バトルオブフラワーズ⑤〜格闘ゲームで勝負しろ
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「何やら、キマイラフューチャーの世界で大規模な戦闘が起こっておるようじゃ」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、そう切り出した。
システム・フラワーズ内ザ・ゲームステージ。そこに待ち受けるのは、暗黒面『斬裂の支配者ロード・リッパーである。ゲームを強要されるこのステージで使われるのは、オンライン対戦型格闘ゲーム『ソード・オブ・エグザイル14』だ。
売りは自由自在のキャラカスタム。自分そっくりなキャラをやるも良し。理想のキャラを具現化しても良し。自由度の高い格闘ゲームで人気が高かった。そう、過去形である。
13までは好評だったが、14で「あ、プレイヤーの能力を反映しようぜ」と悪ノリした結果大炎上した問題作である。なので、このロード・リッパーのコピーキャラは基本性能がかなり強い。
後はゲームの腕がものを言う。ロード・リッパーの格闘ゲームの腕が中の上であるのが不幸中の幸いか。
「……わしはげーむというのはよくわからんが、こうも不公平なスタートでよいのかの?」
ガングランはそこまで語り終え、呆れながら続けた。
「とにかく、この格闘ゲームで決着がついて初めてこのロード・リッパーと戦えるんじゃが……勝てば、一応有利な状況から戦いが始められるらしいの」
ガングランはそう言い、猟兵達を見回した。
「キャラ性能では勝てない相手と一対一じゃ。格闘ゲームの腕か、あるいは策略か……何にせよ、うまい事勝てるようにしたいものじゃな」
戦いが始まれば、多対一だ。いくら強敵でも、数で押し切れば何とかなるだろう。
「郷に入りては郷に従え、であったか? とにかく、連中のやり方に付き合ってやる必要がある。よろしく頼んだぞ」
波多野志郎
ゲームに現実のスペックを持ち込まないでください(震え声)どうも、波多野志郎です。
今回は、戦争バトルオブフラワーズで戦っていただきます。
格闘ゲームでの対戦に関しては、指定がないとPCの外見のキャラとなります。何か死角はないのか……考えてみると面白いかもしれません。
それでは格闘ゲームとオブリビオンとの戦闘という贅沢をお楽しみくださいませ。
第1章 ボス戦
『暗黒面『斬裂の支配者ロード・リッパー』』
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POW : 魂を蝕む触手の群れ
【暗黒面 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【蠢く蒼の触手のかたまり】から、高命中力の【魂を蝕む触手の一撃】を飛ばす。
SPD : シンクロ・ザ・ネメシス
【暗黒面の感情で塗潰す事により支配した 】【一般人のイケメンな猫耳キマイラ男子の体に】【斬裂の支配者 ロード・リッパーの身体能力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 次はどんな子にしようかなぁ?猫耳は外せないよね。
対象のユーベルコードに対し【支配していたイケメンな猫耳キマイラ 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ティアー・ロード」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
劉・涼鈴
ふふー、格ゲーも好きー!
えーと、ソフトは……あー、ソーエグの14かー……
私のプレイヤーステータスと外見を反映して、ゲームスタートっ!
ナイフ持ってるし、近接タイプかな
無駄にポーズ決めたりして挑発・誘惑して、突っ込んでくるように仕向けよう!
へいへいビビってるぅー!
技を出される前に、出の速い弱パンチからのコンボでバシバシ叩く!
弱パン、弱パン、アッパーで打ち上げて必殺パンチ!
今度はリアルファイトだ!
ダッシュで距離詰めて怪力・グラップルで格闘戦だ!
ゲームじゃないからコンボとか組めないんだよねー
パンチでラッシュラッシュ!
おらおらおらおらー!
あ、マスクが本体っぽい?
んじゃ顔面パンチだ!
体の人は我慢してね!
遠藤・兎卯飛
ハーイ( ´ ꒳ ` )ノ
格ゲームユーザーのオッサンだよ?
全身タイツ系戦闘員かな?
格ゲー?d(ゝω・´○)
キャラメイクか
自分に寄せるよね扱い解るし
召喚系ってしってる?
そうバトキャラみたいなやつ
先ずは間合いを取る
ゴンブト波動放出スルキャラを召喚
業を煮やして飛び技したら対空
ここまでレトロからの伝統芸能
召喚しながら近付く
ガードしないとしてもゴリゴリ削る
近付いたらガード不能投げ技
ハメゲーだよ?真似しないでね
リアルファイトもハメ技
強襲武装で高速移動中
ゴンブトビームキャノン
42損ない丸で貫通性の弾幕
対空はバトキャラでナイスガイの力をお空にゲイザー
接近投げは赤いパンツの竜巻さんが敵を掴んでパイルバンカーな技
エル・クーゴー
HEAR COMES A NEW CHALLENGER
躯体番号L-95、ログインします
・ゴーグル内の電脳世界をゲームへ直結、操作ラグを神経伝達と同速にまで高める
・キャラモデルは自身まんま
・背のアームドフォートから多彩な火器を展開する中~遠距離型
・懐に入られたら【零距離射撃】で近接戦
・格ゲーに於ける飛び道具キャラの中でも取り分け銃使いの常、出も早ければ弾速も早いので「真っ直ぐ前には撃たせて貰えない」設計(射線は斜め上への対空とか斜め下へのダウン追撃とかだけ)……
・と見せ掛けて真っ直ぐ前へバカスカ撃ってハメるチートじみたプレイ(ハッキング)
●IN現実世界
・ゲーム同様バカスカ撃つ(一斉射撃+誘導弾)
カーニンヒェン・ボーゲン
この歳で、格闘ゲームをプレイすることになろうとは思いませんでした。
緊張しますが、キマイラフューチャーの危機を救わんが為。
このジジイめも邁進いたします。
ゲーム上での戦法と致しましては、高速詠唱の要領でキー操作によるコンボ技を暗記。
操縦技術により培った手先の感覚で確実に技を繋げてK.O.を狙いましょう。
自身の姿の透写では勿体無いですかな。
世界の危機とはいえ、ゲームとは楽しむもの。
UC:アザゼルの姿を借りましょうか。
六翼の堕天使で、実際は弓矢による攻撃を行いますが、矢を剣として反映させるくらいの齟齬は許されるでしょうか。
コピーとあらば、プレイキャラと実際の戦法も同じかもしれません。
観察は怠りません。
メグレス・ラットマリッジ
何を隠そうこの私、格闘ゲームに関しては無敗の経歴を誇っています。
何故なら……そもそも遊んだことがないのだから!(説明書を片手に)
でも空元気じゃないですよ、初心者には初心者の勝ち方があります。
どのような腕前の持ち主でも起き上がりの瞬間は選択肢が限られるらしいので、ガチャガチャしてどうにか相手を転ばせます
後はじゃんけんと同じ、『小足見てからコマ投げ余裕でしたー!』と言わんばかりに起き上がり後を【見切り】、コマ投げ【ドレインタッチ】と足払いを繰り返して封殺します
現実の戦闘は【マヒ攻撃】など行動阻害技能とUCで味方のサポートを行います
私の経験上、格上相手には自分の強い所で勝負するしかないんですよね
雷田・龍子
【POW】
「キャラメイクはとりあえず自分を反映しつつチャイナ服を着せてみよう。」
どこか自分と似ている格闘ゲームキャラを思い浮かべつつのキャラメイク。
「死角を突く……飛ぶか。」
人派ドラゴニアンの龍子は翼を広げ空中高く飛び、頭上から急降下。
「剣刃螺閃!」
大剣サンダーブレードを構え回転しながらUC「剣刃一閃」で突撃する。
アテナ・アイリス
キャラ性能では勝てない相手であれば、負けないようにすればいいですわね。
最前線で防御に専念することによって、相手の隙を生むようにしますわ。
戦いの間に、相手の癖を見抜いて、他の仲間にアドバイスをするようにして、勝負を有利に進めるようにしますわ。
「負けられない戦いがあるのよ」
「なるほど、そう来るのね」
「その攻撃は見切ったわ」
「その攻撃の間がチャンスよ」
山梨・心志
ゲーム世界にリアルは持ち込んじゃいけない……いけないのです……
なんのための仮想世界ですか!!!
……コホン
ま、まぁ、スペックが低かろうが技術と戦略さえあればなんとかなるのがゲームというものです
バトルゲーマーとして、負けられませんね(眼鏡クイッ)
相手の動きをよく見て【情報収集】
このゲームでの【戦闘知識】を得て【学習】します
戦いの基本は観察力
そしてラッシュ力です
【2回攻撃】でどんどんゲージを削り反撃が来たら【カウンター】
……ふっ、これが『百合ヶ丘神拳』継承者の力です
ゲームだけではなく本当の戦闘でも百合ヶ丘神拳の味を味合わせて差し上げましょう
なお、キャラの外見は中二病的にカッコよくカスタマイズします
●ソード・オブ・エグザイル
目の前に、巨大なモニターがあった。そのモニターの中では、アックス&ウィザーズのようなファンタジー世界やUDCアースのような現代世界、アルワダ学園世界のようなスチームパンクに、キュマイラフィーチャー風のサイバーパンク世界――果てはスペースシップワールドのようなSF世界に至るまで、様々なステージが用意されていた。
「ふふー、格ゲーも好きー! えーと、ソフトは……あー、ソーエグの14かー……」
「フフフ、その通りだ!」
ゲームのナンバリングを確認した確認劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)に、胸を張って答えたのは暗黒面『斬裂の支配者ロード・リッパー』だ。
「世界を超えて放浪する伝説の魔剣エグザイルを探し求める者達の、世界を股にかける活躍を描く人気オンライン格闘ゲームの最新作だ! 猟兵であるキミたちと決着を着けるのに、こんなに合ったゲームもあるまい!」
確かにピッタリだったろう――クソゲーで、なければ。
「ゲーム世界にリアルは持ち込んじゃいけない……いけないのです……なんのための仮想世界ですか!!!」
山梨・心志(双子の兄の方・f03491)が、何かのトラウマを刺激されたかのように叫ぶ。しかし、周囲の視線が集中すると、コホンと咳払いを一つ。
「……コホン。ま、まぁ、スペックが低かろうが技術と戦略さえあればなんとかなるのがゲームというものです。バトルゲーマーとして、負けられませんね」
眼鏡をクイっと持ち上げて、ついでに自分も持ち上げる心志に、ロード・リッパーはどこか優しい眼差しで先に続けた。
「――じゃ、始めよっか?」
「止めてください、優しさが突き刺さります!?」
モニターの前には、二つの筐体がある。ロード・リッパーと別の筐体にまず座ったのは、メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)だ。
「何を隠そうこの私、格闘ゲームに関しては無敗の経歴を誇っています」
「ほう、吹いたね!?」
「何故なら……そもそも遊んだことがないのだから!」
「そりゃあ、負けないね。ビックリだ!」
プリントアウトした説明書を片手に、良い笑顔を見せるメグレスにロード・リッパーは思った――舐められている、と。
「いいだろう、ズブの初心者が手を出すと火傷する業界だと教えてやる!」
画面にはロード・リッパーとメグレスの姿をしたプレイアブルキャラクターが向かい合い――。
『一本勝負! レディ――ファイト!』
メグレスにも、考えがない訳ではない。
(「どのような腕前の持ち主でも起き上がりの瞬間は選択肢が限られるらしいので、ガチャガチャしてどうにか相手を転ばせます」)
その着眼点が、素人とは思えないほど冷静だった。一方的に攻め込むロード・リッパー、耐えるメグレス。
「耐えるだけじゃ勝てな――」
いよ、と続くはずだったロード・リッパーの表情が変わる。レバガチャ、そう呼ばれるただ適当に動かしたコマンドが発動、画面端で投げ飛ばしたのだ。
「ちょ!?」
起き上がりに、足払いを受ける。
「待っ」
起き上がりに、足払いを受ける。
「ハメだからそれ!?」
起き上がりに、足払いを――ガードする!
三回目でようやくガードに気づいたロード・リッパーの触手が、メグレスを召喚した触手の群れで投げ飛ばし――勝った。
「ハメ、ハメはよくない……だ、だが、まずは一本。この程度なら僕の圧勝だね」
肩で息をしながら、ロード・リッパーは既に勝利宣言した。
「次はお願いしますね」
「ええ、任せて」
そう言ってメグレスと席を代わるのは、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)だ。画面にはアテナとそっくりなプレイアブルキャラクターが、現れる。
『一本勝負! レディ――ファイト!』
そこからの動きは、ほぼメグレスと同じ。ロード・リッパーが攻め、アテナが守る。圧倒的な手数の差で、ロード・リッパーが追い込んでいく。
「なるほど、そう来るのね」
「何度でも言おう、守るだけでは勝てないと!」
自身のボディとシンクロし、超強化状態でロード・リッパーがナイフの攻撃を繰り出した。アテナの防御は間に合わない、そのままアテナのキャラがその場に崩れ落ちた。
「うん、こんなものね。どう?」
「十分でございます」
アテナと席を交換したの、カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)だ。二連勝して気を良くしたロード・リッパーが、からかうように言う。
「十分? 負けた時の言い訳でも思いついたのかい? ご老人」
「いえいえ。この歳で、格闘ゲームをプレイすることになろうとは思いませんでしたので。緊張しますが、キマイラフューチャーの危機を救わんが為。このジジイめも邁進いたします」
カーニンヒェンのプレイアブルキャラが、画面に姿を現した。しかし、それはカーニンヒェンの姿ではない――六翼の堕天使、アザゼルだ。
「自身の姿の透写では勿体無いですからな。世界の危機とはいえ、ゲームとは楽しむもの」
「――いいね、面白い」
ニヤリと返し、ロード・リッパーはモニターに向き合う。堕天使とオブリビオンが、まさに黙示録かのごとく激突した。
ヒュガ! とアザゼルが弓から風をまとった剣を射出、ロード・リッパーがそれをナイフで弾くとゴォ! と突風が吹き荒れた。
「ノックバック!? 面倒な! それよりも、お前! このゲーム、やりこんでるな!?」
「いえ、正真正銘の初めてでございます」
そう、元より操縦技術により培った手先の感覚とコマンドを高速詠唱の要領で覚えるという力技で押し切っただけである。だが、この場においてはそれが全てだった。
「ぐ、う、お……!?」
キャラ性能で言えば、ロード・リッパーが圧倒していただろう。事実、メグレスとアテナはそれでゴリ押せた――しかし、丁寧にコンボを重ね、ゲーム的強さを遺憾なく発揮したカーニンヒェンに、ロード・リッパーは紙一重で敗北した。
「くそ、あのノックバックさえなければ!」
「このジジイめの役目もこれで、まずは終わりでございます」
まず一勝を勝ち取ったカーニンヒェンは、恭しく一礼して席を譲った。
――ここからが、猟兵達の逆襲であった。
「キャラメイクはとりあえず自分を反映しつつチャイナ服を着せてみよう」
どこか自分と似ている格闘ゲームキャラを思い浮かべつつ雷田・龍子(人派ドラゴニアンの剣豪・f14251)は、いつものサンダーブレードを担いだチャイナ服姿の自分をプレイアブルキャラに選択。対戦を、開始した。
「ああ、十分に見せてもらったからな」
「お前ら、まさか……!?」
ロード・リッパーは、ここで『十分』の意味を悟った。自身のナイフによる攻撃が、龍子の大剣に受け止められる。小回りではナイフが上のはずだ、フェイントや高速起動からでもそれに合わせられるのは――。
「あの二人は、情報収集役を買って出てくれたのだ――ならば、残った私が負ける訳にはいかない!」
鋭い龍子の斬撃に、ロード・リッパーの防御が間に合わない。当然だ、相手のモーションを知っているかどうか、それは格闘ゲームではアドバンテージに天と地の差があるのだから。
「……くっ!」
キャラ性能で食い下がったロード・リッパーが、後一歩で敗れ悔しがる。次に席に座ったのは涼鈴だ。
「へいへいビビってるぅー!」
「ぐ、その脂肪を揺らすな!? 無駄に演算使いやがって!」
何故か胸を強調するようにのけぞる涼鈴の挑発ポーズに、ロード・リッパーは吐き捨てる。ナイフを構え、真正面からロード・リッパーは襲いかか――れない。
「おう!?」
パン、と技の出掛かりを弱威力パンチ――通称弱パンで消されたのだ。
「おい、それは、この……!?」
「弱! 弱! 弱!」
パンパンパン、と動こうとするロード・リッパーのモーションの出を、涼鈴が連続弱パンで制する。本来なら、牽制にもならない。しかし、格闘ゲームの世界においてこの弱パンキャンセルは、きちんとしたルールの範囲内なのだ。
「――アッパー!」
ガゴン! とここで大威力パンチで顎を撃ち抜き、涼鈴はロード・リッパーを宙へ浮かせる。そこから放たれる必殺技、灰燼拳がロード・リッパーを捉え、KOした。
「HEAR COMES A NEW CHALLENGER――躯体番号L-95、ログインします」
次は直接筐体にゴーグル内の電脳世界を接続した、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)だ。
モニターの中で向き合うロード・リッパーとエル――ただし、エルの視界は完全にプレイアブルキャラの自分と同期していた。
「ふふん、どうやら重火器を展開する中~遠距離型のようだね。しかし、それはこのゲーム内では鬼門だよ。やりすぎないように、修正を食らうからね」
確かに、真っ直ぐ前には撃たせて貰えない仕様になっている。これでは限定した状況でした使用できないだろう――それが、ゲームバランスというものだ。
なので、エルはこっそりとハッキングしてデータを書き換えた。
『一本勝負! レディ――ファイト! ――勝者、エル・クーゴー』
「チートだ! チートだよね、これ!?」
あらゆる制限を受けないエルの一斉射撃が、ロード・リッパーを瞬殺した。
次に筐体に座ったのは、遠藤・兎卯飛(ロマン逃避行中年・f16420)だった。
『ハーイ( ´ ꒳ ` )ノ 格ゲームユーザーのオッサンだよ?』
「……あのさ、目の前にいるんだからチャットじゃなくて喋ってくれない?」
『格ゲー?d(ゝω・´○) キャラメイクか。自分に寄せるよね扱い解るし』
「鋼か、心が鋼か!?」
顔文字を口頭で説明出来ないのだから、仕方がない。こうして、兎卯飛とロード・リッパーのバトルが開始された。
最初は、単調とも言うべき立ち上がりだった。ロード・リッパーが攻めて、兎卯飛が守る――序盤で見た流れで進んでいく。
(「いや、違う」)
チラリ、とロード・リッパーは隣を見る。そこには、猫背になって集中する兎卯飛の姿があった。
(「こいつ、まさか――」)
気づいても、対処する方法はない。
「召喚系ってしってる? そうバトキャラみたいなやつ」
ボソリ、と兎卯飛が呟いた瞬間、背後に出現した格闘キャラが巨大なレーザーがごとき必殺技でロード・リッパーの体力ゲージを削っていく。ガードしても、削られてしまうのはこのままではジリ貧だ。上へ逃げると――再び出現した格闘キャラが地面を殴り、吹き上がるエネルギー波でロード・リッパーのキャラを打ち上げた。
「飛び上がらせて、対空からの!?」
「そう、ここまでレトロからの伝統芸能」
そして、一気に間合いを詰めると赤いパンツのムキムキマッチョが召喚され、回転しながらロード・リッパーを地面に叩きつけ、KOした。
「ハメゲーだよ? 真似しないでね」
ハメゲーは友情を破壊するから、と画面の向こうの良い子へ兎卯飛は念を押した。
最後、筐体に座ったのは心志だ。
「さて、観察は終わりました」
自身の服装を黒一色にシルバーアクセゴッチャゴチャの中二病的にカッコよくカスタマイズした心志が、リアルで左手に巻いた包帯で顔を隠し言った。
「ふふ、ここからが本番です。覚悟はいいですか?」
「あ、うんー」
「もう心折れてるぅ!?」
バトルが始まった。しかし、心折れてもキャラ性能の高さは、明確にロード・リッパーが上だ。
それでも、心志の余裕は動かない。
「戦いの基本は観察力、そしてラッシュ力です」
シルバーアクセを拳に巻いての、ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。ロード・リッパーの速度と威力に、手数で対応していく。だが、心志にはもう一つの秘策があった。
ヒュオ! と深々とロード・リッパーのナイフが体力ゲージを削っていく――そのナイフを、シルバーチェーンが巻き取った。
「……ふっ、これが『百合ヶ丘神拳』継承者の力です」
直後、放たれたカウンター。百合ヶ丘神拳(ビジュツキョウシヨリマナビシテッケン)の拳の一撃が、ロード・リッパーを吹き飛ばした。まさに紙一重の見切り、わずかにゲージを残して、心志が魅せ勝った。
「ク、クククク、ハハハハ……アーハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
見事な三段笑いを見せて、ロード・リッパーが立ち上がる。
「よっしゃ! リアルタイムの時間だぞ、コラァ!!」
「ええ、ゲームだけではなく本当の戦闘でも百合ヶ丘神拳の味を味合わせて差し上げましょう」
完全に精神ゲージが吹っ切れたロード・リッパーに、クイっと眼鏡を持ち上げながら心志は答えた。
●格闘ゲームをやる時は、リアルファイトは止めようね?
戦いが始まった――しかし、これは猟兵にとって正しくない。格闘ゲームパートから、戦闘は始まっていたのだから。
「その攻撃は見切ったわ」
ロード・リッパーが放つ、魂を蝕む触手の群れをアテナは無敵城塞で受け止める。そのタイミングを完璧に合わせた発動は、触手にびくともしなかった。
「その攻撃の間がチャンスよ」
「ああ、死角を突く……飛ぶか」
バサッ! と背の翼を広げ、龍子は飛翔。ロード・リッパーの頭上を取ると、急降下した。
「剣刃螺閃!」
「ぐ!?」
大剣サンダーブレードを構えて回転、電光の一閃が触手ごとロード・リッパーを切り裂く。ロード・リッパーがたまらず後退すると、エルはL95式アームドフォートを展開した。
「射撃開始」
ファイアワークス・ドライブによって攻撃回数を増加させての一斉射撃だ。ロード・リッパーは、その身体能力で掻い潜っていくものの――不意に、背中で爆発を受けた。
「な、に!?」
「マニューバのデータは揃っています」
一斉射撃に混ぜた、誘導弾だ。次々に爆発していく誘導弾の中を、ロード・リッパーは転がりながら抜けた。
「まだまだ!」
兎卯飛が強襲用武装・試作弐号機The呼で跳躍、両肩の大推進装置フルバーニアで加速を得てゴンブトビームキャノンを横一線に薙ぎ払った。ヒュガ――! と戦場をゴンブトビームが一直線に跡を刻むと、大爆発が巻き起こる!
「僕の動きを、ここま、で……!?」
「お遊びが過ぎましたな」
そこへ、カーニンヒェンが召喚したアザゼルの風の矢が射られた。ドォ!! と地面に刺さった瞬間に起こる突風に、ロード・リッパーの体が浮かび上がる!
「ぐ、は!」
「私の経験上、格上相手には自分の強い所で勝負するしかないんですよね」
そこへ、雷杖へ血液を大量に注ぎ込んだメグレスが殴打。バチン! と電流が流れ、ロード・リッパーが体をマヒさせた。
「おらおらおらおらー!」
そこに、駆け込んだ涼鈴がラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。現実にコンボはない、思う様に殴りつけていく!
吹き飛ばされるロード・リッパーを待ち受けていたのは、心志だ。
「目をそらさず、殴る相手の顔を見る……」
「あ、マスクが本体っぽい? んじゃ顔面パンチだ! 体の人は我慢してね!」
心志の百合ヶ丘神拳(ビジュツキョウシヨリマナビシテッケン)と、涼鈴の灰燼拳――同時に放たれた二人の拳が、同時に暗黒面を捉えた。
「もっと、イケメンな猫耳キマイラを――!!」
それ以上言わせるものかと、バキン! という破砕音と共に、ロード・リッパーの本体が粉砕された……。
大成功
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