バトルオブフラワーズ④〜びるどあっぷのおともに
●ばとるおぶふらわーず
「皆、お集まり頂き恐れ入る。まさか、文字通り世界が真っ二つになるとは思わなんだが……」
自身の本体でもある懐中時計を片手に、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は猟兵たちに向けて一礼すると、早速だがと説明に入る。
「様々な予知が飛び交っているが、俺が皆に頼みたいのは……『ひたすらに肉を食べて来て欲しい』という事だ」
はい? という声が猟兵たちの間から上がる。無理もない。戦ってこい、とか、調べてこい、ならまだ分かる。だが、食べてこい、とはいかなることか。
「済まない、だが本当にそうとしか申し上げようがないのだ。相手取るオブリビオンは「アルパカマッスル」、待ち受ける場所は「ザ・フードステージ」。此処では特殊な戦闘のルールが敷かれており、其れに乗って戦わねば勝利する事は叶わない」
心底申し訳なさそうな顔をしつつも、説明を続けるニコ。
「ルールの名は「オオグイフードバトル」、アルパカマッスルは己の肉体美を維持するのに最も適した料理でもある「ヒレステーキ」を、どういう訳かずっと熱々の鉄板に乗せて大量に準備して皆を待ち受けている。敵はヒレステーキを食べ続ける事で圧倒的な戦闘力を発揮する、よって通常の戦闘方法では俺達猟兵に勝ち目は無いのだ」
頼む、伝わってくれと言わんばかりに大げさな身振り手振りを加えながら言葉を紡ぐニコは、ならばどうすればという猟兵の問いに応える。
「目には目を、大食いには大食いを、だ。アルパカマッスル以上の大食いでヒレステーキを食べる事が出来たならば、立場は逆転し、此方の強力なユーベルコードで攻撃を喰らわせる事も出来るだろう」
なるほど、それでオオグイフードバトル。ようやく猟兵たちが事情を飲み込んだところで、ニコは改めて猟兵たちの顔を見回して、覚悟を問うた。
「……先にも申し上げたが、用意される大量のヒレステーキはアルパカマッスルが最も有利に大食いを出来る料理だ。其処へ乗り込んで勝負を挑む以上、皆には「ヒレステーキの大食いなら負けない」という強い意志と実行力が求められる。覚悟は、良いだろうか?」
ものすごく真面目な顔で、眼鏡のブリッジをクイと上げながら、グリモア猟兵は言う。
「ヒレステーキの食べ方にはどんな工夫を加えても良い事は予知出来た。焼き加減や味付けを好みのものにするも良し、ただ焼いた肉の状態から何かしらの料理にアレンジをしても良し。自分がひたすらたくさん食べられる状態に持っていって、何としても勝利を収めて欲しい」
ヒレと言えば肉の女王とも言われる、脂が少なく柔らかい部位である。アルパカマッスルがこの肉を武器に選んだのは恐らく筋肉に優しいからという理由であろうが、普段はその提供される際の価格の高級さに、手が出ないでいる者も少なからずいるだろう。
それを! 心置きなく! 食べて食べて食べまくって来て欲しいという! 許された!
「肉が好きな者にとっては、悪い話では無いと思う。ひとつ、頼まれてはくれまいか」
懐中時計を懐にしまうと、ニコは虹色の星型のグリモアを出現させる。
「金の心配は不要だ、何しろヒレステーキは無限に鉄板に乗せられて勝手に提供される。皆の奮戦に期待する次第だ、よろしくお願いする」
かやぬま
●ごあいさつ
私事で恐縮ですが、ダイエットをしている時にヒレステーキのお世話になれと指示を受けながら、そのお値段の可愛くなさに泣く泣く別の部位のお肉を食べていたかやぬまです。初めまして、もしくはお世話になっております。
さて、今回のシナリオには特殊な戦闘ルールが設定されております。概要は大体OPの中でグリモア猟兵が語った通りとなりますが、
「大食いをするオブリビオンをより上回る大食いを成功させること」
が必要となります。成功すれば攻撃が通るようになりますが、食べた量が敵と同じくらいにとどまってしまった場合は、互角の戦闘結果となりますので、マジポンリアルでヒレステーキ食いまくりたいですという「熱意」や「理由」を是非プレイングでお聞かせ下さい。
人の金で食う肉は美味いぞ! 頑張って下さい、私も頑張ります!!
※グリモア猟兵宛に領収書を切っても、そもそも彼の懐は痛んでおりませんのでお金は出ません、ご了承下さい……!
●ごあんない
シナリオが無事承認されて公開された場合、すぐに断章を書ける状況にない可能性が非常に高いです、申し訳ありません。
なので、今回は「公開され次第プレイングを受付」致します、ただし「全てのプレイングを採用できるかどうかは頂戴した数によります」ことを、何卒ご承知おき下さいませ。
第1章 ボス戦
『怪人アルパカマッスル』
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POW : ポージング
自身の【肉体美の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 鋼の筋肉
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : つぶらな瞳
【つぶらな瞳で見つめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞳から放たれるビーム】で攻撃する。
イラスト:ヤマトイヌル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ニィ・ハンブルビー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●にくをくらうあるぱか
それは、ある種異様な光景であった。
草食動物であるはずのアルパカが、上質な肉を欲している。いや、正確にはアルパカの頭部とマッチョのボディを持ち合わせるオブリビオンという存在である以上、既にその時点で通常の常識をものさしにしてはいけないのかも知れない。
『フフフ……本来ならば適切な量に留めておくべきの食事だが……このステージに一歩足を踏み入れた以上は、一切の枷から解き放たれるパカ……!』
ともあれ、この「ザ・フードステージ」の一角を任されたアルパカマッスルは、常にトレーニング後に喰らって喰らって喰らい続けてきた肉を、それもヒレステーキを無限に出現させ、思う存分食べることで己を極限まで強化する。
それに対抗すべく、アルパカマッスルを上回る量のヒレステーキを食べまくるべく、今、猟兵たちが紙エプロンを装備して「戦い」に挑む――!
レパル・リオン
『肉体美を維持するのに最も適したヒレステーキ』!?あ、あたしもこれを食べれば、もっと強くなれるかな!?
よーし、とにかく食べまくって強くなって、怪人よりも強くなってぶっ飛ばすわ!
レアからミディアムまで色々な焼き加減で行くわ!思い切ってほぼ生でかぶりついてみるのもアリかもね!
調味料も色々試すわよ!醤油とかソースとか塩コショウとかラー油とかマヨネーズとかダシ粉とか…とにかく色々よ!
どうしても勝てなそうなら【分身】!物理的に胃袋を増やして食べまくるわ!そして戦うわ!
待ってなさい、『ドン・フリーダム』!ヒレステーキを食べまくって怪人を倒しまくって強くなりまくって、アンタも骸の海にたたき落としてやるわ!
●れぱるさんがくらう
一体、この熱々鉄板に乗せられた白い湯気を立てるヒレステーキたちは、どこから提供されてくるのだろうか。いや、キマイラフューチャーでそんなことをいちいち気にしていては負けなのかも知れない。
ともかく、アルパカマッスルは既に無心でヒレステーキを食って食って食いまくっていた。食が進むと同時に、その鍛え上げられた肉体に力がみなぎっていくのが、視覚的にも理解できるようだ。
そんな光景が広がる「ザ・フードステージ」に、遂に猟兵たちが降り立った。
「『肉体美を維持するのに最も適したヒレステーキ』!? あ、あたしもこれを食べれば、もっと強くなれるかな!?」
赤い瞳を輝かせながら、強さへの渇望を直球で告げるのは、最初の挑戦者であるレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)だ。キマイラフューチャーで暮らす、自身もキマイラであるレパルにとって、今回の大事件は当然ながら見過ごせない事態だ。
レパルの登場に気付いたアルパカマッスルは、食べる手と口は止めずに、器用に反応する。
『もっしゃもっしゃ……来たか、猟兵! 待っていたぞ、最高のヒレステーキを無限に食べてビルドアップの極地に至らんとするこの私に敵はないパカ!』
「言ったわね!? よーし、とにかく食べまくって強くなって、怪人よりも強くなってぶっ飛ばすわ!」
人と話をする時に食事の手を止めないとはちょっとマナー違反ではないですかねという問題も、このオオグイフードバトルの場においては些事でしかないのだろう。レパルもいざ食わんとつかつかアルパカマッスルの方へと歩み寄ると、自然とおひとりさま用のテーブルと食器、紙エプロンや各種調味料が現れる。ちなみに椅子はない、立ち食いスタイルだ。
テーブルの前に立ち紙エプロンを装着したレパルがナイフとフォークを手に、姿見えぬヒレステーキ調理担当に向かってオーダーを飛ばす。
「レアからミディアムまで色々な焼き加減で行くわ! たまにほぼ生でかぶりついてもイイかも知れないから、いい感じに混ぜてちょうだい!」
するとどうだろう、即座にレパルのオーダーに応えて様々なバリエーションの焼き加減を施されたヒレステーキ(ちなみに一皿につき大体300gくらいの欲張りさん仕様である)が次々と熱々の鉄板に乗って飛来するではないか。
『なるほど、肉の焼き加減にバリエーションをつけて食う作戦か(もっしゃもっしゃ)、だがしかしそれだけでは私には到底追いつけないパカ』
「いただきまーす! ……ううん、調味料も色々試すわよ!」
どちらかというと全身のパーツが人間より獣の方に近いレパルだが、ナイフとフォークを器用にさばきながら次々とヒレステーキを切り分け、パクパクと口に運んでいく。
一般的にはレアがおすすめとされるヒレだが、ちょっと強めに火を通してもその魅力が衰えることはなく、焼き加減に応じた肉の噛みごたえの違いが楽しく、レパルの勢いはとどまることを知らない。
それでも流石にちょっぴり飽きが来るタイミングで、レパルは調味料で味の変化をつけるという王道の攻め方でブーストを図る!
「醤油! ……うん、普通においしい! ソース! ……あれ、案外イケるかも……。次、塩コショウ(ゴリゴリ)! ……ハァァン、ベストマッチ!!」
醤油は分かる。だがソースは大丈夫です? と思っておりましたが案外大丈夫だったようで何よりです。塩コショウは最適解なのでこの組み合わせで一気に五皿分くらいペロリと平らげたことを付記しておきます。
『ば、馬鹿な……この勢い、このままでは私のペースを上回るパカ……!?』
焦りを感じたアルパカマッスルがペースアップをする。だがレパルも負けてはいない、何しろ調味料のバリエーションはまだまだあるのだ。
「食べるラー油とかイイ感じなんじゃないかしら? ……ビンゴ!」
今はステーキもテイクアウトできる時代なので、ぶっちゃけ地の文もこの組み合わせは試してみたいです! アッ失礼しました!
「マヨネーズ! ……うっ、食べ物で遊ぶのは良くないわね……」
せやろな……。
「ダシ粉もあるわよ! ……これはっ、イケる!!」
『ぬおおおおお! 娘、やるではないか、しかし私はこの大食い勝負で負ける訳には行かないッパカアァァ!!』
調味料大作戦でブーストをかけてきたレパルに、いよいよ敗北の危機を覚えたアルパカマッスルが、これほとんど飲んでるんじゃないの的な勢いでヒレステーキを口の中に流し込んでいく。
「くっ……さすがね、こうなったら……!」
レパルはナイフを握った右手を天高く突き上げると、ユーベルコード【分身(ウルブズラッシュ)】を発動させる。すると、レパルの周囲に合計105人の、文字通り「分身」が現れたではないか! 全員既に紙エプロンを装着済み、ナイフとフォークを構えて準備万端だ。
『ま、まさか』
「そのまさかよ、こうやって「物理的に胃袋を増やして」食べまくるのよ!!」
『む、娘エェェェ!!!』
「「「あたし達が相手よ!」」」
分身が食べたヒレステーキも、きちんとレパル本人が食べたものとしてカウントされる。まさに数の暴力! またたく間にアルパカマッスルの食べる量を上回る!
「今なら行けるっ……! 覚悟なさい、アルパカマッスル!!」
『馬鹿なアァァァ!!!』
アルパカマッスルと立場が完全に逆転したことで、おもむろに駆け出して助走をつけた上での回し飛び蹴り(しっぽビンタ付き)が、アルパカマッスルにクリーンヒットする。テーブルの前からふっ飛ばされて、勢いよく地面に転がるアルパカマッスルを一瞥すると、レパルはカメラ目線で力強く宣言する。
「待ってなさい、『ドン・フリーダム』! ヒレステーキを食べまくって怪人を倒しまくって強くなりまくって、アンタも骸の海にたたき落としてやるわ!」
いやあ見事なキックでしたね、魔法少女とは何だったのかって感じです。
こうして初戦は見事猟兵側の勝利で飾ることができたのであった。
成功
🔵🔵🔴
真守・有栖
いいのね?ほんっとにいいのね?
ほんっっっとーにいいのね!!?
よくぞ。よくぞ!
この依頼を予知してくれたわね!
謝ることなんて、これっっっぽっちもないわ!むしろ、とっっっても褒めてあげるわ……!
敵ながらすてぇきをたっっっくさん用意してくれる筋肉にも感謝しかないわ。天晴れよ!!!
わぅう……おにくをおなかいっぱいまで食べ尽くせるなんて夢みたいだわ。……ぐすっ
わぐわぐえぐえぐと。
感謝と感動と嬉しさと美味しさでいっぱいになって、ぽろぽろ涙を零して笑顔でおにくを食べるわ。食べ続けるわ……!
ありがとう。もう、本当にそれしかないわ……。
次はひつじのおにくに生まれ変わることを願って。
涙を呑んで、感謝の成敗よ……!
●ありすさんがくらう
派手にふっ飛ばされたアルパカマッスルが、まだまだぁとつぶやきながら再びテーブルの前に戻ると、既に次の挑戦者が向かい合うテーブルの前にたたずんでいた。
『次の相手はお前パカ……む?』
けれども何だか様子がおかしい。アルパカマッスルも思わず様子を見てしまう。
紙エプロンを着けたは良いが、その豊満な胸にほぼほぼ持ち上げられてしまっている様子もさることながら、挑戦者――真守・有栖(月喰の巫女・f15177)は、何故かふるふると身体を震わせ続けていたのだ。
「いいのね?」
『はい?』
テーブルにバンッと手をついて、身を乗り出す有栖。思わず気圧されるアルパカマッスル。
「ほんっとにいいのね?」
『エッ、アッ』
ずずい。有栖がさらに迫る。距離はそこそこ離れているはずなのになんて圧だろう、思わずどもるアルパカマッスル。
「ほんっっっとーにいいのね!!?」
『か、構わんパカ!?』
何がだろうという疑問さえ浮かべる余裕もなく、アッハイ状態で生返事をしてしまうアルパカマッスル。案外押しに弱いのだろうか。
これは夢ではない、現実だ。本当に許されたのだ。そう確信を得た有栖は天を仰ぎ両手を大きく広げると、感極まった様子で声を上げた。
「よくぞ。よくぞ! この依頼を予知してくれたわね! 謝ることなんて、これっっっぽっちもないわ! むしろ、とっっっても褒めてあげるわ……!」
アッこれ今リアルタイムで転送頑張ってるグリモア猟兵宛てだ! 恐れ入ります、後でちゃんと伝えておきますね! きっと喜ぶと思います!
「敵ながらすてぇきをたっっっくさん用意してくれる筋肉にも感謝しかないわ。天晴れよ!!!」
今度は正面をしっかと見据え、筋肉ことアルパカマッスルに最大級の褒め言葉を贈る有栖さん。そしてその言葉にハッとなるアルパカマッスル、オオグイフードバトルのことをようやく思い出した模様。
『猟兵に褒められる筋合いはないパカ、しかしその様子だとお前も肉が好きなのだな……相手にとって不足なしパカ!』
「わぅう……おにくをおなかいっぱいまで食べ尽くせるなんて夢みたいだわ」
ぐすっ、と有栖が遂に涙ぐむ。大丈夫? 普段の食生活、苦労なさってません?
『娘、存分に食え! 私も食うパカっ!!』
そう吠えるアルパカマッスルの周りに、気を取り直してという感じで再び大量の鉄板に乗せられたヒレステーキが現れる。猛然と食べ始めるアルパカマッスルに負けじと、自然と有栖の周りにもヒレステーキが大量に出現した。それを目にした有栖から、花のような……あとキラキラした何かというか……そういうエフェクトがぶわわっと飛び出す。画像でお見せできないのが残念です。
ナイフとフォークをチャキッと構えると、有栖は最初は恐る恐るヒレステーキにナイフを入れる。柔らかい感触。赤い断面が姿を現す。切り分けた一切れをそっと口に運び――噛む。口の中に広がるこの感覚は――間違いない、肉だ……!
「あ、あ……ああ……!!」
有栖の紫の瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。そこからは、神速の域と言っても良かっただろう。一心不乱にわぐわぐえぐえぐと嗚咽を漏らしながら、感謝と、感動と、嬉しさと、美味しさでいっぱいになりながら、涙に濡れた顔を満面の笑みにして、次々と現れるヒレステーキを食べ続けた。そう、途切れることなく食べ続けた――!
『娘……(もっしゃもっしゃ)それほどまでに、肉が食べたかったパカか……』
自身も負けじとせっせと肉を口に運び続けながら、感涙むせび泣き状態でひたすらヒレステーキを食べ続ける有栖に視線を向け、思わず言葉を漏らすアルパカマッスル。
「ありがとう。もう、本当にそれしかないわ……」
今の有栖ならば、この世の全てに感謝の意を表するのではないだろうか。その気持ちは尊く、強く、いつしか肉を食べる速度までアルパカマッスルのそれを――超えていた。
「次はひつじのおにくに生まれ変わることを願って……」
機は熟した、そう感じた有栖は無限に湧いて出るヒレステーキを名残惜しく思いながら、アルパカマッスルに向けて愛刀をすらりと抜き放つ。
『ヒレステーキだけでは足りぬと言うパカ……!? こ、この私にラム肉になれと……!?』
涙を呑んで。
「感謝の……成敗よ……!」
『ギャーッ!!』
【剣刃一閃】、アルパカマッスルの鍛え上げられたボディに一筋の派手な斬り傷がついた。攻撃が通ったのだ。
『お楽しみ……いただけたパカ……』
傷口をおさえて数歩後ろによろめくアルパカマッスル。有栖は刀を鞘に納めると、ものすごくいい笑顔で答えた。
「まだ食べててもいいかしら!?」
成功
🔵🔵🔴
満月・双葉
大根なら
いくらでも
喰えるっ!
大根と書かれたハチマキを頭に巻き
大根のすりおろしをかけて
効率的な肉の食い方を学習力で学び
早業でアルパカより早く食いまくります
ぁ、それ39枚前のステーキを食べている僕の残像です
大根が関われば僕は無敵です(と己を鼓舞して気合いで食べすすめ)
アルパカは体毛だけ使われるから肉が残るんですかね?…ぁ、毛が無い。
攻撃が通用するようになれば先制攻撃で武器の方の大根を零距離射撃よろしく叩き込みアルパカを薙ぎ払います。
君も大根どーぞ!(更に大根おろしステーキを食しつつ)食べ物は大切にね!
敵の攻撃は野生の勘で避けきれなければ大根で武器受けします。
●ふたばさんがくらう
なんやかんやで傷口の応急処置をしたアルパカマッスルが、ああ多分次の猟兵がもうスタンバイしているんだろうなあと思いながらテーブルに戻ると、予想通り新たなる刺客がアルパカマッスルを待ち受けていた。
「大根」と書かれたハチマキを頭に巻いて立食テーブルの前で待ち構えていたのは、満月・双葉(星のカケラ・f01681)。アルパカマッスルの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
『……大根?』
「大根なら! いくらでも、喰えるっ!」
右手に大根、左手におろし金をそれぞれ構えた双葉は、そう言うなら猛然とヒレステーキの上に大根をすりおろし始めたではないか。この食べ方は新しいぞ!
『は、ハンバーグならば和風おろしという食べ方もあるが、まさかステーキに大根おろしを乗せるとは……お前、一体何者パカ!?』
驚愕を隠せないアルパカマッスルだが、戦はすでに始まっていると気付くや再びヒレステーキを食べ始める。ヒレステーキの柔らかさを活かして、力強く一気にナイフを入れて切り分けに使う時間を極力おさえて、回転を速くする。そんな様子を、大根を無心にすりおろしながら双葉はしっかりと「学習」していた。
「……なるほど、効率の良い肉の食べ方ですね。参考にさせていただきます」
大根おろしについても、都度すりおろしていては時間のロスになると判断し、駄目元で「ボウルを」と声を上げてみたら本当に出てきたので、ありがたくその中にすりおろしを溜めておくことにする双葉。ちなみに大根自体も肉と同様に何故か無限に出てくる。不思議がいっぱい、キマイラフューチャー!
効率的な肉の食し方を会得した双葉は、出遅れを取り戻すべく猛然と大根おろしが乗ったヒレステーキを食べ始めた。アッ、相性良さそうなんでポン酢置いときますね!
『なっ……何という手際の良さ(もっしゃもっしゃ)! 何より、ナイフとフォークをさばく手つきが……尋常ではないパカ!』
「ぁ、それ39枚目のステーキを食べている僕の残像です」
マジかよ双葉さん最強だな! シュバババという擬音がぴったりな手つきは早業の為せる業か、実際、肉を切る時間がほぼ無きに等しいので、自然と食べるスピードも量もアルパカマッスルを徐々に上回っていく。
多分、時折大根おろしを補充するために一時食事を中断するのがなければ、より一層圧倒していたのではないかなって思います。
「大根が関われば僕は無敵です」
――前言撤回、大根なくしてこの快進撃はなかったんですね。実際、大根おろしを乗せたヒレステーキは非常に食べやすく、食が進む。こよなく愛する大根をお供に己を鼓舞して気合いで食べ続ける双葉は、ふとアルパカマッスルのボディを眺めながら思う。
(「アルパカは体毛だけ使われるから肉が残るんですかね? ……ぁ、毛が無い」)
『お前、今地味に酷いことを考えていなかったパカ!?』
何かを察したのか、アルパカマッスルが思わずヒレステーキを食べる手を止め双葉にツッコミを入れる。だが、それがいけなかった。
「隙あり、ですよ」
クールに言い放つ双葉が手にしていたのは、今まですりおろして使っていた食材の方の大根ではなく、禍々しい気配に満ちた「武器の方の」大根であった。
『しまっ……』
「君も大根どーぞ!」
先手を取ることに成功した双葉は、猛然とアルパカマッスルに迫るとほぼ至近距離からの大根フルスイングで横っ腹をなぎ払うように殴りつけた。
『ぐえっ!!』
思わず声を上げるアルパカマッスルに、大根おろしがたんまりと入ったボウルを差し出すと、自身も大根おろしを乗せたヒレステーキをもっしゃもっしゃしながら、双葉は声をかけた。
「大根、どーぞ?」
『うぐっふ……そこの肉に……乗せておいてくれパカ……』
分かりましたと言いながらアルパカマッスルのテーブルに乗せられた鉄板の上のヒレステーキに、これでもかと大根おろしを乗せつつ、カメラ目線で武器の方の大根を掲げて双葉が決め台詞をキメた。
「食べ物は大切にね!」
うわっ説得力ない! でもこの(武器の方の)大根、実は食べ物ではなく魔力でできたナニカらしいのでセーフ! でも大根の謎がますます深まっちゃったよ!!
成功
🔵🔵🔴
ザフェル・エジェデルハ
「肉をひたすら食えばいい、だと?そんなのやるに決まってんだろ!!
しかもタダだと?天国かよ、おい!」
肉が好きだと叫びたいぐらいの肉好き
高い肉は稀にしか食べないため、普段の戦闘では見せない集中力で挑む
当然夕べから何も食べていない
焼き方はレアで、味付けは岩塩と胡椒でシンプルにいただく
「ヒレは焼き過ぎねぇぐらいが一番美味いんだよ」
焼けたらひたすら食べまくる
「これでエールがあったら倍は食えんだけどな!持ってくりゃ良かったぜ」
戦闘は【グラウンドクラッシャー】を使い、敵をぶちのめす
肉を食ったおかげで、【力溜め】も十分に発揮できそうな気分だぜ!!
(他PCとの連携やアドリブOKです)
●ざふぇるさんがくらう
致命傷こそ何とか逃れているものの、着実に猟兵たちからの攻撃によりダメージが蓄積されているアルパカマッスル。おかしい、こんなはずでは。己が最も得意とする料理で勝負に臨んでいるはずなのに。
そう思いながら、これ以上好き勝手させてなるものかとテーブルまで戻ったアルパカマッスルに、待ってましたとばかりに声をかける一人の猟兵がいた。
「肉をひたすら食えばいい、だと? そんなのやるに決まってんだろ!!」
早く食おうぜ、そう言いたげに紙エプロンを着けてナイフをアルパカマッスルに向けて突きつけるのは、ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)。
「しかもタダだと? 天国かよ、おい!」
『お、お前も肉が好きなのパカ……。だが、タダだからという理由だけで私に勝てると思っては困るパカ!』
それを聞いてニッと不敵な笑みを浮かべるザフェル。敵は自分を甘く見ている。ならば見せてやろう、自分がどれだけ、肉が好きなのかを――!
(「ヒレステーキなんてお高い肉、滅多に食えねえからな」)
俺は! 肉が! 好きだ! そう思い切り叫べたらどんなに良いか。それくらいザフェルは肉が好きだった。だがいかんせん懐の事情で高い肉は稀にしか食べないため、こうして今この仕事が巡り合わせで回ってきた今、それこそ普段の戦闘では見せないほどの集中力をもってこの場に臨んでいた。ちなみにザフェルさん、夕べから何も食べていないそうですよ! 気合い入りまくりですね!
「よし、じゃんじゃん持ってこい! 焼き方はレアで、味付けは岩塩と胡椒でシンプルにだ!」
『なるほど、正統派なスタイルで攻めてきたな。どこまで食えるかお手並み拝見パカ!』
ヒレステーキに限らず、食事は個々が好きなように楽しむのが一番ではあるのだが、それでも一応世の中には食材に応じた最も適した調理法というものが存在する。ヒレステーキに関して言うならば、あまり焼きすぎないレアで、塩コショウも最低限にして肉本来の味を楽しむのが推奨されているのだが、ザフェルはそれを忠実に守ったのだ。
「ヒレは焼き過ぎねぇぐらいが一番美味いんだよ、っと(むぐむぐ)」
(『こいつ、出来るパカ……!』)
食事の手こそ止めなかったものの、アルパカマッスルがザフェルに対する認識をようやく正しいものとする。この眼前の敵は、ヒレステーキの楽しみ方を熟知している!
昨日の夜から何も食べていないという腹事情もあってか、ザフェルの食べるスピードは尋常ではなかった。豪快に切り分ける先から口に放り込んでいけば、程良いバランスの肉の旨味と塩コショウのハーモニーが口いっぱいに広がっていくのだから、ナイフとフォークを動かす手が止まろうはずもない。空腹という最高のスパイスも相まって、ザフェルは食って食って食いまくる。
「これでエールがあったら倍は食えんだけどな! 持ってくりゃ良かったぜ」
『倍!?』
ただでさえ驚異のスピードでヒレステーキをバカスカ平らげていくザフェルに焦りを覚えていたアルパカマッスルが、思わず声を上げてしまう。
しかもいかなることか、ザフェルのテーブルの空いた所に突然本当にエールの入ったグラスが現れたではないか。敵のフィールドのはずなのに何たるサービス! 気前の良さ! ザフェルの肉愛が天に届いたとでも言うのか!?
「おお!? ここ本当に天国なんじゃねえか!?」
もうこのままずっとここで高級肉ヒレのステーキを食べて生きていきたい、そんな気持ちになりながらありがたくエールを流し込むザフェルさん。肉に加えて好物の酒まで出してくれるなんて、これホントに猟兵の仕事なのかな? とさえ思ってしまう。
『くっ……! 付け合わせにコーンではなくブロッコリーを選択している私を……超えるパカ……!?』
「おうよ、肉食い放題で負ける気なんてしねぇぜ!」
美味しいお肉の力でエナジーチャージも完璧、身体中に力がみなぎっているのが分かる。得物のバトルアックスを大きく振り上げると――。
「【グラウンドクラッシャー】!!」
『ぬおおおおおおおお!!!??』
単純、しかしそれ故に重い一撃が、アルパカマッスルを地面に沈めた。絵に描いたようにめり込んだアルパカマッスルを中心として、床にクモの巣状の派手なヒビが入る。
「なあ、これってもっと食べててもいいのか?」
アルパカマッスルが起き上がって来ないのを見て自身の勝利を確信したザフェルが、一応確認する。スッ……と今使っているテーブルの少し後ろの方に、観客席よろしく別の立ち食い用テーブルが現れたのが、恐らく答えなのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
●しめきりました
「5/5 23:58」をもちまして、プレイングの受付を〆切らせて頂きます。申し訳ありませんがご了承下さいませ、たくさんのご参加に心から感謝致します!
荒谷・つかさ
筋肉。大食い。ヒレステーキ。
つまり。私を。
【ワイルドハント】の【斬り込み兼焼き肉担当】こと、荒谷つかさを呼んだわね!?(どんっ!!!!!)
ええ、ええ。期待には応えてみせるわ。
今こそ、【焼肉担当の本気】発動よ!
兎にも角にも、この後の戦闘に備えて食べるわ。
ヒレステーキは良質なたんぱく質を多く含む料理。
脂肪分控えめで当然、ダイエットにも向くけれど……そう、筋肉をつけるにもとても良い食材。
この私の筋力(POW)を、更なる高みへと至らせるに最適な食材……!
それを、オブリビオンなんぞに、食わせるなど、勿体ない!
(自分で焼いてたのに留まらず敵から強奪を始めるロール)
戦闘は怪力を活かして関節技仕掛けるわね。
●つかささんがくらう
地に伏したまましばらく動けずにいたアルパカマッスルだったが、まるで魂が肉体を凌駕したかのようにゆらりと立ち上がると、再び肉を食うという戦いに挑むべくテーブルの前に戻る。何たる執念。
そんなアルパカマッスルを待ち受けていたのは、荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)だった。一見すると小柄な女性であるつかさを見たアルパカマッスルは、フフンとその大きな鼻を鳴らす。
『……娘、ここは大食い自慢の猛者たちが集う戦場(いくさば)よ……何をしに来た?』
外見で侮られたつかさは、しかし挑発には乗ることなく、まぶたを閉じて静かに口を開く。
「筋肉。大食い。ヒレステーキ。……『ワイルドハント』の『斬り込み兼焼き肉担当』こと、荒谷・つかさを呼んだわね!?」
どんっ!!!!! と某有名ご長寿海賊漫画の効果音よろしく、集中線付きで閉じていた目をかっ開くつかさ。何だかよく分からないけどすごい圧を感じたアルパカマッスルは、予想外の気配に思わず一歩後ずさってしまう。
『や、焼き肉担当……だと!? 良かろう、ならば見せてみよ、その実力を!!』
しかしすぐに気を取り直したアルパカマッスルが、そう言うなり自身も猛然とヒレステーキを喰らい始める。対するつかさは――。
「ええ、ええ、期待には応えてみせるわ!」
――ユーベルコード【焼肉担当の本気(ヤキニク・パーティー)】、発動! ていうか何すかこのユベコ! 完全にフードファイト特化じゃないですか! あっ一応説明しますと『戦闘中に食べた(主に敵から剥ぎ取った肉を焼いた)焼肉の量と質に応じてカロリーを蓄積し、全力を出せる時間が増え、戦闘力が増加する』という効果です。何すかこのユベコ!(二回目) 大丈夫!? 反動で寿命削れたりしません!?
ともあれこの必殺技を発動したからには、食べた肉の量と質がモノを言う。つかさはこの後に控える戦闘にもきちんと備え、食べて食べて食べまくる。
「(むぐむぐ)ヒレステーキは良質なたんぱく質を多く含む料理。脂肪分控えめで当然、ダイエットにも向くけれど……」
『(もっしゃもっしゃ)なっ……何だと!? その身体のどこにその量の肉がおさまっていくのだ!?』
アルパカマッスルも驚愕する勢いでナイフとフォークを動かしつつ、切り分ける手間さえ惜しいとばかりにどんどこヒレステーキを口に運んでいくつかさ。事実、だんだん切り分ける肉のサイズが大きくなっていくではないか。平たく言うと大雑把になっていっている!
「(もぐもぐ)そう、筋肉をつけるにもとても良い食材。この私の筋力(※POW)を、更なる高みへと至らせるに最適な食材……!」
『(もっきゅもっきゅ)……非礼を詫びよう、娘。お前は……「理解っている」者だな……!』
「(はぐはぐ)それを! オブリビオンなんぞに! 食わせるなど! 勿体ない!!」
『ハッ……何を、何をする貴様ー!!』
もはや数え切れないほどのヒレステーキを平らげつつ、アルパカマッスルを感心させるに至る発言をぶちかますつかさ。ただでさえPOW超特化なのに、まだ高みを目指すんですか……! そうですね、強いて言うなら次は289を目指したいですね(メタ)!
そして、発動したユーベルコードの特性をフル発揮すべくつかさが取った行動は――アルパカマッスルのテーブル目がけ駆け寄ると、今まさにアルパカマッスルが食べている肉を横から強奪するという鬼畜の所業であった! ルール的には禁止されていないのでギリギリセーフ!
『あっあっ……私のヒレステーキが……!』
「エネルギー充填ひゃくにじゅっぱーせんと。お前にはこれを食らわせてやるわ!」
『ギャアアアアアアアアアアア!!!??』
おもむろに、怪力にモノを言わせてアルパカマッスルを巴投げでぶん投げると、そこからの腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)をキメるつかさ。
※あぶないからよいこはまねしないでね!!
大成功
🔵🔵🔵
ヴァーリャ・スネシュコヴァ
肉がここで思う存分食えるのか!?
ふわあ…!これは【大食い】で肉大好きな俺、参加せざる得ないのだ!
(カワウソのピン留めで、前髪を留めつつ)
もちろんヒレステーキはミディアムレアだろう!
そっちの方がほどよく肉があったまってるかつ、肉の味が思う存分味わえて好みなのだ
1枚目はあっさり塩胡椒。2枚目はポン酢、3枚目はワサビ醤油!
あっさりからこってりな味付けにランクアップしていき、飽きがこないよう調整していくぞ
そして最後はガリバタ醤油!カリカリのフライドガーリックとバター、そして醤油のハーモニー…
これは米が欲しくなるな!ライス追加で!
肉をいっぱい食べて、力満タン!
思いっきりUCを食らわせてやるぞ!
●ゔぁーりゃさんがくらう
肉を食べていたはずが、豪快な投げからの関節技を喰らって、今度こそ本当に死ぬかと思ったアルパカマッスル。実はまだ地味に生きていた。よく耐えましたね……。
『人の肉を横取りするわ関節技キメるわで……だが、耐えた! 次にあのような輩が現れない限り……私は、勝つ!』
「肉がここで思う存分食えるのか!?」
『うわあびっくりした!!!』
アルパカマッスルが心底びっくりした声を上げる。無理もない、地に伏した状態から立ち上がり再び自分のテーブルに戻ろうとしたその背中に、至近距離から元気良く声をかけられたのだから。
声の主――ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)は、戦場(ステージ)いっぱいにふよふよ謎の力で浮いているヒレステーキを見渡すと、それはもういい笑顔でアルパカマッスルに事実上の宣戦布告をする。
「ふわあ……! これは大食いで肉大好きな俺、参加せざるを得ないのだ!」
『ま……また小柄な娘が実は大食い系か……!』
今度こそ死ぬかも知れないという嫌な予感を抱いてしまうアルパカマッスルと、それはもう上機嫌でカワウソのピン留め(かわいい)で前髪を留めるヴァーリャ。準備万端ですね! あとそのかわいいカワウソのピン留めはどこで買えますか?
『し、しかし勝負はまだ終わってはいない……! 来い、娘!!』
「おうっ!」
互いに立食式のテーブルにつき、ナイフとフォークを構え、いざ勝負である。
(「もちろんヒレステーキはミディアムレアだろう! そっちの方がほどよく肉があったまってるかつ、肉の味が思う存分味わえて、好みなのだ」)
ヴァーリャは姿見えぬヒレステーキ提供人(人?)に向けて、焼き加減は一律ミディアムレアでとオーダーを出す。レアが3割ほど焼いた状態ならば、ミディアムレアは比較して5割ほど焼いた状態と言えば、レアとの違いが伝わるだろうか。ヴァーリャさんがおっしゃる通り、安定して美味しくお肉が食べられる絶妙な焼き加減なのです!
『そう来たか、娘!(もっしゃもっしゃ)肉が好きというのは間違いないようだな!』
「工夫するのは焼き加減だけではないぞ! ……1枚目は、あっさり塩胡椒で頼む!」
『こっ……この娘、味変まで……!?』
最初のチョイスは安定の塩コショウ、肉の味が一番素直に楽しめる味付けです。
「2枚目はポン酢、3枚目はワサビ醤油!」
『ああああああ! 私も、私も味変をする!!(もっしゃもっしゃ)』
聞いているだけでよだれが出てくる出てくる、アルパカだけに。ついついつられて自分も味付けの変更を要求するアルパカマッスル。2枚目のポン酢には大根おろしを添えたくなりますね!
(「ふっふっふ、あっさりからこってりな味付けにランクアップしていき、飽きがこないよう調整していくぞ」)
そこにはヴァーリャの綿密な計画があった。これが実に大当たりで、自分でも驚くほど食が進む進む。気がつけば、同じ味変をしているはずのアルパカマッスルの食べる量を、余裕で凌駕していたヴァーリャ。しかし……これで終わりではない!
「そして最後は……ガリバタ醤油! カリカリのフライドガーリックとバター、そして醤油のハーモニー……!」
『ギャアアアアアアアア!!!』
ギャアアアアアアアア!!! 飯テロが過ぎますヴァーリャさん! どうか……どうかお手柔らかに……! アルパカマッスルまでまだ攻撃されてないのにダメージ受けてます!
「これは米が欲しくなるな! ライス追加で!」
朗らかに言いつつナイフを持った手を上げると、どこからともなく現れる、白いお皿に乗ったほかほかのライス。トドメ刺しに来たかな?
『ぐっ……くうっ……ガリバタ醤油にライスは……美味い……』
「だろう! よーし、肉をいっぱい食べて、力満タン!」
今こそ好機。ガリバタ醤油で味付けをしたヒレステーキをライスと共に平らげたヴァーリャはテーブルを軽々と飛び越え、勝手に感動に打ち震えているアルパカマッスル目がけ、駆ける。そして――!
「【亡き花嫁の嘆き(ゴーリェ・ルサールカ)】……!!」
『うごおぉっ!!!!!』
ヴァーリャの白い編み上げブーツの靴裏に、氷のブレードが精製される。その足で、アルパカマッスルを思いっきり――蹴り上げた! スカートの中は見えません! お約束です!
ズシイィィ……ン。
強烈な蹴りの直撃を喰らい、音を立てて倒れ込むアルパカマッスル。
ヴァーリャさんどうします? まだお食べになるなら観客席兼テーブルご用意できますよ!
大成功
🔵🔵🔵
我妻・淵
食っていい肉がある。しかも無限に。遠慮する必要もない。
それなら言葉はいらないな。
…多く食えば良いなら、逆に敵の食う量減らすのもアリか?
あっちのテーブルに行って、卓上の肉を端から食いまくる。
伸ばされた食器は食器でガードし、次の一口を邪魔しまくる。両手が塞がったら鉄板に顔近付けて噛み付いて拾い上げてでも食ってやる。
焼肉は戦いだ、盗られないと思ってる奴が悪い。
挑発や抗議には耳を貸さず、ただ目の前の肉だけを見ながら食い続ける。
旨いかどうかは気にしない。というか肉なら無条件で旨い。
腹が減ってるかどうかも構わない。腹が裂けたって肉なら食う。
人が食ってる肉って、なんでこんなに美味そうに見えるんだろうな。
●しずかさんがくらう
『ば、馬鹿な……無限に愛しのヒレステーキを食べ続けることで事実上の無敵を誇れるはずだった、この……私が……』
フタを開けてみれば無敵どころか文字通りの踏んだり蹴ったりな目に遭わされるハメに陥ってしまったアルパカマッスルは、それでも最後の力を振り絞り、震える足でゆっくりとテーブルの前に戻る。
そんなアルパカマッスルを待ち受けていたのは、既に紙エプロンを装着し準備万端の我妻・淵(サイレンサー・f15807)であった。
(「食っていい肉がある。しかも無限に。遠慮する必要もない。……それなら言葉はいらないな」)
そう思いながら、淵は眼光鋭くテーブル越しに向かい合うアルパカマッスルへ向けて無言でナイフを握った手をスッ……と突き出す。それはまるで、宣戦布告のようで。
『ふ、ふふ、良かろう……! 黙って肉を食おうではないか、どちらかが倒れ伏すまで!』
アッこれ実質ラストバトルの予感がする。アルパカマッスルが覚悟完了しすぎてる。淵の方に向けて同じくナイフを突き付け返し、互いがそれを引っ込めヒレステーキに切れ目を入れ始めたのは、ほぼ同時であった。――フードファイト最終章の幕開けだ!
(「……多く食えば良いなら、逆に敵の食う量減らすのもアリか?」)
互いに一歩も譲らぬスピードでガツガツとヒレステーキを喰らいつつ、淵はふと思い立つ。い、いけません、それは……!
『(もっしゃもっしゃ)中々やるではない、か……!? ま、待て、お前は何故こちらに近付いてくるのだ! まさか……!?』
フォークとナイフを手にしたまま、自身に割り当てられた立食式テーブルをおもむろに離れズンズンとアルパカマッスルのテーブル目がけて歩を進めてくる淵の姿に、ついぞ先程の出来事である「自分の肉を奪われる」恐怖体験を思い出してしまったのだ。
「……ああ、その「まさか」だ」
遂に口を開いた淵の声音の凄絶さたるや、肉体のみならず精神もそれなりのタフネスさを誇るはずのアルパカマッスルが一瞬怯むほどであった。
――そして、その一瞬が致命的な隙となる。
『なっ、何をする! 貴様……!』
グサッ。一枚の肉をあらかじめ全部切り分けてから食べる派のアルパカマッスルがご丁寧に一口分に切ってくれていたヒレステーキの一片に無造作に手にしたフォークを突き刺すと、すごい勢いで咀嚼する淵。ああ……また一人、人の肉を横取り40万する派閥の猟兵さんが来てしまった……!
『な……なんのっ!!』
「(もぐもぐ)食わせねえよ」
こうなってしまっては、アルパカマッスルが取れる手立ては「食われる前に食う」より他にない。次の肉片こそは自分がとフォークを伸ばしたその瞬間、ものすごい反応速度で淵が己のナイフで華麗にガードする。キィンと響く金属音。その間にももう片方の手に握られたフォークでさらにもう一片食らうことも忘れない。控えめに言って凄い。
しかし流石に一片を口に運んでいる間は両手がふさがり、アルパカマッスルの妨害をすることが叶わない。この調子で行くと、淵とアルパカマッスルが交互に肉を食べる形となり、淵の狙いである「相手の食べる量を減らす」作戦が遂行できない。
ならばどうするか――? 答えは、すぐに出た。
「食わせねえ、つってんだろ……!」
『何ぃ……!?』
今度はアルパカマッスルが一瞬の隙を突いて少しでも多くの肉を食らおうとフォークを突き出すも、それよりさらに速く淵が熱々の鉄板に顔を近づけて、直接ヒレステーキに食らいついたのだ! 大丈夫!? ヒレステーキとはいえ熱い油とかそれなりに撥ねてますよ!? それからお洋服を守るための紙エプロンなんですけど本当に大丈夫!?
「(むぐむぐ)焼肉は戦いだ、盗られないと思ってる奴が悪い」
『お、お前……っ! 焼肉で「人が育てた肉を食う」輩か……! 恥を知れっ!!』
しかしそんなアルパカマッスルの、一応まっとうな抗議もお構いなし。淵はただ目の前の(アルパカマッスルの)肉だけを見ながら食い続ける。巧みな食器さばきでアルパカマッスルとの攻防を繰り広げながら……!
「(もぐもぐ)人が食ってる肉って、なんでこんなに美味そうに見えるんだろうな」
『ちくしょおおおおおおお!!!!!』
ならば別の皿の肉を、とアルパカマッスルが手を伸ばせば、すかさず淵がありとあらゆる手段で横取りしていく。ガチのマジでヒレステーキを食べる機会が全く訪れず、アルパカマッスルが慟哭する。
人の金で食う肉は美味いと申しますが、今回金銭が発生しているかどうかはともかくとして、味的にはいかがですか淵さん?
(「旨いかどうかは気にしない、というか肉なら無条件で旨い」)
ド直球ストレートな感想ありがとうございます! 前日の夜からお食事抜いてきた猟兵さんもいましたが、そこは淵さん全くお構いなし。腹が裂けても肉なら食う所存。
『くっ……ぐうぅ……っ』
自分は食うが相手には食わせない。その究極の手段がこの強奪方式である。いかなる誹りをも恐れぬ覚悟こそ必要だが、戦場(いくさば)においては卑怯も何もない。遂にアルパカマッスルが食器を取り落としてその場に膝をつく。おおっとこれは肉欠乏症か!?
「悪いな」
手が完全に塞がっているので、足で申し訳程度にひと蹴り入れる淵。しかし、それだけでもう充分だった。アルパカマッスルの身体は地響きを立ててうつ伏せに倒れ――そのまま、今度こそ、動かなくなった。
――あっ、ボスがやっつけられたのでもう少ししたらお肉食べ放題、終了です!
大成功
🔵🔵🔵