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バトルオブフラワーズ⑤〜鬼ごっこ in HELL

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●Welcome?
 ウェルカム・×××・パーク!
 やあやあ良い子のみんな、楽しむ準備はできたかい?
 ボクは×××・パークの案内役のララらllllDDDDdddダークって言うんだ!
 うん、うん、あちらこちらの門が閉まってしまった? ダイジョウブ、鍵はこのパークに必ずある。
 ――でも申し訳ない、誰が持っているかはわからないんだ。
 君たちにはそれを探して欲しい!
 チチチ観覧車、ティーカップ、メリーゴーランド、エトセトラララららららら!
 きっと鍵を開くほど、楽シイものが待っているから!

 さあ、×××は君に託されタ!
 このパークの鍵を開いて、世界一楽しい楽シイ時間を作ろう!

●to hell
「アナタたち、緊急事態よ、聞いてちょうだい」
 急かすでもなくゆっくりと呼びかけて、ベルナルドは相も変わらず派手に真っ赤な燕尾でくすりと笑う。その場に集まった面々を見回せば、一呼吸置いた後で口を開いた。
「キマイラフューチャーの危機と、バトルオブフラワーズについては知ってるわね?」
 もちろん話は聞いているだろう。キマイラフューチャーの中枢であるシステム・フラワーズがドン・フリーダムに占領されたと。
 そして奪われた中枢に辿り着くためには、周囲を守る六つのザ・ステージを全てオブリビオンから取り戻さなければならない。――まっぷたつになったキマイラ・フューチャーで。

「ええ、そうよ。……もう何が言いたいかはわかるわね? ザ・ステージのひとつで予知を捉えたの」
 ベルナルドの予知に映ったのはザ・ゲームステージ。用意されたゲームをプレイし、目標を達成してステージクリアを目指す場所のようだ。
 ゲームと言っても、ゲーム機を操作するのではない。猟兵自身がゲームの世界に入り込み、プレイヤーとなってゲームをクリアしなければならないという。

「今回アナタたちにプレイしてもらうのは、鬼ごっこゲームよ。――いいこと? 全力で逃げてちょうだい」
 常に浮かべる笑みを口元から消して、ベルナルドは軽く目を伏せる。
「聞き覚えのあるハナシねって思ったかしら。ええそう、そうね。白くて可愛い遊園地で楽しみたいならここでアタシの話はここでオシマイにして行きなさいな」
 ゲームはファンシーな遊園地を模したフィールド――ではなく、よく似ているが、寂れ錆び付き血に塗れた遊園地で行われる、とベルナルドは言う。不協和音の音楽が響く、世界の終わりのような夢の世界で、凶器片手に追いかけて来るぬいぐるみや着ぐるみから逃げ切り、脱出するのが目的となる。
「オブリビオンがいるのは、パークの一番向こう側の橋の先。逃げ切ってそいつらを倒せば、アナタたちの勝ち。晴れてゲームクリアよ」
 しかし橋の前の門には鍵がかかっており、その鍵は遊園地のどこかにある。どこにあるかはわからない。けれど。
「見つけるのはアナタが逃げるためのアナタの鍵。どういう場所にあるか、あるいはどんなモノに隠されているか、アナタが一番わかるはずよ」
 深層心理、自分の内側、誰かとの絆。
 プレイヤーにはひとつ好きな武器の持ち込みが許される。愛用のもの、思い入れのあるもの、逃げるときにたったひとつ持って行きたいもの。

 逃走にはフィールド上に配置されたアイテムや地形を上手く活用したり、仲間のための意味のあるゲームオーバーなどは逃走点として高いスコアを獲得することができるらしい。
 ただしいくら高いスコアを獲得しても、クリア後の状況に影響はないと言う。

「捕まれば? ええそうよ、ゲームオーバー。これはゲーム。でもアナタは一度そこで死ぬわ」
 作戦や死を味わってみたいと言うならそれはそれで止めないけれど、とベルナルドは肩を竦めた。
「気づいているかもしれないけど、ほとんどホラーゲームよ、これ。トラウマにならない保証はしないけど、スリルを楽しみたいならもってこいね」
 生きるか死ぬか、誰かと逃げるか見捨てるか。ゲームとは言え気を抜いて掛かればすぐにゲームオーバー。
 ちなみに橋の向こうのオブリビオンはさほど強力ではない。一撃で終わるだろう、とも添えて、それでもその背にこう残す。

 ――じゃあ、地獄に行ってらっしゃい?

 ベルナルドはゲートを開き、真っ赤な唇で猟兵たちを送り出したのだった。


柳コータ
 柳コータと申します。お目通しありがとうございます。
 戦争ですね! 差し迫る死からの逃走劇はお好きでしょうか?

 当シナリオは『⑤ザ・ゲームステージ』の戦争シナリオです。
 章構成は【集団戦】の一章のみとなります。

●ご注意ください
 茶バシラMSの戦争シナリオ『バトルオブフラワーズ⑤〜鬼ごっこ in HEAVEN』と世界観やフィールドなどを合わせていますが、双方のシナリオが互いに何か影響を与えることはありませんのでお気を付けください。
 どちらもあくまで1本で独立したシナリオです。

●おおまかな流れ
 ダークホラーな遊園地で、追いかけて来るぬいぐるみや着ぐるみから逃げ切りましょう。
 監視員の着ぐるみたちは三体。捕まれば即アウト(死亡ゲームオーバー)の戦闘力を持っています。ですが着ぐるみ同士で連携することはなく、小さなぬいぐるみたちを配下として使います。
 ぬいぐるみたちは簡単に倒せる強さです。

●鍵
 鍵はあなたがあると思った場所やものにあります。大体は何でもOKです。指定がなければ適当なアトラクションなどに。
 また、鍵は最も監視員やぬいぐるみが重要視しているため、それを囮に使うこともできます。が、失うとあなたは脱出できません。
 オブリビオン自体は一言倒すとあるくらいで倒せます。
 絶体絶命の脱出ゲームをお楽しみください!

●ハイスコアについて
 シナリオの成功には関係ない、完全なるお遊び要素です。狙ってみたい方はどうぞ。
 見事な逃走劇も、ドラマティックな逃走劇も良いでしょう。アイディアが浮かぶままに試してみてください。
 このゲームスコアは成功点でもあります。
 お前らは先に行け! とか俺が犠牲になる! でも点が入ります。お好きな方はお連れ様などと素敵な地獄をお楽しみください。

 また、戦争シナリオという観点から全採用が難しい場合、少数採用になる場合がございます。ご了承下さい。基本的にはいつでも何人であっても気にせずお送り頂けると嬉しいです。

 それでは、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『つよくてかわいいアニマルズ』

POW   :    丸太クマさん怪人・ウェポン
【丸太兵器 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    鉄球ワンちゃん怪人・ジェノサイド
【鉄球攻撃 】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    ピコハンウサちゃん怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ピコハン 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジャハル・アルムリフ
げーむ…すてーじ…?
この状況で命懸けの鬼事になるとは

回る船を跳び越え
操舵のついた動物を敵へと蹴って
手押し屋台を吹き飛ばし、長く伸びた高架を駆ける
さて、今壊したのは何であったか
後で咎められぬことを願おう

鏡の屋敷は行き止まり
どこかにあるはずの鍵――
しかし、戦わずして己ばかりが逃げおおせる為のそれを
ただ探したいとは思えず

鏡の壁ごと【竜墜】で破壊
俺は、他の者らが探す時間を稼ぐとしよう
振り返らず往くがいい

向き直るは、迫り来る玩具の軍団
ここは娯楽施設だとの事ゆえ
さあ来い『鬼』ども、飽きるまで存分に遊んでやろう
砕かれようと千切られようと、この先に通しはしない

使い慣れた黒剣を手に道連れにすべき敵を睨む




 ――血の匂いがした。
「……ああ、なるほど」
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は呼吸一つでその場を知る。ここは戦場だ。耳障りなほど鳴り響く音楽がいくら遊び場を歌おうとも。そして狩り場だ。一方的な殺戮をていよく呼び現すならば。
 手を握り、開く。体温と肉の感触は変わらず、片手に茫洋と握らされていた黒剣は馴染んだものだ。
「げーむ……すてーじ」
 褐色の青年は、夜を灯したような瞳を眇めて眉を顰めた。首を傾げて、慣れぬ単語を反芻させる。げーむ、なるものにジャハルはさほど馴染みがなかった。勿論遊園地、という場所そのものさえ縁遠いと言っても良い。妙によく動くものが多い場所だとぼんやり思う。

 ――ただ、解ることは。
「行かねば、ただの餌と同義か」
 背後から迫る気配は相当数、不協和音に紛れて駆ける音もまた少なからずある。今目の前で回る船の側を、血塗れのウサギに追われ駆け抜ける少年が所謂プレイヤーキャラクターなのか、それともノンプレイヤーキャラクターなのか、その判断も大きな問題ではない。
 長身の影が、軋んで回る船を飛び越える。操舵のついた動物を、着地した脚で蹴飛ばせば、自由を得た不恰好なペリカンが空を飛び、少年を殴り潰そうとしたウサギの頭を吹き飛ばす。
 ――けれどすぐさま、ウサギがずるりと起き上がった。
「……ほう」
 興味深げに眇めた双眸が、虹彩の色を僅かに変えた。表情を特に動かさず、精悍な顔つきのままでジャハルは黒剣を握り直す。
 めしょ、と自分の首を付け直したウサギは、しかし胴と首が反対の方向を向き合っているのに後で気づいたらしい。こてりと首を傾げてから、ぐるんと首が一回転して、――ジャハルを、見た。ミた。

『――ろッく、オん』
『ロロロロロ』
『ロック、Rock、lock-on、oooooooo――』

『please、きる、ゆー』

 機械的な音声が流れた、そう思った次の瞬間だった。――ウサギの着ぐるみが先程とは比べ物にならないスピードで走り出す。同時に、ジャハルも動いた。そこいらにあった手押しの屋台を吹き飛ばし、跳び上がり、長く伸びた高架を駆ける。いくつか愛らしい何かを模した乗り物らしきものを叩き壊したが、足を止めることはない。
(「さて、今壊したものは何だったか。……後で咎められぬことを願おう」)
 ジャハルはそれの価値も知らぬ。けれど後ろから迫り来るモノもまた、生命の価値を知らぬ。それを守るために走ることは、決して愚行などではない。
 追われるジャハルを見つけて身を隠すもの、これ幸いと逃げるもの――その行為全ては、愚かでは決してない。
 目が合った少女がいた。恐怖に歪んだ顔をしていた。その大きな瞳がジャハルを映して、ごめんなさい、と唇が動いて、必死に駆け出す。
「……振り返らず往くがいい」
 その背を見送るようにして、ジャハルはミラーハウス――鏡の屋敷に駆け込んだ。何故だか足がここに向いた。ならば鍵はおそらく、ここにあるのだろう。そう解る。けれど。
「……ここは、娯楽施設と聞いた」
 一面に自分を映し出すその場所で、ジャハルを足を止め、振り向いた。すぐに追いついて来たのは、いつのまにかウサギと共にいたぬいぐるみたちだ。どれもきゃらきゃらと不快な笑い声を立てている。突進をして来た一体を使い慣れた黒剣で薙ぎ払い、ジャハルは笑みも浮かべぬその薄い唇を、僅かに開く。くすくすくす、きゃらきゃらきゃら。笑う声は響いて響き、四方を埋め尽くし、八方を塞ぐ。
(「逃げ場はない――ならば」)
 逃げねば、いい。
 そもそも、戦わずして己ばかりが逃げおおせる為のそれを、ただ探したいとは思えないのだ。こうしてここで引きつけることで、先へ進める者たちは少なからずいよう。
 一斉に飛びかかるぬいぐるみたちは他愛ない見目にそぐわぬ武器を備えていた。その全てが一身に放たれるのが、わかる。それと同時、ジャハルもまた竜たる拳を握る。
 節張った大きな掌。長い指は一呼吸の間に闇色の鱗に包まれ、竜の爪が鈍い光沢を放つ。その拳が纏うは呪い。同胞を掬い殺す禍つ星。その一撃が、派手な音と共に壁ごと鏡を砕き散らし、ぬいぐるみたちを貫き飛ばす。
 嗤う声がジャハルの腕を裂いた。ゲームと言えど、痛みは鮮烈だ。拳を砕こうとするモノがいる。叫びは上げなかった。
 ――そうして握った、竜と化した反対の手に、鈍い感触があった。なんだ、と思ってすぐわかる。鍵だ。だが、今このときにそれを手にしても意味など、
(「……ああ、そうか」)

 投げ捨てようとして、やめた。反対に強く握り込む。決して安易に開くなと、その指を呪うように。
 そしてその腕は――次の呼吸で千切り落とされた。吹き飛ぶ腕が何処ぞへゆく。それを視界の端で見る。それで良かった。
「さあ来い、鬼ども。飽きるまで存分に遊んでやろう」
 隻腕の竜はぼたぼたと落ちる鮮血を花のように散らして、歪な敵たちを睨む。これでは進めはしまい。自分の鍵さえ手元にない。
「これが、げーむ、なのだろう」
 ――道連れにすべきは、蒼き星が満つる、この先に進もうとするその全て。

『GAME OVER & High Score』

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

遊園地は知識として持ってはいますよ
ここが凡そ通常の遊園地ではないとも、わかります
随分と不気味で悪趣味だ

さっさと鍵を探しましょう
あまり長居もしたくありません

持てる武器は一つ、ならば蠢闇黒を

目標が逃走ならば不要な戦闘は一先ず避けるか
彼女に従いつつ、俺は周囲の警戒に注力しよう
監視員以外に敵はいないか、
この場を覗ける場所、死角、監視に適したポイント、
見極めて最短ルートを行くように

鍵を手に入れなければ話になりませんからね
闇を這わせ鍵を奪う、幽霊犬ごと貫き
吼える声が聞こえなくなれば見にくるでしょう
その隙に

こういうのは慣れないんですけどね……と、渋々手を合わせ
無事でなによりですよ


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

うう、変な音楽で耳が痛い
それにここ怖いよ
ねぇヨハン、遊園地って初めてだよね?
誤解しないで
本来はもっと賑やかで楽しい所なの……

とにかく鍵を探さなきゃ
使えそうな物もあれば
風船にフォークか、一応拾っておこうかな


見て、あそこ。監視員がいる
……拾ったアイテムは使っていいんだったね
その場に風船を置き、
息を潜めて二人で死角となる物陰へ
投げたフォークで風船が割れれば
監視員がそっちに気を取られるはず
今のうちに!

逃げ込んだ先はお化け屋敷
血染めの幽霊犬が咥えてるあれ、鍵だよね
でも出口にまた監視員……どうする?

橋を渡ったらハイタッチしようと手をあげて
こいつを倒したら任務完了、だね!




 ぴこぴこと、大きな耳が動いて、しおれた。
 うう、とオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は甘い春色の髪に自分の耳を埋めるようにして、眉を下げる。
「変な音楽で耳が痛い……それに、ここ怖いよ」
 辺りに響き渡る不協和音は、聴覚に優れたオルハには半ば毒のようだ。そもそも楽しいはずの場所の遊園地の有様としてはあまりに不穏な雰囲気に、すっかりしょげ返ってしまうのは、隣にいるひとに、楽しい気分を味わって貰えないからだ。
「ねぇヨハン、遊園地って初めてだよね。ご、誤解しないで、本当はもっと、楽しい場所なの」
 そろりと伺うように呼びかけて、その応答を待てずに言葉を継ぎ足したのは、本当に彼に誤解をしてほしくなかったからだ。この遊園地を『普通』だと覚えられてしまうのは、何だか嫌で。
 隣にいたオルハと正反対のような夜色の少年――ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)は、オルハのほうを一瞥すると、浅く息を吐いた。
「遊園地は知識として持ってはいますよ。ここが凡そ通常の遊園地ではないとも、わかります」
 随分と不気味で悪趣味だ。そう、端的にこの遊園地を言葉にして、ヨハンは僅かに眉間に皺を寄せた。そうして、その歳の割には細い身体を覆い尽くすような、闇色のマントを翻して歩き出す。
「さっさと鍵を探しましょう。あまり長居もしたくありません」
「うん……」
 こくんと頷いて、オルハもヨハンに続くように歩き出す。その足取りが些かしょんぼりとしたものになってしまうのは、仕方のないことだった。けれど。
「……オルハさん」
「え?」
「この遊園地へ俺を誘ったのはあなたでしょう。どうしてですか」
「ど、うしてって」
「……推測ですが。俺が賑やかに過ぎる場所を然程好まないから、では?」
 言いながらヨハンは歩みを進める。辺りを確認し、できる限り注意深く道を選ぶ。目標が逃走ならば不要な戦闘は一先ず避けるべきだ。
「それは……あるよ。でもね」
 とたた、とヨハンの数歩後ろから隣へ。並び歩いて、オルハはやっと彼女らしい笑みを浮かべた。
「ヨハンとなら、怖くないから」
 ふわりと向けた表情は柔らかい。それに一瞬面食らったように僅かに動きを止めたヨハンだったが、その間にオルハが前へ軽く駆けた。
「とにかく鍵を探さなきゃ。……あっ、風船にフォーク。ね、拾ったものって使っていいんだよね?」
「……そうですね」
 ぴんと立った耳が、少女が持ち前の明るさを取り戻した何よりの証のようにぴこぴことする。ヨハンはゆっくり頷いて、死角や監視に適したポイントを注視する。そうして注意深く二人が進んだその先で――ウサギの着ぐるみが、ぬうっと立っていた。

「! ヨハン、見て、監視員がいる」
「……ええ、あれはミラーハウス、でしょうか。派手な音がしますが、なるほど、あちらに気を取られて俺たちに目が向かなかったわけですね」
 警戒して最短ルートながら、物陰を進んだのが幸いした。どうやらあちらはヨハンとオルハに気づいていないようだ。誰かが戦っているのだろう。そういう音がしていた。それが気にならないわけではないが。
「好都合です。行きましょう、オルハさん」
「……いいのかな」
「――あれだけ派手な戦いっぷりからして、陽動でしょう。助太刀はむしろ野暮ですよ。問題は、あの監視員の目の前を抜けなければ先に進めないことですが」
「あ、それなら」
 息を潜めて言葉を交わし、頷き合う。若草色色の瞳と藍色の瞳が潜みあった至近距離で合えば、ほのかにオルハの頬が色づく。それを気づかれまいとするように、オルハを前にして二人は別の物陰へ走った。元いた場所に残されたのは風船だ。――そこに、過たずフォークを投げつける。

 パァン!

 風船が割れた音は、双方への合図のようになった。音に弾かれたように駆け出したウサギの監視員とは逆方向へ、ヨハンとオルハも駆け出す。
「今のうちに!」
 そうして、二人が駆け込んだのはおどろおどろしい装飾が増して彩るその場所――お化け屋敷である。薄暗くて見通しは悪いが、その条件は敵も同じだ。ゆっくりと、闇の中を進んでゆく。どうやらアトラクションとしての機能はさほど生きていないのか、何かに驚かされることもなかった。けれども出口らしき明かりが見えたところで、――犬の声がする。
「……ヨハン、どうする?」
「……ええ」
 そっと覗いた先には、血染めの幽霊犬がいた。それがどうやら出口の番犬のようだが、その口元に鍵が二つ見える。あれは自分たちの鍵だ。不思議とそうわかった。あれを倒すだけなら難しくはない話ではある。
「でも、出口に監視員がいる、ね」
「――けれど、鍵を手に入れなければ話になりませんからね」
 ヨハンが闇に囁くように声を落とせば、闇が這い出す。暗闇に紛れて幽霊犬のそばに這い寄った闇は、一息に鍵を奪い、そして幽霊犬を躊躇いなく貫いた。吠え声が途切れる。
 手元に呼び戻した闇から二人分の鍵を手にすれば、ヨハンは金色の鍵をオルハに渡し、藍色の鍵を手元に残した。
「吼える声が聴こえなくなれば見に来るでしょう。その隙に走りますよ」
「うん……!」
 こくこくと頷いたオルハに、声を潜めた合図をひとつ。監視員がぎゅるりと足音を鳴らしてお化け屋敷の中へ駆け込んで行ったその次の瞬間に、二人は外へ飛び出した。そのすぐ先には門がある。
 門――と言えど、それは小さな扉の集合体のようなものだった。前へ進めば、自分の名が刻まれた扉が現れる。その鍵を開けば、大きな石造りの橋に踏み出すことができた。
 どちらともなく駆けたまま、渡り切ったその先で、オルハは満面の笑みでヨハンに向かって手を挙げた。
「ヨハン! ハイタッチしよう!」
「……そういうのは慣れないんですが」
「じゃあ慣れよう!」
 ね、とオルハが浮かべる屈託のない笑みは朝の光ほどに柔らかくて眩しい。それに渋々、ヨハンも手を合わせた。
 その唇からは、無愛想で、先程までよりはずっと柔らかい声がこぼれた。
「無事で何よりですよ」

 こいつらを倒したら任務完了だね、と待ち構えていたアニマルたちは二人によって呆気なく倒されたのだった。

『GAME CLEAR ! & High Score』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フルール・トゥインクル
ネグル・ギュネス(f00099)さんと一緒に

不気味な場所ですけどネグルさんと一緒なら平気なのです!
武器は精霊銃を持ち込んで、小さいぬいぐるみを倒しながら進むのです
勘を頼りに監視員を避けて、鍵を探すのですよ

あ、観覧車……こんなところでなければ乗ってみたいのですけど
鍵あるかもですし行くだけなら損ではないですよね!

鍵を手に入れたら後は全力で橋までダッシュなのです
捕まりそうになったら樹属性の竜巻で動きを封じて逃げる隙を作るのですよ

何があってもネグルさんと一緒、置いて行ったりはしないのです
庇ってでもネグルさんには逃げてもらいますです!

ってあまりかっこいいことをいうと勘違いしてしまうのでダメなのですっ!


ネグル・ギュネス
フルール・トゥインクルf06876)と参加

任せろ
この子に手出しはさせん!
ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!

持ち込むのは、我が愛刀
其れでぬいぐるみや、追いかけて来るヤツを斬り、或いは【衝撃波】で吹き飛ばす!

【ダッシュ】でフルールと逃げながら、鍵は狭く高いところと踏んで、観覧車へ向かう
ユーベルコード【勝利導く黄金の眼】を利用し、監視官の動きを先読みし、掻い潜る

鍵を取ったら、一目散にゴールへ!
【鍵開け】を高速で行いながら、敵を一気に薙ぎ払う!

彼女に手出しはさせない
庇おうとしたら、引っ張ってもやめさせる

生きるも死ぬも、二人一緒だ

戻って観覧車一緒に乗るまで、死んでたまるか!!

※二人はまだ友人関係です




 若葉のような妖精の羽が、ふわりと歪な遊園地に羽ばたいていた。
 くるくると辺りを飛び回った妖精――フルール・トゥインクル(導きの翠・f06876)は、小さな身体を落ち着きなく揺らしたものの、すぐあとに現れた青年を見つけると、ぱっと嬉しそうに彼の元へ羽ばたいた。
「ネグルさんっ」
 呼びかけにすっと瞼を持ち上げたのは、癖のない白い髪と、整った顔に残った傷跡が印象的なネグル・ギュネス(ロスト・オブ・パストデイズ・f00099)だ。落ち着いた紫の瞳は、フルールを映すと静かに緩められる。
「フルール、大丈夫か」
「はいっ。不気味な場所ですけど、ネグルさんと一緒なら平気なのです!」
「ああ、任せろ。手出しはさせん」
 ノーコンティニューでクリアしてやるぜ、と頼もしく口にしたネグルに、フルールもめいっぱい笑顔の花を咲かせる。
 各々に手にした武器は、使い慣れたものひとつずつ。――そして、信頼を何より携えて。
 駆け出した遊園地は、ぞっとするような荒れ果て方をしていた。けれど他の猟兵たちもゲームをスタートさせているせいか、動き出してすぐ追いかけて来るものがあるわけではないようだ。
「鍵、どこにあるでしょうか」
「……そうだな。勘ではあるが、高くて狭い場所はどうだ?」
「高くて狭い……あ」
 フルールが考え込むように呟いてふと高い場所、空を仰いだところで、大きなそれに目が止まった。錆びついて悲鳴のような音を立てながらぎこちなく巡っているそれではあるが、遊園地と言えば、と言えるひとつでもある。
「観覧車……こんなところでなければ乗ってみたいのですけれど」
「だが、鍵があるかもしれない。行くか?」
「はいっ! 行くだけなら、損ではないですよね!」
 観覧車、と言う胸踊る響きに、フルールは嬉しそうに笑う。それにネグルも口元を笑ませた。だが当然、すんなりと辿り着けるわけもない。
 ゆらりと揺れる影が浮かぶ。それはフルールと同じ程の大きさの――ぬいぐるみだ。
「フルール!」
 だが、それが攻撃の姿勢に入るその前に、ネグルの刀がぬいぐるみを斬り飛ばす。伴った衝撃波で後ろに続こうとしたぬいぐるみの群れを吹き飛ばして、ネグルは駆け出した。
「行くぞ、フルール!」
「は、はいっ」

 ネグルの眼――その力である『勝利導く黄金の眼(ヴィクトリー・フューチャー)』は近未来の予測を可能とする。ネグルの持つ類稀なる演算能力と、それを生かす力あってのことだが、監視員の動きを先読みし、二人はぬいぐるみたち以外の監視員に出くわすことなく観覧車に至ることができた。
 観覧車はボロボロで、ゴンドラの窓が割れていたりもしたが、そのおかげで、フルールの小さな体を生かして中に入ることも可能だった。
「ありました、ネグルさん!」
「ありがとう、フルール……って、それは」
 フルールの小さな手に抱えて来たふたつの鍵。それには赤い糸が結いつけてあった。
「……えへへ。怖い遊園地ですけど、可愛い鍵ですね」
 ふわりとひだまりのように笑って、フルールがどこか照れくさそうに、けれどとても大切そうに鍵を抱える。
「……――戻ったら、観覧車に」
 ひとときその鍵とフルールを見つめたネグルが言いかけた言葉を遮るように、ぬいぐるみたちが来襲する。それに我に返ったように、二人は再び駆け出した。
 目指すは一目散に、出口たる門へ。
「門だ!」
「はい!」
 最早一直線に駆けるばかりのそれは、まさしく鬼ごっこだったろう。フルールの起こす竜巻が、ネグルの振るう刀が追っ手を翻弄する。
 ぬいぐるみたちの群れ、そしてその奥からは着ぐるみが一体猛スピードで追って来ていた。
 けれど互いに門に至り、鍵を開けようとしたそのときだった。きゃらきゃらと嗤うぬいぐるみが、狙いを定めたようにネグルに襲いかかる。
「ネグルさん!!」
 咄嗟にフルールがその身を守ろうと飛び出した。――何があっても一緒だと、絶対に置いてなんてゆかないと、小さな身体いっぱいに秘めた想いで、そう決めている。だから。
「やめろ、フルール!!」
 果敢に飛び出したその身体を、ネグルがぐいと引き寄せた。片手で引き寄せられるだけで、彼女の身体はすっぽりとネグルに庇い込まれてしまう。

「――彼女に手出しはさせない。生きるも死ぬも、二人一緒だ」
「……っ」
 息が止まるかと思った。引き寄せられたせい、それだけではない。
「って、あんまりかっこいいことを言うと勘違いしてしまうのでダメなのですっ!」
 慌ててフルールが腕から抜け出し、それを合図にしたようにネグルが雪崩れたぬいぐるみたちを薙ぎ払う。

「戻って観覧車に一緒に乗るまで、死んでたまるか!!」

 ――そうして、鍵は開かれ、橋の先のオブリビオンたちもまた叩き潰される。
 ネグルの言葉が約束になったかどうか、それは未だ友達と呼び合う二人にしかわからない。

『GAME CLEAR ! & High Score & To be Continue?』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七篠・コガネ
ずっと憧れていた遊園地。まさかこういう形で初めてやって来るとは!
【ダッシュ】で着ぐるみ達から逃げます!足の速さには自信あるんですから!
飛べるなら飛んでみますが無理なら…えぇ、走りますとも
追ってくる着ぐるみ達には【怪力】でアトラクションの
コーヒーカップでも蹴って目くらましですよ
障害物は『Heartless Left』で薙ぎ払いつつ走りましょう

鍵…鍵…何となく…ミラーハウスが気になったので駆け寄ってみます
…この一辺の鏡だけ姿が写ってない?
【ホークスビーク】で鏡を撃ち砕いてみますよ
鍵はこの中にあるのでしょうか?

さて鍵を入手したらあとはやる事は一つ
元凶をこの“左腕”でぶちのめしに行くとしますか!



 七篠・コガネ(その醜い醜い姿は、半壊した心臓を掲げた僕だ・f01385)の目の前には、確かに遊園地があった。
「ずっと憧れていた遊園地、まさかこういう形で初めてやって来ることになるとは……!」
 金の瞳に好奇心に似た光を映して、コガネは歪な遊園地を見渡した。響く不協和音に、がらりとしたアトラクション、響くのは生死をかけた足音。コガネの持つデータベースにある記録とは若干噛み合わないが、ここが『ゲームの内側』と言うなら納得もゆく。
「シュミレーターは演算とズレが生じるもの。僕がここで出来ることは――」
 見渡して、コガネは自分の脚を進める。辺りには動かなくなったぼろぼろの人形たちが落ちていた。おそらくは、他の猟兵たちが進んだ後だろう。だが、まだいる。まだ、出て来る。
「これはいけませんね、逃げます!」
 うぞうぞと湧き出て来るようなぬいぐるみたちを背に、コガネは走り出した。ごう、と風を鳴らし、『生命』のために駆け抜けたその足音を追ってゆくように。
「追いつけないでしょう、足の速さには自信あるんですから!」
 得意満面に振り向いて、速さに翻弄されるぬいぐるみたちを見る。けれど勢い良く逃げ過ぎたせいか、心なしかぬいぐるみの数が増えているようにも思えた。

「……よし。蹴散らしましょうか、っと!」
 後ろを気にする間に、目の前には障害物――動きを止めた機械木馬が佇んでいた。それを左腕のバンカーで薙ぎ払い、装甲で勢いよく踏み潰す。
「危ないですね。なるほど、遊園地はやはり遮蔽物に障害物が多い。……ぬいぐるみには」
 どうしましょうか。そう呟くでもなく、無意識のうちに効率と答えを叩き出す。もうろくに回らないティーカップのアトラクションに踏み込めば、それを鎧装で蹴り飛ばす。決しておいそれと持ち上がることがない巨大なティーカップは、まるで本来のそれのように宙を飛び、ぬいぐるみたちを吹き飛ばした。それを目隠しとして走り出しながら、コガネは鍵について考える。

「鍵……鍵。ミラーハウスが気になりますね」
 なんとなく、と呟きながら入ったミラーハウスは、半分ほどが崩壊していた。壁に、鏡に大穴が空いているが、半分は無事だ。その鏡を覗き込んで、コガネは気づいた。
「この一辺の鏡だけ、姿が写っていない? ……では」
 何も映さない鏡に、左腕を添える。そこを躊躇いなく撃ち抜けば、甲高く砕ける音が辺りに響いた。
「鍵はこの中に……ありました!」
 無造作に掴み取った鈍色の鍵を手に、コガネは子供のように嬉々として早速踵を返す。蹴散らされたぬいぐるみたちはまだ追って来ず、監視員たちは駆け抜けるコガネに追いつけはしない。
 遊園地を真っ直ぐに突き通って、コガネは門へ突き進む。
「鍵を入手したら、あとはやることはひとつ。――元凶をこの“左腕”でぶちのめしに行くとしますか!」

 そうしてコガネが走り抜けた橋の先。アニマルズたちは容易く木っ端となり、コガネは個人のスコアとしては最速を叩き出すことになる。

『GAME CLEAR ! & High Score & BEST TIME !』

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
アドリブ連携歓迎
グラサンかける(破損可
鍵の場所お任せ(何故かすぐに分からない・灯台もと暗し
玄夜叉を持参
地図見て最短コース行く(情報収集

・ヤりたいコト
敵は倒せるが鍵がどうしても見つからないので、いっそ楽しんでパーク内駆け巡る

鍵が全然見つからねェがオブリビオンにはよく遭遇すンなァオイ(玄夜叉で先制攻撃・2回攻撃無双
初めての遊園地が随分とファンキーになっちまったが
これはこれで楽しいからイイけどよ(メリーゴーランド揺られつつ敵ボコボコ

ミラーハウスでは少し苦戦
狭いのと誤って鏡破壊(本体が神器の鏡の癖に鏡に翻弄される
お化け屋敷で逆に恫喝しながら属性攻撃で風宿し竜巻の如く吹き飛ばし屋根破壊
鍵発見後に出口へ


ルカ・アンビエント
成る程、あんなのが追っかけてくれば命がけの鬼ごっこですね
武器は霊符を
一番使い慣れたこいつで行く

聞き耳で警戒しつつ…ま、出来れば幸い程度で
ぬいぐるみの方が倒せるっていうなら
道具箱とか見つけた品で、敢えて音を立てて引き寄せましょうか
他の猟兵の邪魔にならないように

俺の鍵なら……やっぱり、観覧車か
空に届きそうで届かない
カゴが回ってこないなら飛んで中身から取り出す
無事に門を開けられればオブリビオンを倒しましょう

でもまぁ、飛べば多少目立つでしょうし
俺が見つかりそうなら
他に鍵に辿り着けそうな猟兵がいれば囮となる

ついでに他の猟兵に迫る者があれば警戒を

ホラーゲームにはよくいるやつですよ
反抗者の意地ってことで




 電子が身体を構成している。――その自覚はどうやらほとんど与えられないらしい。
 生身と変わらぬことを確かめるように歪な遊園地を軽く駆けて、ルカ・アンビエント(マグノリア・f14895)はふと物陰に身を潜めた。
 十三歩と呼吸一つ分。それだけの間を置いて、すっかり浅黒く色の変わった血糊をこびりつかせた、イヌの着ぐるみが傍を歩き過ぎてゆく。
(「成る程、あんなのが追っかけてくれば命がけの鬼ごっこですね」)
 元は愛らしい顔をしていたのだろうが、こびりついたそれと、着ぐるみには似合わぬ大鉈を持った片手が一切の笑みを許さない。
 使い慣れた霊符を片手に取り出して、監視員の姿が見えなくなってから、ルカは静かに駆け出した。

 耳を澄ましながら進む。物音への警戒は基本中の基本だ。猫目がちの瞳に滲んだ警戒はこの場所ゆえではなく、すっかり身に馴染んだもの。
「……おや」
 その緑に映したのは、派手に駆け回る青年の姿だった。身のこなしからして同じ猟兵だろう。
「――鍵は見つからねェが、ぬいぐるみにはよく遭遇すンなァ、オイ!」
 楽しげなのは声音から明らかだった。だがその背を追うぬいぐるみの数は半端ではない。
(「……まったく」)
 好都合だと吐き捨てる気は起こらない。ルカは青年と対角線上で駆けながら、視界の端に捉えた、置物らしい錆びついたラジオを思い切り蹴飛ばした。それは派手な音を立てて、青年を追っていたぬいぐるみたちの半数ほどがざっとルカのほうを向く。
「……あァ?」
「貰って行きますよ」
 相手には聞こえぬだろう声で落として、ルカはきゃらきゃらと嗤い声をあげながら向かって来たぬいぐるみたちを先導するように、首なしの白馬が回るメリーゴーランドの角を曲がった。――見上げるのは、この遊園地で、空に最も近い場所。


「随分とファンキーな遊園地だなァ、オイ」
 夕赤と青浅葱の瞳を彩る黒のサングラスを押し上げて、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は楽しげな声を唇のピアスに滲ませた。同時に手にした長身の黒魔剣――玄夜叉で背後に迫るぬいぐるみたちを薙ぎ払う。
 行く道は最短コース。地図は入り口で頭に入っている。だがコースは決まれど、問題がひとつあった。
「あァ、ここじゃねェな」
 ぞっとするような女の断末魔が響くジェットコースターを平然と降りて、次へ駆け出す。
 ――鍵が見つからない。正確に言えば、鍵の場所がどうにもピンと来ないのだ。ならばいっそのこと、とクロウは初めての遊園地を楽しみ尽くすことにした。ひとまず目につく動いていそうなものには乗って見たが、案外と楽しいものである。そこかしこに血がこびりついていたりするのはさておき。楽しむごと背を追うぬいぐるみの数が増してゆくのも気にしてはいけない。
「しっかし見つかンねェな。……へえ、メリーゴーランドってやつか、アレ」
 ごうと唸るように突っ込んで来たぬいぐるみを殴り飛ばして、クロウは首なしの白馬が回るメリーゴーランドへ駆け出した。
「鍵は見つからねェが、ぬいぐるみにはよく遭遇すンなァ、オイ!」
 突撃される前に先んじてぬいぐるみを叩き潰し、斬り飛ばす。そのままの勢いでメリーゴーランドに駆け上がったときだ。
「――貰って行きますよ」
「……あァ?」
 鳶色の髪の青年が、観覧車のほうへ駆けてゆく。その背に、クロウを追っていた半数ほどのぬいぐるみを連れて。
 あの速さと身のこなしなら、ぬいぐるみ如きには遅れを取らないだろう。メリーゴーランドに揺られながら飛びついて来たぬいぐるみを殴りながら、クロウは軋む馬に揺られる。サングラスの向こうの色の違う両の瞳が、その姿かたちをしかと覚えた。
「借り、イチ」

 ぐっと数の減ったぬいぐるみに追われたまま、クロウは再び遊園地を走り出す。最短距離のために駆け込んだのは――ミラーハウスだった。
 誰かが戦ったのだろう。半壊以上のありさまだが、奥へ進めば狭苦しい場所で、鏡に閉じ込められる。その感覚は妙に不愉快だった。ぬいぐるみを蹴り飛ばす。その勢いで鏡がばりんと割れる。
「ちッ」
 舌打ちが出る。だがぬいぐるみの嗤う声が響き、鏡の破片がサングラスを割った。
 どうにもやりにくい。鏡は慣れた存在だ。ヤドリガミのクロウが本体とするのは、神器の鏡である。けれどだからこそ、それらに囲まれると思考が塞がれるようだった。鏡の全面に、ぬいぐるみたちが歪んで映し出される。
「――余計なモン、映してんじゃねェぞ!」
 刀に宿すは風。それは竜巻となって、恫喝と共にミラーハウスを吹き飛ばす。
 がしゃりと音を立てて崩れ落ちる鏡の中。――そのひとかけらに紛れて、クロウは鍵を見つけた。


「……やっぱり、観覧車か」
 ルカは観覧車の下に辿り着いていた。追いすがったぬいぐるみたちは既に霊符で吹き飛ばしている。問題と言えば監視員くらいだが、どうやら今は姿がない。
 緑の目を眇めて、空を仰ぐ。
 空に届きそうで届かない。ボロボロのゴンドラは、動いていない。
 ルカは息をひとつ吐いて、翼を広げた。そうして割れた窓を覗いた先。そこにひとつの鍵を見つける。
 鍵を手にした、その瞬間だった。――ガァン! と大きな音と共に、ゴンドラが揺れる。振り向けば、イヌの着ぐるみが下から登って来ているのが見えた。
 飛べば目立つことは避けられない。わかってはいたことだ。このまま囮になるのもいいか、そう思いかけたところで。

「――借りは返さねェとなァ!!」

 大きな刀が、着ぐるみの乗ったゴンドラを落とした。
 見ればぬいぐるみに追われていた青年――クロウが門のほうで唇に笑みを浮かべている。
「とっとと来いよ、今のうちだぜ」
「……ええ、反抗者の意地、ですね」

 頷きをひとつ。ルカは空を駆ける。
 そうしてふたりの猟兵は、門を開き、難なくオブリビオンを打ち倒した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
やれ、鬼と遊ぶも命懸けか
精々砕かれぬよう用心するとしよう

第六感をフルに稼働
聞き耳で物音にも気を配り、常に周囲の警戒を怠らず進む
遊園地を駆ける道中、呪詛で罠を設置
多少は足止めになるやも知れぬし、敵が何処に居るかの指標にもなろう
執拗に追ってこようものならば
【女王の臣僕】にて多くを凍らせてくれる
っはは、滑ろ滑ろ
斯様に滑稽な場面もそうなかろうよ

とはいえ追われているだけでは埒が明かん
果して私の鍵が何処にあるか…否、考えるのは後だ
ぬいぐるみに狙われている者がいた場合は率先して支援へ
それは己が安全圏にいた場合も須く、だ
ふふん、逃げるのは簡単だが
…逃げて後悔するのは、もう懲りた故な
我が念願は、守られる事に非ず




「やれ、鬼と遊ぶも命懸けか」
 手を握って開き、蒼玉の瞳に辺りを映すとほとんど同時、どこかで硝子か何かが砕けるような音がした。
 アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は考え込むように口元に手をやってから、顔を上げて辺りを見渡し、ゆっくりと感覚をひらいた。
 これはゲームだ。だが、アルバの生まれ持った宝石としてのその身はどうやら変わっていない。
「……精々砕かれぬよう用心するとしよう」

 耳を澄ましながら道を駆ける。歪な遊園地は不協和音の音楽も耳障りなのは間違いないが、何よりは長く放置され錆びついたモノたちの悲鳴のようなそれがやたらと耳につく。
 周囲への警戒は常に怠らずに進みながら行くが――どうにも先に行った誰かが派手に暴れたらしい。メリーゴーランドを過ぎた辺りから妙にぬいぐるみの数が増えたように思う。
(「壊れたか。……追って来ているな」)
 またひとつ、仕掛けて来た呪詛が潰されたのがわかる。多少の足止めと敵の場所把握のために設置してきたものだが、思った以上に役に立った。そしてそれからわかる、追っ手の数の多さも。
「……まだ来るか」
 ならば、一旦身を隠したこの場も見つかるのは時間の問題だ。息をひとつ。またひとつ罠が発動したのを感知しながら、アルバは物陰から姿を見せてやった。
 ――きゃらきゃらきゃら。
 狂ったように嗤い続けるぼろぼろのぬいぐるみの群れと目が合う。其れらを、アルバは冴え冴えと見下ろした。薔薇色の爪先が、追い縋って来る群れに向く。

「――控えよ。女王の御前であるぞ」
 声音は冬の夜ほどに冴え渡る。同時に薔薇色の爪を境界線にするようにして、無数の青き蝶が凍てつく鱗粉と共に場を埋め尽くし、地面を、ぬいぐるみたちを凍りつかせてゆく。
 それでも掻い潜るようにして飛び出したぬいぐるみは、氷に足を取られるように滑り落ちて。
「っはは、斯様に滑稽な場面もそうなかろうよ」
 つい笑い声を溢して、アルバは身動きを封じられたぬいぐるみたちを置いて駆け出す。こうして追われているだけでは埒が明かない。
(「私の鍵が何処にあるか……否、考えるのは後だ」)
 このまま逃げるのはおそらく簡単だ。けれど。
「……逃げて後悔するのは、もう懲りた故な」
 誰かを追うように駆けてゆくのが見えたウサギの着ぐるみの足元を凍りつかせてやる。途端に、ぐるんとその首が回転して、背後の物陰に隠れたアルバを探すように凝視した。
 その、次の瞬間だった。
 暴風がけたたましい音と共に、空へ突き抜ける。アルバが身を潜めたその目と鼻の先。そこにあったミラーハウスが、疾風と共に吹き飛んだ。さすがに呆気に取られた、その視線の先で、きらきらと鏡の破片が降り落ちる。それと共に、アルバの足元に落ちたものがあった。
 ――それは、褐色の腕だ。斬り飛ばされたのか、と理解する思考が半分。その腕に覚えた既視感に軋んだ思考が半分。
 膝をついて、アルバがその腕に触れると、固く固く握り締められていたはずの掌が、ほどけて消えゆく。その掌にあるのは、ひとつの鍵だ。それが自分のものであることは、すぐにわかった。
「……馬鹿者」
 ほんの小さく落とした声は、共に氷片と化した。ばきばきと音を立てて、蝶たちがウサギの着ぐるみを氷塊の中に閉じ込める。それが破られることはわかっていたが、アルバはそれの前に立った。それを殴れば、自分のほうが砕けるだろうか。――それでもいい。

「我が念願は、守られる事に非ず 」
 ――ばきんと、氷が、何かが、砕ける音が響いた。

『GAME OVER & High Score』

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
武器:青星

死を賭けた鬼ごっこでも
お前といりゃ負ける気がしねえな
当たり前だ、お前の道を阻むもの全部俺がなぎ倒してやる
【赤星の盟約】を歌い
自身も歌で強化
二人並んで遊園地を駆け回る

メリーゴーランドも鏡の迷宮も
第六感を頼りに探して回るが鍵は見つからず
…っかしいな
絶対近くにある気がすんのに

…ッ!湧き出すぬいぐるみに驚き肩を震わせつつも剣を突き立てアレスを守る
盾でなぎ倒すアレスを口笛を吹いて囃し立てるが疲労は隠しきれず

ふと握る掌に感じる違和感
開けばそこにあるのは鍵で
…コレ
本能で自分のじゃないと察する
なら自分の鍵を持っているのは

アレス、走るぞ!
お互いの鍵を持ったまま出口へ駆ける
敵を倒して二人で外へ


アレクシス・ミラ
【双星】
武器:早天の盾

命懸けの逃走劇…という事で
剣ではなく盾を選ばせてもらった
僕が君の盾になる
だから…君は僕の剣になって欲しい。セリオス
ーー頼りにしてるよ

すぐ近くにあるような気がして
近くのアトラクションを探していくが見つからない
焦るな…

…っ来たか!
セリオスをかばうように盾受け、蹴り飛ばす
次が来れば勢い止めずシールドバッシュ
盾だからって甘く見られては困るな
監視員の着ぐるみには【絶望の福音】でセリオスの腕を引きながら回避

ふと、掌の中に違和感を感じ開いてみる
…鍵だ
だが、これは僕の鍵ではないと直感が告げる
ーー成る程
なら、尚更捕まる訳にはいかないな!

門の敵と決着を付けに
互いと互いの鍵を守りながら駆ける




 不協和音の歌は耳に痛い。それが歌い手ともなれば尚のことだ。
 セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)はまず耳が捉えたその音に長い睫毛を僅かに伏せた。だが、次の瞬きで降り立つように現れた夜明け色の青年を見つけて、我知らず笑みを浮かべる。
「こっちだ、アレス。……死を賭けた鬼ごっこでも、お前といりゃ負ける気がしねえな」
「……セリオス」
 僅かに遅れてその場に立ったアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)はまずセリオスの名を呼んで、同じ色の瞳を合わせた。
「ああ。僕が君の盾になる」
 だから、とアレクシスは柔らかな金の髪を揺らして、真摯な言葉をセリオスへ向ける。アレクシスがたったひとつの武器に選んだのは、白銀の盾。そしてセリオスが選んだのは光を纏う純白の剣。
「君は僕の剣になって欲しい。セリオス」
「――当たり前だ。お前の道を阻むもの全部、俺がなぎ倒してやる」
 手にした武器はひとつ。けれど二人並べば二つの武器が、響き合うように輝いたように見えた。

 赤星のうたが響く。闇夜を明かす鳥が囀るように、星の煌めきを旋律に乗せて。
 アレクシスはその身が強化されるのを感じながら、歌うセリオスを守るように立つ。二人を繋ぐように淡い光が歌と共に注ぎ、やがて余韻と共に歌は終わった。
「相変わらず良い歌だ。……セリオス」
「ああ、行こうぜアレス」
「――頼りにしてるよ」
 準備は良いかと聞くまでもなく、聞かれるまでもなく。二人は並んで歪な遊園地を駆け出した。
「なあ、鍵はどこにあると思う?」
 駆けながら、セリオスはふと尋ねた。
「……なんとなくだが、すぐ近くにある気がする」
「お前もか? 俺もだ」
 きょとんとした表情で顔を見合わせながら、二人はならば近場のアトラクションから当たってみよう、とその感覚を頼りに手近なところに飛び込んだ。
 振り子のように大きく揺れる幽霊船、空から落ちる椅子、自転するティーカップ。時折きゃらきゃらと嗤いながら徘徊するぬいぐるみを、駆けて、息を潜めてかわす。
 ――けれど、鍵は見つからなかった。
「……っかしいな、絶対近くにある気がすんのに」
「ああ。落ち着いて行こう、と言いたいところだが……」
 焦るな、とアレクシスも呟いて、考え込むように双眸の青を翳らせる。

 とん、とセリオスの肩が叩かれたのはちょうどメリーゴーランドを視界に納めたときだった。振り向くと同時に、片目の取れたぬいぐるみがニタリと嗤う。
「……ッ!」
 駆け回り、逃げ続けて、些か疲れていたのかもしれない。隙を突くように接近を許してしまったセリオスは、息を呑んで肩を震わせた。
「……っ来たか!」
 セリオスが剣を抜くより速く、アレクシスの盾がぬいぐるみを押し潰すようにセリオスの前に掲げられた。
「大丈夫か、セリオス」
「ああ――、っ、アレス!」
 ありがとう、と紡ごうとした声は呼び声になる。同時にアレクシスの背後に突き立てられた剣は音もなく這い寄っていたぬいぐるみを貫く。けれどそれで終わらない。
 機を伺っていたのだろう。一気に湧き出たぬいぐるみたちは、セリオスとアレクシスに押し寄せた。けたたましい笑い声が遊園地に響く。
「ッ、くそ、鍵さえあれば……っ」
「セリオス、僕の背に!」
 ぬいぐるみをなぎ倒し、押し潰して、アレクシスは盾を振るう。その背に庇われながら、セリオスは口笛を吹いて囃し立てた。
「さすがだな、アレス。……っと!」
 隠し切れぬ疲労を滲ませながらも、盾の背を守ることは決してやめない。背中合わせに立つ背の温もりを確かに感じながら、セリオスは剣を握り直し――そして掌の違和感に気づいた。
「……コレ」
 知らぬ間に、掌に何かを握っていたらしい。開けば、そこにあったのはひとつの鍵だ。けれど本能でわかる。
(「俺のじゃない。――なら」)
 きゃらきゃらとぬいぐるみたちが嗤う。その向こうから、クマの着ぐるみが駆けてくるのが見えた。それを確認するや、アレクシスは道を塞ごうとしたぬいぐるみたちを再度盾で薙ぎ、蹴り飛ばして、セリオスの腕を引く。
「お」
「手を借りるよ、セリオス。……盾だからって、甘く見られては困るな」
 その瞳は僅かな未来を見据える。監視員が振り翳す圧倒的な暴力を、夜明けの青年は許さない。それがセリオスに向かうなら尚のことだ。
 一瞬のうちに肉薄した監視員を、セリオスの腕を引いて回避する。彼が掌の感覚に気づいたのはそのときだった。セリオスの腕を引いたその手と、反対の手に。
「――成る程」
 道理ですぐそばにある気がしたわけだ。わかる。その鍵が、誰のものであるか。
「なら、尚更捕まる訳には行かないな!」
 その口元が、決意と共に柔く微笑む。ふたつの鍵が一つずつ、互いの手にあった。互いと、互いの鍵。守り合うそれを確かめるように、手を握る。
 監視員を躱して、二人は並び駆け出す。駆け抜ける道は、ふたり違わない。
「アレス、走るぞ!」
「ああ!」
 そうして流星のごとく、ふたつの星が門へと駆ける。
 辿り着くその直前、視線が交わり、どちらからともなく鍵を投げ渡した。
「知ってたぜ、お前が持ってたの」
「え」
「なんてな?」
 ふわりと髪を靡かせながら悪戯に笑って、セリオスは鍵を開く。アレクシスもまた、鍵を開いた。足音を揃えて、橋を駆け出す。
 その先にいた、三体のオブリビオンを剣と盾が打ち倒して。

 ゲームのクリアを告げるファンファーレが鳴るのを聴きながら、アレクシスは隣の横顔を盗み見て、ゆっくりと破顔した。
「……敵わないな」

『GAME CLEAR ! & High Score & GAME SET !』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月09日


挿絵イラスト