バトルオブフラワーズ⑤〜フリーダム・イレイサーズ!
●大戦争『バトルオブフラワーズ』勃発中
オブリビオンに追われていたテレビウムたちを猟兵が助けた結果、システム・フラワーズへと続くメンテナンスルートが開放され、キマイラフューチャーがふたつに割れてしまった。
現在、システム・フラワーズはキマイラフューチャーのオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』により占領されている。猟兵たちはキマイラフューチャーの未来のため、驚異の大戦争『バトルオブフラワーズ』に臨むのであった。
●作戦
「僕たちの目的地、『システム・フラワーズ』の周囲は6つの『ザ・ステージ』で守られています。今回僕たちが攻略するのは、『ゲームステージ』でございます」
グリモアベースの窓際でルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が説明をする。
行き先は、『ゲームステージ』であった。
「皆様には、ゲーム内のデジタル世界に入り込み、ゲームクリアを目指して頂きます。
クリア直前になると敵が妨害に来るようですので、撃破してくださいませ」
「ゲームについて解説をしましょう」
ルベルは魔導式天球儀を起動させ、映像を壁に投射した。映し出されたのは、大きなキャンバスのようなフィールドだった。
「皆様は、このフィールドにて戦って頂くことになるのでございます」
ルベルは真面目な表情で解説を始めた。天球儀を操作すると、動画が流れ始めた。
「まず、このキャンバスには自動で次々と絵が描かれます」
動画の中で、キャンバス・フィールドに絵が描かれていく。
「そして、皆様はこの絵を消していく『イレイサー』となるのでございます。イレイサー、すなわち……消しゴムでございます」
動画の中で、『イレイサー』がキャンバス・フィールドを縦横無尽に走り回って描かれた絵を消していく。
ルベルは一度動画を止めた。
「簡単なゲームでございますナ」
にっこりと微笑む。いつの間にかその手には、消しゴムがあった。
「消しゴムは、使うと減っていってしまいます。『イレイサー』も、また同じ。
皆様は消せば消すほどに消耗してしまいます。ひとりで全てを消すことはできません。一方、自動描画は消耗を知りません。同じペースで延々と絵を描き続けます。
ゆえに、協力プレイが大切でございますぞ」
かちり、と再びスイッチを入れれば、映像が切り替わる。
たくさんの『イレイサー』たちが協力しあい、描かれる絵画を消していく。
「それになにより、僕たちはユーベルコードが活用できます。
例えば、こんな風に」
映像がさらに切り替わる。
映像の中で、『イレイサー』は必殺技を使って消耗した仲間を回復した。
また別の映像では、『イレイサー』は必殺技を使って描画をストップさせたり遅らせた。
「描画速度を上回り、キャンバスを真っ白にしてしまえば『イレイサー』の勝利でございます。真っ白が近づくと敵さんが妨害に出現いたしますゆえ、敵さんを撃退しつつ、クリアを目指して頂きたいのでございます」
ひととおり説明すると、ルベルはグリモアを淡く光らせてゲーム世界への導きとする。
「準備ができた方々を、僕は同時にゲーム世界へと転移させます。協力プレイの連携プレイでございますナ。キマイラフューチャーの未来がかかった大切な作戦ではございますが、せっかくの機会でございます。ゲームも楽しんでいらしてくださいませ」
転移の間際、ルベルはそっと猟兵へと頭を下げた。
「よろしくお願いいたします」
瞬きすれば、もうそこは真っ白なキャンバスの上――『イレイサー』のゲーム世界だ。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回はキマイラフューチャー、リアイベ『バトルオブフラワーズ』のシナリオ。ゲーム世界でゲームのクリアを目指して頂く、という作戦です。
広いキャンバス・フィールドの中で走り回り、『イレイサー』としてキャンバスに描かれた絵を消していく、というゲームです。
ユーベルコードをご指定頂き、「ゲーム内でこういう必殺技として活用する」と書いて頂ければ必殺技を使うことができます。
また、クリア目前になると敵が妨害するために出現しますので、出現した敵の撃破もお願いいたします。
キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
第1章 集団戦
『つよくてクールなアニマルズ』
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POW : モグラさんドリル怪人・ウェポン
【モグラさんドリル兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : カエルさん殺法怪人・ジェノサイド
【カエルさん殺法攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ネコちゃん拳法怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ネコちゃん拳法】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
⚫️絵が描かれていく
キャンバスの半分ほどが描かれた状態でゲームはスタートする。今回、描かれているのはファンタジー風の世界地図だ。山があり、森があり、海があり、町や城があり、魔王の城もある。イレイサーが消しても消しても、絵はどんどんと描かれていくのだった。
三上・チモシー
キマイラフューチャーが大変なことになってるってのはわかってるんだけど、なんかこれ楽しそうだねー
わぁ、ホントに自動で絵が描かれていってる
ここを走り回れば消せるんだよね? よーし、がんばるぞー♪
とにかく走り回って、どんどん消していくよ
タイミングを見て必殺技【猫行進曲】を使用
召喚された26匹のるーさんが一斉に走り回って、1回だけ広範囲の絵を消せる!
敵が現れたら、カエルさん殺法攻撃は【見切り】で避けて【猫行進曲】を使用
合体るーさんの猫パンチで攻撃だー!
アドリブ・連携歓迎
イヴ・クロノサージュ
アドリブ歓迎◎
連携希望◎
WIZ
――
▽心情
わー!電子世界に入っちゃうの!?
ダイブシステムだー!楽しいー!
キャンバスのイラストを消しゴムで
消していくゲームだねっ!
まっかせっなさいっ!
護衛に6mのロボット、魔導巨兵をそばにつかせ
ノリノリで消しゴムで
消していきます。
って、この戦いキマイラフューチャーで
中継されてたり?
目立つのは、ヤだからその時は隠れようー。
他の猟兵さんたちがやってきたら
応援するね!
なんか能力とかも凄そうだし
敵さんは他の子にお任せして
私は応援と地味に少しずつ消していく作業を頑張るね
▽イヴ
お人形
▽魔導巨兵
武装にイレイサー機能を付けて
ビームガンを広範囲に乱射(範囲攻撃)
効率よく消していきます
アイ・リスパー
「効率的に絵を消すのでしたら、電脳魔術士である私にお任せください!」
【チューリングの神託機械】で電脳空間の万能コンピューターに接続。
情報処理能力を高めて、絵を消していくのに最適な経路を計算します。
【ラプラスの悪魔】により次にどこに絵が描かれるかもシミュレートして計算に加味します。
「このルートなら消耗を抑えて最速で絵を消せますっ!
はうっ」
急いで駆け出したので、運動音痴が祟り、何もないところで転ぶのでした。
「敵に妨害はさせませんっ」
オブリビオンが現れたら【マックスウェルの悪魔】による炎の矢と氷の弾丸で迎撃です!
手の中に現れたマシンガンから炎と氷を放ち、シューティングゲームのように敵を一掃です!
トリテレイア・ゼロナイン
だいぶこの戦争の特殊な形式に慣れてきました
(餅つきしたりダンスしたりレースゲームしたり)
星が二つに割れようと、デジタル空間であろうと騎士として戦い、キマイラFに安寧を齎しましょう
UCで機械馬の●怪力で曳かせる戦車(チャリオット)を用意
後ろにはローラー状のイレイザーを装備させます
制御は機械馬の●操縦で行い、自分は描画状況の確認に専念。戦車の機動力を活かし縦横無尽に動き、キャンパス内に、●破壊工作として用意したゲームシステムに介入する●ハッキング装置をばら撒いて描画を妨害しつつ消してゆきます
立ち塞がる怪人達は戦車の突撃で蹴散らしていきましょう
……今回の戦争では騎士として振舞う戦いは難しいですね
ハロ・シエラ
なるほど、大体分かりました。
しかしユーベルコードまで組み込んでしまうとは、ゲームってすごいです。
私の理解も追いつきませんが……とりあえず相手よりも多く動けば勝ちと言う事ですよね。
ここはとにかく手近な所から【早業】で消していきましょう。
また、ユーベルコードで白いキャンパスを凍らせていきます。
恐らく上手く絵を描くことが出来なくなるのでは無いでしょうか。
攻守をどちらもこなしていけば、きっとどこかで均衡が崩れるでしょう。
こちらが上回るなら、いずれは敵と出会うはず。
ユーベルコードを相殺されては厄介です。
敵の出現を【第六感】で察知し【先制攻撃】を仕掛けます。
可能であればキャンバスごと凍らせて見せましょう。
ペンテシレイア・メガエラー
おぉー、デッカイ地図ダナー。オモシロイな!何カ消しても元に戻ってるゾ!とりあえず、コレ消せばイイのかー?
森で大事なのは腕っぷしと速さ!
『ライドオンディオメーデース』で暴虐の巨大馬を召喚して、騎乗し人馬一体となりイレイサーします。その際、農耕馬の如く畑を広範囲に渡って耕すようにキャンパスの絵を消していきます。
妨害してくる怪人に対して
森のナカマたちカナ?
それにしても…ウマそうなカエルダナー…きっとイイ肉になる!ディオもそう思う?ウマく敵の攻撃を避けて、戦えたら味見してイイゾ!!
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
必殺技:
小さなイレイサー達を周囲に展開して面で消していく。ただし、面での展開となるため消耗は大となる(と思う)
ただ、描画を包囲するように展開もできるため使いどころでは強い(かな)
作業
周囲への展開は【学習力】を使用してその局面毎に判断する
自動描画を追い詰めるように描画するため【ダッシュ】は多用する
「なるほど、直線ですか」
「じゃ、ここはべったり範囲で消しますよ」
「そこは追い込みたいです。足り…るか?」
戦闘:
SPD
「君達が塗っていたのか。依頼は依頼だがやりにくい」
「む、カエルさん殺法…噂に聞いていたが恐ろしい」
超高速連続攻撃を誘い【残像】で避け、隙ができたら抜刀して斬る
●絵の具の匂いがするフィールド
瞬きひとつ。
鼻腔を擽るのは絵の具の匂いだった。
出撃した猟兵たちの目の前には、広いキャンバスがある。遠く、遠く。味方の姿が見えた。広いキャンバスの至るところに、散らばって彼らは出現していた。
広いキャンバスに次々と絵が描かれていく。
ゲームはもう、始まっているのだ。
●始まっているのだ! まずはメンバー紹介
◆ペンテシレイア・メガエラーはアマゾネス女王様だ
「おぉー、デッカイ地図ダナー。オモシロイな! 何カ消しても元に戻ってるゾ! とりあえず、コレ消せばイイのかー? 森で大事なのは腕っぷしと速さだゾ、マカセロ!」
ペンテシレイア・メガエラー(エリーニュス三美姫・f06903)が野性的な笑みを浮かべた。アマゾネスの森出身の強い女ペンテシレイアが暴虐の巨大馬を召喚する。
「ディオ! ゴーゴーイレーイス!」
颯爽と騎乗した女王様は陽気に声をあげ、人馬一体となってフィールドを駆ける。ディオの周囲には複数の小さなイレイサーが引かれていた。駆けるにつれ、小さなイレイサーたちが広範囲を耕すように絵を消していく。
◆三上・チモシーはカラフルで楽しいお子様だ
「キマイラフューチャーが大変なことになってるってのはわかってるんだけど、なんかこれ楽しそうだねー」
南部鉄瓶のヤドリガミ、三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)がピンク色の瞳をきらきらと輝かせた。足元には草原が描かれていく。
「わぁ、ホントに自動で絵が描かれていってる」
びっくりしたように一歩飛びのけば、甘やかな色彩の袖がふわりと揺れて草原に咲く花のよう。
「ここを走り回れば消せるんだよね? よーし、がんばるぞー♪」
カラフルなチモシーが元気に走り回れば、するすると絵が消えて草原に白い道ができていく。
「どんどん消しちゃうよー♪」
明るい声がフィールドに響けば、味方のこころに春が吹く。
◆イヴ・クロノサージュは天使なサポーターだ
「わー! 電子世界に入っちゃうの!? ダイブシステムだー! 楽しいー!」
少し離れた場所では、イヴ・クロノサージュ(《機械天使》花と自然を愛する機械人形・f02113)も歓声をあげていた。
「キャンバスのイラストを消しゴムで消していくゲームだねっ! まっかせっなさいっ!」
イヴは護衛役として6メートルのロボット、魔導巨兵をお供にしながらノリノリで絵を消していく。そして、ふと何かに気づいた様子で動きを止めて魔導巨兵の傍へ寄る。
(この戦いキマイラフューチャーで中継されてたり?)
キマイラフューチャーといえばテレビウムによる中継だ。事前情報では中継の話はなかったが、その可能性は十分にある。イヴは少し恥ずかしそうにしながら魔導巨兵に隠れるようにして髪の乱れを直した。
(目立つのは、あんまり……)
控えめな少女は他の猟兵たちを見た。
◆トリテレイア・ゼロナインはホワイトだけど時々ブラックだ
「だいぶこの戦争の特殊な形式に慣れてきました」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が呟いた。彼の優秀なブレインでは今、走馬灯のように戦争の記録が再生されている。餅つき、ダンス、レースゲーム……3、3、3、3、4、4、4、5、6。得意分野がわかりやすい。
「星が二つに割れようと、デジタル空間であろうと騎士として戦い、キマイラFに安寧を齎しましょう」
ビルドステージが得意なウォーマシンが今日用意したものは――。
「ロシナンテⅡ!」
毅然とした声と共に姿を現したのは、機械馬のロシナンテⅡに怪力で曳かせる戦車(チャリオット)。後ろにはローラー状のイレイザーを装備させてある。
このロシナンテⅡはたまに自爆させられたりする。
白いウォーマシンは、ロシナンテⅡに対してはなかなかのブラックだ!
◆アイ・リスパーはハッカーで運動音痴ちゃんだ
「効率的に絵を消すのでしたら、電脳魔術士である私にお任せください!」
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が自信に満ち溢れた声をあげ、電脳空間にアクセスしている。半透明のパネルが宙に煌めき、アイの意思通りに計算式が展開されていく。計算しているのは、絵を消すための最適な経路だ。
「シミュレーション実行……」
小さな声と共に『ラプラスの悪魔』が発動されれば、絵の描画シミュレート情報が計算へと加味されていく。
「わかりました。このルートなら消耗を抑えて最速で絵を消せますっ! はうっ」
勝利を確信した声と共に駆けだしたアイは、次の瞬間すってんころりと何もないキャンバスに躓いて転んだ。情報処理に長けた少女には欠点があった――アイは、運動音痴だったのだ。
◆ハロ・シエラは真面目な努力家だ
「なるほど、大体分かりました。しかしユーベルコードまで組み込んでしまうとは、ゲームってすごいです。私の理解も追いつきませんが……とりあえず相手よりも多く動けば勝ちと言う事ですよね」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)がアイに手を差し伸べながら呟いた。
「うう、ありがとうございます……」
眉をへの字にしながら立ち上がるアイへと生真面目な視線を向け、ハロが艶やかな黒髪を揺らして首をかしげる。
「このルートなら、消耗を抑えて最速で絵が消せるのですね?」
赤い瞳が交差する。
頷きひとつ、ハロは最短ルートを走り出す。
「私があなたの足になりましょう。ですから、アイさんは安心して皆にご指示を!」
◆仁科・恭介は一途な大食いダンピールだ
「最短ルートで消していくのも有効ですが、より攻める姿勢でイレイス展開してみるのはいかがでしょうか?」
仁科・恭介(観察する人・f14065)が柔和な表情な表情で提案する。その周囲には小さなイレイサーたちが展開されていた。
「例えば、こうです」
実演してみせる恭介。
「自動描画が今、描いている部分は巨大な迷路状の森林地帯です」
示す先には自動で描画されていく森林地帯があった。恭介は面を器用に展開して囲い込むような動きを見せる。
「ほら、囲ってしまえば」
描画ポイントを包囲してしまえば、描画が右往左往して困っているようだった。
「絵を描くときには筆の流れというものがありますね。
流れる先に待機して封じることもできますよ」
自動描画の先を読むようにして恭介は軽やかに回り込み、描画の妨害をしながら絵を消していく。
「少し消耗が大きいのが欠点かな」
ぼそりと呟けば、アイが声をかけてくる。
「その動きを、皆さんでしましょう!」
●作戦はすでに始まっていた
最短ルートを駆けるハロは駆け抜けると同時に掌から赤い冷気を放ち、白いキャンバスを凍らせていく。ハロの走り去った後を自動描画が山脈を描こうと緑を拡げていくが、凍結した部分にはうまく絵の具が乗らない様子だった。
「ハロさん、すごいです。描画が妨害できていますよ!」
アイが遠くで手を振っている。そして、なにもないところでまた転んだ。
「だ、だいじょうぶですか」
アイさんは転びやすい。ハロは覚えた。
「アイ、ディオに乗るかー?」
ペンテシレイアがニカッと笑って巨大馬のディオにアイを拾い上げる。
「あ、ありがとうございます……」
「こちらも乗せられますよ、なんといっても戦車です」
トリテレイアがロシナンテⅡと戦車をここでアピール!
「じゃあ、どっちがアイを乗せるか勝負ダナー!」
「いざじんじょうに勝負、ですね」
ペンテシレイアがキャンバスの東へディオを走らせ、東一帯に広がる森林地帯を消していく。
トリテレイアは対抗するように西へロシナンテⅡを走らせ、海を消していく。
アイはというと、元の場所に残って転ぶ前と同様に指示を出していた。
「その調子でお願いします、次はおふたりとも逆走して北と南に分かれてください」
「その勝負はどうやって勝敗を決めるんだ……?」
思わず恭介が呟く。手には携帯食料の干し肉があった。
「むっ、肉!」
ディオが急停止する。ペンテシレイアのオレンジの瞳がじーっと肉を見つめた。
「……ど、どうぞ?」
恭介が干し肉を差し出すと、ペンテシレイアは大喜び。
「肉一緒に食っタラトモダチ! オマエトモダチ!」
なんと友情が生まれた!
「勝負はもうよいのでしょうか」
ハロがそっと呟いた。呟きながらも真面目なハロはどんどんとキャンバスを白に戻し、凍結させている。
「ハロさんハロさん」
陽気な声がかけられた。
「はい?」
見ると、チモシーがハロが凍結させた道をするーーっと滑っているではないか。
「これたのしいぞー♪」
チモシーはご機嫌であった。
「よかったです」
ハロは眦を柔らかくして微笑んだ。
「た、たいへん」
一方その時、イヴはスマートフォンにてこのゲームが生中継ではないものの、公式記録として動画撮影されており後日キマイラフューチャーのネットに公開予定であることを知る。
「みなさん、このゲームの様子が動画に撮影されています……!」
「な、なんだって」
猟兵達は顔を見合わせた。
●大丈夫だ、とてもシリアスだ
アイがキリッとした声をあげる。
「今です! 皆さんの力をあわせて!」
トリテレイアが重々しく頷き、声を放つ。
「描画状況は把握しています。ご覧ください。基本となるライン描写の動きが西から東へと奔ろうとしています。イレイス修復の描写は北をメインに南下の動きを見せています」
恭介が干し肉を仕舞いながら頷いた。
「私は範囲を抑えることができるから、基本のライン描写を抑えてみせよう」
展開したイレイサーたちは、ここまでの激しいイレイスにより消耗していた。
「恭介さん! ひとりでは……あなたの消耗度では、もちません」
イヴが魔導巨兵の影から走り出る。控えめな彼女が今、仲間への献身を胸に勇気を持ち、声をあげていた。
「わたしが一緒にいきます! わたしたちは仲間です。ひとりも欠けずに、このゲームに勝ちましょう……」
青の瞳は誰よりも味方の無事を願う。
サポーターとして動くことの多いイヴにとっては、いかに敵を倒すかよりもいかに味方の犠牲を抑えるか、が大切なのだ。
「そうです、協力すれば、犠牲はゼロでクリアできます。私の計算によると……きゃっ」
アイが転んでいた。
(段々アイさんが転ぶのに慣れてきた気がします)
ハロが黙々と仕事をしていた。少し消耗してきただろうか。だが、ハロは動ける限りは休まず動くつもりだった。
(がんばらなきゃ)
そっと汗を拭い、ユーベルコードを発動させ続け。
「……ハロ様」
「え?」
そんな彼女を、トリテレイアがふわりと戦車へとすくいあげた。
「ご覧ください、ゲームは順調です。2、3人が休憩する余裕があります。少し景色を楽しむのもよいとおもいますよ」
声はあたたかい。
「では、すこしだけ」
ハロは戸惑いがちに頷き、フィールドで動く仲間たちを見た。フリーダムに動き回る仲間たちは統制が取れているような、取れていないような。個性が強すぎるのだった。
「ディオ! イレイサーが消えてるからちょっとマテー!」
「ひひーん!」
ペンテシレイアがイレイサーを補充しようとしてディオを止め。
「こちらのイレイサーがまだ余裕があるから少し分けましょうか」
恭介がイレイサーを分けようと歩み寄り、イヴが慌てた様子で走り寄る。
「そんな! 恭介さんのイレイサーは人に分けるほどの余剰はないじゃないですか。わたしが分けますから……」
「恭介、かわりに干し肉ヨコセ」
「ふふ……」
ハロは思わず笑みを零した。
「これで、勝てそうなのがすごいです」
「こういうのを猟兵パワーというのですよ」
トリテレイアが知識を披露するかのように呟き、機械音声がくすりと笑いを零す。
「この調子なら、クリアできます。消耗度の高い方対策も今、思いつきました……きゃぅ」
アイが転びそうになり、けれどすんでのところで耐えた。
「皆さん、わたしのイレイサーはまだ新品同様です!」
そういえばアイはずっと指示に徹していたのでイレイサーが消耗していないのだった。
「消耗度の高い方には、わたしのイレイサーを分けます。使ってください!」
この作戦により、猟兵たちのイレイサーに余裕が出る。
チモシーが明るく声をあげる。
「よーし! 全員で勝とう。大丈夫、できるよ」
声はお日様のように全員のこころに温かく届く。笑顔がきらきらと輝くようだ。愛らしい着物を翻し、元気いっぱいにチモシーがユーベルコードを発動させる。
「よーし、るーさん大行進だー!」
チモシーがくるりと森を消しながら必殺技を使用する。愛らしい華袖がふわりと舞い、裾の白フリルがやわらかく揺れ、ビタミンカラーのエフェクトライトが花のように満ち、次の瞬間には灰色猫の『るーさん』が召喚されていた。
「にゃー!」
「にゃあー♪」
「みゃ~ぁ!」
「うにゃあっ」
26匹のるーさんがのびのびとキャンバス・フィールドを走り回り、どんどん絵を消していく!
「うに゛ゃっ!」
「あっ」
1匹が凍結した部分につるりと足をとられ、転びそうになり――、
「にゃ!」
猫の体幹で難なく体制を整え、再び元気に走り出す。
「よ、よかった」
ハロがそっと胸をなでおろした。
「大丈夫! るーさんたちはスケートもできる!」
チモシーが冗談のような本気のような口ぶりで楽しそうに声をあげる。
「どんどんいこー!」
これがチモシーの必殺技『猫行進曲』なのだった。
「広いフィールドでるーさんも楽しそうだよー♪」
にこにこと笑うチモシーの甘いオレンジの髪は、毛先に移るにつれ爽やかに光に溶けるようなグラデーションを湛える。カラフルな男の子が笑う姿はまるで世界に満ちる希望の光にも似て、見る者のこころを明るくするのであった。
「わ、かわいい! にゃんこさん……っ」
魔導巨兵の影にこそこそと隠れながらイヴが眼を輝かせる。
「じゃあ、わたしはにゃんこさんをサポートしましょう」
イヴの魔導巨兵がイレイサービームを乱射する。にゃんこさんたちが走り回った後の隙間の絵が消されていく。
「頑張ってー! フレー! フレー! ふぁいとぉ♪」
にゃんこさんに熱い声援を送るイヴ。
「あっ、もちろん、にゃんこさん以外もふぁいと、です!」
白絹の髪が一生懸命に揺れ、儚げな少女が頬を桜色に染めて懸命に応援すれば、味方全員の動きがぐんと増すようだった。そう、この声援こそがイヴがサポート猟兵として引く手あまたな理由。控えめな彼女は、味方猟兵を支え、パワーアップさせる能力に長けているのだ。
「にゃんこさんを轢かないようにしないといけませんね」
戦車を縦横無尽に走らせながらフィールド全体の動きを把握しているのはトリテレイアだ。戦車が通過した後には、電子の破片のようなものがばら撒かれて白のキャンバスを上からコーティングしているように見える。
「変なものがありますね。これは、一体?」
アイがコーティングに気付いてデータ分析をする。それは、どうやらフィールドに作用するプログラムであった。
「これは、色をホワイトに固定している……」
「描画とはすなわち、キャンバスの白を他の色へと変える作用ですからね」
戦車はフィールドを固定するハッキング装置をどんどんばら撒いていく。
●敵さんはやってきた!
「はっ!」
きゅぴーん!
キャンバスを凍結させていたハロが第六感で敵の気配を察知した。
「みなさん! 敵ですっ」
声と同時に先制で赤い冷気が放たれている。
「ひゃああ!?」
出現したばかりの敵が一瞬で凍結された。
「見事な先制……!」
「それにしても、これが敵か……」
敵は気が抜けるようなゆるい雰囲気をまとったアニマル怪人ズだった。
「君達が塗っていたのか。依頼は依頼だがやりにくい」
思わず恭介が眼を瞬かせる。
だが、敵はゆるいなりにやる気のある怪人たちだった。
「舐めるなカエーっ」
カエルさん怪人がカエルさん殺法を披露してやる気アピールをしている。
「む、カエルさん殺法……噂に聞いていたが恐ろしい」
恭介は超高速連続攻撃を誘うように緩く回避の動きをみせた。期待通りに敵は攻撃を繰り出してくれる。だが、そこに恭介の姿はない。
「なにっ! 実体カエ!?」
驚きに目を瞠る敵。ほんの僅か生じた隙。それは恭介が平黒染めの狩猟刀を閃かせるには十分すぎる隙だった。
「カエエエ!?」
バッサリと斬られて倒れるカエルさん怪人。
「やっぱりやりにくい……」
倒れた敵を見下ろし、恭介は微妙な顔をして呟くのであった。
「敵に妨害はさせませんっ」
出現した敵めがけてアイがエントロピー・コントロール・プログラムを起動させる。アイの手の中にプログラムにより指定されたマシンガンが出現する。
「運動が苦手だと油断しましたねっ?」
マシンガンから煌々とした炎の矢と鋭い氷の弾丸が放たれれば、アイは逃げ惑う敵たちをシューティングゲームのように狙っていく。体を動かすのは苦手でも、ゲームとなれば話は別。天才的な腕前により敵は穿たれ、倒れていくのだった。
しかし、敵もやられてばかりではないのだ。
「モ、モグモグー!」
モグラさん怪人がドリル兵器を使い、イヴへと襲い掛かる。
「きゃあっ」
「イヴさん!」
ハロが咄嗟に庇いに走り、凍える盾とレイピアでイヴを守る。
「いけない、描画が――」
ふたりの両側から自動描画が迫っていた。ここまでのイレイスでふたりのイレイサーが消耗している。描画を避けないとイレイサーが消耗してしまい、ゲームから離脱してしまう結果もあり得る事態だった。
「おふたりとも! 新しいイレイサーです!」
アイがイレイサーの補充を飛ばす。
「受け取ってくださいー!」
決死の覚悟で飛ばした隙を狙い、カエルさん怪人が超高速の攻撃を繰り出していた。
「させませんよ!」
トリテレイアが大盾を手に割り込み、アイを守る。
「これでもっと戦える!」
「ありがとうございます!」
アイのイレイサーは届いた。イヴとハロはイレイサーを急いで補充し、迫る描画を消した。
「今度はこちらからですよ!」
トリテレイアの言葉と共にロシナンテⅡと戦車が敵を轢く。
ドカーン!
派手な音と共に怪人たちが吹っ飛んでいく。
「ご、豪快ですね」
ハロが呟いた。
「な、なかまが」
ネコちゃん怪人が唖然とし――、
「そこ、通りますよ」
声が掛けられたと思った瞬間には戦車が勢いよく怪人を轢き飛ばしていた。
「あぎゃああああ!!」
「ああっネコちゃん怪人がやられたモグ!」
「もう一度通りますね」
引き返してきた戦車がモグラさん怪人を蹴散らしていく。
「みぎゃああああああ!!」
「……今回の戦争では騎士として振舞う戦いは難しいですね」
騎士の道は長く険しい。特にキマイラフューチャーでは。
トリテレイアはそっとため息をつきながら怪人を轢いていくのだった。
「「ぎゃああああああああ!!」」
「動画、どんな感じに映ってるかな?」
イヴがそっと気にしている。
「なるほど、直線ですか」
自身もイレイサーを補充した恭介が敵を斬りながら仕上げとばかりにキャンバスを白く消していた。
「あ、恭介さん。そこ次に描画の基点となる予定ですね」
アイとトリテレイアが描画状況を知らせてくれる。
「じゃ、ここはべったり範囲で消しますよ」
べったりと範囲消去している恭介の脇をすり抜けるように灰色猫たちが走っていく。
「にゃーん」
「にゃんにゃんにゃーん」
「るーさん大活躍ー♪ 次は合体ー!」
チモシーがカエルさん怪人の連続攻撃を完全に見切って回避しながら笑顔で号令すれば、るーさんが合体を果たし。
「にゃあああーーーん!!」
首輪のタグに26と刻印された合体るーさんが猫パンチを繰り出した。
「カ、カエーーッ」
カエルさん怪人がぺしゃんとなる。
「そこは追い込みたいです。足り…るか?」
恭介はそれを背に淡々と仕事をしていた。
「あ、手伝いますっ」
ハロが手伝いに走る。
「はあ、はあ。な、なんて強い連中なんだカエ」
生き残りのカエルさん怪人がよろよろと撤退しようと這っている。
「くそう、同志たち……お前たちの仇は、かならず!」
目に涙を湛え、熱い思いを胸に抱き怪人はフィールドの外を目指し。
「森のナカマたちカナ?」
「カ、カエ……」
ディオに騎乗したペンテシレイアが涙目のカエルさん怪人の前に立ち塞がる。爛々と光る目が怪人を捉えた。舌なめずりするかのように笑み声が零れる。
「それにしても…ウマそうなカエルダナー……きっとイイ肉になる!」
声に同意するようにディオが首を振っている。
「!!?」
ぎょっとする怪人。
「ディオもそう思う? ウマく敵の攻撃を避けて、戦えたら味見してイイゾ!!」
「こ、こっちに来るなカエーッ」
女王様の許可が出た。ディオは大喜びで突進し、逃げる怪人を執拗に追い回すのであった。
ピロピロピロ! ピロローン!
「「!?」」
それは突然のことだった。混沌としたフィールドに聞いているだけで頭に花が咲きそうな音が鳴り響いたのだった。
『ゲームクリア! ゲームクリア!』
見ると、フィールドは真っ白になっていた。
「「や、やったー!?」」
猟兵たちは歓声をあげた。
『ゲームステージ・クリア!』
お気楽な電子音声がクリアを告げる。
こうして、彼らが挑戦したゲームステージは無事クリアとなった。
「おつかれさま! 他の戦場で会った時もよろしくね」
「次もクリアしましょう!」
明るい声とともに、猟兵たちは次の戦場へと向かうのだった。
そう、戦争はこれからが本番なのだ。
大成功
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