バトルオブフラワーズ④~野菜の山
●
『ザ・フードテージ』の一角、そこに極彩色の山があった。複数だ。
山をよく見てみれば、一つ一つの小さな彩りが集まり、集合して積み重なっていることが分かる。
「――美味しいわ~。美味しいわ~」
山と山の間から、女の声が聞こえた。
「これだけ沢山あったら猟兵なんてイチコロよね~。お姉さん負けないわ~」
声の持ち主は、オブリビオン、“牝山羊怪人マリアディジー”だ。
「よいっしょ……」
彼女は山の中に両手を突っ込み、引き抜く。両手の間にあるのは、やはり彩りだ。
彩りは細長いものもあれば、広がりを持ったもの、球状や楕円状、薄いものや厚いもの、様々だった。
「~~♪ いただきまーす……。はむっ……。もぐもぐ……」
マリアディジーは両手に顔を近づけ、咀嚼していった。
●
猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、戦争ですわっ」
ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界は、キマイラフューチャー。六つある『ザ・ステージ』の全てを攻略しないと敵幹部への道が閉ざされたままですわ……」
苦々しく言葉を吐き出した自分に気付いたのか、はっとし、表情を硬くする。
「猟兵の皆さんには、ステージの一つ『ザ・フードステージ』に向かってもらいたいんですの」
身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「現場の現状を説明しますわ。『ザ・フードステージ』にいるのは、“牝山羊怪人マリアディジー”。このステージでは、特殊なルールが設定されていますの」
それはなにか。
「『オオグイフードバトル』……。これが特殊ルールの名ですわ。たとえ敵を倒しても、敗北条件を満たすと謎の力で追い出され、強制敗北になってしまいますの」
フリップを用意しながら、フォルティナは説明を続ける。
「マリアディジーの周りには、『大量の料理』が準備されていますの。
マリアディジーは、その料理を食べ続ける事で、圧倒的な戦闘力を発揮しており、通常の戦闘方法では猟兵に勝ち目はありませんわ……」
しかし。
「オブリビオン以上の大食いで料理を食べる事ができたならば、立場は逆転! 強力なユーベルコードの攻撃で、オブリビオンを攻撃する事が出来ますの!」
食べた量が同じくらいなら、互角の戦闘になりますわねー。と付け加えながら、
「つまり、大食い勝負で勝ってから、攻撃! この流れを繰り返すわけですわ!」
「用意された大量の料理は、オブリビオンが最も有利に大食いできる食材である為、勝利する為には、『その料理をたくさん食べられる理由』『大食いにかける熱意』等が必要となりますわ。
“この料理の大食いならば、負けないぞ……!”という猟兵の方が有力ですわね」
「料理に手を加える事も可能なので、いわゆる“味変”をしながら食べる事で沢山食べようとしたり、チャレンジする他の人の為にその料理でアレンジ料理を作成する……。といった連携なども有効になりますわ」
そして、と言葉は続く。
「一番重要な点である、料理。それがなんなのかと言うと……」
フォルティナは指を立て、告げる。
「――サラダですわ!」
眉を立てた表情で猟兵を見回す。
「キャベツやレタスや白菜やアスパラガスやカボチャやアボガドやリンゴやミカン……。そういった野菜や果物を山のように集めて、山羊怪人であるマリアディジーは、その肩書きの通りまるで山羊のようにモシャモシャモシャモシャ……と食べまくってますわ!」
指を全て開き、光を生み出す。
オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、皆さんをテレポートしますわ」
猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「そこから先は山のように積み重なったサラダ……。つまり、何があってもおかしくない現場、とそう言えますわ」
全員の顔を見渡すと、フォルティナは眉を立て、口角を上げた。
「皆さんならできますの! 私はそう信じていますわー!」
シミレ
シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
今OPで9作目です。キマイラフューチャーは初めてです。
不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。
●目的
オブリビオン、『牝山羊怪人マリアディジー』とサラダの大食いバトルに勝利していただき、それによって高まった攻撃力で攻撃、撃破。といった流れです。
●説明
大食い勝負に勝てないと、マリアディジーへの攻撃は威力や命中など諸々が弱体化して難しいです。
●他
皆さんの活発な相談やプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください)
第1章 ボス戦
『牝山羊怪人マリアディジー』
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POW : 救済の女神は惨劇へと現れる(デウスエクスマキナ)
【自身の生命力】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【より強く速く相手に浸食する活性状態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : お姉さん特製・ふしぎウイルス
【体に力が入らなくなる、肉体へのウイルス】【頭がボーっとなる、精神へのウイルス】【お姉さんにメロメロになる魅了ウイルス】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 大丈夫?疲れてなぁい?私の『ここ』においで…?
小さな【子も軽く包み込む圧倒的な母性の塊】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【優しさが詰まった極上の居心地】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠マックス・アーキボルト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
才堂・紅葉
◎
「困りましたね。こう言うのは事務所的にNGなんですが」
適当な事を告げてサラダを頂きますね。
ナイフやフォーク等を用いて優雅に上品に、でも見る見る内にお皿が空にします。
【礼儀作法、大食い、気合】
「ご馳走様でした」
にこりと笑んで優雅に一礼。
攻撃の機会があれば、後ろ手に髪の毛を解いて【真の姿】。
優しく彼女の手を取って骨指術で自由を奪い、重力制御で空へ投げ飛ばし狙い。
【優しさ、手をつなぐ、マヒ攻撃、吹き飛ばし、属性攻撃】
空中で捉えた相手の両手を絞り上げ、胴と首を足で締め上げる関節技のUCを狙いますね。
「お稽古(プロレス)明けで、お腹も空いてたので有り難かったですね。次は動物性蛋白質もお願いします」
●
紅葉は山羊怪人マリアディジーと相対していた。
「あら~? お嬢さんが私の相手~?」
マリアディジーが身体を向けるのは積み上がった野菜の山だ。こちらには顔だけを向け、言葉を送って来る。
「お姉さん、山羊怪人よ~? サラダと言えども、貴女みたいな線の細いお嬢さんが大食い勝負で私に勝てるかしら~?」
「ええ、困りました。私、こう言うのは事務所的にNGなんですが」
「……そう言いながら食べる準備をするのは何故かしら~?」
敵の質問には答えずに用意された皿を持ち、山からサラダをよそう。
「とりあえずはこんなものでしょうか」
皿の上に適当な量を乗せて、皿と同じく用意されていたテーブルにつく。両手に持つのはナイフとフォークだ。
「あらあら~。たったそれだけ~? そんなんじゃ――」
勝負にならない、後に続く言葉はそんなところだろうか。
しかしその言葉は、こちらの手元を見たことによって失われた。
「――美味しいですね。おかわりします」
先ほどまでサラダが乗っていた皿を前にしてそう告げれば、敵が片眉を上げる。
「……どういうトリックかしら~?」
「トリックも何もありませんよ。ただ、食べた。それだけです」
今度は皿ではなくボウルを複数持って野菜の山に向かい、言う。
「そちらも、食べ始めた方がいいのでは? ――勝負になりませんよ」
「……言うじゃな~い……」
敵が野菜の山に両手を突っ込んだことによって、勝負が本格的にスタートした。
●
食べる。紅葉が行うのはただそれだけだ。
美味しいですね……。
勝負が開始してからしばらく経つが、全ての野菜がいつまでたっても瑞々しく、温度もぬるくなっていない。
キマイラフューチャーはなんでもありと、そういうことか。
「――これならいくらでも食べられますね」
だから行った。
ダイコンを、アスパラガスを、レンコンを、タマネギを。何もかもを食べていく。
「――!」
テーブルを挟んだ向こう、着席しているマリアディジーが、こちらの食事に呼応するようにスピードを上げた。
しかし、
「おや? 最初に比べれば随分と遅くなっているようですが?」
「な、なんで貴女は速度が変わってないのよ……!?」
速度だ。
ナイフとフォークで食べてるこちらに対し、手掴みのワイルドスタイルな向こうは最初こそペースが速かったが、今はこちらよりも遅い。
「食事はゆっくり楽しむものですよ」
対するこちらは速度が一定だ。よそい、切り分け、口に運び、咀嚼、嚥下。この流れを崩さない。
……地面に直置きかと思ったらちゃんとお皿の上に有ったんですね。
片づけた野菜の山の下、その基部にあった皿を見てそんな感想を思っていたら、
「……ギ……」
「ギ?」
「ギ、ギブアップよ~……」
敵が机に突っ伏した。
「――――」
瞬間、気付く。
力が……。
身体全体に力が漲っている。ステージがこちらを勝者に選んだということだ。
「――ご馳走様でした」
にこやかに一礼し、髪の毛の結いを解いた。
「……あ」
一瞬の内に真の姿となったこちらを見た敵が、声を漏らす。
そんな彼女の手を優しく取って、
「い、嫌な予感がするわっ。嫌な予感がするわっ。 ……あ、あれ? 抜け出せない? 手を取られただけなのに……」
骨指術だ。
そして、握った手をそのまま、
「――――」
空へ投げ飛ばした。
「あら~~!?」
合わせてこちらも跳躍し、行く。
空中で相手の両手を絞り上げ、胴と首を脚で締めあげる。
そこまで完了すると、上昇がピークに達し、落下が始まる。
「お稽古明けで、お腹も空いてたので有り難かったですね。――次は動物性蛋白質もお願いします」
超重力が乗った一撃が、ステージに響いた。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
せんせー、【大食い】の技能があるとはいえ
食べても食べてもおなかが減るし
何食べてもうまいです
どうなったんでしょうか、俺の体・・・
え、満腹中枢を麻痺させて味覚を調整
さらに代謝速度も大幅に引き上げた?
よかった、別に問題なかったんですね!
それにしても何から何までありがとうございます・・・。
うめぇ
うめぇ
手が止まらねぇ
幸せすぎる
この幸せを共有したい・・・
そうだ!【蝗害】発動!強襲兵の皆さーん!食糧を見つけました!
お召し上がりくださーい!
ん?おい!そこのアンタ!何俺たちの飯食ってんだ!
強襲兵の皆さーん!我々の食糧を奪う不届き者です!
一緒に叩き出しましょう!
この食糧は我々の者だ!さっさと出ていけ!【衝撃波】!
●
『ザ・ステージ』、そこに一人の少年がいる。
緑の瞳を輝かせながら、一心不乱に周囲の野菜を食べている黒髪の少年。
兵庫だ。
しばらくすると食事の手を止め、怪訝な表情をした。
「せんせー……」
自分の脳。そこに埋め込まれた存在である、“教導虫”に対して呼びかける。
「大食いの技能が俺にあるとはいえ、食べても食べてもお腹が減るんですけど……」
それに。
「何食べてもうまいんです。――どうなったんでしょうか、俺の身体……」
しばらく動くのを止め、脳内の声に耳を傾ける。
「……え? 満腹中枢を麻痺させて味覚を調整して、さらに代謝速度も大幅に引き上げた……?」
それはつまりどういうことか。
「よかった……! 別に問題なかったんですね! 俺の身体! それにしても、何から何までありがとうございます……」
何度も頷きながら“教導虫”に礼を言い、
「頂きます」
さらに食べていった。
●
マリアディジーは野菜の山の影、そこで野菜を食べながらその光景を眺めていた。
ど、どうなってるのよあの子……!?
視線の先。そこにいる黒髪の少年によって、驚愕する現象が起きているからだ。
「一体どこにあれだけの野菜を……!?」
少年が、野菜の山を次々に食べ崩していってるのだ。
速度はそこまで早くはないが、ともあれ量が異常だ。少年の背丈は自分より低く小柄だが、先ほどから胃の容量をはるかに超える量を何度も摂取している。
そうして彼を眺めていたら、気付いた。
陽炎……?
少年の身体の周囲の景色が、揺らめいているのだ。
見間違いかと、目を擦ってからもう一度見た時、
「――うめぇ」
声が聞こえた。咀嚼の合間を縫ってだ。
「――うめぇ」
思わず、といった雰囲気で漏れる声は、少年の実直さを表しているのだろうか。
「――うめぇ。手が止まらねぇ」
言葉通り、野菜も果実も何もかもを食べる動作は、絶え間無い。
「――幸せすぎる」
そ、そこまで……!? というか、このままじゃ負けちゃうわ……!
驚愕しながら、こちらも慌てた動きで食事を再開する。
「――この幸せを共有したい……」
すると、少年の動きが一瞬止まった。
……?
食事の傍ら、横目で見ていると、突然の動きで少年が身体を跳ね上げた。
「――そうだ! 強襲兵の皆さーん! 食糧を見つけました! お召し上がりくださーい!」
直後、視界が黒で埋め尽くされた。
「――――」
一瞬、それが何か分からなかった。
黒く、小さく、振動させる音を持った存在が多数という数で『ステージ』に出現したのだ。
それらは尽くが『ステージ』の宙を飛び回り、野菜の山に取りつき、
食べているの……!?
山肌に穴を掘削していった。
それは今、自分が食べている山にも取りつき、向こう側から顔面の高さでトンネルを開通してきた。
「――――」
目が合ったと、そう感じた。
ここまで接近すれば分かる。相手は細長く、翅と六つの脚を有しており、瞳は複数だ。
「きゃァ――――――――――!! 虫ィ――――――――――!!」
叫び、両手に握った野菜を放り出して逃げる。
「ん……? おい! そこのアンタ! 何俺たちの飯食ってんだ!」
背後から少年の声が聞こえてきた。
「ち、違……! これ、元々私いやァ――――――――!! こっち来ないでぇ――――――!!」
「強襲兵の皆さーん! 我々の食糧を奪う不届き者です! 一緒に叩き出しましょう!」
直後、背後から、力が生じ、集合する気配がする。
「この食糧は我々の者だ! さっさと出ていけ……! ――波ァッ!」
羽音を掻き消す衝撃音が『ステージ』に響いた。
大成功
🔵🔵🔵
ポク・ョゥョゥ
野菜も大好きー
いっぱい食べるよー
お手手合わせてー、いただきまーす
なんでも食べるぉー
キャベツパリパリー塩昆布と一緒に止まらないのー
キュウリは塩もみしてごま油とお塩と七味でやっぱり止まらないぉー
お口直しにぽくっきー食べるのー
次は新玉ねぎ食べるぉー
しゃきしゃきおいしー、アボカドと一緒にするともっとおいしーのー
茹でブロッコリーも一緒にしてもいいなーマヨネーズくだしゃーい
サラダ菜で巻いて食べるのー
お口直しにぽくっきーもう一つー
気付けばぽくが増えてるよー
ふっふー、ぽく達でおいしーサラダめっぱい食べるよー
一斉にもぎゅー
大食いぱわーで山羊のおねーさん攻撃だー
のびーるお腕といっぱいぽくのひゃくれつぽくぱーんちー
●
彩りの山の前でポクゥは両手を振り上げていた。
「わぁーい。野菜ー。野菜も大好きー」
「あらあら~。可愛いらしい猟兵ね~」
飛び跳ねる姿を眺めるのは、マリアディジーだ。
自分はそちらに向き直り、
「――あがめよー」
「あらあら~。抜き打ちの挨拶からして偉そうというか、人の世話になるのが慣れてる感じの子ね~」
お姉さん、手のかかる子は大好きよ~。という言葉は、でも、と続く。
「これ、大食い勝負よ~? 大丈夫~? ……」
マリアディジーはそこで一瞬止まり、顎に指先を当てながら、んー、と首を傾げ、
「……僕? それとも、お嬢ちゃん?」
「ぽくー」
「あら~。予想外というか予想のお隣みたいな答えが返って来たわ~」
「あがめよー」
向こうが、微笑みながら万歳三唱を返してきた。こちらも頷き、
「いっぱい食べるよー。お手手合わせてー」
向こうも手を合わせた。
「いただきまーす」
「いただきま~す」
食べ始めた。
●
ポクゥは食べた。野菜の山、そこから様々なものをだ。
何でも食べるぉー……。
山の中からキャベツを抜き取り、手で千切りながら、持ってきていた塩昆布と合わせる。
「ん~。しょっぱさでキャベツの甘さが引き立つのー。パリパリー。止まらないのー」
次に取り出すのはキュウリだ。適度な大きさに折って、やはり持ってきていたポリ袋に仕舞っていく。
その中に振りかけていくのは調味料だ。
「お塩とーごま油とー」
そして、
「じゃじゃーん。七味ー。んー。ごまの香りと七味のピリ辛でやっぱり止まらないぉー」
そうして、次に取り出すのは食べ物だが、野菜ではない。
「お口直しにぽくっきー食べるのー」
自分の顔を象ったクッキーだ。塩気と瑞々しさが広がった口内にクッキーを入れて味わえば、甘味とバターが広がり、次の野菜へと自然と手が伸びる。
「次は新たまねぎ食べるぉー。しゃきしゃきおいしー。」
しかし、手は更なる野菜を手に取った。
「アボカドと一緒にするともっとおいしーのー。茹でブロッコリーも一緒にしてもいいなー。マヨネーズくだしゃーい」
そう言って出てきたマヨネーズをかけて、覆う様に被せる野菜はまた新たなものだ。
「サラダ菜で巻いて食べるのー」
それを食べて、食べて、食べて、お口直しにぽくっきーもう一つー。
そうしていけば、変化するものがある。
「……あら~?」
それに気付いたマリアディジーが声を上げた。
「どうしてポクちゃんが増えてるの~?」
マリアディジーの言葉通りのことが起こっているのだ。
「ぽくが増えたよー」
「ふっふー」
「ぽく達でおいしーサラダめっぱい食べるよー」
「食べるよー」
だから、一斉にもぎゅーと行った。
野菜の山が、怒涛といえる勢いでその体積を減らしていく。
「いや~ん。手のかかる子がいっぱいになってお姉さん嬉しいような、不利なような~……、ってあら?」
「けぷ~っ」
食べ終わり、皆でマリアディジーの前に立った。
「ぽく達の勝ちだね~。――それじゃあ、攻撃するねー」
ブラックタールとしての特性である伸縮性によって、腕を振りかぶれば伸び、分裂したことによってそれは複数だ。
「あ、あら~!?」
「いっぱいのぽくのひゃくれつぽくぱーんちー」
宣言通りの攻撃が、マリアディジーを襲った。
大成功
🔵🔵🔵
ルー・カンガ
アーネスト(f11928)と共に行動
「今回は、野菜を食べるステージなんだな。通りで、俺を呼んだんだな。まぁ、ここは、ひたすら食べるか」
野菜がこんもりしているので、葉野菜をメインに狙って食べる。
「まぁ、野菜が美味しく感じられるんだな。おれが草食獣なんだからなんだろうけど。まぁ、あのオブリビオンもヤギだから草食なんだろうけど」
妨害は他人に任せて、ひたすら食欲に夢中になる。
「早いなぁ。こっちも食べまくるぜ」
敵の敗北が確定したら、ジャンプして接近、掴んだらカンガルーキックで何回も蹴る。
アーネスト・シートン
ルー(f16514)と共に行動
「それにしても、野菜の大食いですか。わたくし、あまり得意ではないんですけどね。まぁ、でも、対策はさせていただきますよ。」
フードプロセッサーで野菜をミキサーにかけて飲む。
「ルー、ジュースにしたほうが早いのですよ。飲むだけですから」
野生馬(UC「ライディング・ムスタング」で呼び出す)を呼びだして、敵の食料を食らっていく「あの山羊の餌を優先して食べてくださいね」
灰色狼を召喚して敵の妨害を徹底的にやらせる「いいですか、あなたたちは、あの山羊を襲撃したりおちょくったりしてださい。彼女の食事を邪魔してください」
よし、これで何とかですね。
●
『ザ・フードステージ』、そこに並び立つ二つの人影があった。
長身の姿と、それよりもさらに高い影の二人組は、アーネストとルーだ。
「それにしても、野菜の大食いですか……」
アーネストは顎に手を当てながら困ったような顔をする
「わたくし、あまり得意ではないんですけどね……」
まぁでも、と言葉を続け、
「対策はさせていただきますよ。――ねぇ? ルー」
そう言って振り仰ぐのは隣、ルーだ。
「今回は、野菜を食べるステージなんだな……。通りで、俺を呼んだんだな。まぁ、ここは、ひたすら食べるか」
すると、影が加わった。前からだ。その位置から来るのはオブリビオン、マリアディジーだ。
「あらあら~。今回は団体さん~?」
んー……。と、首を傾げながら窺うようにこちらを見てくる。
「カンガルーのお兄さんはともかく、あなたの方はどうかしら~? 野菜の大食い勝負よ~? 私に勝てるかしら~? だって、――」
私は山羊怪人なのよ、という言葉は続かなかった。
「――――」
影がさらに増えたからだ。
しかしそれは人ではなく、獣の姿だった。
「う、馬……?」
「頼みましたよ」
こちらが馬の背を叩くと、
「――!」
馬は一鳴きの後、野菜の山へ駆けて行った。
「あの山羊の餌を優先して食べてくださいねー」
「ちょ、ちょ、そっちは私の分よ~! こらっ、待ちなさ――」
「――おっと、行かせませんよ」
言葉の後、出てくるのはやはり獣の影だが、しかし複数だ。
「――!」
吠声を伴いながら駆けてくる姿は馬より低く、しかし獰猛だ。
「きゃ、キャァ――――!! お、狼よ――!! いやー! 食べられるー!」
「いいですか、あなたたちは、あの山羊を襲撃したりおちょくったりしてださい。彼女の食事を邪魔してください」
14頭の狼たちが、マリアディジーを吼えながら追いかけて行った。
それが勝負開始の合図だった。
●
ルーは野菜の山に取りついていた。
野菜を、食べているのだ。ひたすらと、そういう勢いでだ。
「まぁ、野菜が美味しく感じられるんだな。おれが草食獣なんだからなんだろうけど。
でもまあ、と言葉をこぼしながら見る先は、敵だ。
「あのオブリビオンもヤギだから草食なんだろうけど」
しかし食べられてない。アーネストが妨害しているからだ。
「キャア――――!! こ、来ないで――! 怖い――! しっ! しっ!」
マリアディジーが『ザ・ステージ』のあちこちを走りまわっている。
「速いなぁ……」
それを眺めながらこちらは食べる。ひたすらと、そういう勢いでだ。
「どうしてこうなるのよー! おなか減ったわー!」
向こうは走りながら隙を見て山から野菜を抜き取って、走り食いしてるのは見えるが、しかしそれだけだ。
「――こっちは食べまくるぜ」
主に狙うのは葉物野菜だ。レタス、キャベツ、ミズナ、ハクサイ。そういったものを手に取り、噛む。
快音。周囲に軽やかな咀嚼の音が響き渡る。
「うめえ……」
「――ルー」
隣、アーネストが呼びかけて来た。
「ん? どうした?」
見れば、アーネストの近くの机にフードミキサーがある。
「ルー、ジュースにしたほうが早いのですよ。飲むだけですから」
そう言って、アーネストがミキサーの中に次々と野菜を放り込んでいく。
リンゴ、バナナ、オレンジといった果物系が中心だ。切り刻み、その形が崩れ、液状となった野菜をグラスに注ぎ、飲んだ。
「うん。美味しい」
アーネストの視線の先もマリアディジーだ。
「大変そうですねー。……よし、これで何とかですね」
アーネストが馬用のニンジンを集めながら、気の無い感想を言ったところ、来た。
「終わり、か」
「ですね」
時間が来たのだ。
「ぜぇ……。ぜぇ……。そ、そんな~……。わ、私、菜っぱ、三枚くらい、しか……」
狼から逃げ回っていたマリアディジーが息も絶え絶えにその場に膝をついた。
狼が吠えたり、鼻先で突いたりしてマリアディジーをおちょくったりしている。
「んじゃ、行って来る」
アーネストに言い残し、こちらは跳躍。一っ飛びで一気にマリアディジーの元まで、距離を詰める。
「や、やば……。に、逃げな……、きゃあ! 狼! って、いやー! 捕まったわー!」
「腹ペコなんだろ」
襟首を掴み、言う。
姿勢は、後ろ足に重心を乗せた構えだ。
「――じゃあ、これでも“食らって”おけよ」
直後、後ろ足を振り上げ、蹴った。一度ではなく、何度もだ
「キャ――――!!」
断末魔がステージの全域に広がり、しかしそれだけだ。
マリアディジーが消えたのだ。
ここに、『ザ・フードステージ』の勝利が実現したのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵