⏰バトルオブフラワーズ⑦〜好きこそものの上手なれ
●近寄り難きリサイタル
もしもそれを形容するならば、悪魔の呼び声と言ったところだろうか。
それは歌であった。それもただの歌ではない。
踏み外した音程、取り違えるイントネーション、メロディと足並みを揃えない歌詞。
中でも極め付けは、耳を塞がねばとても聞いていられないほどの声量。
およそ考えられる限りの歌が下手な要素が詰め込まれたソレは、キマイラフューチャーのとある舞台の中心から披露されていた。
そして当然、というよりも自然として、その舞台を囲む者は一人としていなかった。
●好きこそ
一人の少女の姿をしたオブリビオンの様子について、一通り語り終えた結晶・アオイ(アクアマリンスイマー・f13387)は、息をつき、集った猟兵たちを見回す。
「その……ウチはな、何でも好きで頑張っとるんやったら応援したいんよ?」
再び口を開いたアオイの言葉には、躊躇いの他にも、共感といった感情が込められていた。
それは、彼女自身にも夢中になって求めるものがあるからこその言葉だったのだが。
「やけど、そのオブリビオンのおる場所が、ザ・ステージの一部なんやったら、しゃあない」
そこまで口にすると、気を取り直すかのように自らの頬を張ってみせる。雫が跳ねた。
「キレイさっぱり倒してもうて、後腐れなくしてきてほしいんよ」
そんな風に告げると、さっそくとばかりにアオイは敵となるオブリビオンについて。そして、この戦いの舞台となる、ザ・ステージの性質について。説明していく。
「まず、オブリビオンやけど……アンマリス・リアルハートちゃん言うらしくて、歌うだけやなくて、踊ったりもするんやって」
ただし、そのどちらもが、周囲に危害を及ぼすほどの下手っぷりであり、さながら芸術を模した兵器とも言えるものであるらしい。
「本人は好きでやっとるから、ちょい、可哀想思うんやけどな……っと、あかんあかん」
またも、パシパシと頬を張って、言葉を続けていく。
「そんで。ここのステージはずっと歌ってなあかんらしいんよ。それも、自分自身を奮い立たせるような歌がええんやって」
このアオイの言葉に付け加えるとすれば、このステージに立つものは歌う事で力を得られるのだという。
そして、その歌に乗せられたい思いが強いほど。確かなほどに、その効果を増す。のだとか。
「……それがホンマなんやったら、下手や下手や思っとっても、好きやからって歌える敵さんも、えらい強いんちゃうかなって思うんよ」
しかし。
「それでもウチも、ウチが泳ぐの好きな気持ちは誰にも負けへん。って、そんな気持ち、みんなにもあるんとちゃうかな」
だからこそ、そうしたストレートな思いをぶつける事が攻略の鍵となるのかもしれない。
そんな、感情論に流され続けた言葉を最後に、アオイは猟兵たちを送り出していくのだった。
一兎
●はじめに
こんにちは、もしくはこんばんは、一兎です。
戦争に微力ながら力添えができればなとの思いで一つ。失礼します。
当シナリオは、戦争『バトルオブフラワーズ』の戦場⑦を扱います。
以下に概要を。
●概要
戦場⑦サウンドステージ。
このシナリオでは、通常のボス戦通りの判定に加えて、サウンドステージとしての判定を行います。
詳しくは、オープニングの通りになりますが。
端的には、自らを奮い立たせる歌を歌い続ける事。
中でも特に思いの強い歌は、攻撃をも強力にする、というものです。
敵オブリビオンの、歌う事が好きな気持ちに負けないように。
オブリビオンについては、フラグメントの通りになります。
基本、常に歌っていますが、判定の能力を固定するものではありません。念のため。
長くなりましたが、以上になります。
皆さまからのプレイング、お待ちしております。
第1章 ボス戦
『アンマリス・リアルハート』
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POW : 歌は自信があるぞ、聞いていけ!
【わりと壊滅的な歌声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : ダンスは教養、出来て当然だ!
【躍りながら振り回す剣】が命中した対象を切断する。
WIZ : 私はちゃんとできてる!間違ってるのはそっちだ!
【現実をみないだだっ子モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:さとみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アンノット・リアルハート」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リズ・ルシーズ
アドリブ歓迎
【SPD】
歌かあ、歌かあ、歌……?
場違いな戦場に立ってる気がするけど精一杯歌うよ。【ルシーズ】
バックミュージックはお願い!量産型Rシリーズを召喚して楽器を演奏させるよ
其れは古びた塔、落ちたるは怒りの雷
怨嗟の声が満ちた中、それは産まれた
新たなる命の産声、祝福と涙
(荘厳な歌詞にバックミュージック、但し、リズ本人の歌は余りにも音痴。本人はそれに気づいていないのか、声を張り上げている。後ろで量産型が首を横に振り溜息を)
量産型の演奏よる【援護射撃】を受けつつ、量産型と一緒に敵を擬似刻印の光【属性攻撃】のレーザーの【一斉発射】だね
ボクだって、歌の1つぐらい出来るよ!……って、出来てたよね?
パティ・チャン
※歌
(ビーストマスターでもある私が、これで負けるわけには>カリンバ握りしめ)
駄々っ子にはこれです!私が今やっている、MMORPG元にした、アニメーション作品の主題歌を
(誘惑、楽器演奏、歌唱、勇気のせ)
♪迫り来る敵は、この拳でなぎ払う!
♪我が力に屈するがよい、悪の首魁
♪さぁ帰れ、かつていた場所へ
(ゲーム内での使用キャラが、巨漢のパワータイプ戦士と言うことも相まって、異常に勇ましく)
戦闘時は、Congelatio!を口元に狙い撃ち!
「歌うのやめ~っ!」
(2回攻撃、なぎ払い)
※連携、アドリブ共に歓迎
●登壇
舞台の脇へと転移を果たしていく猟兵たちを迎えたのは、大気すら震わすような大音量の、歌声であった。
壇上を見れば、自身の世界に浸りきっているように両眼を閉じ、歌い続けている少女の姿が一つ。
マイクを通したスピーカーなどの補助がなければあり得ない音量であるのに、それらを用いている様子がないというのは、少女がオブリビオンという常識に捉われない存在であるからだろうか。
しかし、それまで独壇場だった壇上は今や、幾人もの歌声が響き渡るバトルステージと化していた。
歌いながら身を動かす事は、呼吸のリズムを乱し、息苦しさを伴う行為であるはずなのだが。
不思議とこの舞台の上に立っている限りは、それを勝る活力が得られるようで。
『迫り来る敵は、この拳でなぎ払う!』
サイキックで操る光剣を手に、真っ先にと斬り込んでいくフェアリーのパティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)の口からもまた、彼女の容姿とは正反対ともいえる、勇ましい歌詞が溢れ出していた。拳と言いながら、構えていくのが光剣であるのは、ご愛嬌といったところだろうか。
パティ曰く、この歌はアニメ化も果たしたとあるMMORPGの主題歌との事らしく。やけに熱血色の濃い内容は、込められた情熱を表しているようで。
(これが、サウンドステージの力なんですね!)
漲る力に、まるで自らの体が大きくなったかのような錯覚を覚え、密かに感動するパティ。
(今の私は、パトリック・チャン! 巨漢でパワータイプな戦士ですよ!)
元となったというMMORPGで用いるキャラを自らに重ねているのも、原因の一つだろうか。
『退゛け! 私の道をぉ遮゛るな!』
対するアンマリスもまた、まるで今この時のために選んだかのような歌詞を口にしながら、迫るパティの光剣を、手にした細剣を使って受け止める。
二振りの剣が打ち合うその瞬間、光が散った。
(もう少し、静かに歌えないのかな……)
閃光にも似た光の飛散に、思わずと目を庇っていたリズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)は、同時に、そんな感想を抱く。
口にしなかったのは、口と喉は歌うために使っていたからであり、もしも自由に使えていたのなら、間違いなく言葉にしていただろう。
それほどにアンマリスの歌声というものは強烈であった。
(だって、声出し過ぎて、掠れちゃってるし)
ダメ出しをするリズ自身、音楽や歌に詳しいわけではないのだが。逆に言えば、素人目にしても問題があるというのがわかるという事実に他ならず。
(ボクは歌に自信があるわけじゃないけど……。いくよ、ボク達!)
序文ともいえる出だしの歌詞を紡いだ唇は、すぅと一瞬の息継ぎを果たし。同時に、リズの後ろに控えていたリズそっくりの少女たちが、一斉に自らの握る楽器を操り始めた。
瞬く間に重なる音色は、どこか荘厳な響きを舞台の上にもたらしていく。
それらの音色は皆、リズのユーベルコードから呼び出されたリズ自身の複製体たち、通称ルシーズたちによる即興の演奏によるものだった。
BGMという下地は、何もないそれよりも確かに歌のイメージというものを形作るものである。歌の技量に自信がないからこそのリズの選択は、決して間違ったものではなかっただろう。
『あーらたなる命の産声ー、祝福とーなーみだー♪』
ただ一つ、その音程の外れた歌声さえ除くのならば。
平たく言えば、リズもまた音痴であった。
誤解のないように述べておくとすれば、アンマリスほど酷いものではない。リズのユーベルコードによって顕現しているはずのルシーズ達でさえ、苦笑と溜息を浮かべるほどであったが、決して聞けないものではない、可愛げのあるものである。
何より。
(内から溢れてくるみたいな感じ……いくよ!)
歌の技量に関らずサウンドステージの効力は生まれるのだ。でなければ、アンマリスの力の説明がつかない。
肝心なのは、しっかりと歌う事。そして、思いを込める事であるのだから。
(一斉斉射っ!)
音程のズレた歌声を刻むリズが念じた瞬間、リズとルシーズ達、全員の体表に刻印のような紋様が浮かんだかと思うと、それらから一斉にレーザーが放たれた。
当然、狙いは違わずアンマリスへと。
パティのサイキックが振るう光剣と何合と打ち合い続け、動きを制限されていたアンマリスに三十を越える光条が迫る。
全て喰らえばひとたまりもないだろう。
その瞬間だった。
『私゛を照らすのは、私自゛身! 誰の手も要ら゛ない!』
ノイズが混ざったようなアンマリスの大声が発せられると同時に、二人の猟兵の眼前で、光が弾け飛んだ。
それまで打ち合っていた光剣を弾かれたパティは、どうにか柄を手にする事こそ出来たものの、思わずと間合いが空いていく。
僅かに見れば、決して全てを弾けていたわけではないのだろう、多少のダメージを負ったアンマリスの姿がそこにはあった。
「どうして……」
反面、思わずと歌う事を中断して、パティは疑問の声を発していた。
いや、疑問を発しながらも、既に答えは出ていたのかもしれない。
果たして自らに、アンマリスのような強い思いは足りていたのだろうかと。
(なら、せめて口を封じてっ!)
自問自答へと陥ってしまいそうな心中を振り切るように、パティの口は再び歌を紡ぎ、小さな腕は光剣を抜き放った。
開いた間合いを埋めるには短すぎる刀身から、凍気が放たれる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エリエ・ルーミエンス
目が醒めたと思いきや世界が危機に瀕しているとは…
きっとこれは、世界を救う手助けをしろという、主サマのご命令に違いありません
で、歌の勝負でしたっけ
私には人工音声による歌唱機能も搭載されています
歌にも自信がありますよ
それに、あなたの歌への想いも相当ですが、私の方が上ですので
歌うのはもちろん主サマへの想いを紡ぐ恋歌
しっとりした曲調を丁寧に歌い上げます
主サマを想うことこそが私の存在意義、そして私に力をくれるモノ
もうこの世にいなくとも、ずっと愛してますからね、主サマ
戦闘ではリーチの外から千里眼射ちで狙い撃ちます
頭に当たればラッキーです
前線はどなたかにお任せします
適材適所です
※他PCとの絡み&アドリブ歓迎
●その目に映る者は
まるで舞台装置であるかのように、白い靄と化した冷気が、舞台中に漂う。
猟兵の口を封じるという狙いこそ外れたものの、結果として引き起こした温度変化は、オブリビオンの身動きに制限を与えていた。
全身の運動機能にも言える事だが、寒いと感じる場所において、人の口は無意識に震えだすものである。
『こ゛、こんな事をしようとむ無駄だ! 私は無敵なのだから!』
その効果は誰の目にも明らかだった。
むしろ、震えをきたしながらも歌い続けているアンマリスの姿勢が、改めて、その思いの強さを見せつけるようでもあった。
「あなたの思いの強さ、確かに認められるところもあるようですね」
そんな舞台の端、冷気の及ばないギリギリの所で、ロングボウを構えていたエリエ・ルーミエンス(誰かのためのヒロイン・f17991)は、返答を期待するでもなく独り言ちる。
「けれども、私の主サマに対する想いにはまだまだ、及びませんね」
上から目線のコメントと共に。
事実、エリエの言葉には去勢や推測などといった、疑問を感じさせるものは存在しなかった。
仮にもしあるとすれば、それは強い思い込みにも似た感情だろうか。
恋は盲目という言葉があるように、確信をもっていて仕方ないのである。
ある種、アンマリスの歌が好きだという姿勢に近いものはあるのかもしれない。
しかし同時に、比べあう事が無駄である事もエリエはよく理解していた。
なぜなら、こうした意見を持つ者同士は、言葉を交わしたとしても、平行線を辿るに決まっているからである。
即ち、自らの想いこそが一番であると。
『貴方の背が、貴方の仕草が、貴方の声が、毎日私を悩ませるの……』
ロングボウに矢を番えたエリエは静かに、主に捧げる恋の歌を口にし始める。
アンマリスの大音量の歌声を前にすれば、霞んでしまうような歌声であったが、エリエにとってそれは些細な問題であった。
むしろそれによってエリエの存在が捉えられづらくなっていた分、有利だったと言えるだろう。
(主サマ……聞こえていますか。エリエの気持ちが)
しっとりとした歌声に対して、うっとりとした面持ちで紡がれる旋律。
狙いをつけているはずなのに。その目はこの世ではないどこかを見ているようで。
そんな彼女の様子に応じて、ロングボウの弦を引く手に、番えた矢に込められた力は段々と強まっていた。
(……7……8……9……)
そうして、歌いながらも脳裏に描いた時計の秒針は、10秒の時を刻む。まさにその時、猟兵たちの次の動きを警戒していたアンマリスは、エリエの存在に気づいた。
(10。)
当然、それは遅かったと言わざるを得ない。
あるいは、冷気によって動きを鈍らされていなければ、躱されていたかもしれない。
しかし結果として、10のカウントと共に放たれた矢の先端は、アンマリスが知覚するよりも早く、オブリビオンの喉から頬にかけてのラインを、そこにある頬骨ごと抉り抜いていた。
成功
🔵🔵🔴
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ大歓迎!
歌か…故郷でココルが聞かせてくれた「小さな英雄」という歌を思い出すな
領主様に拾われ、弱って伏していた時
自らの境遇に挫けそうになった時
ココルの歌で勇気を貰えた
私は守護者であり、猟兵だ
この世界を守るのは責務、いや矜恃と言ってもいい
悪いが討たせてもらう!
夜闇を駆け抜け手を伸ばせ
勇気の翼を胸に広げて
希望の星を掴み取れ!
オーラ防御で歌声を緩和し
負けぬよう腹の底から声を振り絞る
自らの歌に合わせて炎霆を振りかぶり『属性攻撃』炎でテンポ良く『二回攻撃』
立ち上がれ、小さな英雄
挫けても、這い上がれ
光さす道となれ!
【メギドフレイム】を降らせ演奏代わりとする
勿論敵目掛けてだ
ココル…負けて、たまるか!
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
思いや考えそのものの善悪と行為の善悪とは分けるべきであります。少なくとも、今回の目標はキマイラフューチャー全体に於ける明確な敵であります。
さて、歌いながらでない、かつ強い思いと来ましたか。
それなら妹を守り抜く、という意思を奮い立たせる歌(勇気10,覚悟10,気合6)――なんていうのはどうでしょうかね。
実際、3年程互いに捜して、漸く最近再会したばかり。もう手放さない。
その上で、【選択UC】で敵の攻撃を防御(盾受け5)して高圧電流(属性攻撃8)で【カウンター8】する。単調な動きになった敵を相手にするのはそう難しくないでありますからね。
「敵である以上、逝くでありますよ」
●歌に乗せる
舞台に刻まれた鮮やかな花弁は、アンマリスにとって、ある種の見せしめのようでもあった。
元々、互いに武器を用いているのだから、こうした事が起こる事はあり得たはずである。
しかし、自らがたった一度の攻撃でそれほどの負傷を負ったという事実が、アンマリスを心根から揺さぶっていた。
その花弁は他ならぬ、自らが想いの強さで負けていた事を物語っていたからである。
傷ついたのは、その身だけではない。プライドも同様の事だった。
だからこそ、アンマリスの起こした行動はわかりやすいものだった。
『認めないぞ! 私は、間゛違ってない! 負けてな゛い!』
大声か叫びか、判別のつかない歌声は辺りの冷気を吹き散らしていく。
いや、冷気だけに留まらず、舞台上にある物質全てにその衝撃は放たれていた。
それは液体であるはずの、オブリビオンが散らした花弁すらも、同様であり。
冷気の靄に紛れるようであった猟兵たちの姿も瞬く間に剥き出しとなっていく。
ただし、剥き出しとなっても、誰一人、その場を退くというものはいなかった。
『立ち上がれ、小さな英雄……』
全員の位置する先頭でドラゴニアンの青年、ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)が衝撃を受け止めていたからである。
(この程度……あの頃に比べれば、何という事はない……!)
『……ても、這い上がれ!』
僅かでも歌う事で得た力を、身に纏うオーラを維持するために注ぐ。その姿はさながら、彼自身が歌う歌の小さな英雄の姿に重なるようで。
『追い抜くと言って、一緒に育った……』
防御に徹するユーリの後ろで、また別の、今度は少女と思わしき抑揚のない歌声が紡がれる。
歌詞に反して感情を押し隠したような声で、しかしそれも歌と認められ力を得た少女は、その手をかざし、ユーベルコードを発動した。
『その笑顔は家族の、そして私の宝物だから……!』
彼女の、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)の口にする歌の中身は、ただ大切な妹を守り抜いていきたいといった内容のものであり。
智華のユーベルコードによって、その背にするもの全てを守ろうとする不可視の壁が生み出される。
時間にして、それは十数秒の間の事だっただろうか。
それは、ユーリと智華、二人ともに歌に乗せた想いが、誰かを守りたいと願うものだったから起こせたのかもしれない。
自らのためだけの歌と。誰かを想う歌。思いを込める人数の違う歌が二人分もあったのだ、その結果は明らかだとも言えた。
そうして、ようやくと止んだアンマリスの歌声と入れかわりに、屈んだ姿勢だったユーリはゆっくりと立ち上がる。
その様子に、アンマリスは慄き、一歩退いた。
「どうして……! 私の全てを込めた歌だったんだぞ!」
無意識なのだろう。ここにきて初めて、アンマリスは歌以外の言葉を漏らした。
いや、元々歌にない言葉さえ、歌にして口にしていたのだろう。
しかしそれでも、携えた細剣を手に、先頭に立つユーリと智華から視線を外さずに構えてみせるのは、さすがといったところだろうか。
「私は猟兵であると共に、守護者だ。それが例え世界を違えたとしても、役目は変わらない」
「キマイラフューチャーの命運がかかっている以上、情けはかけないであります」
だからこそ、二人ともに。アンマリスと向き合い、ハッキリと口にした。
全力を破った者の責任であるように。
そしてどちらからともなく、三人の唇は歌を紡ぎ始める。
『好゛きな物を好きな者こそ、一番なんだ!』
やはりというか、真っ先に距離を詰めたのは、アンマリスだった。
(捨て身で来たか)
この動きに、ユーリはいち早く察知していたように、身を退いてみせる。
もし自らの全力を越える攻撃手段があるとすれば、それは捨て身の一撃に他ならないと予想していたからだ。
(……いや、いずれ悪い癖と言われるだろうな)
自分自身、捨て身ではないにしても、己の身で攻撃を受けきろうとするきらいがあるから予想できたのかもしれないと、僅かな一瞬に自嘲を浮かべ、払う。
次いでユーリの視線は智華の方へと。
歌う事に専念している以上、意思疎通は視線で行う他なく。その意図が正しく汲まれる保証はないのだが。
(承知したであります)
そこに見た意図を受け止めた智華は、再び手をかざし、先ほど生み出したのと同じ、不可視の壁をそこに作り出す。
ただし今度は防ぐためではない。
「高圧電流をくらうであります」
不可視の壁には、歌う事で得た力を既に注いである。もはや智華が歌う必要はなくなったと言ってもいい。
果たして、宣言の通り、不可視の壁から電流は放たれた。
ただし、その威力は決して致命傷となるほどに強力なものではない。しかし、オブリビオン一人の動きを止めるには十分な威力と言っていい。
その合間に完成していたユーリのユーベルコード、宙空に生み出された無数の炎の剣が、アンマリスを包囲する。
(悪いが、討たせてもらう! 焔よ!)
心中で詫びの言葉を入れながらも、ユーリが歌う事を止める事はなかった。
それは、炎の剣が敵を討ち取るその瞬間まで。ただひたすらに歌い続ける事がせめてもの礼儀だと思ったからだ。
オブリビオンの消えた舞台の上は、とても静かな場所だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月07日
宿敵
『アンマリス・リアルハート』
を撃破!
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