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バトルオブフラワーズ④〜諸君、飯テロの時間だ

作者：ろここ。

●食材求めて、えっさほいさ！
　海の幸を求めて、山の幸を求めて、或いは農作物を求めて。
　炭水化物トリオは駆け回る、己が身に合うであろう食材を探す為に。
　様々な方角へ向かうも、集結する場所は一ヵ所。そう、凡そ中間地点となる草原だ。

　其処には既に、ある程度の食材が山の様で。
　此のままではオブリビオン達の圧勝となってしまう。怪人達も勝利を確信している。
　……しかし、怪人達にとっての不運が一つだけ。
　食材が山の様に積み重なる場所、其の付近にはキッチン付きの別荘が存在していた。

●めしてろ　いず　まじっく！
「合法的に飯テロのターンよ！」
　……ミラ・パーチェ（夢追い人・f09057）は集まった猟兵達にそう告げた、が。
　集まった猟兵達の頭の上に疑問符が浮かぶばかり。
　一部の猟兵は心当たりがあるのか、ないのか。あー、と納得した様子を見せている。
　だが、しかし！今回の依頼は止まってくれない、止められない！
「キマイラフューチャー世界で、色々と大変な事になっているのは知ってるかしら？今回はシステム・フラワーズの周囲を守る、『ザ・フードステージ』に向かってもらいたいの」
　彼女曰く、多数のオブリビオンが様々な方法で食材の収穫を行っている様で。
　一定以上の収穫をされてしまうと、自動的に猟兵達の敗北となってしまうらしい。
　……其れが、特殊戦闘ルール『シュウカクフードバトル』である。
　逆らう事は不可能、ステージに向かう以上は其の戦闘ルールに従わなければならない。
　しかも、此のステージのオブリビオンは……食材を収穫中、攻撃が無効になるという特殊能力付き。理不尽だと思う者もいるだろう。

「でも、大丈夫。近くに別荘が何ヵ所かあって、其処にキッチンがあるらしいわ」
　――さあ、此処でミラの言う『合法的に飯テロ』の真意が判明する。
　食材が集まっているのならば、其れらを用いて料理を作れば良いのだ。
　もし、怪人が猟兵達の料理に惹かれて、一口でも食べてしまえば……其の瞬間、攻撃無効の効果は消失する。一口、そうたった一口だけでいいのだ。
　目の前に一口分差し出しても良し、料理を差し出して食べている所を叩くのも良し。
　もし料理が苦手な者がいる場合、他の猟兵の料理に怪人が夢中になった瞬間――其の一瞬を狙う為に集中するのも問題ないだろう。
　方法は各々に任せるが、料理を食べる瞬間までは手を出さない方が良いと彼女は告げる。
「今回、対処をお願いしたいのは『炭水化物トリオ』って怪人よ」
　炊きたてごはん怪人、焼きたてパン怪人、蒸したて中華まん怪人の三人で構成。
　エネルギッシュな怪人達で、今回の食材集めも休み無く行動し続けているらしい。
　彼らの興味を惹く様な……例えば、ごはんのお供になるおかず。
　パンに合う料理、中華まんの具材として合いそうな料理だとより効果的だろう。
「とってもお腹が空くけれど、でも……空腹に負けずに頑張って！」
　神様の御加護がありますように、ミラは祈りながら猟兵達を送り出す。
　……ぐぅー、とお腹の虫が鳴った様な気がするが。
　きっと気にしてはいけない。いけないのだ、だって彼女も女の子だもの。

第1章 集団戦 『炭水化物トリオ』

POW   :    炊きたてごはん怪人・ウェポン 【炊きたてごはん兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 SPD   :    焼きたてパン怪人・ジェノサイド 【焼きたてパン攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    蒸したて中華まん怪人・リフレクション 対象のユーベルコードに対し【蒸したて中華まん】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。 イラスト：まめのきなこ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●筍とアボカドを、たんと食らえぇぇぇ！
「収穫し通しで疲れてるでしょうから……」
　――此れは世界の命運を懸けた、戦争である。
　しかし、彼女の様に慈悲深い者がいても良いのではないだろうか。
　マリア・フィラルクフィア（紅の姫・f04126）は優しい心のまま、炊き上がった其れをしゃもじで切る様に混ぜていく。
　旬の食材、筍を混ぜ込んだ炊き込み御飯は湯気を立たせていて……なんと、よく見るとおこげまで！？見た目からも美味しそうだが……彼女は其れを食べ易くする為に、掌の上へ広げたラップの中心へ。熱さに負けず、三角の形に整えればおにぎりの完成だ。
「（上手に出来たかしら……？）」
　不安そうに見ているマリアだったが、御安心。
　彼女の作った筍御飯のおにぎり。そして、御飯が炊けるまでの間に用意していた鶏白湯スープは会心の出来と言っても過言では無いだろう。
　今回のメインは旬の食材を活かした料理だが、鶏白湯スープもかなりの時間を掛けて作ったのだろう。艶めく様な輝きが、其の証明だ。

「ふ、ふふふ……ハイソな一品料理では勝ち目は薄い」
　何やら意味有り気な微笑みを浮かべて、何かを微塵切りにしているのはベルベナ・ラウンドディー（ドラゴニアンのバイク乗り・f07708）だった。
　ひたすらに微塵切りにした何か――新玉ねぎとドライバジルを、既にピュレ状にされていた黄緑色の……あ、アボカドだ！其れが入ったボウルの中に豪快に入れたぞ！？
　しかし、まだ彼のターンは終わらない。オリーブオイル大さじ2を加えて、ライム汁とレモン汁を数滴垂らす。其処に塩、胡椒を加えて味を調えれば、此れは……！？
「キッチュな普段食風情の相手など朝飯前です！これは、朝食前に用意できますからね！」
　――あ、朝飯前と朝食前の用意で掛けたのだろうか。
　という細やかな疑問は置いておこう、ベルベナが用意したアボカドバジル風味のディップは簡単・早い・美味い！の三拍子が揃ったお手軽料理だ。美容に気を使っているお姉様方のウケは良いだろう、寧ろ良くない訳がない。アボカドの効果は凄い、らしい。

　――場所を移して外へ。
　何かしらの食材を確保して来たのだろう、炭水化物トリオが戻って来た直後の様だ。
　其処に待ち受けていたのは、敵……ではない。美味しそうな香りだ。一人だけでは無く、数多くが匂いの元へ猛ダッシュ！其の先はマリア、ベルベナの姿が。
「来いよパン野郎！バターなんて捨ててかかってこい！」
「本当にお疲れ様、ね。えっと、良かったら召し上がれ？」
　来いやァ！と言いたげに怪人達を煽るベルベナ、女神の再来かの様に怪人達へ優しく微笑み掛けながら料理を示すマリア。猟兵達も十人十色、と思う瞬間であった。
　そして、気になる炭水化物トリオの様子だが……。
「あらあら、お腹が空いていたのかしら？」
　……其れは出来立てなのだろう温かさ、筍の食感が残っていて。
　そして、御飯の解れ具合から作り手の優しさが窺えて……感動のあまり涙を流している者もいる様だ。其処に鶏白湯スープを一口、胸の内が温まらない訳も無く。またほろり、と涙を流す者が増える。予想以上の感動にマリアも目を丸くしていた。
「さぁ、私のアボカドディップに平伏すがいい！」
　一方、アボカドの香りが食欲をそそるディップの方だが。
　自分から塗り塗り、もぐもぐ。食べ進めている者もいるが、そうでない者もベルベナがダイレクトシューッ！注意、此処はペイントステージではありません。
　……しかし、本当に美味しい。ねっとりとした食感の中に、シャキシャキとした新玉ねぎの食感のハーモニーが口一杯に広がる。其れだけではない。オリーブオイルの香り、ライムとレモンによるものか、深い味わいを感じられる。
　ダイエット効果、美容効果によるものか。炭水化物トリオの美しさのステータスが上がった、気がしないでもない。
「……で、ハマッたら斬っていいんですね？」
「心苦しいけれど、仕方がないのよね」
　無敵効果が剥がされ、食事に夢中な炭水化物トリオは隙だらけ。
　……彼らは各々の得物を用いて、思う存分薙ぎ払って倒したそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●はじめての飯テロ？
「飯……テロ、か？」
　単語を区切ると、物騒な意味に聞こえる気がする。
　説明を聞くまでは恐らく『テロ』という単語を聞き、荒事かと考えたかもしれない。
　しかし、ザッフィーロ・アドラツィオーネ（赦しの指輪・f06826）は理解した。飯テロとは即ち、美味しそうな御飯を魅せ付ける事。其の為に必要な、自分が行うべきは。
「兎に角、料理を作ればよいのだな？」
　ふむ、と零しながらザッフィーロはキッチンに立ち、念の為に確保した食材が傷んでいないか確認をしている。余り凝った料理は作った事がない為、手慣れた料理でもと思い……芋と人参、玉ねぎと腸詰肉のスープでも、と。
　――簡単に言うと、野菜がごろごろと入ったポトフである。
「後は……ベーコンエッグでも作ってみるか」
　……野菜を切り、じっくりと煮る。
　其れだけとザッフィーロは言うが、現実は其処まで簡単ではない。
　野営の時も良く作っているという彼の作るポトフは無意識だが、煮崩れしない様にじゃがいもを後から入れる等の細やかな工夫が凝らされている。ベーコンエッグを作ろうと考えるのは、其の間に味を染み込ませる為なのだろうか……。
　尚、全てを感覚で実行している可能性は無いと言い切れず。其れは其れで、凄い男だ。

　手際良くベーコンエッグを作り終え、ポトフの煮込み具合も良い塩梅。
　ザッフィーロが外に出た瞬間、待ち受けていたのは――何故か整列をしている、炭水化物トリオの姿だった。匂いを嗅ぎつけ、既に待機していたらしい。
「列を成し、和を乱さず待つ心掛けは良し。故に、食べると良い」
　ポトフ入りの大鍋、沢山のベーコンエッグに待ち切れず、怪人達が突撃！
　――味が良く染み込んで、其の上で口の中でほろっと崩れる。
　コンソメの味だけではなく、野菜本来の旨味を感じるスープ。ウインナーにも味が染みていて、でも肉の味が良いアクセントに。
　ベーコンエッグもカリカリベーコンの上に、半熟の目玉焼きがとろーっと……見た目にも食欲をそそるのに、口に入れた瞬間のカリカリ！卵黄の深いコク！パンも、白米も合うに違いない。中華まんの具にも良いかもしれない。
「食事中にすまないが、此れは戦争故に」
　あくまで飯テロは攻撃する為に必要な手段。
　ザッフィーロは容赦なく天からの光で怪人を撃ち抜く。
　……残った料理については彼と、他の猟兵達が食べるので御安心を！

大成功 🔵​🔵​🔵​

●漢気＋女子力＝隙の無い飯テロ？
「ここに、A5ランク黒毛和牛があるだろ？」
「ええ、あるわね。シノは何を作るの？」
　――正確には怪人が準備していた山の中から掘り出した、肉の塊なのだが。
　しかし、程良くサシの入った肉という物は、其れだけで周囲を魅了する魔力を秘めている物で。色も、ツヤも充分。焼いた時の香ばしさ、匂いを想像してみてほしい……其のまま食べるも良し、焼肉のタレをつけて食べるも良し。厚切りにしたステーキも……想像だけでも涎が零れそうになるのだから、肉という食材は魔力を秘めた食材である。
　そんな食材、しかも高級な其れを豪快に塊で確保したシノ・グラジオラス（火燼・f04537）の表情はとても満足そうで。作る料理も決まっている。
「俺はコレを使って、ローストビーフを作ろうと！思います！」
「……何処に向かって喋っているの？」
「いやー、カメラ目線的なのを意識してみたり？そういや、リナはどうするんだ？」
「それなら、こっちは名脇役の出番と行きましょうか」
　リナ――木槻・莉奈（シュバルツ カッツェ・f04394）が手に取ったのは、外側の皮もしっとりと瑞々しい新にんにくだ。怪人が食材を集めている最中という事もあり、入手出来たのだろう。
　尚、市販で売られているにんにくとの違いは『保存性を高める為に乾燥されている』かどうか、が主だろう。また、旬の時期を逃すと一年は待たないといけない可能性もある。其れ程、希少な食材を贅沢に使って……彼女は何を作るのか。シノも期待に胸を膨らませて。

　――さて、まずはローストビーフ。
　肉の塊に塩、胡椒とシンプルに味を調えて……其のまま。熱したフライパンにドンッと乗せる。時折、トングで焼く面を変えながら表面全体に焼き色を付けていく。
　じゅう……という音を聞くだけで、シノも唾を飲む。
　そのままでもコレ、絶対美味いやつだわ。
　あまりの香りに一口齧りたくなる気持ちを抑えて、彼は焼き終えた肉をアルミホイルに包み始めて。其れを終えたならば、余熱調理で三十分放置。
　ざっくりとした工程ではあるが、THE　漢の料理という雰囲気が漂う一品だ。
　待つ間、薄切りって難しいし……リナに任せた方が無難かねぇ、などと考えつつ。チラッと彼女が料理をする様子を見ていると。
「リナさん、やる気満々デスネ？」
「折角、新にんにくを沢山使えるから……つい、ね」
　まさかの炊飯器、トースター、蒸籠をフル稼働である。
　どれもローストビーフに合う様な味付けにしていると言うのだから……実はかなりの才色兼備女子なのでは、と思う程に木槻の手際は素晴らしかった。
　努力家な彼女らしく、事前にレシピを確保。確認しつつ、作ったであろう事が窺える。そんな幼馴染みが誇らしくて、シノは笑って……こう告げるのだ。
「リナ、頼む。俺がやると牛肉のたたきっつーか、牛肉のなぐりになりそうだ」
「成程ね。それじゃあ、料理を運ぶのは手伝ってくれるかしら？」
　適材適所、互いに足りない部分を互いに補おうと。
　二人はそんな取り留めのない会話をしながら、調理を進めていたのだった。

　……新にんにくとは収穫して間もないにんにくである。
　自然な、大地の恵みを感じる香りが漂う其れを料理して……外の怪人達が其の匂いに気付かない筈もなく。そして、炭水化物トリオはとても仲良しだ。
　――さあ、これから二人が見る光景はもうお分かりではないだろうか。
「すっげぇいるな、オイ」
「匂いの効果って凄いわね……」
　シノや木槻も驚いていたが、怪人達は目の前の美味しそうな御飯に止まらない！
　シンプルな味付けにより、肉本来の旨味や歯応えを感じるローストビーフ……其れを用いて、贅沢に新にんにくの炊き込みご飯を巻いて、ぱくっ。フレッシュで、少し辛めの味を肉がまろやかにしてくれる。肉、米！肉、米！
　焼き目が香ばしいガーリックトーストもまた、良い匂いが鼻を通り抜ける様で。
　直接にんにくを擦り付け、後からバターを塗る工程を怪人達は知らない。
　だが、此れが普通のガーリックトーストとは一線を画している事は理解出来る。パン、肉、パン。肉！
　蒸籠の中に何が、と思えば見た目は普通の中華まん。しかし、此れは……！
　中からほっくりとした、新にんにくが出て来たではないか！？蒸したて中華まん怪人が合うのか、なんて考えつつ食べると……常識を覆された様な衝撃、食べる手が止まらない！肉も合わせると延々と食べ続けられる！そんな勢い、だ。
「そろそろ、大丈夫そうね」
「だな、それじゃ……怪人も纏めて」
　――スコルが美味しく、頂きますってな？
　シノの紅喰いにより、食事に夢中になっている怪人達は見事にばっくんちょ！

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●肉、其れは良き文明
　――結社。
　オブリビオン狩りを主軸に活動する猟兵集団、其の最古参であるアダムルス・アダマンティン（“Ⅰ”の忘却・f16418）は目の前に積まれ続け、山となった食材を見上げてぽつり。
「……新手の豊穣祭か何か、か？」
「いえ、恐らくオブリビオン達がただ集めているだけかと」
　詳細な目的は存じ上げませんが、そう呟いたのはミスティ・ミッドナイト（夜霧のヴィジランテ・f11987）だった。もしコンコンシステムが無くなった場合、彼らの技術が必要になるのではないかと考えたが……しかし、相手はオブリビオンだ。殲滅すべき対象、其の為には手段を選ばず。
　無表情ながらもそうか、違うかと零して、アダムルスは今も食材の山を見上げている。
「豊穣神もまた随分と熱心な信者に囲まれたのかと、誤解もしたが」
「其れならば、穏便に終わらせられたでしょうか……」
「……かもしれんな。だが、戦いであるならば、俺も手を貸そう」
　飯テロ、という行為に造詣が深い訳では無い様だが。
　食欲で釣る事が戦を優位に進められるならば、アダムルスはそれなりに考えがあった。勿論、バーテンダーであるミスティも同じく。
　さて、彼らの胃袋を射止めに行くとしようか。二人は同時に動き始めた。

　――食材を集める人数が減った気がする。
　とある炭水化物トリオがそんな風に考え始めて直ぐ、煙がふわりと揺れる。
　何が起きたのだろう、彼らの視線がある方向へ。其処には……食材の山から既に肉を確保して、持ち込んだ七輪で焼いている男の姿。
「……懐かしいものだ」
　ただ肉を焼くだけの行為にも、アダムルスにとっては思い出深いもの。
　鍛冶の傍らに作った白炭を用いて、森で狩った野兎を捌いて、焼いて食べる。命の恵みに感謝しながら。一仕事終えた後、食べる肉は特に味わい深いもので。
　専用の器具を使い、地獄の炎で片面が焼けた肉を返す間にも、あの時の記憶が鮮明に浮かぶ様。肉汁が滴り、焼き目も申し分ない。焦げない様に一枚取り、小皿へ乗せる。味付けは肉本来の旨味を堪能する為、タレは用いず塩と胡椒でシンプルに。
　……彼が怪人に見られている事に気付いたのは、そんな一連の流れの後だった。
「貴様らも食うと良い。特に許す」
　え、いや……任務が……と狼狽えている様子の炭水化物トリオの後ろから、ミスティがぽんと肩を叩く。もう片手に乗せた盆の上にはカクテルグラス。中には赤ワインベースのカクテル、ジンベースのカクテルなどが既に注がれていて。
「食前酒は食欲を沸き立たせ、唾液、胃液の分泌を促します。良ければ、是非」
　オブリビオンに年齢、あるいは成人などの概念があるかは不明だが……其の場合にもノンアルコールタイプを用意する、抜け目のなさ。
　アダムルスの例え様の無い圧が籠められた視線、ミスティの僅かに浮かべた微笑み……営業スマイル、だろうか。
　其の上、肉が焼ける音や匂いが後押しした結果――彼らは、ミスティが手にしている酒を受け取った。飲んで、早速肉の元へ。肉を、美味しい肉を……！

　嗚呼……其処からは半ば、宴会の様になっていた。
　黙々と七輪で肉を焼き、怪人達が受け取る。お酒が足りない様子を察すれば、ミスティが動いて追加のお酒を。
　透き通る色合いのカクテルは目で楽しむにも申し分なく、口に放る肉の美味しさを一層増してくれる様だ。鍛冶の経験が活きているのか、アダムルスの肉の焼き具合は抜群。
　……カルビだけでは足りない、タン塩や鶏肉、豚肉などを様々なリクエストが彼に寄せられて。其れらに黙々と応えながら、彼はミスティに視線を向ける。
　そう――宴もたけなわ、お開きの時間。
　武器では無いが、今回は敵を打ち砕く為にと共にした……敬意を払う対象と認識したのだろうか。少し冷ました後に、アダムルスは七輪、そして専用器具を持って迅速に其の場から離れる。
　――何故か？決まっている。
　更に遠くで、ミスティが携帯式擲弾発射器の発動準備を済ませているからだ。
　……尤も、極上の焼き加減により美味しく仕上がった肉を、食欲を限界以上に引き出してくれた酒によって怪人達が其れに気付く事はない。何も知らず、ただ――。
「あちらのお客様からです……！」
　40mmグレネード弾によって、無残に吹き飛ばされてしまう。
　其の後、命の恵みを無駄にする訳にはいかないとアダムルスの声により、焼肉パーティーはもう少しだけ続くのだった。其の度に怪人達が引き寄せられて、グレネード弾の餌食になるかどうか……其れは二人のみぞ知る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●既に飯テロ力が高い、だと……！？
　たすき掛けをして、食材を念入りに確認。
　キッチンに立つ姿も美しく、月藤・紫衣（悠々自適な花旅人・f03940）は今回の料理工程を頭の中で反芻、確認をしていた。今回作るのは白米のおかず、中華料理。
「さて、それでは始めましょうか」
　大振りの海老の殻を剥き、背わたを取ってから片栗粉をまぶしていく。
　其の後、包丁を手にしては白ネギと薬味ネギを切ろうとして……二種類のネギを使うだけでも凝っている様に見えるが、切り方も変えている。微塵切り、小口切りという風に。
　食材の下拵えが終わったならば、次は調味料。豆板醤とコチュジャン、その他諸々。
　……待って下さい、月藤さん完全に本格料理人めいてきましたね。此れは、まさかの本格派による本気の飯テロではないでしょうか。解説（は此処にはいません）があまりの威力に、腹の虫が止まらなくなりそうです。
「ごま油、何処かにあるでしょうか……」
　普通の油ではなく、敢えて香り立つごま油を使うだとーっ！？
　見つけたごま油を中華鍋に引き、熱した後に白ネギを投入。透けるまで炒め終えたら、焦げない様に一度別の皿に取り出して。
　追加でごま油を投入して丸めたエビを焼きにかかる！
　少しずつ赤みが差していく海老、香りをより豊かにするごま油効果。
　……両面が炒め終わったら、月藤は白ネギと合わせ調味料でさっと和えていく。
　此処で注目してほしいのは料理人、月藤の力強さだ。中華鍋を軽々と扱う腕力、涼しげな様子から余裕で扱えている事が窺える。美しさと力強さを兼ね備えた人って、最強ですね……話が逸れたので本題へ。
　水溶き片栗粉でとろみをつけて、皿へ綺麗に盛り付けて。仕上げに小口切りにした薬味ネギを加えれば……少し辛めの、本格派海老のチリソースの完成だ。

　――当然、怪人達が食い付かない筈もなかった。
　少し辛めの味付けだが、其れがまた御飯の甘みをより一層引き出してくれる。箸が止まらない、止められない！寧ろ、止めたくない！
　そんな怪人達は明らかに隙だらけで……彼の酔蜜月刀による力強い一閃により、あっさりと薙ぎ払われたそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●自覚有メシマズの本気
　月待・楪（crazy trigger happy・f16731）は、とても面倒に感じていた。
　世界が真っ二つになってしまった事、戦争である事は理解しているが……其れでも面倒だ。何で怪人達に料理作ってやらなきゃいけねェんだよ、と。
　それでも彼が此の依頼に参加したのは、少しでも早く戦争を終わらせたいという気持ちもあったからだろう。本心は彼のみが知る話、だが。
「……最悪、失敗作でも怪人相手だしな」
　不味いとか言われるのも苛立つし、ならば自分でもまともに作れる料理にしよう。
　月待はそう考えて、食材の山から材料を適当に引っこ抜く。他の猟兵が使用したのもあるのだろう、山は小規模な物となっている様だ。

　紺色に、白い猫の肉球刺繍入りのエプロンを身に着けたら準備完了。
　――まずは水に塩を適当に振って、温め開始。
　沸騰したタイミングでマカロニを入れたら、本来の茹で時間よりも早めに上げて……しっかりと水気を切っておく。此のタイミングでオーブン内が200℃になる様に設定、事前に熱しておこうと。
　……此処までは順調の様で、少しだけホッとした様に息を吐く。
　玉ねぎとベーコンを適当に包丁で切って、細かくしたらフライパンを取り出して。
　バター放り投げたら、温まった頃合いで玉ねぎを入れて。炒められただろう、と適当なタイミングでベーコンと小麦粉を投入する。
　だまにならない様に気をつけつつ、粉っぽさが消えたら……生クリームと牛乳を入れて、とろみをつけようと。此のタイミングでオーブンが設定した温度になった事を示す音が聞こえるが、一旦無視。
　チーズも入れて、熱して溶けたら茹でたマカロニをぶっ込んで。塩、それよりも多めの胡椒で味付けを。其の方が自分好みだから、だ。
　後は出来た其れを大きめのグラタン皿に入れて、ピザ用チーズを適当にこれでもかと掛ける。掛ける。掛けまくる。豪快に掛けたら、後は焼くだけ。
「あー、まァ……今回は練習と思っとくか」
　面倒である事には変わりないけれど、そう考えれば多少マシな気がするから。

　トリオなのに、海老のチリソースに仲間を奪われた……焼きたてパン怪人。
　美味しそうなマカロニチーズを食べていたら、あっという間に撃ち抜かれたとさ。
　……そう、月待の射撃攻撃によって。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●飯テロ（物理）最強伝説
　さて、まずは『マーマイト』という食品の説明から始めよう。
　其れはイギリスでポピュラーな、塩漬けビール酵母のエキスらしい。
　味はとても塩辛く、其れよりも印象深いのは強烈な臭いだろう。好き嫌いが明確に分かれる、そんな代物の様だ。

　――続けて説明するのは、蛍光色カレーだ。
　えっ、蛍光色のカレーってどういう事と思った方もいるかもしれない。
　通常時はピンク色に発光したカレー、らしい。ピンク色だけならば現実味もあるが、発光するの！？発光って、何が入っているの！？
　そして、ユーベルコード発動時は蛍光色に光り輝くそうな。

　何故、此の二つの説明から入ったか……其れは読んで頂いた後に判明するだろう。
　炭水化物トリオよ、何とも風にも残ってしまったのだろう。
　君達は此の二人を敵に回した時点で負けていたのかもしれない。
　宮前・紅（絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970）、そしてカタラ・プレケス（呪い謡て夜招く祈りの鳥・f07768）を……。

「……よし、マーマイトの時間だね」
「俺は豪快にカレーを作ってみたよ！見た目は派手に蛍光色カレー！」
　――二人共、とっても良い笑顔であった。
　流石に色々察した様で、炭水化物トリオが明らかに後退するのが見える。
「マーマイトはね、味噌のようにスープの素として使うことも出来ベジタリアンにも健康にも優しいまさに万能それに英国だけでなくマレーシアやスリランカでも料理に使われおり世界を股にかけた調味料なのです」
　……カタラさん、マーマイトの説明をありがとう御座います。
　普段ののんびり、のんびりとした様子は何処へやら。途中からノンブレスでマーマイトについて力説をしていた。マーマイトへの愛、凄くないですか？
　ちなみに味に関しては、とてつもなく癖の強い八丁味噌……に近いらしい。八丁味噌が好きな方は試すのも有りだろう、試す場合は自己責任でお願い致します！
「俺のカレー見た目はアレだけど、味はすっごく美味しいから安心してよ！絶品なんだから！」
　ね？と音符マークでも付きそうな勢いで迫る、宮前。
　とても愛らしく、素敵な笑顔の筈なのに……炭水化物トリオは悪魔の微笑みにしか見えない様子だ、無理もないかもしれないが。
　――絶対に食べない！食べる訳にはいかない！
　そんな、断固拒否を示す怪人に彼はむすっとして……ついに、禁断の手に出たのだ。
「さ、食べないとぶっ●だぞ！」
　ででで、出たー！？NO CURRY！NO LIFE！
　接近してはパイ投げの如く、トリオに向けて蛍光色カレーのダイレクトアタック！
　旨味成分（詳細は宮前のみが知る）が飛散し、嫌でも口に入ってしまう。口に入らずとも、穴から蛍光色カレーが浸透して……おかしいな、真っ白な顔が真っ青になってるね。
　でも、大丈夫。蛍光色カレーの半分は優しさで出来ているさ、きっと。多分。
「もーっ！好き嫌いは駄目だって、ママに習いまちぇんでしたかー？」
　――いやいや、好き嫌いとかそういう問題じゃねぇわ！！！
　悶絶している炭水化物トリオの心境を言葉にするならば、其れが正しいかもしれない。
　嗚呼、残念。非常に残念だ、炭水化物トリオよ。君達は拒否の姿勢を貫いたにもかかわらず、宮前によって料理を口にしてしまった。つまり――無敵効果は剥がされた。
　さて……まだ一人、攻撃を終えていない人物がいるだろう。
「――汝ら双児の偉業をも、我らは語り紡ごうぞ」
　双児の絆にて現れるは拳闘士『ポルックス』、騎兵『カストール』の姿。
　とある神話に登場する双子はカタラの力となり、味噌とマーマイト、ついでに生姜で作ったスープが大量に入った鍋を代わりに持つ。そのまま、悶え転げている炭水化物トリオの背後を取り……其の瞬間、己の身の死を同時に悟った。
「ごめんね、これ戦争なんだ」
　せめて、美味しく食べてね。健康には良いだろうから。
　カタラが内心、そう思った直後――彼らの顔面にスープが滝の如く！降り注ぐ！
　もう止めてあげて！炭水化物トリオは飯テロ（物理）で既に瀕死状態よ！？しかし、双子は中を全て注ぎ切るまで止める事はなく。
「好き嫌いをした、罰だね！」
「ああ、マーマイトはパンに直に塗らない様にね。バターやマーガリンの上から、ね」
　――そういう、問題じゃ……ねぇ……。
　炭水化物トリオは悲壮感漂う雰囲気のまま消え去ったのだった。

　重ねてとなりますが、残った食材は猟兵達が美味しく料理して頂いたそうです。
　美味しく楽しく、最後は皆で御馳走様でした！

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月06日