バトルオブフラワーズ④〜スウィートスイーツ
半分に割れたキマイラフューチャー。
それは、中枢である『システム・フラワーズ』がオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』に占拠されたため、救援要請としてメンテナンスルートを解放した豪快な結果だった。
要請に応え、『システム・フラワーズ』を奪還すべく。
猟兵達は、まず6つの『ザ・ステージ』へと向かうこととなる。
それぞれのステージには、異なる特殊効果があり。
「ここは『オオグイフードバトル』だそうだ」
腕を組んで九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は説明を始めた。
案内するのは6つのうちの1つ『ザ・フードステージ』。
そこには、ありとあらゆる種類の大量のスイーツがあり。
相手はそのスイーツを食べ続けることで圧倒的な戦闘力を発揮しているという。
いつも通りに戦ったのでは、到底勝ち目はない。
だが、そのスイーツの効果は猟兵にも適用される。
つまり、オブリビオンより多くのスイーツを食べれば、オブリビオンを圧倒する戦闘力を手に入れることができるのだ。
半分に割れたり、変な効果が生まれたり、相変わらずキマイラフューチャーですね。
……説明しながら夏梅が頭を抱えてますが。
相手はダークプルティア『ダーク・シュトレン』。
自作のスイーツで戦うオブリビオンだが、今は食べることに専念しているようだ。
戦闘になったら作ってくるでしょうけれども。
とりあえずは、大食い対決なわけで。
「思う存分、スイーツを食べてきとくれ」
夏梅はまた遠い目でひらりと手を振った。
佐和
こんにちは。サワです。
キマイラフューチャーでは食べてばかりな気がします。
このステージには大量のスイーツが用意されています。
ケーキから羊羹から杏仁豆腐まで何でもござれ。
お好きな物をお好きなだけ食べていってください。
ただ、スイーツは、ダーク・シュトレンが最も有利に大食いできる食材である為、それより多く食べるためには『たくさん食べられる理由』『大食いにかける熱意』等が必要となります。
それでは、美味しいスイーツを、どうぞ。
第1章 ボス戦
『ダークプルティア『ダーク・シュトレン』』
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POW : 集まれ甘き闇の菓子!ダーク・シュトレンレッカー!
戦闘中に食べた【人々の欲望から作り出した菓子】の量と質に応じて【自身のダークティアパワーを増大させ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 甘き闇に溺れちゃえ!シュトレン・ダークフルス!
【闇に染まった大量のクリーム状特大ビーム】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 甘き闇をあげる!ダーク・グーテンアペティート!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分の菓子を食べさせる事で怪人や戦闘員】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シズホ・トヒソズマ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
榎・うさみっち
俺はひたすら抹茶スイーツを食べつくすぜー!
抹茶ならいくらでも食える自信がある!
サムライエンパイアでは殿様の為に抹茶ロールケーキを作り!
UDCアースでは呪文のように長い名前の抹茶ラテを頼み!
ヒーローズアースでは抹茶を使ったオリジナルバーガーを作った!
どうだ!世界を超えた俺の抹茶愛!
んーっどれも抹茶が濃くてうめぇうめぇ!
このほろ苦さのおかげで甘すぎないのもたくさん食べられる理由だな!
【こんとんのやきゅみっちファイターズ】を召喚して
こいつらも一緒に食べさせるぜ!
やきゅみっち達はスポーツマンだから沢山食べられる(雑な理由)
食べまくったら抹茶パワーのこもった
ホームランボールをお見舞いしてやるぜ!
スイーツが敷き詰められた、と表現しても過言ではないその場所で。
緑色が固まっているエリアを見つけた榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)は、真っ直ぐそこへと突撃した。
「ひたすら抹茶スイーツを食べつくすぜー!」
言葉通り、お目当ては初夏が旬の抹茶スイーツ。
抹茶は1年中楽しめるけれども、やっぱり新茶やら茶摘みやら言われる時期が、製品的にも多く出回るわけで。
緑色の抹茶の山の中へと、ピンク色のフェアリーは文字通り突っ込んでいく。
抹茶たっぷりのわらび餅や、抹茶アイスを添えたあんみつなど、和菓子もあるが。
チョコレートとの組み合わせが絶妙な抹茶オペラに、渋めのクリームと甘い大納言小豆を包み込んだ抹茶ロールケーキ。
抹茶ムースの上には真っ白生クリームと鮮やかなエディブルフラワーが重なり、抹茶モンブランに乗るのは黒豆と金箔、抹茶ワッフルは黒蜜と抹茶ソースとを添えて。
プリンもチーズケーキもバウンドケーキもマカロンも、洋菓子だって抹茶抹茶抹茶。
「んーっ。どれも抹茶が濃くてうめぇうめぇ!」
もぐもぐと片っ端から食べるうさみっちは、ふと、くるりと振り向いてカメラ目線でポーズを取った。
「抹茶ならいくらでも食える自信があるぜ!」
あ。ほっぺたに抹茶クリームついてますよ。
「サムライエンパイアでは殿様の為に抹茶ロールケーキを作り!
UDCアースでは呪文のように長い名前の抹茶ラテを頼み!
ヒーローズアースでは抹茶を使ったオリジナルバーガーを作った!
どうだ! 世界を超えた俺の抹茶愛!」
ばばーん、と効果音が聞こえそうなほどに胸を張るうさみっち。
世界をまたいだ宣言に、ダーク・シュトレンは思わずショートケーキを食べていた手を止めて、ぽかんとうさみっちを見てしまい。
「ちなみに、抹茶の呪文? って何?」
「ソイミルクチェンジホワイトモカシロップチェンジアドホイップアドチョコチップエクストラパウダー抹茶ラテ」
「……え? ソイミル……えっ、何?」
抹茶マフィンを食べる合間でさらりと唱えたうさみっちに、疑問符が増えていく。
その間にもうさみっちは抹茶クッキーを食べ続けていて。
「このほろ苦さのおかげで甘すぎないのもたくさん食べられる理由だな!」
ぱくぱくもぐもぐ。次々とダーク・シュトレンの周囲から緑色が消えていく。
焦りを見せるオブリビオンは、だが、その事実にはっと気づき。
「で、でも、そんな小さな身体じゃ、食べられる量はたかが知れてるわ!」
うさみっちがフェアリーであることを、勝ち誇ったように突き付けるけれども。
気にせず抹茶シフォンを口に運んだうさみっちは、ばっと手を掲げた。
「出でよ! こんとんのやきゅみっちファイターズ!」
『おー!』
呼びかけにぞろぞろと現れたのは、野球服を着たうさみっち達。
「ふっ。やきゅみっち達はスポーツマンだから沢山食べられるんだぜ」
「くっ……」
今度はうさみっちがにやりと笑い、たじろぐダーク・シュトレン。
いや、大分雑な理由ですけどね。これ。
しかも、キメてるところ申し訳ないですが、拭いてくれる人がいないから、ほっぺたの抹茶クリームはまだついたままですし。
だがダーク・シュトレンは、苦しい笑みを浮かべたまま。
「それなら、別の抹茶を食べてなさい! シュトレン・ダークフルス!」
ショートケーキを放り出し、大量の抹茶クリームをビームのように放つ。
小さなうさみっち達に、津波のように襲い掛かる抹茶だけれども。
「ホームランボールをお見舞いしてやろうぜ!」
『おー!』
うさみっちの指示に、やきゅみっち達がバットを振るう。
軽くトスされた野球ボールは、次々と強烈な打球となって抹茶波を撃ち砕き。
さらに直接投げられたボールならぬ鉄球が、何か釘を打ち込まれたバットが、ダーク・シュトレンへと襲い掛かっていった。
「こ、これ絶対野球じゃない!」
ごもっともな悲鳴を上げるダーク・シュトレンだけれども。
食べまくった抹茶パワーのこもったやきゅみっち達は止まらず。
監督よろしくうさみっちはその光景を眺めながら、のんびりくつろいだ様子で、次は、と抹茶アイス最中に手を伸ばしていた。
誰かほっぺた拭いてあげてください。
大成功
🔵🔵🔵
朱雀・慧華
わーいおやつー!
私人間界のデザートだーいすき!
私が特に好きなのはプリンだけど
マカロンもケーキも杏仁豆腐もぜーんぶ美味しいよね!
というわけでプリンは多めに確保し色々食べる
この滑らかな舌触りと優しい甘みに絡まるカラメルのほろ苦さの組み合わせがたまんないよねー
焼きプリンも、いちごプリンや抹茶プリンも美味しいよねぇ♪
ケーキはホールで頂きます
色んな種類の食べ比べしよーっと
攻撃可能時
【指定UC】使用
★七色空絵筆の動く【アート】で
空間にお菓子の家やお菓子の花を描き魅了
水の【属性攻撃、全力魔法】で食材ごと追撃するね
※見た目は細いが実は食事が好き過ぎて四次元胃袋。
技能用アイテム作成間に合わず気合だけですみません
「わーい、おやつー! 私、人間界のデザートだーいすき!」
所狭しと並ぶスイーツを前に、朱雀・慧華(純真天使・f17361)は両手と羽を広げる。
神界から人間界に捨てられた慧華だけれども、こんな光景を目の当たりにしたら、捨てられてよかったなんてちょっぴり思ってしまったり。
「あっ。プリンあった。あ、こっちにも。あっちにも!」
特に大好きなプリンを次々と見つけ、慧華の表情はキラキラと輝いていきます。
卵に牛乳、砂糖を混ぜたカスタードを加熱したカスタードプリンはもちろん。
表面にふりかけた砂糖を香ばしく焼き上げた、焼きプリンことクレームブリュレ。
いちごプリンに抹茶プリン、牛乳プリン、かぼちゃプリンと、材料のバリエーションがあると思えば。
牛乳瓶に入ったりバケツに入ったり、入れ物もいろいろあって。
生クリームとフルーツを添えたプリンアラモードや、スポンジケーキと大きなプリンを組み合わせたプリンケーキ。プリン大福、ぷりんどらまで。
様々なプリンを慧華はしっかと確保していった。
早速、定番カスタードプリンからスプーンを入れれば。
滑らかな舌触りと優しい甘味。
そこに絡まるカラメルのほろ苦さが絶妙に組み合わさって。
「これがたまんないのよねー」
どんどんと慧華のスプーンが動いていきます。
クレームブリュレのとろける甘さを堪能してから。
抹茶プリンの苦味で口の中をきゅっと引き締めて。
いちごプリンのフレッシュさを広げると、かぼちゃプリンがほくほくする。
牛乳プリンで少しさっぱりしてから、挑むはプリンケーキ。
もちろんホールでいただいちゃいます。
細く小柄な身体のどこに入っていくのかというくらいの勢いで消えていくプリン。
シンフォニアゆえに音楽が大好きな慧華だけれども、女の子ゆえに食べることもまた大好きなのです。特にプリン。
「マカロンもケーキも杏仁豆腐も、ぜーんぶ美味しいよね!」
プリンの合間に他のスイーツにも手を伸ばし、プリンにはない味と食感の変化も楽しみながら、四次元胃袋はどんどんと、スイーツを吸い込んでいく。
ケーキもプリンケーキだけでなく、いちごにチョコにチーズにと、色んなホールを並べて食べ比べしてみたり。
地上の幸せを満喫していたそこへ、野球から逃れてきたダーク・シュトレンが、次のスイーツを求めてやってくる。
「皆にも夢を分けてあげる!」
片手で飲むプリンを面白がりながら、慧華はもう片方の手に七色空絵筆を握った。
何もない空間をすっと走った絵筆は、空中に色を染め上げて。
虚空のキャンパスに描き出すのは、お菓子の家やお菓子の花。
ダーク・シュトレンを囲むように描かれた絵画は、夢の中に居るかのように魅了し、お菓子の世界へと誘い込む。
思わず見惚れてしまったダーク・シュトレンだけれども、はっと我に返り、その手にクッキーを生み出し構え。
そこに、絵の向こうから、慧華の水魔法が放たれた。
「あぼがばぶばぶぼ……!?」
何が何だか分からないまま、襲い来る大量の水に流されていくダーク・シュトレン。
慧華はお菓子の家の絵の影からひょこっと顔を出してそれを見送ると。
「プリン食べよーっと」
何事もなかったかのようにまたスイーツの山へと戻っていった。
大成功
🔵🔵🔵
レクシア・ノーレッド
⋯え、ココにあるものを食べるの?
いくらでも食べていい?食べれば戦闘能力が上がる?
―食うしか、ないネ!!
【POW】
私に胃袋は無いんだよね。どっちかっていうと全身が胃みたいな?
つまりどこから取り込んでも、食べることができるのです!
…私は食べるの好きだよ?甘い物に限らず、机とかもまるっと平らげちゃう!
沢山盛られたスイーツを、机もろともまるっと食べちゃえばいいのです!
大丈夫、鎧だって溶けるんだからいけるって!ね!!
え?戦闘中も相手がスイーツを作ってくれる?
―じゃあ、横取りしよっか。腕を口のようにして、伸ばして喰らう!
ついでに相手の子も食べてみようかな?
「食べれば戦闘能力が上がるって言うなら……食うしか、ないネ!」
大義を得たりとにっこり笑って、レクシア・ノーレッド(『捕食者』・f01101)は一面のスイーツに手を伸ばした。
まず手にしたのは、円形の真ん中に穴の開いたリングドーナツ。
ふわふわのケーキ生地のものから、少し固めのパン生地や、シュー生地など、ドーナツそのものにも種類は多いけれども。
生地にアーモンドやココアが混ぜられていたり、米粉やおからを使っていたり。
さらに、アイシングやチョコレートでコーティングしたり、粉砂糖やスプレーチョコで飾り付けたり、ジャムやクリームを挟んだり。
球状のドーナツボールやサーターアンダーギー、棒の形をしたチュロスも並び。
形も色もそして味も、多様なドーナツを興味深く見比べながら、レクシアは食べ比べも進めていく。
そこに流されてくるダーク・シュトレン。
水が捌け、取り残されたダーク・シュトレンが倒れたまま呻いているのを、レクシアはココナッツフレークで飾ったチョコレートドーナツを食べながらしばし眺めて。
「ドーナツ、食べる?」
ドライフルーツを混ぜたチョコレートでコーティングされたドーナツを差し出すと、がばっとダーク・シュトレンが起き上がった。
訝し気にこちらを見る、黒い仮面越しの桃色の瞳に、レクシアはにっこり笑いかける。
「私、食べるの好きです」
向けられたオレンジ色の瞳に、友好的な雰囲気を感じて。
ダーク・シュトレンはドーナツを奪い取るように受け取ると、がつがつと勢いよく食べ始めた。
この場所では、大食いは力。
ゆえに、力を取り戻そうとダーク・シュトレンは次々とドーナツを貪り食べる。
相手の戦力増強を見て、だがレクシアは笑顔のままで。
「好きだから、甘い物に限らず、机とかもまるっと平らげちゃう!」
おもむろに、3段トレイにこんもり盛られたティータイムなスイーツへ手を伸ばすと。
そのトレイを乗せたテーブルごと掴みよせて。
食べた。
スイーツを。3段トレイを。そしてテーブルを。
「……え?」
思わず手と口を止めるダーク・シュトレン。
それを見て、レクシアは明るく笑いかけると。
「大丈夫、鎧だって溶けるんだからいけるって! ね!」
艶やかな漆黒の肌が、ブラックタールである証が、輝いた。
レクシアは続けて、隣にあったクロカンブッシュへ手を向けて。
積み上がったシュークリームを、それを乗せたお皿を、周囲を飾る花を。
テーブルごと、食べる。
「私に胃袋は無いんだよね。どっちかっていうと全身が胃みたいな?」
呆然とするダーク・シュトレンに向けられるのは、変わらぬ朗らかな笑み。
より多く食べられるのだと告げる勝利宣言。
それを見やり、ぎりっと奥歯を噛みしめたダーク・シュトレンは。
「集まれ甘き闇の菓子!」
自身を強化するスイーツを生み出した。
それを食べてパワーアップを狙ったのだけれども。
そこに伸びて来る、レクシアの黒い腕。
差し伸べるように大きく開いた手は、人間ではあり得ない程に開いて、大きな口のように闇の菓子を包み込む。
そのまま咀嚼するように、手が腕が蠢いて。
引き寄せる動きでレクシアへと戻っていくと、元の細腕の姿となった。
「つまりどこから取り込んでも、食べることができるのです!」
「……は?」
食べようと思っていたパワーアップスイーツを一瞬にして奪われ。
しかも、手から食べる、という光景を目の当たりにして。
ダーク・シュトレンは戸惑ったように動きを止める。
「ついでに貴女も食べてみようかな?」
ぺろり、と黒い舌で黒い唇を舐めて。
オレンジ色の瞳を細めて。
誘うように伸ばされる、漆黒の腕。
それが大きく広がり襲い掛かって来るのを、ダーク・シュトレンは引きつった顔でただただ見上げていた。
大成功
🔵🔵🔵
野良・わんこ
「この万年欠食児童のわんこ相手にお菓子の食べ放題とは!」
野良わんこはホームレスである。
この世界に転移してきたので戸籍もなにもない。
キマフュで猟兵だからこそお恵みがあるので生きていけるが決して満足できる生活ではない。
そんなわんこに食べ放題とくればどうなるかは火を見るより明らか。
今までの不足カロリー、そしてこれから消費するであろうカロリー分もまとめて摂取だ!
サイコキネシスでシュトレンの食べようとしたスイーツを先に奪取して食べる。
逆に腹に溜まりそうなものや濃い目のものをシュトレンの皿に置く。
どうやってあの捕食攻撃から逃れたのか、よく覚えていない。
ただ無我夢中で、時に生み出したスイーツを囮にして、時に雷に撃たれながら、時に漆黒をかき分けて、ダーク・シュトレンはやっと、ドーナツから遠ざかった。
辿り着いたそこに並ぶのは、パンケーキ。
シンプルにバターとメープルシロップだけが添えられたものから、フルーツやジャムを乗せたもの、アイスクリームがじわりと溶けていくものもあれば、たっぷりのクリームがかかったものも。
トッピングを変えるだけでも多種多様な顔を見せるスイーツを眺め。
とにかく食べて戦力を取り戻そうと、ダーク・シュトレンは、小さなパンケーキを2枚添え、チョコレートやアイスで可愛く顔が描かれた、くまさんパンケーキに手を伸ばす。
だが、その手が皿の端に触れる直前。
すっと滑るように逃げていくクマさんパンケーキ。
「え……?」
気を取り直して、その隣にあった、果肉たっぷりのベリージャムがかかったハート型のパンケーキへと手を向けるけれども。
それもまた、皿ごと向こうへ逃げていった。
呆然と、パンケーキの行く先を目で追うと。
野良・わんこ(灼滅者・f01856)が、くまさんパンケーキの可愛い顔に躊躇いなくフォークを突き刺したところだった。
可愛く作られた見た目など全く気にせず、がつがつとくまさんを完食し。
続いて手元にやってきたベリーハートパンケーキも、真っ二つにして食べ始める。
「この万年欠食児童のわんこ相手にお菓子の食べ放題とは!」
まだまだ足りぬと言うように、パンケーキの乗った皿が次々とわんこの元へと引き寄せられ、そしてすぐに空になっていった。
……野良わんこはホームレスである。
異世界から突然転移してきたゆえに、社会的基盤が何もない、不安定な存在。
コンコンすれば物が手に入る便利なシステムな上、猟兵ゆえに好意的に助けてくれる人も多いキマイラフューチャーだけれども。
安定した生活とは言えない日々。
そんなわんこに、食べ放題、などと言ってしまえばどうなるのか。
その答えがこれである。
サイコキネシスで周囲のスイーツを引き寄せては食べ引き寄せては食べ。
それが狙ってなのか偶然なのか、ダーク・シュトレンが食べようとしたスイーツを次々と横取りしていく結果となり。
「ちょっとはこっちにもよこしなさいよ!」
さすがに怒ったダーク・シュトレンが、クリームビームを放つべく構える。
「仕方ないですねぇ」
その様子に、わんこはクレープを食べながらサイコキネシスでケーキを動かす。
ふわりと宙に浮いたケーキは、そのままダーク・シュトレンの口へと突撃した。
「むぐ!?」
突然突っ込まれたケーキを、驚きながらも咀嚼するダーク・シュトレン。
でもそれは、甘ぁいドライフルーツやコーンシロップ、そしてラム酒もたっぷり入ったフルーツケーキで。
1切れでも食べ応えのあるそれが、よりによって1本丸ごと押し付けられる。
時間をかけながらも何とかそれを食べきったダーク・シュトレンは。
「大きさを考えなさい!」
「小さいのがいいんですか?」
尤もな意見に、ワッフルを齧りながらわんこがぼやくと。
今度は一口サイズのキャラメルのようなものが飛んで行く。
キャラメルのように粘らずしっとりした食感のファッジは、口の中で崩れるほど柔らかく食べやすいけれども、ひたすら甘い。
それをぽこぽこと絶え間なく口の中に放り込まれて。
「甘すぎるわー!」
「注文が多いですね」
わんこは貝の形をしたマドレーヌを1口で食べてから、ならば、とごつごつした表面を粉砂糖で真っ白に覆ったケーキをがっしと掴み上げた。
「これなら文句ないでしょう」
自信満々にダーク・シュトレンへと投げつけたのは、酵母生地にナッツやレーズンを練り込んだ、対峙する相手と同じ名の、シュトレン。
クリスマスを待つアドヴェントの間、少しずつ削って食べるシュトレンは、保存がきく代わりにずっしりと重いケーキで。
「もう……無理……」
重いわ甘いわでお腹にずっしり来たダーク・シュトレンは、食べかけのシュトレンと共に倒れ伏した。
「食べないんですか?」
きょとんとそれを見下ろしたわんこは、フィナンシェをぱくりともぐもぐして。
「じゃあ、遠慮なく全部わんこがいただきますね!」
これまでのどこに遠慮があったのか。
変わらぬ勢いで、次はとマフィンを手にしてにかっと笑った。
大成功
🔵🔵🔵
ポク・ョゥョゥ
スイーツ大好きー
食べるよ〜お手手合わせてー
いただきまーす
大食いぽくだよー
あのねー、甘いのは素敵なことなんだよー
もぐもぐするだけで嬉しくなってー
ごっくんしたら幸せいっぱいなのー
幸せはねーいっぱい入るんだー
あー、でも美味しいものならしょっぱくてもぽく幸せなのー
ちなみに喋る合間にめっちゃたべてるよー
プリンークッキーお饅頭ーアイスーチョコレートー
一番好きなのはケーキなのー
ロールケーキおいしいよー
くるくるスポンジにーあまーぃクリームたっぷり〜
いくらでも入るのー
食べ過ぎてぽく膨らんでも入るよー
攻撃できるー?よーしいっくよー
ぽよーんと飛び跳ねてからのじゃんぴーんぐ、ぽくきーっく
そしてーめがとんぽくぱーんちー
倒れたダーク・シュトレンの元へ、ころころしたパンダが近づいてくる。
饅頭をもぐもぐしながらぽてぽて歩くパンダ……いや、パンダ柄のフード付きふわもこコートを着たブラックタールは、ダーク・シュトレンに気付くと足を止めて。
ごっくんと饅頭を飲み込んでから、その顔を覗き込んだ。
「大食いぽくだよー」
にこやかに名乗るポク・ョゥョゥ(よろしくなの〜・f12425)だが、ダーク・シュトレンは顔を上げるどころかピクリとも動かない。
それでもポクは気にせずに。
「あのねー、甘いのは素敵なことなんだよー」
チョコレートトリュフを口の中に放りながら、にこにこと語りかけていく。
「もぐもぐするだけで嬉しくなってー」
カラメルソースを後がけするタイプのプリンを掬って。
「ごっくんしたら幸せいっぱいなのー」
しっかり果肉の入ったフルーツアイスを舐めて。
「幸せはねー、いっぱい入るんだー」
市松模様のボックスクッキーを齧って。
「あー、でも美味しいものならしょっぱくても、ぽく幸せなのー」
ちょっと塩気のきいたクラッカーにチーズクリームをつけて食べる。
喋る間も止まらない舌鼓。
そしてポクの手は、一番好きなケーキに伸びる。
甘ーいクリームをたっぷりくるくる巻き込んだふわふわのスポンジ。
「いくらでも入るのー」
本来は切り分けて食べるロールケーキを、笹を持つように1本そのまま手に持って、筒食いしながらポクは幸せそうに笑った。
クリームの中に色とりどりのフルーツを入れたフルーツロールケーキを。
ココア生地でチョコチップを巻き込んだショコラロールケーキを。
ホワイトチョコレートを緑色の生地の表面にかけた抹茶ロールケーキを。
同じように次々と食べていくポクは、何だか膨らんできている気がして。
やっと顔を上げたダーク・シュトレンは、言葉通りいくらでも食べれると体現するかのような、丸々としていくポクに言葉を失う。
「あ、起きたー?」
絶句する気配に気づかないのか気にしないのか、ポクはにこやかに笑いかけると、黒ゴマロールケーキをもぐもぐごっくんと食べ終えて。
「よーし。いっくよー」
ぽよん、ぽよんと飛び跳ねながら、ダーク・シュトレンへと突っ込んでいった。
「じゃんぴーんぐ、ぽくきーっく」
丸っこく短い足が、起き上がりかけたダーク・シュトレンを、体当たりかと見まごう勢いで蹴り飛ばし。
「そしてー、めがとんぽくぱーんちー」
それを追いかけて、丸っこい拳が放たれる。
当たった瞬間、ファンシーな星が舞い散り、キラキラするけれども。
可愛いパンダな見た目とは裏腹な威力に、ダーク・シュトレンは声も上げられず。
追撃に力なく宙を舞うと、きらきら星と共に姿を消していく。
ポクはそれを見届けて。
「ほらね、素敵でしょー?」
栗入りクリームのロールケーキを齧りながら、朗らかに笑った。
大成功
🔵🔵🔵