バトルオブフラワーズ⑤〜交通事故にはご用心
●黄色のあたりでアクセルを踏んでください
キマイラフューチャーの中枢こと『システム・フラワーズ』という名に相応しく、開く花弁のようにそれを取り巻く『ザ・ステージ』の一つ、ザ・ゲームステージにて、うごめく影が相当数。
そしてその影たちを打倒し、ステージの奪還に向けて集まりしは猟兵たち。
「戦争もまたゲームとは業もディープにてゴーゴー」
緊迫感とはかけ離れた旋律と共に、岩動・廻(うぃー・f03748)は集まった猟兵たちへと作戦の概要を説明する。なんでも、これから向かうザ・ゲームステージでは、猟兵たちがゲームの世界に入って、ゲームをクリアしないことには始まらないらしいと。
……なら、そのゲームの内容は?
「レトロかもしれませんしそうでないかもしれませんが、運転は得意ですね?」
猟兵の問いに返される廻の眼差しはどこか楽しそうで――ギターの音はどこかエンジン音を思わせるように低音を響かせる。
「イエス。イェーガーカートinキマイラフューチャー、スペシャルカップの開幕です」
レースゲーム!
すなわち、ゴーカート的な乗り物を操って順位や速いタイムやを競うゲーム。
「勝負は3周。最終的に猟兵たちの誰かが1位でゴールすればクリアです」
もちろん、ライバルキャラとなるCPU達もレースには参加するし、今回の騒動を起こした怪人――その配下である戦闘員たちもCPUに扮して猟兵たちの妨害をしてくるだろう。
「故に、うぃーからワンポイントアドバイスです」
……ピースサインをあげたならそれはツーポイントアドバイスではないか?
そんな猟兵たちの疑問も知ってか知らずか、マイペースに告げられたのは2つの助言。
速さを求めるゲームではあるけれども、このゲームは必ずしもプレイヤーの技量のみが問われるものではないと廻。そう、技量のほかに必要なものと言われればそれは――運と知識。
「コースの上には一定間隔でリングがあるので、それをくぐればスーパーアイテムがゲット可能です」
どんなアイテムが出るかどうかは運次第であるけれども、攻撃用のものもあれば防御用のものもあり、加速用のものもある。ここぞという時に使用できれば、プレイヤーにとって大きな力となるだろう。もちろん、スーパーアイテムはライバルたちも使ってくるため対策は必要となるが、ライバルたちがリングをくぐらないように工夫できれば一方的な恩恵を受けることができる。
「スーパーアイテムの種類ですが……ソーリー。うぃーも全部把握してません。バット、攻撃アイテムなる火器系統と防御アイテムなるシールド系統、加速アイテムなるブースト系統の三種類があると覚えていただければオールオーケー」
その三種類も、レア度によって威力や効果が異なると。一説によれば、順位が低ければ低いほどレア度が高いアイテムが出やすいらしいが……果たして?
「そして、レース会場となるコースですが……ショートカットコースもあります」
加速用アイテムを手に入れたなら、茂みに突っ込むも吉。もしくは、無造作に置かれたジャンプ板に高速で突っ込んだならば、カートは遥か上空を飛んでいくことが可能だろう。
「マップはレース前に確認できるので、突っ切れそうな箇所を覚えておけばクレバー。他は……早くスタートしたいのであれば、シグナル二つ目が点灯の際にアクセルを踏み込めばライクアロケット」
さりげなく重要な情報を付け足して、これがレーサーの得ておくべき知識と廻は微笑む。
かくして、技量と運と知識を合わせ、グランプリを勝ち取ったものへと授与されるトロフィーを猟兵が掴みとれば、晴れてステージ奪還への一歩を踏み出せる筈だと話を纏め。
「ただし、ゆーたちも承知の通り、戦闘員たちは諦めが悪いのでレースで勝てないとわかればトロフィーの前に立ちはだかります」
轢きたい気持ちはわかるけど、カートはあくまでレースをするもの。そのときはカートから降りて、いざやいざいざ物理で勝負!
さあ猟兵、スタートダッシュは忘れずに。
メヒ子
カニピラフー(挨拶)
お久しぶりのメヒ子です。
某レースゲーム的な感じですが、峠を攻める感じのプレイングでも大丈夫です。
大丈夫だと思います。
自己の技量を活かしてインを攻めるか、
自己の運を信じてアイテムに賭けるか、
自己の知識に基づきショートカットを選択するか、
先行逃げ切りか追い込みか。
そんな感じで自由にプレイングをいただければ。
レースメインで、戦闘についてはおまけ程度に考えていただけると幸いです。
猟兵同士協力していただいてもいいし、ひたすらに速さを求めていただいても。
●敵の情報(レース中)
戦闘員はレース中、フォーメーションを組んで大三元走法とかをしてきます。
大三元走法とは、
①後続の追い越しを防ぐべくコースの横幅一杯に広がる「白」の型。
②矢じりの形で前を行くカートに攻撃用アイテムの照準を合わせる「発」の型。
③一列に並び空気抵抗を抑える「中」の型。
といった3つの型を状況に合わせ使い分ける走法のことです。
第1章 集団戦
『雀牌戦闘員』
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POW : 国士無双
予め【異なる顔の戦闘員が14人揃う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 三元牌
【3人同時攻撃】による素早い一撃を放つ。また、【鳴く】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 立直
【相手の行動を読み、作戦通りの攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【狙いすました一発】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:ケーダ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アーサー・ツヴァイク
※改変絡みピンチ可 、🔵過多なら不採用可
なんてこった…まさか俺らがマ…イェーガーカートの走者になるとは!
だがこうなったらやることは一つ、自慢のバイク・ライドランで参戦だぜ!
…カート? いやいや、最近のはバイクも使えるから大丈夫でしょ。
最初は大人しくレギュレーションを守った走りをして、オブリビオンの後ろを取る。妨害行為を見つけたら、こっちも反撃だぜ!
妨害する敵は…あーいつもの豆腐軍団か。お前らの弱点は知ってるぜ!
正面の焼き印、あのマークを弄ると普段の力が発揮出来ないってな!
真っ白な奴に照準を合わせて【レイシューター・フルバースト】で顔に穴開けてやるぜ!
トリテレイア・ゼロナイン
たとえ星が二つに割れようと騎士としてやるべきことは変わりません
システムフラワーズを奪還し、キマイラFに安寧を齎すため戦うまでです
レースゲームのルールにも見事適応してみせましょう
マシンはサイズから考えて重量級、小回りと加速力には劣りますが最高速はトップクラスです
直線コースで速度を稼ぎ、カーブは●操縦テクニックと●騎乗技術の体重移動で速度低下を可能な限り抑えます
ほどほどの順位を確保しつつ、速度を犠牲にしてでもアイテムを敵より多く確保
そのアイテムでトップを走る猟兵を狙う敵を妨害したり、防御アイテム、または大きな車体で●かばいサポート役として立ち回りましょう
レース終了後はカートを鈍器として振り回し殲滅
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(共闘アドリブ可)
「レースゲームは大好きだよ!」
フィオ姉ちゃんと参加。加速性が高い車体が軽いカートを選ぶね
【行動】()内は技能
フィオ姉ちゃんと事前にコース情報を確認しショートカット個所を把握
シグナル二つ目でアクセル全開ロケットスタート
直線は(ダッシュ)、カーブは(操縦)を駆使してドリフトターン
とにかくトップを維持するよ。ショートカットコースを攻めながら
茂み・ジャンプ台手前で加速アイテム使うよ(ジャンプ)も駆使
UC使えるならフォルマ・ベンダバール使うよ
お立ち台前で邪魔する戦闘員に対しては「九蓮宝燈!」と叫びながら
(全力魔法)でカラミダド・メテオーロを叩きつけるよ
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【SPD】(共闘・アドリブ可)
バランス型のカートを選ぶわね
■準備
ゲーム内のコースデータを収集
レース中はインカムで弟と通信・情報共有
■作戦
弟をトップ独走させ自身は2~3位で防衛に徹する
■行動
ロケットスタートで弟の後ろにつけ[ダッシュ&操縦]、2~3位で防御アイテムを狙う
バックミラーで戦闘員達が発型であれば防御アイテム(カニ甲羅)を垂らして
中型であればカーブなどでさり気無くアイテム放出
アイテムがない時は(ジャンプ)やコース壁で防ぐ(地形の利用)
ショートカットは加速アイテムの有無などで判断
無理に攻めず安定走行に徹する
戦闘員達の悪あがきに、【バベルの光】を[全力魔法]で撃ち落とす
エーカ・ライスフェルト
【騎乗】はできるけどゲームはさっぱりよ
【電脳ゴーグル】を使って【ハッキング】というのも難しそうね
だから【世界知識権限】で【世界知識】を高め、このゲーム(あるいは類似のゲーム)についての情報を入手する
ショートカットと、出現アイテムについての乱数の情報が欲しいわ
「確か乱数調整といったかしら」(奇妙なポーズをとったり無駄に加減速する
攻撃アイテムが手に入ったら、積極的に敵やお邪魔CPUに対して使う
「猟兵が1人でも優勝すればいいのでしょう? ならこういう戦い方も有りよね」(デフォルメされたロケット弾を発射しながら)(テニスボール大のマキビシを大量にばらまきながら)
ショートカットは先回りに利用するくらい?
レムナント・ノア
レースでしたらわたくしにおまかせなさいオホホホ!!
スタートダッシュを焦ってはいけません。
優雅にワンテンポ遅れて出て戦闘員の後をつけますわ。
取りこぼしのアイテムゲットを華麗に狙って参ります!
残り物には福があるっておっしゃるでしょう?
攻撃アイテムなら攻撃をぶつける!
防御用アイテムならシールドで強化した車体をぶつける!!
加速用アイテムなら車体をぶつける!!!
オホホホホ! 完璧な作・戦! ですわー!!
すべての車をスクラップにしてしまえばわたくしの優勝間違いなしですわね!
オホホゴーゴー!
あらジャンプ台ですの?
わたくしにピッタリの装置ですわね!
アクセル踏み込んで行きますわよ!
オホホホホ!! ア゛ッ横にズレ
冬晴・キーラ
フィリップの野郎(f05496)と合わせ希望。
やったー、ゲームだー☆
でも、キーラちゃん運転できねーからフィリップのやつに乗るぜ☆
バイクも可愛くデザインし直したろ。バーチャルだし★
アイテムを制するものはイエーガーカートを制す!
つーわけで、事前にアイテムの乱数を調べといて、いい感じにまくれるタイミングでリングをくぐるように後ろからナビゲートするぜー☆
加速用にコインを拾い集めさせてー、妨害用におやつのバナナを持ち込んどくー★
最後に★を使ってびゅーんと無敵でスーパーに加速してゴールインだ☆
最後の戦闘は『ぬいぐるみさんチーム』になんとかさせる。頑張れ☆
フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。
よっしゃ、レースなら俺の独壇場……?
いやちげえなこれ、ルール読む限り普通のレースじゃねえな。
攻撃?攻撃できんの、このレース?物騒過ぎません?
コースの中でショートカットできそうな場所確認しときますか。
バイク型のカートの後ろにキーラを乗せて、分担していこう。
そのぐらいできんだろ、キーラはバーチャルキャラクターだし。
できないんならなんのためのバーチャルだよお前。
俺が運転、キーラが攻撃&防御って感じか。
まずはスタートダッシュはもちろん狙いますよね。
その後、アイテムは積極的に取っていきてえな。
加速やジャンプでショートカットできるところもどんどん飛んでいきましょうね。
ジョー・グラム
速さじゃない、強さって奴を見せつけてやるよ。
カートは紫に塗って乗り込む。
ギャギャギャギャッ!って感じで曲がり、ゴゥッ!って感じで加速する。
リング手前で敵を捉えたら体当たりでアイテムの取得を妨害。
「悪いな、やり込んでるんだ。この手のは」
コーナーを曲がるときには、相手の内側から体当たりではじき飛ばしながら自分が復帰するスタイル。
「メーターはとっくにレッドゾーンだ。いくぜぇ」
直線での勝負になれば、カートにガジェットでブースターを取り付けて加速する。
「負けても良いなんて死んでも思いたくないね。俺は」
雛杜・雛乃
搭乗するカートはエゾヒグマを模したボディの重量級スピード型。
「いくですよー! 熊之介号ーー!!」
ロケットスタートに成功したら、直線コースで更に加速。
ス○ッチで慣らしたドリフトテクを華麗に決めます。
アイテムには脇目も振らず、ひたすらスピードを追求します。
「あっ、あーーっ!! 危ないのです!!」
怪人がアイテムを取ろうとしていたら、故意か過失かぶつかっていきます。
自分の勝利にこだわらない、やりたいことをやるタイプ。
戦闘になったら<ライド・オン・クマー>。
本物のエゾヒグマに乗り換えて怪人達に突撃します。
「本物の熊之介の力を見せてやるのです!」
●選手入場
イェーガーカート開幕!
ゲームの世界であれど選手を見つめる歓声は熱く。
否、ゲームの世界であるからこそ、この歓声は止まるところを知らない。
『これより、選手の入場を開始します』
機械的なアナウンスが流れれば、スタート地点に移動していく猟兵とNPCたち、そしてその操るカートの姿がサーキットの上方に位置どられたスクリーンに映し出される。
基本となるバランス型のカートの他、最高速重視の重量級カートに、加速性重視の軽量級カート。
そして、自らのパーソナルカラーに彩られたカートもあれば、バイク。
「「「今バイクって言った?」」」
頭の四角い――どう見ても戦闘員たちが扮しているであろうNPC達が一斉にバイクの方を向く。
「いやいや、最近のはバイクも使えるから大丈夫でしょ」
「そうそう、バイク『型』ですから。ね?」
視線の先にいる二人のライダー、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)とフィリップ・スカイ(キャプテンスカイ・f05496)は笑みを携え堂々と。何もルールには違反していないと、こっちを向くなとNPC達に手を振って。
「それにしても、そっちのは随分と……可愛いバイク『型』だな?」
「俺の趣味じゃないんですけどね。そちらのも……ドラゴンヘッドですか?」
今日のレースは二人でWライダーならば、お互いの愛機が気になるのも致し方なし。
では、誤解も解けたところで他のカートに目を配れば、エゾヒグマ型のカートが静かに鎮座している。
「「「エゾヒグマ???」」」
頭の四角い奴らがまた振り返って来たので、乗り主の雛杜・雛乃(継ぐ者・f06541)は先人の答えをなぞるように笑みを携え堂々と。
「エゾヒグマ『型』なのです」
そっかー、最近そういうカートも巷でひそかに大流行しているって言うもんね。でも巷でひそかに大流行って流行ってはいないよね。
『それでは、選手の紹介を開始いたします』
アナウンスが進行した以上、問題ないと判断されたのであろう。首をひねりつつも前に向き直るNPC達の紹介もそこそこに、猟兵たちの紹介がスクリーン上に映像と共に流れ出す。
『嗚呼、果たして栄冠をつかみ取るのは誰か?』
ハードのスペックを活かしたような過剰な演出により、聞こえる歓声の音量も一段階と上がり。
用意された熱狂のるつぼは、今か今かとシグナルを待つばかり!
「……速さじゃない、強さって奴を見せつけてやるよ」
その渦中、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)は瞑目し、独り言ちる。
ゲームの世界とはいえ、焼けるような熱を感じるのはサーキットに揺らめく陽炎のせいだろうか。いいや、これは――猟兵同士で芽生える対抗心かもしれない。
この世界の勝利条件としては、いずれかの猟兵が一位でゴールすることであった。それはわかる。
しかし、では今一度考えてみよう。その一位になる猟兵とは、誰か?
「レースゲームは大好きだよ!」
「レースでしたらわたくしにおまかせなさいオホホホ!!」
「やったー、ゲームだー☆」
三者三様、十人十色。
各々の思いを束ね、今、シグナルが点灯する――!
●爆走猟兵レッツエンドゴー!
シグナルが青に光れば、誰が教えるまでもなくレース開始のサイン。
そして、エンジンを温めつつ最適のタイミングでアクセルを踏み込んだならば、ロケットと見紛う加速が約束されるこのゲーム世界。
開幕で差をつけんと、前方に配置されたNPCたちを抜き去らんと――決意を込めた加速がサーキットに豪風を巻き起こす!
「アクセル全開の、ロケットスタート!」
まず飛び出したのは、フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)。
軽量級故の超加速力にて一気に前へと飛び出せば、数台が続くようにしてトップ集団を形成していく。
「どうかな、フィオ姉ちゃん?」
「悪くないわ、フォルセティ。そのままよ」
スタートダッシュを成功させた達成感と共に、インカムの先にいる姉――後ろを走るフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)へと感想を求めれば、返ってきたのは言葉少なめの所感とレースの指示。
「オッケー! このまま行くね!」
弟からの元気良い返事に、内心の感情を冷静に押し込めつつフィオリナは確実にリングをくぐっていく。素直に言葉にできないのならば、弟の頑張りには行動で応えなければならない。そう、片方が独走し、片方がサポートに徹するという作戦がソルレスティア姉弟の作戦だった。ならば、サポート役として、姉として、スーパーアイテムの取り逃しは絶対に許されないと。
『オウオウ、俺たち『白』メンズの前を走ろうなんざ、十巡ぐらい早いんじゃn』
「邪魔」
防御アイテムがほしいのに、と。フィオリナの放った攻撃アイテム「緑コーラ瓶」がフォルセティの妨害に出たNPCに直撃する。
『ゴミはゴミ箱にィィィィ!!』
哀れ、スリップしたままコース外に弾き飛ばされていくNPC。そう、このように防御アイテムが無い状態で攻撃アイテムを喰らうと、一気に順位を落としてしまう。イェーガーカートの戦いは甘くないのである。
「普通のレースなら俺の独壇場……なんですがね」
その光景を目の当たりにしつつ、負けじと続くはフィリップ。カートと比較すれば横幅がスリムであるバイク型。その形状を活かしスタートダッシュの勢いそのままに、前方のカートの隙間を縫うように突っ切り先頭を追う。
「さっすが、やるじゃーん☆」
6歳だし運転できないからー★ という理由でフィリップのカートに同乗する相棒――冬晴・キーラ(星空アジタート・f05497)がいつもの定位置からご機嫌そうに声をかけるも、フィリップの声はやや硬い。
彼らの作戦は、凄腕の運転技術を持つフィリップとバーチャルキャラクターたるキーラとで、運転とナビを分担するというものなのだけれども――、
「いやいやいや、このレース物騒過ぎるだろ!」
「それはまあ、ゲームだし☆」
「気軽に言うけどお前! あと俺のバイク勝手に改造しただろ!」
「それはまあ、ゲームだし★」
「せめて俺がまるで少女趣味みたいなデザインはやめてくれませんかねえ!」
今起こっている出来事をうまく消化しきれないフィリップと全て受け入れているキーラとで見事に1台で喧噪を巻き起こしている。
「あー! フィリップ、ミニジャンプしてミニジャンプ! 乱数乱数☆」
「何だよミニジャンプって――」
と、その喧噪を刈り取るかのような殺気。
「いくですよー! 熊之介号ーー!!」
先頭集団が直線に入ったならば、その声と共に雛乃のエゾヒグマ型カートが後方からすさまじい勢いで猛進を始めた。アイテムのためのリングなどはその目に映っておらず。進路方向にあるNPCのカートを障害物として、次々とその超重量級ボディによりコース外へと弾いていく。
『お、お前ー! 俺たちが『発』ガイズだと知っての所業k』
「あっ、あーーっ!! 危ないのです!!」
『安全運転ーーーー!!!!』
危ないのはお前だ。そう、声にならない悲鳴を上げてクラッシュするNPC。
一方、エゾヒグマボディには一切の傷もないものの、多少の汚れは見受けられて。そのボディに残る他カートの塗膜跡が示す通り、ロケットスタートから今まで、何台のNPCを屠って来たのか、想像に難くない。
そうして今、ただ速度のみを求めるだけの純粋な意思が、天災のようにサーキットを爆走しフィリップ達に並ぶ。いや、しかしこの先はカーブ。果たして、その速度で曲がり切れるものか?
「ふっふっふ、こう見えてもぼくは普段からゲームで慣らしているのです」
限界速度でコーナーに進入したエゾヒグマのハンドルを、雛乃がえいやと切ったならば――ドリフトターン! エゾヒグマが意思をもってコーナーの内側に喰らいついたかのように、勢いはそのまま、ボディをスライドさせていく。
「へー、なかなか楽しめそうじゃん☆」
「こいつは……負けてられませんね!」
あの活躍に相棒が影響を受けて、ゲームだろうがバーチャルだろうが、バイクを熊型にされたら溜まったものではない。衝撃の光景を劇薬として、自分を取り戻せたようならばフィリップも負けじとハンドルを握り、雛乃を追う。
「あ、フィリップ。今度こそ次のアイテム前で乱数だからな☆」
「だから乱数ってなんだよ!」
自分を取り戻してもなお、喧噪は続くままに。
●守りの二周目
歓声と騒音、そして少しばかりの悲鳴と共に、レースは無事二周目に。
トップは未だ猟兵――フォルセティ。
直線の踏み込みとカーブのブレーキ・ステアリングを巧みに使い分けるその技量の高さに、事前にフィオリナと予習したショートカットコースが叩き込まれているならば、その走りは安定していて。
加えて、フィオリナがしっかりと防御用アイテム「カニ甲羅」をちらつかせ、背後に迫るNPCをけん制しているならば、がちりがちりと鋏を鳴らすそのシールドを前に、かの大三元走法もその強みを活かせない。
『俺たち、『発』の型の戦い方を知っているとでもいうのか……!?』
ならばと、陣形を変更しようにも思ったように他のNPCが揃わないのは、果たして偶然か。
「たとえ星が二つに割れようと、騎士としてやるべきことは変わりません」
否。偶然などではない。
どのような状況であったとしても自分は、システムフラワーズを奪還し、キマイラフューチャーに安寧を齎すため戦うまでと。一台の重量級カートがトップ集団よりも後方、追い上げんとするNPCたちの前に立ちはだかっている。
「あなたたちに取らせるアイテムはありません」
『こいつ、わざと私たちと並走してるの……!?』
白き騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は他の猟兵の盾となるべく、まずは車体を活かしてNPCのカートにぶつかるようにしてリング通過を阻害。先頭へのアイテム使用を制限したならば、次はNPCの車線に割り込むようにそのハンドルを切る。
『なら……大三元が紅一点、『中』ニャンズの俊足で置き去りにするまでよ!』
大三元走法が中の型。周囲のNPCカートがトリテレイアから距離をとれば、縦一列に並び陣形を組む。前を走るカートが後ろを走るカートの空気抵抗を減らす、言ってしまえば単なるスリップストリーム! 一人でも多く、前へとNPCを送り込まんとする作戦ならば、トリテレイアもそれは見逃せない。
「この見た目通り、騎乗は心得がありますので」
愛馬ロシナンテⅡとはいかないが、馬もカートも似たようなものと。先ほどまでの走行があくまでNPCに合わせた走りだったならば、まだ全力は出していない。重量級のトップスピードは、先ほどのエゾヒグマが証明した通りのものならば――いざ踏み込まん床の底まで!
『でも、この先は連続カーブよ! そんな速度だったら……』
「この程度、曲道とはいいませんよ」
それは、自惚れでもなければ誇張でもない、確固たる自信。
積み重ねし騎乗経験、そして確かな操縦技術が可能とする体重移動によって後輪のグリップを減少させれば、ステアリングと共に車体を流し。かの車体はスピードを落とさずにぴったりとNPCの前を
塞ぐ。
『くっ……ならば、まずはお前からだ!』
温存するはずだった攻撃アイテムの照準を、トリテレイアに合わせ。スリップ確定の、「赤コーラ瓶」をNPCが振りかぶったその瞬間。
「オホホホホ! 完璧な作・戦! ですわー!!」
後方から加速用アイテムで飛び出したレムナント・ノア(おてんば・f07798)が、勢いよく音を立ててぶつかりにいったならば、かの「赤コーラ瓶」の狙いはそれて、前を行く別のNPCの背中へと。
『何してくれてんのお前ーーー!?』
『私も被害者なんだけどーーー!?』
かくして、起きるスリップ巻き込む味方。上がる悲鳴はNPC。
「残り物には福があるっておっしゃるでしょう?」
ぶつかった衝撃もなんのその。ウインクと共に抜き去った相手へとポーズをとれば、次なるアイテムを求めてハンドルを握るレムナント。そう、彼の完璧な作戦とやらを遂行するには、何よりもアイテムが必要だ。果たして、その作戦とは――、
攻撃アイテムなら攻撃をぶつける!
防御用アイテムならシールドで強化した車体をぶつける!!
加速用アイテムなら車体をぶつける!!!
「すべての車をスクラップにしてしまえばわたくしの優勝間違いなしですわね!」
要は、アイテムを拾って車体をぶつける。それだけのことなのだけれども、この男はあえてスタートダッシュを遅らせて、NPCを視界に捉え続けた状態を保ち、一体ずつ屠っていくという徹底ぶり。
「オホホゴーゴー!!」
高笑いとともにアクセルを踏み込めば、やがて彼は騎士と並ぶ。
そして図らずとも守られる形となった騎士は、事故もとい自己を省みずNPCにぶつかっていく彼を、己と似た立ち位置と定義する。
「助太刀感謝します。あなたも、志を共にする方ですか」
「あら? あなたも?」
「ええ、騎士として」
どこか食い違いそうな会話も、スピード感は些細な疑問を置き去りにして。
互いに同志を得たと思うなら、アクセルを踏み込む力はより力強く。
「ぼくもいるのですー!」
突如として、コース外の茂みから飛び出してくるエゾヒグマ『型』の巨体が、追ってきたNPCを場外へ弾き飛ばす。
何故だか雛乃がハンドルを切った先にアイテムをとろうとするNPCが居たならば、雛乃はいつしかトップ集団を離れ、トリテレイアやレムナントと同じ集団に合流して。
「これは心強い。では」
「最強! 最強ですわよー!」
「どんどん行くのです!」
攻撃的ディフェンスラインが組みあがったならば、三人が横に並んだ様はまさに鉄壁。
しかし、そこはNPCもさるもの。
『調子に乗るなよ猟兵共……俺たちの数を舐めるんじゃないぜ!!』
決してあきらめずに後方より多数の影が迫るなら、中盤で開かれるは丁々発止のバトルレース! ぶつけぶつかり止まって止めて。
猟兵たちの勝利を確固たるものにするため、今――剣戟ならぬ車戟の音がサーキットに響き渡る。
●意地と覚悟の三周目
後続集団が混戦模様となりつつも、レースは既に三周目。
ここで、様子を見ていたアーサーが動く。こうなることを予見して、ずっと後方からNPCたちの動向を伺っていたところ、混戦の規模が拡大したのであればいよいよ出番だと。
「そっちがその気なら、こっちも反撃だぜ!」
正義の改造人間、暁の戦士ドーンブレイカーとしてルールなき行為は見逃せない!
リングを通過し、手に入れたアイテムを右手に掲げれば――それは目の前を打ち払うのに足りる、攻撃アイテム系統スーパーレア、「サンダーガン」!
「こいつが、今の俺にとってのレイシューターか」
搭乗しながらの射撃はお手の物。ならばと、ソーラーパワーを集める要領で銃を握れば、その銃口には稲妻の輝きが溜まり。
「おい、豆腐軍団! お前らの弱点は知ってるぜ!」
『誰が豆腐だ、誰が!?』
一応、NPCとして正体を隠しているはずだけれども、そう叫ばれると声の方を振り向かざるを得ないのが戦闘員の哀しい性か。声の届いたNPC達はカートを運転しつつも器用にアーサーの方を向きなおり、白くて四角い連想を止めるようにと抗議を述べる。
「そうだな、豆腐じゃなくて――これから焼き豆腐になるもんなあ!」
一方、アーサーはハナから相手をするつもりなどなく。目標の顔が此方を向いたならそれでよしと。かの弱点たる顔正面の彫印目掛けて、躊躇いなくトリガーを引く。先の戦いの経験によれば、彼らは弱点を突かれると、本来の力を出せない筈だと。
『や、やめっ!』
『顔が焼かれて力が出ない……』
『顔はやめてー!!』
スーパーレア故、攻撃回数は一度にとどまらず。正確な射撃が複数回続いたならば、NPCたちが敷き詰めた防御アイテムは剥がれ、妨害の陣形はところどころに綻びが見え始める。
――ギャギャギャギャギャッ!
そして、その綻びへとまっすぐに突っ込んでいく紫の軌跡がひとつ。
甲高い響きを上げながら走るそれは紫電か? いいや、ジョーだ。
「さあ、こっからは真剣勝負の始まりだ」
彼が意趣を込めてカラーリングしたそのカートは、小刻みに振動を続けながら加速を続ける。よりどん欲に速さを求め、より真剣なる勝負を求め。
『お前たち、『白』の型だ!!』
NPCたちも、これ以上猟兵に好きにさせるわけにはいかないと。各員に通達されし号令は、大三元走法は守りの走法と言われる白の型。無事であったNPCたちのカートがコースに横に並んだならば、ジョーの進路を塞ぐように物理的な障壁が生まれる。
だが――、
「悪いな、やり込んでるんだ。この手のは」
それは誰しも考える手段ならば、破る手段とて無いわけではないとジョーは皮肉気に笑う。その言葉の真偽を証明するかの如く、彼の表情に一切の焦燥はなく。加えて、次のカーブにてハンドルを切る様子もなければ、カートがとる進行方向はインに、コースを突き抜ける進路。
『破れかぶれか!』
「いいや、予想通りさ」
通常であれば、コースアウトによる減速が約束された進路にも、ジョーは速度を緩める気配までなく。まるで、自分で曲がることは考えていないかのように。
「その角度、利用させてもらう」
そう、自分で曲がらずとも――何かに当たれば自然と曲がるのだと。
かくして、直線で進入したジョーの車体は、カーブを曲がるために斜めとなったNPCの車体に衝突し。相手をそのまま弾き飛ばせば、自身は勢いを殺すことなく、その斜めの角度のまま滑るようにカーブを走っていく。
『ま、まさか。最初からこれを狙って……!?』
『貴様、このゲーム――』
「やり込んでると、言ったはずだ」
そして直線に戻れば、彼の視界を阻む壁は消えて。轟音を立てて更に加速を続けていく。
「流石ねえ……私、ゲームはさっぱりよ」
その光景を見て、嘆息するようにエーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は片手間に車体の制御を続けていた。運転はできるけれど、こういったゲームについては疎いのだと。
だからこそ、彼女が求めたのはこのゲームに関するすべての情報。レース前から調査を始め、ショートカットについてはわかったけれども、一番求めていたアイテムの乱数については試行が必要だったため、やや時間がかかった。故に、今まで運転には本腰を入れられなかったけれど――、
「ここからは、全力で行くわよ」
これまでのラップで獲得したアイテムと、直前の行動と。手元でテーブルの照合が終わったならばあとは最適なアイテムを引くために適切な行動をとるのみ!
「ええと、アイテムリングの前で、奇数回加減速を繰り返して……アピールポーズ?」
時に、狙った結果を出すために行った行為が、他の者からは奇異な目で見つめられることがあるかもしれない。ただ、それが必要に迫られてのことであるならば――勇気を出して!
「フィリップ、そこで減加速3回やってから投げキッスで『シャイニングスター』がでるぞ★」
「乱数よりショートカット教えてくれ!」
気が付けば、エーカの隣、リングの前で並走するフィリップ&キーラの姿。彼らも共に乱数を求めているのか、乱数のせいで遅れているのか、彼女が到達した内容と似た話で盛り上がっている。
「ショートカット?」
「え、なに? お前本当にわかんないの?」
なんのためのバーチャルキャラクターだよ! というフィリップの叫びに、おやつで持ち込んだバナナを取り出すキーラ。そういうことには興味がないと、一発逆転のスーパーレアアイテムを引くまでは一休みとばかりにかじりついて。
「あなたたち、『シャイニングスター』を引けるなら……リング後のカーブがショートカットポイントよ」
見かねて、というか。知っているならば猟兵同士協力するべきとエーカが二人のフォローに入る。
「サンキューお姉さん☆」
「投げキッスはお前がやれよ」
完全に理解したと二人も合点が行けば、見えてきたリングを前に二台共に加減速の構え。
フィリップ達は加減速は3回の上、アピールポーズ(投げキッス)。
エーカは加減速は5回の上、アピールポーズ(手を振る)。
かくして、リングを通過した両者が手に入れたアイテムは――!
●終着あるいは始まりの地
レースも終盤。残すところわずかとなれば、鍔迫り合いも最高潮に。
「猟兵が1人でも優勝すればいいのでしょう? ならこういう戦い方も有りよね」
エーカが引き当てた攻撃アイテム『ロケットコーランチャー』はコーラ瓶を雨あられのように降らせ、NPCを足止めし、前を行く猟兵たちをサポートしていく。
「よーし、後は少しだ! 派手にいこうぜ!」
アーサーも同様に。攻撃アイテムによる妨害の手を休めずに、エーカと共に弾幕を張れば、サーキットには色とりどりの花火が打ちあがり。
「よーし、引いたぜ『シャイニングスター』☆ 轢くぜ敵ー★」
キーラたちも、無事にシャイニングスターを引き当てたなら、先頭を行く者たちを追い上げんとためらいなく使用。コースを外れ、カーブ前の茂みに突っ込めばまっすぐにコース外を直進していく。
「確かに無敵ですけど、茂みにつっこむのは良い気持ちじゃありませんね!」
「気にすんなよフィリップー、この★も使っていいからさ☆」
「今それどこから出した?」
そしてそれよりも前方、二位集団にて猟兵の大盾がそろい踏み。
「オホホ! ぶつかる相手がたくさんすぎて、誰からぶつかるか迷いますわね!」
「まずは、近づいてきた敵の進路を塞ぎましょう」
ぶつかりすぎてテンションがおかしなことになっているのか、嬉々として状況を楽しむレムナントと、冷静に状況を解析するトリテレイア。
「ぶつかり稽古なら負けないのです!」
そして、無邪気に雛乃がレムナントへと張り合えば、暴走二人に対して制御一人。多数決で暴走が優先され、衝突の相手を求めてレムナントと雛乃が先行する。
「どすこーい!!」
NPCを挟むようにして、二人がそれぞれの方向からぶつかりに行ったならば――エゾヒグマと通常のカート、おおよそ質量の問題で大体の想像は突くべきというべきか。
「あらぁーーーー!?」
NPCと共に、場外へと景気よく飛ばされていくカートと、悲鳴。
「レムナント様……!?」
冷静沈着な騎士の声音にも、流石に困惑の表情が浮かぶ。
ああ、そういった数多の犠牲のもとに、先頭集団の前に見えてくるのはゴールの姿。
フォルセティを先頭として、フィオリナが守る布陣。それを崩せるNPCの姿は後陣の活躍もあってもういない。
「ボクたちの勝ちだね、フィオ姉!」
「私もいる以上当然のことよ。でも――油断しないで」
そう。もう敵はいない筈なのだけれども、後ろから迫りくる気配が彼女の意識を掴んで離さない。
徐々に近づく駆動音は、彼女たちのカートとは全く違う、身を削るかのような音。速さを渇望する限界を超えた音。
「――メーターはとっくにレッドゾーンだ。いくぜぇ」
ラストの直線勝負だと、カーブを越えて二人の背後に現れたのは、ジョー。
そのカートには、見ればガジェットでブースターが取り付けられており、本来の設計を超えた稼働が見て取れる。ふとした拍子で爆散してしまいそうな、そんな危うさを抱えたままの爆走。
「何故」
そんな言葉が、自然とフィオリナの口から漏れる。
このまま、何もなければフォルセティがゴールしてゲームは終わりだ。猟兵たちのいずれかが一位を取れば、ルールに沿って猟兵たちの勝利で幕を閉じると聞いている。
つまり、ジョーがそんな危険な手段をとらずとも猟兵たちの勝利は既に確定しているのだ。なのに、何故そんなことをするのかと。
「違うね」
やがて、まずはフィオリナに並んだならば、ジョーは彼女の問いにこう答える。
「負けても良いなんて死んでも思いたくないね。俺は」
ああ、そうだ。彼はこう考えている。
――猟兵という団体では勝利かもしれないけれど、俺は勝っていないと。
――他の奴がいるからといって、本気を出さなくて良いわけではないと。
その言葉が、インカムを通じてフォルセティにも伝われば、勝負の熱も同時に伝わって。
「うん! ボクもそう思う! だから……最後まで全力で行こうよ!」
負けず嫌いの性格に火が付けば、接近するジョーを振り切らんと全てをそのアクセルに託し。
終わるのが先か、勝つのが先か。
NPCも、世界の命運さえも今は置いといて、二台のカートがゴールに向けて最後のデッドヒート!
「行けえええええ!!」
「届けえええええ!!」
永遠のような一瞬を置き去りにして、先頭のカートがゴールラインを走り抜けた。
●家に帰るまでがレースです
『それでは、表彰式を開始いたします』
会場にアナウンスが流れれば、ゲームクリアの証とばかりに表彰台に並び立つは猟兵。
第一位、フォルセティ・ソルレスティア。
第二位、ジョー・グラム。
第三位、フィオリナ・ソルレスティア。
「次は、一対一でやってみない?」
「だったら、次は勝つさ」
真剣勝負の結果は、紙一重の差で。それでも、互いに全力を出し尽くすことができたなら、そこには悔いもなく。次の勝負を心待ちにする様子で、表彰台で語り合う二人をにこやかに見つめるのは、フィオリナと他の猟兵たち。
そして、恨みがましく見つめるのは、NPCのガワが外れた戦闘員の面々。
『お前たち! トロフィーを貰えると思ったら大間違いだぞ!』
『そうだ! 俺たち大三元兄妹の絆がお前たちに負けるはずがない!』
『レースでは後れを取ったけれど、戦いでは負けないから!』
白発中とそろい踏み、その数を増やして会場を取り囲んでいる以上、お約束通り物理で解決をお望みの様子ならば――、
「もう勝負はついておりますので」
問答無用。トリテレイアが、乗っていたカートを振り回し手近な戦闘員をおとなしくさせる。流石重量級と言わんばかりの威力を前に、他の戦闘員は反撃の構えをとるどころか呆気にとられたままに。
ああ、そこからの一方的な展開は、涙なくして語れまい。
「そうだそうだよ! そっちがその気で大三元なら――ボクは必殺、九蓮宝燈!」
「こちらが予測してないと思うのが愚かね」
弟が表彰台から隕石を落とすなら、姉は負けじと人工衛星によるレーザー照射。
「今度は、本物をお見舞いしてやるぜ!」
アーサーが真のレイシューターを抜けば、戦闘員は顔を抑えて散り散りとなり。
「今度は本物の熊之介の力を見せてやるのです!」
「それいけー、ぬいぐるみさんチーム★」
雛乃が本物のエゾヒグマを呼び出しレースのトラウマを揺り起こせば、キーラの号令の下、優しく寄り添うように爆弾をもってぬいぐるみさんチームが戦闘員へと近づいていく。
極めつけは――、
「オホホホホ! 周回遅れになりましたけれど、わたくしジャンプ台を見つけマ゛ッ!!」
どんな角度で飛んだのか。コースから飛んできた奇声の主は、奇跡的に戦闘員の一団へと着弾。
確率的には役満よりも珍しいのではと、後日同席していた他の猟兵は語る。
……まあ、なんやかんやで無事にトロフィーはフォルセティの手に渡り。ファンファーレが世界全体へと鳴り響く。そう、これはゲームクリアの効果音だ!
戦争はまだ終わりではないけれども、これは猟兵たちの確かな戦果である。
真の勝利へ向けて――猟兵よ、いざ次のステージへ!
成功
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