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バトルオブフラワーズ⑥〜スタイリッシュ・ダンスナイト

作者：しじる

　システム・フラワーズのメンテナンスゲートが開き、真っ二つになったキマイラフューチャー。その光景をバックにキマイラフューチャーで生まれ育った赤の少女、ステラ・ハシュマールが猟兵たちに次なる予知を告げる。
「みんな連戦で疲れているところ悪いけど、戦争はまだまだ始まったばかりだ。次の戦場に出向いてもらうよ」
　彼女の語る次の戦場は『ザ・ステージ』の一つである『ザ・ダンスステージ』だ。そこでは助け出したテレビウムたちの画面を通じてキマイラフューチャーに映像が流され、もっともダンスで観客のボルテージを上げたものにバフがかかる特殊効果が発生している。踊らなかった場合、威力が半減するようだ。もちろんそれは敵も同じである。そのためダンスは意地でも妨害しに来るし、隙あらば自分のダンスで観客のボルテージをかっさらおうと狙っているだろう。
「現在『ザ・ダンスステージ』の一角を占領している【猪狩・アントニオ】、彼が今回のターゲットだよ。男なのに男が好きなちょっと変わった怪人で、何があったかは解らないけど女には相当恨みがあるようだね」
　資料を片手にそんな説明をするハシュマール。そんなこんなを説明していると、どうやら『ザ・ダンスステージ』へのテレポートが繋がったようだ。目で確認し、手に持っていた資料をたたみながら猟兵たちへ視線を送る。
「空は鳥のためにあるように、海は魚のためにあるように、下劣なものには鉄槌を……オブリビオンには死の賛美歌をプレゼントしてあげよう。さあ、頑張ってきて」
　そういってはハシュマールは道を譲り、テレポートへ案内する。その先にはミラーボールで彩られたステージで、猪狩・アントニオが待ち構えているだろう。
　さあ猟兵よ、男の娘メイドダンサーをスタイリッシュな踊りで屈服させて見せよ！

第1章 ボス戦 『猪狩・アントニオ』

POW   :    オトメン投げキッス 【男女問わず投げキッス】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 SPD   :    メイド秘奥義「メイド感情ミサイル」 【男に対する欲情もしくは女に対する憎悪】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身を模したエネルギー体】で攻撃する。 WIZ   :    メイド秘奥義「猪突猛信（恋する乙メンの暴走）」 【男に対する欲情もしくは女に対する憎悪】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。 イラスト：桐ノ瀬 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「私の前に現れてくれる人は誰かな～素敵な男の人だといいな～」
　そんなことを呟く猪狩の前に現れるのは【鳳鳴・ブレナンディハーフ】。かつて若いころの変態性が二重人格として表に出てきてしまった、すこしかわいそうな人だ。しかし猪狩からすれば男なら、さらにいかつい顔をした僧侶なら猶更食いつく。
「私と一緒に踊って僧侶さ～ん！！」
「断る、拙僧は尊公を討ちきた……力を貸せブレナンディーハーフ」
　ユーベルコード【オルタナティブ・ダブル】を発動し、かつての自分を呼び出す。さあ踊ってギャラリーのボルテージを上げるのだ。
「いざ鎌倉！」
「レッツゴー本能寺！……噛み合ってない！」
　出だし早々バラバラ、相反する人格故に仕方がないのだが踊りもバラバラ。漫才としては最高に面白いがダンスとしてはこれはいただけない。挙句ブレナンディーハーフのほうが嬉々として猪狩と一緒に踊りだしてしまった。これが変態同士の調和を得たのか抜群に上手い。
「女装美少年最高！」
「一緒に踊れて最高！僧侶最高！」
「変態死すべし！」
　それぞれ別々の踊りで別々に攻撃するのだが、これもかみ合わない。猪狩からすればいやらしいブレナンディーハーフのグラップルもご褒美にしかならない。そもそもこのボルテージ、現在ブレナンディーハーフと猪狩のタッグダンスが原因で猪狩のほうに傾いていた。これが悪い効果を及ぼしていてなかなか致命打にならない。
「キスしてくれー！」
「もちろん！！」
「さっさと終わらせたい……」
　鳳鳴の胃へのダメージは尋常ではない。変態に囲まれた中、一人の僧は頭を抱えてしまうのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

　男の娘にメイドにダンス、属性過多で倒れそうだ。正直なところ理解が追い付けない。【仁上・獅郎】は若干あきれた様子で思う。しかしここは踊らなければ力が十分に発揮できないステージ。踊るしかない。ならば踊って見せよう。
「わあ、私好みのイ・ケ・メ・ン！！」
　歓喜の悲鳴を上げながら猪狩は仁上を迎え入れる。ああ、こんなイケメン男子を攻撃しなくてはいけないだなんて、運命って残酷などと思いながら、猪狩はダンスを始めた。対抗するように仁上も踊りだす。戦闘知識に裏打ちされた、実践的でありながらも人を魅せる動きを組み込んでいく。さらにユーベルコード【千華爛漫・花信風（センカランマン・カシンフウ）】を発動させ、ステージにある無機物を味方を強化し治癒する、追い風と光の花々に変換する。ステージが鮮やかに彩られ、観客も突然変わったステージにあった動きをする仁上に釘付けとなる。
　これはまずい、そう思った猪狩は妨害しようとするが、ふわりと軽く仁上は躱す。それはまるで風に揺られる美しい花弁のよう。その麗しさに視線と動きが止まる猪狩。彼の動きを更に拘束するため、仁上は目にもとまらぬ早業で鋼糸の黒糸を搦める。
「さてはて、オーディエンスも満足したなら終わりでしょう」
　そう締めくくり、彼は回転式拳銃Memento moriを召喚し、猪狩の眉間に突き付けた。
「BANG、と」
　高威力のマグナム弾が打ち出され、深紅の花びらがステージに咲いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　誰かが言った、ダンスとは己の内なる情熱を表現するものだと。先を行くものミルザム、【高鷲・諒一朗】が現れた。長い美脚の目立つ人狼の男性、もちろん猪狩の守備範囲である。
「ケモノ、いい、いい！！」
「おーと、まだ踊ってもいねぇのに見とれてくれるなよお嬢ちゃん！」
　そんな軽口を叩きながら早速踊っていく。靴も服も変えて、常夏を生み出さんと情熱的フラメンコを踊りだす。ここに一人のスカイダンサーの真髄が発揮される。軽快なリズムに合わせてフラメンコが踊られる。ミラーボールが雰囲気を合わせて紅に輝く。タップの音が心地よくステージに響く。観客のボルテージも合わせるように高まっていく。ああ、これはまさに情熱、流されるように猪狩もフラメンコを踊りだす。意外と筋はいい、しかし本場は高鷲にあり。ユーベルコード【金狼舞踊（キンロウブヨウ）】がそれを語った。
「オーレー！！」
　高鷲の声に合わせて観客も叫ぶ。猪狩も叫ぶ。ここに最早闘争はなかった、二人の男の熱い舞踏があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「けっ、女じゃない」
　開口一番、【リリエル・エーデルワイス】と【リリウム・エーデルワイス】の二人をみた猪狩の反応がそれであった。よほど女性に恨みがあるのか、二人へのあたりもそれ相応に冷たかった。しかしそんなことはどこ吹く風、姉妹は猪狩へと挑戦する。
　曲か掛かりダンスが始まる。姉妹も猪狩も互いに踊りはじめ、ステージに彩を加える。しかし猪狩は時折オトメン投げキッスによって姉妹の行動を封じようとするが、巧みなステップさばきによって躱されていた。そのことにいら立ちを覚える猪狩。対して姉妹は余裕をもってダンスを魅せていく。黒いぴっちりスーツに覆われた体にミラーボールから反射された光が照って、二人を色っぽく彩る。時折来る直接的な妨害でさえ取り込んでダンスの一つとして仕上げる。二人のダンスの腕はまさしく優れていた。
「女なんかに私のダンスが後れを取るはずが！！」
「妨害にかまけ過ぎたわね」
「あんまり踊れてないから、ユーベルコード威力上昇バフはこっちのものだよ！」
　猪狩を挑発して攻撃を誘発させる。しかしそれこそが狙い。リリウムはリリエルのユーベルコードが当たりやすい位置に猪狩を誘導した。そうして二人が重なるその時に、リリエルのユーベルコード【刻印・腐滅の黒炎（アクセスコード・デスサイズ）】によって槍に、相手を爛れ落とす様に溶かし燃やす漆黒の炎が纏われる。そうなった槍を突き出し、リリウムへと視界が完全に向いていた猪狩は躱すことができず直撃。黒の炎は容赦なく彼を焼き尽くし、悲鳴を上げる暇さえ与えなかった。
　こうして姉妹は、余裕をもってダンスステージを突破するのであった。しかし姉妹もそうだが猟兵たちの戦いはまだ終わっていない。オブリビオンフォーミュラーであるドン・フリーダムを討つその時まで戦争は終わらないのだ。立て猟兵、キマイラフューチャーの未来を守るため。戦争の火はまだ終わってなどいないのだから。
【END】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月16日