バトルオブフラワーズ④〜すいーつぱらだいす~
●果樹の園
「あぁ~坊ちゃま流石です素敵ですとっても美味しそうな実が採れましたねぇ~」
「坊ちゃまのおかげでずっと早く集まりそうですよ」
黒のメイド服に身を包んだ女性と、同じ色の執事服を着込んだ男性とが、可愛らしい銀髪の少年から熟れた果実を受け取ってでれでれに褒めちぎる。
それにはにかんだ少年は、はっとしたようにきりりと表情を引き締めて、メイドと執事を見上げた。
「ぼ、僕も頑張るから、おまえたちもしっかり務めるんだよっ」
「勿論ですぅ~!」
「我々にお任せください」
それは真っ二つに割れたキマイラフューチャーに構築されたステージの一つ。
季節を問わずに熟した果実が実る魅惑の果樹園で、手当たり次第に収穫しているオブリビオン達のやり取りだった。
●スイーツテロ
キマイラフューチャーが真っ二つに割れた。それはシステムフラワーへ繋がる道。
その中枢へ至る前に、『ザ・ステージ』と呼ばれる場所が存在していた。
「その全てをオブリビオンから奪い返さねばシステムフラワーズへは至れない。というわけで前哨戦だ。オブリビオンに飯テロを仕掛けて伸して来て欲しい」
突飛な要求に質問が飛ぶ前に、まぁ聞きたまえよと制し、グリモア猟兵エンティ・シェア(欠片・f00526)は補足を始める。
予知で見えたステージは、『シュウカクフードバトル』という特殊なルールが適応されるステージだ。
これにより、収穫行動をしているオブリビオンはどんな攻撃も受け付けない状態になっている。
「この状態を解除するためには、収穫行動を止めさせなければいけない。そのために、彼らが集めた食材を使って美味しい料理を作るのが有効なんだ」
オブリビオン達が思わず「食べたい!」となるような料理を作って飯テロを仕掛けることで、敵を収穫から離れさせて倒してしまえということらしい。
収穫されているのが果物であること、オブリビオンが『お嬢様に仕える召使い』という立場であることを顧みるに、スイーツがオススメだとエンティは語る。
「まぁ最悪物凄く不味い料理でも、一口目を釣れさえすれば攻撃は通るけど、敵は一人ではない。あれは不味いものだと言う認識が広がれば他の敵が釣れなくなるから気をつけたほうがいいだろうね」
それと、釣れるのは執事とメイドのみで、彼らが「坊ちゃま」と呼ぶ銀髪の少年は彼らの召喚した存在であるため、不出来な召使い達を嗜めはするものの、収穫行動を真面目に継続するようだ。
本体である執事なりメイドなりを倒せば消滅するようなので、そちらに構うよりは素直に召使い達を倒す事を考えた方が良いだろう。
「戦闘能力自体は取り立てて高くはないから、釣れさえすれば倒すのに苦労はしないだろうけど……勿論油断は禁物だ」
加えて、例えオブリビオンの大多数を倒したとしても、一定以上の食材を収穫されてしまうとこちらの負けとなってしまう。
敗北になるとステージから追い出されてしまうため、制圧はできない。
その点も気をつけて欲しいとメモをなぞって告げた後、さてそれではとエンティはキマイラフューチャーへの道を開く。
「武運を」
促す所作に、激励を添えて。
里音
戦争です。張り切ってまいりましょう。
ステージに実る果実は「果物屋さんに並んでそうなものならなんでもあり」です。
「植物学的に果物に分類されるがどちらかと言うと野菜では?」となるものは含みません。
季節感とか調理時間や器具類は気にしなくて大丈夫なので、里音にスイーツテロをかましてください。
他の猟兵が素晴らしい料理を作ってくれるから攻撃に専念します!
または他の猟兵がしっかり攻撃してくれるだろうから料理を作り続けます!
というプレイングも問題ありませんが、どちらかに偏った場合バランスを取った採用率になる可能性があります。
※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『フロガステリ家の召使い』
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POW : 「おかえりなさいませ!ご主人さ、あっ···」
【メイドがすっ転ぶと、怒った執事の頭部が羊】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 「おかえり、坊ちゃん。」「おかえりなさいませ!」
【可愛く声援を送ってくれる銀髪の少年】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 「フロガステリ嬢の御心のままに。」
【お盆の上】から【男はメイド服、女は執事服になるミートパイ】を放ち、【どうしてこうなったのかという疑問】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:灰ノ瀬のん
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
トレイシー・ノックス
【POW】
・料理
あたしはそんな凝った料理は好きじゃないし、シンプルに焼きリンゴでも作ろうかしらね。
芯をくり貫いて16等分したリンゴをフライパンの上に並べて、砂糖をかける。
その後フライパンを弱火でじっくりと熱し、焼き色がついたら並べたリンゴを一枚ずつひっくり返す。
リンゴの両面にしっかりと焼き色がついて砂糖も完全に溶けたら、リンゴを皿の上に綺麗に盛り付ける。
最後にフライパンに残った砂糖の溶けた果汁をカラメル状になるまで加熱して、盛り付けたリンゴにかけて完成よ。
・戦闘
【地形の利用】で、リンゴの木の下に敵を誘導。
落ちてきたリンゴに気をとられた瞬間、リンゴもろともに敵の頭を矢で撃ち抜く。
●シンプル・イズ・ベスト!
次々と積まれていく果実の山からリンゴを取り出し、トレイシー・ノックス(インドア狩人・f06024)はふむと思案する。
よく熟れて甘さを伺わせる綺麗な赤色。くるりと眺め回してから、うん、と一つ頷いた。
「シンプルに焼きリンゴでも作ろうかしらね」
凝った料理はそんなに好きでもないのだ。リンゴの芯をくり貫き、トントントン、と手際よくリズミカルな音を立てながら十六等分にカット。
中身も瑞々しく艶のある蜜色をしたリンゴは、フライパンに並べるだけでも十分見栄えした。
(生で食べてもいいくらいね)
これならきっと美味しい焼きリンゴが出来るだろうと確信しながら、トレイシーは砂糖をまぶし、弱火でじっくり加熱していく。
熱で砂糖が溶け始め、リンゴに焼き色が付き始める頃には、ふわり、甘い香りも漂い始めた。
「あら……あらあらぁ~?」
すん、と鼻を鳴らしたメイドが、ちらちらと調理場を振り返る。
自分達が収穫した食材を勝手に使われているというのに、そのことが気にならないほど、漂う香りに惹かれているようだった。
適度に焼き色の付いたリンゴは、裏返して両面にしっかりと色を付けて。
焼けたリンゴを皿に丁寧に盛り付ければ、ふわりと立ち上る湯気の下、溶けた砂糖と絡んで艶の増したリンゴが花のように並んだ。
香りも見た目も、そこに甘みが蓄積されているのがよく分かる一品へ、更に果汁と砂糖のカラメルをかければ、さぁ、完成だ。
「こ、これは、これは駄目です……とても美味しいやつですぅ~……」
もはや収穫そっちのけ。ふらふらと釣られたメイドは、そっと皿の傍らに添えてあったフォークを手にとって、ぱくり、一口。
「お、おいしい……!」
さすが坊ちゃまの収穫したリンゴ、なんて言葉が続くはずだったのかもしれない。
けれど、それより先にその姿が青い花弁となって散る。
メイドが居たその場所の背後。放たれた矢がリンゴを貫いて木に突き刺さっているのを見届けて、トレイシーは仕事を一つ終えたのを確信する。
「狩場を知ることで、狩人はその力をより効率的に発揮できるものよ」
目の届く範囲に落ちてきたリンゴより、トレイシーの作った焼きリンゴの方に気を取られていたことを、多分喜ぶべきなのだろうと思いながら。
成功
🔵🔵🔴
三ヶ月・眞砂
選ぶはオレンジ
俺はクレープシュゼットで勝負っす!
絞った果汁の爽やかな香り
バターと砂糖の溶ける匂い
果肉もふんだんに乗せて…っと
下手の横好きっすけど我ながら上出来っす
あ、このままでも美味いっすけど
実は更に仕掛けがあるんすよ
いや~初めて見た時は俺も吃驚したっす
まさに!目でも味わうスイーツなんすよ
お宅の坊ちゃんも喜ぶんじゃないかな~?
もったいぶって皮を剥き
コミュ力で気を引きなるべく多くおびき寄せて
いよいよ皮にリキュールを…
スティル、今っすよ!
【灯火星】で敵ごとフランベっす!
言い忘れてたっすけど
こちら仕上げの際、炎の飛び跳ねに要注意!
敵の攻撃はなるべく見切り
多少の痛みは覚悟の上っす
なにせ戦争っすからね!
●華やかなスイーツはいかが?
甘い香りはあちらこちらから。それは砂糖の溶ける香りであり、バターの焼ける匂いであり、果実そのものの芳香でもあり。
その中の一つが三ヶ月・眞砂(数無き星の其の中に・f14977)の作るスイーツだった。
薄く、それでいてふんわりと焼き上げたクレープ生地を丁寧に折りたたみ、バターと砂糖が溶けこんだオレンジソースの中にそっと浸せば、それだけでしっとりとクレープにソースが染みる。
「下手の横好きっすけど我ながら上出来っす」
鼻歌交じりに眞砂が作り上げるのは、クレープシュゼットと呼ばれる料理。
搾りたてのオレンジ果汁をバターと砂糖でとろりと煮詰め、クレープ生地を煮込んだ暖かなスイーツは、甘さの中に柑橘の爽やかな香りを漂わせる。
執事達も調理風景をチラチラと横目に見ているのを確かめて、眞砂は声を少しだけ張った。
「どこぞの国の王子様も絶賛したというこのスイーツ、女性は勿論、男性にも味わってもらいたものっすね~」
格式高い料理でもあることをさり気なくアピールしつつ、フライパンの中でとろりとろりと流れるソースを丁寧にクレープ生地にかけながら、眞砂は視線のあった執事にニコリと微笑みかける。
興味が傾いてきているのをそわそわした態度で確かめつつ、更に、もう一押し。
「果実もふんだんに盛り付けて……そろそろ完成っすかね~。あ、このままでも美味いっすけど、実は更に仕掛けがあるんすよ」
そう言って、眞砂は瓶を取り出すと、小さな手鍋に注ぐ。
それを火にかけながら、さっと新鮮なオレンジを手に取ると、くるくる、螺旋状に皮を向いていく。
「いや~初めて見た時は俺も吃驚したっす。まさに! 目でも味わうスイーツなんすよ」
蔓のように伸びた皮を見せながら、熱されて行く手鍋の中身をちらりと見る。
ふわ、と漂う香りは、リキュールだ。それに熱が加われば……やがて、火が上がる。
何をするか、もう分かっただろうと言いたげに執事を見て、さぁいよいよだと言う所で、ピタリと手を止める。
「そんな遠くからじゃ迫力が半減しちまうっすよ? 華やかなこの仕掛け、お宅の坊ちゃんも喜ぶんじゃないかな~?」
勿論、お嬢様も、とウインクして見せれば、それは執事として確かめねばなるまいと、ずずい、寄ってくる。
満足気に見やると、ご覧あれとばかりに、皮の垂れるオレンジへ、火のついたリキュールを――。
「スティル、今っすよ!」
声に応じるように、眞砂の槍の穂先に炎が灯る。
その炎は、近くで見ていた執事達を纏めて包み、焼き払った。
「言い忘れてたっすけど、こちら仕上げの際、炎の飛び跳ねに要注意!」
綺麗に火の灯ったオレンジはそっと傍らに置いて、炎に包まれた執事たちへ追加攻撃を加えていけば、さして戦闘力に長けていない執事達は不意打ちの影響もあってか、あっけなくブルースターの花となって散っていく。
戦争だから、多少の傷みは覚悟の上、とは言え、折角作った料理ひっくり返される前に片がついたのは、良かったのだろう。
「うん、我ながら上出来っす」
フランベされたリキュールが加わり、更に香り高く仕上がったオレンジソースをぺろりと味見して、眞砂は満足げに笑った。
成功
🔵🔵🔴
レド・ダークライト
【アレンジ、他の方との絡み歓迎】
···なんというか、召使いはともかく、昔の自分をこんな風に見る日が来るとは、な。
偶然か、グリモア猟兵も前に会ったことがあるし、見たことあるやつだらけだな。
まあいい、コンコンコンのためにも感傷に浸っている暇は無い。
まずは「料理」だ。
最近UDCアースで時期らしいマンゴーでも使ってガレットを作ろう。
薄く焼いた生地に切ったマンゴーを盛り付けて、仕上げにマンゴーソースっと···マンゴーづくしだな。アイスも乗せるか。
さあ、食え。なんなら真の姿の様相で差し出せば大人しく食べてくれるだろうか。
隙ができたら【双撃の血涙】による「2回攻撃」で確実にトドメを刺す。
···よくやった。
●季節の彩を
黒服の執事やメイド達に混ざって、一生懸命果実の収穫をする銀糸の少年を、レド・ダークライト(紅き閃光・f01284)はやや複雑な心地で見つめていた。
(召使いはともかく、昔の自分をこんな風に見る日が来るとは、な)
それそのものではないことは百も承知だが、面影のようなものを重ねてしまうと、不思議と、そこにかつての自分がいるように感じてしまう。
見守ってくれる大人たちに、ああやってはにかんだことも、そういえば、あったのだ。
この仕事を予知したグリモア猟兵も、初対面ではない。全体的に、なんだか『懐かしさ』を覚えてしまう。
とは言え、今のキマイラフューチャーを成立させている『コンコンコン』のためにも、感傷に浸っている暇はない。
レドは積まれた果実を見定め、その中からマンゴーを取り出した。
手当たり次第というのがぴったりな収穫のせいで季節感もばらばらな山になっているが、四季のある世界であればこれが今の季節の品らしいし。
選ぶ料理はガレットだ。
そば粉で作った生地をフライパンで薄く焼けば、辺りに香ばしい香りが広がる。
ふんわりと焼き上がった生地に、カットしたマンゴーをふんだんに盛り付けて、彩りにマンゴーソースをかけていく。
「マンゴーづくしだな。アイスも乗せるか」
敷き詰めたマンゴーの上に、バニラアイスを追加して。
ミントの葉っぱなんかも飾ってみたりすれば、色味も完璧だ。
気がつけばレドの調理風景をじっくり眺めているメイドがいた。そんなメイドに、銀糸の少年がぷりぷりと腹を立てたような声を掛ける。
「僕が頑張ってるのに、なんでおまえは休んでるんだっ」
「でもぉ~、とっても美味しそうなんですぅ~」
少年とスイーツとを交互に見ながら情けない声を出すメイド。その前に、ことり、完成した皿が置かれた。
「さあ、食え」
高慢な台詞は、かつて貴族の跡取りとして育った環境ゆえに。
渋るようなら、あの少年が成長したような銀糸の青年――レドの真の姿を晒してやろうかと思ったが、このメイド、チョロかった。
「いただきますぅ~」
先程嗜められたこともすっかり忘れて美味しそうに頬張るメイドへ、レドは武器を振りかぶる。
「我が双撃を持って散るがいい! どけ!」
立て続けに繰り出された黒い剣と斧からの斬撃に、メイドは幸せの余韻に浸りながら、花となって散っていき。
「だから、言ったのに」
彼女に召喚されていただけの少年も、その姿を消した。
面影は、もう、ない。
成功
🔵🔵🔴
栗花落・澪
【ANGELS】で参加
被害防止に初めっからメイド服で参加
慣れたくなかったけど…(遠い目)
スイーツ【料理】なら任せて!
炎や氷(熱気、冷気)の【属性攻撃】や
★Candy popを溶かす事で抽出可能な糖分を使用
朱雀さんの作ってくれたコンポートを用いて
冷却時間を【全力魔法】で時短したタルト生地に薔薇を象り飾ったフルーツタルト
ジャムと苺のトライフル等を作成
隠し味に料理に【誘惑】を混ぜ確実な足止め狙い
★どこにでもある花畑を足元に精製
その花弁を食器の飾りとして使用
更に【UC+範囲攻撃】発動
【優しい歌唱】を食卓を盛り上げる優雅な演奏のように奏で
【催眠】の力で夢見心地のまま
【破魔】の花弁で痛みも与えぬまま攻撃
朱雀・慧華
【ANGELS】で参加
はーい、私は澪のお手伝いしまーすっ!
えへへ、メイド服って可愛いねー♪
私は焼き林檎や苺のプリンクリーム添えの他
澪が使う用に色んなフルーツのコンポートを作るね
私は澪みたいに胸を張って得意って言える程じゃないけど
お菓子作りは楽しくって好きだから
普通の美味しさくらいは出せるといいな
演出は私担当!
【UC】を発動
星空モチーフの★七色空絵具を空中に巻き
このエリアの空を美しい星空に変化
黄昏空モチーフの★七色空絵筆で
実体のある豪華な食卓や椅子、食器
テーブル上には薔薇の花
天井にはシャンデリアも作り出す【アートパフォーマンス】
綺麗な空に囲まれながら優雅な食事を楽しんで!
トドメは澪に任せるね
●すいーつぱらだいす☆
メイドと執事は男にメイド服を、女に執事服を着せて、どうしてこうなったという混乱を利用して動きを止めてくるらしい。
ならば最初からメイド服でいれば被害が出ないのでは?
考えた末に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は自らメイド服を着用した。
遠い目をしている澪は、小柄で愛らしい容姿をしているが、立派に少年である。
そして別に、好き好んで女装をしているわけではない。しかしまぁ……状況が状況なので。
「慣れたくなかったけど……」
調理用のエプロンみたいなものだと思って!
一方で、澪の手伝い役、と張り切る朱雀・慧華(純真天使・f17361)は、楽しげだ。
「えへへ、メイド服って可愛いねー♪」
にこにこしながらコンポートにするための果物を選び始めた慧華を見て、澪はよしと気合を入れる。
「スイーツなら任せて!」
手際よく果物を手に取っていく澪を、今度は慧華がちらりと見る。
自分は、澪ほど得意と言える料理の腕をしていないけれど、こうやって材料を選んだり、完成品を思い描いたり、少しずつ完成していく工程は楽しいと思えるのだから。
「普通の美味しさくらいは出せるといいな」
今日も、楽しんでいこうと思う。
シュウカクフードバトルなるルールが敷かれているのだから、きびきびさくさく作業をしていかねばなるまいと、澪は己の魔力を行使して、調理に挑む。
そんな澪が持参の食材として小瓶から取り出したのは可愛らしい飴玉。魔力の込められたそれに軽い口づけ一つ。甘い誘惑を隠し味として込めて、砂糖代わりに溶かしていく。
てきぱきと作業をしている澪の隣では、慧華がリンゴを焼き、苺をプリンに混ぜ、それとは別にじっくりじっくり煮込んだコンポートを量産していく。
幾つものスイーツを作っていくのだから、当然作業は大忙しで、しかしその分、漂う香りも強く広がる。
香りにつられやすいメイドがそわそわと振り返ったり、収穫しているはずの執事の視線が釘付けになったり、上手く釣れているようだが、当人達はあんまり気づく余裕が無かった。
「よし、タルト生地は上手くできた。朱雀さんはコンポートありがとう、使わせてもらうね」
「うん、どんどん使って」
タルト生地には甘い香りを漂わせるフルーツを薔薇を象りたっぷり詰めて。
可愛らしいガラスの容器には、ジャムと苺をメインにクリームなどを重ねたトライフルを作成。
慧華が仕上げた焼きリンゴや苺のプリンと一緒に並べると、澪は足元に聖痕より生み出される花園を精製し、食器を彩る飾りとして拝借した。
「仕上げの演出、行くね!」
テーブルの上が華やかに彩られれば、その周りへと。慧華の絵の具と絵筆が空間を彩る。
空中に撒かれた絵の具は美しい星空を展開させ、絵筆が描き上げれば、そこには豪華な食卓が現れる。
星空にも負けない、それでいながら互いの煌めきを尊重し合うようなシャンデリアが灯されれば、その一角は夜会のビュッフェスペースに早変わりだ。
「綺麗な空に囲まれながら優雅な食事を楽しんで!」
さあどうぞ、召し上がれ。そう言うように、二人が促せば、まずメイドが飛びついた。
「素敵! お嬢様もお連れしたいわぁ~!」
敬愛するお嬢様も、これだけ素敵な演出を備えたスイーツならきっと喜んでくれれうだろうと瞳を輝かせるメイドに、執事も同意するように頷く。
「味もしっかり確かめてね」
にっこりと笑顔で見上げる慧華に、顔を見合わせつつも使用人達は次々に手を伸ばしていく。
絢爛豪華な空間を盛り上げるように、澪の優しい歌声が響く。
しかしそれは、ただの歌声にあらず。
幸せのままに眠れ――。
まじないを込めた歌声は、無数の花弁を生む。
ひらり、はらり、舞う花弁はさながら夜桜のようにさり気なく、使用人達の視界に溶け込んで。
甘い幸せに浸らせながら、静かに静かに、命を削った。
やがて、澪の操る花弁に、ぱっ、と幾つかのブルースターが咲いて、散る。
それと同時に使用人達の数は減り、収穫に勤しんでいた少年の姿も消え……澪の歌声が止んで、慧華の描いた空間の効果が消えた頃には、足元に無数の花弁が散るだけとなった。
――ちなみに沢山作ったスイーツは、猟兵というスタッフが美味しく平らげましたとさ。
大成功
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