4
バトルオブフラワーズ⑧〜世界に色を

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#戦争
🔒
#バトルオブフラワーズ


0




●闇の中に
 キマイラフューチャーの街を模した空間が、闇のような黒に染まっている。
 地面や壁、建物の屋根や、その辺の街路樹まで。
 黒一色で塗り固められた、その空間の中に。
『ふ……ふふ……見ろよ、この街並み……きれいな黒だろ? チョコみたいだろ? でもチョコじゃないんだぜ』
 なんかこじらせてるヤツがいた。

●ヌリツブシバトル
「さて、早速だけど、またキマイラフューチャーでお仕事だ」
 グリモアベースに集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は早々に話を切り出した。
 現在、キマイラフューチャーは南北2つに割れている。
 それは、あの世界のコンコンしたら何か出てくるのを制御している『システム・フラワーズ』へのメンテナンスルートの出現を意味していた。
 現在、『システム・フラワーズ』はオブリビオン・フォーミュラに占拠されている。
 『システム・フラワーズ』に辿り着く為には、まず周囲を守る6つの『ザ・ステージ』を取り戻す必要がある状況だ。
「今回も『ザ・ステージ』の1つ、ザ・ペイントステージに行って貰いたい。この間、ペイントステージの1つで黒塗りを防いで貰ったけれど、残念ながら既に塗り固められてしまった別の空間が見つかってね」
 やはりキマイラフューチャーの街並みを模した戦場の空間だが、その街並みは、地面も建造物も街路樹やオブジェも、全て『闇のような黒』で塗り固められてしまっている。
「そこを収めてるオブリビオンは、ボスクラスの1体なんだけどね。塗り固められた『闇のような黒』のせいで、ユーベルコードが通じない」
 そのままでは、一方的に攻撃を受けるだけだ。
「だから先に『闇のような黒』を攻撃するんだ。ユーベルコードでも、武器でもいい。攻撃する事で、『闇のような黒』を君達が望む色で上塗りする事が出来る」
 一定以上の範囲を別の色で塗り潰せれば、ユーベルコードが本来の力を発揮して、敵を攻撃する事が出来る。但し一度だけ。
 或いは、その状態で塗り潰しを行えば、より広範囲を一気に塗りつぶすスーパー塗りつぶし攻撃になるだろう。
「エリアの3分の2以上を塗り潰す事が出来れば、ユーベルコード本来の力をいつも通りに何度でも振るえるようになる筈だよ」
 そこまで漕ぎ付ければ、後はいつも通りに戦える。
「だけど、敵も黙って見ているわけじゃない。塗り直してくる心配はないけれど、妨害や攻撃はしてくるからね?」
 チャンスの都度に攻撃していくか、粘って環境を書き換えるか。
 どちらも長所短所があるが、自分に合った方を選べば良いだろう。
「そうそう。敵はハートブレイク・チョコレート怪人。バレンタインの諸々の怨念なんかが凝り固まった怪人だよ」
 あ、まだいたんだ。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。
 Sで始まる某ゲームを連想してはいけない。いいね?

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結する、バトルオブフラワーズ⑧の戦場のシナリオとなります。
 『システム・フラワーズ』の周囲を守る6つの『ザ・ステージ』の1つ、ザ・ペイントステージが戦場です。

●ヌリツブシバトル
 このシナリオでは、『ヌリツブシバトル』という特殊戦闘ルールが適用されます。
 戦場は、キマイラフューチャーの街並みを模して作成されていますが、壁や床は『闇のような黒色』に塗り固められています。
 この『闇のような黒色』により、猟兵のユーベルコードはオブリビオンに直接ダメージを与える事が出来ず、一方的に攻撃を受けてしまいます。
 その代わり、ユーベルコード或いは直接武器で床や壁を攻撃すると、任意の色で、周囲を塗りつぶす事が出来ます。
 一定以上の範囲を塗りつぶす事に成功すると、一度だけ、本来のユーベルコードでオブリビオンを攻撃する事が可能になります。
 オブリビオンを攻撃せずに、より広範囲を一気に塗りつぶすスーパー塗りつぶし攻撃を行う事も出来ます。
 マップの3分の2以上が猟兵によって塗りつぶされた場合、本来のユーベルコードの攻撃を無制限に行えるようになります。

 都度攻撃するか、3分の2以上を狙うかは、どちらでも問題ありません。好きな方でプレイングをかけて頂いてOKです。
 他には『何色で塗り潰したいか』『どんな塗り潰し方か』などがあると良いんじゃないかと思います。カラフルなプレイングでどうぞ。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
155




第1章 ボス戦 『ハートブレイク・チョコレート怪人』

POW   :    ジェラシックフレイム
【チョコレートの頭部から噴き出す嫉妬の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【嫉妬の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    センチメンタル・ギリチョコワールド
戦闘中に食べた【義理チョコ 】の量と質に応じて【過去の悲しみを糧として】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ジェラシック・ラブイーター
【嫉妬 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【とろけるチョコの塊】から、高命中力の【愛を食らう触手】を飛ばす。

イラスト:烏鷺山

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠滝舘・穂刈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

純・ハイト
塗り替え中に妨害されると困るし足止めも必要か…、なら両方試してみるか。

ユーベルコードの奇跡の支援砲撃で怪人を巻き込むみ広範囲に支援砲撃を要請して攻撃、後はフェアリー用スナイパーライフルで足や胴体などを狙撃して怪人の行動に妨害するように撃ち続ける。

敵は大物一体、油断せずに慎重に戦う。


朱雀・慧華
攻撃苦手なんだけどー、戦争だもんね!
後に残せるようにがんばろー!

夕焼け空を模した★七色空絵具(バケツ入り)を自分の周囲に撒き
ミッキュも手伝って!(体を擦り付けたり走り回り)

私の絵の具は、本物の風景を映し出すの
真っ黒よりずっと綺麗でしょ!

怪人は氷の【属性攻撃、全力魔法】で足元を凍らせ妨害の妨害
嫉妬も特に…興味無いもん

UC発動可になったら【指定UC】を発動
お家に帰る時間だよ!

同色の★七色空絵筆で
怪人さんの家族(想像)や家(冷蔵庫?)を描く
内容は関係無い
この空間では貴方の体は私のもの!
怪人さんを私の意思でふわりと浮かばせ動き封じ
効果が切れるまで塗りに集中させてもらいますっ

終わったら落とす
ごめんね☆


真守・有栖
まーた黒が出しゃばってるのね!
再び銀狼たる私が見参よ……!
まっくろはぁとをぴっかぴかのしるばぁーで塗り変えてあげる!

さぁ、再びの見せ場よ!
『月喰』を抜刀。
ぴかっと!ずばっと!振るう光刃で遠くまで一気に銀色に塗り染めるわ。

ふん。現れたわね!
まっくろぶれいくな嫉妬の炎とやらは私には通じないわよ!
だって、ちょこれいとを送る相手もくれる相手も私には一人もいないわ……!えぇ、これっぽっちも!!!

……ぐすっ

同じ孤狼同士。想う所はあれども。
まっくろどよーんよりもきらきらしるばぁーで在るべきよ!

想いを刃に込め。
その心ごと、銀光で染め変えてみせるわ……!

光刃一閃。迸るは烈光。
炎も黒も心もまとめて、成敗よ……!


リーキー・オルコル
世界を賭けてゲームをするわけだ
不謹慎な話だね
ま、暗くなってもしょうがない
楽しく遊ばせてもらおうかね
ついでに俺の命もベットしておく

さてと、人助けをはじめるか


ペンキを入れた水風船をバックパックにたくさん入れていき
【マジックスナップ】で投げて色を塗っていく
ペンキは塗りつぶしたことがわかるのと怪人がいたときに見えやすいように白を使う
可能なら追加の水風船を作れるようにペンキと風船を持っていき戦場に着いたら自陣に置いておく

水風船を投げるときは割れないように優しく素早くを心がけ
多少ムラが出来ても良いのでスピードと塗りつぶす面積重視で塗っていく

怪人への攻撃はナイフを投げて
壊れた心の真ん中を射貫いてやるぜ!


亜儀流野・珠
何やら見覚えのある奴だな!
普通には戦えないのか…塗って叩けばいいんだな?

塗ったり塗られたりして、隙を見て攻撃…うん、人手が必要な奴だ!
となればこれだ…奥義「千珠魂」、俺たち召喚だ!
数の暴力だ、散らばり狐火で黒を焦がし好きに暴れて来い!
街を真っ赤に染めてしまえ!

で、俺は木槌「砕」を持ちチョコ頭のヒビを増やしに行こうか。
さあ皆は、俺たちはいまどれくらい塗れたかな?
二分の一か?三分の二か?

まあ沢山殴ってみれば分かるな!
殴って!【吹き飛ばし】て!
妨害しつつ殲滅だ!


詩朔・いちこ
変わった趣向のステージデスが、張り切って参りマショう!
魔導蒸気砲からのレーザーは黄色デス、塗り潰すのであれば基本は黄色になるデショうか。

それでは、初めマス!
両腕からレーザーを放ち、地面をなぞるように塗り潰していきマス。
長射程・幅細の塗り潰しデス、痒い所には届きやすいはず。味方が塗っている辺りでは隙間や塗り残しを潰すつもりで、敵陣では数を撃って面積を稼ぎマス。

一定量を塗りつぶしたらこちらから仕掛けマス!
「術式起動……其は蒼雷、裁きもたらす真なる怒り!」
【属性攻撃】、迅雷の一撃を受けるが良いデス!
『魔導術式・雷迅砲』、【全力魔法】で撃ち込みマス!
余波で少しでも青く塗りつぶせれば、更に嬉しいデスね。


アンナ・フランツウェイ
とにかく塗りつぶせば良いんだよね?ならオブリビオンより先に、3分の2以上を塗りつぶす事を狙っちゃおうか。

まずは【断罪式・白詰花】を発動。上空を高速移動しつつ、オブリビオンが塗りつぶした場所を見つけよう。
塗りつぶされた場所を発見したら血液で出来た刃を【範囲攻撃】で放射、先ほどよりも少し明るい黒で塗りつぶして行こう。(味方への認識&オブリビオンに気づかれ難くするため)

3分の2以上を塗りつぶせたら攻撃開始。高速移動で相手を翻弄しつつ、隙を見つけたら【武器改造】で鋸状の刃にした【終焉剣・ラストテスタメント】を突き立て、毎度お馴染み【生命力吸収】【傷口をえぐる】のコンボでトドメだ!

・アドリブ、絡み歓迎


泉宮・瑠碧
…バレンタインは数か月前の事では…
その間、彷徨っていたのかあの怪人…
イベントも終わって
チョコも平常生産に戻り、怨念も薄れた頃か
存在意義を見失っている感じはあるな…

僕はスーパー塗りつぶし攻撃
青空よりも薄い位の淡い青色へ塗り潰していこう

エレメンタル・ファンタジアで氷の津波を範囲攻撃
人の居ない黒い箇所へ
一度に広い範囲で塗れそうだからな

津波の進行方向へ川でも流す様に塗り広げていく
細かい塗り残しや進路外へは
水の弾を幾つも生み出して援護射撃で撃ち込む

スーパー塗りつぶし時は全力魔法で
更に大きい津波を

怪人は可哀想とは思うが…
更に来年まで彷徨う位ならもう眠った方が良い
…一時の怨念を抱えたままなのも辛いだろうしな



●闇よりもなお暗く
『バレンタインも終わったと言うのに、この俺が戦う日が来るとはな……』
 ステージエリアに現れた猟兵達を見上げ、ハートブレイク・チョコレート怪人が呻くような低い声を上げる。
『だが! 俺は戦う、戦うぞ!』
 かと思えば、チョコ怪人はやおら声を張り上げた。
『お前たちの目的は判っている。俺からこの街を奪おうと言うのだろう! このチョコみたいな色の街並みは、例えチョコじゃなくても俺の最後の心のオアシスなんだ! 次のバレンタインまで、俺の居場所はここくらいしかないんだ!』
「次って……バレンタインは数か月前の事だろうに。さらに約1年もここにいるつもりだったのか?」
 それを聞いた泉宮・瑠碧(月白・f04280)が、沈痛な面持ちになる。
 バレンタインのイベントもとっくに終わって、チョコも平常生産に戻っている筈。怨念も薄れて存在意義を見失っているのかも――なんて思っていた事もあったけれど。
(「薄れてないじゃないか……」)
「見覚えのある奴だが……前に見たときよりも、何かおかしいな」
 亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)も、以前に見た時とのこじらせっぷりの違いに軽く溜息を吐きたくなる。
 他の猟兵達も何か言いたげだったが、何も言わずに顔を見合わせ、頷き合って。
『あ、こら待てー!?』
 チョコ怪人の抗議を無視して、猟兵達は黒い街へと散開していった。
 ここはクロヌリバトルのステージ。
 色を塗らなければ始まらない。

●世界を染め上げる色
「さて、この辺で良いかな」
 白と黒の翼を広げて飛んでいたアンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)が、翼を大きく広げて空中に静止する。
 眼下に見える街は、闇黒に染められていた。
「オブリビオンに見つからない内に、3分の2以上を塗りつぶす事を狙っちゃお」
 アンナもまた、本来の力を取り戻せるまで塗りつぶしを優先する気でいた。
「断罪の時は来たれり。復讐の時だ」
 告げたアンナの身体を、対峙する者に殺された死者達の呪詛が覆っていく。やがて、全身に行き割った呪詛を纏って己の力と変えると、アンナはそこで片腕を振るった。
 放たれたのは、アンナ自身の血液の刃。
 紅い血の刃が闇のような黒に当たって飛び散り、広範囲を明るい黒へと変えていく。
「うん。この色なら、オブリビオンが見てもすぐに判らないよね」
 狙った通りの色に染まった事を確認すると、アンナは再び白と黒の翼を羽ばたかせて上空へと舞い上がっていく。
「どんどん塗っていっちゃうよ!」
 高速で飛び回りながら、アンナは血の刃を飛ばして街を闇ではない黒へと染め上げていった。

「この勝負、人手が必要なヤツだな!」
 数の力が効くならば、珠にはあつらえ向きの手がある。
「奥義『千珠魂』――俺たち召喚だ!」
 珠が広げた両手から。ゆらゆら揺らした尾から。
 小さな珠の分身が、ぶわっと溢れ出て来る。その数、百と八十五体。
「よし、やることは判ってるな、俺たち!」
『おーよ! 街を真っ赤に染めるんだろ!』
 珠の言葉に、珠の小さな分身たちが答える。珠の分身であるのだから、その意思も共有していてなんら不思議ではない。
「数の暴力だ! 散らばって狐火で黒を焦がして、好きに暴れて来い!」
 わーっと散っていった珠の分身が、やがて街のあちこちで小さいながらも狐火を放ち赤い炎で街を染めていく。1つ1つは小さく、分身体の大きさより僅かに広い部分を塗る程度しか出来ないが、それも3桁集まれば、凄まじい勢いとなる。
 散りも積もればなんとやら。まさに数は力である。
「さて。うまくやれよ俺たち。俺は、チョコ頭のヒビを増やしてくる」
 大きな木槌を手に、珠は紅く染まりゆく街を後に駆けだしていった。

●色と嫉妬と
「戦争ねぇ……世界を賭けてする事が、ゲームってわけだ。不謹慎な話だね」
 誰に言うでもなくひとりごちて、リーキー・オルコル(ファスト・リー・f05342)は黒い世界を駆けながら肩を竦める。
(「ま、暗くなってもしょうがない。始まっちまってるしな」)
 そのゲームの上に乗らなければならないのなら、楽しく遊ばせて貰おう。
「さてと、人助けをはじめるか」
 リーキーは駆ける足を緩めずに、背中のバックパックに手を伸ばす。
 その中には、あらかじめ用意した白い塗料を込めた水風船が詰まっていた。
 中身が割れないよう、優しく掴んで――。
 その手から、風船が消える。
 次の瞬間、リーキーの手から放たれた水風船は、目にも留まらぬ速度で周囲の壁や地面に当たって弾けて、中の白をその周囲に撒き散らしていた。
 ただの塗料であれば、それはこの世界を覆う黒を塗り潰す力はなかっただろう。
 だが、リーキーが水風船を放った業は【マジックスナップ】だ。奇跡の業が、ただの塗料を黒を覆うものへと変えていた。
「どこに投げても当たるなんて、ボーナスステージだな」
 狙うまでもない。
 いつもの言葉が、口にするでもない状況にリーキーの口の端が上がった。
 多少の塗りムラは気にせずに、精度よりも速さと塗り潰す面積を重視で塗り回っても残したムラを惜しいとは思わないほど、世界は黒いのだ。
『白……白だと!?』
 だが順調に塗って回っていたリーキーの耳に、怨嗟の声が届く。
『白を配る……白、つまりホワイトデー……』
「は? あ、いや……」
 確かに、黒に対して目立つように白を選んだのはリーキーだ。
 だが、なにやら雲行きが怪しい。
『ホワイトデーに配る者……貴様は敵!』
「本当になに言ってんだ!?」
 ぼりぼりと義理チョコを貪りながらスライディングで突っ込んできた怪人を、リーキーは跳んで回避する。
『このホワイト充め!』
「ったく! 面倒なこじらせ方しやがって!」
 追い縋る怪人の攻撃を避けながら、水風船を投げ続けるのは楽な作業ではない。
 だが、リーキーは白く染める手を緩める事はなかった。
 このゲームみたいな戦いを楽しむ、その掛け金に命をベットしているのだから。

「よっと」
『させるかぁ!』
 怪人の頭上を越える軌道でリーキーが投げた水風船を、しかし怪人が跳びあがって手を伸ばして掴み取ろうと――。
 パァンッ!
 乾いた銃声が響いて、怪人の手が弾かれる。
 その後ろに飛んでいった風船が弾けて、怪人の背後に白が飛び散った。
「お。助かったぜ」
「ダメージはまだ入らないようだな」
 振り向いたリーキーに、純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)がライフルを構えたまま頷く。
「とは言え、塗り替え中に妨害されると困るし、足止めも必要か……」
 なら、両方同時にこなせるか試してみればいい。
 ハイトはフェアリーサイズに改造されたスナイパーライフルの照準鏡を覗き狙いを怪人に定める。
『無駄だ! 今のは不意を突かれたが、この世界が黒い限り、俺にお前たちの攻撃は通じない!』
 照準を合わせられていることに気づいていながら、余裕を見せて両腕を広げて仁王立ちすらしてみせる怪人。
 だが、ハイトの狙いは怪人を撃つことではなかった。
「こちらハイト、誰でもいいから聞こえていたら支援砲撃を頼む」
 ライフルの銃口をむけたまま、ハイトが呼びかけた、その直後。
 キラリと空の一部が輝いた。
『ん? なんだ……?』
 首を傾げた怪人へと降り注いでいくのは、『ザ・ステージ』の空間としての壁すら越えて届いた何処かの旅団からの支援砲撃。
 【奇跡の支援砲撃】の力なら、ここがどこだろうが支援砲撃が届く。
『うぉぉぉっ!?』
 驚く怪人とその周囲に、様々な種類の砲撃が降り注ぐ。
『くっ……だが、今の俺には!』
「ダメージはないようだな。だが、色は塗れたし幾らかの足止めにはなったか」
 ハイトの視線の先で、無傷の怪人の回りは様々な色に染め上げられていた。

「攻撃は苦手なんだけどねー!」
 朱雀・慧華(純真天使・f17361)の手にしたバケツの中身は、七色空絵具。
「これ戦争だもんね! 後に残せるようにがんばろー!」
 今日の七色空絵具の空は、夕焼け空の色。
「ミュッキも手伝って!」
 慧華はバケツを大きく振るって、バシャッと盛大に七色空絵具を撒き散らし、周囲の建物へとその色をかけていく。
 ミュッキ――羽の生えたフェネックも、同じ色を体と尻尾に纏って、体をこすり付けるように走り回って、慧華の塗り方で僅かに残る隙間を塗りつぶして回る。
 エリアの一角を染める夕焼け色は、その範囲を順調に増やしていた。
『白め! カラフルめ!』
 そうして塗り進めていた慧華は、リーキーとハイトをしつこく追い回していた怪人とバッタリ鉢合わせる事になる。
『こ、これは……』
「私の絵の具は、本物の風景を映し出すの。真っ黒よりずっと綺麗でしょ!」
 慧華の言葉通り、その攻撃で色が変わった建物は、夕暮れ時に沈み行く夕陽に染まったような、まさに『夕焼け色』としか言えない独特な橙系の色に染まっていた。
 そしてその色は、慧華の想像以上の効果を怪人に与えていた。
『夕焼け……放課後……夕陽に染まる教室……ちくしょぉぉぉぉぉっ!?』
 色が連想させた情景が、心に突き刺さったらしい。
「……いや、何か勝手に妙な想像して嫉妬されても困りますわ」
 その様子に、慧華は思わず素の口調でツッコんでいた。

『だが、この嫉妬を炎に変えて――ジェラシックフレイム!』
 勝手に嫉妬した怪人の頭部から、抑え切れない嫉妬が炎となって噴出する。
「まーた、随分と黒が出しゃばったものね!」
 その炎の前に、割り込む銀色。
 横から飛び出した真守・有栖(月喰の巫女・f15177)が立ちはだかった。
「まっくろぶれいくな嫉妬の炎とやらは私には通じないわよ!」
 自信たっぷりな有栖だが、その自信は根拠がなく空回っている時が多い。だが――今回ばかりは、そうではなかった。
『なにっ!?』
 嫉妬の炎があらぬ方向へ逸れていく。まるで、有栖を避けたかの様に。
『……まさか……お前……』
「そうよ」
 訝しむ怪人の前に、有栖は進み出て。
「ちょこれいとを送る相手もくれる相手も、私には一人もいないわ……! えぇ、これっぽっちも!!!」
 それは――とても悲しい叫びだった。
「……ぐすっ」
『お前も……苦労しているんだな』
 涙ぐむ有栖に、怪人が思わず手を差し出して握手を求める程に。
「同じ孤狼同士。想う所はあるわ」
 有栖はその手を一度取って、しかしすぐに放した。
「だけど銀狼たる私は、心を暗くしたりはしない! まっくろはぁとをぴっかぴかのしるばぁーで塗り変えてあげる! 見せ場よ、月喰!」
 有栖の手が、腰の刀をスラリと引き抜くと、足元へと突き立てた。
 光刃『月喰』――その刃が発する銀光が、有栖が突き立てた周囲を照らし銀色に染め上げていく。
「ぴかっと! ずばっと! 染まりなさい!」
 有栖が月喰を振り上げると、迸った剣閃が真っ直ぐに銀色を引いた。
『や、やめろぉ!?』
 今度は銀色に染まっていく街に、怪人が悲鳴を上げる。
「止めないわ! まっくろどよーんよりも、きらきらしるばぁーで在るべきよ!」
『ぴかぴかとか、きらきらとか、バレンタインのラッピングじゃねえか!!!』
「シルバーがいやなら、黄色は如何デスか?」
 月喰を振るい続ける有栖に抗議する怪人の声に、詩朔・いちこ(試作一号・f17699)の声が重なる。
 その声が聞こえた直後、近くの黒い屋根から放たれた二条の黄色いレーザー光が、銀の剣閃の隙間を埋めていく。
『新手か!』
「術式起動……」
 怪人が見上げた先で、いちこの大型腕部に蒼い雷光が瞬いていた。

 ――時間は少し巻き戻る。
 散開した後、いちこは黒い街の片隅で足を止めた。
「それでは、初めマス!」
 いちこが持ち上げる、小柄な体に不釣合いなほどの大型腕部。そこに内蔵された魔導蒸気砲の砲口が露わになり、黄色い光が放たれた。
 その光が当たった地点が、黒から光と同じ黄色へと変わっていく。
「どんどん塗っていくデス!」
 両の掌から放つレーザー光で効果があることを確かめると、いちこは持ち上げた両手の角度を変えながら、くるくると回り出した。
 いちこが回れば、光も回る。
 角度を変えれば、足元から見上げる高さまで、光が届く。
 いちこの周囲が一通り黄色く塗り変わるのに、あまり時間はかからなかった。
「さてと。後は仲間の塗り残しを潰しながらいけば……こちらから仕掛けるには充分な面積を稼げそうデスね!」
 世界を覆う黒からすれば、いちこの光が塗り潰すのは幅細と言える。
 だが、その代わりにあるのが長射程。隙間や塗り残しを探しながら、いちこは怪人を探して街を歩き始めた。

 そうして塗り進めてきたいちこは、本来の力を放つだけの量を塗り潰していた。
「其は蒼雷、裁きもたらす真なる怒り! 魔導術式・雷迅砲――全力の迅雷の一撃を受けるが良いデス!」
 いちこの両掌の砲口から、蒼い雷光が迸る。
『そんなもの――セルフチョコすら出来なかったあの過去に比べれば!
 またも義理チョコぼりぼり貪る怪人の姿を、いちこが放った蒼く帯電したレーザー光が飲み込んでいった。
『ぬぉぉぉ! 俺のこじらせた嫉妬を舐めるな!』
「こじらせてる自覚あるんデスか!」』
 光の中から怪人が上げた声に、思わずいちこがツッコミ返す。
 だが、その光は怪人の体力を削るのみならず、余波だけでまだ黒かったところを雷光と同じ蒼に染め上げていた。
『ふ……ふふ……耐え切った! 耐え切ったぞ!』
 蒼く染まった上で、怪人が声を張り上げる。
『今の威力、またすぐには出せまい!』
『確かにワタシには無理デスね』
 そう。いちこには、だ。
「お家に帰る時間だよ!」
 慧華が手にしたバケツ――七色空絵具の中から、七色空絵筆を引き抜いた。
 筆先の色は、同じ夕焼け空の色。
「私も塗りが溜まったみたい。だから、夢を分けてあげる!」
 七色空絵筆は、空間もキャンバスになる。慧華が空間に描いたのは――人型と、長方形の四角いもの。
『なんだ、それは』
「こっちは貴方の未来の家族。想像の」
『想像!?』
 慧華が描いた人型の正体に、怪人がショックを受ける。
「で、こっちは貴方の家」
『冷蔵庫にしか見えんのだが』
「だってチョコでしょ?」
『そうだけど!?』
「内容は、どうでも良いんだよ。これでもう、この空間では貴方の体は私のもの!」
 何か言いたげな怪人に、慧華は蒼い瞳を向けて力強く言い放つ。
 絵の内容は問題ではない。空間に生きる絵画を描く事――それにより、その空間は慧華の絵画の、ひいては慧華の支配領域と化す。
「もうしばらく、その中にいて貰います」
『くっ……ツッコミたいのに、何故、この絵にアットホーム感を感じてしまう!』
 謎の感動を受けながら、空間に囚われる怪人。
『だが、この力、何時までも続くわけがない! 空間が解けたら、覚えてろ!』
 確かに、慧華の空間支配は時限式。
 だが――怪人がそれを指摘したその時。その背後で炎が立ち昇り、同時に怪人の視線の先で、氷の波が高々と打ち上がった。

●そして、全ての色が結実する
 氷の津波が打ち上がる少し前、少し遠く。
「水の精霊よ……氷の精霊よ」
 静まり返った黒い街の中で、瑠碧が目を閉じて精霊に呼びかける。
 その手に構えた水の精霊が変化した杖が淡い輝きを放つと、辺りの気温が急速に冷えて行く。それを肌で感じながら、瑠碧は杖を掲げて、振り下ろした。
 ザラザラと音を立てて、氷が水に流されていく。流れは勢いを増し、濁流を超えて氷の津波となって黒い街を一気に覆いつくしていった。
 氷の津波が収まった後には、黒かった街は青空よりも薄く淡い、瑠碧の髪の色にも似た青色に染め上げられていた。
「うん。広範囲に塗れたね」
 綺麗に青く染まったエリアを歩きながら、瑠碧はかな塗り残しを水弾を放って行く。
 そうして再び黒く染まったエリアに辿り着くと、精霊に呼びかけ、氷の津波で一気に塗り潰していく。
 その行程を何度か繰り返した後、杖を持つ瑠碧の指は、いつも以上に白く血の気が引いていた。
 ――エレメンタル・ファンタジア。
 精霊の力で、「属性」と「自然現象」を合わせた現象を起こす奇跡の業は、猟兵と言えども制御が難しい部類の1つ。
 氷の津波を何度も使って、反動が指が冷える程度で済んでいるのは、水の精霊と相性の良い瑠碧であればこそだろう。
「……そろそろ、行けそうだね」
 冷えた指をさすりながら、瑠碧はひとり呟く。
 今ならば、本来の力を振るえると何となくだが確信できていた。その力を敵にぶつけなければ、今まで以上に広範囲を塗り潰せるだろう。
 その分、制御も難しくなるかもしれない。
「スーパー塗りつぶし攻撃と行こうか。頼むよ、精霊たち」
 だが瑠碧は今まで以上に塗りつぶすことを選び、暴走を制御せずに精霊達の力を一気に解放した。
 もとより、ここはキマイラフューチャーであってキマイラフューチャーではない。ここに住む人はおらず、多少暴走したところで、困るのは空間を押さえている怪人だ。
「あの怪人も可哀想とは思うが……容赦はしないよ」
 瑠碧のスーパー塗りつぶし攻撃――ビルすら超える氷の大津波が、闇黒に染まった街を一気に洗い流していった。

『ああ……闇の黒の街が……チョコみたいな街が……これ以上させるものか!』
 街を染める氷にも何かを思ったのか、嫉妬の一念を高めた怪人が、夕焼け色の絵画が支配する空間をこじ開けて抜け出そうとする。
「何か出ようとしてるな――出てくるな!」
 そこに駆け込んできた珠が、巨大な木槌を怪人の頭に叩き付けた。
『ごはっ!?』
 まともに食らった怪人が、衝撃で絵画の空間に押し戻された。
『何をする!?』
「俺たちが充分塗ったと思ったから、頭のヒビを増やしてやろうと思ったんだが、大概頑丈だな!」
 怪人の抗議に言い返す珠の言葉の意味は、塗り足りたと言う事。
「了解。怪人さん――ごめんね☆」
『は? ――おわっ!?』
 それで察した慧華が、絵画の空間ごと、怪人を地面に落として叩き付ける。
『くっ! 上げて落とすとは――だがこれでごはっ!?』
 立ち上がった怪人の顔に、珠が再び振るった木槌がめり込んだ。
『ごばばばっ!?』
 吹っ飛ばされた怪人が、チョコ頭で滑っていく。
『な、何故だ。さっきので力を使い果たしたのでは――』
「そうでもないみたいだな!」
『くっ!』
 困惑しながらも、珠が振り下ろす木槌から、怪人は大きく飛び退って――。
 パァンッ!
 乾いた銃声が響いて、怪人の手足が撃ち抜かれた。
 ハイトが構えたライフルだ。
『な、なぜだ。何故力を振るえる!』
「塗りつぶさせて貰ったからね」
 そこに、やや疲れた顔で瑠碧が合流してきた。
「もう来年まで引き篭もれるような場所じゃないという事だよ」
『そっちから来たと言う事は、さてはさっきの氷……氷と言えば冬! よくもバレンタインを連想させる風景に――』
「もう眠った方が良い……そこまでの怨念を抱えたままなのも辛いだろうしな」
 こじれまくった嫉妬を燃やす怪人に、瑠碧は残る力で放つ水弾を叩き付ける。
『だとしても、あの時の氷と炎だけでそこまで――』
「まだ気づいていないのかな?」
 聞こえてきた新たな声が、空からだと怪人が気づくよりも、高速で飛来したアンナがその懐に飛び込む方が早かった。
『が、はっ……』
 飛び込んだアンナの手には、普段はあまり使わない終焉剣・ラストテスタメントが握られていて、怪人を貫いていた。
「黒を使うのが、あなただけだとでも?」
 告げてアンナが手を振るうと、小さな血刃が飛び出して、明るい黒が他の猟兵が付けた色を少しだけ上塗りした。
「もうこの空間、あなた好みのチョコっぽい黒は3分の1も残ってないんだよ」
 抉る言葉を告げるアンナの声はいつもと変わらなかったが、良く見ればその顔色は血の気が引いていた。ここに来るまで、どれだけ血刃を放ち続けたのか。
 終焉剣の鋸状の刃が怪人の命を吸い取り、アンナが削り続けた寿命へと変えていく。
 だが――!
『黒の色まで奪われたら、俺には何もないじゃないか……!』
 こじらせた嫉妬心のなせる技か。
 おそらく最後の力を振り絞り、怪人はアンナの剣を引き抜き、振り払う。
「嫉妬に狂った心ごと、麗狼たる私の銀光で染め変えてみせるわ……!」
 頭部から嫉妬の炎を漏らす怪人の前に、有栖が飛び込む。
「炎も黒も嫉妬心も、まとめて成敗よ……!!」
 手に馴染み出した月喰の柄を握り想いを込めれば、その意念が光刃と変わる。
 銀光一閃。
『――っ!!』
 迸った銀光の剣閃が、怪人を断ち切り打ち上げる。
「粘るな。もう、ゲームは終わりだ」
 その頭にまだ僅かに炎が燻る姿を見上げ、リーキーが告げる。
「壊れた心の真ん中を射貫いてやるぜ!」
 リーキーが振り上げた手から、いつも仕込んでいる小型ナイフの数本が飛び出し、怪人のチョコ頭の中心へと突き刺さった。
『ああ……まあ、こんな色も悪くないか』
 色とりどりの街の景色を最期に、力尽きたチョコ怪人が骸の海へと帰っていく。
 それと同時に、空間に僅かに残っていた闇のような黒も、チョコの様に溶けて何処かへと消えていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月06日


挿絵イラスト