踏み出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ゼラの死髪黒衣』
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POW : 囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : 眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「吾唐木・貫二」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――館の最奥の、扉の向こう。
一人で居るには広すぎるとも言える豪奢な部屋で、黒衣の少女は孤独に佇んでいた。
ベランダから眺める外の景色は、深くて昏い闇に閉ざされている。
しかし見上げた空には雲がなく、今宵は星の明かりがよく見える。
「どうしたのかな……何だか、とっても懐かしい気がするの……」
星を見つめる少女の心には、まだ村で暮らしていた頃の記憶が残っているのか。
黒衣に取り憑かれても、魂までも奪われたわけではない。
そこに救いの道が残されているというのなら――。
その時、部屋の扉がガチャリと開き、猟兵たちが雪崩れ込むようにして突入してくる。
「……まさか亡者たちを倒してここまで来たの? どうやら只者ではなさそうね」
少女は侵入してきた猟兵たちを一瞥し、虚ろな瞳が殺意の色を帯び、生者を死へと導く刃をゆらりと向ける。
彼女の心は、再び闇の世界に溶け込んでいく。
猟兵たちは光を遮る黒衣の呪いを解き放ち、希望を火を灯すことができるのか――。
「いいでしょう。今すぐこの場で貴方を殺し、村も村人たちも焼き払ってあげるから」
シオン・ハートブレイク
さて、本番ね。
女の子を脱がせだなんて、このどエッチめ! 許さないわ!
え、そう言うんじゃない?
でも脱がすのよね? ね? OK。……このどエッチめ!
あ、脱がすのこっちか! ごめんね、女の子!
とりあえず動きを封じないとね。SPDで、がっつり拘束しちゃうわ。
こっちのダメージは……ま、しょうがないかぁ。死なない内は度外視だわ。
一回拘束を外されたら二回。それでダメなら三回。
悪いけど、お姉さんしつこいわよ?
人の皮被って自己主張とか、せこいコトしてんじゃないわよ。
言いたいことがあったら自分の口で言いなさい。
ところで今回の件、ホントに訴えられないわよね?
あの、ね? そこんとこホントよろしくお願いします
フードを目深に被った少女の顔に影が差す。
目元を隠し、口は噤んだままで感情を見せることなく、少女が猟兵たちに歩み寄る。
館に侵入し、オブリビアンに抗う愚かな人間共を、この手で処罰する為に――。
「さて、本番ね。それにしても……女の子を脱がせだなんて。このどエッチめ!」
シオン・ハートブレイク(はぐれエルフ・f04237)は何だか突然顔を赤らめて、身体をくねらせながら恥ずかしそうに声を荒げる。
「……一体何を言ってるの? そんなに身包み剥がされたいなら、服だけじゃなく、貴女の全身ごと斬り刻んであげるわよ」
シオンの恥じらう様子を少女は理解できずに、冷たい言葉を投げつけながら、鎌を大きく振り上げる。
「……OK。冗談よ、冗談。でもね、その黒衣だけは本気で脱がさせてもらうわよ」
そう言うと、赤い瞳が鋭く光り、シオンは拘束ロープを投げ飛ばして少女の身体に巻き付けようとする。しかし少女は鎌で咄嗟にロープを払い除け、そのまま流れるような動きで距離を詰め、超光速の刃を振り下ろす。
「……っ!?」
慌ててシオンが飛び退り、刃は当たらず空を切る。だが僅かにシオンを掠めたか、彼女の服が裂かれて肩から薄ら赤い雫が滲み出る。
「ふぅ……人の皮被って自己主張とか、せこいコトしてんじゃないわよ」
一回外したといっても、まだ次がある。駄目なら二回、三回と。
捕らえるまでは、何度でも――。シオンがニヤリと笑みを漏らして、拘束具を手に再び身構える。
「悪いけど、お姉さんしつこいわよ?」
苦戦
🔵🔴🔴
橙樹・千織
いいえ、いいえ。
貴女にそんなことはさせません。
そのために私達はここへ来たのですから。
敵からの攻撃は野生の勘・見切り・残像を活用して回避を試みましょう。
あくまで倒すべきは彼女に取り憑く黒衣だけ。なるべく彼女には怪我をさせないよう注意しながら戦闘を進めましょう。
心が、魂が闇に染まる前に、呪いを退ける。
彼女の中からから出て行け!!
黒衣を引き剥がすことが出来たなら、彼女は安全な場所に避難させ、その後はみなさんと協力して全力で撃破を狙います。
さぁ、後はお前を退けるだけ。
これまでの罪を償い、消え失せろ!
「どれだけ抗っても、人間が私たちに敵うと思う? その無力さを、これからたっぷり思い知るといい」
抵抗は無駄な努力と警告するように、少女が鎌で空を薙ぐ。彼女の言葉は少女自身が発しているものではない。黒衣に宿る吸血鬼の魂が、少女を介して言っているのだ。
「いいえ、いいえ。貴女にそんなことはさせません。そのために私達はここへ来たのですから」
橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)はふわふわとした笑みを浮かべながらも、少女を見つめる双眸は、いつにも増して真剣で。彼女に取り憑く黒衣は必ず倒してみせると心に誓い、武器を持つ手に一層力を込めて立ち向かう。
「――失せよ」
先ず少女が千織に接近し、鎌を振り回して襲い掛かる。
千織は迫る刃の軌道を見極めながら、キマイラとしての野生の感を頼りに回避する。
この一撃はどうにか躱して難を逃れたが、まともに食らっていたらただでは済まなかっただろう。
千織は冷たい汗が頬を伝うのを感じつつ、気を引き締め直して刀に力を集中させる。
「心が、魂が闇に染まる前に――彼女の中から出て行け!!」
気合を込めて振り抜く黒い刃の一閃が、少女の黒衣の一部を裂いて――その切れ端が、影に溶け込むように消えてゆく。
成功
🔵🔵🔴
神宮時・蒼
…警戒。…これが、今回の、事件の、元凶、ですか…。…無関係の、方を、巻き込むのは、許せません、です。
相手の【SPD】が30cm以内に発動するとの事ですので、必要以上に近づかないようにしましょう。攻撃手段が一つ潰れるわけですし。
眷属を召喚してきたらそちらの撃破を優先に
一撃で消滅するようですし、数は増やしたくないですね
人間は、ちょっと怖いけれど。
村も、村人も。何一つとして、犠牲にするつもりは、ありません。
「……警戒。……これが、今回の、事件の、元凶、ですか。……無関係の、方を、巻き込むのは、許せません、です」
普段は感情乏しい神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)が、はっきりと怒りの言葉を口にする。僅かだが、彼女に生じた心の変化。その感情の矛先は、少女が纏った黒衣に対して向けられていた。
少女の年齢は、見て目からして蒼と大して変わらないのだろう。だからおそらく蒼は、彼女に特別な感情を抱いたのかもしれない。
「許せなかったら、どうするつもりなのかしら。貴女に何ができるというの?」
黒衣の少女は、蒼の決意を嘲笑しながら見下して。だったらせいぜい足掻くがいいと、闇の中から眷属の群れを召喚してヤドリガミの少女を襲わせる。
「……負けま、せん」
朧げに揺らぐ闇の眷属が、蒼を取り囲んで迫り来る。しかし彼女は怯むことなく、水底の彩を帯びた外套を翻し、全身を水の紗幕が包んで神霊体へと変化する。
「……人間は、ちょっと怖いけれど。……でも、村も、村人も。何一つとして……犠牲にするつもりは、ありません」
蒼の両手に握られた、月夜の花を模る杖が花開き。甘く惑わすような、真白き魔性の衝撃が、彼女に群がる眷属たちを薙ぎ払う。
成功
🔵🔵🔴
オルハ・オランシュ
私達には刃を向けても構わないよ
でもね、村に手を出しちゃ駄目
後悔して苦しくなるのは君自身なんだから!
本体は黒衣なんだ
あの子にはなるべく傷つけたくないよね
黒衣を切り刻んであげたいけど――
あの子にも攻撃を与えないと救えないなら、覚悟を決めようか
あんまり近付いたらあの鎌に狩られちゃいそう
攻撃する時以外はなるべく距離を空けておくよ
もし攻撃を受けたら【カウンター】を仕掛けよう
なるべくあの子が攻撃に動いた直後、
一瞬の隙を突けるようにその時を虎視眈々と狙って
フィロ・ガスタで【2回攻撃】、【早業】も併せて攻撃
痛かったらごめんね
あまり時間はかけないようにするから……待ってて
葉月・零
あ、君がそうかー。
まだ憑依される前のこと覚えてるんなら……村のみんなのとこに帰ろう?
って、言葉で言ってもだめかな。
自分で撮ってくれたら良いなぁなんて思うけど、そんなにうまくはいかなさそう、かな。
黒衣だけ引き剥がしてー、ってのも俺にはなかなか難しそうなので、増えた眷属を減らすことに専念するね。
その子を助けるために頑張ってる仲間の為にも、邪魔な子には退散してもらうよ
鈴蘭の嵐を使って、呼び出された眷属たちを撃破
数が多くても一撃で減らせるなら好都合。なるべくまとまったところを狙って。
まとめて、消えちゃってね。
鈴蘭の嵐使用した時に起きた風で黒衣を飛ばすことができないかも挑戦できたら良いな
猟犬たちと黒衣の少女の戦いは、ここまで互いに譲ることなく五分と五分。
拮抗した勝負を繰り広げる最中、葉月・零(Rien・f01192)がふと何かに気付いたように口を開く。
「あ、君がそうかー。まだ憑依される前のこと覚えてるんなら……村のみんなのとこに帰ろう? ……って、言葉で言ってもだめかな」
戦闘中の張り詰めた空気を掻き消すような、飾り気のない口調で少女に呼び掛ける零。
「気安く話しかけないで頂戴。貴方たちは、私がこれから殺すんだから」
しかし黒衣の少女は素っ気なく、ただ冷淡に、刃を猟兵たちに突きつけ威嚇する。
「私たちには刃を向けても構わないよ。でもね、村に手を出しちゃ駄目。後悔して苦しくなるのは――君自身なんだから!」
少女の脅しにも、オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は恐れることなく毅然と振る舞い、彼女の心に声を届けようと気炎を吐いて対峙する。
本来戦う敵は少女に非ず。彼女が纏う黒衣を引き剥がす、もしくは斬り刻んで破壊する――だがその場合、少女にも攻撃が入ってしまう危険性もある。
ここはどういう手段を取るべきか、逡巡している暇などない。オルハは覚悟を決めて槍を取り、身構えながら迎え撃つ。
鎌の間合いに入らぬよう、少女に槍を向けながら距離を取る。しかし少女はそんなことなどお構いなしに飛び込んで、刃を床に滑らせオルハの足を狙う。
「くっ……!?」
目にも止まらぬ斬撃が、死角を突いて迫ろうとする。が、オルハには、敵の攻撃への備えができていた。槍の柄で、鎌の刃を受け流し、一連の動作の流れの中で反撃に出る。
「――見切れるなんて、思わないでくれる?」
その身に風を纏って加速して、オルハの放った一撃は――少女を傷つけることなく黒衣だけを斬る。
「ちっ!? よくもっ……!」
鎌を躱されただけでなく、予期せぬ反撃を喰らって少女は驚き、後ろへ下がって態勢を立て直す。こうなっては迂闊に近寄れない。ならばと眷属たちを召喚し、猟犬たちに襲い掛からせる。
「その子を助けるために頑張ってる仲間の為にも、邪魔な子には退散してもらうよ」
子供の悪戯を窘めるような物言いで、零が魔力を込めて力を発動。
掲げた杖から鈴蘭の花が咲き、花弁が舞って嵐のように吹き荒れて、眷属たちを纏めて消し去っていく。
「お次は君の番かな。いつまでも、他人に取り憑いているのは良くないよ」
零が飄々と、にこやかに笑顔を向けて話す相手は、少女にではなく、黒衣に潜む吸血鬼――その彼女に対する、警告だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エル・クーゴー
『脅威度判定』
『敵指揮官級と断定』
『積極殲滅を開始します』
●WIZ
個にして軍たるユーベルコード
当機は「眷属召喚」に対するピンポイント警戒を行います
L95式アームドフォート、各種射撃兵装展開
[空中戦]用バーニア展開
敵陣外周に対し中距離を取りつつ、低空飛行にて弧を描く旋回軌道より[援護射撃]を敢行します
当機への眷属の接近を許した際は[零距離射撃&吹き飛ばし]にて射撃戦のレンジを堅持
時折、眷属をより召喚するよう危機感を煽るべく敵指揮官自身を[スナイパー]で狙撃
これは全て眷属を吐き切らせる為の[時間稼ぎ]
眷属召喚が頭打ち付近と見次第[一斉発射]にてユーベルコード使用
眷属の可能な限りの一挙殲滅を狙います
浮世・綾華
この世界ってまぁじで悪趣味な敵しかいねーよな
(どうすれば黒衣の呪いから解き放ってやれる?
不自由な世界でも、小さな自由を与えてやることができる
思考する、少女はできるだけ傷つけず
黒衣に宿る悪意を殺す……)
なぎ払いで少しずつ黒衣を裂いていく
狙いを悟られないように攻撃はフェイントで交わしつつ
使用するのはやはり咎力封じ
火力を削り動きを止めることで言葉をかける時間を
(星が見える澄んだ夜を懐かしいと
綺麗だって思う女の子の心を
暗闇の中から救いだしてやりたいと思う)
殺してもいいよ
あんたが、本当にしたいなら
でも、違ぇだろ
それは誘惑。惑いながらも狙いくる攻撃をカウンターで利用してやる
戻っておいで
甘く囁き優しく微笑う
オリヴィア・ローゼンタール
POW
死に損ないの邪悪な吸血鬼よ
彼女の身体、返していただきます
【血統覚醒】で戦闘力を増大、吸血鬼を狩る吸血鬼と化す
【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎を纏う
【怪力】で槍を【なぎ払い】、黒衣を斬り裂く
大鎌による攻撃は打点を【見切り】、槍で逸らして受け流し(【武器受け】)、
体勢を崩したところをガントレットで殴り飛ばす(【カウンター】【グラップル】)
慟哭の衝撃波による無差別攻撃は、一番近い仲間を【かばう】
気合いと根性で耐える(【オーラ防御】【呪詛耐性】【激痛耐性】)
黒衣を掴み引き剥がし(【怪力】【グラップル】)、聖なる炎で焼き尽くす(【属性攻撃】【破魔】)
一片も残さず焼き滅ぼす――!!
猟兵たちは黒衣の少女の猛攻を、幾度も耐え凌ぎながら機を窺う。
どれだけ攻撃しても抗い続ける猟兵たちの執念に、少女は次第に恐れを感じ、顔に焦りの色が滲み出る。
「何故……何故そこまでして抗う。人間風情が……私たちに敵うわけなど……」
猟兵たちの強さに困惑し、動揺を見せる少女に生じる心の綻び。それは黒衣の支配が薄れてきている証拠だと、この好機を逃しはしないと猟兵たちが勝負を賭ける。
「しっかし、この世界ってまぁじで悪趣味な敵しかいねーよな」
今なら少女を黒衣の呪縛から、解放できると浮世・綾華(美しき晴天・f01194)が思考を巡らせる。
可能な限り少女の身体を傷つけず、黒衣を引き剥がそうと黒い鍵刀を薙いで斬り払う。
「脅威度判定。敵指揮官級と断定――積極殲滅を開始します」
エル・クーゴー(L95・f04770)の電脳ゴーグルが敵をサーチし、戦力分析しながら積極攻勢をかける。
背中に備えたバーニアを、展開させて低空飛行で弧を描き、アームドフォートを構えて旋回。敵の注意を躱して狙いを定め、後方から火力を放って援護射撃する。
「死に損ないの邪悪な吸血鬼よ。彼女の身体、返していただきます」
柔和な笑みを湛えるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)のその手には、破邪の力を秘めた聖なる槍が握られている。
オリヴィアの眼鏡の奥の金の瞳が、真紅に染まる。身体に流れる血の力を解放し、変貌したその姿は――人が忌むべきヴァンパイアであった。
この禁断の秘技は己の命を削る諸刃の刃。それでも一人の少女を救う為なら惜しくはないと、忌まわしき血の力を借りてでも、黒衣を滅殺すべく立ち向かう。
「そんなに死に急ぎたいなら、今すぐこの手で殺してあげる」
少女の背後の闇の中から、無数の眷属たちが顕れる。黒衣の溢れんばかりの憎悪を具現化させた異形の群れが、殺意を滾らせながら猟兵たちに飛び掛かる。
「複数敵の存在確認。これより、敵集団の一挙殲滅を開始します」
眷属たちの姿をゴーグル越しに捉えたエルが、プログラミングによって状況解析。眷属撃破が最優先と判断し、アームドフォートで全ての眷属たちをロックオン。
射程範囲の極限まで引きつけながら、エルは射撃のタイミングを図ってカウントダウンを開始する。
「drei・zwei・eins――feuer」
最大出力まで高めたアームドフォートが火を噴いて、一斉射出されたレーザービームが眷属の群れを瞬く間に撃ち落とし――掃射を終えたエルの視線の先には、黒衣の少女一人だけが残されていた。
「殺してもいいよ。あんたが、本当にしたいなら」
綾華が憐れむような視線を少女に投げかけながら、挑発するかのように誘い文句を口にする。彼女に冷静な判断力は失われていると推測し、仕掛けてくるのを待った綾華の読みは――正解だった。
脇目も振らずに突進してくる少女が、力任せに振り回してくる死の鎌を、身体を低く屈めて紙一重の差で躱し、敵の攻撃直後の一瞬の隙を突く。
綾華は手に携えていた鳥籠の枷を、素早く少女の手足に嵌めて動きを封じ込む。
「くっ……! 何よこれ……!?」
枷を嵌められ少女が踠く。必死にそれを外そうとしている彼女に対し、オリヴィアが槍に炎を纏わせ高く大きく振り被る。
吸血鬼を狩る吸血鬼と化した彼女には、躊躇いも、一欠片の慈悲もない。
揺らめく聖なる炎は悪しき心を灼き尽くす。オリヴィアの迷いのない一撃が、少女の黒衣目掛けて振り下ろされる。
「一片も残さず焼き滅ぼす――!!」
炎を纏った黄金色の刃は黒衣だけを断ち、切り裂かれた呪いの衣は炎に包まれながら、悶え苦しむように燃やされて――最期は灰燼と化して、跡形残らず消え散った。
吸血鬼の呪縛が解けた少女は、力なくその場に横たわっている。
オリヴィアはすぐさま彼女の状態を確かめて、聞こえてくる息遣いに安堵の息を吐く。
「ずっと取り憑かれていたせいか、衰弱しているけれど命に別状はないわ」
少女が無事で安心したのと、血の力を使った疲労のせいか、オリヴィアもまた、気が抜けたように座り込む。
とにかくこれでオブリビアンの脅威は退けたのだ。今は少し休息しながら、少女の回復を待って村に戻れば良いだろう。
ベランダの開かれた窓から、冷たい夜風が舞い込んでくる。
風に当たって戦いの熱を冷ますのも悪くはないと、綾華はベランダに出て、そこから望める景色を見渡した。
澄んだ夜空は星が綺麗に輝いている。少女もきっと、この星を見て、心を繋ぎ止めていたのだろうかと想像し、暗闇の中から彼女を救い出せたことに、自然と顔が綻んだ。
――この不自由な世界でも、小さな自由を与えることくらいはできるはず。
彼らの想いを届けるように、優しい夜風が、村に向かって吹き抜ける――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『失われた祭事の復活』
|
POW : 櫓を建てる、祭りの資材を運ぶなど
SPD : 祭りの準備をする、料理を作るなど
WIZ : 祭りの企画をする、出し物を考えるなど
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
斯くして、猟兵たちの活躍によって村はオブリビアンの支配から解放された。
古の女吸血鬼の呪いに憑かれた少女も救出されて、村に戻った彼らを出迎えたのは――暖かなランタンの明かりが灯る光景だ。
村を恐怖に陥れた破壊の炎は、もうそこにはない。
灯された火は、人々の平和と希望を願う、心の象徴。
終わることなき絶望の闇に閉ざされた世界に光を照らす、一縷の望みを火に託す。
柔らかくて優しくて、どこか懐かしさすら覚えるような炎の明かり。
この日の空は、彼らを祝福するかのように満天の星が煌めいていて。
捧げる祈りが星に通じたか、村人たちに届けられた贈り物――それは助けることなど決して叶わないと諦めていた、可憐な少女の声だった。
「……ただいま、みんな。それと……ごめん、なさい……」
村に戻ってこれたことへの喜びと、村を支配する領主となって、人々を怯えさせていたことへの悔恨の念。
少女の心に複雑な感情が入り混じり、申し訳なさそうに俯く彼女を、一組の夫婦が近くに寄って抱き締める。
「パパ……ママ……」
親にとっては、愛しの我が娘が無事に帰ってきてくれたことが何より一番嬉しくて。
久しく忘れかけていたその温もりに、少女は甘えるように身を委ね、待ち望んでいた再会に三人は喜びを噛みしめていた。
そして猟兵たちの許に村人たちが集まり出す。
村を救ってくれた英雄と共に、今日という日を祝い合う。
支配の恐怖に打ち震える日は終わりを迎え、穏やかな日常がいつまでも永く続くことを星に願って。
この新たな年明けに、猟兵たちはどんな思いを託すのか――。
浮世・綾華
さっむいな、とランタンをひとつ手にしながら背を丸める
両親と水入らずを過ごすようであれば
目が合えばひらりと手だけ振っておこう
もし少女と話すタイミングがあったなら
体調とかは大丈夫か?
冷えるし、あんまり無理はしねぇようにな
なんて身に付けていたマフラーを顔にぐるぐると巻いて悪戯
少しでも笑ってくれたなら頭を優しく撫でてやる
あの子の心にも小さな灯が灯ったならいい
そうだろ?ノエマちゃん
馴れ馴れしく話しかけてみる
黄昏の瞳はどういった反応をみせるだろうか
あんたが視てくれたから
助けられたんだぜ
さぁて、祭りの手伝いでもすっか
力仕事でもなんでもやりますヨ~
一緒にど?
嗚呼、名乗ってなかったな
俺は綾華。覚えといて?
淡い光が灯るランタンを、浮世・綾華(美しき晴天・f01194)は一つ手にしてゆらゆら揺らし、寒さに身を震わせながらも祭りの空気を楽しんでいた。
助けた少女は、今は両親と親子水入らずのひと時を過ごしているようだ。
綾華が少女を見つめていると、その視線に気付いたか、少女はくるりと綾華の方を振り向いて、にこりと笑って手を振った。
そんな彼女に綾華も手を振り返して近くに寄って、外は冷えるから、と言って身に付けていたマフラーを、少女の首に掛けてあげ、ちょっと顔に巻いたりするのは些細な悪戯心のご愛敬。
少女は綾華の戯れに、一瞬膨れた顔をするものの、すぐまた笑顔になって。嬉しそうにマフラーを触る少女の髪を、綾華はふわりと優しく撫でる。
「あんまり無理はしねぇようにな」
微笑みながら言葉を掛ける青年に、少女は大きく頷き頭を下げてお礼を言った。
「あの子の心にも小さな灯が灯ったならいい。そうだろ? ノエマちゃん」
不意に綾華に声を掛けられ、ノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)は横目でチラリと彼を見る。
彼の馴れ馴れしい態度にも、ノエマは特に気にする素振りを見せることはなく。灯るランタンの火を、黄昏色の瞳に映してただ静かに見守っている。
「案外優しいのね。でも、そういうのは嫌いじゃないわ」
ふと呟いた一言は、綾華の少女を気遣う心のことか、それとも自分に接する態度のことを言ったのか、或るいはその両方か。
何れにしても、彼女もまんざらではなさそうなのは間違いない。
綾華は満足そうに口元緩め、それじゃ力仕事を手伝いますかと、袖を捲って張り切りながら、広場に足を向けた時。もう一度、ノエマの方を振り返る。
「嗚呼、そういや名乗ってなかったな。俺は綾華。覚えといて?」
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
SPD
よかった……彼女のご両親は無事だったのですね
再会が叶ったようでなによりです
さて、最後の仕上げとして祝宴の準備を手伝いましょう
【料理】を作ります
圧制の元にあったので備蓄は少ないかもしれませんね
スープやシチューなら少ない材料で多くの人に行き渡るでしょうか
それでも足りない分は……山間にある村のようですし、【黄金の獅子を召喚】して獣を狩ってきてもらいましょう
精一杯の【優しさ】を込めて作ります
満天の星の元で皆さんと食事をしながら、村の平穏を祈ります
「よかった……彼女のご両親は無事だったのですね」
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が見つめる視線の先には、助けた少女が両親と幸せそうに過ごす様子が目に留まる。
少女も両親も、こうして生きて再会するのが叶ったことに、オリヴィアは手を組み祈って感謝を捧げる。
オブリビアンを打ち倒し、村も支配から解放されて、願った平和が訪れた。
後は村で行われる祝宴を、手伝うことが今回の最後の仕上げになる。
「それでは私は、料理を作りましょうか」
雪が降り積もる村は寒さも厳しい、それなら料理で身も心も温まってもらえたら、村人たちも喜ぶだろうと考えて。オリヴィアが村の備蓄を確認すると、これまで圧政の下にあっただけでなく、雪深い地域のせいでこの時期は作物が特に少ないとのことだ。
「だったら……獣でも狩ってきましょうか」
肉なら村人たちにも精が付くだろう。オリヴィアは即行動に移して山に向かい、程なくして獣を仕留めて再び戻る。
そしてそれらを優しさ込めて調理して、シチューで煮込んで村人たちに振る舞った。
ご無沙汰ぶりのご馳走に、舌鼓を打って喜ぶ村人たちの笑顔に、オリヴィアも釣られるように自然と顔が綻んで、ひと時の宴を満喫していく。
空を見上げれば、吸い込まれるような満天の星が輝いていて。オリヴィアは静かに目を閉じ、村の平穏がいつまでも続くようにと、心の中で祈るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エル・クーゴー
(助かった娘とその親御とを遠く見守る)
『状況/クリア』
『ワイルドハントを終了します』
●POW
当機は中距離射撃戦に高い殲滅力を発揮します(鎧装騎兵感)
また電脳に高い親和性を発揮します(電脳魔術士感)
儀礼的建造物の構築
本ケースに於いて当機の性能が求められる余地は皆無と判断されます
速やかにベースへ帰投しま
(村人に寄って来られる)
…。……。………。
兵站の支援を展開します
エレクトロレギオン・オルタ
コール:ウイングキャット『マネギ』
(マックス80体フル召喚。資材運搬を手伝わせる。愛嬌あるデブ猫デザインなのでそれはそれで村人の慰みになれば幸い)
マネギをマネギ(親機)に先導・統率させ効率的に作業へ従事させます
平穏を取り戻した村の光景を、エル・クーゴー(L95・f04770)はただ遠くから見守っていた。
「状況/クリア――ワイルドハントを終了します」
自我が希薄な機械人形は、思考もシステム的で任務を完了させた今となっては、この地に留まり続ける理由は特にない。
「儀礼的建造物の構築――本ケースに於いて当機の性能が求められる余地は皆無と判断されます。速やかにベースへ帰投しま――」
これ以上の長居は無用と帰還しようとした時だ。村の子供たちがエルの近くに寄ってきて、好奇心旺盛な様子で彼女に話しかけてくる。
純粋な笑顔を向ける子供たちに、エルは立ち止まって思考を巡らせ、やがて一つの答えを導き出す。
「…。……。………。兵站の支援を展開します」
子供たちに促されながら、祭りの作業の手伝いをすることになったエル。
猫型ドローンのマネギを展開させて資材を運び、効率的に作業を進めていった。
そして作業がひと段落したところで、子供たちがエルの許に駆け寄ってくる。
どうやら彼らの興味は、羽を生やしたふくよかな猫型ドローンに向けられている。
そうしてマネギは子供たちに駆り出され、彼らと一緒に遊ぶのだった。
――雪の中を転がり回って燥ぐマネギ。
――子供たちと雪合戦をして楽しむマネギ。
――雪だるまを作っていたら、いつの間にか雪だるまになっていたマネギ。
楽しそうな子供たちの笑い声が村中に響く。
オブリビアンに支配されていた頃は、こんな当たり前の光景すらも奪われていた。
しかし今日という日を切欠に、子供たちがずっと笑顔で暮らしていけたら、と。
エルは心の中に微かだが、温かい感情が芽生えるのを感じるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
オルハ・オランシュ
ごめんねなんて、要らないのにね
あの子が無事に帰ってきてくれたことが
村のみんなにとって一番の喜びだもの
さてと、あとは手伝いだね
材料は手に入りそうだし、
どこかのキッチン借りてもいいかな?
腕によりをかけちゃうんだから
焼いたクッキーがある程度冷めるまで
ノエマちゃんに話し相手になってもらおうかな
ねぇ、雪でどんな遊びをしてるの?
私は雪に全然馴染みがないんだよね
ちょっとした遊びでもいいから、教えてくれる?
程よく冷めたクッキーには、当店自慢のいちごジャム!
2枚のクッキーにこれを挟んで、ジャムサンドクッキーの完成だよ
たくさん作ったからたくさん食べてほしいな
喜んでもらえたら、私もとっても嬉しい!
村に少女が帰ってきたことで、村人たちは誰もが笑顔になって喜びを共に分かち合う。
「ごめんねなんて、要らないのにね。あの子が無事に帰ってきてくれたことが、村のみんなにとって一番の喜びだもの」
オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は村に活気が戻る様子を目の当たりにし、無事に少女を救出できて本当に良かったと、心の底から大きく安堵の息を吐く。
そして後は村の為にも何かお手伝いでもできればと、オルハが考えて思いついたのは、村人たちにクッキーを作ってあげることだった。
材料とキッチンを借りて手際よく調理を行って、程好い加減できつね色に焼き上がったクッキーを、食べやすいように少し冷ましている間、オルハは雪遊びに興じるのだった。
「ねぇ、ノエマちゃん。雪でどんな遊びをしてるの?」
外ではノエマが何やら雪を手にして作業をしていた。
両手で雪を固めて半球状の形を作り、そこに南天の葉と赤い実で、二つの耳と目を付けて。可愛らしい雪のうさぎの出来上がり。
「雪うさぎを、作ってたの。簡単だから、オルハもやってみる?」
ノエマにそう言われて促され、二人は一緒に和気藹々と、大小様々な雪うさぎを作って村人たちを和ませる。
そうして時間を過ごしているうちに、クッキーも良い頃合いで冷まされて。それでは最後の仕上げとばかりに、オルハが瓶詰めされた何かを取り出した。
それは彼女が普段勤しむジャム屋で作った、自慢のお手製いちごジャム。
2枚のクッキーに、ジャムを挟んで食べたなら、高糖度のいちごの味が口いっぱいに広がって。蕩けるようなジャムの甘味と、クッキーのサクサクした食感が、絶妙に合わさることで豊かな風味を醸し出す。
今まで味わったことのないクッキーの甘やかな美味しさに、村人たちは至福の時を過ごすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
葉月・零
無事に村に戻れて何より。
それに家族も無事ならあの子はもう大丈夫だろうね。良かった良かった。
あ、そうだ。もしノエマが居れば声をかけて。
俺たちだけじゃなくて、君のおかげでこの村もあの子も救えたと思うんだよね。
だから、ありがとう。また何かあったら遠慮なく皆を呼んでね。
さて、せっかくのお祭りだし何をしよっかな。
荷物運んだりの人手は足りてそうだし、料理もある。
うーん、
あ、聞いたことがあるんだけど。
ランタンをね、夜空にたくさん浮かべて願いを星まで届けるお祭りがあるんだって。
せっかくの綺麗な星空だから、村のみんなのお願いも星まで届けたら良いんじゃないかな?
もっと星の近くまで……その方が叶うと思うから
村を支配していた恐怖から、漸く解き放たれて村人たちの歓喜の声が沸き起こる。
黒衣に憑かれた少女も、両親と共にいればもう大丈夫だろう。
葉月・零(Rien・f01192)は感慨に耽りながら、黄昏色の瞳の女性に言葉を掛ける。
「俺たちだけじゃなくて、君のおかげでこの村もあの子も救えたと思うんだよね。だから、ありがとう」
お礼を述べられて、ノエマは表情を変えることなく零の言葉を聞いた後、無言でコクリと小さく頷いた。
やがて祭りの準備が進められ、村中にランタンの明かりが灯る綺麗な景色が、二人の視界に映り込む。
ただこうして見ているだけでは手持ち無沙汰になるからと、零は手伝えることはないかと頭を捻り、ふと一つの案が思い浮かんだ。
「あ、聞いたことがあるんだけど。ランタンをね、夜空にたくさん浮かべて願いを星まで届けるお祭りがあるんだって」
折角の綺麗な星空だから、村人たちの願いも星まで届けることができたなら――。
「……そうね。それならきっと、村人たちも喜んでくれると思うわよ」
零の提案に、ノエマも同意し早速準備に取り掛かる。
村人たちも面白そうだと協力してくれて、紙袋で作られた沢山のスカイランタンが村の広場に運ばれる。
火を灯し、空に打ち上げられたランタンが、夜風に揺られて飛んで行く。
空にはふわふわ白い雪が舞い、その先の果てには遍く煌めく星の光たち。
夜空に浮かんだ数多のランタンは、この世界の闇に灯った希望の明かり。
その幻想的な光景に、村人たちは言葉を失うほどに魅了され、人々の想いを乗せた天燈が、星と重なり合って闇夜を光の世界で埋め尽くす。
――この日のように希望を諦めなければ、願いはきっと星に届いて叶うだろう。
零とノエマも、見上げた星とランタンに、心を込めて静かに祈る。
彼らの未来の行く先に、祝福あれと――。
大成功
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