バトルオブフラワーズ⑤〜猟狼-RYOURO-
●グリモアベース
真っ二つに割れたキマイラフューチャーの中枢に位置する『システム・フラワーズ』
「コンコンコン」を維持すべく、星の中心に潜むオブリビオン・フォーミュラ「ドン・フリーダム」の妥当を目指す猟兵達の前に『ザ・ステージ』が立ちはだかる。
まずはこのステージを突破しなければ。突破のために必要なのは……。
「ゲームが好きなことでーす☆」
グリモアベースに集った猟兵達に最新式のゲームコントローラーを投げ渡し、グリモア猟兵のキーラは説明を続ける。
「今回の目的は『ザ・ゲームステージ』の支配者をぶっ飛ばすことだ。コンピュータールーム風のステージに巨大なゲーム機が設置されてて、そこで戦うことになるぜ」
但し、特殊なルールがある。戦闘の前に猟兵達はステージを支配するオブリビオン『キリ』とゲームで対決することになるのだ。
「ゲームなんか無視してぶっ飛ばせばいい……と思うかもしれねーけど、残念ながらゲームの決着がつくまで互いに攻撃は通じねー。ゲームが終わった瞬間に戦闘スタートだ」
ならば、ゲームは程々にすればよいのでは? 当然の疑問を口にする猟兵にちっちっと指を振るキーラ。
「ボーナスがあんだよ。ゲームに勝てば、敵は大きく怯むことになる。猟兵諸君が必殺技を一発思いっきりぶちこむには十分すぎるぐらいにな」
逆にゲームに敗北し、そのまま正面衝突すれば……。
「敵さんは可愛らしい見た目に反して肉弾戦に特化した怪物だ。鋭い手刀や平手、ついでに遠距離攻撃も備えてて一見して弱点が見当たらねー」
苦戦は免れないほどの強敵なのだと言う。それなら、相手もゲームは無視して殴りかかってきたほうが都合が良いのでは? 当然の疑問を口にする猟兵に、犬歯をむき出しにして笑う。
「ゲームでも勝てると思ってるんじゃね。ゲームが好きだから。ゲーマーなんてそんなもんだよ――ここに来たってことは猟兵諸君もそうだろ?」
●猟兵は二度死ぬ
「んで、ゲームについて説明するぜ。遊ぶのは『猟狼-RYOURO-』つー、アクションゲームだ。」
プレイヤーはゲームのキャラクターとしてキリと戦うことになる。
「遊びに特化した世界だけあって、ゲームの内容も最先端。どういう理屈かキャラクターのスペックはおおよそ、本人そのものになる。いいなー。キーラちゃんもやりてえわー」
本心から羨ましがりつつ、問題はここからだと続ける。『キリ』はゲームの中で再現された猟兵の能力そのものを持ってしても、簡単には勝てないほどの強敵なのだという。
「というか多分、一旦負ける。つええから。」
いや、負けるのかよ。やっぱ直接殴るか? ざわめく猟兵達を落ち着けと制止し、
「大丈夫だ。猟兵側には残機がある。一回だけ、一回だけならダウンしても好きなタイミングで起き上がれる」
ついでにダウン中は攻撃してこない。なんでって、そういうゲームだから。仕様だよ、仕様。
「その残機をどう使うかは猟兵諸君次第だ」
最初から全速力で飛ばすか、受けに徹して様子を見るか、得意な技で攻めるか、後手で対応するか。
「肝心なのは、どうやって勝つために戦うかだ。好きだろ? そういうの」
コントローラーを握る猟兵達の表情を見てキーラは満足気に頷く。
「それじゃあ、頼んだぜ。ゲーマー諸君☆」
ぬえの
キャラクターがゲーム化されたときにどんなスペックになるか想像して日々を過ごしている、ぬえのです。
今回のシナリオは「ゲーマーがハードコアな難易度のゲームを攻略する」がコンセプトです。
オープニングで細々とした情報が提示されていますが、あくまで皆様が素敵なプレイングを考えるきっかけにして頂く為のものです。
「この猟兵にはこんな強みがあるから、ゲームではこう再現される」
「敵の技にはこんな弱点がある」
「このゲームにはこんな抜け穴がある」
「俺の小パンは2Fだからガードされても五分」
「こんな演出でトドメをさす」
等、はったりやそれっぽさをたっぷり含めて頂けると嬉しいです。それでは、楽しいリプレイを一緒に作りましょう。
第1章 ボス戦
『キリ』
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POW : 縁切断(物理)
【手刀】が命中した対象を切断する。
SPD : 縁消去(物理)
【何らかプラス】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【狛犬のような自動砲台】から、高命中力の【その感情を抱いた時の記憶を消す光線】を飛ばす。
WIZ : ただの八つ当たり
【なんかムカついた】から【強烈なビンタ】を放ち、【あまりの理不尽さからくる動揺】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:華月拓
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠カスミ・アナスタシア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
宮落・ライア
残機かー。まぁ使い所は一つかなー。
速度でもって切り結び、一度の好機に勝利を決めるタイプ
接近したら決して距離を離さずに【見切り・武器受け】で相手の攻撃をいなし弾き捌く
相手が当たり前のように凌駕してくるなら、演じる必要なくジリ貧になるだろうから全力の【覚悟】と【殺気】で応戦
最期、致命の一撃を受けダウンする瞬間。数瞬の間も無く再起。
こいつは終わった。やったと思った隙に全力の一撃を叩き込む。
【侵食加速・止まること無かれ】
【怪力・気合い・薙ぎ払い・捨て身の一撃・衝撃波・鎧砕き・グラウンドクラッシャー】
初めから狙いは…ボクが殺される瞬間だよ
再起動!?馬鹿な! は敵側だと思うけどまぁかっこいいからいいよね。
●侵食
「最初はボクからだね!」
一番手に元気よく名乗り出た宮落・ライアは、ステージに飛び乗ると設営された巨大なゲーム機にコントローラーを端子に差し込み、椅子にあぐらをかいて座る。ゲームが彼女のデータを読み込み……気がつけば学校の教室を模して作られたステージにライアは立っていた。
「お、可愛いリボンだね」
既に教卓に腰掛け、待ち受けていたキリの言葉を受け流すように、無銘の刀その切っ先を突きつける。
「ありがとね。でも、恋愛シミュレーションじゃないでしょ?」
赤と金の視線が交わり、数秒が無音のまま過ぎ。
刃と手刀が衝突する甲高い金属音が響き渡った。互いに躊躇無し、全力の踏み込みで瞬時に間を詰め、鍔迫り合いの状態で睨み合う。
「へぇ、やるじゃん。一発で仕留められるかと思ったけど」
「お生憎様……だ!」
鍔迫り合いの終わり際、崩れた体勢を立て直しざま怯むことなくそのまま斬りかかる。火花が飛び散り、机が、椅子が、剣戟の余波で容易く切断されていく。
速い。全神経を集中して攻撃を捌きつつも、キリの拳の鋭さはその精度をあっさりと超えてくる。五分の切り結びは徐々に劣勢に変わり……。
「はい、勝ちー」
横薙ぎのフェイントをかけながら繰り出した突きを拳が弾き。そのまま勝利宣言と共に放たれた手刀がライアの腹部を貫いた。
「やっぱりボクのほうが強かったね」
前のめりに崩れ落ちる少女の身体から悠然と引き抜こうとするその腕を、キマイラの手が掴んだ。
「なーにー? 諦め悪いよ」
手を振りほどこうとして気がつく。外れない。万力の如き怪力で、掴まれている。これは死に体の悪あがきじゃない。
「最初から、狙いはこれだ。ボクが殺される、この瞬間だよ」
真正面からの攻撃では、致命傷を与えられない。しかし、この距離なら、相手が技量で上回っていようとも関係ない。
赤く染まる視界、体中を猛毒が駆け巡り、呪いと祝福に自我を侵食されていくような寒気を感じながら、咆哮。キリの腕を身体から引き抜きざま、身体ごと力任せに乱暴に宙に振り上げ、地面に躊躇なく叩きつけ。
「お前の負けだ!」
そのまま大剣を脳天に向かって振り下ろした。ぷっつりと世界がブラックアウトする。勝利だ。ゲームの世界で。なら、次にやることは。
ぐしゃり、コントローラーを握りつぶした勢いそのままに対戦相手の顔面を鷲掴み、壁に渾身の力で叩きつける! 肉が潰れる感触とステージがひび割れるほどの衝撃。痺れを払うように手を振りつつ、指を一本立てる。
「まずは、一発目だね」
成功
🔵🔵🔴
茅原・紫九
ゲーマーなら、か。
下手の横好きだろうとこう言われちゃ引き下がれねえよな。
俺の取る戦術は遠、中距離から射程ギリギリでの牽制をメイン。
ひとまず倒すことを考えずひたすら様子見と打開策を探すことに努める。
そして残機を1減らすまでに打開策……つまりはハメ技か永久を探し出す!
あるはずだ、どこかに!当たり判定やノックバックの設定ミス、無敵時間消失バグが!あれ!!
残機が無くなったらあとはその打開策を実行するために尽力する。
どんな策が見つかるか分からない以上、アドリブになっちまうが仕方ねえ。
俺みたいな下手なゲーマーでも勝てる唯一の方法だ、無理でもやるしかねえだろ。
●勝つために戦う
「ゲーマーなら、か」
無機質な白い床と天井が地平の彼方まで続く空間で茅原・紫九はオブリビオンと対峙していた。
「なら、負けられねえな。下手の横好きでも」
「は? ゲームは強いほうが勝つし」
ばっさりと切り捨て猛然と飛びかかるキリに対して、紫九は躊躇なく全力で後退しながら、攻撃が届く範囲ギリギリで牽制を繰り出す。
「おっ、舐めプか?」
「さあな!」
煙管のヤドリガミは壁がないというステージの特性を極限まで生かし、遠慮なく下がりながら、あらゆる攻撃を試した。一つ目がだめなら二つ目、三つ目。一度試して失敗したパターンは切り捨て、別の手段を取り続ける。
退屈で無駄な作業に見えるかもしれない。しかし、紫九には確信があった。これがゲームの世界なら、必ず攻略法がある。いずれ、誰も知らない秘密の通路を見つけられるはずだ。つーか、あるはずだろ! あれ!
牽制に失敗して一度ダウンを取られても、紫九は躊躇うことなく即座に検証を続けた。
観客も当人も思わず眠くなるほどの時間、地道に的確に退避と試行錯誤を繰り返し……ヤドリガミは一つの結論にたどり着いた。
「この距離から中パンを出した時のみ、当てて有利かつ硬直で勝る!」
複雑なコマンドを一切必要としない、それ故に誰も試そうとしないような、偶然にはたどり着かないワンパターンな攻撃。
そして、次にその攻撃を覆す証明を迫られたのはキリのほうで……ゲームの腕に自信がある彼女にとって、地味な検証と試行錯誤は最も苦手とするところであった。ガードの上からでもお構いなし、延々と遠い間合いから一方的にちくちくと微量なダメージを与えてくるヤドリガミに対して一転して涙目で抗議する。
「ずるいぞ! そんなせこい手段で勝って楽しいのか!?」
「楽しいとか楽しくないとか、そんなことは関係ねーんだ。勝つために戦ってんだよ、こっちは」
冷徹に返しつつ、22歳は極限まで精神を集中してモニターを見据え、最適な間合いを保ち続けた。
「……あー、やっと勝った」
ボタンが擦り切れるほどの長時間の戦いを制した紫九は、ため息をこぼしながら立ち上がり、対面で台に顔を突っ伏してぐったりしているキリの肩に手を置き。
「2アウトだな。おつかれ」
そのままマジックソードを振り下ろした。
成功
🔵🔵🔴
坂上・貞信
なるほど、ゲームねえ。
ああ、好きだよ。大好きさ。
ゲームのキャラクター達はまるで他人事に思えないし。
さて。ゲームの中では受けに徹しよう。
死霊の部下を呼び、高所を取り遠距離から攻める。
キリくんには存分に無双して頂くとしよう。
こちらの目的は見。不意打ちを織り交ぜ、
出来るだけ咄嗟の動きを『見切り』たいね。
難易度はどうあれ、これは対戦ゲームな訳だ。
そこに人の心の動きがあるならばやりようはある。
死霊兵たちと合わせ数十の目でそれを見せて貰う。
彼女が僕らを全滅させ、一呼吸ついた瞬間。
そこを【剣刃一閃】で狙い撃ちさせて頂く。
君がゲームを好きなように、
プレイヤーが好きなゲームキャラも居るものさ。
僕とかね。
ナノ・ネコ
猫です。キーラさんのぶんも頑張ります。
スペックが本人そのものという事はこの30cmの体躯を生かせるでしょうか。
ベロベロベロとザラザラの舌で毛並みを整えます。猫の毛づくろいです。
全身の摩擦抵抗を極限まで減らして敵からちょろちょろ逃げ回ります。
先にダウンした人が隙をつけるように一生懸命気を引きますね。
ダウンする時はわざと派手に投げられたりします。
起き上がるタイミングは仲間のピンチにあわせて
がばっと起きたらわーって飛び込んでかばいます。
そしてまた投げられたりします。
猫の屍を……越えていってください……あっ踏まないで……。
ミクリリ・マクルル
ゲームの中だってー。おもしろーい。
できるだけ近づいて偽泥生成で周りをね油まみれにしちゃうのー。
いっぱい油出して、一回目のダウン前に火をつけて周りを火の海にするでしょー?
ユーベルコードで出した油だからきっとそれでダメージ与えられるんじゃないかなー?
私もやられちゃうけど、一回目だから大丈夫ー。
ダウン中はダメージ受けないからねー、火が消えるのをゆっくり待ってから復活するの。
あとは急いでたいさんたいさん。
他の人に任せるのー。
●発火点
「こっちは三人でやらせてもらうよ」
「もらうわねー」
「もらいます。猫です」
「えぇ……」
遠慮することなく三人纏めてのしのしふわふわぬるめるとステージに上ってきた坂上・貞信、ミクリリ・マクルル、ナノ・ネコを半目で見やるキリ。
「こんとろーらーってどこの穴に挿すのかしらー?」
「ここですね、こっちの端子です」
「おや、ネコくんのコントローラー、肉球マーク入りなのか。いいデザインだね」
「あのさあ、本来一対一のゲームだから三人はちょっと」
「ありがとうございます。やっぱりマイコントローラーあると違いますよね」
「あらー。これって、どうやって持てばいいのかしら。こう?」
「完全に逆だね。そうじゃなくて、こうだよ」
「んー、わかんない。手を添えてもらっていいー?」
「わざとやってませんか」
「ねえ。一旦、ボクの話聞こう?」
涙目で訴えるキリの目を真正面から見返し、何一つ負い目はないと定信は軍人らしく堂々と答える。
「ご覧の通り、この二人はゲームに詳しくない。そんな力なき相手と戦って勝利したとて、君は本当に真の勝利を獲得したと言えるのかい?」
「そうですよ。さっきコントローラーを猫生で初めて触ったばっかりです」
「私もー、ブラックタール生で初めてさわったわー」
「……いや、それを差し置いても一人はバーチャルキャラクターだし、初めてでマイコントローラーはおかしいよね? そもそも」
「すいっちおーん」
ミクリリが勝手にゲームを起動させ、気がつけば四人は名状しがたい空間に立っていた。
「あー、もう四人も取り込むからステージもバグって……お前ら絶対にぶっ飛ばすからな!」
怒り狂ったキリの強襲の前に、ネコが敢然と立ちはだかる!
「ネコです」
知ってます。そのままあっさりと蹴り飛ばされる身長30cm。幸い、予め全身の摩擦抵抗を極限まで減らして置いたので無傷でした。
「ミクリリおねえさんでーす」
そうなんですね。グーパン。
「きゃー」
対して痛みを感じた様子もなく、衝撃で飛び散るミクリリさん(22)。黒いタールがステージに滴る。
「うわ、もー、手汚れた。なんかネバネバしてるし……とりあえず、この小動物からやっとくか……」
転がるネコに歩み寄り、蹴り飛ばそうとしたその爪先に弾痕が穿たれる。
「死霊兵よ、そのまま射撃を続けろ」
亡国の勲章から呼び出された数十の死霊達の牽制射撃を後方宙返りで交わしつつ、キリは笑う。
「いいね、やっとそれっぽくなってきた」
まずは、この死霊達を片付け、次に本体を潰す。瞬時に今後の作戦を立て、それを実行するべく、脚に力を込め。
「にゃーん」
突如響く可愛らしい鳴き声。その声にひかれるように動いたカメラの先、そこには地面をころころといい感じに仰向けに転がり、夢中で自らを毛づくろいするナノ・ネコの姿が! あら可愛い。
「いやいや、邪魔だから。カメラが。映んないからさ、こっちが」
「ねえ、ハグしていいー?」
「おい、ちょっと、カメラに映らないうちに何してるんですか。やめ……ゲームのジャンルが変わる! やめろ! ねっとりしてる!」
どったんばったん。執拗なアピールでカメラを奪おうとするつるっつる滑るネコ、やたらとボディタッチしてくるブラックタール、的確に牽制射撃を繰り返す死霊兵達。
執拗な妨害にもめげず、キリはひとつ一つ障害を排除していった。猫、タール、死霊、猫、タール、猫、タール、死霊、猫タール死霊。
「きゃー、負けちゃったー。たいさんたいさーん」
「猫の屍を……越えていってください……。つまり、猫屍。あっ踏まないで」
「はあ……やっと静かになった……お前で最後だね。もう帰れよ。ほんとに。それとも、ボクとやり合う気? 剣が得意そうには見えないけど」
軍刀を下段に構え、定信はその気はないと首をゆっくりと横に振る。
「これは対戦ゲームだ。人の心に動きがあるなら……スキルで劣っていてもやりようはあるものさ」
「なに? 命乞い?」
「君の集中力は大したものだが……一度、精神を乱されるとプレイングの精度が落ちるという弱点があるね。だから――こんな罠にも気が付かない」
地面を掠めるように振るわれた刀から起こる火花が、周到に撒かれたタールに引火し、轟然と燃え上がった。その炎はミクリリを散々殴って破片がたっぷりついたキリ本人にも当然引火し。
「これで3アウトだ」
剣刃一閃。流麗な軌跡を描きながら振るわれた軍刀が空間ごと業火に焼かれるオブリビオンの体を真っ二つに切断した。
「やれやれ、作戦通りだ。なんとかなったね。二人共、お疲れ様」
ゲームを終え、現実に目をやると、
「そーれー」
「猫です。毛です。」
粘度の高いタールと猫毛をしこたま口に詰め込まれたキリが白目を剥いて卒倒していた。
「戦いは時に非情、そういうことだよ」
定信はカメラに向かってシリアスな顔でキめた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
岩動・廻
狂人のふりをしてターゲットをとらないようにしましょう。
これで見逃してくれるのであれば、近くでアタックチャンスやリベンジチャンスを探ることができるかもしれません。
●演技例
「ロックじゃあ」
「困りごと~あるならば~シャウトを聞かせてくださいよ~」
また、狂人として歩き回りながら、人形を伏兵としてセットしておきます。
キリへのバックスタブ手段、またはタゲ取り役として活躍してもらえればベター。うぃーが死んだ時も残機は同じ使い方で。
戦闘ではギター一文字で打ち合いですが、敵の手刀に対応できるよう、攻撃は二段止めで様子を見ます。二段止めなら、ガードを見てからキャンセル演奏で敵の動きを一瞬止めることができますから。
●マッド
「次はうぃーがプレイヤーです」
リズム隊を引き連れ、ギター片手にステージに立つ岩動・廻をキリが迎える。
「いいけど、コントローラーは?」
「うぃーにコントローラーはアンネサセリーです。何故ならば、ロックなので」
「あぁ、ロックだから……は?」
「ロックです。シックスとか扉を叩くやつではないです」
「……」
「ゆーも困り事があるならシャウトを聴かせてください。気にすることはないです。心から叫べば、それがロックですからぺたぺた」
「とりあえず、そのステッカーをゲーム機に貼るのやめてもらっていい?」
抗議の声を無視して“RnD”の公式ステッカーをばっちり貼り付けた廻は、おもむろにギターから伸びたシールドケーブルをゲーム機に突き刺した。
「さあ、レッツロックです!」
暗転した画面の先、コンサートホールで廻達はキリと対峙する。
「いいですね。やはりロッカーたるもの、うぃーもいつかこういう大きなフロアをオーディエンスで埋め尽くしてみたいものです。そのあと映画化されてほしい」
さっきから何いってるか半分ぐらい分からないんだけど……いや、違う。キリは違和感に気がついた。怪しい。この会話が微妙に成立しない言動。これはおそらく、演技。ブラフだ。つまり、本物の廻は……。
「そこだ!」
ぐしゃり、迷うことなく放たれた必殺の一撃が、ドラム担当のバンド君を哀れにも真っ二つに切り裂いた。相変わらずいつもの無表情のままスティック諸共吹っ飛んでいく。
「仕留めた……違う、これも人形か!?」
「いや、いくらうぃーのアクトがグッドだとしても、人形と本人の見分けがつくつかないは別のプロブレムでは?」
呆然と立ち尽くすキリの後頭部にギターを振り下ろしつつ、抗議する廻。悲鳴と軽快な音色が響く。
「……君が本体だったのか。よくも騙してくれたね」
「騙してな……このさい騙したということでアンダスタンしてもらって構いません。さあ、ここからが本番です!」
大きな声量で言い切ると、ギタ一文字でそのまま勢いよく斬りかかる!
一撃、二撃、キャンセル演奏。
一撃、二撃、キャンセル演奏。
攻撃を最後まで繰り出さず、決して欲張らない。地道な差しこみ。
「……君、見た目によらず結構手堅い戦法使うね」
焦れたキリの大技を適切に咎めつつ、ミレナリィドールはいつものジト目のまま微笑む。
「サンキュー。やはり高いパフォーマンスには地道な反復練習があってこそですからね。さあさあ、フィニッシュです!」
舞台したからせり上がってきたマイクを踊るように引っ掴み、喉を壊れる寸前まで酷使した大音量のシャウトが、キリの意識を彼方まで吹き飛ばした。
成功
🔵🔵🔴
バル・マスケレード
ゲームか……これでも結構嗜んでんだぜ?
体借りてだけど。
最初は徹底的に防戦だな。
ガード、回避に徹して攻撃パターンとモーションを覚える。
ボス戦ってのはまずそこから……だー、横っつーか内からうっせェな宿主!
やられてんじゃねェ、攻略法確立してんだ!
黙って見てろ!!
一度倒れたら、敵が後ろを見せた瞬間に起き上がる。
【忍び足】からの【暗殺】で一気にHPを削るのさ。
キマイラフューチャーの鍔際……卑怯とは言うめェ。
攻撃パターンはもう覚えた。
あとはもうUCで次に何が来るか〝視える〟。
全部【武器受け】で弾き切ってからの反撃に徹してやらァ。
ゲームで勝ちゃ、あとはこっちのモノ。
剣を手に、敵本体に《終焉》をくれてやらァ!
●終焉をもたらす者
「ゲームなら結構嗜んでるぜ? 体借りてだけど」
吹聴しながらコントローラーを握った先の荒野にバル・マスケレードと宿主は立っていた。その表情は剣呑な仮面、バル本体で隠れて伺えない。
「へー、なら少しは楽しめそうだね」
ゲーマーなら相手に申し分はない。獰猛な笑みを浮かべながら駆け寄るキリに、
「試してみるか?」
余裕たっぷりに答え、手刀を弾く。その鋭さに戦慄しつつ、防御に徹して攻撃の癖を観察していく。受け損なった攻撃が一撃、二撃とヒーローマスク達の体力を削るが、これまでの戦いを見ていたバルには確信があった。キリの攻撃は鋭く早く、一見防ぎきれないように見える。しかし、その攻撃の派生にはいくつかのパターンがある。おそらく、キリ本人の中で無意識に使いやすいセットプレイがあるのだろう。複雑怪奇なダンスを踊ってるようにみえても、その先に来る本命の攻撃が二択であることを知っているなら、そのモーションを見切ることに集中すればいい。後は、その癖を身体に覚えさせれば、被弾。覚え、被弾。おぼ、被弾。
「だー! うっせェな宿主! やられてんじャねェ! パターンを探ってんだよ! いいから! 黙って見てろ!」
強かに殴り飛ばされ、地面をごろごろと転がりつつ、宿主の抗議に内心で応答。
「いえーい、勝ちー」
勝利のピースサインをカメラに向かって決めるキリの背中を見やり、続ける。
「そこで、じっくり視てろ。もう負けねえからよ」
キリとバルの距離はやや遠い。おそらく、相手もバルが起き上がってくることは認識しているのだろう。あえて背後を見せて誘っているのだ。不意を打って飛びかかってくる、そこに一閃を入れるタイミングを。
「そんなら、卑怯とは言うめェよ」
銃声。蒸気の弾丸が、キリの肩口を抉った。ベルトに密かに仕込んでいた精霊銃。今回の戦いでは一度も見せていない。認識していなければ、反応が遅れる。
「……やるじゃん」
肩に開いた穴を見やり、キリは冷めた笑顔を浮かべた。
「なら、今度は本気で倒してあげる」
これが彼女の本気なのだろう。再開した攻勢はバルの反応速度を超えていた。しかし、基本的なパターンは変わらない。未来に何が来るか予測していれば、知っていれば、視えていれば、かわせる。
残像が見えるほどの拳舞、その肉体から繰り出される殺人的な一撃をあっさりと弾き、いなし、かわす。
「もう、通じねえよ」
正拳突きの連打を凌いでから大技に移行するまでに一瞬、溜めが入る。こちらの攻撃を打ち込むには十分な、時間の。そこだ。
交錯するように突き出された短剣が、オブリビオンの急所を正確無比に貫いた。
「ゲームオーバーだな」
真正面から打破されたショックに呆然とするキリに告げ、猛然と飛びかかる。肩口に一刺し、そのままくるりと回転して乗り越えざまに切り下ろし。
「こいつがお前の《終焉》だ」
紫電を放つ魔剣が背後から心臓を穿った。
大成功
🔵🔵🔵