バトルオブフラワーズ⑤〜井戸端会議
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籠目・祷夜は集まった猟兵たちの姿を見ると、力強く頷いた。
「突然だが、俺はげーまーだ」
突然ですね。
山から降りてきたお上りさんなヤドリガミは現代の文明に染まりきっていた。なんと嘆かわしい。
腰に差した刀を指で抜く祷夜。危ないことはやめましょう。
ゴホン、と大げさに咳払いしてから、祷夜は続ける。
「皆には、とある『げーむ世界』の『主人公』となってもらいたい。
今回、きまいらふゅーちゃーで起こった事件に関わっていることだ。早急な対処が必要となる」
真面目な顔して言ってることはふざけてますね。
「入ってもらいたいげーむは『多重人格学園4』だ。本来はろーるぷれいんぐげーむだが、皆にくりあして欲しいのは、このげーむのしすてむのひとつ、『井戸端会議』だ」
説明しよう。
多重人格学園4とは、学園もののRPG。戦闘もあれば、日常生活もある。ミニゲームも豊富な超大作だ。
そのシステムの1つ、『井戸端会議』と呼ばれる、さまざまな登場キャラクターたちと会話し、選択肢を選び好感度を上げていく……というものがある。
路上や教室、さまざまなところで会話することからこのシステム名がついたと思われる。
「この井戸端会議、なかなかに難易度が高い。日によってきゃらくたーがいないときがあるし、期間をすぎてしまえばその周回は攻略不可となる。しびあなのだ」
クリアはあるの? と一人が手をあげる。
「ある。全員を攻略することで、最強の武器が手に入る。それがなければ真のぼすを倒すことができないのだ」
祷夜はゲームカードを取り出した。
「俺のでーたを使うといい。全員攻略開始のしーんまで進めてある」
もしかしてあなた、井戸端会議をクリアしてほしいだけでは?
「ん゛ほん!!」
みたいですね。
「一人で全員を攻略するのはほぼ不可能と言われている。皆には、『攻略相手を一人に絞って』井戸端会議をくりあしてほしい。
きまいらふゅーちゃーを救うために、よろしく頼む」
ゲームをクリアしてほしいヤドリガミはそう言って頭を下げた。
蒼銃
OPを読んでいただきありがとうございます。
初めまして、こんにちは、蒼銃と申します。
コミ……老若男女様々な登場人物を攻略しましょう。
●多重人格学園4
システム名・井戸端会議
恋愛ゲームの老若男女バージョンと思っていただければ。
●クリア条件
子供から老人まで、『相手を信頼させれば』クリアとなります。
街の人や、仲間たち、さまざまな人が攻略対象となります。
その人に潜む問題を、会話を通して解決したり、楽しんでいただければと思います。
『こういう悩みがある人がいるはずだ』と念じれば出てくると思います。頑張ります。
●オブリビオン
一番盛り上がってるところで出現して、襲いかかってきます。
『つよくてクールなアニマルズ』
三体
よわい
しつこい
よろしくお願いします!
第1章 集団戦
『つよくてクールなアニマルズ』
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POW : モグラさんドリル怪人・ウェポン
【モグラさんドリル兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : カエルさん殺法怪人・ジェノサイド
【カエルさん殺法攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ネコちゃん拳法怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ネコちゃん拳法】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カイジ・レッドソウル
積木 ミカ
どもった喋り方をするイジメにあってるドジな保健係少女の、回復能力をもつ仲間
このキャラの攻略ポイントは優しく接しちゃんと話しを聞く事、自己肯定力が無いのでちゃんと褒めてあげる事
友達に憧れてるので友達ムーブが吉、彼女扱いすると怯えてしまう
「ゆっくりデ大丈夫」
「積木ハそういうガ本機ハ凄いト思ウ」
最大イベントはヤンデレ化
傷つく主人公を守りたくて、監禁して
『だだ、大丈夫です、こ、此処なら誰も貴方を傷つけません。貴方は私が守るからだから、あ、安心して』
選択肢は抱きしめて「結婚シヨウ」
「本機ハ、君二全テ捧ゲヨウ」
「本機ヨリ君ガ傷ツク方ガ怖イヨウニ、ミカもソウダッタノダナ。心配させてスマナカッタ」
●
身長以上もあるフェンスの囲む屋上で積木ミカは、衣替えが過ぎたというのに長袖を着ていた。
低く結い上げた目立たない黒髪が、春風に揺れる。
「……あ、か、カイジくん」
「待たせタカ?」
「う、ううん。平気です。あ、あの、私ね、えっと、なんて言えばいいのかな……」
屋上の扉を開けて現れたのは赤にオレンジの混じったフェイスカバーにお洒落な学ランを着たカイジ・レッドソウルだった。
カイジが現れたことでさらにどもるミカ。せわしなく髪に手をやったり、服装を直したりする。
「ゆっくりデ大丈夫」
カイジのどっしりとした態度は、ミカを安心させた。
ミカはゆっくりとたどたどしく話す。
「……あの、あのね、またいじめられました。く、く、暗いとか。か、カイジくんといっしょにいるのをやめてとか」
「そうカ。本機と積木は友達ダカラ、一緒にいても何モ不思議なことはナイ」
カイジがそういうと、ミカの表情は少しだけ明るくなる。ホッとしたように、話を続ける。
「わ、私みたいな暗くて何も取り柄がないのに、カイジくんは優しくしてくれますね」
「積木ハそういうガ本機ハ凄いト思ウ」
「えっ……?」
見開かれるミカの目、カイジは辛抱強く優しく語りかける。
「積木ハ強い。いじめられても、折れるコトがナイ。誇れる友達ダ」
「あ、あ、ありがとうございます、カイジくん……」
その日は、屋上でカイジとミカは別れた。笑顔で手を振るミカに、カイジは支えているという思いを強く抱く。
そんなある日、事件が起きた。
「ウ……」
暗がりで目覚めたカイジ。ベッドのようなところに転がされていた。
部屋にはほのかにシャボンの香りが漂っている。
「ここは……?」
「か、カイジくん」
薄暗がりの扉からミカが現れた。疲れているようだ。
「だだ、大丈夫です、こ、此処なら誰も貴方を傷つけません。貴方は私が守るからだから、あ、安心して」
もうあんな場所に行って戦うこともないんです、とミカは続ける。
『この選択肢を間違えたら、後には退けない……』
頭の中にそうカイジが言い聞かせる。
カイジの選択肢は決まっていた。
▶︎結婚シヨウ
落ち着くんダ
抱きしめたミカの体が震える。カイジは構わず強く優しく抱きしめた。
「本機ハ、君ニ全テ捧ゲヨウ」
ミカが恋人関係に恐怖を抱いていたこと、それと友達であることに安堵していたこと、でもそれ以上にカイジが傷つくのを恐れていたコト。
複雑に絡み合った鎖を1つずつ丁寧に解いてやるべきだった。
「本機ヨリ君ガ傷ツク方ガ怖イヨウニ、ミカもソウダッタノダナ。心配させてスマナカッタ」
遠慮がちにミカもカイジを抱き返す。
「まてまてまてーい!」
テンプレセリフを言い放ち、アニマルズが現れた。
ミカを背中に庇い、カイジは立ちはだかる。
「エンディングに、行かせてモラオウ!」
ミカという真に守るべき存在を得たカイジは強かった。ネコちゃんの拳法を避け、ファイティングポーズをとる3匹を宙に打ち上げた。
「ぬこーーーー!」
「ぐわーーー」
「か、カイジくん……! け、怪我はありませんか?」
ミカの腰を抱き寄せ、イケメン顔をするカイジ、今のカイジ、最高にかっこいい。
「ミカのタメなら、どんな傷デモ立ち上がってミセル」
完全にカイジをみてうっとりするミカに、カイジが顔を寄せる。
目を閉じるミカ。
フェードアウトしていく場面。
『積木ミカと特別な関係になった……』
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフ・ヴュンシェン
アンジュ・キリサキ
天使のようにふわふわとした外見をしているが気が強い
剣術を扱う武道女子で自分より弱い者とは結婚できない
素直じゃないアンジュへ素直に好意を伝えることで好感度を上げていく
不必要にお姫様扱いせず彼女を認めることが重要
「ありのままのあなたが可愛いから俺はそのままがいいよ」
告白イベントは一昼夜一騎打ち
剣を抜く彼女への選択肢
『応じる』
「負ける気はないよ
知らないと思うが、俺もこれで負けず嫌いなんでね」(にっこり)
アニマルズが出てきたら
「馬いないから代わりに俺が殺るね」(凄くイイ笑顔)
UCで【串刺し】
「邪魔者はいなくなった
俺だけの剣姫、思い切り語り合おうか」(にっこり)
この先に俺達の未来がある
●
ツーサイドアップにした明るい茶髪が風に揺れる。男子たちの視線を受けているにも関わらず、気にしない気丈な振る舞い。
肩にかけた竹刀の入った袋は、その少女が「剣士」である証。
「アンジュ」
青年の声に振り返る少女、アンジュ・キリサキ。
背後から声をかけたのは金髪の好青年、ヴォルフ・ヴュンシェン。アンジュの数少ない「男子」の友人だった。
「ヴォルフ。また歯の浮くようなセリフ、言いにきたの?」
「はは、いきなり手厳しいな。日頃から思ってることを言ってるだけだ」
アンジュはいいところのお嬢様。アンジュより弱い者とは結婚できない、という誓約がある。
だから、不必要にお嬢様扱いせず、ヴォルフはアンジュ自身を認めることで、好感度を上げていく作戦だ。
「どうせあなたも、私の家柄が目当てなんでしょ?」
「まさか。ありのままのあなたが可愛いから俺はそのままがいいんだ」
「私より弱いのに?」
「試したことあるか?」
アンジュはムッと頬を膨らませた。その様子も可愛らしい。
アンジュは肩から竹刀を取り出す。
「では、ヴォルフ・ヴュンシェン。あなたに決闘を申し込みます。返答は?」
凛とした美しく鋭い刃が静かにヴォルフを睨む。
▶︎応じる
今日は日が悪いので……
ヴォルフはいたずらっぽく笑う。自分も持っていた竹刀を手に取ると、アンジュに問いかけた。
「受けて立とう。そのかわり俺が勝ったら、俺と結婚してくれるか?」
「もちろん。もののふに二言はないわ」
アンジュがニヤリと勝気そうに笑った。体の前に竹刀を構えるアンジュに、ヴォルフは体の下に斜めに構える。
「負ける気はないよ。知らないと思うが、俺もこれで負けず嫌いなんでね」
にっこりとさやわかな笑みを浮かべるヴォルフに、アンジュは上段で切り込む。
「私も負ける気はないわ!」
上段からの打ち込みを払いのけるヴォルフ。
軌跡は見える。勝てる見込みは十分あった。溢れ出る男気がヴォルフを震わせる。
二人の戦いは一昼夜続いた。
「!?」
アンジュが態勢を崩す。すかさずヴォルフは打ち込み追い討ちをかけた。
尻餅をついたアンジュの鼻先に竹刀の先を突きつける。
「……私の、負け、ね」
「──」
ヴォルフが口を開きかけた時、
「ゲコーーーーーー!!」
アニマルズのカエルさんが殺法攻撃で奇襲してきた!
「馬いないから代わりに俺が殺るね」
冷静だった。
物凄くいい笑顔で雷を纏う水晶の槍の雨を、範囲内にいたアニマルズに降り注がせる。
「モグーー!?」
「ウマなんでー!?」
アニマルズは登場から秒で消し飛んだ。
まだ尻餅をつくアンジュに歩み寄ると、ヴォルフはアンジュを軽々とお姫様抱っこする。
「な、ちょ、下ろしなさい!」
「嫌だよ、邪魔者はいなくなった。俺だけの剣姫、思い切り語り合おうか」
至近距離でにこりと微笑めば、アンジュは顔を真っ赤にして俯いた。
自分がどういう体勢なのか理解したらしく、黙ってしまう。
「この先に俺達の未来がある」
「わ、私の、未来の旦那様ってことね……」
「もちろん、アンジュ」
トドメの笑顔に、アンジュは目を伏せた。
『アンジュ・キリサキと特別な関係になった……』
大成功
🔵🔵🔵
寧宮・澪
そーですねー……お疲れ気味の、おにーさんないしはおじさん、とかー……。
気弱で、愚痴や何か話したいけど聞いてくれる人も聞かせる人もいない……。
お酒のお店に行けないくらい。
もしいたら、いっぱいお話……したいだけしてください、って通いましょー……。
無理に聞き出さず、相槌と、時には私の他愛もない話、抑揚無い話し方の悩み、といった風に、相手を受け入れ、相手の動作真似してー……。
お話聞いて今を乗り越える、手伝いをしましょー……。
最大イベント……話聞いてもらえて悩みが晴れた、信頼したとかでしょうか。
そうなったら、うれしいですねー……。
現れたオブリビオンはUCで排除ですよー。
アレンジ、お任せですー。
●
そのサラリーマンはくたびれていた。
丁寧に後ろに撫で付けて整えた髪には白いものが混じり、頬は痩せて、両目は疲れで落ち窪んでいる。
清潔にしてはいたが、やはり疲れていた。
寧宮・澪がそんなサラリーマン、九門と出会ったのは河川敷の公園のベンチだった。
うら若き女性が、そんなくたびれたサラリーマンの元に通うなんて、と九門は最初とても警戒した。
お互い名を名乗らず、探り合うようなやり取りを経て、九門がようやく心を開きかけてくれたとき。
「君はどうして、僕みたいな男に構ってくれるんだい……?」
きょと、と眠くて半目の瞳を瞬かせる澪は首を傾げた。
「いっぱいお話……したいだけー……。おじさんとお話してると楽しいから……」
「パッとしないおじさんだよ? 嫁には疎まれ、娘には汚れもの扱いされてる、何もない……」
「相談、乗ってくれましたー……」
「ああ、話し方に悩んでたっけ。それが楽しかったってことかい?」
こくこくとゆっくり頷く澪に、九門は照れたように頭をかいた。
「あと……おじさんはすごく真面目だしー、奥さんと娘さんにちゃんと向き合おうとしてますよー……」
「そう、だね……君と話すようになってから、2人の態度がちょっと違うかな」
澪が九門の手伝いをしたかったのは、今を乗り越える力を得ること。
スナックに行って愚痴も言えない、酒も煙草もやらない九門は、話してきた澪の思うおじさんは、少し気の弱い優しい男性だった。
「……実はね、妻に離婚を切り出したんだ」
「どうして……?」
やり直したがっていたと思っていた澪は少しだけ驚いた。
2人と話せたと喜ぶ九門の姿を見ていたからだ。
「このまま一緒にいても幸せにならないと思って。それと、田舎に帰ろうと思ってね」
「いいんですか……?」
「よくないモグーー!!」
バァンと現れたのはアニマルズだった。
「今の人生捨てるのはまずいモグ!!」
「……うるさいですー」
澪の武器がかすみ草に変わると、アニマルズに襲いかかる。細切れにされたアニマルズは塵となって消えた。
何事もなく進んでいくイベント。九門はポケットから何かを取り出して澪に差し出した。
「俺が『今』を捨てて新しい『未来』に踏み出す一歩の証だ」
澪が手を出すと、手のひらに使い込まれたペンが置かれる。
「付き合っていた時に、妻からはじめての誕生日プレゼントでもらった万年筆だよ。もう使えないし、使う気もない」
「私がもらっていいんですかー……?」
そんな、大切なものを。
九門は晴れやかな顔で頷いた。初めてみる優しい九門の笑顔は、本当の彼のようだ。
「君に持っていて欲しいんだ」
『九門からの厚い信頼を感じる……』
澪は大事そうに、万年筆を両手で握る。
九門は立ち上がると、澪に片手をあげた。
「それじゃあ、ありがとう! また再会できればいいな」
「おじさん、元気でー……」
ニッコリと笑うと九門は河川敷を去っていく。その背は堂々としていた。
誰かの「何か」になれたことが嬉しくて、澪はもらった万年筆をゲームが終わるまで握りしめていた。
大成功
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桜雨・カイ
梅木トメ:いつも愚痴を言う近所から鼻つまみの老人
まずはお話から始めましょう
お茶を飲みながら長い話(延々と続く愚痴)をにこにこと聞きます
トメさんはお話することがたくさんあるんですね、すごいです
デート(買い物)では荷物をもったり
そっと【手を握る】(転ばないように)
車が危ないところをは抱きかかえます
今度はトメさんの楽しいお話も聞かせてください
きっと近所の皆さんもトメさんの笑顔が好きだと思いますよ。
私も好きです(にっこり)
夜オブリビオン襲撃…トメさんがお休み中なので静かにしてください。
【花嵐】で撃退
目を覚ましましたか?何でもないです、ちょっと桜がきれいだったので。
あの…またお話聞かせてくれますか?
●
「なんだいあんたは!? うちの貯金盗みにきたのかい!?」
桜雨・カイが梅木トメと会って最初にかけられた言葉は罵声だった。
しかめっ面の老婆、曲がった腰は杖なしではいられない。
さてどう会話に持ち込もうかと、カイは持ってたペットボトルの茶を差し出した。
「お茶でも一杯いかがですか?」
「……そんなまずい冷えた茶なんて飲めないね。上がりな、美味い茶だしてやるから!」
顎でくいっと縁側をさされ、カイは微笑みながら縁側に腰を下ろしてトメを待つ。
しばらくしてお盆に茶碗を2つのせたトメが奥から現れる。少し離れた場所に座ったトメは、カイが茶を飲む様子をじっ……と見つめてくる。
一口。程よい渋みと、ほのかな甘さが爽やかに喉を通っていく。
「美味しいです!」
「当たり前だろう?」
と言いながら、トメは嬉しそうだ。
やがて喋り出したトメは止まらなかった。ノンストップ。しかもそれが全て書くのを憚られるような愚痴や悪口なものだからトメ、老いて元気。
カイはうんうんと頷いたり、黙って聞いたりニコニコしていた。
やがてそれを見咎めたトメが、
「あんたは笑ってばかりだね! なんかいうことないのかい!」
と言うものだから、カイは微笑んだまま感想を述べた。
「トメさんはお話しすることがたくさんあるんですね、すごいです」
トメは頬を赤らめて罵声を浴びせた。
もう少し仲良くなってから、2人はデートと称して外に買い物にでた。カイがデートだというとトメは全力で否定する。そんなやりとりが続いた。
重い荷物を持ってやったり、転ばぬように杖を持たない手を優しく握ったり。
「あんたの助けがなくても歩けるよ! ババア扱いしないでおくれ」
「トメさん、横断歩道、赤ですよ」
「わかっとるよ!」
または別の日のこと。
「トメさんの笑顔、私も好きですよ。きっと、近所の皆さんもトメさんの笑顔が好きだと思いますよ」
「そ、そんなわけあるかい!」
トメはカイから顔を背けた。やっぱり頬が赤らんでいた。
とある日の深夜。
カイは予感がしてトメの家にいた。庭で騒ぐアニマルズたちに、しぃっと指を立てる。
「トメさんがお休み中なので静かにしてください」
「にゃー! 静かにしろと言われて素直に聞くアニマルズたちじゃないニャ!」
「仕方ないですね」
ひそやかに呟き、カイは持っていた武器を桜の花びらに変える。ピンクの花びらに切り裂かれたアニマルズたちは、そのまま跡形もなく消えた。
縁側に面した障子が開く。パジャマのトメが立っていた。
「目を覚ましましたか? なんでもないです、ちょっと桜がきれいだったので」
「……あんたは桜の妖精か、なんかかい? ふらっと来てふらっといなくなって、桜の咲く間しかいないんじゃないかと思うよ」
「そんなことないです。……あの、またお話聞かせてくれますか?」
トメは縁側から庭に降りると、カイの手に何かを握らせる。
「? あの」
「近所の集まりでね、作ったんだよ。今度はそれ作るからおいでよ!」
カイの手にあったのは、折り紙で作ったピンクの花びらだった。家に戻るトメの背中に、カイは優しく返事をした。
「また来ます、トメさん」
『梅木トメとの間に確かな絆を感じた……』
大成功
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