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バトルオブフラワーズ⑦〜妹賛歌

作者：天宮朱那

「まぁ、うん、綺麗にパッカーンって割れとるねんな」
　蓮条・凪紗（魂喰の翡翠・f12887）は呆れるような驚きが隠せないような、そんな表情でキマフュの状況を簡潔に説明する。
　テレビウム・ロック、そして開かれたシステム・フラワーズへのメンテナンスルート。
　コンコンコンを制御するそれを守る為にはシステム中枢に辿り着く必要がある。が、周囲を守るザ・ステージを６つ全て攻略しなければ、足を踏み入れることすら適わない。
「今回の戦場は、『ザ・サウンドステージ』－－それぞれ特殊な戦闘ルールがあるのがこのザ・ステージなんやけど」
　パッショネイトソング。この戦場では、戦闘中は常に『自分自身を奮い立たせる歌』を歌い続ける必要がある。歌を歌わずに行った攻撃は効果を発揮することはないのだ。
「具体的にっちゅうとやな……己の秘密をぶちまけたり、歌で思い切り告白したり……そやな、自分の気持ちに正直にポジティブであったらエエんとちゃう？」
　何を歌詞に籠めるかは自己責任ではある。
「そそ、今回相手して貰う怪人はんやけど」
　割と特殊な性癖を愛しているらしい、と凪紗は何故かイイ笑顔で告げる。
　対抗するなら、好きなモノを全力で讃える歌もありなんじゃないだろうか。
「猫でもカレーでもイケメンでもエエ。己の『好き』を歌って来ぃ」
　そう言って、凪紗は転送の準備にかかった。

　－－そして、猟兵達が向かった先はザ・ステージの一角。そこには、
『♪妹萌え！　妹萌え！　俺の妹は死ぬほど可愛いぜ昇天MAX！！！』
　激しくヘッドバンギングしながらエアギターを奏で、デスボイスで歌う怪人の姿。
　妹が大好きな怪人・マイホゥが己の性癖を全力全身全霊で表現している。
『俺の妹への愛は、お前達に負けねぇ！！』
　……勝負は歌でお願いします。

第1章 ボス戦 『妹が大好きな怪人・マイホゥ』

POW   :    妹の願いを叶えぬ兄などいない！お兄ちゃん頑張るぞ 【妄想の元気系妹の激励 】【妄想の清楚系妹の声援】【妄想のツンデレ系妹の罵倒(？)】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。 SPD   :    妹の何が良いかだと？これを見れば良さがわかるぞ レベル×5本の【妹 】属性の【動画を再生するモニター付ドローン】を放つ。 WIZ   :    どんな妹が好みだい？言わなくてもわかっているさ 【頭部のタブレットPC 】から【対象が考える理想の妹の幻影】を放ち、【実体化した幻の妹とのふれあい】により対象の動きを一時的に封じる。 イラスト：因果 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「歌い続けるラビ？」
　ラビ・ラビィ（らびびうむ・f00825）は目の前で首がもげそうな程一人で咆えている怪人を見つめ、問うように呟いた。
『♪うおおおお！！　妹の可愛さを思い知れぇぇぇ！！！』
　何か話にならない。
「……まあ、なんとかしてみるラビ」
　肩すくめるようにして。ラビは早速始めることにした。

「さあ、猟兵の皆ー！　今日も一緒に、頑張るラビー♪」
　ステージ上に立ったラビ。ぴこぴこ８ｂｉｔな可愛らしい音楽をバックにスタート！
　そう、これぞラビのアイドル猟兵モード！
「らっび(*ゝω･*)ﾉ」
　ピンクのウサギ型テレビウムが尻尾をふりふりダンス付きで歌い出す。
「ラビは皆の幸せが好きラビ♪　素敵な日常贈るラビ♪」
　くるくると踊りながらリズムを取って可愛らしい歌声が響く。
　そして歌いながら、発動するラビコン・ショータイム！！
「本日お送りするのは素敵な妹♪　らびらび♪」
『ぬぬぅ、妹だとぉ！！？』
　マイホゥはその単語にもれなく反応し、歌うのを止めてラビの方に注目。
　召喚されたラビコンは、まるで彼女の妹のようなそっくりで可愛らしい外見。
「らびおねえちゃんのために、らびこん、がんばるらっび♪」
　くるりんと歌いながらステップ踏んで気合い充分な妹的ラビコン。
『うおおっ俺の妹も負けねぇぇぇ！！』
　モニター付きドローンを飛ばして妹の良さを動画でアピールしようとするマイホゥだったが。
「♪らびこん、まけないらっび、らびぱーんち！」
　がっしゃーん。ラビコンの割と容赦ない拳が次々とドローンを叩き落としていく。
「ラビのご自慢のラビコンなのラビ♪　ラビの好きなもの、らっびらっび♪」
「らっびらび♪」
　ラビの歌とラビコンの歌が綺麗にハモる。応援の歌はラビ本人とラビコンを奮い立たせる効果は抜群であった！
「らびらび、きーっく♪」
『ぐおあぁぁっ！？』
　らびらび歌いながらの攻撃に怪人はただ翻弄されるばかりなのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　次に進み出たのは草野・千秋（断罪戦士ダムナーティオー・f01504）。
　raduという名義を用いて己の歌声を動画で配信し、少しは名の知れた歌い手である千秋。歌で負ける訳にはいかないのだろう。
　だが、彼の思うところは恐らくそれだけではない。
「僕の妹は確かに可愛い……可愛かった」
『過去形……だと……！？』
　マイホゥはその言葉を聞き、思わず歌おうとする手を止める。
「でも萌えとかそんなのではなくって、非実在でもなかった」
　そんな妹の歌を歌おう。千秋は目を瞑り、マイクを手にして大きく一呼吸。
　そして紡がれるは優しさと切なさに溢れたバラード。
「♪――Dear my little sister――」
　――始まる歌の内容は、今は亡き彼自身の妹へのメッセージ――。

　お転婆だった僕の妹
　天国でうまくやっているかな？
　お兄ちゃんは今やヒーロー稼業
　悪を倒す仕事をしているよ

　おじいちゃんおばあちゃんが
　やっていた駄菓子屋も受け継いでる

　小さい頃君はいたずらっ子だったね
　木登りしては下りられなくなったり
　そして僕が迎えに行ったり

　おやつの取り合いっ子もした
　大抵僕が折れたけど
　君が喜ぶのならって思って
　君の幸せをずっと願ってた

　だけどそんな君はもういない
　天から僕を見守っていてくれるかな
　生まれ変わったらまた会いたいよ

　――さて、怪人の様子を見ると。タブレットＰＣ状の頭のどこから出てるのか、涙がポタポタと溢れている。液漏れじゃないのか心配になるレベル。
『うおぉぉぉぉ……なんて可愛い妹を亡くしたんだお前は……！』
　実在妹の思い出パワーに、怪人もすっかりやられて攻撃どころじゃない模様。
　それもそのはず。彼の歌唱力やパフォーマンスはヒーローズ・リサイタルというユーベル・コードによって無茶苦茶強化されていたのだから。
　強化されていたのは歌に関する能力だけではなく。
『――ぐはっ！？』
　パワーアップした範囲攻撃能力も歌に乗せて放たれていたのだと思われるのか。
　色々な意味でダメージを受けている怪人はごろごろ転がっており、千秋は手応えを感じるのみであったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

「弟への愛なら負けないわよぉ♪」
『むむ、貴様は弟萌えか。似て非なるが近しいな』
　栗花落・深香（暴走おねーちゃん・f03474）の言葉に怪人は唸り頷くものの。
「……ん、ある意味、妹かしら？　見た目的に」
『いや、どっちだよ』
「それなら妹勝負も負けないわぁ♪」
『だからどっちだ！　そこは重要だ！！』
　己の愛するものを歌うのに性別なんて関係ないと多分エライ人も言ってるから些細な問題である。
　そこそこの身長もある彼女の地声は超ロリ声で、これが妹だったら溜まらないとか怪人がそこで評価するくらいなのだが。
　流れるメロディはアイドルポップめいたもの。
「対抗して弟賛歌よ♪」

♪炊事洗濯なんでも出来て
　とても賢い自慢の弟
　可愛さだって負けてないわ
　時々素直じゃないけれど

　歌いながら、彼女は思い出す。可愛い己の弟の事を。歌詞は全て事実。面と向かっては言えない事もあるが、そこは音楽の力を借りて思いを解き放つ！

♪護れなかったあの子の時間
　一人で何を見て来たのかしら
　悲しいくらいに優しい子
　今度こそ私が護ってあげなきゃ

『え、なに、結構重くねぇ！？』
　アイドル風味に歌い上げる内容は、なんか壮絶な過去を思わせる。怪人もやや困惑。

♪例えあの子が望んでも
　もう二度と1人にはしないわ
　本当の家族じゃなくても
　私はあの子を、愛しているから

『待って、結局そいつは誰――』
　疑問が尽きないまま、怪人はドローンを放ち攻撃を仕掛けてくるも。
　飛んできたそれごと、深香は手にしたアサルトライフルで撃ち抜いた。
『ぐっ！？』
「っ！　これが私の、義弟への覚悟の重みよ」
　ドローンの体当たりを受けながら深香は従弟の写真を怪人に見せつけて言った。
『え、弟……妹……ええい、どっちだ畜生！』
　混乱する怪人。写っていたのは男の娘っぽい子であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　そして次に現れた人物も、また性別が行方不明であった。
　高身長で胸が無いメイドがマイクを握りしめて怪人に人差し指をつきつける。
「好きなもの？勿論『もふもふ』よ！」
『もふもふ……だと？』
　知念・ダニエル（黄昏冥土・f00007）の高らかな宣言に、怪人も身構える。
「モフリストをなめないでよね！　私の歌、しっかり聴きなさい！」
　愛用のマイクを手に、彼――いや、今は『彼女』――は歌いだず！

♪もふもふ！（もふもふ！）
　もふもふ！（もふもふ！）
　尻尾の！（もふもふ！）
　ほっぺの！（もふもふ！）
　存在全てが！（もっふもふー！）

　元気に明るく響く歌声。もふもふ！の掛け声と共にふわもこもふもふした小さなわんこがどんどん召喚され、ダニエルと怪人の周囲は毛玉に覆い尽くされる。もふもふ。
『可愛さなら妹だって負けないぜ！』
　怪人は頭部のタブレットモニタに理想の妹を映し出すとそれを実体化させる！
　が。
『もっふもふーー！！』
　相手が考える理想の妹ってなると、モフリストの妹ってことだからこうなるよね。
　マイホゥの放った妹はすっかりもっふりわんこと触れ合いだした。もふーん。
「貴方は妹を召喚出来るようだけど、私のもふもふはその妹すら虜にしちゃうから！」
『うおぉぉぉっ！！？　もふもふと俺とどっちが大事なんだ妹よ！？』
「もふもふに決まってるじゃない。というか貴方……本当に妹いるの？」
　ぐさ。心に突き刺さる台詞に怪人の動きが止まる。
『う、うるさいうるさい！』
「はいはい、貴方もうるさい。さ、皆でもふもふタックルよ！」
　ダニエルの号令に、１００匹近いもっふりが怪人に襲いかかる！！　数の暴力は恐ろしいのだもっふ。
『うごおおおお』
　真っ白毛玉が流れる雲の如く押し寄せ、怪人を毛玉で覆い尽くし押し倒す！
「この子達は肌触りも柔らかさも抜群！　見てるだけでも幸せになれるの！」
　自分の周りにも、ふわふわんこを侍らせながら、ダニエルは小さく笑み浮かべた。
　気がついたら幻影の妹ももふもふ昇天して消えており。
　怒濤のもふもふが去った後は白い抜け毛で服が白くなってり怪人が転がっているのみであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「お・に・い・ちゃーん！」
　転がる怪人の聴覚に届いたその声に。瞬間、マイホゥはその身を起こして声の聞こえる方向に目を向ける。
　そこには、ステージの上で超絶テンションでマイクを手にし、もう片方の手には黒剣を肩に担ぐというワイルドな姿のリグ・アシュリーズ（人狼の黒騎士・f10093）がいた。
「私が！　妹よー！！」
『なんだとぉぉ！？』
　そして彼女はニコッと怪人に笑みを向けると軽快に歌い出す。

♪妹は好き？って聞かれたら、私が妹！って答えたい
　なぜってサービス精神旺盛だから

　早口で歌詞を歌い上げながら、ステージより怪人の近くに寄り、首を傾げてアピール。
「♪本来ない属性でも張り切っちゃうの」
『妹属性はいいぞ、いいぞ！』
　目の前に妹申し出てくれる人がいるなら、怪人も妄想働かせる暇は無い。
　そう、妄想妹ではなく仮にも現実に妹から激励を頂ければ、嬉しいけどパワーアップは出来ないらしい。
「♪でもね（♪でもね）　♪時々出ちゃうの」
　――♪ヴァイ・オ・レンス！
　ずしゃああ！！　発音よく歌い上げながら、容赦ない暴力が怪人に振るわれる！！
「♪女の子は（ざすっ）生まれながら（ぐさっ）せ・ん・し・なのー」
『うごおぉぉぉ！！？』
　一方的に黒剣の重みに叩き潰されながらも、怪人は抵抗するどころか何か嬉しそう。
　そしてリグはくるっと身を翻してステージの奥に戻ると、その手にはサブマシンガン。
『おお……そんな物騒なものを持つのか妹よ。だが俺は全身全霊で受け止めよう！』
　両手を広げてウェルカムの姿勢。妹限定でドＭなんだろうかこの怪人。
「♪あなたの心に　スナイプ・ショット！」
　BANG！　掛け合いの声と同時に本当にぶっ放される銃弾。
「♪そして頭に　ヘッド・ショット！」
　ZUDA-N！　怪人の頭部モニタに命中する弾丸。
「♪愛情こめて　メッタ・スラッシュ！」
　ZUBA-N！　更に黒剣による斬撃がトドメとばかりに放たれる！！
「♪元気ハツラツ　ちょっぴり乱暴　あなたの妹　リグちゃんよー！」
　既に乱暴というレベルを通り越しているが、怪人は最早抵抗する意思もなく、攻撃を嬉しそうに受けていたし、とても満足そうにぶっ倒れているし。
『うう……妹に殺られるなら俺は本望だ……我が怪人生に悔いは無し……』
　ぐふっ。怪人は割れたモニタの首をがくりと項垂れ、そのまま消滅した。
　それが――妹萌えのために生きた怪人の最期の言葉であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月12日