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バトルオブフラワーズ⑧〜美人とか美少女はいらないよね♪

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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「領域制圧戦よ」
 小高い丘の上に立って、いきなり口にしたのはその一言。
 疑問の残るその言い方に、はてなマークを浮かべる猟兵は多かった。
「単刀直入のほうがいいかと思ったけれど、単刀直入すぎたわね」
 手を顎に当て冷静な表情で告げる瑠璃凰花・未来(神避の熾天使・f13139)。
 至って真面目だったらしい。
「皆も既に知っての通り、キマイラフューチャーは今現在大変なことになってるわ。まさか、文字通り真っ二つになるとは私も思ってなかったわよ」
 困惑の表情を浮かべる。
「キマイラフューチャーを滅ぼそうと企むオブリビオン・フォーミュラ、ドン・フリーダムを倒すにはこの世界の根幹、システム・フラワーズに向かわなければならないけれど、そのためには他のオブリビオン達が邪魔になるわ。ザ・ステージと呼ばれる各戦場を全て制圧しないことにはシステム・フラワーズに入ることさえ出来ないの」
 そう言って、ホワイトボードに一枚の紙を張り出す。
「私が予知したのはペイントステージよ。ここには、女装っぽい男性オブリビオンが確認されているわ」
 張り出されたのはボスのイラスト。顔や体付きは確かに男性そのものだが、服装はメイド服。女性が着るそれだ。その手には槍が手にされている。
「槍で戦うのはもちろんなのだけれど、厄介なのはユーベルコードよりもザ・ステージにおけるルールが厄介かしらね」
 行く先は、ザ・ペイントステージ。キマイラフューチャーの街並みそのものだが、壁や床は既に闇のような黒色に染められているという。
「何が厄介かって、この塗料、オブリビオンを守る効力があるらしくて、ユーベルコードで攻撃を図っても一切攻撃が通らないわ」
 それは、ユーベルコードを伴わないとて例外ではないらしい。
 その上、敵の攻撃はこちらに通るので、一方的な戦いになることは避けられないと言えた。敵からの攻撃の対策も必要となるだろう。
「どうにかするには、黒色に塗り固められてる場所をユーベルコードや武器で攻撃するしかないわ」
 ステージのほぼ全域が黒く塗りつぶされているので、最初のうちは当てずっぽうに適当に攻撃を放つだけでも塗り替えすことは可能だろう。
「ただ、一回や二回の攻撃で留めないこと。ある程度の範囲を塗りつぶし返さないとユーベルコードが使えることはずっとないわ」
 明確な範囲は定かではないが、少なくとも全体マップの半分以上の塗りつぶしは必要となるだろう。
「そこまでやって、初めて、1度だけユーベルコードによる攻撃が通るようになるわ。武器による直接攻撃も一回だけど、せっかく出来たチャンスを無駄にすることはないわ、隙を突いてユーベルコードをぶち込んじゃって」
 当然だが、敵も黙って見ているわけではない。一方的に攻撃できる利点を生かしてあの手この手で迫ってくるだろう。
 敵への攻撃は諦め、塗りつぶしに集中すればより広範囲の塗りつぶしも可能だ。
 また、全体マップの約7割以上を自陣色に塗り替えせれば、ユーベルコード制限もなくなる。敵の抵抗も一層激しくなるだろうが、一度きりのチャンスとどちらが良いかは、猟兵達の判断に託されるだろう。
 なお、塗りつぶしの色は黒以外ならば自身の任意で決められるらしい。
「領域制圧戦っていうのは正しくそう言うことね。広い範囲を制圧したら制圧しただけ有利になる。戦い方はあなた達に任せるわ。それじゃ、健闘を祈るわ」
 そう言って、未来は水晶玉に視線を集中し、転送のための魔法陣を展開した。


るっこい
 はいどうも、新人マスターるっこいです。もう新人じゃないかな?
 人気マスターとかベテランマスターとかキングマスターとかなれる気がしません。目指すのは人気マスターかななんて思いますが、現状を振り返るとサークルマスター……なんて。
 閑話休題。
 キマフュ戦争1本目、全体にして13作目となります。そう言えば、マスター始めたころも直ぐに戦争が来て……なんてことが、いえ、どうでもいいですね。

 各章解説です。と言っても、1章のみのシナリオですけど。

●第1章
 ボス戦です。男大好き女絶対殺すマンな感じのちょっとアレなやつです。
 とりあえず要約すると黒い所を攻撃して別の色に塗り替えてボスにユベコ叩き込めばOKな感じ。言うのは簡単ですね。
 ただ傍観してる訳ではないので攻撃への対処は必要です。
 一定範囲を塗りつぶし一度きりのチャンスを狙うか、敵への攻撃を諦め一度に広範囲を塗りつぶし、ユーベルコードが何度でも使える機会を後に来る味方に託すかは皆様次第となります。

●プレイングについて
 同行者の方がいる場合は1行目にお相手さんのお名前とID、もしくはグループ名をお書きください。お名前の場合はフルネームでなくて構いません。
 絡み歓迎、アドリブ歓迎、連携歓迎の方、字数に余裕があればお書きいただけると助かります。ステシでもOKです。とてもとても書きやすくなります。
 また省略文字もご利用いただけます。詳しくはマスターページを御覧くださいませ。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『猪狩・アントニオ』

POW   :    オトメン投げキッス
【男女問わず投げキッス】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    メイド秘奥義「メイド感情ミサイル」
【男に対する欲情もしくは女に対する憎悪】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身を模したエネルギー体】で攻撃する。
WIZ   :    メイド秘奥義「猪突猛信(恋する乙メンの暴走)」
【男に対する欲情もしくは女に対する憎悪】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。

イラスト:桐ノ瀬

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は狗飼・マリアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マーリス・シェルスカナ
(※アドリブ、他PCとのからみ歓迎)
色鮮やかな筈のキマイラフューチャーなのに一面真っ黒ネ、あまり良い気分じゃないヨ。オマケにあの子(猪狩の方を見て)から見える(憎悪)オーラが怖いデス、Lady(?)が出すモノじゃないヨ…。

(方針)
此処は攻撃じゃなく、色塗りつぶしに集中するヨ。
『エレクトロレギオン』を展開して、『Meの防衛部隊』と『色を塗り潰す部隊』に分けマス。
防御部隊はMeに同行して猪狩って子の意識をこっちに集中させマス、出来るだけ遮蔽物とレギオンで防御しながらですケド。
その間に色塗りつぶし隊は四方の隅を狙う様に散開、白に染めてやるのデス。Meに出来る事をやって、後の皆につなげマス。


フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/フォルセティf05803】【WIZ】MP
「とりあえず女の子のフリをして挑発するのよ」
フォルセティを嗾けつつ塗りつぶし開始
■作戦
弟と連携し50%塗りで一度の機会で仕留める
■行動
「ちょっと、私の『弟』に何してくれるの」
猪狩を口撃で少しだけ混乱させている隙に
【ウィザード・ミサイル】を[2回攻撃×範囲攻撃]で放ち
物量攻撃で赤く塗り替えしていく
ムラがでたところは愛用ウォターガンでしっかり染める
猪狩のキッス&ミサイルは【アイギスの盾】で相殺し
それ以外は[見切り&残像]で回避
半分塗り切ったと判断したら、弟にインカムで合図を送り
阿吽の呼吸で【バベルの光】を撃ち落とす[高速詠唱&全力魔法]


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/フィオリナf00964】【WIZ】MP
「えー、ボク男だよ!」
納得いかないけど、フィオ姉ちゃんと参加だよ
【行動】()内は技能
「わー、男の人なのにメイド服だー」
言われるがまま?にオブリビオンを(挑発)しつつ
飛来するミサイルはグアルディアン・サトゥルノで相殺するね
ボクはイスベル・ウラーノで青色に塗り返すよ
(2回攻撃)で効率よく。塗り漏れはアクアバズーカで埋めていくよ
建物や遮蔽物の(地形の利用)で死角に入りながら塗りつぶしを最優先
追いかけてきても(ダッシュ)と(ジャンプ)で回避
フィオ姉ちゃんの合図がきたら姉弟連携攻撃だよ
(高速詠唱×全力魔法)でカラミダド・メテオーロをオブリビオンに叩きつけるよ


セルマ・エンフィールド
……まぁ、服の趣味は人それぞれなので。赤褌のオブリビオンよりはマシではないでしょうか。憎悪される理由は分かりませんが。

【オートマチック・シューター】の連射でステージを手早く塗りつぶしていきます。回避されても中止ができない技ですが、ステージを塗るぶんには問題ありません。

敵がこちらにエネルギー体で攻撃をしてきた場合、動きを見切り、オートマチック・シューターをそちらに向けて、槍を狙い弾丸を撃ち、武器を落とさせます。それでも向かってくるようならエネルギー体の方も蜂の巣にさせてもらいましょう。

チャンスが来ても塗りつぶしが7割に達していなければ塗りつぶしを優先、堅実にいきましょう。

アドリブ、連携、絡み歓迎


イヴ・クロノサージュ
アドリブ歓迎◎
WIZ

――

ここを攻略するには、
相手の領地を塗り潰して
自分のエリアにしてから
攻撃!が、定番ですよねっ!

私は後発組だから
皆さん、だいぶ塗っていらっしゃるでしょうし
ここは一発カッコいいの
決めちゃいますか!

☆UCで
ビームガンによる連携攻撃
床塗り部隊と侵攻部隊に分かれて行動

▽最後に突然のカメラ目線

はいっ!キマイラフューチャーの良い子の皆さん
見てますか?

あの子がオトコノコすきすき
やってるうちに
ロボットの宣伝しちゃいましょう

量産型機械鎧兵は...(説明が無駄に長く続く)
なんと!その量産は
たった、白金貨8枚!
今ならオマケして基本武装まで付けちゃいます!
お問い合わせお電話はこちら、クロユニ(以下略


天杜・乃恵美
M

「はわ、まっくろ」
『空まで黒い気さえするよ…』
「…んーと、おそうじする?」
『まだアタシ達は未熟だしね』

「行こっか、モニカちゃん♪」「競争だね、ノエミ?」

●方針
他人のユベコ攻撃を通す為『広範囲の塗りつぶし』専従
(ユベコ攻撃企図者の周囲を優先)

【オルタナティブ・ダブル】でノエミとモニカに分裂
【オーラ防御】で妨害を避けつつ手分けして疾走・塗布
モップ型クランケヴァッフェで【なぎ払い】範囲重視

ノエミは純粋無垢、女装を論う事はない
モニカは理知的、ハッキリ女装を指摘・煽る

●色
ノエミ:幼さ故のパステルピンク、クランケヴァッフェの影響で花柄化も?
モニカ:ダークパープル、黒と識別し辛い【だまし討ち】の意図を含む


短夜・いろは
すげー一体感を感じる。今までにねーなんか熱い一体感を。
風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、アートのほうに。
中途半端はやめよう、とにかく最後までグレネード射出のペイントボール爆撃でビビッドカラーに染めてやろうじゃん。
ザ・ペイントステージの向こうには沢山の猟兵がいる。決して一人じゃない。
信じよう。そしてともにアートしよう。
オブリビオンやメイド秘奥義の邪魔は入るだろうけど、絶対に流されるなよ。



「色鮮やかな筈のキマイラフューチャーなのに一面真っ黒ネ、あまり良い気分じゃないヨ」
 マーリス・シェルスカナ(宇宙(そら)飛ぶマーリンレディ・f15757)は転送されたその場所を見て驚きの表情を見せる。
「はわ、まっくろ」
 隣で同じ様に驚きの表情を見せるのは、天杜・乃恵美(天杜・桃仁香と共にありて・f05894)。
『空まで黒い気さえするよ……』
 その内面に存在するもう一つの人格、天杜・桃仁香もまた、そう告げる。
 その空は実際には暗くはない。太陽も登っており、晴天だ。太陽を挟んで両側に真っ二つになったキマイラフューチャーがある、と言う以外は特段おかしな部分はない。
 何かに気づいたのか、マーリスはその視線をある場所に向ける。
「オマケにあの子から見えるオーラが怖いデス、Lady……?が出すモノじゃないヨ……」
 そこには、本当に目に見えるのではないかというくらいどす黒いオーラを醸し出す怪人、猪狩・アントニオの姿が。
 着ているものはメイド服。男性が着る執事服ではない。れっきとした女性用のメイド服だ。しかも、黒いはずであろうその部分はピンク色に染まっている。
 セルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)はその姿を一瞥し、うわっと声を上げる。
「……まぁ、服の趣味は人それぞれなので。赤褌のオブリビオンよりはマシではないでしょうか。憎悪される理由は分かりませんが」
 自身を落ち着かせる意味でも、周りにいる同様の反応を示す人を納得させる意味でそう言う。そのオーラの対象が自分たちであることも見抜いているようだ。
「招かざる客がひーふーみー……6人もいるじゃねーか! 女なんかクソくらえだぞ!」
 放たれた第一声はそれだった。離れた高い位置に立つ彼だが、その場まではっきりと聞こえる。姿は女性のそれであるのにもかかわらず、声は女性であることを偽るわけでもなく、低いが、しかしよく通る声。
 ちなみに、その場に転送された6人のうち、男は一人だけいる。
「えー、ボク男だよ!」
 フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)。彼は紛れもなく男だが、その見た目故か、女性と間違われているものらしい。しかし、幸か不幸か、その抗議の声は怪人には届かない。風下に立っているためだ。
「都合がいいわね。フォルセティ、とりあえず女の子のフリをして挑発するのよ」
「えー!?」
 姉であるフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)はどうやら、好都合と見たらしい。フォルセティにそう提案する。
 納得のいかないフォルセティは物申したそうな表情でフィオリナを見るが、しかし、彼女の提案は的を射ている。納得は行かないが、その作戦は変えられそうにもないことを悟り、諦めて従うことにしたようだ。
「女が何人来ようと関係ねぇ、二度と出しゃばれねぇよう潰してやるよ!」
 猪狩は高らかと声を上げ、跳躍。風上に立っていることを利用し、数百メートル離れた距離を一息で詰めてきた。
「わー、男の人なのにメイド服だー」
 それを見て、すかさずフォルセティは先行して駆け出しつつ、挑発。
「男がメイド服着ちゃいけねーのか!?」
「うんー、だってメイド服って女性が着るものでしょー?」
 猪狩に刺さるであろう言葉を選んで挑発しながら、その手に持つ箒、聖箒ソル・アトゥースを掲げる。
「んだとこのクソアマァ!」
 フォルセティが何をしてるのかを考えることもなく、容易く挑発に乗ってしまう猪狩。既に怒り心頭。心なしかその身体のサイズを徐々に大きくさせている。
「んだ!?」
 怒っていて周りが見えなくなっていたのだろう。その頭上に其れが現れたことに気づくのに、周辺が突然暗くなるまで気づかなかった。
「一気に塗り返すよ!」
 それは、世界を崩壊させるほどの力を持った存在を封じた箒によって召喚される、巨大な氷塊。
 繰り出された《イスベル・ウラーノ》は、猪狩に向けて落とされる。
「はっ、無駄だなっ!」
 猪狩はそれを避ける素振りを見せず、技後の隙を狙って迫る。が、既にフォルセティはその視界には居ない。
「何処行った!?」
 そこは塀のある場所。片側には自転車などがアクロバティックに通過するためのものなのだろうか、斜面が設置されている場所であり、フォルセティは敢えてその斜面を登りながら氷塊を召喚。同時に斜面のない側へ落ちるように移動することで身を隠したのだ。
 降ってきた氷塊は、空中分解。それは、更に召喚されたもう一つの氷塊とぶつかったことで起きた。
 粉々になって飛び散る小さな氷塊の雨は、広範囲の黒いインクが塗りたくられたエリアを一気に青に染め上げる。
「何だとっ!?」
 その攻撃の意図、直前の言葉の意味を知り、驚愕する猪狩。
「あのアマ、ぜってー許さねぇ!!!」
 更に激昂し、増悪の感情を爆発させる猪狩。その身体の大きさは更に一回り大きくなっていた。
「そこだなっ!?」
 気配を感じたか、フォルセティが隠れていた――というより、単に見失っただけだが――方向、真下に向き発見すると、身体サイズに合わせて巨大化する槍で迫る。
「ちょっと、私の『弟』に何してくれるの」
 突然のその言葉に、狙いが逸れた。驚きのあまり、そのままの体勢で声の聞こえた方向を見る猪狩。そこには、フィオリ名の姿があった。その手には銀翼杖セラファイトが握られており、既にその先端からは無数の魔法の矢が放たれている。
「な、お、弟だと!?」
「そうそう、ボクは男だよー!」
 青に加え、更に周囲が赤く染まっていく。
「こんの……、よくも……っ!?」
 完全に意表を突かれた口撃に混乱する猪狩を余所に、フィオリナは更に《ウィザード・ミサイル》を放ち、その範囲を大きく広げる。
「てめぇら、覚悟はできてんだろうなぁ……、女に見える男なんざ男じゃねえ、覚悟はできてんだろうなぁ!?」
 最初の時と比べれば既に二回りどころか三回りくらい大きくなっている猪狩。黒に染まるエリアを塗り替えられている現実に加え、その場に現れた純粋な女という増悪、更には騙されたという怒り。もはや有頂天に達しそうな勢いだ。いや、既に達しているかもしれない。
「オラァ!」
 槍に関しては既に人が持てる大きさではないほど肥大化していた。先の意表をついた口撃で狙いの逸れた槍は地面に突き刺さっていたが、そんなものお構いなしと言わんばかりに地面をそのままえぐりながら振り上げると、二人に向けて振るう。
「敵はその方々だけではありませんヨ……!」
 しかし、その槍はいくつかの機械兵器によって阻まれていた。二人を庇ったことで、その機械兵器は消滅する。
「邪魔すんじゃねぇ!」
 その勢いは若干減衰したが、その程度だ。
「残念、外れデス」
 しかし、その一瞬でもいい、時間が作れるなら、攻撃を見切り、避けるのは容易くなる。
 もはや丸太なのではないかと言う太さの槍は、何に当たることもなく、虚しく空を切った。
 その機械兵器はマーリスのものだ。先んじて《エレクトロレギオン》により召喚していた機械兵器を2つに分け、片方を端から塗りつぶさせる部隊とし、もう半分を連れて猪狩の妨害に来たのだ。そうすることで、塗りを担うもう半分の部隊が少しでも多くの範囲を塗り拡げる状況となる。
 術者であるマーリスは既にフォルセティの側に居た。
「Youたちだけでは荷が重い、お手伝いするのデス」
「ありがとー!」
「感謝します」
 自身も協力することを猪狩に聞こえないよう告げると、3人は再び散開。
「このやろっ!」
「おっとと!」
「何処見て攻撃してます?」
 騙したフィオリナ、フォルセティの二人を執拗に狙う猪狩だが、フォルセティには地形を利用した跳躍やダッシュで見事に躱され、フィオリナには残る残像に欺かれる。
 更には、当てられるという状況ではいちいち機械兵器が邪魔してくる為に、思うように行かずイライラをつのらせている。挙げ句、先の攻撃で黒いままの地点は、フォルセティはアクアバズーカ/ストームシャークFS-39を使い、フィオリナはスプラストリーム/ケルベロスブローFR-58にて赤と青のコントラストに染め替えられていく。
「この辺はもう良さそうだね!」
「そうね」
「では、次ですネ」
 次の地点を目指そうとわざとらしく大声でやり取りするフォルセティ、フィオリナ、マーリス。
「逃がすかよっ!」
 明らかにわかりやすい引きつけだが、増悪に加えて怒りも有頂天な様子の猪狩には、それが囮であると気づかせる程の冷静さは失われているようだった。

「……んーと、おそうじする?」
『まだアタシ達は未熟だしね』
 乃恵美は、桃仁香と相談し、塗りに専念することに決めたようだ。
「では、私はこれで手早くステージを染めましょう」
 セルマはその手に愛銃であるフィンブルヴェトを構える。
 その横では、眩しい光が。程なくして収まると、乃恵美の側にもうひとり、何者かが現れた。
「単発銃じゃないのかい?」
 セルマの構える銃がマスケット銃であることに気づき、気になったのだろう。
 彼女は乃恵美の《オルタナティブ・ダブル》によって呼ばれた、天杜・桃仁香。
 その姿は乃恵美に似ているが、異なる部分も見受けられる。
「大丈夫です、回避されても中止できない技を使いますが。ステージを塗る分には問題になりませんからね」
 桃仁香の疑問に答えると、セルマは一歩、前に出た。
 転送されたその周辺は既に真っ黒。高台で見下ろせる位置にいるが、その範囲はかなり広範囲のようだ。
 より高い高層ビルもいくつか立ち並んでおり、全面を塗り潰すにはかなり骨が折れそうである。
 戦闘音が聞こえる方向を見れば、既にフォルセティ達がある程度の範囲を塗り始めている。一気に広い範囲を塗りつぶしているが、全体と比較すると10%にも満たないだろう。
「大変になりそうですねぇ……」
 その光景を見てポツリとつぶやくように言う乃恵美。
「私は行きますね」
 そういって、セルマは愛銃に備わる自動装填と自動発射機能を利用し、まず周辺を塗り替えてから高台をオリていく。
「……行こっか、モニカちゃん♪」
「競争だね、ノエミ?」
 それを見届けた二人も、その手にモップ型のクランケヴァッフェを手に、高台から飛び降りた。
 
「おや、こんなところに変態がいるみたいだね」
 乃恵美と手分けすため、距離が離れすぎない程度に乃恵美とは反対方向をダークパープルに染めながら走っていると、フォルセティ達を追いかける猪狩に遭遇する。
「誰が変態だこのクソアマ!」
 怒り有頂天なためか、安い挑発にすら乗ってしまう猪狩は、そう言い返しながら足を止めた。
「だーーーーー!!!! こいつらまとめてぶっ殺す!!!!」
 両手で頭をガリガリと掻いて苛立ちの様子を見せ、その怒りの視線を桃仁香達に向ける。
「行け――『メイド感情ミサイル』!!!」
 桃仁香に指差してそう告げると、空中に召喚された同じく怒り有頂天なもうひとりの猪狩(少し透けている)が桃仁香へ襲いかかる。それは、逃げていたフォルセティ達にも向かっていった。
「怒ってるやつほどわかりやすい攻撃をするんだよ」
 向かってきたエネルギー体をオーラ防御を展開して容易く躱しつつ、周辺をダークパープルに染めながら猪狩から逃れるべく桃仁香は進行方向を変えた。
「逃げられると思うなよ!!」
 そう言いながら同じ様に逃げていくフォルセティ達を追っていく猪狩。よっぽどフォルセティとフィオリナに怒り心頭なのだろう。

「すげー一体感を感じる。今までにねーなんか熱い一体感を」
 短夜・いろは(やさぐれスプラトゥーン・f15837)は全身で何かを感じていた。
 既に目の前の広がる光景は様々な色に染まり、まさしくアート。
 小高いその場所から見える範囲では、近い位置では既に黒い場所は僅かしか見えず、遠いところが黒い程度だ。
 まだ書き始めたばかりだと言うのに芸術性を感じるらしい。それは、端的に言えば黒いキャンパスの上にぶち撒けられた色とりどりのインクにすぎないのだが。全体で言えば、ようやく20%にたどり着いたんじゃないか、と言うレベルか。
「風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、アートのほうに」
 何処からともなく湧いてくるインスピレーションにその身を震わす。染めたい、今すぐ染めたい。そんな衝動が、いろはを駆け巡る。
「中途半端はやめよう、とにかく最後までグレネード射出のペイントボール爆撃でビビッドカラーに染めてやろうじゃん」
 その手に握られているのは、グラフィティランチャー。既にいくつかのペイントボールが装填されたそれを手に、未だ黒に染まるその地点を目指し、いろはは駆け出す。
「向こうには沢山の猟兵がいる。決して一人じゃない。信じよう。そしてともにアートしよう」
 願わくば、よりアートの高みへ。仲間を信じ、芸術的な一枚を作ろうと考える。
「オブリビオンやメイド秘奥義の邪魔は入るだろうけど、絶対に流されるなよ」
 自身に言い聞かせるようにそう言った。

 《オートマチック・シューター》によってまさしくガトリングガンのような音を立てながら広範囲を線状に塗り染めていくセルマ。弾丸は一直線に飛ぶもの。線状染めになるのは致し方のないことと言えよう。
 それも、持っているのはガトリングガンではなく、フィンブルヴェト。愛用のマスケット銃だ。それも、納得の行くほどの強化を施されたもの。
 普通のマスケット銃であれば、飛距離もなく精度も悪い銃だっただろうが、そうではない。その砲身の長さから打ち出される強烈な一撃はスナイパーライフルにも匹敵すると言えるだろう。
 それだけの飛距離があれば、横には狭くても距離で塗り範囲を広げることは容易い。回りに遮蔽物がないという前提は必要になるが。
「やはり、広いですね。終わる頃には日が暮れてしまいそうです」
 フィンブルヴェトのフリントロック部からは繰り返し火花を散らせてるためか、蒸気が上がっている様子が伺える。
 そこへ、一人の猟兵が走ってきた。
「あれは、先程の……」
 その方向を一瞥するセルマは、それが桃仁香だとすぐに気づいた。その後ろには、何やら若干透けている猪狩が桃仁香を狙い槍での攻撃を繰り返している。
「少し、やばい状況なんだ、助けてくれないか」
 セルマを見つけた桃仁香は、近づきながら助けを乞う。反対側からは、周辺をパステルピンクに染めながら向かってくる乃恵美の姿も見えた。ただ闇雲にあちこちを塗り潰すよりも、攻撃を行える猟兵の周辺を染め直したほうがいいと考え探していたのだろう。
「モニカちゃん!?」
 その様子を見てどうしようどうしようと大慌て。
「邪魔だよ!」
 傍を通り過ぎていく桃仁香。その後ろから追ってきたエネルギー体猪狩はセルマが間に割って入って妨害されると思ったのだろう、その手に持つ槍を振るってセルマをどかそうとする。
「邪魔立てしてるのはどちらでしょうか」
 冷静にその攻撃を見据え、軽く身を引いてギリギリで躱すと、お返しと言わんばかりにその手に向けて《オートマチック・シューター》を止めることなくその槍に当てようと照準した。
 今も放ち続けているため、狙いを合わせるだけでそれは簡単に成立する。
「しまっ……!?」
 攻撃後の隙を突かれての攻撃。マスケット銃の一撃の威力は重いわけではないが、至近で撃った甲斐があったのだろう、槍を落とさせるには十分な威力があった。
「こなくそっ!」
 槍を気にするでもなく、そのまま猪狩は殴りかかろうと迫ってくるが、遅い。
「はわ、すごい……」
「ありがとう、助かった」
「困った時はお互い様です」
 連射を続けるマスケット銃をそのまま猪狩に向ければ、エネルギー体猪狩はそのまま虚しく蜂の巣にされるのだった。

 塗り手にいろはが加わったことで、ステージ内全体の塗速度は爆発的に加速した。
 猟兵達が手の回らないエリアを爆撃と言う形で広範囲を染め上げているのだ。それは、芸術を求めるいろはだからこそなせる技か。効率的に様々な箇所へ、様々な発色の良いペイントボールを間髪入れず放つ。途中妨害もなかったのも大きくその貢献を促す要因となっているのだろう。
 そんな中、最初に猟兵達が転送されたその場所とは異なる、さらなる高い位置に、イヴ・クロノサージュ(《機械天使》花と自然を愛する機械人形・f02113)は転送されていた。
「ここを攻略するには、相手の領地を塗り潰して自分のエリアにしてから攻撃!が、定番ですよねっ!」
 攻略方法を自分なりの認識で再確認すると、その高台から状況を見る。
「私は後発組だからか、皆さん、だいぶ塗っていらっしゃいますね」
 既に眼前に広がる光景は、色とりどりな色が辺り一帯に広がっており、黒い部分は所々にしか見られない。
 イヴの体感で言うならすでに半分は塗りきられた状態だろうか。実際にはまだ僅かに50%には至っていないのだが、半分以上塗り染められるのは時間の問題だろう。
「……ここは一発カッコいいの、決めちゃいますか!」
 一撃決めることを選んだイヴ。その頭上上空には、巨大な一機の戦艦が佇んでいる。
「《宇宙戦艦》クロノトロン=ユニットから通達、各機2つの部隊に別れ、ミッションを遂行してください」
 クロユニ専用スマホを用い、宇宙戦艦クロユニから機械鎧兵を呼び出す。
 6機2部隊の構成を取りながら程なくして降りてきた機械鎧兵たちは、そのまま、イヴの指示を遂行すべく2つに別れた。片方はイヴのもとに集まり、イヴを載せて猪狩へ侵攻を図る部隊として共に向かう。もう片方は先行して塗りに加わっていた。6mという巨体さ故の、塗布領域の広さは、それだけで猟兵達へ貢献することとなるだろう。それにより、半分どころか、それを超えて70%に到達しそうな勢いでエリア塗りエリアが広がっていくのだった。

『フォルセティ、そろそろ行くわよ』
 フィオリナは、アポロンの髪飾りに備わる高機能のインカム越しにフォルセティへ告げる。
 彼女は現在、広い範囲を見渡せる高台からそれを見ていた。体感では既に、半分を塗り染めている。
『了解だよ、フィオ姉ちゃん!』
 アルテミスの帽子飾りから聞こえた声に、答えを返すフォルセティ。
 現在までうまく誘導してきているため、合流する必要はない。
「ちょこまかと逃げやがってーーー!!!」
 ずっと怒りっぱなしで疲れないのだろうか。放つエネルギー体は度々フォルセティの《グアルディアン・サトゥルノ》やフィオリナの《アイギスの盾》、マーリスの《エレクトロレギオン》によって阻まれており、現在まで猟兵達に一撃も与えられていない。
「じゃ、追いかけっこもここまでだよ」
 タイミングを見て足を止めたフォルセティ。今までとは異なる動きを見せたことで、猪狩も警戒して距離を保ったまま足を止める。
 そこは、比較的見通しのいい開けたエリア。
「ついに殺ろうってか、無駄な足掻きだってのによ!」
「それはどうでしょうネ」
 猪狩の言葉を否定するマーリス。その言葉の意味を理解できないらしく、首を傾げる。
「はっ、負け犬の遠吠えも大概だな! 格好の的なんだよ!」
 ただ棒立ちしているフォルセティとマーリスを見て、隙と判断した猪狩はその巨大な槍を横一文字に大きく振るう。既に、フォルセティの聖箒ソル・アトゥースと、離れた位置ではフィオリナのVF-1オートフォーカスが自身に向けられてるとも知らずに。
「悠久に揺蕩う無限の星屑よ。星柩満ちて此へ集うは漆黒の紅炎――」
「――貫け、バベルの光よ!」
 長い詠唱を必要とするフォルセティに、フィオリナはタイミングを合わせ、そこで初めて、猪狩を狙い2つのユーベルコードが放たれる。
 先に降り注いだのは、空から突如降り注いだ高出力レーザー。フィオリナの《バベルの光》だ。
「あぢいいいいいい!?」
 そんなものの直撃を喰らえば普通の人間ならまず火傷では済まされない。溶けることなく五体満足でその場をのたうち回れるのはオブリビオンであるが故か。
 その次の直後。
「アガァッ!?」
 のたうち回ることすら出来なくなっていた。それは、その身の上に降り注いだ、巨大な岩の塊。全体に目に見えるほどの炎を纏っている辺り、大気圏から降り注いだのではないかと思わせる隕石だ。だが、狙ったように綺麗に猪狩の上に落ちているあたりを見ると、そうではない。大きくクレーターを作ったその隕石は、フォルセティの《カラミダド・メテオーロ》によるもの。
「やったかな?」
「これで耐えてたら化物よ」
「すごい光景なのデス……」
 フォルセティの言葉に、合流したフィオリナは答える。マーリスは感嘆としていた。
 ユーベルコードの効果が終わり、目の前から巨大隕石が消滅する。そこそこ深いクレーターの底を見ると。
「よお、てめぇら、この俺の美肌にいらねー傷つけてくれたな」
 全身火傷の跡をつけながら、ゆっくり立ち上がる猪狩の姿が。
「立ち上がってきたよ!?」
「嘘でしょ!?」
「なかなかしぶといですネ……」
 立ち上がったは良かったが、気力だけで動いているような状態なのだろう。その足取りはふらついている。
「ふふ、ふふふふふふふ……」
 不気味に笑みを浮かべる猪狩。
「その一撃で俺を倒せなかったのは痛恨だなぁ、オイ?」
 ふらふらと前に進み、クレーターを登ってくる猪狩。
 それを見て、フィオリナは気づく。
「あと一撃……」
「そうなの? なら――」
「あれ、何でショウ?」
「――え?」
 ちょうどそこには、まだ猪狩へ攻撃を行っていないマーリスがいる。彼女に任せれば、そう考えたフォルセティは、提案しようとして、そのマーリスに遮られた。
 マーリスが視線を向けるその方向に注目する3人。空が陰った為に気づいたのだ。それは、猪狩も同じ。
「邪魔、すんじゃねえええええええええええええ!!!!!!!!」
 何かはわからない。だが、邪魔されると勘づいた猪狩は、周囲にエネルギー体を召喚しながら、手にする槍を大きく振るう。
 相手は空中から迫る何か。届くわけがない、そう思われたが、その槍は感情の爆発に合わせ更に巨大化。猪狩がなせる限界まで大きくなる。
 だが、そんな安直な攻撃は、やはり当たることはない。迫っていたのはイヴの機械鎧兵たちだ。イヴの手がけた高性能AIの前では、捻りない攻撃など無意味に等しい。
「どうやら、既に瀕死なら、好都合です……!」
 迫ってくるエネルギー体は、連携をこなす機械鎧兵の前ではやはり無力だった。最初こそエネルギー体同士で協力し回避しあっていたが、それを上回る連携力で瞬く間にビームガンの餌食となる。
「あめぇんだよ――――っ!?」
 その隙を突いて地上から超跳躍してきた怪人の本体が、イヴの載る機械鎧兵を狙いその槍で貫こうと迫った。
 だが、どういうわけか、その槍は途中で止まった。
「……?」
 目の前で硬直する猪狩に首をかしげるイヴ。なぜ固まってしまったのか理解出来ないが。
「甘いかどうかは、当ててから言ってくださいね」
 ビームガンを打とうと構える機械鎧兵を前にしても、イヴの言葉を受けても反応を示さない猪狩。
 完全に空中で隙を晒した猪狩に待っているのは、死のみ。
 そして、機械鎧兵6体によるビームガンの同時照射。6方向から槍で串刺しにされるがごとく、猪狩の身を貫いた。
「がぁっ!?」
 その声が最後の断末魔。猪狩は、黒い靄を残して消滅。空へと登っていくのだった。
 猪狩が固まった理由。それは、眼下に広がる光景。
 その段階ですでに90%を超える領域を塗り終えており、ほぼ完成形。
 最後の調整をあちこちを駆け巡るいろはが行うことで、ただインクをぶち撒けた一枚のイラストとは異なる、まさしく芸術の品が、眼下に広がっていたのだ。
 彼が陥ったのは、精神的ショック。最後の最後に、いろはの《High Graffiti》が刺さったのだろう。

 戦いが終わり、そのステージで最も高い高台。
「うん、これこそがアートだ」
 そこから見える光景を見下ろし、何かに浸るいろは。誰よりも芸術を理解する彼女だからこそわかる感覚なのだろう。
 その横では、乃恵美と桃仁香が結果を見比べている。
「同じくらい、かな?」
「引き分けだね」
「そうなりますねぇ。でも、私は引き分けで良かったと思いますよ?」
「そうかい?」
 仲良さそうにそんな会話をしていた。厳密な数値の上では理的に塗って回っていた桃仁香の勝ちなのだが、誤差の範疇。それに気づける者は、乃恵美や桃仁香は愚か、その場にいる誰もが気づくことの出来ないものだろう。
「堅実に塗り進めた結果、ですかね」
 どういうふうに終わったのか話に聞いた限りでは、半分塗りでも足りたらしいが、倒しきれていない可能性も否定できない。今回はたまたま弱かったと言うだけのことなのだろうと考える。
 マーリス、フィオリナ、フォルセティも得られた結果を素直に喜ぶ様子が伺えた。
 そしてイヴはと言えば。
「お問い合わせお電話はこちら、クロユニ――」
 カメラ目線で量産型機械鎧兵のことについてとてもとても長い説明を行った上での売り込みを行っていたという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月07日


挿絵イラスト