バトルオブフラワーズ⑧~其の薔薇を赤く塗れ!
●薔薇を黒く塗るヤツら
ぬりぬり。
ぬりぬり。
「黒こそまことの黄金律なんダナ」
「全ての論理は黒に通ずるんダナ」
ぬりぬり。
ぬりぬり。
ばっしゃばしゃ。
ある者は刷毛で。ある者はローラーで。ある者はペンキバケツを逆さにして、街を黒く塗っている。其の頭はフラスコだとか電球だとか、なんとなく理系を想像させる。けれどやってる事は完全に力業。
真っ二つに割れたキマイラフューチャー。ただでさえ大わらわだってのに、おまけに葬式宜しく真っ黒にされちゃたまらないぜ!
●グリモアベースにて
「たいへーん! キマイラフューチャーが真っ二つになったよー! って其れはみんな知ってるよね!」
メッティ・アンティカ(f09008)は今日もぴょんぴょん、跳ねている。まあさすがにキマイラフューチャーが真っ二つになったら跳ねるよね。うん。
「この前のテレビウム騒動で、システム・フラワーズからの救援要請があったのは知ってるよね。メンテナンスルートを開いたら、其の、キマイラフューチャーが真っ二つに割れるという事態が起きたんだけど……」
なんというか、大雑把だよね。この世界って。指先でかりかり頬を掻きながら言うケットシーである。ともあれ! と向き直り、拳を握ると。
「どうもシステム・フラワーズには、オブリビオン・フォーミュラがいついてるみたいなんだ! みんなの力でドーンとやっつけちゃってほしい! ちょっとややこしいルートだけど、君たちなら大丈夫!」
つまりはこう。
開かれたメンテナンスルートは全部で6つ。しかし、それら全てにそれぞれ“特徴”を持ったオブリビオンたちがいて、邪魔をしている。彼らの“特徴”を捉えて撃破して、戦力を削り切っている間だけ、システム・フラワーズに侵入、更に待ち構えるオブリビオンに対峙することが出来る。
「今回君たちに向かって貰いたいのは、このルートなんだけど……此処にいるオブリビオンたちは、街を黒く塗りつぶそうとしてる。何匹かのグループになって動いて、ペンキで街を真っ黒にしてるみたいなんだ。君たちにはこれを阻止して貰いたい! 相手は堂々と見つかりやすいところを塗りつぶしながら、君たちと戦う機会を狙ってる。だから、堂々と真正面から倒しちゃって構わないよ! 相手は戦闘に入ったら塗りつぶしを中断するから、とにかく戦闘して倒す! これだね!」
でも、負けそうだーってなった奴らがちょっとでも塗り潰しを行う事はあるかもしれない、とメッティは付け足す。
「塗り潰された箇所は、今のところ元には戻らない。だから気を付けてね。――敵は3匹一組で、幾つかの組が合同で動いてるみたいだ。中にはユーベルコードを相殺する力を持つ奴もいるみたい……気を付けて!」
じゃあ、開くよ!
小さな黒猫が手を差し伸べれば、戦場への道が開く。其の輝きを見ながら、キマイラフューチャーってカラフルだよね、とメッティは言う。
「僕、あのカラフルさが好きなんだ。だから、真っ黒になんてさせないでね! いってらっしゃい!」
key
こんにちは、keyです。
黒塗りを邪魔しましょう、というシナリオです。
●注意
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●目標
「塗りつぶしを阻止せよ」
●立地
よくあるキマイラフューチャーの街中です。
一般人はいません。エネミーが右往左往して、街を闇のような黒色に塗り潰しています。
戦闘に入ると塗りつぶしは中断されますが、負けを悟って塗りつぶしを優先する者もいるかもしれません。
如何に塗りつぶしを阻止するか、が重要となります。
●エネミー
なんだか理系なトリオです。
3人x3組で行動しています。9人グループで協力してぬりぬりしているようです。
●
とにかく相手を戦闘に引き込み、逃がさず殲滅する事が肝要です。
既に相手は塗りつぶしを開始しています。いつもよりシビアな判定になるかも知れません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
宜しくお願い致します。いってらっしゃい。
第1章 集団戦
『実験室トリオ』
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POW : フラスコ怪人・ウェポン
【フラスコ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 電球怪人・ジェノサイド
【電球攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : バッテリー怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【バッテリー】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クリス・カーライル
ふむ、、美しい色合いを塗りつぶすとは、、風情も何も無くなってしまうではないか、、美しい景色を守るなんて高尚な事を言う気は無いが、、酒が不味くなるのでな、、掃除させて貰うとするか。
戦闘
基本は脚で街中を駆けながら、
見敵必殺!
サーチアンドずばっとですね!
基本は見かけたら刀で接近戦に!
敵が多いときにはUCを使用して斬り裂いてやりましょう!
もし、敵が逃げ出そうとするならば、
用意したバトルアックスを投げつけて邪魔をするか、そのままぶつけてやります。
気をつけるのはリフレクション。
バッテリー怪人は特に一撃で仕留めるように立ち回ります。
確実に、しかし、迅速に!
美味しいお酒が飲める景色を取り戻すため頑張りますか
クラリス・ノワール
連携、アドリブ歓迎
キマイラフューチャー
鮮やかなものが溢れてる街
そう思って、楽しみにして来たのに
黒が黄金律?
全部が同じ色に、しかも黒にしたいだなんて
そんなの殆ど誰も望んでないのです!
絶対阻止なのですよ!
旅立つランプを半分使って、移動や黒くするのを邪魔する壁に
残りは、味方のいる方へ【おびき寄せ】たり、相殺に対抗させたり
他にも、インクや道具を燃やして悪あがきもさせないのですよ!
このオブリビオン達にも黒く塗る訳あるのかもですが
人が頑張って描いた物、駄目にしちゃいけません!
と言う事でグラビティスプラッシュ!
当たらなくてもいいのです
街に鮮やかな色や絵をつけて、倒す前に黒より綺麗なもの、見せてあげるのです!
「ふむ、折角の景観が黒い色で台無しだ」
クリス・カーライル(万物流転・f13877)は煙管を咥え、周囲を見回す。まだ被害は広がっていない。今のうちに仕留めれば、被害は最小限に抑える事が出来るだろう。
「美しい景色を守るー、なんて高尚な事を言う気はないが……」
黒ばかりの景色を肴に酒を飲んでも、とても美味いとは思えないだろう。実際、煙草の味も微妙に悪い。ような、気がする。これはやはり、仕留めなければなるまい。
「キマイラフューチャー……鮮やかな街だって、そう思って楽しみにしてたのに」
ふるふると震えるのはクラリス・ノワール(ブラックタールの新米絵描き・f07934)。色彩にあこがれる彼女にとって、この事態は非常に思わしくない。
「黒が黄金律だなんて、全部黒く塗るだなんて、そんなの誰も望んでないのです! 絶対阻止なのですよ!!」
「おお、気合が入ってるね。でも、ほら。肩の力を抜いて」
じゃないと相手を巧く斬れないよ。
微妙にズレたアドバイスをするクリスだが、クラリスは言われるがまま深呼吸を繰り返し、ふうと落ち着いたように吐息した。
「兎に角、街を塗り潰されるのは駄目です。止めましょう」
「ええ! じゃあ、囲い込みは任せるね!」
たん、と身軽に駆け出すクリス。刀の鍔に指をかけ、一気に刃を引き抜く。そのまま駆け出して、三匹で仲良く塗り塗りしているオブリビオンを斬り付けた。
「ム」
「出た、黄金律を乱す奴だナ」
「迎撃なんダナ、迎撃なんダナ」
周囲のオブリビオンもクリス――猟兵の存在に気付いたのか、塗るのを中断して攻撃を仕掛けてくる。すぽぽぽぽん、と頭のフラスコから小さなフラスコを発射して、フラスコ怪人がクリスを捉えようとするが――遅い。余りにも遅い。
「そんなんじゃ私を捕まえる事は出来ないよ、っと!」
刀が風を切る。三合もあれば十分だった、フラスコを全て切り裂くには。どうやら強度は通常のガラスと同じ。なら、斬れる。
「絶対に逃がさないのです。ランプ、私の想いを載せて飛んで……!」
クラリスが無数の炎を生み出す。その数は20と1。それらは彼女の想いを受けてふよふよと移動し、クリスが引き付けている間にオブリビオンを囲い込む。
「むむっ。定義された予感がするんダナ」
「定義とは存在の意味固定に他ならないんダナ」
「此処まで来ると哲学の分野なんダナ」
「何を言ってるか判らないけど、取り敢えず斬られてもらおっか!」
クリスも負けてはいられない。優先すべきは相殺スキルを持つバッテリー怪人。そいつを重点的に、あとはおまけ的に、次々と刀の錆へと変えていく。いや、錆にすらならない。怪人は致命傷を負うと、灰のようにさらさらりと宙に散っていってしまうのだから。
しかしクリスの剣を恐れて下がったオブリビオンは、嗚呼可哀想に、炎に巻かれて同じく灰になる。クラリスの願いは炎となって、抜けがたい檻となりオブリビオンを追い詰める。
「ムム、このままでは……せめて少しでも範囲を広げるんダナ」
あっという間に数を減らしていくクリスとクラリスを見て、不利を悟ったのか。炎の隙間を抜けて、オブリビオンが駆け出した。
「「逃がすか!!」」
二人の声が重なった。
クリスはバトルアックスを投げ放ち、クラリスは炎を掛け合わせて飛翔させる。
「む、これはいかん。これはいかんのダナ……」
すこん、と頭を両断したバトルアックス。おまけに炎が直撃し、目論見は敗れ去る。
「せめて、消える前に綺麗な風景を見せてあげます……!」
クラリスが言うと、素早く箒筆を組み立て、色を飛ばす。それは大地に緑と花を描き、黒く塗りつぶされかけた街に彩を添えた。
「ムム。……黒こそ黄金律。黄金律と思っていたが……」
其の後の言葉は続かない。オブリビオンは灰となって、さらり、消えた。
「この辺りのは粗方片付いたかね」
「ええ。なんとか……あの、ありがとうございました?」
「ん? んー、いいよ、別に。こっちこそありがとう。……煙草が美味い」
クラリスが大地に描いた自然風景。其れはキマイラフューチャーにはない色彩で、また乙なもの。クリスは咥えたままだった煙管を揺らしながら、少しだけ笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
わたしもこの世界の色が好き!キラキラで、ピカピカで、目眩がしそうな楽しい色。
真っ黒は綺麗じゃないからね…この世界には似合わないよ。
守ってあげなきゃね。
【深緑、底知れぬ恐怖を育め】を発動。最初っから本気だよ。
高く、大きく…限界無く。街を見下ろしながら戦場に向かうよ。
見つけ次第に攻撃、反撃なんて許さないから(存在感、恐怖を与える)(怪力、踏みつけ、範囲攻撃、衝撃波)
相手の攻撃は…今のわたしなら、きっと大丈夫。だから気にしないよ(オーラ防御)
はじめまして、小さなあなた達。
今日はおともだちは探していないの。だから、ごめんなさい。
さようなら。またどこかで…ね?
キマイラフューチャーは、自然こそ少ないものの色彩に溢れている。
ネオンの色。人々の着た服の色。キラキラしてピカピカで、眩暈がしそうな楽しい色。だから、真っ黒なんてこの世界には似合わない、そうアウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は思う。
「だから――真っ黒に染めるあなた達を許す訳にはいかないなぁ」
ぎらり。アウルの緑眼が凶暴な金色に染まる。――緑色の目をした怪物とは、誰が語った言葉だろう。怪物は、ああ、金色の目をしている!
背の高い森に踏み入ってはならぬ。其れは遠くダークセイヴァーでの伝承。背の高い怪物が、金色の目で見ているから。だから、背の高い森(かのじょのいかり)に踏み入ってはならないのだ。
「――!!!」
高らかに上げた咆哮に、オブリビオンたちは思わずそちらをむく。大きな怪物がやってくるのを確かに認めた。フラスコ怪人がフラスコを生み出して打ち出すが、怪物は動じない。痛みがない訳では無い。けれど、痛みに耐えている間に勝てるという自信がある。
「初めまして、小さなあなた達」
フラスコ怪人はフラスコ同士で戦線を組み、フラスコ弾を打ち出す。それらはぱりんぱりんと割れて、アウルの脚を傷付けるけれど。
「今日はおともだちは探していないの。……だから、ごめんなさい。 さよなら」
片足を持ち上げて、振り下ろす。風圧がフラスコ怪人を軽々と吹き飛ばし、周囲のペンキバケツを転がし、他の怪人さえ一緒に吹き飛ばす。
最早蹂躙である。一匹ずつ、ぷちり、ぷちり。蟻を潰すように怪物(スケアリーロード)は怪人を駆逐してゆく。
恐ろしい光景だ。けれど、悲しい光景でもある。彼女は自らの命を削り、この色彩溢れる世界を守ろうとしているのだ。――されど、其れを知るのは彼女のみ。悲しい真実は深緑に隠されて、後には静寂と、ところどころを黒く塗りつぶされた街だけが、残った。
成功
🔵🔵🔴
サンディ・ノックス
※アドリブ、連携歓迎
特に隠れていないなら、すでに塗られた場所を辿れば見つけられそう
ユーベルコード、解放・日蝕で背を変異させて竜の翼を生やし飛翔、空から塗られた場所を探す
敵を見つけたら適当に一匹に向かって着地、踏んづけつつ
(植物のバラを塗っているなら)「色の好みは人それぞれだけど…生き物に色を塗るのは感心しないなぁ」
とにっこり注意するよ
【怪力】による力技の斬りつけで攻撃
敵の行動はよく観察して
攻撃の【見切り】と塗りつぶし再開の気配に気を配る
塗りつぶし再開は「この俺から目を逸らすなんて勇気あるなぁ?」と威圧、【恐怖を与え】て動きを止めたい
止まらないなら一秒でも早く倒す方針、止まらないのがいけないのさ
カーニンヒェン・ボーゲン
街の景観を害するとは許せませんな。
ヒト様の好みを否定するのは失礼ですが、場は弁えていただかなければ。お覚悟を。
手記を開きまして、【UC:手足たち】を召喚いたします。
バイク型から人型にトランスフォーム。
三体一組の相手に対し互角の戦場にすべく、こちらも数字を重ねて三体にします。
戦法は正面突破です、各々銃器を手に応戦なさい。
敵の数が減る度にこちらも数を合わせて機体を統合。
押し負けるようであれば、目立たぬようにこのジジイめ自身刃片手に参戦して撹乱しましょう。
UCを封じられるのは厄介なので、ロープワークで相手のペンキを利用して目眩ましにしたいと考えています。
黒い色がお好きなのでしたな、お返しいたします。
「ふむ、相手は特に隠れている訳じゃないみたいだな」
サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)はグリモア猟兵の説明を心中で反芻し、じゃあ見つけるのは易そうだ、と頷く。
「空から行こう。その方が見つけやすそうだ」
頷くと、キマイラフューチャーを変わらず照らす太陽を見上げ、其れが隠れるさまを幻視した。めり、と背中が波打って、大きな竜の翼が現れる。“解放・日蝕”。身体の一部を竜のものに変えるユーベルコード。
ばさり、羽撃いて、竜の翼を持つ猟兵は索敵を始める。
「街の景観を害するとは、マナーに反する行為ですな。黒色が良い、極彩色が良い……という人様の好みを否定するのは失礼に当たりますが、場は弁えて頂かねばなりません。では、お覚悟を」
「話の長い爺さんなんダナ」
「やってしまうんダナ」
「はやくやって黒を世に広めるんダナ」
「いつだって年寄りは口うるさいもの。其処はご容赦頂ければと」
オブリビオンとどこかのんびりしたやりとりをしているのは、カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)。老いた容貌、されど身なりは整えて、清潔感を感じさせる。
「――さて、出番ですよ。“汝ら、我を救いたもうか”」
手記を優雅に開けば、助けはカーニンヒェンの前に現れる。其れは30体程のバイク。変形機構を持って人型になると、お互いの数字を確認するように頭部を向き合わせ、同じ数字のものと合体。斯くして、レベル10周辺(上下があるのはまあ、仕方ないことだ)の変形バイクがカーニンヒェンの救いとして前に並ぶ。
「変形したんダナ」
「関節部の脆さをどうカバーしているのか気になるんダナ」
「気になりますか? 貴方がたがオブリビオンでないなら、一緒に検証しましょうとお誘いしたところなのですが……今は戦場、そういう訳にもいきますまい。失礼ながらお命を頂戴いたします」
「戦闘、戦闘なんダナ」
「電球飛ばすんダナ。電力の恐ろしさを――」
「おっと、そうはさせないよ!」
「ぶぎゅ」
電球怪人がバイクたちに頭を向けたが、攻撃する事は叶わなかった。何故って? 上から人が降りてきて、電球を大地に縫い付けるように踏みつけたからだ。
「おや? これはこれは」
「こんにちは。大丈夫?」
「ええ、老いぼれですからこの者たちに任せようと思っていたところです。ははは」
サボりと誹られても仕方ありませんな。
そう笑うカーニンヒェンは何処から見ても元気そうで、サンディは安堵の息を吐く。
「じゃあ、ちゃっちゃと倒しちゃおうか。まだこの辺りは大丈夫そうだ」
「共闘ですか。頼もしい限りですな、ですがご無理はなさらぬよう」
「大丈夫だよ!」
電球怪人はというと、頭が見事にめり込んだせいで抜くのに四苦八苦している。他の怪人も一緒になって、まるでカブを抜くかのように力を合わせて――あ、抜けた。
「ひ、ひどい事をするんダナ。脳筋のする事なんダナ」
「全くダナ。戦闘なんダナ」
「撃つんダナ」
「そうはさせないよ!」
サンディは駆け出す。ちょっと和んだとか言ってはいけない。鞘から柄、刀身まで漆黒に染まった愛剣“暗夜の剣”を躊躇いなく抜くと、怪人に向かって斬りかかる。
「はあああっ!」
「斬られるんダナ。理性的じゃないんダナ」
袈裟懸けの一撃を辛うじて避ける電球怪人。されどサンディは続けて柄尻での殴打、くるりと持ち方を変えて刺突を繰り出す。
「皆、銃器で応戦なさい。味方には当てないように」
カーニンヒェンはバイクたちに命じる。了解した、とバイクは装備していた銃器を構え、弾丸を残りの――フラスコとバッテリー怪人に向けてたらふく御馳走する。
「イテテテ、イテテテ」
「痛いんダナ」
「ありがとう、助かるよ!」
「いえいえ」
サンディに笑顔で答えるカーニンヒェンだが……バイク達の弾丸はオブリビオンには少量のダメージしか与えられていないようだった。
「やれやれ、仕方ありません」
心中の溜息を言葉にして吐き出して、すらりと刀を抜く。“老兎”と名付けられた其の刃は、幾年を経ても美しく――銀色に輝く。
バイクたちが弾丸を放ちながら前進する其の間隙を抜け、残りの片方、フラスコ怪人に斬り付けた。
「アー」
「刀なんダナ。見物するだけじゃないんダナ」
「ええ、見ているだけでは少々心が痛みまして」
哀れ、其の一撃が致命傷。さあと灰になって消えるフラスコ怪人。非難するようなバッテリー怪人の言葉にしゃあしゃあと応えるカーニンヒェン。気を取られたバッテリー怪人も、3機分の弾丸を一身に浴びる羽目になり、あえなく灰となって過去へ帰っていった。
「バチバチするんダナ」
「くっ……!」
電球怪人の放つ電流が、再び斬りかかったサンディを捉える。痺れるような痛みに顔を顰めたが、生憎痛みには耐性がある、と剣を持ちなおす。片手で黒剣を持ち、もう片手を懐に収め、抜きざまに怪人に向かって投げた。ぱりん、と音を立てて突き刺さったのは。
「……刺さったんダナ」
「ああ、刺さったな」
「アー……」
小型の黒剣である。銘は“玉桂”。隠し武器としての役目を存分に果たした剣によりふらついた電球怪人に、サンディは暗夜を握り直すと大上段から剣を振り下ろす。真っ二つになった電球怪人は声もなく、灰になって霧散する。
「――終わりましたか」
「ああ……おじいさんは大丈夫?」
「ええ、バイクたちが全て終わらせてくれました。さ、もういいですよ、役目は終わりです」
待機していたバイクたちにカーニンヒェンが声をかけると、彼らは再び戦場に出るまでの休息に入る。
「塗り潰される前に阻止できなかったのは残念だけど、なんとかなったかな」
「そうですね。こればかりはタイミング……グリモア猟兵の方を責めるのも酷でしょう。せめてバケツを回収して、後続の邪魔をしてやりましょうか」
「あ! それいいね、やろうやろう! バケツを残したらどうなるか判らないしね」
かくしてバケツ回収を始めた二人。竜の翼、ロープワーク。それぞれの得意分野を発揮しつつ、相手の方法に驚きながら、置かれていた黒のバケツを次々と回収していった。
大成功
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