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⏰バトルオブフラワーズ③～物理VS物理

作者：若葉椰子

●メンテナンス（惑星規模）
　いったい誰が予想したであろうか、この星が半ばより物理的に展開してしまう事を。
　いったい誰が予想したであろうか、この星の物理的な中核部で激闘が繰り広げられる事を。
　……だが、我々はこれらの事態を納得させる術を心得ているはずだ。
「だってキマイラフューチャーだし」
　とてもシンプルなこの一文。説得力は計り知れない。

●第六ビルドソルジャーズ
「はい、みんな集まってくれてありがとーなのー」
　おもちゃ箱をひっくり返したような背景に不思議と溶け込む、パッチワークの塊のような服装をした幼女……もとい、チェルヌーシュカ・ツィオルコフスカヤ（ニ・プーハ・ニ・ペラー・f00032）が周囲の猟兵を見回してから解説を始める。
「先に行ってくれたみんなのおかげで、キマイラフューチャーのメンテナンスルートが開いたわけなんだけれど、このメンテナンスルートの中にもたくさんのオブリビオンがひしめいてるの」
　ドン・フリーダムに続く空間の中で、突破しなければならない関門。
　その手始めとなるのが、ザ・ステージと呼ばれている場所だ。
「わたしが今回飛ばすのは、ザ・ビルドステージ。ここにはたくさんの兵器だったモノが集まってるんだって。
　敵が来るまでには結構時間があるみたいだから、この兵器の残骸を使って防衛のための施設を作れば、戦うのがずっとラクになるんじゃないかなあ？」
　このガラクタ、数は多いもののあまり先進的なモノは転がっていないらしい。
　地球の技術的に言えば第二次世界大戦より前くらい。
　なのでそれ以降のハイテクなブツは自前で持ち込み、自分で使う他ないだろう。
　また、基本的にこの防衛施設は施設と名のつく通り、その場で固定して活用する事を前提としている。
　移動が可能なモノも作れない事はないだろうが、時間に限りがあるぶん本来必要な戦闘能力がかなり落ちてしまう事を覚悟しなければならない。
「それで、みんなのところに押し寄せてくるのは物理学トリオっていう名前のオブリビオン。
　あんまり理解しにくいヘンな事はしてこないけれど、そのぶん純粋に物理でどんどん叩いてくるから気をつけてー！」
　各々の力は微々たるものが、だからと言って油断しているといつの間にか数の力で押されてしまうだろう。それが物理というものだ。
　防衛施設を活用し、慢心せずに対処する事が肝要である。
「みんななら、きっと物理のチカラでオブリビオン達を蹴散らしてくれるって信じてるのー。がんばー！」
　激励でしめくくり、チェルヌーシュカは戦場へと猟兵達を送り出す準備を始めた。

第1章 集団戦 『物理学トリオ』

POW   :    振り子怪人・ウェポン 【振り子兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 SPD   :    メトロノーム怪人・ジェノサイド 【メトロノーム攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    電源プラグ怪人・リフレクション 対象のユーベルコードに対し【電源プラグ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。 イラスト：まめのきなこ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

「予想通り、使えそうな戦車は少ないかな。じゃあ、トーチカになるものを探してみようか」
周囲を見渡し、近代戦のセオリーに従って思考を巡らせる峰谷・恵（神葬騎・f03180）。
さすがに技術力の限界か本格的なものは少ないものの、コンクリートで補強された家屋を見つける事に成功していた。
「射撃戦をするなら、籠城するのに最適な形は星型。これなら死角もなくなるし、常に二つの先端部で射線をカバーできるはず！」
　ジャンクの中で茨のように埋まっていた有刺鉄線の束や使えそうな装甲板をいくつも掘り当て、五芒星の形に陣地を整えれば、五稜郭を思わせる盤石な要塞の完成だ。
「よーし、来た来た。これだけいれば、標的に困る事はないね……っと！」
　接敵が一番早いであろう銃座へ陣取り、容赦のない弾幕を次々と浴びせる恵。
　攻め込んでくる物理学トリオは鉄条網で足を取られ、突破しようにも装甲板で補強された防衛施設は中々落ちるものではない。
　時には自らの持つ巨大なマシンキャノンの砲声を轟かせ、また対処が追いつかないほどの群れに囲まれたなら遠慮のない一斉掃射でなぎ払い、さながらワンマンアーミーが如し勇姿でオブリビオン達を蹴散らしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「防衛戦で有効なのは、やっぱり地雷原だよね」
まるでイタズラを思いついた悪童のような笑みを浮かべ、雛河・燐（笑って嗤って後悔を・f05039）は非人道的なエゲツない戦略を堂々と宣言する。
　UDCアースでの人類を対象とした戦闘では禁止されている行為だが、ルール無用のキマイラフューチャーではそんなモノは関係ない。
　そもそも相手はヒトなのか怪しい奴らなのだ、何を配慮する必要があろうか。
　行動を阻害させるためのネットと有刺鉄線は自前で作り出し、ジャンクの中からまだ使えそうな爆薬や信管をかき集めてお手製の地雷を作っていく。
　一個一個は使い捨てではあるものの、大量に配置すれば戦い終わるまで尽きる事はないだろう。
　掘り出し物の長射程な銃器をいくらか失敬し、牽制や誘導を兼ねてスナイプしてみれば、面白いように怪人達がコントロールされていく。
「いやー、半端な軍事知識でどうなるかと思ったけど、相手がアホの子で助かったよ」
　反省点を踏まえつつも、幾多の足止めと埋設した地雷によって堅実に頭数を減らしつつ時間稼ぎもこなす燐。
　本人の性格を表すようなそのとらえどころのない動きは、敵の群れを長期に渡って翻弄する事に成功していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

「そもそも、惑星が真っ二つに割れるとか常識的に考えておかしいと、神さまたる我は思うぞ？」
　ここに来てまさかの神もとい白木院・雪之助（雪狐・f10613）からマジレス。おっしゃる通りです。
　でもキマイラフューチャーですから。
「あくまでメンテナンスルートとして割れている……という事は、これが正規の手順なのだろう。諦めて受け入れた方が楽だぞ」
対するリュシール・ミラー（ダンスマカブル・f14809）の興味はあくまでこの奥に存在しているであろう親玉。
　早く首魁の面を拝むためにも、ここで負けるわけにはいかない。
「それもそうだな！　とにかく一夜城の如く防衛施設を作ればよいのであろう？
　我の指揮で難攻不落の城塞を作ろうではないか！」
　でん！　という効果音が入りそうなほどに堂々と、司令塔となる宣言をする雪之助。
　ならばとリュシールも同調の姿勢を見せる。
　もともと人海戦術的に拠点づくりをしようとしていた彼にとって、雪之助の作る雪だるまの人手や建材にかける氷属性の付与はあって損はないのだ。
「はーい！　射撃はボクに任せて！ 銃眼を作ってくれれば、ルシーズで斉射ができるから！」
　火力担当で名乗りを上げたのはリズ・ルシーズ（Re-Z・f11009）だ。
　童女のごとく無邪気に挙手するその姿からは想像もつかないが、ことさらに気負う事も自慢する事もなく共有事項を伝達する様子は、いくつもの戦場を経験してきた事を伺わせる。
「あ、じゃあ僕は情報収集に回りますね。火器担当になる人がいるなら、そのぶん僕の時間が空くので！」
　言うが早いか、砲手のなり手を確認した輓馬・桜（少年呪術師・f17773）がその小さな体躯を翻らせて未だ見えぬ敵陣へと駆け出していく。
　彼のもうひとつの顔は呪術師。場を知り、相手を知り、戦場となるところに数多の術式を仕掛けて相対的に己の有利を勝ち取るのが仕事だ。
　自分より更に小さき相棒を伴い縦横無尽にペイントしていく姿は、さながらグラフィティを生業とするアンダーグラウンドアーティストのようにも見える。

「うむ、順調であるな！　雪だるま達の働きも目覚ましいぞ！」
「死霊達のチームワークも光るな。ああ騎士くん、その鉄板はそこにある穴を塞ぐのに使い給え」
「よし、ではこちらも固めるとしよう！
　……寒くなったのならこっちで温まってもいいのだぞ？　我は寒くなんてないが！　一応な！」
　様々な場所から残骸が集まり、所々に射撃用の穴が空いた分厚い壁が構築されていく。
　そして雪之助の号令により隙間が雪と氷で引き締められ、より堅牢さを増していく。
　……身を寄せ合って温まる暇は、残念ながら存在しないようだが。
　また、リュシールのカードから引き出された死霊や召喚された死霊騎士もその作業に従事しているが、同じく召喚された死霊蛇竜は別行動として、その身をくねらせながら堀を作っていた。

「みなさん！　敵が来ましたよ！」
　颯爽と戻ってきた桜の宣言を皮切りに、いよいよこちらでも戦闘の幕があがる。
　しかしながら見えるようになった段階で、少なくとも第一陣はだいぶ動きが鈍くなっている事が分かる。おそらく、桜の事前工作の成果だろう。
「データリンク良好、光学及び電磁波観測誤差許容範囲内、チャージ完了。行くよ、ボク達！」
リズのユーベルコードによって呼び出された幾人もの複製体が一斉に同じ姿勢を取り、体表に刻印を浮かび上がらせる。
　次の刹那、目を灼かんばかりの光が迸り、レーザーという名の凶刃が押し寄せる怪人達をまとめて貫いていった。
「いいぞー！　このまま波に乗れい雪だるま達！　追撃ぞー！」
「こちらも本来のお仕事だ。油の準備はいいかな？」
「僕はそのお手伝いをしましょうか。
　あ、外に出るならくれぐれも僕の作った文様に触らないで下さいね？　危ないですから」
　雪だるまが、死霊達が、そしてそれを手伝う桜が、引き続き押し寄せる敵を食い止める。
　砦はいまだ崩れる気配を見せず、彼らの勇姿を誇るようにそびえ立っている。
　見よ、降り注ぐ雪玉と火の玉、そして表で奮戦する死霊の騎士と蛇竜を。
　見よ、未だ続く呪いで衰弱する怪人達を。
　見よ、断続的に敵陣を貫く光条を。
　ここに籠城戦の趨勢は決した。
　この戦場にて、そう遠くないうちに猟兵達は勝利を手にする事となる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月03日