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バトルオブフラワーズ④〜チョコを食ってチョコを殴る話

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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 ラッピングされたハート型チョコレートが、大量に積み上がっている。その中腹で、一人の男――だろう、たぶん――がチョコレートを齧る。
「よう」
 ハートチョコの頭と黒い全身タイツという出で立ちの男は、新たなチョコに手を伸ばしながら、中継しているテレビウムの向こうへと視線を送る。
「俺を、覚えているか?」
 怨念の籠ったその一言に、テレビウムの前に集まった住人たちは、一斉に首を傾げるのだった。



「まぁようするに売れ残りよ」
 無下なくバッサリと斬り捨てて、チェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)は半眼で腕組みをした。
「一大事であることには変わりないのよ。これ」
 ため息を一つ。なぜならこれは、戦争なのだから。世界は今、存亡の危機にある。
 なんだか随所にキマイラフューチャーらしい雰囲気が漂っているし、今回もその例に漏れないが。
「バレンタインデーに売れ残ったチョコを自腹で買い占めてた怪人が、『ザ・ステージ』の一角にいるわ。在庫処分もされないままだったチョコを食べるたびに、パワーアップしているみたいね」
 そのステージの効果なのだろうか。理屈は不明だが、ともかくチョコレートを食べるたびに力を増していることは事実だ。
 今や、どの猟兵であっても単独で挑めば確実に返り討ちにあうほど、ハートブレイクというらしいチョコレート怪人は強化されている。
 では、どう戦うか。答えは酷く簡単だった。
「あいつよりチョコを食べればいいのよ」
 猟兵たちが赴く「ザ・フードステージ」には、オオグイフードバトルというルールが適用されている。「多く食べたら勝ち」ではなく、「多く食べたらすごく強くなる」というルールだ。
「チョコ怪人は、売れ残ったチョコレートの怨みが自分に取り込まれて強くなってると思ってるみたいだけど、錯覚ね」
 売れ残りチョコたちにとってもいい迷惑である。
 なお、積まれたチョコレートの賞味期限はまだ切れていない。食べ過ぎについても色々な事情でなかったことにされるので、胃腸やダイエットについてもご安心いただきたい。
「怪人は馬鹿みたいにチョコを食べるから、みんなもそれに負けないようにいっぱい食べないといけないの。飽きないくらい好きなら問題ないんだけれど」
 よほどのチョコ狂いか何かでなければ、辛い戦いになることだろう。相応の覚悟はしておきたいところだ。
 ともかく、このステージを制圧しない限り、猟兵たちはキマイラフューチャーの中枢に辿り着けない。怪人が障害であることは、間違いない。
 ならば、やるべきことは一つだ。あなたが甘党であるのなら、なおさら。
「怪人よりもたくさんチョコを食べて、とびっきりの一発をお見舞いしてあげてね!」
 滅びゆく世界を救う戦士を送り出すにしては、チェリカの声色は妙に、軽かった。


七篠文

 どうも、七篠文です。
 今回はキマイラフューチャーです。初キマフュです。

 さて、戦争ですね。特殊ルールがあります。大筋はチェリカが説明した通りです。
 まず示していただきたいこととしては、

「怪人よりも食べられるだけの理由や熱意」

 です。
 チョコレート怪人は同じチョコだからか、驚くほど食べます。それをひっくり返すほどのチョコ好きっぷりやチョコへの熱意をアピールしてください。声に出さず、心情としてでもOKです。

 そして、食べてください。チョコは無限と言えるほどにあります。とにかく食べてください。
「味がしんどくなってきた場合は、変更手段(クリームとか)も可」とします。
 バレンタインに惨敗された方、今ならいくらでもハートチョコをご賞味いただけますよ。

 食べた後は、渾身の一発をぶちかましましょう。一撃に全てを懸けてください。何してもいいです。
 チョコを食べた数が怪人より上なら超有利、同じなら同程度の能力に、少ない(トラブルで食べられないなど)場合は、えらい目にあいます。

 なお、リプレイのたびに怪人が砕けたり爆発したりするかもしれませんが、挑戦者の数だけ復活します。シナリオクリアになったら消し飛びます。
 どなたもとどめを刺すつもりで、好きなようにボコボコにしましょう。

 今回は、いつもに比べて文字数少な目(七篠比)となります。たぶん。スピード重視の依頼ということで一つ、ご理解ください。
 アドリブが多いのはいつも通りですので、嫌な方は明示してください。

 お仲間とご一緒に参加される場合、お名前などお書きください。

 それでは、よい戦争を。
 皆様の熱いフードプレイング、お待ちしています!
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第1章 ボス戦 『ハートブレイク・チョコレート怪人』

POW   :    ジェラシックフレイム
【チョコレートの頭部から噴き出す嫉妬の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【嫉妬の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    センチメンタル・ギリチョコワールド
戦闘中に食べた【義理チョコ 】の量と質に応じて【過去の悲しみを糧として】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ジェラシック・ラブイーター
【嫉妬 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【とろけるチョコの塊】から、高命中力の【愛を食らう触手】を飛ばす。

イラスト:烏鷺山

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠滝舘・穂刈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「こいつらが叫ぶんだ…。売れ残り、見向きもされず悔しいと。廃棄を待つのが恐ろしいと。売れてリア充を喜ばせたチョコたちが、妬ましいと」
 チョコレートを手に震える怪人は、現れた猟兵たちを順繰りに見回す。目はないが。
「チョコの怨念を取り込んだ俺に、貴様らは勝てん。俺がチョコレートであり、こいつらと俺とは一心同体。チョコたちの怨念こそが云々」
 長々と何か言っているが、耳を傾ける必要はない。とにかくチョコレートを食べて食べて、それから怪人を殴ればいいのだから。
 猟兵たちが一斉に、チョコの山に飛びついた。
 濃厚な甘味との戦いが、始まった。
ボアネル・ゼブダイ
【大食い】を発動して対抗はするがチョコレートにかける情熱は怪人には負けん
全力で相手をさせて貰おう

果実のような深い香りに官能的なまでの甘さ
漆黒の深い闇のようなチョコレートに清純な白いクリームを交わらせ
ナッツの海を泳がせれば宝石で着飾った妖精のように美しい
それがチョコレートだ
決してオブリビオン共の好きにさせて良いものではない

食後は炎属性の【憎悪する薔薇】を発動
怪人を爆風で吹き飛ばしつつ【フランマ・スフリス】で切り刻む


「チョコを食べ続けた私の肌はチョコレート色に変わり
流れる血液もチョコソースになった
そんな私がチョコの形をしただけの怪人に負けるはずがあるまい?」

…まぁこれは冗談だがな

アドリブOK




 無残にすら思える積まれ方をしたチョコレート、そこに腰掛ける怪人へと、ボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)は冷ややかな目を向けた。
「チョコレートの怨念が分かるだと?」
「そうだイケメン。売れ残ったチョコだけではない。貴様たちイケメンに敗北し、バレンタインデーという地獄に呑まれて消えていった男たちの無念も、俺の力となる!」
 高らかに断言する怪人。頭のハートチョコが、ボルテージに合わせて赤くなる。
 その声を無視して、ボアネルは足元のチョコの箱を開け、一つ摘んだ。
「貴様はチョコの何たるかを分かっていない。果実のような深い香りに官能的なまでの甘さ。漆黒の深い闇のようなチョコレートに清純な白いクリームを交わらせ、ナッツの海を泳がせれば宝石で着飾った妖精のように美しい――」
 詩を吟ずるように朗々と想いを並べつつ、チョコを口に入れる。
 その後もボアネルのチョコを食べながらの演説は続き、怪人は「どうしよう帰りたい」などと呟きつつも、一応聞いている様子だった。
 濃厚な甘みに口元を綻ばせつつ、ボアネルはチョコ怪人を見据えた。
「それが、チョコレートだ」
「うん……」
 よっぽど好きなんだな、と怪人が呟く。感心したような呆れているような、なんとも言えない様子で頷いた。
 相手のリアクションが何であれ、ボアネルは勝利を確信した。語りながら次々に食べていたチョコを飲み下し、肩を竦める。
「ところで、手が止まっているようだが」
「えっ」
 チョコレートについて語る猟兵に気を取られていたのか、怪人は気づけば、チョコをほとんど食べていなかった。
 演説の合間に、ボアネルの足元に積まれていくチョコの空箱にも、気づかないでいたのだ。
 その数はもう、怪人の食べた量を遥かに超えている。
「えっ!?」
「ご清聴感謝する」
 無数のバラが、怪人の足元に突き刺さる。チョコレートを食べた分だけ増した力が、即座に大爆発を引き起こした。
 爆散するチョコレートの箱は、なぜか無傷である。しかし、怪人だけは頭の四分の一が欠けていた。
「おのれイケメン! 許すまじ!」
「貴様にもはや、勝ち目はない」
 ボアネルが跳躍、呪われし者どもを切り裂く愛剣フランマ・スフリスで、怪人の頭部を切り刻む。
 着地と同時に、怪人がバラバラと落ちてきた。反撃も出来ずに砕けたチョコ怪人を振り返りつつ、剣を鞘に収める。
「チョコを食べ続けた私の肌はチョコレート色に変わり、流れる血液もチョコソースになった……。そんな私が、チョコの形をしただけの怪人に負けるはずがあるまい?」
「えぇ……じゃあもう代わりにチョコレート怪人やってよ……」
 割れたチョコが呟いて、パタリと力尽きた。
 長い銀の髪をかき揚げ、またチョコレートを一粒口に入れながら、ボアネルは小さく笑った。
「……冗談に決まっているだろう」
 緒戦は、猟兵が勝利を掴んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



 バラバラに砕けたチョコが溶け、再び積み上がったチョコレート箱の山にうねうねと集まる。
 チョコが冷え固まり、復活した怪人は、とりあえず座って売れ残りチョコを食べつつ、一息ついた。
「ふぅ、油断したぜ……。やるじゃねぇか、猟兵」
 怪人が汗(チョコ)を拭う。そして、猟兵を睨みつけた。目はないが。
「だが今度はこうはいかねぇぞ! 覚悟はいいか……!?」
 何十ものチョコ箱を一気に開けて、怪人が鷲掴みの構えを見せた。
ショコ・ライラ
ふふふ、ただの大食い対決と言われたら無理だけど
チョコと聞いたら話は別

「飽きないくらい好きなら問題ない」?
「よほどのチョコ狂いか何かでなければ辛い戦いになる」?

ふっ…ならば私の出番だね
未来のショコラティエール志望のこの私
毎日飽きもせずに美味しくチョコを頂いているもの

《FoP》…これ実は本来、繊細なチョコの風味の差を感じ取る技術を昇華したコードだったのさ
その差が分かるなら
“飽きる”なんてありえません

ふふふ、タダでこんなにチョコ食べていいの?
敵がしびれを切らすまで食べ続けちゃうよ

で、その攻撃の匂いも《FoP》で丸わかり、ってね
【見切り】で回避
即座に【カウンター】で【クイックドロウ】

はい、ごちそうさま




「ふっ……。私の出番だね」
 チョコ怪人の前に立ったショコ・ライラ(そこにちょこんとショコライラ・f17060)の視線はしかし、積まれたチョコにのみ向けられていた。
 普通の大食いならばどうにもならなかったかもしれないが、チョコレートとなれば話は別だ。
「未来のショコラティエール志望のこの私。毎日飽きもせずに美味しくチョコを頂いているもの」
「ほう……。いい心がけだ。ならば聞こえるだろう、バレンタインの敗者となったこいつらの怨嗟の声が!」
 怒りに任せてチョコを貪る怪人に、ショコは首を横に振った。
「聞こえないよ。幻聴じゃないの?」
「そんなことはないッ!」
 怪人が叫びチョコを鷲掴みにしたのを合図に、ショコも可愛い装飾の施された箱を開け、食べ始める。
「ふふふ、タダでこんなにチョコ食べていいの? しびれを切らすまで食べ続けちゃうよ」
「面白い! やってみせろって速いなおい!」
 ほぼ同化しているに近い怪人に迫る勢いで、ショコの食べるスピードは加速していく。
 次々に口に放り込み、しかも幸せそうな顔でチョコレートを頬張る少女に、怪人のハートチョコ頭が青ざめる。
「やば……いやしかし! 同じ味が続くこの状況、人の身が『飽き』に耐えられるはずがない!」
「……同じ?」
 もぐもぐやりながら、ショコが顔を上げた。
「チョコには繊細な香りや風味があるもの。一つ一つ、個性があるんだよ。だからこそ、チョコは五感で味わうんだ」
 それを感じ取るために磨かれた彼女の技は、今やユーベルコードにまで昇華されている。
 ショコは今、その技を発動しているのだ。だからこそ、断言できる。
「その差が分かるなら、“飽きる”なんてあり得ません。あなたには、それが分からないの?」
「いっ……いや分かるし! だって俺チョコだし!」
 必死に訴える怪人をよそに、ショコは新しい箱を開け、中の黒い宝石に舌鼓を打つ。
 呪われているはずの売れ残りチョコを満面の笑顔で食べる姿にしびれを切らし、怪人が食べたチョコを力に変えて殴りかかってきた。
「俺がチョコを一番知っているんだぁぁッ!」
 振り下ろしたその拳は、空を切る。ハートの板チョコを咥えたまま、ショコが優雅に身を逸していた。
「その攻撃の匂いも丸わかり、ってね」
 右手が霞む。握られたのは、リボルバーだ。銃口は真っ直ぐ、怪人の頭に向けられている。
「ちょ、ちょま」
「待たないよ」
 トリガーを引いた瞬間、銃口から特大のビームが放たれる。
 ビームキャノンは、食べたチョコレートの分だけ強化されていた。抵抗の余地などない。
 怪人は何事かを叫びながら粉微塵に消えた。
 リボルバーをホルスターに収めて、ふぅと一息、ショコはお腹をさすった。
「はい、ごちそうさま」

成功 🔵​🔵​🔴​



 粒子化したチョコ怪人は、風にのって消える前に慌てて体を再構築した。
「くそ……こいつらむちゃくちゃだ!」
 キマイラフューチャーで怪人をしておきながら、よく言ったものである。
 ともかく復活を果たしたチョコ怪人は、猟兵たちにびしりと指を向けた。
「今度は負けない! チョコレートにかけた愛情、母性にも似たこの想い! 負けるわけにはいかんのだ!」
 気持ち悪い感じのことを叫ぶ怪人に、新たな猟兵が挑む。
四方城・麻仁
チョコ食べ放題。
これほど蠱惑的なフレーズが今まであっただろうか…。
いや、無い!
しかもどれだけ食べても太らないっぽいとか…もう天国じゃん…。
世の中の非リア充に~乾杯(最高に腹立つ顔で)
……まあ私もそっちの部類だけど。

チョコなら無限に食べられる。
なぜならそう、JKだからね…(?)
普段我慢している分、食べまくるよ。

味に飽きてきたら、アレンジして味変しよう。
パンに挟んでチョコパンに…。
牛乳に入れてホットチョコに…。
そして私の【念動弾】を…食らえ!



「チョコ食べ放題。これほど蠱惑的なフレーズが今まであっただろうか……」
 四方城・麻仁(サイキッカーJK・f14117)は、まだまだ残っているチョコレートを前に、腕を組んで仁王立ちしていた。
 そして、おもむろに目を見開く。
「いや、ないっ!」
「個人の好みの問題じゃね?」
 高級そうなチョコをチビチビ齧っていた怪人が冷静なツッコミをしてきたが無視した。
 麻仁は両手を組んで目を輝かせてから、さっそく箱の一つを手に取った。
「しかもどれだけ食べても太らないっぽいとか……もう天国じゃん……」
 それもこれも、全てはバレンタインデーの敗残兵のおかげだ。彼らの怨念が怪人になったからこそ、このステージがあるのだから。
 なぜかイラッと来る笑顔で、摘んだ大きなホワイトチョコを怪人へと掲げる。
「世の中の非リア充に~、かんぱぁーい!」
「かんぱーい!」
 釣られてチョコを持ち上げた怪人は、すぐにハートチョコレートを地面に叩きつけた。
「じゃねーわ! クソッ、腹立つ笑顔しやがって! お前に食わせるチョコレートはねぇ!」
「だったら私より食べたらいいんじゃないの?」
「言われんでもそうするわッ!」
 箱を開ける怪人に合わせて、麻仁もチョコレートを征服にかかる。
 普段我慢していた反動もあろうが、それにしたって速すぎる速度で、チョコを頬張っていく。怪人が麻仁を二度見した。
「えぇっ!? お前もかよ! なんでそんなにはえーんだよ!」
「チョコなら無限に食べられるよ」
「ナンデッ!?」
「なぜなら……そう」
 口の周りにチョコをつけながら、麻仁はキリッと目を細めた。
「JKだからね……!」
「り、理屈じゃねぇ……! 負けてたまるか!」
 必死にがっつく怪人をよそに、持参したパンに挟んでみたり、持参したホットミルクに溶かしてホットチョコにしたりと、これまで体重を理由に想像だけで留めていたあらゆる方法で、チョコレートを平らげていく。
 手間はかかっているはずなのに、食べる速度は怪人を遥かに上回る。一回に使うチョコの量が、えぐいのだ。
「おまっ! もうちょい大切にだな!」
「はー食べた食べた! お腹いっぱい幸せいっぱいの念動弾を食らえッ!」
 脈絡なく放たれた念動弾に撃ち抜かれ、怪人はハート型チョコの頭にハートの空洞を開けてひっくり返った。
 手を打ち払いながら、麻仁はクールに目を伏せた。
「ふっ。まぁ私も、非リアの部類なんだけどね」
「あ……そう……」
 何も言う気力もないのか、怪人は仰向けに倒れまま空を見上げ、大きく悲しげなため息をついてから、地面に溶けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​



 ハート型に撃ち抜かれた頭を、適当に手に取ったチョコを湯煎してからパテで埋め込み、固まるまで横になった後、怪人は立ち上がった。
「まだだ……! 俺はまだ、やれる!」
 必死の叫びを無視して、次の猟兵が散らばるチョコレートに輝く目を向ける。
 それを見て、小さく「ダメかも」と呟いた彼の声は、箱が崩れる音に埋もれて消えた。
ヴァシリッサ・フロレスク
チョコ食べ放題だって?なんだ最高じゃないか?

まあ、ただ幾ら旨くっても、満腹になりゃあ食えやしない。

――だけどアタシには秘策がある。

……要は一杯になる前に、消費しちまえばいい。

チョコは殆ど脂質と糖質、つまりカロリー≒熱量だ。
即ち!アタシが流血しながら(【激痛耐性】)ブレイズ・フレイムを放ってカロリーを消費しつつ食べ続ければ、実質!摂取限界は無くなるのさ!!(誤った)【世界知識】

大体、チョコ達が本当に願っているのは怨嗟の共有なんかじゃ無いだろ。
――ただ、“美味しい”、と想って食べて貰うことだ。
――そいつは、お前が一番解ってる筈じゃないのかい?【言いくるめ】【鎧無視攻撃】




 気の毒になるほど必死にチョコを口(?)に詰め込む怪人の前で、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)はニヤリと笑った。
「チョコ食べ放題だって? なんだ、最高じゃないか」
「そうだ。だが貴様らには『満腹』という概念がある。それが、猟兵――お前の、限界だ」
 顔があればドヤ顔をしていただろう怪人に、ヴァシリッサは素直に頷いた。
「確かに。ただ幾ら旨くっても、満腹になりゃあ食えやしない」
 足元のチョコを拾い箱を開け、中身を口に運びながら、ヴァシリッサは目を細める。
「だけどアタシには、秘策がある」
 言うやいなや、自分の体に爪を立てた。激痛に耐えながら激しく出血する女の姿に、怪人が悲鳴を上げた。
「うわ、なんだこいつ! 誰か救急車呼んで!」
「……要は一杯になる前に、消費しちまえばいい」
 流れ出るヴァシリッサの血が、炎と化す。前進を火炎に包み、彼女は咆哮を上げるかの如く高らかに叫んだ。
「チョコは殆ど脂質と糖質ッ……! つまりカロリー≒熱量! 即ちッ! アタシが流血しながらブレイズ・フレイムを放ってカロリーを消費しつつ食べ続ければ、実質ッ! 摂取限界は無くなるのさッッ!!」
「なにその理屈! やだもうこいつらホント怖い!」
 熱を受けて溶け出すチョコを、ヴァシリッサは舐めるように食していく。
 噴出する炎も相まって、まるで血を舐める悪魔にすら思えるその姿に、怪人は引いていた。
「えー……食欲なくすわぁ……」
 それは敗北を意味するのだが、全身が灼熱の炎により溶けたチョコまみれになっていくヴァシリッサを見ていると、気持ちは分からなくもないかもしれない。
 ともかく、食べた先からカロリーを消費して満腹を遠ざけたヴァシリッサは、満足したのか、チョコだらけの口元を手で拭った。
「……さて」
 無造作に歩み寄って、呆ける怪人の胸ぐらを掴む。傷から燃え上がる炎によって、チョコ頭が歪んでいく。
「アツッ! 溶ける溶ける!」
 形を変えていく怪人の頭部へと、ヴァシリッサは心を込めて囁く。
「怪人ハートブレイクよ。チョコ達が本当に願っているのは怨嗟の共有なんかじゃ無いだろ」
「……」
「――ただ、“美味しい”、と想って食べて貰うことだ。そいつは……お前が一番、解ってる筈じゃないのかい?」
 溶けゆく体のままに、チョコレート怪人は空を見上げて、わずかに笑った。
 しばしの沈黙の後、頭が溶け切る間際に、彼は肩を竦めた。
「それ……全身チョコまみれで言う……?」
 それが、彼の最期(本日四度目)の言葉だった。

成功 🔵​🔵​🔴​



 またも溶けるという憂き目に合いながらも、怪人は凝固して復活した。
 なんだか疲れて見えるが、まだやる気らしい。
「チョ……チョコの俺が、チョコ食いバトルで負けらんねーっつーの……!」
 バレンタインデーの恨みなども含めて、彼なりの意地があるということだろう。
 が、それは世界の滅亡と天秤に架けられるものではない。
 オブリビオンの企みは、打ち砕かねばならないのだ。
 さらなる猟兵が、怪人の前でチョコレートの箱を拾い上げた。
トリテレイア・ゼロナイン
たとえ星が二つに割れようと騎士としてやるべきことは変わりません
システムフラワーズを開放し、再びキマイラFに安寧を取り戻す為戦うのみです

チョコを食べれば食べるだけ強くなる……(3点セット納品されたくらいの時期に追加された)娯楽・現地住民の方とのコミュニケーション用の食事機能を活かす時がきたようです

UCでウォーマシンサイズの大型ミキサー(鈍器扱い)を持ち込み、大量のチョコを放り込んでペースト状にして「食べます」(装甲が開いて口の位置の「穴」に流動食よろしく流し込む)

邪道食い?チョコへの冒涜?
キマイラFの人々の為、絶対怪人に負ける訳にはいかないのです!
●怪力でミキサーを両手に抱え怪人に振り下ろします




 ピンクにラッピングされたハートチョコを手に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は決意を込めて言った。
「たとえ星が二つに割れようと、騎士としてやるべきことは変わりません」
「……」
 お疲れの様子の怪人は、チョコをもぐもぐやりながらトリテレイアの言葉を待った。
 なんだか調子が狂う。が、トリテレイアは構わず宣言する。
「システムフラワーズを開放し、再びキマイラフューチャーに安寧を取り戻す為、戦うのみです」
「うん……。でも、できんの?」
 怪人が、鋼鉄の騎士を指さした。
「だってお前、ロボじゃん。これオオグイフードバトルよ?」
 確かにもっともではある。トリテレイアは、ウォーマシンなのだ。そもそも食べる必要がない。
 しかし、トリテレイアは自信ありげに頷いた。
「やってみせますとも」
「ふん! 気合だけじゃどうにもならないことがあるって、教えてやるよ! うおおお!」
 力をつけるべく、怪人がチョコを食べ始める。その速度に驚きながらも、トリテレイアは持ち込んだ巨大な機械を地面に置いた。
 それは、巨大なミキサーであった。少しだけ牛乳が入っている。
「娯楽・現地住民の方とのコミュニケーション用の食事機能を活かす時が、きたようです」
 言うが早いか、トリテレイアはミキサーの中に開封したチョコを片っ端からぶち込んでいく。
 当然その間も怪人はチョコを食べ続けているが、お構いなしだ。
 ミキサーが満杯になると、すぐにスイッチを入れた。電力は、トリテレイア自身である。
 豪快な音と共にペースト状へと変化していくチョコに、怪人が指さした。
「おまっ……! きたねーぞ!」
 野次を無視してミキサーを抱え、同時に口の位置にある装甲が展開。現れた穴に、ペーストチョコを流し込む。
 飲み込む音もないまま機械の奈落へ消えていくチョコに、怪人は絶句する。
 食べたチョコの量は相当な差が開いていたはずだが、飲み干したトリテレイアがミキサーを置いた時には、すでに逆転していた。
「ふぅ。ごちそうさまでした」
「それ食ってんの!? ふざけんな、邪道じゃねーか! チョコへの冒涜だ!」
 喚く怪人に、トリテレイアは静かに首を横に振って否定した。
「キマイラFの人々の為、絶対怪人に負ける訳にはいかないのです! このトリテレイア・ゼロナイン、いかな邪道に堕ちようとも……!」
 またもミキサーを持ち上げる。超巨大なその鉄塊を、ただでさえ腕っぷしの強い彼が、食べた(?)チョコによりさらなる力を得て殴ればどうなるか。
 火を見るよりも、明らかだ。
「絶対ッ! 怪人に負けるわけには、いかないのですッ!」
 巨大ミキサーを振り下ろされる。受け止めようと、怪人が手を伸ばした。が、
「あっこれ無理」
 悟った時には、すでに遅かった。
 頭からつま先まで破壊される瞬間、怪人はトリテレイアに人差し指を向けて、銃で撃つようなキザな素振りを見せた。
「レディと食事をするときは、もっとゆっくり食えよな」
 バーン、と呟いた瞬間、巨大ミキサーに叩き潰された怪人は、チョコの破片と化した。
 非モテからのデートのアドバイスに、トリテレイアは鈍器とかしたミキサーを一撫でし、
「あなたよりは、マナーを心得ていますよ」
 鉄塊ミキサーを担いで、次の猟兵へとバトンタッチするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



 粉微塵と化した怪人は、紆余曲折あってなんとか元の形を取り戻した。
 とはいえ、ハート頭の所々が欠けている。どうやら、復活する力はもう残されていないらしい。
「まだやれるぜ……! 全非モテと売れ残りチョコのために! 俺は世界と戦う!」
 どうやら、歪んだ気合いはまだ残されているらしい。
 完膚なきまでに叩き潰すべく、最後の猟兵が、怪人に立ち向かう。
エーカ・ライスフェルト
>食べ過ぎについても色々な事情でなかったことにされる
嘘、でしょ……(動揺し過ぎて気弱な手弱女ぽくなっている)
いえ、チェリカさんを疑っている訳ではないの。超技術に圧倒されただけ。本当よ?(外見は普段通り)

一生分食べるつもりでいくわ(超真顔)
飽き対策に、ウイスキーの瓶と、きつい塩味のナッツを持ち込む

チョコ怪人に対しては塩対応
「五月蠅いわねだまりなさい。この敢えて下品さを残した甘みが舌と脳を蕩かす感覚を楽しんでいるの。それを邪魔するつもり?」
「最初からほとんど溶けている種類もいいわ。あぁ、食べただけお肉になるお菓子って、どうしてこんなに美味しいのかしら」

ドレスの腹部がぱんぱんになってリタイアかしら




 最後の一押しに現れたエーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は、高めのウィスキーボトルと塩味がきつめのナッツを手に、立ち尽くす。
「嘘、でしょ……?」
 まるで乙女のような声音で呟いたのも、無理はない。
 積み上がったチョコレートをいくら食べても、太らないなんて。体には微塵の影響もないなんて。
「そんなことが、本当に?」
 しかし、次の瞬間にはかぶりを振って、現実を受け入れる。これは、グリモア猟兵の予知なのだ。
「そう、チェリカさんを疑っているわけではないわ……。超技術に圧倒されただけ。本当よ?」
 突然怪人に確認し、チョコレート頭は特に理由もなく頷いた。
「あっはい」
「よろしい。さて……」
 ならば、もはや躊躇う必要はない。エーカはチョコレートの山に腰かけ、ウイスキーをストレートでグラスに注いだ。
 そして、ストロベリーチョコレートの箱を空ける。
「一生分食べるつもりでいくわ」
 真顔で言って、ウイスキーをちびちびやりながらチョコレートを次から次へと頬張っていく。
 ユーベルコードなどを使用せずに真っ向勝負を仕掛けることは、怪人を前には悪手と言えたかもしれない。しかし、怪人は感じ取っていた。得も言われぬ、覇気を。
 ここで負けては、バレンタインデーに散っていった男たちに申し訳がない。売れ残ったチョコの怨みも晴らしてやれない。
「負けるかッ……!」
 お互い無言でチョコレートを食べまくる二人。ペースこそ怪人がリードしているが、エーカは終始ウイスキーを片手に、一つ一つをしっかり味わっている。
 どちらがチョコレートに敬意を払っているか、それはテレビウム越しに戦いを見守る住人にも、一目瞭然だった。
 苦し紛れに、怪人がチョコを頬張りながら叫ぶ。
「くッ……チョコレートはお菓子なんだよ! 酒の肴にするなんて、外道! 邪道だっ!」
「うるさいわね黙りなさい」
 グラスに琥珀色の液体を注ぎながら、エーカが怪人を睨みつけた。
「この敢えて下品さを残した甘みが舌と脳を蕩かす感覚を楽しんでいるの。あなた……それを邪魔するつもり?」
 アルコールが回っているらしいエーカの声には、凄みがあった。
 その威圧感を例えるならば、まさしく蛮族のそれだ。怪人は竦み上がって、「とんでもないっす」と消え入るような声で呟いた。
 しかしエーカは、それでは気が済まなかったらしい。酒瓶を片手に立ち上がり、怪人の横に腰かけ、敵の頭に瓶の口を突っ込む。
「本当は一杯やりたかったんでしょ? ほら飲みなさい。私が奢ってあげるって言っているのよ」
「ゴフォッ!? やめて! ウイスキーボンボンになっちゃう!」
「なによ、つれないわねぇ」
 酒瓶を引き抜くと、相当量のウイスキーを注がれた怪人は、茶色いチョコレート頭を真っ赤にしてひっくり返った。
 酔いつぶれた怪人は放置して、エーカは残されたチョコに舌鼓を打つ。
「この最初からほとんど溶けている種類もいいわ。あぁ、食べただけお肉になるお菓子って、どうしてこんなに美味しいのかしら」
 うっとりとしながら、チョコ、酒、ナッツを味わい、ウイスキーが空になった頃、ちょうど売れ残っていたチョコレートも完売の運びとなった。
 最後の一粒を名残惜しそうに食べ終えて、お腹をさする。
「ふぅ……。ドレスのお腹がパンパンになってしまったわ」
 ちらりと横を見れば、チョコレート怪人が赤から青に顔色を変えて、泡を吹いている。
「きぼちわるい……たすけて……」
「弱いわねぇ。あなた、酒も飲めないから恋人もできないのよ」
「あっ……それ……パワハラ……」
 震える声で言われたエーカは、面倒くさそうに炎の矢を召喚して、怪人に放った。
 着弾と同時に、世界を揺るがすほどの火柱が立ち上る。
 それはチョコレートの力か、酔っ払っていて制御できなかったのか、はたまたその両方か――。
 ともかく、怪人が天に召されるには十分な火力であった。



 それから、チョコレート怪人が甦ることはなかった。食べるべきチョコレートも、もうない。
 戦いに勝利したというのに、猟兵たちの多くは、どこか名残惜し気だった。食べても太らない夢の時間は、終わりを告げてしまったのだ。
 しかし、世界の危機は終わっていない。キマイラフューチャーを救うための戦いは、まだまだ続く。
 猟兵たちは、次なるステージを目指して進軍を開始した。
 こっそりポケットに忍ばせた、季節外れのバレンタインチョコレートと共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月03日


挿絵イラスト