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バトルオブフラワーズ⑥〜キリキリダンスファイト

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●「レッツダンシング」
 は?と集まった猟兵たちは首を傾げる。
 何かを察した猟兵もいるが、ヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)はそんな彼らを見ながら説明を始めた。
「今回起きた事件、ソイツを解決する糸口として六つの『ザ・ステージ』を攻略しなくちゃいけねぇ。それは知ってるよな?」
 事の始まりはテレビウム・ロック事件から。幾多のテレビウムたちが巻き込まれたそれは、キマイラフューチャー世界の危機を知らせるための警鐘だった。
 コンコンと空間を叩くことで欲しいものを欲しいがままに手に入れることができた世界。それを可能とする『システム・フラワーズ』が今、オブリビオン・フォーミュラの侵略を受けている。そして現在、キマイラフューチャー世界の礎たる惑星はガチャポンのように真っ二つに割れ、惑星の中心にあるシステム・フラワーズへのメンテナンスルートが築かれているのだ。
 『ザ・ステージ』という、六つの障害として。
「んで、今回はその一つ……『ザ・ダンスステージ』を予知した」
 モニターに映像を回す。
 ブラウン管特有の砂の音と共に、ゆっくりと映像が鮮明になる。そこに映っていたのは、ステージの上キレッキレのパラパラダンスをするユニコーンのオブリビオン『キリ』だった。
 無表情だが、見応えのある機械的かつ隙のない機動力を見せる彼女は、観客であるキマイラやテレビウムたちを魅了していた。
 最後にキメポーズをしたところで、映像が切れる。自然に注目はモニターからヘクターへと集中し、おそらくほとんどの猟兵が予想できた無茶振りを彼は言い放つ。
「オブリビオンと戦いながら、レッツダンシング」
 ダンスができる猟兵以外無理なのでは?猟兵たちは訝しんだ。
 しかしヘクターは至って真剣に、解説の続きを始める。
「このザ・ステージ、『ダンシングフィーバー』っていうルールが定められててな。あのステージの上は全中継されてる。&踊らない奴は強制退場されるっていうめんどくさいルールだ」
 だがな、とニヤリと彼は笑う。
「逆にあのオブリビオンみたいにダンスで観客を喜ばせると『フィーバー』ってのが起こる。要するに、観客のボルテージに比例して、テメェらのユーベルコードの効果が倍加するって寸法だ」
 ただ踊るだけじゃねぇぜ。闘志に溢れた表情で狐火を思わせるグリモアを顕現させると、キマイラフューチャーへの入り口を作る。
 その先は楽屋。おそらくあのステージの裏へと繋がるものだろう。
 準備を整え、踊れ。そして闘え!
「レッツ──ダンシングバトル!」


天味
 天味です。さあ始まりましたダンシング。
 『バトルオブフラワーズ』シナリオ第2弾。今回は踊りながら戦う、ザ・ダンスステージのボス戦となります。

 オープニングにあった通り、『ダンシングフィーバー』のルールが適応されます。
 オブリビオンと一緒にダンスし、観客を惹き『フィーバー』を溜め、踊りながらオブリビオンに攻撃を与えるという仕組みです。なおオブリビオンも同様に踊るため、プレイング次第では反撃されることもあります。

 レッツダンシング。それはキマイラフューチャーに未来を見せる踊りか、それとも──?
 皆様の華麗な踊りをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『キリ』

POW   :    縁切断(物理)
【手刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    縁消去(物理)
【何らかプラス】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【狛犬のような自動砲台】から、高命中力の【その感情を抱いた時の記憶を消す光線】を飛ばす。
WIZ   :    ただの八つ当たり
【なんかムカついた】から【強烈なビンタ】を放ち、【あまりの理不尽さからくる動揺】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:華月拓

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってな!
スカイダンサーの真髄を見せてやらぁ!

もしジャンルを選べるなら、ロック系の曲にしてもらいてぇ
聴衆の心をつかみ、ロック世代の視聴者はもちろん、
それ以外の世代にもおれのダンスを魅せるんだ!

さぁ、レッツダンシング!
長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「野生の勘」で咄嗟に踏み
おれが楽しめば中継されている視聴者も楽しんでくれる、
そう信じて踊り続けるしかねぇ!
とにかく見ていてワクワクするような、楽しい踊りを提供してぇ!

ここぞというときに攻撃できそうなら
『金狼ステップ』で攻撃していくぜえ!



【ROUND1】

 ステージに上がったのは、人狼の青年。ロックな曲をバックに高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)は登場した。
「よお!今日は存分に楽しませてもらうぜ!」
 どっと湧き上がる歓声。その殆どがキマイラフューチャーの住民で、観客席を埋め尽くしこれから始まるであろうダンスバトルを楽しみにしていた。テレビウム中継もバッチリである。今頃このステージの光景はどこかに浮いているホログラム掲示板に映っているだろう。
 諒一郎は左側に目を配らせる。
「……」
 じっと彼を睨むのは、オブリビオンの少女『キリ』。彼女がこのダンスフロアの女王にして、『ザ・ステージ』の守護者の一人。
 踊りながら戦う。それが、ダンスフロア内でのルール。
「敵同士といえど、これから踊る相手だ。よろしくな──っと!」
 勢いよく、弾丸のような速さで飛んできたのはキリの平手。野生の勘で察知し回避した諒一郎は、そのまま体をよろめかせ、片足でステップを踏み始める。
 登場した時からすでに、ダンスバトルは始まっていた。
 ロックな曲をリクエストしたのは諒一郎で、激しいドラムとギターの音が交差するいわば"男らしい曲調"は聴衆にインパクトを与えやすい。そして何より、ロックが一番ダンスバトルに向いていると諒一郎は判断したからだ。
「スカイダンサーの真髄を見せてやらぁ!」
 人狼だからこそできるダンスを。
 長く鍛え上げられた脚を見せつけながらつま先で床をタップする。しかし胴は柱になったように一切動かない。それを軸に回転し、両腕を広げバレエの如く倒れるか倒れないかのバランスを取る。
 常につま先が移動し続けているにもかかわらず、軸がブレない。情熱的な激しさがありながらそこには美しさがある。
 ──ステージに上がった狼は、汗とユーベルコードの輝きに照らされ黄金色に変わった。歓声が増し、諒一郎への応援のコールがフロアを占める。
「Foo!もっとおれを見て行き、っとぉ!」
 勢いは完全に諒一郎が掻っ攫っていった。だが、それを許さない者が一人──ステージの女王、キリだ。
 彼女が召喚した狛犬のような自動砲台が、真っ青のレーザーを一切動かぬ諒一郎の胴へ放ったのだ。
 だが当たらない。踊ることこそが彼の"野生"。すなわち、最高のテンションで踊っている彼に、攻撃を当てることなど不可能。『金狼ステップ』とはこのことか。
「お返しだぜ、お嬢ちゃん!」
 体を思い切り捻り、バク転して頭と両腕で着地する。そこから繰り出されるのは、鎌鼬のような回転蹴りだ。
「……ッ!」
 ヘッドスピンし、全身を使った台風となった諒一郎に近づけない。レーザーもアレでは何度撃とうが当たらないだろう。二度目のムカつきを起したキリは弾丸ビンタを放とうとしたが、諒一郎の蹴りに弾かれたじろぐ。
 完全に勢いに押され攻撃も失敗したキリは、悔しそうに歯を食いしばりながらダンスを再開した。
「みんなありがとう!最高だッ!!」
 彼はヘッドスピンから片腕で飛び、華麗に着地してキメポーズを取る。
 観客から受け取った楽しいという気持ちが、諒一郎が楽しいという気持ちが、一つになった瞬間だった。

【ROUND1 CLEAR】

大成功 🔵​🔵​🔵​

チャド・アランデル
【心情】
かっこよくダンスー!
レッツプレイミュージックだねー!
せっかくの場なのに無表情なんてつまらないー!
盛り上がって沸かせてこそのダンスでしょー!

【行動】
【ダンス】で勝負ー!
だけど普通じゃつまらないから【鋼線】を使って【ロープワーク】の【早業】で、リズムにあわせて縄跳び【ダンス】だよー!

ここ一番の見せ場では選択UCを使って、僕のダガーを変えて視覚としても盛り上げるよー!

僕の【ダンス】による【マヒ攻撃】、みんなしっかり観て痺れてねー!

【その他】
おっとー、これは鋼線だから近付いたら危ないよー?

手伝ってくれる人がいるなら、鋼線の両端持って回してくれたらバリエーションが増えるよー!

アドリブ歓迎



【ROUND2】

 次の挑戦者はキマイラの青年、チャド・アランデル(キマイラのシーフ・f12935)。
 選んだ曲はポップス。情熱的なロックと変わり、明るく馴染みやすいリズムと曲調にチェンジしてゆく。
「ダンスで勝負ー!」
 彼が勢いよく片腕を上げ声をかけると、早速リズムに合わせダンスを始めた。
ちらりと隣で同じダンスを始めるキリを見る。せっかくの場、白熱するダンスフロアだというのに、彼女は無表情だ。
 相手はオブリビオン、世界を破壊する者というのであれば、彼女がどう思おうが撃破することには変わりない。しかしこの場において楽しいという感情を一切感じさせないその表情は、どこかつまらない。チャドはそう感じた。
 盛り上がって沸かせてこそダンスというもの。チャドは両手にフック付きワイヤーのボビンを手にし、鋼線を張り始めた。
「ボクのダンス、見ててね!」
「……!」
 フックを床に落とし固定した瞬間、キリからビンタが放たれた。彼はピンと張った鋼線を巧みに操り、鞭のようにしならせる。
 鋼線と素手、それがぶつかり合ったにもかかわらずギィン!と金属音が響く。
「おっとー?近づいらた危ないよ」
「……」
 二度、三度、立て続けに放たれるビンタに、チャドは鋼線をしならせ弾く。
 足は曲に合わせてステップを踏み、両手はどちらも楽しさを表現する動きであるにもかかわらず、鋼線をと素手が連続でぶつかり合いリズムゲームのように歪なサウンドエフェクトを発生させる。
 さも組手のような光景、しかしダンスでもあり、観客のボルテージは両者に向けられた。
「隙が、ないねッ!」
「……」
 縄跳びダンスをするつもりだったが、止まらぬビンタに鋼線を踊りに合わせてしならせることしかできない。しかしキリが鋼線に対し放つのは素手。弾丸のようなスピードで繰り出すビンタが、赤く見えるようになってくる。
 その瞬間をチャドは逃さなかった。
「けどそろそろ、僕は上がらせてもらうよ!」
 金属音が途切れ、リズムゲームはキリがよろめいたことで終止符がつく。
 ステージの上に突き刺さる花びら。それはチャドのユーベルコード『舞い散る花のように(ミミックオブザインセクト)』によるもの。両手にあるボビンを手放し、手持ちのダガーを花びらに変え彼女に投げつけたのだ。
 ダガーはビンタを弾き、ダメージが蓄積していた彼女の手を無力化させた。よろめきダンスを中断してしまったキリは注目を失い、チャドにダンスフロアの熱を持っていかれた。

【ROUND2 CLEAR】

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャック・ソウル
【心情】ダンスは得意じゃないけど盛り上げるのは得意だからなんとかなるかな?

人数が多い方が盛り上がるかな?カモーン!ドールゴースト達!ユー達はミーのダンスをマネして踊るだよ。それじゃミュージックスタート!

【パフォーマンス】でツイストやモンキーダンスをUC【Help me Doll ghost】のドールゴースト達と一緒に踊る。

サァ!ツイストだよ!シェイク!シェイク!身体を前に倒してお尻をフリフリ!次はモンキーダンス!腕をフリフリ!いいね!いいね!

さりげなくドールゴースト達がダンスに紛れて【2回攻撃】【だまし討ち】で攻撃。



【ROUND3】

「カモーン!ドールゴースト達!」
 『Help me Doll ghost (ヘルプミードールゴースト)』!
 ステージの上で指を鳴らし、同じジャック・オー・ランタンを被った小さなドールゴーストが約百体現れる。
 ジャック・ソウル(パンプキンヘッド・f02764)はこの勝負を数の差に賭けた。ダンス勝負とはいえ、偏に一人にこだわる必要がない。古今東西、踊りは皆で楽しく。儀式だってそう。
 一人より多く。バックダンサーを付けることで勝負する。
「ミュージックスタート!」
 ソウルの合図と共に、流れていた曲が変わる。おそらくキマイラフューチャーの住民は殆ど聞いたことがないであろう、ポピュラーな音楽ジャンル。その名も"スカ"。UDCアースのジャマイカ発祥の音楽だ。
 その曲は、モンキーダンスととても親和性が高い。
 ソウルとそのバックダンサー、そしてキリも曲に合わせてモンキーダンスを始める。
 テンポが緩くリズムに乗りやすい、楽しい曲だ。観客もリズムに乗ってノリはじめ、一部は同じように踊り始めた。
 モンキーダンスは、その名の通り踊りが猿の動きに似ていることから来ている。動作は手を上下に動かすだけ。なんともシンプルだが、シンプルだからこそ数が勝る。
「……!」
 観客の支持がソウルに集中している。すぐにこの勝負の裏に気づいたキリは、こみ上げてきた怒りをバネにビンタを放つ。
 狙いはもちろんソウル。だが、叩いたのは違うソウル──バックダンサーゴーストの一人だ。
「……数を増やしたのはそういうことか!」
「えっユー喋るの!?」
 腰の捻りも追加し、曲に合わせて踊りのバリエーションを増やしていたソウルは、驚愕しながらも踊りを続ける。
「ツイスト!シェイク!シェイク!さあユーも一緒に!」
 体を前に倒し、お尻をフリフリ!
 ソウルの掛け声に合わせ、観客のムードは一体化する。キマイラたちの声援が大きくなり、ソウルへの支持(フィーバー)も増す。
 勝負は決まった。
「くぅ……!」
 キリもまた同じダンスで勝負をしているが、ところどころダンスに紛れてやってくるドールゴーストが逆に攻撃を加えてくる。ビンタはバックダンサーゴーストが盾になり、ドールゴーストは足にしがみついたり背中を押したりしてバランスを崩そうとしてくる。
 勝負は最初からついていた。キリは尻もちをつき、曲の最後をキメることができずに終わった。
「ミーがドールゴースト達を呼んだ時、止めてくると思ったよ」
 けど、律儀だね。
 全ての声援を掻っ攫い、ステージの上で煌びやかに輝くソウルは、倒れたキリに手を差し伸べた。 
 キザなふるまいに苛立ったのに、なぜかその手にキリはビンタを打てなかった。

【ROUND3 CLEAR】

大成功 🔵​🔵​🔵​

天春御・優桃
 客入りは上々じゃねえか。それじゃ、俺も一肌脱がなきゃ、だろうよ

 戴天空刃、転地鉄塵を纏い、大きく【ジャンプ】から登場。【存在感】を出してていく。
 UC、天土で正しく空中を舞いながら、【ダンス】の中に【誘惑】するような、しかし【礼儀作法】に倣うような仕草も取り入れて人目を引けるか?
【空中戦】で敵を翻弄しながら、【第六感】働かせて、敵の攻撃も舞うように避けて、手足に纏った風と鉄で攻撃。
それじゃあ、見逃さないでくれ?

アドリブ、連携歓迎



【LAST ROUND】

 最後にステージに参入したのは、天春御・優桃(天地霞む・f16718)。閉幕に相応しき神のスクラップビルダーは、悠々とキリの隣へ立った。
 これまで何度もダンスバトルをしこのステージを支配していた女王は疲弊しており、立っているのもやっとのように思える。優桃はそんな彼女の様子と、観客席を埋め尽くすペンライトの光を一瞥し口を開いた。
「なるほど。俺が最後か」
 特に順番など知らされていなかったためか、客入りを見て彼は頷いた。これが最終ラウンドと気づいたのは今だが、曲は変えない。
 むしろ、選んだ曲は今の状況にピッタリだ。
「ふッ!」
 優桃はその場から勢いよく飛び上がる。4m、5mと高く、6mほど浮いたところで、体に捻りを加えながら落下する。
 疲労困憊。しかしキリにはそれが何か見えていた。
「俺に言わせれば、天も土なり也ってな」
「行け!」
 彼女の足元、そこに現れた狛犬二体が額を優桃に向けた。ユニコーンの如く伸びる角、否、砲塔から青色のレーザーが放たれる。
 だが、彼には当たらない。これまでの疲れが、ダンスバトルで摩耗した体が、召喚獣にまで影響しているのだ。
 優桃はレーザーをバックに体を回転させ──床から1m離れた空中に着地する。
「Let's dancing」
 パチンと指を鳴らし、彼が選んだ曲が流れ出す。
 一見エレクトリカルな曲調、ではない。これはアレンジだ。
 ダンスの〆に相応しき曲。それはどこかロックに似た、そしてポップで弾けることもできる──。
 ビートアレンジ版『コロブチカ』だ。
「は──!?」
「さあ踊ろうか!」
 驚愕するキリを他所に、優桃はそのまま踊りだす。
 神である彼に床は不要。空中こそがダンスステージだ。彼はまず最初に、下半身だけを動かすコサックダンスを始めた。
 単純な足さばきは靴と床の鳴る音でリズムを奏でるが、空中を蹴っている故靴の音は一切ない。そして、コサックダンスと言えば単純な両足の入れ替えというイメージが強い。
 だが本場は違う。足だけを動かす、それは単純動作に収まらない。機械のアームの如くキリキリと、微振動を加えながらも動作は大きく鈍さを一切見せない。シンプルであり複雑な踊りだ。
 UDCアースでは、『コロブチカ』はフォークダンスの代表曲として有名だ。そして、コサックダンスと徐々テンポが上昇してゆくコロブチカは圧倒的に相性がいい。
 そして何より、彼は空中で踊っている。
「くぅ……!」
 徐々に上がってゆくテンポ、そして彼が踊るのは激しく体幹に大きく負担のかかるダンス。これまでのダンスバトルと同様、彼女は相手のダンスと同じダンスで勝負をしていた。しかし同じ土壌に立てない。否、彼は土壌にすら立っていない。
 既に勝負は決まっているようなものだ。ボルテージは彼が全て持って行った!
「嬢さん」
「ッ!?」
 上下逆だが、顔が合う。目線がぴったりと交わる。
「この勝負、頂くぜ」
 優桃はきりもみを加えたバク転で顔を合わせ、両手にある風でキリの喉元を殴り飛ばした。
 吹き飛ぶ。このステージの女王だった者は場外へと放たれ、後に残ったのは神のみ。土煙など、対戦相手が消えたことなど、観客は気に留めない。
 今舞台に立つ彼こそが、このダンスステージの王者だ。

 踊るごとに、何かが掴めると感じていた。
 踊れば踊るほど、繋がりというものを感じた。
 例え相手が敵であろうと、それは本物だった。
 意識が消える、その前に。あふれ出したこの想いをダンスで表現できたのか、確かめたかった。
 だが、もう過ぎたことだ。
 美しいダンス。煌びやかな汗を流し笑う神の姿を最後に、彼女は目を閉じた。

【THE DANCE STEAG CLEAR】

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月25日


挿絵イラスト