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バトルオブフラワーズ④〜クッキングイェーガー・卵之巻

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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「大事なシステムが世界の中心に、なんて確かにお約束だけどさ。……このメンテナンスルートはダイナミックすぎない?」
 グリモアベースに集まった猟兵たちの前で京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)が頬を掻く。表情こそ常と変わらないが、その所作にはどこか困惑した様子が感じられる。
 彼が覗き込んでいるのは今回の事件に関する資料。そこには、南北真っ二つにパカンと割れたキマイラフューチャーの姿が記されていた。

「状況を整理しよう。キマイラフューチャーの重要システム『システム・フラワーズ』にオブリビオンが侵入した。この事態にシステムからの救援要請に猟兵が応えた結果、メンテナンスルートが開放された、というのが現状だね」
 そのメンテナンスルートというのが、文字通りキマイラフューチャーが二つに割れることで開かれるというのだから驚きである。
 ともあれ、道が開いたのであれば猟兵たちも早急にシステムにアクセスしなければならない。だが、そのためには解決しなければいけない問題があるのだった。

「システム・フラワーズにアクセスするには『ザ・ステージ』と呼ばれる六つの領域をオブリビオンから奪還しなくちゃならない。今回、皆に向ってもらうのは、そのステージのひとつ、『ザ・フードステージ』になるよ」
 資料に図示されたキマイラフューチャーの概略図。それを見れば、なるほど、システムフラワーズと思しき桜色の領域の周辺に、六つのステージが描かれている。まずはここを攻略しなければ、システムフラワーズ内部へと手出しすることは出来ないのだという。

「このザ・ステージだけど、それぞれに特殊なルールが設定されているらしくてね。たとえオブリビオンを倒しても、敗北条件を満たすと強制的に退去させられちゃうんだ」
 顎に手を当て、困ったように首を傾げる伏籠。このルールのために、単純に敵を倒すだけではステージの攻略は成しえないようだ。
 では、今回挑戦する『ザ・フードステージ』のルールとは。

「名付けて『シュウカクフードバトル』! ルールを説明すると、次のような感じだよ」
 舞台は長閑な牧場のような領域。ステージの中心に配置された巨大な収穫カゴに、オブリビオンの集団がえっちらおっちらと食材を集めている。
 彼らが集めているのは『タマゴ』。牧場を模したこのステージでは鶏やらその他の鳥類のタマゴが収穫できるらしい。
 困ったことに、収穫作業中のオブリビオンには攻撃を無効化する効果が付与されるらしく、猟兵たちの攻撃が通じなくなってしまう。
 そのうえ、彼らが一定量の食材をカゴに収穫すると、猟兵に敗北判定が下ってしまう。そうなれば、先述の通り謎の力でそのまま強制退去だ。

「つまり、こちらとしてはオブリビオンの収穫作業を中断させて、その上で彼らを撃退しなくてはいけないってことだね」
 しかし、攻撃が無効化されるのであれば、どうやって収穫作業を妨害すればいいのか。
 そこでだ。と、伏籠が人差し指を立てて作戦を説明する。どういうわけか、彼の口元には悪戯っぽい微笑が浮かんでいた。

「オブリビオンが収穫する『タマゴ』。これを使って料理を作っちゃおう」
 至極あっさりと言葉にされた今回の作戦。
 収穫中の妨害が難しいなら、収穫された物を消費してしまおう、というやり口である。
 勿論、料理にするのにも理由がある。

「料理が美味しそうなら、オブリビオンも収穫を中断して料理を食べてしまうはず。そうすれば『収穫中の攻撃無効化』は解除される。このタイミングが攻撃のチャンスだ」
 つまり、攻撃ではなく料理の誘惑で彼らの収穫作業を妨害しようというのだ。
 収穫された食材も無駄にしない、実にクリーンな作戦である。
 自分で料理して食べさせても良いし、料理班と戦闘班で役割分担するのもいいだろう。

「そうそう。収穫作業中のオブリビオンにも味の好みがあるらしいよ。なんでもそれぞれお気に入りの調味料があるとか」
 その辺りも考慮して料理するのもいいかもね。と、付け加える伏籠。彼の手元でグリモアが輝き、いよいよ猟兵たちを送り出す準備に掛かる。

「おいしい料理は世界を救う。頼んだよ、みんな!」
 その言葉を背に、猟兵たちは『シュウカクフードバトル』に挑むのだった。


灰色梟
 卵料理は好きですか? こんばんは、灰色梟です。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなりますのでご留意ください。

 今回は、タマゴ料理でオブリビオンたちを誘惑するシナリオになります。
 タマゴといってもロケーションは牧場。魚卵ではなく鶏卵です。
 また、タマゴがメインになるのであれば、他に食材を使う料理であっても問題ありません。
 皆さんのオススメ料理でガツンと勝負してみてください。

 なお、最終目的はオブリビオンの撃退なので戦闘も発生します。
 『料理のみ』・『戦闘のみ』のプレイングでもオッケーです。
 戦争攻略めざして、一緒に頑張りましょう。
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第1章 集団戦 『食卓の友同盟』

POW   :    マヨネーズ怪人・ウェポン
【マヨネーズ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    コショウ怪人・ジェノサイド
【コショウ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    しょうゆ怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【しょうゆ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

二天堂・たま
タマゴの収穫…?
“コンコン”で大概の物が調達できるキマイラフューチャーで、収穫とは逆に違和感があるな。

まぁいい。UC:フレンズコールで相棒(ひよこ)達を召喚し、調理の補助と給仕を任せよう。
ワタシはUC:神仙の料理術で発揮される技能を活かして料理を作りまくる。
作るのはそうだな…。
まずマヨネーズ、茹で卵、からのタルタルソース。
マヨ入りの卵焼き、ポテトサラダ。
主食に炒飯、天津飯、お好み焼き、釜たまうどん。
主菜はスコッチエッグ、オムレツ、アスパラと挽き肉のキッシュ、茶碗蒸し。
甘味系にオムレット、プリン、フレンチトースト。

ついでに毒使い・医術の技能で、ある程度食べ進めると発揮されるよう細工しておこう。



「えっさ、ほいさ」
「運べや運べ、まんまるタマゴ」
「割るなや割るな、そうっと降ろせ」
 リズミカルな掛け声とともに調味料頭の怪人たちが牧場を行く。
 彼らが手に持ったカゴに入っているのは、ステージの各所から集めてきたタマゴ。それを牧場中心の大きな収穫カゴにそっと移していく。

「みんな、タマゴは移し終わったかぁ?」
「おう。そうしたら、もっかい収穫に行こうぜ」
「あいさ、ほいさ」
 手持ちのタマゴをすべて入れ終わると、彼らは再び収穫に向っていった。
 陽気な掛け合いと共に遠ざかるその姿を見送り、物陰から人影(?)が姿を現す。

「ふぅむ? "コンコン"で大概の物が調達できるキマイラフューチャーで、収穫とは逆に違和感があるな」
「ピッピヨピー!」
 オブリビオンの立ち去った方向を眺めながら二天堂・たま(ひよこなケットシー・f14723)が訝しげに呟いた。周囲には彼の友人たるヒヨコたちの群れも佇んでいる。
 ひとしきりヒゲを弄って思索に耽った後、「まぁいい」と考えを打ち切ってたまは行動に移る。身長40cm弱のケットシーである彼は、同じく40cmサイズのヒヨコたちの背を借りて収穫カゴを上から覗き込んだ。

「ほう。これはなかなか……」
 覗き込んだカゴにはすでに大量のタマゴが集められていた。
 この量を消費しきるのは大変そうだが、逆に言えば、料理の途中で食材が足りなくなるということもなさそうだ。
 ならば、まさに『神仙の料理術』の出番というわけだ。

「相棒達よ、調理の補助と給仕は任せるぞ」
「ピピッ!」
 号令ひとつ。ヒヨコたちが散らばり、調理道具や食器を各々に構える。
 たまはカゴからタマゴを取り出し、矯めつ眇めつしつつ器を取り出す。
 猫の手で器用に殻を割り、器に落として中身を確認。満足そうにひとつ頷いて、彼は調理開始を宣言した。

「いざ! これぞ神域の料理術!」

 それは、もはやただの料理スキルではなかった。彼の持つ熟達の技量は、なんとユーベルコードの領域に達している。
 タマゴをかき混ぜつつ、ヒヨコたちに指示を出し、次の料理の準備も進め、完成した料理を盛り付ける。兎にも角にも手際が良い。
 恐るべき勢いで、ひたすら料理を作る。作る。作りまくる。

「まずはマヨネーズ。茹で卵。からのタルタルソース!」
 こだわりは調味料を自作するところから。新鮮タマゴでオリジナルのマヨネーズやタルタルソースが生み出されていく。
 料理も単品どころではない。コース料理も斯くやという勢いで次々に皿が並んでいく。
 オリジナルマヨネーズの卵焼きにポテトサラダ。
 主食にはパラパラ炒飯にふんわり天津飯。米料理のほかにもお好み焼きやら釜たまうどん。
 半熟とろとろスコッチエッグにオムレツ、キッシュ、茶碗蒸し。
 あまーい香りのオムレットやプリン、フレンチトーストに至るまで。
 完成したなら温かいうちにと、相棒のヒヨコたちもてんてこ舞いで配膳を急ぐ。

「あ、ヤバイ……、なんかいい匂いがする……」
「頭のマヨネーズに! 本能に刺さる気配が!」
 当然、調理場からはふんわりといい香りが漂ってくる。
 最初に惹かれたのは頭がマヨネーズの怪人たちだった。ふらふらと覚束ない足取りで並べられた料理に集まり始める。
 夢見心地な彼らの注目を特に集めているのはオリジナルマヨネーズを使った料理たちだ。

「よく来たね、キミたち。せっかくだから味見していくといい」
「猟兵……! って、え、いいの!?」
 調理の傍らたまが軽い口調で誘ってみれば、オブリビオンたちは見るからに喜んで箸を取る。
 たまが猟兵だとは気づいているハズなのだが、どうやら目の前のご馳走の魅力には逆らえないらしい。喜色満面、彼らは料理に箸を伸ばす。

「うまっ! この卵焼き、マヨネーズのまろやかさがめっちゃマッチしてる!」
「このオムレツ、外はしっかりと火が通っているけど、中はトロットロじゃん……!」
 うひょー、と舌鼓を打つ怪人たち。彼らは気づいているだろうか。食事を始めてから『収穫中は攻撃無効化』の効力が切れていることに。
 パクパクと料理を食べていくオブリビオンを見て、たまはこっそりと黒い笑みを浮かべる。

「結構結構。思う存分食べてくれたまえ」
 胸を張ってどこか尊大に言い放つケットシー。その手元に光る、怪しい小瓶。
 ひっそりひと匙。完成間近の料理にそれを加えて、オブリビオンに供する彼。

「いやぁ、本当にうまいな。まるで天国だ!」
 小瓶の中身は遅効性の毒物。
 彼らが本当に天国に行くことになるのは、そう遠くない話である。

成功 🔵​🔵​🔴​

仁科・恭介
※アドリブ等歓迎
WIZ
仁科の〇〇分クッキング
材料:卵、出汁(チキン、昆布)、枝豆、浅利、しめじ、クワイ、アスパラ、パプリカ、塩少々
別途パイシート

卵、出汁、塩コショウを混ぜ卵液をつくる
この時に空気が入らないように注意する
「ここがポイントですよ」
陶器性の耐熱容器に卵液と具を投入しパイシートで蓋をする
「パイシートで蓋をするんですか…」
「そうですね。クワイは食感、しめじは香りですね」
あらかじめ余熱していオーブンで湯煎にかけた耐熱容器を投入し焼き上げる。
「じっくりゆっくり焼くのが大事です。焦らないように」
焼きあがったら、パイを崩してお愉しみください
醤油はお好みで

夢中になっている隙に【携帯食料】を食べ攻撃


シュデラ・テノーフォン
卵美味しいよね、色んな料理に使えるし
ココの卵立派だなァ…張り切っちゃおう

好みの味付けあるんだね
なら最初はサラダにしようか
固茹で卵に水で晒して水気を切った新玉葱
後はアボカドと油を切ったツナを合わせる
味付けは塩胡椒に、マヨネーズを沢山
混ぜ合わせて出来上がり

胡椒メインならポーチドエッグかな
チーズ乗せて焼いたマフィンにカリカリに焼いたベーコン、その上に卵を乗せて荒削りの黒胡椒
チーズとベーコンの塩っけに最高だと思う

醤油なら卵かけ御飯だよね
オススメは親なし親子丼を作って
ソコにタラコとも一つ生卵落とす贅沢版かな
是非専用醤油で食べよう俺も食べたい

美味しかった?じゃお代は君達ね
複製銃の雨を浴びせてさようなら



「仁科と」
「シュデラの」
「「クッキング・ターイム!」」
 エプロン姿の男二人がタマゴ片手に調理台に向っている。
 仁科・恭介(観察する人・f14065)とシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)がステージ攻略のために行動を開始したところだ。
 まるでテレビの料理番組のように、声を合わせる二人。調理台にはきれいに食材が並べられている。
 突如始まった料理ショーを、収穫中のオブリビオンも遠巻きに眺めているようだ。

「はい。今日は新鮮なタマゴを使った料理を作りたいと思います」
「立派な卵だなァ……。張り切っちゃおう」
 収穫カゴから拝借してきたタマゴをそれぞれに準備し、二人は調理に取り掛かる。
 まずは、調理に時間が掛かる恭介のメニューからだ。

「最初に作るのは『アサリと枝豆のエッグパイ』です」
 材料はこちら、と恭介はどこからともなくフリップを取り出す。書かれている材料は、卵、出汁(チキン、昆布)、枝豆、アサリ、しめじ、クワイ、アスパラ、パプリカ、塩少々とパイシート。
 シュデラも自分の料理の下拵えと並行しつつ興味深げに恭介の調理を観察している。

「まずは卵、出汁、塩コショウを混ぜ卵液をつくります」
 空気が入らないように注意して、という言葉が遠くのオブリビオンの耳にも届く。
 彼らは収穫作業こそ中断してはいないが、ピクピクと耳の意識だけは調理会場に向いてしまっている。
 そうこうしているうちに出来上がった卵液を、恭介は陶製の耐熱容器に流し込む。

「ここがポイントですよ」
 そう言って彼が取り出したのはパイシート。卵液に下処理した具を投入してから、パイシートをそっと卵液に被せる。
「パイシートで蓋するのか」と隣で見ていたシュデラが呟いた。
 その通り、と頷きながら恭介のクッキングは続く。

「そうですね。クワイは食感、しめじは香りですね」
 パイ料理といえば、なんといってもサクっとしたパイの食感が魅力的だ。今回の具材も食感の楽しさを考えて選んでいる。
 パイシートを被せた耐熱容器は余熱したオーブンの中へ。その際、天板に容器の半分が浸る程度のお湯を張っておく。いわゆる、湯煎焼きだ。

「じっくりゆっくり焼くのが大事です。焦らないように」
 オーブンの戸を閉じた恭介が囁くようにコツを伝える。いつの間にか、聞き手のオブリビオンたちも調理場にだいぶ接近してきていた。一部の怪人に至ってはレシピのメモすら取っている。
 パイの焼き上がりまではしばらく掛かる。手の空いた恭介は食器を並べて完成に備え始めた。
 しかし、彼が準備していく食器は、どう見ても二人分以上の数が並べられている。これはもしや、とオブリビオンたちの間に期待と困惑の空気が流れ始める。

 さて、それではその間に。と、今度はシュデラが腕を振るう番だ。
「彼らにも好みの味付けあるんだね」
 小さく呟くシュデラ。集まりつつあるオブリビオンを改めて観察すると、頭部の形状が3パターンあることに気づく。
 すなわち、マヨネーズ、コショウ、そしてしょうゆの3タイプだ。
 なるほど、とひとつ頷いて彼は今日の献立を決定した。

「最初はサラダにしようか」
 まずはぐつぐつと鍋でお湯を沸かす。お湯が沸騰したら茹で卵を作りつつ、サラダの準備へ。
 玉ねぎは一度水に晒してからしっかりと水分を切っておく。
 これにブロック状に切ったアボガドと油を切ったツナを合わせ、輪切りにした固茹で卵を上に乗せる。
 味付けはたっぷりのマヨネーズと塩胡椒。具材と絡み合うように混ぜ合わせれば一品目のサラダは完成だ。

「次も沸騰したお湯を利用して」
 沸かしておいたお湯に塩とお酢を少々加え、あらかじめ割っておいた生卵を優しく投入。
 白身で黄身を包むように水流を作ってあげれば、あっという間に卵白が固形化する。
 そこから1分から2分くらい茹でてあげれば、白身は完熟、黄身は半熟のポーチドエッグの出来上がり。
 お湯から上げたポーチドエッグに組み合わせるのは、チーズを乗せて焼いたもっちりマフィン。
 フライパンでカリッカリに焼いたベーコンをマフィンに乗せて、その上にポーチドエッグを置く。
 仕上げに荒削りの黒胡椒をパラパラと。

「最後は卵かけご飯。これもひと手間加えよう」
 溶き卵を半熟になるようフライパンで加熱して、ドーナツ状にご飯の上に盛り付ける。
 ドーナツの『穴』にタラコと生卵を追加で落とせば、シュデラおすすめの贅沢卵かけご飯の完成である。
 味付けにはお好みで専用醤油をちょんちょんするといい塩梅だ。

「……これは俺も食べよう」
「私も貰っていいですか?」
 贅沢卵かけご飯。その破壊力は危険すぎた。猟兵ふたりもしっかりと自分の分を確保しておく。
 オブリビオンたちのそわそわ具合も最高潮だ。

「と、こちらも焼きあがりましたよ」
 ここで恭介のパイも無事完成。オーブンから取り出した容器からは、ほっかほかの湯気が上がり、香ばしい匂いを周囲に振り撒いている。
 皿に盛り付け、試しにとナイフでパイを崩せば、熱々の具材がとろりと漏れ出した。

「それでは、クッキングタイム終了です」
「完成品もやっぱり美味しそうだね」
 こうして食卓に並んだのは、茹で卵とアボガドのサラダ、チーズベーコンとポーチドエッグのマフィン、タラコ付き贅沢卵かけご飯、アサリと枝豆のエッグパイ、以上の4品である。
 タマゴ尽くしのメニューだが、それぞれ味付けの異なる逸品がテーブルの上で食べられるのを待っている。
 もはやオブリビオンたちも隠すことなくテーブルを取り囲んでいる。収穫なんて今はそっちのけだ。

「さて、実食はやはり」
「お客さんにお願いしないとね」

 それがトドメの言葉だった。
 どうぞ。と二人の猟兵に背中を押され、オブリビオンたちは迷いなく箸を取る。
 ひとくち食べればもう手遅れ。手間暇かけた料理に動き出した箸は止められない。

「このパイ! 生地がサクっとしたかと思えば、出てくる具材はとろとろ。クワイはほっくほくだし……、たまらん!」
「チーズとベーコンの塩っけにポーチドエッグが実に合う! 胡椒がアクセントになっていくらでも食べられそうだ!」
「サラダはマヨネーズたっぷり。アボガドと一緒に食べれば実に濃厚。うーん、嬉しいなぁ」
「ヤバイ、ヤバイって、この卵かけご飯。語彙が消える! ヤバイ!」

 やいのやいのと口々に感想を零しながらオブリビオンたちの食事は進む。
 作った料理が褒められれば、たとえ相手がオブリビオンでも、作り手としては嬉しいもの。恭介とシュデラも笑顔でその様子を見守っている。
 だが、悲しいかな、猟兵としての務めとなれば話はまた別。
 あっという間に料理を平らげたオブリビオンたちに、二人は静かに問いかけた。

「お粗末様でした」
「美味しかった?」

 満足そうな表情でお腹をさするオブリビオンたち。一方の猟兵たちの手には、いつの間にかそれぞれの武器が握られている。
 それを見てようやくオブリビオンの額に冷や汗が流れる。しかし、時すでに遅し。

「タダってわけにはいかないですから」
「お代は君達ね」

 恭介の刃が、あるいはシュデラの銃弾が、油断しきったオブリビオンたちに突き刺さった。
 なすすべ無し。彼らの決着はあっという間についたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シルヴィア・ジェノス
沢山美味しいものを作って、殴る。ふふっ私向けの依頼ね!
【料理】技能を駆使して、美味しい卵料理を手際よくささっと作っていくわ

刻んだ葱とソーセージ入りの卵焼き、卵たっぷりのカステラ、味がたっぷり染み込んだとろとろ黄身の煮卵、豆苗と卵の炒め物、キャラメルバナナとナッツたっぷり乗せたフレンチトースト、オムそば!と次から次へと卵料理を作っていくわ、なんだかたっのしー!!

敵が美味しく食べているところで
「美味しく頂いた?それは良かった、貴方達もニコニコ、私もニッコリ!これが、貴方達の最後の晩餐!」
と微笑んで、紅い雷撃で攻撃。美味しく食べている敵相手だから、ちょっとばかり気が引けるけれど仕方ないわよね


エダ・サルファー
卵って自分が主役にもなれるし、強力な脇役にもなれる。
便利で素敵な食材だよねぇ。
しかも安くて栄養価も高い。まさに庶民の味方だよ!

さてさて、今回はオムライスを作ろう。
何故ならオムライスはいかにも女子力高めだからだ!
誰にアピールするわけでもないが、たまにこういうことをしとかないと、すぐパワータイプ扱いされるからな!
あ、ふわとろのタイプも嫌いじゃないけど、私はチキンライスを薄焼き卵で包んだタイプのほうが好きなんだよね。
これを上手に包むところが腕の見せ所なのだ。
折角だしケチャップでハートでも描いとくかね。

んで、釣られた怪人たちは、全員聖拳突きの餌食になってもらうよ!
うん、パワータイプで間違ってないや!



 目を見ればその人の抱く感情がわかる、という表現がある。
 それに則るのであれば、瞳を星のように輝かせる彼女たちの胸中はあえて語るまでもないだろう。

「沢山美味しいものを作って、殴る。ふふっ、私向けの依頼ね!」
 藍の瞳がキラキラと。シルヴィア・ジェノス(月の雫・f00384)が包丁片手に腕まくりする。
 作るも食べるも大好物。その脳裏にはすでに無数のタマゴ料理が列をなしている。

「主役にもなれるし、強力な脇役にもなれる。卵って便利で素敵な食材だよねぇ」
 黒の瞳が爛々と。エダ・サルファー(格闘聖職者・f05398)はまな板を前に腕を組んで仁王立ち。
 ファンタジー世界の農村出身な彼女。安くて美味し栄養満点な卵は馴染みの食材だ。

「材料はたくさんあるし、私はいろんなオカズを作ってみるわ!」
「なら、私は主食にオムライスを担当しよう」
 瞳を交わし、ぐっと互いに親指を立て、二人は調理を開始した。
 牧場の台所を舞台に、エルフとドワーフの共同戦線が構築される。両者ともに慣れた手つきでテキパキと作業を進めていく。

「ふっふーん。まずは刻んだ葱とソーセージ入りの卵焼きから、と……」
 シルヴィアの掌でフライパンが躍る。ソーセージの旨味を卵が包み込み、やわらかく調和させる。刻んだ葱はアクセント、歯ごたえを楽しみつつ、口の中をさっぱりさせる。
 隣の鍋では半熟の茹で卵がたっぷりの漬け汁に浸っている。味付けはシンプルに醤油・みりん・砂糖の和風テイスト。じっくり待つほど味の沁み込む煮卵だ。
 小鉢には豆苗と卵の炒め物。シャキシャキ食感にほんのり甘い豆苗は、お口の気分を変えるのにぴったり。味付けは醤油ベースをやや薄味で。

「まだまだいくわよー。次は甘いもの!」
 小麦粉と砂糖で作るのはタマゴたっぷりのカステラ。オーブンに入れて待つ時間もまた楽し。ふんわりスポンジの黄金の輝きに胸が高鳴る。
 フレンチトーストは思い切って贅沢に。卵と牛乳に浸したトーストは、それだけでもじんわり優しい甘味なのだが、そこにキャラメルバナナとナッツをたっぷり乗せる! ナイフを通して口に運べば、とろける甘さだ。

「それからそれから……。ふふっ、なんだかたっのしー!」
 シルヴィアの顔に浮かぶのは純真な笑顔。料理の香りだけではない。その楽しげな気配までもが、オブリビオンを惹きつけ始めた。

「スイーツ……だって!」
 と、一方で何故かエダが稲妻が落ちたかのように衝撃を受けていた。その視線はシルヴィアの生み出すカステラやフレンチトーストに注がれている。
 その手があったか、と額を叩き彼女は天を仰ぐ。

「……いや、大丈夫だ。オムライスだって女子力は高い!」
 クワッと視線をニュートラルに戻し、エダは改めて気合を入れる。
 何故、女子力なのか。
 聖職者ながら、徒手空拳、肉弾上等なバトルスタイルのエダ。ともすればパワータイプ扱いされがちなのが密かに気になるところなのであった。
 誰にアピールするでもないが、こういうときにこそ女子力を発揮するべく、彼女の調理がスタートする。

「まずはチキンライスの準備だね」
 目指すはパラパラのチキンライス。ご飯は炊き立てではなく、水分がある程度飛んだ状態のものを使う。ベタつく食感はNG。水分の多寡に注意して炒めた具材が待つフライパンへ。鶏肉に火が通るまで炒めれば、チキンライスの準備はオッケー。漂うケチャップの香りが食欲をそそる。
 ここでいよいよメインのタマゴが登場となるのだが……。

「ふわとろのタイプも嫌いじゃないけど、薄焼き卵で包んだタイプのほうが好きなんだよね」
 薄皮を破いくと熱々の中身が、ほわぁ、っと出てくるのが堪らないんだよ。と、想像に頬を緩めつつ、エダはフライパンのチキンライスを一旦退避させる。
 空いたフライパンに溶いた卵を落とし、薄焼きになるよう熱し広げる。
 卵液が固まるのが見て取れたら、チキンライスを卵のベールの真ん中へ。
 さぁ、ここからが腕の見せ所だ。

「皮が破れないように、慎重に……、ライスを、包む!」
 ヘラも使って、少しずつ形を整えていく。
 そして、チキンライスが卵の中に隠れ切ったとき、フライパンから皿へとひっくり返す!
 緊張の一瞬。
 皿を覆ったフライパンが退いたとき、そこに現れたのはきれいな楕円形のオムライスだった。

「よしっ。……そうだ、折角だしケチャップでハートでも描いとくかね」
 彩りのパセリを脇に添え、仕上げにケチャップを絞り出す。ハートのマークで女子力倍増。きれいに完成したオムライスにエダは満足げに頷いた。

「わぁ、そっちも美味しそうね!」
「シルヴィアもたくさん作ったもんだねぇ」
 和気藹々と二人の猟兵が牧場のダイニングテーブルに料理が運ぶ。主食のオムライスを中心に、色とりどりのおかずが食卓いっぱいに並べられていく。
 その様子を窓から覗き込むのはオブリビオンの集団。いかにも美味しそうな料理の山に彼らの視線は釘付けである。

「あら、そんなところでどうしたの?」
「見てないでこっちに入ってきなよ」
 そんな彼らにたった今気づいたという体で猟兵が優しく声を掛ける。思わず顔を見合わせたオブリビオンたちも、結局は誘惑に抗えきれず、ふらふらとダイニングに入ってきた。
 猟兵たちに勧められるがまま食卓に着けば、素敵な料理はもう目の前だ。

「張り切って作りすぎちゃって困ってたの!」
「さぁさ、遠慮しないで食べてくれよ」
 そう言って、笑顔の美人ふたりが甲斐甲斐しく料理を世話をしてくれる。ここでやっぱりやめた、と言える男(怪人だけど)がいるだろうか。
 最初は恐る恐るのひとくち。しかし、ひとたび食べ始めれば、彼らの勢いはもう止まらなかった。

「こんなにあると何から手を出すか迷っちゃうな! 甘いものまで揃ってるし!」
「このオムライスは最高だぜ! チキンライスとタマゴを一緒に切り崩すと相性ばっちりな上に見た目もきれいだ!」
「は、ハートマーク……。うっ」
 ケチャップの形に胸を抑えて蹲る怪人もいたのはご愛敬。食卓を囲った怪人たちは賑やかに料理を口に運んでいる。
 ……当然、彼らを守っていた『収穫中は無敵』という加護は消えていくわけで。

「どうかしら、美味しく頂いた?」
 花咲く笑顔でシルヴィアが問えば「最高だぜ、ネエちゃん!」と声が上がる。
 隣で微笑むエダにもエールが飛び、彼女も手を振ってそれに応える。
 
「それは良かった、貴方達もニコニコ、私もニッコリ!」
「頑張って作った甲斐があったね」
 笑みを深くする二人。オブリビオンたちはまだまだ料理に夢中。
 彼らは気づくだろうか。シルヴィアの笑顔の裏に紅い雷が迸っていることに。あるいは、エダの拳が表情とは裏腹に固く握られていることに。

「それじゃ、十分に楽しんだところで!」
「これが、貴方達の最後の晩餐!」
 食事中なのはちょっとばかり気が引けるけれど。だからこそ、完全に不意をついた攻撃がオブリビオンの集団を一網打尽にするのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【SPD】(共闘・アドリブ可)
「シンプルな料理がいいわね」
他の猟兵さん達が作っていない玉子料理で勝負ね
■作戦
弟と分担して以下の料理を大量に作る
・卵たっぷりカルボナーラ
・卵たっぷりマドレーヌ
■行動
弟にはマドレーヌの作り方を教えて[料理]
自らはカルボナーラに挑戦
「パスタは得意中の得意なんだから」
炒めたベーコンに玉子と粉チーズに生クリームを混ぜて
茹でたパスタに絡め、仕上げに半熟卵をトッピング
「濃厚でコクのあるカルボナーラの完成よ」
手際よく何皿も作ってオブリビオンを誘い出し[おびき寄せ]、
食べ始めたところで【トールの雷鎚】で一網打尽にする
「ほら、フォルセティも食べるのよ」


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【POW】(共闘アドリブ可)
「なんだか面白そうだよ!」
フィオ姉ちゃんと参加。ボクはマドレーヌ担当だって
【行動】()内は技能
教わった通りにマドレーヌをドンドン焼くよ!
玉子に砂糖に薄力粉なんかを手際よく混ぜて、溶かしバター加えて
型に流したらオーブン焼くんだ。型が一杯あるからドンドン作れるよ
シンプルな蜂蜜を混ぜた物や、抹茶や紅茶を混ぜた物
ラム酒を効かせた物など、バリエーションも増やしてみるよ
「焼き上がりの香りが良いよね」
オーブンから取り出したマドレーヌの香りで食卓の友同盟をおびき寄せ
後ろ手にした箒でイスベル・ウラーノを叩きつけるよ
「いっぱいできたから、みんなにも配らないとね」



「えっさ、ほいさ」とオブリビオンたちの一群が卵を運ぶ。
 もうどれくらいの時間、こうして収穫を繰り返しているだろうか。ぼんやりとした感覚でも、ずいぶんな量の卵を運搬している気がする。
 だというのに、未だ収穫作業に終わりは見えない。ふと、周りを見渡せば、はて、他のグループはいったいどうしたのだろうか。彼ら以外の集団はどこにも見当たらなかった。

「なぁ」
「うん? どうした」
「俺たち、なんか少なくなってないか?」
「あー、どうだろ。サボってるのかな」
「サボるって。他にやることもないだろ」
「わからんけど、俺らはまだまだ運ばないと」
「……だよなぁ。あーあ、腹が減ってきたぜ」



「シンプルな料理がいいわね」
 目の前に並べたタマゴを見遣りつつ、フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)が呟く。
 グリモア猟兵からの情報で、他の猟兵たちが作った料理は把握している。どうせなら、まだ誰も作っていないメニューで勝負したい。
 ほっそりとした指を顎に添え、赤い瞳を揺らしてメニューを考えるフィオリナの傍らでは、彼女の弟であるフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)がタマゴ以外の食材や調理器具をごそごそと検めている。
「なんだか面白そうだよ!」とこのステージに飛び込んできた彼。オレンジの瞳を輝かせ、これからどんな料理を作るのかと期待を弾ませているようだ。

「よし、決めたわ。フォルセティ、ちょっとこっちに来て」
「何を作るか決まったの、フィオ姉ちゃん?」
「そういうこと」
 キッチンの探索を切り上げて戻ってくるフォルセティにフィオリナが頷き、指を二本立てる。
 メニューは二つ。それぞれ一品ずつ二人で分担して作る算段だ。シンプルな料理だから、レシピはフィオリナがレクチャーすれば大丈夫だろう。
 上出来と思えるプランに少し胸を張って彼女は献立を発表する。

「今回は『カルボナーラ』と『マドレーヌ』を作るわよ」
「パスタとデザートのセットだね。了解!」
 元気よく首肯するフォルセティ。この後、姉弟の話し合いの結果、彼が担当するのはマドレーヌのほうになった。となれば、自然、フィオリナがカルボナーラを担当することとなる。
 料理開始に先立ち、まずは弟にマドレーヌの作り方をレクチャーするフィオリナ。手順はそれほど複雑ではなく、説明にもそれほど時間は掛からない。彼女のコーチが終われば、いよいよ調理の始まりだ。

「さぁて。パスタは得意中の得意なんだから」
 フライパンを前に意気を高めるフィオリナ。今日のカルボナーラは卵たっぷりのアレンジ・バージョンだ。
 主役は卵。ベーコンはやや細かめにカットして引き立て役に。香ばしく炒めたところに卵と生クリーム、粉チーズを混ぜ合わせてソースを作る。
 麺は濃厚なソースがよく絡むように標準よりもちょっぴり太麺。芯が残らないようにしっかり茹でる。
 茹だったパスタを先ほどのソースに絡めてお皿に盛り付け、仕上げに半熟卵をトッピング。

「濃厚でコクのあるカルボナーラの完成よ」
 出来立てほやほや、湯気をあげる皿の前でフィオリナが会心の笑みを浮かべる。
 さぁ、オブリビオンをおびき寄せるためにも、まだまだ作らなければ。
 手際よく調理を続ける彼女の手により、食卓には次々とカルボナーラが並んでいく。

「ようし、教わった通りドンドン焼くよ!」
 こちらはマドレーヌ担当のフォルセティ。焼成用の型をいくつも並べて下準備に取り掛かる。
 まずは玉子と砂糖、薄力粉をボールでしっかり混ぜ合わせて、溶かしバターを加える。
 出来上がった生地を型に流し込んでオーブンに投入。あとは時間を守って火を通すだけだ。

「うん、これならドンドン作れるね。次のはちょっとアレンジしてみようかな」
 オーブンのタイマーに注意しつつ、彼は次の生地に挑戦する。混ぜ合わせる材料でアクセントをつけられるのもマドレーヌの楽しさだ。
 シンプルに蜂蜜を混ぜたものはもちろん、紅茶や抹茶を混ぜたものなら焼き上がりの香りが一味違う。ラム酒を効かてみればちょっぴり大人の味に。
 バリエーションを増やして生地を作っているうちに、オーブンに入れた型がこれまたドンドン焼きあがってくる。

「焼き上がりの香りが良いよね」
 オーブンの戸が開くたびに室内に甘くて香ばしい匂いが広がる。開いた窓から漏れる香りは、やがてオブリビオンたちの鼻にも届く。
 空きっ腹を抱えてキッチンに吸い寄せられる彼ら全員に振る舞うため、フォルセティはさらにたくさんのマドレーヌが準備するのであった。



「な、なぁ。こんだけあるんだからちょっとくらい食べちゃってもいいよな?」
「みなまで言うな。俺ももう我慢できねえ!」
 さて、一応は身を隠しているつもりのオブリビオンたち。彼らはキッチンで調理を続ける姉弟の目を盗んでこっそりと食卓に接近する。実際にはフィオリアもフォルセティも準備万端で待ち構えているところなのだが、それはさておき。
 テーブルに所狭しと並べられたカルボナーラとマドレーヌを前にして、怪人たちの我慢はもう限界だ。しびれを切らした誰かがフォークを手に取れば、雪崩を打って他の仲間たちも料理に手を伸ばしてしまう。

「カルボナーラに半熟卵だとぅ! くっ、フォークでつつくと黄身がとろりと……!」
「ソースそのものが濃厚なのに、卵を改めて混ぜてやると、よりまろやかになって……、崩れた白身の食感も楽しいな!」
「バリエーションがあって飽きないよ、このマドレーヌ!」
「かといって甘すぎるというわけでもなく……。生地がふんわりしっとりで舌に重くないのが素晴らしい!」
 空っぽのお腹にご馳走が入り始めれば、もはや隠れるつもりさえ消え失せてしまうようだ。
 口々に料理の感想を言い合う彼らの声は、キッチンまでばっちり届いていた。顔を見合わせた姉弟は、口元を綻ばせて調理の手を一旦休める。
 キッチンからそうっとダイニングを覗けば、調味料頭の怪人たちの姿がはっきりと見て取れた。
 もう一度顔を見合わせ、静かに頷きあう二人。それぞれ自前の武器を後ろ手に持ち、ゆっくりと怪人たちとの距離を詰める。

「七界へ轟け、雷神の鎚よ――」
「星霜纏いし冷厳の天王。黄天より招くは無窮の霊氷――」
 口の中で呪文の詠唱を転がす。漏れる言葉が耳に入り、オブリビオンたちが振り向くが、もう遅い。
 そこは、姉弟の射程範囲だ。
 杖と箒。二人の呪具が振り下ろされる。

「マルテッロ・デ・ユピテル!」
「イスベル・ウラーノ!」
 落ちるは雷撃と氷塊。逃げる間すらなく、具現した魔力の奔流がオブリビオンたちを打ち据えた。
 つまみ食いには鉄槌を。部屋中のオブリビオンが力尽き、その姿を失う。
 最後の最後まで料理に舌鼓を打っていられたのが、ほんの僅かな、彼らの救いだったろうか。



 かくして、シュウカクフードバトル・タマゴ編は猟兵たちの勝利で幕を閉じた。
 しかし、キマイラフューチャーを巡る大事件はまだまだ始まったばかり。
 猟兵たちは次なる戦場へと足を運んでいくことになるだろう。
 けれど、たまには少し歩幅を緩めるのだって大切だ。

「ほら、フォルセティも食べるのよ」
「わかってるってば。うん、いっぱいできたから、みんなにも配らないとね」
 怪人たちでは食べきれないほどに作られた卵料理たち。上手に出来たこれらを放っておくのも忍びない。
 姉弟はじゃれ合いながら料理を口に運び、しばしの休息を満喫するのであった。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月04日


挿絵イラスト