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どうせ明日は明日で死にたいんだから

#UDCアース

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#UDCアース


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●かみさまのおわすところ
 ビルの窓辺で、少女らが陽の光を浴びながら、楽しげに談笑している。
 カフェスペースで、カフェラテと雑誌をお供にして、可愛い!だけで成り立つ会話をしている。
 ビルの地下で、大口を開ける邪神に、本日は十人目の少女が生きたまま食われていく。
 少女の体からは、人間のものではない黒い体液が噴き出した。それをびちゃりびちゃり散らかし、怪物は咀嚼する。牙の隙間からぶら下がる少女の腕が、弱く痙攣した後、すぐに動かなくなった。

●終わらせるものの集う場所
 何処にでもいる、やや根暗文系男子高校生……以外の形容がし難いくらいに、平凡そのものの少年が、酷く渋い顔で、グリモアを浮かべていた。
「……最初に言っとくけど。胸糞悪い戦いになるぞ。それでも、聞いてくれるか」
 ある者は、いいから聞かせてくれと言うだろう。あるいは、それならなおさら行くと言うだろう。眉間の皺を陰険に刻んだまま、松本・るり遥(不正解問答・f00727)は、愛用のボールペンで己の左胸をノックしてから話し始めた。

「目的地UDCアース。あるビルが邪神教団の拠点だと突き止めたんだ。俺が転送するなり、皆はすぐに本拠地をぶっ壊すべく、戦い始めることができる」
 それだけ聞けば、捜索の手間もなく敵をかっ飛ばしてくればいい、ごくシンプルな依頼に聞こえるだろう。だが。るり遥は、話し辛く、溜息ひとつ。
「ただ、拠点を取り巻いてる、オブリビオンが……どう見ても、普通のひとで。ちょっと怖がりで、騙されやすい感じの、女の子達なんだ」
 ゆっくりと、感情を抑えて、話は続く。両の手でボールペンを握り、かちかちと弄っている。
「彼女達は『泥人』。ビル内をうろうろしてるけど、見張りってほどでもなく、ただそこで暮らしている。その教団にいる、一番大物の邪神用に飼育されてる餌なんだよ。
 だからといって無能でもない。彼女達、勘はいい。きっと猟兵がそのビルに踏み込んだら、邪神を殺しにきた外敵だってすぐに察知して、邪魔をしてくる。だから彼女らを迅速に殺すほかない。そうしないと、騒ぎが伝わって、教団に逃げられて、終わりだ……とにかく彼女らを振り切って、大物を倒しさえすれば、彼女らも消滅する筈なんだけど」
 話を聞く猟兵達の顔も見れずに、顔を覆うように俯き、しばらく黙ってから。
「なあ、『助けて』って泣く女の子を、お前らは殺せる?」

 それぞれがどう答え、どう考えるにせよ、解決すべき事案には変わりない。るり遥は情けなく苦笑を浮かべてから、ポケットから折りたたまれたビラを取り出した。焼肉屋のビラだ、新装開店出血半額セール。
「まあそんな感じだけどさ。それでも、肉ってのはいつ食ってもうまいし、誰かと食えば最高だ。変に塞ぐくらいなら、全部忘れる勢いで、ぱーっと打ち上げして来いよ」
 未成年の飲酒喫煙にのみ軽く釘を刺して。るり遥はまた、グリモアを手にした。
「どうせこんな事件、ここだけの話じゃ、ないんだからさ」


小林
 胸糞の悪いお話はお好きでしょうか。こばやしです。このようなおはなしになりますが、精一杯、描かせて頂ければ幸いです。

 複数人をまとめて描写しがちです。
 同行者さんが決まっている参加者さんは、プレイング内にその方のお名前明記をお願いいたします。
 逆にソロ希望の方も、そうご記入いただければ意識いたします。

 焼肉はえらいよ。いつ食べても美味いから偉いよ。
 皆様のプレイング、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『泥人』

POW   :    痛いのはやめてくださいぃ…………
見えない【透明な体組織 】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    悪いことはダメです!!
【空回る正義感 】【空回る責任感】【悪人の嘘を真に受けた純粋さ】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    誰か助けて!!
戦闘用の、自身と同じ強さの【お友達 】と【ご近所さん】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヒカゲ・カタワレ
なんにせよ、誰かがやらなきゃいけないんでしょ?
なら私の出番だってこと。
だいじょうぶだいじょうぶ。私も似たようなもんだからさ。

敵の本拠地に潜入するってことなら仲間を呼ばれるのが一番面倒だよね。
私なら一見、"普通の女の子"に見えるしさ。"刻印"は体内にあるんなら武器も持ってないように見えるんじゃない?
それで物陰から一体ずつ狙って数を減らしていくよ。

お互いにそういう外見で作られたってんなら悪趣味だよねー。
だから恨みっこなしってことで、よろしく。



●似た者同士
「なんにせよ、誰かがやらなきゃいけないんでしょ?」
 ビルの自動ドアが開く。
 そこから見えるフロアにたむろする『餌』の少女らと、ヒカゲ・カタワレ(ソル・エンバー・f03017)は、同じ年端に見える。むしろ、その小柄さ故にいくつか幼く見えるだろう。
 自動ドアの、薄く透明な仕切り一枚越え、肩越しに振り返るヒカゲは、軽やかに転がる鈴のように、へっちゃらに笑った。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。私も似た様なもんだからさ」

 ヒカゲは小柄な少女と変わらぬ外見だ。武器である刻印も体内に在り、泥人の少女らも警戒心を抱いていない。
「あれ? 新しく来た子、ですか?」
「こんにちは!良ければ案内とかしましょうか?」
 むしろ人懐こい事に、仲間意識を持ち気さくに寄って来る泥人達がいる有様だ。
「うーん、じゃあお願いしよっかな。全然、この中の事分からないからさー」
「ですよね、ですよね。あ、お名前は何ですか?私はーー」
 その名が何者かに付けられたコードであるのか、それとも雑誌や漫画から彼女等自身が拾った記号であるのか。そしてそこから、泥人同士で付与しあった渾名であるのか。知る必要もない文字列を聞きながら、ヒカゲは話を合わせる女子高生のように笑ってみせる。

 二人の泥人はヒカゲと手を繋ぎ、快く道案内をしていく。
「ここはカフェエリア、みんながよくお茶してるから。ヒカゲちゃんも後でお茶しましょうね」
 うん、するする。
「ここは多目的室。静かに本読みたい時とかはここ使うかなあ、でもみんな此処より他のとこ行きますね」
 へえ、そうなんだ。
「ここが喫煙室なんですけどー。教団の人がたまに吸ってるくらいで、私たちは全然使いません。教団の人に逢いたかったら、ここに来てみるといいかも」
 そう? 今って、教団の人いるかな。どう?
「あ、見てみますね。……うーん、今ちょっと居なさそうです。残念っ」
「そっか。じゃあ、ありがと」
 ヒカゲは微笑んだ。少女と繋いだ手から、刻印が発動した。

 悲鳴すら上げる間も与えず、ぱきりぱきり、刻印が泥人を喰らう。なんで、どうして。か細い声で、泥人二人はヒカゲを見ているが、当のヒカゲは施設攻略について考えている。この辺りなら人気も少なく、通りかかる泥人の数を減らしていけそうだ。
「痛いのは……、痛いのは、やめて、くださいっ……!」
 かすかな声を絞り、崩した体組織から攻撃をしてくる気配があったが、それごと刻印が喰らっていくのだ。
「そう言ってもさー。どうせ君たちも、最後には怪物に食べられて痛い痛いってなっちゃうんでしょう?じゃあ、変わらないんじゃないかなー」
「いやだ……どうして、どうして……ヒカゲちゃん……私達、友達に……」
「友達は友達を食べないし、変な粘膜で攻撃もしないでしょ。似た者同士なだけ」
 血を巡らせ、刻印の食事を強める。びくん、と泥人の指先が跳ね、後は残さず食べてしまって、おしまいだ。
「お互いに、そうゆう外見でつくられて、悪趣味だよねー。だから、恨みっこなしって事で、よろしく」
 まるで友達と500円の貸し借りの蹴りをつけたような調子で、ヒカゲは立ち上がった。
 泥人達の体組織は、生きている間のみ透明化できるつくりなのか、ここに集まる彼女らがたまたまそうゆう個体なのか。床に広がる粘液が、黒く、乾いた血だまりの様に広がっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

襲祢・八咫
可哀想になあ。そう作られたが故に、そう在るしか出来ぬ化生共よ。此処で殺されずとも、何れは邪神に喰われる餌でしかない哀れなもの共よ。
だが、おれが心底愛らしいと思うのは、今を生きる人種族と呼ばれるもの故にな。邪神を屠ることが最優先だ。きみたちの生が悪かった訳ではないさ、ただおれにとって、この世界にとって、邪魔だっただけだ。

鈴を鳴らせば現れるひとつ目烏の群れ。
やれ、覚悟もなく中途半端に力を持ち、中途半端に戦うが故に面倒なことになる。
烏の群れは数の暴力で、少女もその友も等しく翼で打ち据え、爪や嘴で狙う。

とはいえ、数が多いのは面倒だ。隙を狙って烏共を目眩しに奥へ抜けるとしよう。見取り図などあれば良いが。


ロク・ザイオン
(どんなかたちをしていても)
(これはオブリビオン)
(森を。秩序を喰う、病だ。病は広がる前に焼き潰す。おれにとっては、あたりまえの)
(だから烙禍で焼く。増えようが、強くはない。全ての病葉を焼くのは、仕事だ。何を鳴こうが――)

ああ。
きれいなこえでうたうんだな。

(死の間際の歌声を聴くのはすきだ)
(そんな声でおれを労ってくれるのだから、きっと、病にとってもよい行いなのだ)

…………まだうたってくれるのか
おれに。

(だからうれしくて、烙印を振るう)



●すずのね
 りん。音がした。
 誰かのストラップが揺れたにしては存在感があり、泥人達の心をざわつかせる不穏さがあった。
 だから泥人少女らは気が付いた。これは素敵な音ではない。少女らが顔を上げ、音の出処に視線を向けて。視界が弾けた。粘液の眼球を、ひとつ目烏が啄んでいった。六十の烏が、窓から見える空を黒く埋めているのが見えた。
 ごぼ、ぽ。眼窩から粘液がずるずる零れる。痛みに、敵襲に、少女らは絹裂くような悲鳴を上げる。
 烏共の主である襲祢・八咫(導烏・f09103)が一歩踏み込めば、ひとつ目烏達は群れを成しどうどうと流れ込んでいく。黒い羽が舞い落ち、粘液が飛び散り、フロアが濡れた羽で埋まっていく。
「やだ、やだ、なに……!誰か、助けて、誰か……!!」
「いいや。たすからぬよ」
 上がる悲鳴の間を歩みながら、八咫はぽつりと呟きを落とす。
「そう作られたが故に、そう在るしか出来ぬ化生共よ。此処で殺されずとも、何れは邪神に喰われる餌でしかない哀れなもの共よ。きみたちは、ここで、しまいだ」
 烏の群れを目くらましに。少女らが烏を追い払おうと数を減らしている隙に、歩んでいく。フロアマップは奥の壁面に提示されていた。最上階にのみ、地下に通じるエレベーターが存在する事が確認できる。
 「たす、け。助けて!!! いやだよぉ!!!」
 みいちゃん、きゅうちゃん。てんちゃん、よしのさん。はしもとさん、なっちゃん。泥人達が識別記号を呼びながら粘液を撒き散らしている。恐らく、召喚式を使いたいのだろうが。六十の烏が攻撃をし続ける故に、助けを呼ぶ隙もない。
「可哀想になあ」
 八咫は憐みの言葉こそ漏らしたが、そのどこか遠くを見るような表情が歪むことは無い。曇ることも無い。
「きみたちの生が悪かった訳ではないさ、ただおれにとって、この世界にとって、邪魔だっただけだ」
 ほつりほつり八咫は語る。その語りは誰に届かぬとも良い。現に、今、少女らの悲鳴に、烏の泣き声にかき消されている。
 八咫が愛おしむ事が出来るのは、今を生きる者のみだ。それを脅かす邪神の餌に分けてやれる哀こそあれど愛はない。そこに、さらに、業火が重なった。
 
●焦熱
 ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)が、烙印刀を振り下ろしていた。其れは炎を呼び、生きる罪を焼き尽くす。
 ぎゃああ、あ、あ。上がる悲鳴は、常人ならば耐えられるものではない。されど、ロクは怯むことなく、澱むことなく。炎を広げてゆく。烙禍が、泥人を、飲み込んでいく。
 少女らが焼かれ、蒸発してゆく臭いが立ち込める。人を焼く悪臭という程でもないが、酸味のある刺激臭が、熱と共に鼻腔を焼くのは、あまり慣れない感覚だ。八咫は、指で鼻先を軽く拭った。
 ひい、ひい。ぎい、ぎい。泥人達の悲鳴が、暗い森に響く鳥の声にも聞こえる。
「ああ」
 ロクが、微かに酔うような声を出した。酔うといっても、酒では無く、焼いた砂を直接飲んだような声だった。酷く潰れた声だった。穏やかな森からは、ひどく遠い声だった。

「きれいな。こえで うたうんだな」

 ロクは次々焼き払う。泣きながら死んでゆく悲痛な声を歌に。粘液があぶく立ち蒸発する音を拍手のように空耳して。
 秩序を脅かす病を焼く。そんな怪物に、きれいなこえで、うたってくれる。それがどんなにか嬉しかった。あなたは正しいと、少女達が肯定してくれているようだった。錯覚の中、咎を焼き切り続ける。まだうたってくれるのか。張り切って、目に付く彼女等を全て焼く。地獄の如き重奏が、終わるまで。

「……可哀想になあ」
 再び呟かれていた八咫の声は、はたしてどちらに向けたものだった。
 このフロアすべてのうたが終え、炎と空気のはぜる音と、時折聞こえる烏の声だけに包まれる。耳の悪いロクには、少し離れた所で呟かれた八咫の声は、きっと聞き拾えなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

犬曇・猫晴
…………、ごめんね。
こんなとこ、あの子には見せらんないなぁ。早く終わらせちゃおう

【POW】
こんにちはお嬢ちゃん、助けに来たよ。
発する声が聞こえたら戸惑ってしまうかもしれないからね。
とにかく顔を殴り飛ばして聞こえないようにするよ。
何も考えない。そこにあるかぼちゃをただただ殴って潰すだけ。
殴って潰せないなら首を捻ろう。
ひねっても意味がないなら地面に叩きつけよう。
出来る事すべてを行って迅速に、この理不尽な命の芽を摘もう。

負傷描写、アドリブ歓迎


在連寺・十未
(深いため息)あぁもう。何時かは来るかと思ったけど。そりゃあな、来るよな。全くやんなるね
――こちとらUDCエージェントじゃあなくて探索者なんでね。まずは殺害以外での無力化を試す。「いきもの」である以上は必ず意識がある

ユーベルコード起動……つってもたいした技能じゃないが。大きな音と眩しい光を感じれば動きも止まる。そこを刈り取って、ワイヤーでがんじがらめに縛りつけて。転がす。なんなら猿轡も噛ませてね

これでダメなら意識を奪った後の作業が糸を引いて首を落とすことに変わるだけだ。縛り付けた後でもそれは可能でしょ

邪神の徒である以上殺すのは仕方無い。が、殺し方は選べる

勿論仲間に迷惑がかかるようなら即殺すけど


リリィ・アークレイズ
…良く出来てんじゃねェか。
確かに何処からどう見てもか弱い女の子だな。
…でも悪ィな。こっちも仕事で来てんだ。
テメェらの頭ブチ抜いてさっさと通らせて貰うぜ。

別に抵抗が無い訳じゃ無ェ。
割り切らないとやってられねェんだよ。
オブリビオンなら尚更だ。
情を戦場に持ち込むバカはしねーよ。

機械化してる右脚に収納してるショットガン「ORANGE LIB」の出番だ。
痛いのは止めてほしいんだろ。
なるべく一人一発その脳天に決めてやるよ。(零距離射撃)
リロードは慣れてる。弾切れなんて起こすかよ。(早業)

見えないモンは躱しようが無ェけどよ、
先手必勝って言うだろ。殺られる前に殺るんだよ。

「………」
「行くぜ。惑わされんな」



●進め
 在連寺・十未(アパレシオン・f01512)は溜息をついた。やんなるね、吐息に混ぜて呟き、俯いてもいられず髪を掻き上げる。白と黒の髪が、胸の内の絡まりとは対照的に滑らかだ。十未が、放り投げたグレネードが、部屋一面を閃光で包んだ。
 眩しさと炸裂音に、フロアにいた少女たちは目を覆い慌てふためく。その幼い丸みが表現された顔面を、犬曇・猫晴(忘郷・f01003)が躊躇無くーーそう、躊躇しない事が、慈悲の内だーー殴り飛ばした。悲鳴を上げる口を直接破壊する、つもりで。泥人がぐらり、めまい、膝を折る。そこをすかさず十未のワイヤーが雁字搦めに拘束した。仲間を呼ばせてはいけないと、猿轡も手早く噛ませる。
 悪い事は駄目です! やめてください! 外敵の侵入だと、泥人が騒ぎながら集まって来る。そこに猫晴の拳が酷く無機質にねじ込まれていく。二人来るなら二発くれる。五人来るなら五発くれる。十人くるなら、それは流石に捌けないと片手を上げれば、それを見逃すことなくリリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)が銃弾を、寸分違わずその脳天に撃ち込んだ。泥人はその柔らかな脳を貫かれて、粘液を前から後ろから垂らし、べちゃり、ただの液体へと戻って行く。
 泥人達は友達を守るべくその心に純粋な正義を宿していた。強い心は肉体を強くしてくれるものだ。一人目は猫晴の拳ひとつで沈んだが、二人目三人目以降には通用しない。だから何だと戸惑いもしない。そんな心は持つだけ無駄だ。並ぶ南瓜を次々割るのに、次は硬くて困るななんて思ったところで、やる事は変わるまい。首を捻り、動きを封じたところで、リリィと目配せ。目が合うなり泥人を手放せば、猫晴に当たらぬスレスレに弾道を取り、即座に弾丸が泥を泥へと戻していく。
 痛いのはいやだと怯え、泥人が見えない体組織を撒き散らす。その組織を十未の糸が掻きわけるように切裂いて、また雁字搦めにしてゆく。
 猫晴が、何人目かの少女を、磨り潰さん勢いで床に叩き付け、捻じ伏せる。リリィの弾は乱戦状態にも関わらず、誤射の一つなく泥人だけを撃ち抜いてゆく。無言の乱戦。息が詰まるようだ。
 三人は自然と理解する。この泥人達は、頭部に核があるようだ。そこさえ破壊すれば、人型を保てず粘液と化すのだと理解する。では、そこで、十未が無力化すべく縛り付けておいた、泥人達の危険性は?
 三人が目を向けた瞬間、不可視の粘液に襲われた。口と鼻という気道を塞ぐように張り付いて、内側までずるずると滑り込んで来る。まだ死んでいない泥人達が、体組織を削り必死に抵抗していた。その表情は恐怖に涙ぐみ、同胞を殺される怒りに燃え、歯を食いしばり震えている。
 がりがりと、粘液を剥がし引きずり出そうと、猫晴が口周りを掴むが、駄目だ。狭い穴を通り、完全に気道を塞がれ、力も入らなくなってくる。
 殺すべきだった、殺さなければ。泥人も、猟兵も、誰もが焦る。噛ませていた猿轡も、体組織を削った事により滑り落ちていて、発声を防いでいない。仲間を産むべく、泥人が『助けて』と絞り出す。散らばる粘液から人型が生成されはじめる。この状態で敵を増やすわけにはいかない。十未が己の責任を果たすべく駆けた。が、乱暴に後方に引き倒された。リリィが十未の肩を掴み、後ろに転がしたのだ。リリィは持てる全ての銃器を展開。ありったけの弾丸を、未だ息がある全ての泥人に叩き込んだ。
 ――鼓膜が張り裂けんばかりの炸裂音、色濃い硝煙の匂いを残し、フロアの泥人が全て透明な泥へと崩れ、床がぬめる体液で満たされていく。操作する者が死んだ事により、三人の呼吸を奪っていた塊は粘着力を失い、咳き込めば次々こぼれおちた。
 以上が、この5分間の出来事。

「っはぁ…………。今日は気分がドブほど悪いんだ。遠慮も躊躇も、要らねえ。全弾叩き込んでやる……」
 出し尽くした弾を、また充填せねばなるまい。リリィは呼吸が出来る解放感を味わいながらも、重く呼吸する。
「お゛っえ゛……げ、っほ。ぅええ……げろっちゃった……」
 透明とはいえ嘔吐は嘔吐だ。猫晴はつくづく此処にいつも一緒の彼女を連れて来なくて良かったと再確認する。
「……ごめん、殺す判断がおくれた。殺す覚悟はあったけれど」
 口元を拭いながら、十未が心苦しそうに謝罪する。たとえどんな存在でも、泥人は『いきもの』だ。意識が在り、感情が在る者を無差別に殺さずに済む方法を探していた。息を切らし、十未が言う。猫晴が穏やかな苦笑を浮かべた。
「無力化はやっぱり殺すしかないかあ……残念だね」
「割り切れ。情を持ち込むバカから死ぬぞ」
 リリィの強い言い方に、反論できる者は誰も居ない。すべての獲物のハラを銃弾で満タンにしてやったところで、先を行く。
 発砲音の痺れの奥に、泥人達の声がこびり付いている気がして。一撃、床に向けて無駄撃ちする。それでも声は剥がれない。
 「……」

 「行くぜ。惑わされんな」
 この地獄を行くしかない。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

リゥ・ズゥ
胸糞、リゥ・ズゥは、わからない。
泥なら、リゥ・ズゥも、同じ。だが、奴らは同胞では、ない。
リゥ・ズゥは、カイブツ。リゥ・ズゥは、悪魔。
邪魔な敵は、リゥ・ズゥが、喰らう。
「泣く」は、リゥ・ズゥは、知らない。
(私はSPDで迅速に敵を処理します。
「ダッシュ」「忍び足」で少女が仲間を呼ぶ前に攻め入り「カタチの無いカイブツ」で食べてしまいましょう。もしそれで相手に宿る呪縛や毒が私に回っても「毒耐性」「呪詛耐性」で耐えられますし、少女を食べたことで回復もできます。私は物理的に血も涙もない怪物なので、少女の悲鳴も涙も、響きません。きっと)
※彼は悪魔のような凶悪そうな形状をしています。アドリブ、絡みは大歓迎です


鳴宮・匡
なるほどね
残らず殺せばいいんだな?
いいぜ、そういうのは得意だ

殺到されると面倒だ
他が乗り込んでいくなら外から狙撃に徹しよう
狙いにくいなら中で戦うけど、ま、どっちでもいい
一人ずつ狙撃していくかな
的が遠いか、通常弾で効果が薄ければユーベルコードも併用
手っ取り早く頭を狙うぜ
無理なら胴体、とにかく一撃で無力化できる箇所かな
なにって、それが一番楽だし、早いだろ

泣こうが喚こうが知ったことじゃないし
命乞いをしてみせたってかまわないぜ
「敵」なんだろ?
それがわかってるなら、ただ撃って殺すだけだ


戦場でも平時と同じゆるい態度が変わらないタイプ
「敵」ならば人を殺すのにも良心の呵責がありません
【アドリブ/複数描写OK】



●破綻無く
 騒ぎは既に聞きつけられているかもしれない。だが教団は邪神を捨て置けまい。居場所に見当はついた。ならば、逃げられるよりも先に追い付く事が目的となる。
 リゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)は悪魔である。黒い身体、捻じれた角、突き出た上顎、肥大化した四肢。竜人の類にも見えようが、眼球の代わりの不自然な赤い光、流動する滑らかな体は、このUDCアースにおいては、発生するオブリビオンと区別がつかない。
 違いは、猟兵に協力的であるか、非協力的であるか。
 音も無く通路を辿る。質量を無視したような素早さで行く。泥人を発見すれば、声を上げられる前に食べてしまう。龍とも蛙とも、はたまた深海魚とも区別出来ぬような異形に頭部を巨大変形させ、泥人を次々音も漏らさず噛み砕き、吸収する。
「やめ、や……いや、だ……」
 口の中での泥人の最期の抵抗は、その体を硬く強張らせ、砕かれる身体に毒を帯びさせるが、リゥ・ズゥはどんな有毒生物も食べる事が出来る。その抵抗に気付いたかすら怪しい。オブリビオンと区別がつかない。
 故に、別行動をしていた猟兵が、邪神だと勘違いし銃口を向けている事も致し方ない。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、想像よりも早い邪神の発見に違和感を覚えながらも、どう緊急信号を仲間に伝えるか考えていた。窓でも割るべきかと、外すら見ずに思考する。
 数秒、二人は硬直状態を迎える。数秒後、互いの間に流れる空気が、緊迫感ではなく戸惑いであると気付いたのは、リゥ・ズゥが頭部の変形を解き、まだ比較的人類的な形状に戻したことで、匡のグリモアベースでの記憶と合致したからだ。……怪物的な外見とはいえ、グリモアベースで見覚えがある以上は、今回撃つべき敵と合致しない。銃口を背ける。
「ブラックタールか……わるい、一瞬敵かと思った。」
「かまわない。リゥ・ズゥは、慣れている」
「いや、でも間違えて撃ってたら、殺してたろうし。謝罪はするさ」
 語りながら。階段からの靴音に視線を向ける。友を助けるべく駆けつける何人かの泥人に、匡は業務的淡泊さで狙いを定める。が、友を殺す悪人を倒すのだと意気込む彼女等の身体強化は既に強く。銃声と少女の悲鳴こそ響けど、急所を外すだけの鋭敏さを、すでに泥人達は持っていた。
「かまわない。リゥ・ズゥは、その程度で、死なない」
 それを見たリゥ・ズゥもまた少女に這い寄る。
「そうか? じゃ、ちょっと提案があるんだけど」

「いや、撃って良い相手が抑えててくれると楽だな。助かるよ」
「問題無い。リゥ・ズゥは崩れない。生命力も吸える。二人なら、より早い」

 悲鳴に揺さぶられるような未熟さは此処には無い。
 何一つ破綻ない堅実さが、残酷にも少女どもを屠って行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●破綻無く
 騒ぎは既に聞きつけられているかもしれない。だが教団は邪神を捨て置けまい。居場所に見当はついた。ならば、逃げられるよりも先に追い付く事が目的となる。
 リゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)は悪魔である。黒い身体、捻じれた角、突き出た上顎、肥大化した四肢。竜人の類にも見えようが、眼球の代わりの不自然な赤い光、流動する滑らかな体は、このUDCアースにおいては、発生するオブリビオンと区別がつかない。
 違いは、猟兵に協力的であるか、非協力的であるか。
 音も無く通路を辿る。質量を無視したような素早さで行く。泥人を発見すれば、声を上げられる前に食べてしまう。龍とも蛙とも、はたまた深海魚とも区別出来ぬような異形に頭部を巨大変形させ、泥人を次々音も漏らさず噛み砕き、吸収する。
「やめ、や……いや、だ……」
 口の中での泥人の最期の抵抗は、その体を硬く強張らせ、砕かれる身体に毒を帯びさせるが、リゥ・ズゥはどんな有毒生物も食べる事が出来る。その抵抗に気付いたかすら怪しい。オブリビオンと区別がつかない。
 故に、別行動をしていた猟兵が、邪神だと勘違いし銃口を向けている事も致し方ない。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、想像よりも早い邪神の発見に違和感を覚えながらも、単身で見つけてしまった焦りはある。緊急信号を仲間に伝える手段を考えていた。窓でも割るべきかと、外すら見ずに思考する。
 数秒、二人は硬直状態を迎える。数秒後、互いの間に流れる空気が、緊迫感ではなく戸惑いであると気付いたのは、リゥ・ズゥが頭部の変形を解き、まだ比較的人類的な形状に戻したことで、匡のグリモアベースでの記憶と合致したからだ。……怪物的な外見とはいえ、グリモアベースで見覚えがある以上は、今回撃つべき敵と合致しない。銃口を背ける。
「ブラックタールか……わるい、一瞬敵かと思った」
「かまわない。リゥ・ズゥは、慣れている」
「いや、でも間違えて撃ってたら、殺してたろうし。謝罪はするさ」
 語りながら。階段からの靴音に視線を向ける。友を助けるべく駆けつける何人かの泥人に、匡は業務的淡泊さで狙いを定める。が、友を殺す悪人を倒すのだと意気込む彼女等の身体強化は既に強く。銃声と少女の悲鳴こそ響けど、急所を外すだけの鋭敏さを、すでに泥人達は持っていた。
「かまわない。リゥ・ズゥは、その程度で、死なない」
 それを見たリゥ・ズゥもまた少女に這い寄る。身をかわした先の少女を喰らう。生きたまま食われる怨嗟を叫んでいるが、リゥ・ズゥは呪いの類を理解しない。ばきりべろりと喰らうだけ。ずるると生命力を、空になるまで吸い上げていく。
「そうか? じゃ、ちょっと提案があるんだけど」
 三人目の少女の頭部を撃ち抜いて、脱力した質量が倒れる音を横に、匡は言う。

 上階の少女を、リゥ・ズゥが絡めとって行く。得体のしれない黒い悪魔に身動きを奪われる恐怖に少女が震え、抵抗の粘液を飛ばす。それもリゥ・ズゥが己の粘液の身体に絡めとる。
 そこを匡が冷徹に狙撃する。動かない的を撃つ事ならば手早く簡単安心確実だ。リゥ・ズゥ諸共撃ってしまうが、タールである彼は核の位置をずらしてしまえば、匡の銃弾のダメージよりも、少女から吸い上げる生命力の方が上回る。
 少女が命乞いをする。外見上は柔和な青年である匡に、藁をも掴む思いで涙を流す。
「やだ、痛くしないで……お兄さん、わたし、助けて……助けてください……。悪い事、しません、から。お願いします、死にたくない……。死にたく、な゛っ」
 銃声。それは泣こうが喚こうが命を乞おうが、目に付くすべての泥人に等しく降り注ぐ。リゥ・ズゥが捕獲した5人を、匡が全て同様に射殺した。
「よし。いや、撃って良い相手が抑えててくれると楽だな。助かるよ」
「問題無い。リゥ・ズゥは崩れない。生命力も吸える。二人なら、討伐は、より早い」

 悲鳴に揺さぶられるような未熟さは此処には無い。
 何一つ破綻ない堅実さが、残酷にも少女どもを屠って行く。
零落・一六八
【迷彩】【暗殺】で不意をつく
その後は【なぎ払い】メインで

「すみませんねぇ。でも死んでください。」

にこっと悪びれることなく、無銘野太刀で斬り払う。
出来る限り即死させて痛みは感じないようにさせてあげたいですね。
このままこいつらほっとく訳にもいかないですし、どうせ消えてもらうんですからやるこたぁ変わらないでしょ。
躊躇って時間かかかって手遅れになっても馬鹿馬鹿しいんでね。
でも、殺しづらそうにしてる人がいるなら手伝うっていうか、変わりに殺してもいいです。
つらい、やりたくない、そんな事を無理してやる必要ないですよ。
やっても平気なやつがやればいいんです。
誰か助けて!とか使ってきたら真っ先に本体を狙います。


八月・残照
慣れた手つきで宝珠を撫で、首なし竜を喚び出しながらも、八月残照は苦い顔をしている。

「申し訳ございません」
「こちらのエゴではございますが、聞こえるうちに言っておくでございます」
「これよりわたくしは、申し開きのしようもない、酷いことをいたします」
「申し訳ございません……申し訳ございません……」

あなたたちの悲鳴を潰したあとに、わたくし、きっと焼き肉を食べるのでございます。残念ながら。焼き肉は少々しょっぱくとも救いのごとく美味しいので。

顔に跳ねた少女の液体が目尻に浮かんだ涙と混ざっていく。
残照は頭を下げる。首のない竜の聞こえるはずのない咆哮が少女たちの形を歪ませ、鋭い爪がそれを引き裂いた。



●嗚呼、哀しい哉
 その野太刀は血を吸って、禍々しい捕食形態に化けていた。
「すみませんねぇ。でも死んでください」
 零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)はわるいこどものように軽やかに微笑み、可憐な粘液袋を切り捨てて回る。
 泥人達が抵抗すべく集まれど、バーチャルであるからこその迷彩で姿を消し、戸惑う泥人の背後を取り速やかに殺すのみ。戦っている内にここの泥人達は総じて『頭部の核』が急所であると理解もできた。せめて長く苦しむなとばかりに脳を真っ二つにスライスするように横薙ぎだ。一振りで三人殺したら上々だ。
 悲鳴が愉快と感じる非道では断じて無いが、だからといって躊躇する事による利益は一切感じない。変に殺害を避けて回ってみたところで、どうせ最終的には潰える命だ。故に一六八は躊躇をしない。
 泥人達が何か数言やり取りした後、二人が後ろに駆け出し、三人がこの場に残る。何処かに連絡する気か、応援を呼ぶ気か。一瞬渋く結んだ口元を開き、また野太刀の切っ先に泥人を捉える。
 「駄目です、駄目です! ここは通しません……っ! 私達に、酷い事をする、悪いお兄さんなんて、私達がここで食い止めてみせます!」
 泥人の正義感が、責任感が、純心が、恐怖に折れそうな膝を支え、戦うための勇気を生み、殺す為の暴力を身に付けさせる。ああ、それされると面倒なんですよね、なんて、一六八は内心独り言ちたその時だ。
「申し訳ございません」
 奥から声がした。見れば、通路を塞ぐよう一人佇む小柄な男ーー八月・残照(迎え火・f02719)の姿がある。
 泥人達は一瞬驚き、足を止めかけるが。大丈夫、相手は一人、私たちは二人。きっと大丈夫。そんな、友情と信頼を感じるアイコンタクトを交わし、駆ける足は止まらない。
「こちらのエゴではございますが、聞こえるうちに言っておくでございます」
「何よ! 謝るくらいなら、どいてください! そうでなければ酷い事をします! 痛い事をします!」
「はい。わたくしは、申し開きのしようもない、酷いことをいたします」
 泥人が粘膜を飛ばし、残照を薙ぎ払った。小柄な残照の身体は容易く弾かれ、床に叩きつけられる。馴れない衝撃に残照は小さく咽せ、さあ進めとばかりに泥人が駆ける。
 そんな泥人の片割れを、文字通り真二つに切裂いたのは、首から上を失った竜の死霊。少女という形の塊を保てなくなった友達が崩れ落ちるのを視界端に見ながら、上げかけた悲鳴を飲み、その泣きたい力を進む力に変えて、泥人少女はまだ走らねばならない。行かねばならない。
「申し訳ございません……。申し訳ございません……」
 胸を痛めながらも、死霊の竜を繰る道具なのであろう宝珠を撫でる手つきは止まりはしない。その仕草は祈りの仕草の様にも似て、慣れた様子で、彼を繰る。
 聞こえる筈の無い咆哮は衝撃波と成り、流動体の身体をぐにゃりと歪め歩みを止めさせた。泥人は足掻く。友を呼ぶべく悲鳴を上げるべく口を開く。誰か助けて!その声すらも、足止めの三人を刻み終えた野太刀が、背方から喉へ向けて突き刺し防ぐ。あとは、核のある脳天にむけて、内側から切裂くだけだ。
「申し訳ございません」
 ぺたりぺたりと身を起こし、姿勢を正した上で。残照は改めて、深く頭を下げた。

「大丈夫です? アンタすっごい尻もちついてましたけど」
「ええ、はい。何とか、大丈夫でございます。何せこの後には、わたくし達、焼き肉を食べに行きますので」
「焼肉……ああーそういやあ、グリモア猟兵が言ってましたね」
 辛そうな様子を見かね、一六八が声をかけて見たが、帰ってきた内容は思いのほか楽天的であった。その目じりを伝っている涙はもしやただの粘液だったか。
「助けて頂き、まことにありがとうございます。腕っぷしが良いのでございますね」
「いーえいーえ。殺しづらいやつがやるより、平気なやつがやる。こうゆうのはそれがいいんです」
 礼を言われるほどでもないですよ、とばかりに一六八が肩を竦め、次のフロアに向かうべく先を行く。その際に、肩越しに振り返り、立ち上がり様の残照に声をかけるとする。
「焼肉を美味しく食べたいなら、アンタみたいのはこの場には不向きじゃないですか?」
「いいえ。そのようなことは」
 下がり眉の男は、目じりを拭いながら立ち上がった。伸びた背筋で、ゆるりと首を一度横に振る。
「焼き肉は、少々しょっぱくとも、救いのごとく美味しいので」
 残念ながら。と付けたす残照の声に、一六八は確かに。と、一言応じた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

リオット・ノンスターク
「殺す事に善悪なんて無い。……必要がある、ただそれだけだ」

お前達は哀れだな……抗えども抗えども、在るのは死だけ。
なら、せめて全てを知る前に死ね。
建物外から狙える位置なら宙で待機してる部下共の射撃訓練の的、そうでないならアサルトウェポンBB-G01で撃ち抜いて行く。

「ああ、参ったな。窓際は眩しくてどうも狙いづらいんだ。アイツらも何を狙ってるか分からないまま撃ってしまうだろうな?」

助けてくれと言ったって、世界はお前らの味方じゃないんだよ。



『αからβへ、座標は指示する。 ……外すなよ?』
 ザザッ ザ。
『Yes sir』
 ジジッ。
 ジ。
「ああ、参ったな――窓際は眩しくて、どうも狙いづらいんだ」
 ブッ。通信終了。眉間を掻く。
「アイツらも。何を狙ってるか分からないまま、撃ってしまうだろうな?」
 細い溜息。視線を上げる。昼だというのに、流星群の如く光が見えた。

●ゆめからさめたら
 上階、陽当たりのいい窓辺。
 読書、漫画、雑誌に勉強。あるいは睡眠。
 耳にはイヤフォンで、あるいはヘッドフォンで、教団員さんに教えて貰った音楽なんか聴きながら、各々自分の時間を得ている少女たち。
 ここはこのビルでも一番陽当たりが良い。窓辺に設置される白いテーブルも素敵だ。少女らはついついたむろする。陽当たりが良いと、なんだかいい匂いだし。
 けど、なんだかさっきから妙に揺れる。近くで大きな工事でもしてるのかな。ううんそれにしたって大きいな、約束してたゆいちゃんも来ないしな。
 本を置き、窓際に歩み寄りつつ。イヤフォンを外そうとした。

 瞬間、銃撃。
 閃光、ごぽぼんと歪む流動体、物量。
 熱、空襲、全滅、殲滅。

 終えて見れば一瞬だった一方的銃撃。銃撃を叩き込まれたフロアの窓から、ぱらぱらとガラスの破片の雨が降る。泥人と思わしき少女の腕が、砕けた窓からだらりと垂れている。リオット・ノンスターク(血染めの雪髪・f00570)は、その様子を向かいの廃ビルに背を預けて見上げていた。通信機を再び取る。
『よし、上等だ。訓練は成功、褒めてやるぞ。引き続き待機する事、いいな?』
 告げ終えるなり、通信を切る。暫く外にいてみたが、教団員が外に逃げて来る気配が無い。逃走を警戒してみたが、ここまで来ないなら内部に居るか、隠し通路か。愛銃の整備も問題無い。リオットは持ち場を変更する事とする。

 窓辺に寄ってきた際に一瞬見えた少女の顔を思い出す。
 思い出したところで意味も無い。
 世界はおまえらの味方じゃないんだよ、と、内心静かに毒づいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メア・ソゥムヌュクスス
えっとー、うーん。どうみたって、すごく普通の女の子達だねー。
この子達、みんな餌なのねー。
何も知らないで、笑って、泣いて、友達と日々を暮らしているんだねー。
うん、わかってるよ。ちゃんと倒さなきゃってー。

私は聖者、人造の聖者。偽物でも、助けを乞う人無闇に攻撃なんて出来ない。
でも、私の与えるモノは睡夢と安息。

泥人を見つけ次第、【ユーベルコード】で見つめて、眠りに落としてから、予め用意したナイフの一突きでトドメを刺すよー。
大丈夫、私にはその【覚悟】はあるからー。

だから、最期の時まで、微睡みの中で幸せの夢を見て、苦しまずに……おやすみなさい。



●深昏睡
 ゆめが広がっていた。
 いつか子供の頃に夢で見た――そんなもの、泥人の少女には存在しないとしても――ねむりのかみさまのような、あるいは毎晩抱きしめて眠った、羊のぬいぐるみのような。それと、十年ぶりに再会したような。郷愁めいた切なさと安心感が、泥人の少女を襲う。そんなもの、存在しないとしても。
 ねむりのかみさま……メア・ソゥムヌュクスス(夢見の羊・f00334)が、フロア中央で座っていた。周りに、複数の泥人少女が倒れていた。しかし外傷はない。みな、救いに寄り添うように、穏やかな顔で眠っている。
 外では銃撃の音が降り注いで。下階では悲鳴が聞こえて。上階からも乱暴な足音が絶えないのに、ここだけは余りにも安寧に見えた。悪夢を全て食べてくれる、かみさまに見えた。
 かみさまが、キリリと静かな軋みをたてて、その眼差しを少女に向ける。琥珀色の瞳はお月様のようでした。桃色の髪はお気に入りのブランケットの色でした。大きな胸は、いつか戦争漫画で読んだ、おかあさんのようでした。
『だいじょうぶ』
 お月様が少女を見つめ、ゆっくりと瞬きをいたしました。
『安心して。眠って良いんだよ』
 淡い声が、日常が壊れる地獄の中に、なんと心地良くひびきました。
『おやすみなさい、また明日』
 そうか。目が覚めたら明日なんだ。よかった。安心した。
 やらなきゃいけないこと、あったような気がしたけど、目が覚めたら明日になるなら、別に明日やれば、いいかなあ。

 「この子達、みんな餌なのねー」
 魔眼の力で、泥人少女を多く眠らせた。膝の上で、泥人少女を撫でながら、メアはほつりほつり、子守歌のように零していた。
 「何も、知らないで。笑って、泣いて。友達と、日々を暮らしてたのねー」
 髪を撫でてやる。その感触はぬるりとした塊で、触れて心地良い毛髪、とは、とてもとても呼べない。されどそれを撫でる細い指もまた、人形のまがい物だ。
 そうして少女らを慈しんだその手で、懐から取り出したのはナイフひとつ。せめて幸せな夢の中で、と、神の慈悲を願う。
 救われぬ、救う事のできぬ命を、せめて痛みなく屠る覚悟。この地球という舞台では、時としてそれが、何よりも、優しい。

 眠れる少女を、全て血だまりの如き黒い粘液に返して。人造聖女は、しずかに、その場を、あとにする。

成功 🔵​🔵​🔴​

御月鵺・凰麟
藍染・覚羅
天星・零

【お嬢(姫)様はナゼか機嫌が悪いのです】
なんじゃ貴様。妾の邪魔をするのかえ?
』どうせ贄となるなら、妾が殺してヤろうと言っておるのじゃ。
はよぅソコをどくのじゃ…

ぁあん?そうか、あくまでも歯向かうのじゃな?

ソレだけの気概があるのじゃから反旗を翻すこともできようにのぅ?

『行け…ボアロ。
あの愚か者たちを蹴散らすのじゃ!


天星・零
凰麟さんと藍染さんと同行

『(救われない命‥なかなかどうして、生き物は何かを犠牲にしないと生きられないのか)』
心象は呆れたような、悲しい心持ち

『すいません。これも依頼ですので、御容赦を。』
(表面上は普段通りに微笑んで周りに対応)





武器マフェットスレッドでワイヤーや鉤爪を使い戦闘。
武器の先端には猛毒が付いており駒爪で攻撃する際は【毒使い】


もし、戦況が悪いようならユーベルコード『変幻自在の影の住人』を使い。
オブリビオンを召喚しオブリビオンの影の刃で協力してもらう。

また、戦闘中地形と、周りにも警戒し、不意打ちを防ぐ

せめて、楽なように一切の容赦はしない。寧ろ速やかに倒すよう心がける

掛け合いお任せ


藍染・覚羅
御月鵺・凰麟
天星・零

ふむ?どうやらお嬢様はご立腹のようでごいますね。仕方がありませんねぇ?なら、わたくしめはお嬢様の………いや、今は姫様でございましたか。援護をしましょう。天星様は如何が致しますか?



●御傍に
 『なんじゃ、貴様。妾の邪魔をするのかえ?』
 その声に、天星・零(多重人格者の探索者・f02413)と藍染・覚羅(クロノスルーラー・f02104)は、視線だけを見合わせた。
 古風な喋りを見せたのは御月鵺・凰麟(黒蒼蘭・f00400)。ここは通さないとばかりに、震える体で立ちふさがる少女らを、不機嫌そうに、威圧的に見据えている。
 凰麟は、日頃はたどたどしく、年よりも幼い印象を与える喋り口のお嬢様だ。そのお嬢様が、このような古い語りが出ているという事は。
「……今は『姫様』でございましたか」
「姫様、ですか……? あれは、凰麟さんなんですか?」
「ええ。お嬢様であり、姫様でございます。わたくしめは……姫様の援護をしましょう。天星様は如何が致しますか?」
「そう、なんですか……はい。仕事はこなします。藍染さん、よろしくお願いします。僕は、前へ」
 やり取りをしつつ、覚羅はガジェットを召喚する。ガジェットの見てくれは、いつ召喚しても総じて少々格好付かないが、軽く触る間に使い道は理解できるだろう。

 泥人達は凰麟達の前から退く気はないらしい。その脚は震え、瞳は怯えているのに、それでも、悪い人からここを、友を、護らねばならないという気概が、彼女たちを立たせる。
 姫様は、怒りの混じる溜息をひとつ。
『そうか、あくまでも歯向かうのじゃな?
 ソレだけの気概があるのじゃから、反旗を翻すこともできようにのぅ?』
 大切に抱えていた大きな熊のぬいぐるみ――ボアロを立たせる。どこか凶暴そうなデザインの、手造りと思わしいボアロと、凰麟の所作がリンクする。凰麟の指先が動けば、ボアロはその巨腕を持ち上げて。凰麟が踏み込めば、ボアロもまた、泥人達にむけ暴れ始めるのだ。
『行け、ボアロ。愚か者たちを蹴散らすのじゃ!』
 ドウン、ドウンとボアロは暴れる。凰麟の舞うよな動きに合わせ、ボアロが泥人達にその鉄槌を叩き下ろす。
 泥人達はボアロを食い止めるべく、叩き潰された部位を削り、透明な粘液を一斉に飛ばす。それがボアロの身を縛る。巨大な熊が、それをどうにか千切ろうと前へ前へ進もうとする。
『ふん、小癪な』
 凰麟が後ろを一瞥した。零がドッペルゲンガーを召喚する。それは『誰か』の形を取る影の住民。此度は、泥人の姿にて。
 それは泥人少女らには、仲間が来たのかと映った。一瞬彼女等の表情がはれる。されどそれは猟兵達の味方である。陰の刃を飛ばし、ボアロを縛る粘液を切裂いていく。
「すいません」
慌てる泥人の後頭部を、ワイヤーで跳躍してきた零の鉤爪が貫いた。毒が塗り込まれており、泥人を繋ぐ粘液を分解させていく。少女だったものが、液状化し床にべちゃり広がった。
「これも依頼ですので、御容赦を」
『零、褒めて遣わす』
 自由を得たボアロの腕が、また泥人に振り下ろされる。少しでも身を護ろうと粘液で動きを阻害しようとするが。それを今度は、覚羅のガジェットの砲撃が引き千切る。
「姫様の邪魔はさせません。さあ、観念して頂きましょうか」
 ガジェットから昇る硝煙を纏いながら、覚羅がそのレンズを光らせた。

『どうせ贄となるならば、妾が殺してヤろう』
 ボアロが暴れ、大抵の泥人を押しつぶす。取りこぼした泥人は零が切裂き、覚羅が狙撃していく。
 少女らの抵抗を、悲鳴を無にかえしながら、零は犠牲無くして生きられない命を想う。
 多少の苦戦もしたが、それも凰麟の怒りが乗り越えてゆく。
 このエリアの泥人を倒し終えた後。元のサイズに戻るボアロに凰麟は駆け寄り、抱き上げる。粘り付いている液を指で振り払っていれば、覚羅が『そのような事は私めにおまかせください』と駆け寄って行く。
 二人の視界の隅にて、零が哀悼のように瞼を短く伏せて。三人のここでの仕事は、上々だ。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

桜庭・英治
これ
女の子たちを助けるやつじゃないんだな
全然違うんだな
むしろ倒さなきゃいけないんだ

できるかどうか、じゃなくて
やらなきゃいけないんだろ


女の子が何を言っても耳を貸さない、目も合わせない
視界の端に捉えながら
【パイロキネシス】を使って泥人を燃やす
炎で全部見えなくなってしまえばいい
こいつは燃やす範囲を決めれるし、自由に消せるから便利だ


でも、もし『助けて』って泣かれてしまったら

……
だめだ、俺にはできねぇ…

ひどいことして、ごめんな


月鴉・湊
ああ、こう言うの任せてくれ。
汚れ仕事は慣れてるからね。

【SPD】
ビル内に忍び足で潜入して彼女達を血の糸で暗殺していく。
出来るだけ苦しまないよう一瞬の早業で。
恨むなら恨んでくれ。これも仕事なんだ。誰かがやらなきゃいけないんだ。

彼女達を殺すのに迷っていたり躊躇している猟兵がいたら俺が対峙している泥人を殺ろう。

こんな酷な仕事だ。そういう人もいるだろう。だご、そういう人には俺のようにはなってほしくないからな。
俺が咎を背負う。咎を背負うのは俺のような輩がいい。



●背負うもの
 月鴉・湊(染物屋の「カラス」・f03686)は、マフラーから解した血糸を己の指に括り付け、通路を音も無く駆けていた。泥人少女らが視界にとまる度に、暗殺具である血糸を絡ませ、気付いたが早いか頭部を八裂きにしていくのだ。少女の表情が恐怖に蒼ざめていたか、怒りに歪んでいたかは、八裂きにしてしまった後では確認のしようもない。
「恨むなら、恨んでくれ」
 穏やかに声をこぼす。
 湊の仕事は素早く、的確に、鮮やかだ。音も無く、感傷も連れず、一手一手仕事を進めて行く。そう、こんなことは慣れた仕事の一環に他ならない。

 通路を進む内、ひとりの少年の背を視界に捉える。猟兵には、年齢は関係ない。むしろその少年は幼い猟兵たちから比べればとうに大人の部類だったが。ごく普通の、洒落たファッションに身を包むその姿は、『地獄』に不似合いな『日常』に思えてしまったのだ。例えるなら、湊が営む染物屋に老婆のお客様がいらした時、時折連れ添っている孫のような。

 それが桜庭・英治(NewAge・f00459)であった。英治はパイロキネシスにより少女を次々焼いてゆく。少女と極力向かい合わず、その表情を見つめることなく。
 「ひどい、ひどいです……!私たちが、何をしたっていうんですか……!」
 涙声混じりの少女の怒りに、英治は耳を貸さないよう徹している。何をしたかといえば、現時点で少女らは粘液を飛ばして攻撃し、身体強化で苦痛に争い、仲間を呼び抵抗をしているのだが、たとえ何もしていなくとも、猟兵から見れば生きていてはいけない存在である。なんて、悲鳴に耳を貸していない英治は、考えないようにしている。
 奥歯を強く噛み締めながら、英治は進む。己が燃やした少女だったものを視界端に捉えながら、歩みを進める。
 曲がり角。どちらに行くべきか、と、苦しげな眉間の皺を刻んだまま左右確認した。その窪みに少女がいた。蹲り、頭を抱え、見つからないよう息を殺している少女を見つけてしまった。一際臆病な個体だったのだろう。怯える瞳と目があってしまった。少女の黒い瞳に映り込む英治の顔が、少女の表情と大差のない合わせ鏡を成していた。
 「たすけて」
 少女がか細く泣いた。聞いてしまった。聞いちゃだめだ、だめだ。パイロキネシスの着火座標を、瞳の奥で狙いを定める。
 「たすけて……」
 涙と思わしき粘液が、ぼろぼろ目元からこぼれ始める。
 「たすけてぇ……!!!!」
 少女が叫び、涙が攻撃の意図を持って、英治に向け弾け飛んだ。英治の炎はまだ着かない。着けられるわけないーー

 少女の頭部が八つに砕けた。湊の糸が、少女を殺した。飛んだ粘液も、使役者の核が破壊された事で、ぼたたと落ちると。間に合ったね、と英治の後ろで湊が微笑む。英治は俯いて、少女だったものを見下ろしていた。
「…………ありがとうございます」
 歯を食いしばり、絞り出すような声に、湊は苦く思う。
「こんな酷な仕事だ。君のような者だっているさ」
「できなかった……」
 英治が独り言のようにこぼし、せめて、助けてくれた湊に向かい、頭を下げる。湊はその心の痛みを不要なものと告げる事は決してない。悟すように言葉をかける。
「良くはないが。悪くもないよ。この咎は、荷が重いだろうから、背負える人が背負えばいいんだ。歩けるかい」
「はい」
 震えながらも、崩れ落ちることはできない英治の様子を見ながら。湊は分かれ道を行った。
 これも誰かがやらねばならない仕事
なのだ。背負える咎は、俺が背負おう。
 英治は、遠ざかる足音を聞きながら、分かれ道で佇んだまま、まだ暫く動けない。ひどいことして、ごめんな。こぼした声が、誰もいなくなり、炎も消えた暗い通路に寂しく響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

真木・蘇芳
「要は殺していいんだろ?」
なら容赦なくだ、ついでにそいつらの頭でも土産に持っていくか?
「とりあえずあれだろ?邪神だかの背後団体が逃げない様にガキどもの咽を潰して手足もいで潰してやるよ」
降魔化身法は便利だ。
なんの迷いなく怪物になれるからな。
「虫みたいにみっともなく地べたを這いずり回れ、人生の無価値を知って絶望して死ね」


キャリウォルト・グローバー
…………殺さずに済む方法はおそらくないのであろうな。わかっている。
このような汚れ仕事は某の仕事である。
彼女らが悪いわけではない…ただ、運が悪かっただけだ。
某が正義のために済まぬが死んでくれ。許してもらおう等とは思っていない。

【POW】
騒がれ、ここのいる黒幕に気が付かれるわけにもいかぬ。
それに悲痛に叫ぶ女性の声を楽しむ趣味は某にはない。
某が太刀を持ち、一閃にて首を刎ねようぞ。



●大義名分
 要は殺していいんだろ? なら容赦無くだ。
 悪鬼幽鬼を宿しおどろおどろしい妖に成り果てた女が飛沫の中を舞う、舞う。代償である流血さえも、彼女を彩る戦化粧。
 それは暴虐で、悪虐で。勇敢に立ち向かう少女らをその身ひとつで裂いて廻る。
 惨たらしく、とまでは行かずとも、楽に、などとは欠片も考えぬ化生の身。
 降魔化身法は便利だ。なんの迷いもなく怪物になれる。
 少女が逃げぬよう先ず脚を切り裂く。倒れたところを、その細腕を踏み抜き潰す。助けを呼ぼうと蠢く喉を裂く。そうしてやっと核である頭部を蹴り潰す。
 女の周囲には悲鳴が満ちていた。少女らの抵抗すらも楽しんで、赤い赤い怪物はぎらぎらと歯列を覗かせる。
「虫みたいにみっともなく、地べたを這いずり回れ。人生の無価値を知って、絶望して死ね」
 抵抗を雨のようにその身に受けながら、悲鳴の嵐を起こしながら、次なる獲物に手を掛けるーーー

 剣刃一閃。赤い怪物が手にかけようとしていた少女の頭部が消し飛び、飛び散った粘液が怪物の目元を覆った。
 ゔぇっ。不愉快にその粘液を払い落とし、口先を尖らせ目を向ける。
 ウォーマシンのキャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)が、怒りにその眼を赤く光らせ、刀を振り抜いた姿勢のままに、真木・蘇芳(羅刹の化身忍者・f04899)を睨み吸えていた。その熱量を感じ、蘇芳はひゅう、と軽い調子の口笛ひとつ。
「あぶねえなあ、俺の頭までうっかり斬り飛ばされるかと思ったろ?」
「口を閉じろ。それがしの刃が、お主を斬るべきと断ずる前に」
「ええ、本気? 仲間割れはやめようぜ、なんの得にもなりやしねえ。どう殺したところで同じだろうがよこんなもん?」
 これが俺のやり方だ。蘇芳、キャリウォルト、共に言葉を交わす間にも、少女を次々切ってゆく。蘇芳は悲鳴を楽しむように。キャリウォルトは悲鳴を上げさせぬように。
「それとも何だよ、オネーサン。痛めつけず殺してやれば、自分は正義の味方だとでも?」
「……否。悲痛に叫ぶ女子供の声を楽しむ趣味は、それがしには無い。それだけだ」
「殺しながらよく言うぜ。慣れるためにも、そいつらの頭でも土産に包んでやろうか?」
 キャリウォルトの刀が、けたたましく振り下ろされた。少女らはどしゃりと泥に還り、フロアの床と壁がまとめて抉れる。
「口を慎めよ、外道。貴様が猟兵でなければ、とうに斬り捨てている」
「ハハ。おっかない。泣いてんの?」
 蘇芳の牙が、子供のように笑った。土産を選定するように、首を一つ捩じ切って。

 正義のために、殺すのだ。許されようなどとは思っていない。
 兵器に宿る正義と、怪物に宿る暴力に、どれほどの違いがあるという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夷洞・みさき
命乞いを気にしないのは、お仕事柄、慣れているけど。
咎の有無に関わらず、無害そうな存在を相手にするのは、気分は良くない話だね。
さて、僕の車輪は君達にはどれだけ重たくなるのかな。

SPD
例え強化されても、それを使う事自体を封じたら、無きも同然だよね。
粘体っぽいけど、人型に拘りがあるみたいだし。
それは邪神とやらの趣味かい?

人型であれば決して逃れられない様に物理的、【恐怖】的、【呪詛】的に拘束する。【流血】した場合はさらに【傷をえぐる】
粘体化や、分離、破片化し、建物の隙間から逃亡、報告に向かう可能性を警戒
その場合は最優先で狙う

同旅団(ご近所さん達)で同道可の人がいたらその人達と共に(お任せ)


ユキ・パンザマスト
答えるかわりに、行動で示した。

ビルの中を全力で駆け出す。
他の猟兵達が動きやすいよう、先行する。
少女達の匂いがする。
死角に入るよう、加速だ突貫だ、彼女らが恐怖を感じる前に、叫び声を上げる前に、掌の刻印が変じた手甲がごとき骨の大口で先制攻撃!! 
鎧無視の一撃を、か弱い柔らかい女の子達の頭部へ向けて、生命吸収でかじり取る、ああこの勢いだ少なくとも痛みを感じる間は無いだろうさ!!

口の中に広がるお味は美味かった。こんな時でも、遣るせない相手でも。焼肉もきっと美味しいんだろう。
いいさどうせ餓鬼の身、獣の身。
爛々と、次へ。
お前達を明日に喰い散らかす神よりも、ユキの方が上手に喰らってやれますよ。


ベルゼドラ・アインシュタイン
女子供が喚こうが何しようが、俺には知ったこっちゃねぇ
目的は教団をぶっ潰す事なんだろ?
ソイツらに操られてる時点で俺らの敵だ
俺から掛けてやれるのは非情しか無ぇな

泥人に効くかは知らねーけど
【咎力封じ】で良くわからん遠距離攻撃の威力を封じてみるか
威力が軽減できるだけでも多少は良いんじゃねーの?

もし敵さんのユーベルコードが封じられれば
【怪力】を乗せた【暗殺】の【2回攻撃】で【傷口をえぐる】

数体だったら、情け容赦無く斬り刻んでもいいが
集団で来るんだろ?面倒臭ぇから一思いに殺してやるさ

ま、トドメ刺し切れなくても、他の猟兵が頑張ってくれるだろ?任せとこーぜ。


【複数人との描写OK】



●狂乱夜行
「命乞いを気にしないのは慣れてるけど……」
 七咎潰しの大車輪に乗り、細い通路を一切轢殺。からむ粘液をものともせずに車輪は回る。人の形にこだわりがあるのは邪神の趣味だろうか。人を食うことへの、執着だろうか。
 磯の香を引き連れて、夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)は『ご近所さん』の活躍を音に聞いていた。おそらく反響の方向的に、向こうで盛り上がっているらしい。このまま進めば、自然合流できるだろう。
「うーん、」
 耳に届くのは、それこそ子供の大暴れ、あるいは猫の子の狂乱の如き絶え間なく鋭い機動音。
「楽しそうに駆けるなあ」

 ユキ・パンザマスト(夕間暮れの鵺・f02035)が身軽さを生かし狭い通路を跳躍する。天井スレスレを駆け上がり、死角を通りて少女の後ろ。掌を突き出せば、元の形も想像つかぬ程歪につぎはいで、がしゃどくろの掌を暫定的に成したような骨の大口が展開される。やわらかな少女らを圧し潰し貪った。鎧無視かつ生命吸収、なんと無慈悲で粗相が無い。
「ああ、喰い出があるなあ!! いやはや中々、美味しいじゃあありませんか」
 ちゅるり舌なめずり。いいやこれでも少女を怯えさせている訳ではないのだぜ、目に付き次第死角を通っているもんだから、きっと彼女らからしたら、何に襲われているかも分かるまい。
 ベルゼドラ・アインシュタイン(錆びた夜に・f00604)は気だるげに壁に背を預けている。横目でユキを見、逆側の通路先に泥人少女達を見る。拘束具を泥人少女たちに投げてみせる。拘束具は少女の身を束縛し、その体から力を奪う。
「そんなに食べてると、後々焼肉がお腹に入らないわよ」
「いやいやこんなん前菜です……って、姉さんやりますねえ、そっちの道の彼女等は任せてしまっていい感じです?」
「ええ。……ーー面倒だが、やる事はやりに来たんだしな」
 ベルゼドラが髪を掻き上げれば、淑やかな黒の下に、血色の髪が鮮やかに揺れた。好みの色だ、ユキはにんまり笑う。
 次の腹ごしらえを狩りに行くユキを背に、ベルゼドラが拘束具を放ってゆく。面倒な遠距離攻撃を事前に封じ、近付いて情け容赦なく破壊して行く。力任せにナイフを振るい、返す刃で抉り込む。少女の脳天を破壊して、柔い核を容易く破る。
 こうして一体一体屠る分にはさしたる苦労もないし、なんなら弄んだって良いくらいだが。ベルゼドラの眼前には、『友達』をぞろぞろ連れた泥人少女の群れが出来上がっている。……隠れて増えてやがったな? 面倒な展開に、舌打ちひとつ。
 仕方がねえ、片っ端から咎人封じして破壊して回るとするか。ベルゼドラが再び拘束具を、それこそタバコの灰でも捨てるような調子で放り投げた時だ。群れの逆側からも、拘束具が放たれた。ベルゼドラの手数だけでは足りない多数をロープが封じ、少女らが暴れる。
「ああ。いたのか」
 それを放った正体には、磯の匂いですぐにわかる。がららがららと車輪を駆動させ、奥からみさきが現れた。
「や、盛り上がってるみたいだね。混ぜてくれる?」
 ひらりと手を振り、微笑みながら車輪のブレーキを踏む事はない。身動きを制限された少女らを、車輪が容赦無くひき潰す。その光景は並みの人間ならば正気が削がれたかもしれないが、生憎ここにいる女達は、それに青ざめる程度の女ではない。現にベルゼドラは、トドメを刺してくれるならそれでよいと、隅に退避して煙草を取り出し。かけて、仕舞った。
 ととん。軽やかに、戻ってくるユキとみさきが互いに手を振りあう様子は和やかですらある。現場はちょっと冗談じみた女子会だ。
「残った子らは、ユキが食っちまってもいいですか。まだまだ腹には余裕があります」
「本当によく食うな。ユキが太ってもいけないし、ユキの分の焼肉は私がはんぶん食べてやろう」
「ええっちょっとちょっと!その心配はないですよ姉さん!!子供の新陳代謝舐めないでくださいな!!」
「うんうん。お肉半額だし、みんなで二倍食べようか」

 そんな談笑からしばらく後に。文字通り、一滴残らずユキが食い尽くしたその通路には、黒い粘液すら残さない。
 流石に腹がたんまりか、小さなあくびをひとつ。
「ああ、美味しかったー…………ほうら、きっとそうですよ。彼女らを明日に喰い散らかす神よりも、ユキの方が上手に喰らってやれますよ」
「食い意地。」
「食べ残しはお行儀悪いからね」

 餓鬼と外道と海の神。
 百鬼夜行がぞうろぞろ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅沼・灯人
仕事の時間だ。
殺さなきゃならねぇなら、殺すだけ。
躊躇わねぇ、躊躇えねぇよ。

泥人との戦闘になり次第、即殺の心で火を吐く
地獄の炎では熱が足りない
俺の炎なら、短い時間で焼き尽くせる
【スナイパー】【零距離射撃】の要領で距離は問わず燃やしてやる

……正義の味方やってるとよ、後出しじゃんけんの中でしか生きていけなくなる。
先に出された手を変えらんねぇなら、
覚悟決めるしか出来ない。
だから、殺す。
恨まれようが妬まれようが、正義の味方をやってやる。
……心配すんな、一発で楽にしてやる。

苦手だけどよ、笑ってやるよ
最後に見るのがしけた面なんて嫌だろうからな
次は上手に生きろよ


ラルフ・アーレント
助けに来たぜ。……邪神に食われて終いな最期から、オレらに殺される最期に変わるだけだけど。
エゴだ。単なるエゴでしかない。どっちの死に様の方がマシか、だなんて分からない。
けどな。ごめんな。沢山の被害を防ぐ為にも、死んでくれ。

ブレイズフレイムで連携取りつつ、[なぎ払い3][2回攻撃4]で一気に攻める。痛い、って感じる時間は最低限にしてやりたい。
回避は[見切り7]で、可能なら声掛けで他の猟兵にも注意喚起。
逃げたり教団員に報告に行く奴が居たら、炎で進路妨害を試みる。
他の猟兵の行動の邪魔や、崩壊しかねない場合は延焼分消しとくか。

アンタらがオブリビオンじゃなかったら。オレらの『助ける』対象になってたのかな。


ジン・エラー
てめェーらは幸運だぜ
なんたってこのオレの顔を最期に拝めるんだからな!

ああ、ああ、痛いだろう。消えたくないだろう。死にたくないだろう。
聞かせろ怨嗟を。恨めよ理不尽を。叫べよ嘆きを。
それがお前らヒト成らざるモノの、唯一の"命の証明"だ

【箱】でブン殴るし、【拘束具】でも何でも取り出して、ヤツらを救う。
ついでだ、【光】でお仲間を助けてやってもいい。

躊躇?じゃあお前が代わりに死ぬのか?違うだろ。
ヤツらを殺してヤツらを救う。そんで邪神サマをブッ殺して世界を救う。
それだけだよ。
それだけだ。

ヤツらの全てを否定して、ヤツらの全てを受け入れる。
簡単だろ?



●火葬炉
 狼男は言う。
 助けに来たぜ。邪神に食われて終いな最期から、オレらに殺される最期に変わるだけだけど。
 竜は言う。
 躊躇わねえよ。心配すんな、一発で楽にしてやる。

 ビル最上階。
 地下に一直線のエレベーター前。
 そこは瞬く間に、炎の海に満ちた。

 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)の竜炎が。ラルフ・アーレント(人狼のブレイズキャリバー・f03247)の地獄の炎が。最後の足掻きを見せる少女らへの、安らかな眠りをただ祈って、焼き払っていた。
 ラルフは炎を駆使しつつ近接主体にて薙ぎ払い、灯人は小回りを効かせ立ち回り、攻撃と分裂を重ねる個体を、的確に焼き潰す。
 互いに炎の使い手だ、熱には慣れている。故に、連携をモノとするまで、そう時間はかからなかった。

 前衛の泥人は大量にその身を削り、粘液を撒き散らかし、二人の拘束を試みる。決死の覚悟で放たれる粘液の量は多く、それを被ったラルフの腕にべっとりと重く纏わり付き、その素早さを阻害する。この重みと粘度では、腕を振り抜くこともままならない。
「おい、助けは要るか」
「いいや。大丈夫さ」
 灯人の声を、ラルフは即座に跳ね返す。振り抜く殴り抜く事は出来ねども、動かない対象を抉る程度なら問題は無い。そう例えばラルフ自身の身体とか。
 身体を斬り裂けばその部位から地獄の炎が噴出する。その炎が直接に粘液を蒸発させてゆくのだ。じゅい、じゅい、煮え立つあぶくを立て、身体の自由を手に入れる。
 後ずさった少女に、一歩で跳躍、距離を詰め、恐る瞳に狼男が映るのを視認しながら、その頭から下に向け叩き潰す。ラルフの傷口から、血のように炎がぢりぢりと尾を引き燃ゆる。
「それは大丈夫の範疇なのか」
「大丈夫さ。少なくとも、この子達よりは、ずっと」
「……そりゃな」
 返す言葉もない。エレベーターに逃げ込もうと走る背中を、灯人がまた焼き落とす。
 エレベーターが、下階からゆっくりとせり上がって来る数字の明滅。少女らはそれに乗り、逃げ、教団員や、『かみさま』と合流しようとしているのだろうーーそうは、いかない。
「後ろは頼むぜ!」
「任せな。言われずとも」
 ラルフの炎が、エレベーターの扉を塞ぐように燃え上がる。あつい!泥人少女の声が耳に嫌に残る。その息の根も止めるべく、ラルフは走り、鉄塊剣を振るうのだ。泥人の怯えた瞳から目をそらさずに。それでも、かみさま、と信じ慕う怪物に、何も知らぬまま騙されて、食われるよりは。
 エゴだ。単なるエゴでしかない。どっちの死に様の方がマシか、なんてわからない。それでも。
 「ごめんな」
少女のやわらかな首を、熱された鉄塊剣で跳ね飛ばしながら告げるのだ。沢山の被害を防ぐ為にも、死んでくれ。

 一方灯人は、非常階段から何とか逃げようとする泥人を焼き払っていた。
 灯人の使う炎は、並みのそれを上回る。焼かれる苦しみさえ味わう前に、全て蒸発し消え失せていくのだ。それがこの地獄において、灯人が唯一少女らに差出せる慈悲だった。
 灯人はいつもひどく仏頂面だ。子供だって一目で泣きだしかねない鋭利な目だ。けれど、少しでも和らげようと努力して、笑みを浮かべて少女らを送る。最期に見るのがしけたツラなんて嫌だろう? 泥人の眼に映る灯人の顔は、果たしてちゃんと穏やかに笑えていただろうか。泣きそうな顔になってはいなかっただろうか。
「次は、上手に生きろよ」
 そう葬送の言葉を告げた時。
 灯人の頭上に影が落ちた。
 「うう……うううっ…………うあああああーーーーー!!!!!!」
 泥人少女が叫んだ。粘液による操作で、崩れ落ちていた瓦礫から鉄骨を拾い上げ、灯人の頭上から降らせたのだ。灯人が振り返った時にはもう遅い。鉄骨が、灯人を、押し潰す。
「ひどい、ひどい、ひどいひどいひどいゆるさない!!!」
「すうちゃんをかえしてよ!みいちゃんをかえしてよ!!はるちゃんをかえしてよ!!!」
 泥人の剣幕の奥で、ラルフが声を上げている。仲間を助けに行こうとするのを、泥人たちが体当たりと粘液化で妨害する。身体を崩壊させながらもラルフに懸命にかぶりつく。もう少女らにとっても、ここが最後の砦なのだろう。エレベーターの数字が上がってくる。
 正義とはどうしていつも後手にしかなれないのろう。
 どうして誰かが間違わないと正義を証明できないのだろう。
 猟兵達が殺してきたどの子が、すうちゃんで、みいちゃんで、はるちゃんだったのだろう。
 どくどくと脈に合わせて流れる血を感じながらも、灯人はまるで惰性で立ち上がるのだ。
 ラルフは、食い下がる度胸を褒めてやることもできず、もしかしたら『助ける』対象にもなり得たかもしれない少女焼き払うのだ。

●救いあれ
 その時だ。戦闘音に紛れ、駆ける何者かの足音があった。それは炎の海を影の如く渡り、救いの光を猟兵へと届けた。
 見れば救いとは遠そうなナリの男がいた。
 泥のように黒い肌と、鼻から下を覆う奇妙な
マスクが目に付いた。棺桶の如き箱と共にあった。

「てめェーらは幸運だぜ
なんたってこのオレの顔を最期に拝めるんだからな!」

 なんと朗々。今から語るはジン・エラー(Alive or Alive・f08098)。
 光は、どうやら治癒光のようで、灯人の血を止め、ラルフの負傷自傷を問わず癒した。生まれながらの光を使ったのならそれは疲労を伴うはずだが、それを感じさせる事なく、ジンは戦闘を開始した。飛ばされる粘液を、炎の熱気のゆらぎで感じ取り箱で薙ぎ払う。抗おうを震えながらも獰猛なその少女の体に、拘束の枷をかけ無力化する。
 
 「オイオイオイ、最上階までたどり着けるような猟兵が無様晒すような敵じゃないじゃねえか。さては躊躇でもしたのかよ?」

 無力化した少女の頭を箱の角で破壊する。腐ったみかんでも捨てるような調子だ。
 躊躇など、躊躇だと。ここにいる誰もしていない。出来ようがない。そうでなければ少女らを苦しめるだけなのだから。
 否定が篭った二つの視線に、ジンは見透かしたように目元を眇めた。

「そうだよなあ。じゃあお前が代わりに死ぬのか?って話になるもんな。違うだろ。違うとも

 ヤツらを殺してヤツらを救う。そんで邪神サマをブッ殺して世界を救う。
 それだけだよ。
 それだけだ。
 おっともう動けるだろ? 援護よろしく!」

 饒舌な語りと、感傷の無い立ち回りはあざやかで。そこに傷の癒えた二人の手が加われば、ただでさえ残り少なかった泥人の殲滅までの時間など、もう。
 最後の一人を殺した時。焼却炉の如き炎の海で、男のマスクだけが笑っていた。
 猟兵だけが残ったこの炎の海で、最奥のエレベーターの扉が開く。

「ヤツらの全てを否定して、ヤツらの全てを受け入れる。
 簡単だろ?」

「簡単に言うな」とぽつり灯人が毒づき、「嫌いじゃないな」とラルフが肩を竦めた。
 炎使いの二人が揃って延焼文を鎮火すれば、屋内は暗く、エレベーターの光だけが、逆光となって神への道を照らしていた。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『牙で喰らうもの』

POW   :    飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【業務連絡:作業時間確保のため、プレイングは29日(土)朝8:30以降より受付させて頂きます。】

 長いエレベーターを下る時間は、まるで怪物の咽喉を潜り抜けるようだった。

 最下階への扉が開いた時。感じる臭気に吐き気を覚える事となるだろう。腥い血の匂い、すえた粘液の匂い、唾液胃液排泄の悪臭。
 そこにおわすは、神とは名ばかりの悪食暴食の権化。
 あらゆる口からぐちゃりずぢゅりと、不快感を掻き立てる咀嚼音が湿っぽく響く。
「ひ、ぃ……」
「かみさま、かみさま……」
 餌の役目を果たす、少女らのか細く悲痛な声が混じる。鋭利な牙が閉じて胴を貫けば顎で彼女らを圧し潰す。運悪く頭部を破壊されなかった泥人は、口端から上半身をぶら下げられて、弱々しくその指を、猟兵に伸ばす。
 「たす」
 べろり。舌が泥人を巻き取り、彼女は餌として胃に落ちた。明日には神の排泄物だ。

 辺りには、液状化していない肉片も落ちている。恐らくは教団員だったもの。邪神もまた、外敵の襲来を察知してか、餌のみに飽き足らず目に付く総てを食らったのだろう。

 腥い吐息を、天井に向けて吐き出した邪神が、次なる餌を求めさらに胃液をごぼごぼと吐く。フロアに現れた次なる生物的体温ーー猟兵にむけ、一歩、その巨大な腕が、床を砕いた。

【プレイングは29日(土)朝8:30以降より受付させて頂きます。】
有栖川・灰治
あんなに綺麗な子たちの主様だっていうのに、随分醜い姿をしているんだね。
…残念でならないよ。

【SPD】
操羅は紐状の触手で、まるで編み物をするかのように形状を変える。
たとえば、触手を何本も絡ませるとまるで太い針のような形状になる。これでその大きな口を貫いてあげる。

【が、予想に反して敵の攻撃をまともに食らう】
攻撃された場所の血肉はタールのように真っ黒。
恨めしそうに睨め付けると、傷口から触手が無数に伸び出て敵に絡みつき捕縛する。

あぁ、きたないきたない。お前などズタズタに引き裂かれてしんでしまえ。


笹鳴・硝子
「たすけて」
と乞う声にこたえる術など一つきり――半ば食われた泥人形の頭部を銃で撃つ
もしも人形(ひとがた)に魂の欠片も宿るなら、今度は食われるためでなく、偽でもなく、生きる為に生まれておいで
「泥を撃って哀しむのもおかしな話ですからね」

【SPD】
できるだけ大きな、頭部や胸部・腹部などに空いた口に、媒介道具であるペンデュラムを投げ入れる
それが口に収まるタイミングでサモニング・ガイスト
「おいで『晶』――外で遊ぶよ」
召喚するのは、金目の影の仔
磁石に吸い寄せられる砂鉄の様な、貧血時に視界の隅を侵食してくる影の様な、小さな子供がクレヨンで荒く塗り潰した様な、尖った耳と爪の黒い獣の仔
内側から破って出ておいで


ジン・エラー
か、ぶは、キハ、はははははははは!!!
言ったな。
確かに聞いたぞ。
「たすけて」
ああ、ああ、いいだろう
お前は間違いなくヒトだったとも

恐怖を知った。
痛みを感じた。
"死にたくない"と願った。

誰がヒトではないと言えようか
命でないと言えようか

ヒトの願いなら、聞かねェワケにゃいかねェんだわ

だからオレは、その命を救う者としての責任を果たす

きっとアイツは自分の"外"しか見てねェ
だから、"内"から殺す
自分の喰った命を、実感させてやる
その為なら、オレは丸ごと喰われても構わねェよ

バケモノに喰われたバケモノが殺す
【聖痕】の【光】を以って、お前を殺す


ああ、【オレの姿】を直視するなよ?
目ェ潰れても知らねェーからな


ケース・バイケース
エレベーターの中から少女達が現れる。
彼女らは【場合に寄り】と【完璧な模倣】でコピーされたゆいの先導で、今まで隠れていた少女らだ。
事態に困惑し震える少女らを、ゆいは鼓舞し扇動する。
「わ、私たちも、戦おう!だって、私たち、まだ死にたくない!」
きっとあの怖いのに勝てたら、また皆と幸せに暮らせるんだ。
ゆいは司令塔として、周囲に猟兵のサポート、及び邪神の攻撃の妨害を指示するだろう。

邪神討伐後、ゆいは他の泥人形と共に崩れるか、残れば、誰かに介錯を頼み、礼を残し消える。

なんにしろ、彼女が死ねば、瀕死となった夜色のブラックタールが現れる。
それは、鯉の姿へと形を変えて、場違いにびっちびっちと跳ねるのだ。



●神話の如く
「あんなに綺麗な子たちの主様だっていうのに、随分醜い姿をしているんだね。……残念でならないよ」
「そうですね。その辺に転がってる肉の方が、まだ綺麗な見た目かもですね。なんせピンクですし」
 暴食の権化を前にして、有栖川・灰治(操羅・f04282)と笹鳴・硝子(帰り花・f01239)は言葉を交わす。灰治は落胆と嫌悪を込め、硝子は無関心めいてすらいる淡白な声。未だ邪神の口の端々からぶら下がる泥人少女に静かに精霊銃を向け、引き金を引く。穿つ、穿つ。助けを乞うならば、もう苦しむなかれ。それが硝子が返せるものだから。
 べろり、べろり、邪神が舌なめずりで、口端に引っ掛けたままの泥人も巻き込んで飲み込んだ。
 たかが泥に向ける感傷などあるはずもない。しかしそれが胸中に生まれたならば、彼女らはもう泥ではなく、魂の証。灰治が美しいと呼んだ、清い命の証。
「今度は。食われるためでなく、偽でもなく、生きる為に生まれておいで」
「か、ぶは、キハ」
「ああ、少女が悲しむ姿は、あんなにも美しかった……」
「ははははははははははは!!!!!」
 けたたましい笑い声が、上がった。硝子と灰治が振り返るよりも早く、笑い声は硬くぬめる床を蹴り、走る。笑うマスク、ジン・エラー(救いあり・f08098)が、邪神目掛け駆け出していた。
「言ったな!言ったな!! 確かに聞いたぞ、『たすけて』と!」
 邪神が一歩、次なる餌を求め床を砕く。砕けた礫が飛ぶ。それはおそらく攻撃の意図ですらなく、例えば会話をしながら飛ぶ唾だとか、所作に伴う当たり前。それらを背負っていた大棺で弾き飛ばしーーその頑丈な腕を足場に、ジンは高く跳躍した。そう、邪神の大口に、その身を投じる如く、高く舞う。
「ああ、ああ、いいだろう。お前は間違いなくヒトだったとも。恐怖を知った。痛みを感じた。"死にたくない"と願った」
 それを見る猟兵には、ジンは気が触れていると見えるだろう。その感想は間違ってはいないだろう。
「誰がヒトではないと言えようか。命でないと言えようか!」
「おいで、操羅」
 灰治が愛おしむUDC、『操羅』を掌より発現させ、その繊細な触手体を編み上げ、一本の太い杭としてーージンが今まさに飛び込まんとしている口目掛け、最大加速で貫いた。繰羅は邪神の上顎下顎を貫き、閉じるのを縫い止める。邪神の呻きめいた音が発せられ、その空気振動を身に受けながらジンは身を丸め。
「ヒトの願いなら、聞かねェワケにゃいかねェんだわ」
 覚悟一つ軽く謳い、喉の底へと落ちていった。

 信じられぬ。何をしに来た。ざわめき。結局食われてしまったならば、現存兵力で戦うだけ。大顎は力任せに閉じられ、操羅の槍をぶぢりぶぢりと貪る。硝子はペンデュラムを放り投げる。ペンデュラムは大口にたやすく飲み込まれるのが視認できた。また別の大口は、細く伸びた操羅を辿りーー宿主である灰治の腕を食い千切っていた。
 灰治の鈍い悲鳴があがる。それは憤怒の獣の如き唸り声だ。焼き菓子でも砕くような調子で大口が灰治の腕を食い、次は頭を。唾液と食い残しだらけの口内が、灰治の視界一杯に広がった。
 が、口は再び閉じなかった。灰治の負傷から、あらたな触手がずるずる無数に拡がって、口に絡みつき、閉じることを阻害していた。
「ーーきたない。きたない」
 灰治から流れるものは赤い血ではなく、黒いタール。食いちぎられた断面まで、黒い粘土を詰めたようだ。大口が、触手ごと食いちぎらんと暴れるが、それを触手が力の限り防ぐ。
「お前など……ズタズタに割かれて、死んでしまえ」
 可憐な少女らを餌として、ここまで惨たらしく貪った怒り。そして、大切な妹である操羅を、同じように喰われる怒り。
 怨嗟の声を灰治が吐いた時、視界を覆う喉奥から光が溢れていた。それは暖かいような気がした。そう、食いちぎられた箇所から痛みが引いていくような。
 何人の猟兵が、それが聖者の光であると気付いたろう。いの一番に飲まれたあの猟兵は、命を救うといって飲まれていったのだ。

「耐えてくれて、ありがとう」
 それは丁度、硝子の飲まれたペンデュラムが、胃に着いた頃合い。
 硝子もまた、弟の名を呼ぶ。
「おいで『晶』――外で遊ぶよ」
 腹のなかで、ペンデュラムが転がった。
 瞬間、邪神の背から、炎が噴出する。眩い炎熱の中、邪神があらゆる口で天を仰ぎ吠えた。その光はさながら炎の翼か、神の怒りか、あるいは天地創造か。邪神の背より現れるは、サモニング・ガイストの戦霊。槍で肉を内部より突き破り、炎で焼きながら、その黒い影は元気よく飛び出し、天井にむけ炎の尾を描く。砂鉄のような、眩暈のような、クレヨンのような。誰もが幼い頃に出会うだろうきらめく黒影が、無邪気に笑った。
『おねえちゃん! これたのしい!』
「そうか。もっと焼き切ってやれ、晶」
『うん!』

 その逆側、腹からも、光が溢れ出す。それは悪魔の産卵のようでいて、地獄より脱する少女の群れ、聖者に救われし羊の群れ。胃の中にて、核までは破壊されきっていなかった泥人少女を、聖者の光が一斉治癒したのだ。少女らが、光溢れる腹を内側から懸命に裂き、ぼちゃぼちゃと転がり落ちてくる。

 禍々しい邪神は雄叫びをあげる。大地が震撼する。背よりは噴火と共に影の少年が生まれ。腹からは聖光と共に救われし少女らが産まれおつ。その絶景に、ここに集った猟兵だけが立ち合った。

「ひぅ、ひぅ……!」
「ああ、うあ、あああ……!!」
 混乱に陥っている少女らは、産み落とされた床を這い這い逃げ惑う。けれどけれどどうしたらいいい?かみさまはひどい、けれどこの外から来た悪い人たちも怖い。どうしたら。どうしたら!
「たなちゃん! さっちゃん! みずほちゃん!!!」
 エレベーターから、泥人の声。
「ゆいちゃん……!!」
「ゆい、ちゃん。ゆいちゃん!ゆいちゃんだ!!」
「あれ。すごい、まだ上に生き残りいたんですね」
「うまく生き残っててくれたのかな……ああ、いやいや。生き残って、たんだね」
 邪神が灰治を離したため、隅に退避し硝子が怪我を見ていた。されど喉から溢れていた光によって、灰治の黒い出血は既に止まっている。ご近所さんの無事を確認して、二人は呑気に言葉を交わすのだ。だって上にいた少女らは、多くの猟兵が散々殺した。エレベーターから降りてこれるような泥人が、まだ、いたのか。
「わ、私たちも、戦おう!だって、私たち、まだ死にたくない!」
 ゆいが震える喉で叫ぶ。何を、と、猟兵たちは思っただろう。されど泥人達は共調する。己が喰われる痛み、友が食われる苦しみ、諦め受け入れる他ない絶望。そんなものを欲して、ここで友として過ごしていた訳ではない。
「きっとあの怖いのに勝てたら、また皆と幸せに暮らせるんだ!」
 ゆいの叫びに、ジンはマスクの下で笑った。胃液を振り払い、ゆいの元に集う背を見ていただろう。例え、邪神が死ねば散る命だとて!命が命として、死に様を選ぶ様。これが人生でなくなんと呼ぶ!
 ゆいが、硝子と灰治の元に集い、表明する。
「おにいさん、おねえさん。私たち、お手伝いします!!」
「……手伝ったところで、私達は、最後にはあなたたち人形を助けない。それでも?」
「君たちが、死にゆく可憐な命である事には変わらないんだ。それでも?」
 泥人は答える。それでも。
 ゆいから微かに、苔のような匂いがした。

 『場合により』、ケース・バイケース(今はゆい・f03188)。形をかえ、思考を真似、そのものとして生きるブラックタールが、正真正銘の『泥人のゆい』として、泥人少女達を味方につけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

犬曇・猫晴
命の危険を感じて最後の晩餐、ね。
こいつは何でわざわざエサを人の姿にしてるんだろうね?
恐怖が良いスパイスになってるとか?
あっははぁ……はぁ、笑えねぇよ

【SPD】
足を銃で撃つ。何度も。
【2回攻撃】【スナイパー】【傷口を抉る】
ほーら、エサだよ。こっちまでおいで、アンヨが上手、アンヨが上手。

噛み付いて来たら銃を持つ左手を食わせるよ。一緒に特別な弾も味わわせてやる。
さぁ、次は何が食べたい?
鋭い刃?いったい拳?足?それとも鉛玉のおかわりかな?
いくらでも食べさせてやるよ、恐怖で動けなくなるまで。

腹を見せろ、降伏した犬みたいに。

負傷描写、アドリブ歓迎。ソロ希望



●怒りの雨
 その傍ら、銃声が響く。幾重に響く。犬曇・猫晴(忘郷・f01003)が銃弾を邪神に注ぎ込んでいた。
 その整った顔に感情は表出せず、唯々がなる銃声が雄弁だ。脚を徹底的に破壊せんと打ち込んでいく。巨体を支える手段を破壊せんと、只管に。巨体の上から下から血を吐く邪神が、煩わしげに腕を振り下ろすが、その圧倒的質量も猫晴は経験で躱してまた注ぐ。
 邪神からすれば銃弾一粒程度、何でもない。しかしそれが多量に注ぎ込まれるならば出血もする、筋を破壊されもする。猫晴の照準は精緻である。笑えぬ怒りが、たかだか人間の指先一つの引き金を、神にも通ずる怒りと変える。一度撃ち込んだ穴に寸分違わず撃ち込めば、より的確な破壊を叶える。邪神の巨体が初めて傾いだ。不快感か威嚇かはたまた苦痛か、邪神が轟く。
 脚を破壊したにも関わらず、邪神の機動が速くなる。一歩で猫晴への距離を詰め、振り下ろす腕は巨大な口へと変化しいている。新たな肉を食うべく、その前進一歩一歩すら全て捕食行為。
「ほーら。アンヨが上手。アンヨが上手」
 それを全て紙一重で回避する。猫を弄ぶ小鳥の如く、馬の鼻先を掠める人参の如く、神を馬鹿にせし人間が、その身一つで避けて、躱して、絶響をリロード。されどフロアは有限、対峙せし神は巨体。徐々に、部屋の隅へと、追い詰められて行く。
 邪神がもう逃さぬと猫晴を追い詰め噛み付いたが先か、猫晴が銃持つ左腕を掲げたが先か。腕が折れようが咀嚼されようが、神経がつながる限り、その指先は意思に応える。ばきり、骨が砕かれる激痛の下、己の血肉が降り注ぐ口の下、猫晴はそれでも銃弾を神へと捧げた。
 咥内に銃声が直に響いた。喉に突き刺さる弾丸は、通常であればそれすら大したことは無かった。無かったろうが。この神への供物は特別だ。銃弾はめり込んだ奥で傘状に花開き、肉を内部より破壊する。それを何度も、何度も、この弾丸がある限り、神経が繋がっている限り、銃声。銃声。銃声。銃声。神の血の雨、尚も銃声。
「たんと食えよ。お代わりは何がいい?」
 邪神は問いに答えない。破壊された咥内の肉を補うには足りないが、猫晴の左腕をそっくりそのまま、喰い千切る。ぶづぶづぢぎぎ、と筋繊維が剥がれる激痛はあった。あったはずだ。それでも、今更そんな腕に興味は無いとばかりに冷徹に、眼前に晒される神の土手っ腹を、猫晴の右拳が厚い肉ごと殴り上げた。
 神の巨体が天を仰ぐ。ごぼり、内臓をシェイクされ、口という口が吐瀉し、汚物が猫晴に降り注ぐ。
 ーーさぁ、次は何が食べたい?
 鋭い刃?痛ぁい拳?足?それとも鉛玉のおかわりかな?
 いくらでも食べさせてやるよ、恐怖で動けなくなるまで。
 その巨体の下、神を見下す眼。
「腹を見せろ。降伏した犬みたいに」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――ただ、ひたすらに醜悪だ。

(ザザッ)
SPDで挑む。
使用UC:『Napalm Knuckle』。

敵が本機を捕食しようとするなら好都合。
『零距離射撃』『捨て身の一撃』を使用、腕を叩きつける対象を地面ではなく「敵の口内」に変更。
『二回攻撃』併用、捕食しようとする敵の口内に拳打を当て、次の瞬間に巨腕内に装填した焼夷弾を発射、敵を口内から焼却。

腕を無くしても構いはしない、所詮電子の体、後で再生は叶う。痛みは『激痛耐性』で耐える。

(ザザッ)
――本機は貴様の繰る人形に何の感情も抱かない。
ただ
貴様は
ひたすらに醜い。
燃え尽きて死ね。

本機の行動指針は以上、実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)

*負傷描写歓迎


ロク・ザイオン
(うたが聞こえる方へ、辿ってきた)
(あれが病の源だ。まだうたが聞こえる。うたが、消えていく)

…………ひとのかたちをしていないんだな。

(ひとの肉があるなら、まだ誰か居るかも知れない)
――――あああああ!!!
(真の姿と声を解き放ち、【殺気】を載せ咆哮する。猟人と獲物以外のなんぴとも、ここから立ち去るように)
(あれの気を引きもするだろうが、その隙を誰かが使ってくれたらいい)

(【地形利用】【野生の勘】で牙を躱しながら、「咎力封じ」でそのあぎとに枷を)

(赤く長い鬣と尾。あねごはおれの姿を、猫だと仰っていた。)



●ゼロカノン
 天を仰がされ、地より見下された神が吼える。負った傷が全て開き口と化し、悪臭篭った息を吐く。それを見つめ、ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)は吐息に交え低く呟く。

 ひとのかたちをしていないんだな。

 ひとのかたちも、けもののかたちさえ成さないものは、うたさえも、うたわない。
 肉を。肉を。邪神は出鱈目に暴れ、牙を剥く。猟兵に『友』として使役される
泥人の少女が、邪神の動きを阻害しようと粘液を飛ばすが、足りぬ、足りぬ。
 腕が床を滑るように薙がれ、泥人達がロクの側へと偶然にも吹き飛ばされてきた。手に触れた一瞬で半身を食い破られている。壁に叩きつけられ、恐怖と痛みに彼女らの泥人としての身体はほどけてしまいそうだ。
 泥の残りを喰おうと思ったのか、それともロクの雌肉をもとめてか。邪神の口が、吹き飛ばした先めがけ、伸びる。

 ロクが咆哮する。丹田の底から練り上げた殺気を伴った森番の咆哮はざらついていた。空気を震わせ、生存本能を震わせ、神にさえ畏怖めいた感情を植え付ける。声の圧力に一瞬押し戻されたかのように、邪神が僅かに引いた。
「援護を願う」
 その隙を逃さぬと、鉄の獣が、ロクにノイズを残しつつ跳躍。ジャガーノート・ジャック(OVERKILL・f02381)が自ら、喰われに行くかの如く。
「あの口を閉じる手段を求める」
「ああ、」
「ーー本機ごとだ」
 ノイズと砂、雑音めいた機械音声と肉声が交差。ロクが跳び、宙に咎人封じの縄が舞う。ジャガーノートが砲塔腕を展開、邪神の口に躊躇なくそれを叩き込み、ロクの縄がその口がもう開かぬよう、砲塔ごと縛り付けた。
 鉄の猫と、赤い猫が戯れるようにも見えただろう。
「――本機は貴様の繰る人形に何の感情も抱かない。ただ」
「みにくい」
 ロクのたった四文字に、ジャガーノートの言葉の先は継がれた。
『――焼夷弾装填、接地。――討伐対象の殲滅を実行』
 もう開かせぬ。
 たんと喰らえ。
『発射』
 瞬間、炎。炎、炎、炎、炎。
 邪神の口の中に、直接焼夷弾が放たれる。炎は粘膜を一瞬で焼き爛れさせるも、口を開くことさえ叶わせぬ。閉ざされた口のなか、爆炎が満たされ、なおも爆音。本来であれば全方位無差別攻撃であるこのNapalm Knuckleも、ロクが、ジャガーノートごと縛り付ける限り、その炎は漏れ出さない。口端から、溶けた肉と火の粉が上がる。
 ……オオオボロロロオォォオボボボボォォォ………
 邪神は首を大きく振り乱し、辺りを出鱈目に破壊し尽くしながら、砲塔を喰い千切る。所詮は電子の腕である、伴う激痛などバグにも値しない。鉄の豹が落ちる。赤い猫がそれを宙空で身軽に受け止め、神より上がる炎柱を背に疾く馳しる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零落・一六八
よく食べますねぇ。なんすか?焼肉を控えたボク等に飯テロっすか?
さっき焼肉の話したから腹減ってるんですよ。

ブラッド・ガイストを使用。
消費されていく血に渇きと飢えを感じながら
開いたでかい口に【捨て身の一撃】で【なぎ払い】をする
誰かがダメージを与えてたら【傷口を抉る】
その際【生命吸収】で血をいただきましょうか。
足りない。もっとアンタの血を寄越せってんですよ。
もっと、もっと――

痛みを感じれば己が生身であることを思い出して少し笑う
でも怯んだり攻撃を止めたりはしない

(自分で好き勝手やってるように見えて、周りの動きも感じているので、誰かの攻撃に合わせて連携したり、誰かの攻撃のためにひきつけたり等をする)


リオット・ノンスターク
やっと大物のお出ましか……。
しかし、困ったモノだな。こんなに大きければ、さぞ味も大味だろう……?
しっかり焼くにも時間が掛かりそうで敵わん。

だが、この後の食事が少々楽しみでな?
特別だ。私、自らの手で焼いてやろう。

ところで……。
私は、一枚目はタンから焼くと決めてるんだ。
火傷すると相当熱い部位だぞ?

それにしても、良い餌貰ってたからか焼ける臭いだけは上等じゃないか。
全く……これでは食えたモノではない……。


真木・蘇芳
「なんだこいつは、
邪神とかいうから多少賢いやつが現れるかと思ったがただの犬っころか?
がっかりだぜ、少しは楽しませてくれよ?」
先のガキどもの頭でも投げつけて反応を見るか?
まあ俺はこの拳しか武器はないけどな
「すがるやつに未来は来ねぇ。俺は掴み取るだけだ。俺のこの拳で!」
意志を拳に、拳の弾丸(ファウストパイローネ)を込めるぜ

※好きに動かして下さい。どんな外道でも良いですよ



●ウェルダン
「なんだこいつは?」
 真木・蘇芳(羅刹の化身忍者・f04899)があからさまな落胆に表情を歪める。
「邪神とかいうから多少賢いやつが現れるかと思ったがただの犬っころか?」
「いやしかしあの邪神、よおく食べますねえ。なんすか? 焼肉を控えたボクらに飯テロっすか?」
「犬の食事見て腹ぁ空かすかぁ?」
「はは、いやすみませんね。さっき焼肉の話して腹減ってるんですよ」
 零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)が悪臭の中にも関わらずに笑い、リオット・ノンスターク(血染めの雪髪・f00570)が己の銀糸を搔きあげ、横に払った。
「そうか。私も、この後の食事が楽しみでな。……一足早い肉会だ、私自ら焼いてやろう」
「マぁジで?ヒュウ、そうゆう事なら、俺もゴチになりたいなーっと」
 蘇芳が、下階で拾ってきた泥人少女の首を揚々と放り投げる。うげ、そんなん大事持ってたんすか?なんて会話を耳にも入れず、邪神の背中に開いた口が、首を取り入れるべく口内を晒した。
 ーー首と共に、その背に降るは一六八。首を追う形で跳躍していた。ブラッドガイストにより禍々しく変貌した野太刀と共に、投げられた餌を捕食せんと開いた大口に、捨て身の斬撃を見舞うのだ。
 薙ぎ払いの要領で、並ぶ牙ごと圧し折り無防備な粘膜をずんばらり。噴出する血を浴び、一六八の体に力が巡る。邪神の背中から生える、生物的には存在し得ない過多パーツが牙を剥き、背中の一六八という蝿を食い潰さんと群がり行く。それもこなれた調子で斬りて払いて一薙に。
「こちとら喉乾いてんです。あんたの血、もっと寄越せってんですよ」
 びたびたと注ぐ血の下、舌を出して一
六八が笑う。舌先に降った邪神の血はヘドの味。もっともっとと強請る舌舐めずり。
 それはこちらの言葉だとばかりに、邪神の背が、新たに皮膜を裂いて口が開いた。
「わ。やっ、べーーいぎっ!」
 それは一六八の真下に落とし穴の如く。口もまた逃さぬとばかりに、一六八の脚を小刻みに噛みながら飲み込まんとするのだ。生きたまま足から挽肉にされる激痛に、一六八の脳が警報を鳴らし濁った声を吐いた。背の上で誰にも知られず口角を上げる。そうだ、痛みとはこうゆうものだった!
 瞬間、地響きのような衝撃と共に、邪神が一六八を噴き出した。背に投げ出される一六八の耳に、下方から声。
「お。吐いた?吐いた? 食い続けてくれても、隙になるから良いけどよ」
 蘇芳の拳が直下から捻じ込まれ、邪神の肉を激震させていた。その大砲の如き衝撃で、邪神が耐えきれず口を開いたのだ。
 蘇芳が次々にそのパンツァーファウスト、銃撃を推進剤とする鉄の拳を叩き込み続ける。絶え間なく。口を閉じさせる間も与えない、衝撃で動く余裕も与えない。腹部側の口が、風呂桶でもひっくり返したように唾液をぼたばた吐き出していようが蘇芳はその身の暴力一つで邪神の動きを止めていた。
「上のお前、逃げた方がいいんじゃねえか?あっ逃げずに生き餌になるってんならそれはそれで助かるぅ」
「いやいやこの程度で動けなくなる身体
じゃないですよ。むしろ飲み足りねえくらいです」
 辺りに広がっていた血を吸い、脚を最低限修復し立ち上がる。
「ーーそうか。ならば、その口を開かせておく仕事は貴様に頼もうか」
 登ってきたリオットが後ろにいた。蘇芳が叩き込む激震を物ともせず歩み、大口に自ら吸い込まれていくように見えた。一六八が野太刀を掴む。
「私は、一枚目はタンから焼くと決めているんだ」
 蘇芳が殴打で吐かせ、一六八が斬撃で開かせる。上下からの安全確保のなった口の中、リオットの柔肌は怪物の臭い舌の上。
『声紋認証、リオット・ノンスターク……』
 まだなだらかな身体の内側、少女の心臓炉に熱が灯る。それは瞬時にリオットの全身にめぐりて熱暴走へ。そうともこの身体が今宵の肉会の火種となる。
『ーーさて、楽しい実験を始めようじゃないか?』
 タンから、灼熱の炎が上がった。
 肉の焼ける匂いが、邪神の絶叫と共に立ち昇る。舌に吐き出されぬよう、斧を突き立てながら、リオットは言葉の通り、リオット自ら肉を焼く。溢れる肉汁の熱に舌を打ちながらも、すぐ下に喉からの臭気を感じながらも。
「こんだけ大きい肉焼いてくれたら、焼肉屋の方も助かりますね」
 リオットが呑まれぬよう口端を切り裂き一六八が言う。
「いいねえ、派手な焼肉は好きだ! 焼き加減はどうだよチビ!」
 心配の色の欠片すらなく、愉快な状況に蘇芳が声を上げる。
 調理は終わりだ。斧を抜き、燃え盛る口内で身を翻し、一六八が広げた口端からリオットが滑り出る。口の中に入った邪神の唾液を吐き捨てた。
「嗅いでわからないか? 食えたものじゃない」
 目を細めてリオットは笑う。
 人を、泥を、散々食った邪神からは、焼死体と同じ匂いがした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
へえ、随分喰い散らかしたんだな
そこそこには強そうだ

ま、関係ないけどな
生物を壊すのは慣れてる

先んじて迷わず踏み出すよ
この程度は「日常」、慣れたもんだ
躊躇う意味がない
その分仕事が遅くなるだけだからな

近づかれれば「零距離射撃」
離れれば「スナイパー」で狙撃を
動きをしっかり観察しながら
構造的に脆いと思しき箇所、もしくは関節部など要所を狙う
或いは既にできた傷を拡げるように負傷箇所へ撃ち込むかな
いずれにせよ出来るだけ大きな損傷を与えられる箇所がいい

生きる為に喰うことも、殺すことも否定はしない
なんたって、これから俺たちはお前を殺すわけだからな
「お互い様」だ
恨みっこなしでいこうぜ

【アドリブ/連携OK】


リリィ・アークレイズ
結局オレ等が殺らなくても
非常食には変わり無ェんだな。
ま、これも弱肉強食だろ。

ハッ! カミサマにしちゃあ随分と不ッ細工だな!
そう思わねェ?
喰い方も汚ェし、臭いキツいし、
さっさと終わらせて帰ろうぜ。
肉が待ってる。

「ORANGE LIB」に
「RED PEPPER」出番だ!
左手にショットガンと
右手にハンドガンってのも味があるだろ?
その阿呆みてェに開いた口に
さっさと弾丸詰め込んでやるよ!
(クイックドロウ)
カミサマっつったって内蔵に
弾喰らったらすこぶる痛ェだろ?
腹一杯喰らって死ね!(2回攻撃)

「オブリビオンの共喰いだ。考えるだけ無駄だったな」
「弾丸デリバリーお待たせしましたァ」

【アドリブ、絡み大歓迎です】


ラルフ・アーレント
人が為したその所業。死ぬために騙され飼われた人でないもの。
卵が先か鶏が先か。自ら求めたのが先か邪神に狂わされたのが先か。
……色々考え回すのは柄に合わねぇ、この行き場の無い感情は元凶のテメェにぶつけるとするか。

連携する為の、敵に畳み掛け一気に削る為のキッカケを作りたい。
足元を狙って[2回攻撃]で[なぎ払い]、転倒や怯みを狙う。何なら[吹き飛ばし]の要領で勢いも付けて。
口が増えるならブレイズフレイムで焼き潰すまで。顎が開いた時に炎ブチ込んで内側からも焼いてやる。建物への延焼は拙いんで即消火。
攻撃は[見切り][ダッシュ]で回避。噛まれた時は傷口から炎出して痛み分け。タダでやられる心算なんざ無ぇよ。



●喰らえや踊れ
 未だ落ちぬ邪神を見上げ、感心でありつつ無関心な息を零しつつ、鳴宮・匡(凪の海・f01612)が拳銃とライフルを手に歩み出る。
 ラルフ・アーレント(人狼のブレイズキャリバー・f03247)が己が内に絡まる思考を地獄へ焚べる様に駆ける。
 リリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)が、後衛で、笑い声を上げた。
「あーあ。結局オレ等が殺らなくても、教団員も非常食には変わり無ェんだな。ま、これも弱肉強食だろ」
「そうだな。ま、撃たなきゃいけない頭数が減ってるのは、楽な事だしいいとしよう」
 のらりくらりとすらした匡が、拳銃口を神へ向け。
「ああー楽なのは全くだ。あんなデカブツなら目ぇ閉じてようが当たるしな、がーーそれだけじゃ治らねえよなぁ?」
 歯列を剥き出し笑うリリィが、先を行くラルフを眇め見た。

 脚回りを賢しく駆け回るラルフに、邪神は拳を降らせる。避ける。降らせる。躱す。邪神の唾液や、肉片や脂が床に撒き散らされ、脚を掬わんと滑るが、破壊される足場を滑り止めに駆ける回る。邪神が小賢しい犬を食い潰そうとその身を前へ乗り出した時。それを待っていたとばかりに、ラルフは前へと飛び込み。前へ重心の偏ったその巨体をそのまま倒せ吹き飛ばせと、脚を体全体で薙ぎ払った。
 邪神の身体が大きく傾ぐ。剥き出しになる頭頂部に、匡の銃弾が撃ち込まれる。緊張も無く銃を持つ匡の姿は、花への水遣りジョウロでも持っているかのように自然体で日常的。降らせる雨が花への恵みではなく神の血の雨であるだけで。邪神の苦痛の轟きを手応えに、撃ち込み尽くして素早く装填。
 身体下のラルフを、細い多腕が追い詰める。狭い巨体下は回避しにくく脱出し難い。身を転がし、地を跳ね、切り飛ばす。
 その間にも絶えず二人分の砲声が邪神に突き刺さり続ける。匡の銃弾は冷静に。リリィの銃弾は、熱狂的に。
 ラルフは思考するーー人が為したその所業。死ぬために騙され飼われた人でないもの。卵が先か鶏が先か。自ら求めたのが先か邪神に狂わされたのが先か。床付近で駆け回っていると、『人型であったもの』の破片が視界に絶えず入って、そんな余計なことを思ってしまう。故にこそ、こんな絡まるだけで解けぬ頭痛は。この神にぶつける他はない。
 頭上から注ぐ唾液で、口の増加を察する。巨体がそのまま子犬を押し潰さんと、天井が迫る。脱っすべく奔る退路を腕に生えた口が次々に突立ち防ぐ。そこを退け、と、ラルフの地獄の炎が上がった。赤い炎熱が邪神の皮膚と粘膜を襲い、焼き払わんばかりの火力であるが。焼かれようが構わないとばかりの、飽き足らぬ暴食がラルフをとうとう掴んだ。手の口がラルフの腹を抉り千切る。逃さぬよう腹に放り込もうと、ラルフを掴む手が動く。ただで喰われてたまるかーー放たれるブレイズフレイムと。最早逃してたまるかと燃え盛りながらも、痛みよりも暴食を優先する大口から伸びる舌が、ラルフをどろりと舐めた。
『見えた。そこだな』
 銃声。ラルフを縛る邪神の手首が吹き飛んだ。邪神の手首を的確にスナイプするライフルが、ラルフの捕縛を引きちぎったのだ。千篇万禍による行動予測により、その銃弾は仲間を決して誤射しない。ラルフが、身体に絡みつく手指を振り払い再びの自由を得た。
「いい時間稼ぎだったぜ!お陰で急所には散々叩き込んだーーがまだまだ満足出来ねえだろう、その暴食は!!こっからがパレードだ!!」
「そりゃどうも、あとは頼むぜ」
 リリィの吠え声は「一度退け」の意、そうともここからは誤射など気にせぬ砲声パレード。傷つく身体を引きずるラルフの髪を、弾丸の風圧が撫でていった。
 開いたあらゆる口にリリィが等しく銃弾を注ぐ。口を閉じればその唇を開けてくれと、匡のライフルが肉ごと吹き飛ばす。散々叩き込まれた銃弾により、邪神の耐久力は下がっていた。銃弾一つ一つがレッドゲージを削り行く。

「その阿呆みてェに開いた口に、まだまだ弾丸詰め込んでやるよ!腹一杯喰らって死ね!!」
 リリィの鼓膜にこびりついていた泥人少女の声は全て高笑いでかき消えていた。
「生きる為に喰うことも、殺すことも否定はしないさ。なんたって、これから俺たちはお前を殺すわけだからな」
 何気無いやりとりの様な気さくさで、神への処刑宣告をする。ライフルを再装填。
「お互い様だ。恨みっこなしでいこうぜ」
 神が泥と人の捕食者であり、猟兵は神の屠殺者であった。それだけの事。脳を撃つ。
 雄叫びが上がる。神の身体がどこまでも破壊されていく。怒りのままにまた一歩踏み出す邪神の頭部が前を向いた時、その鼻先にキスをしたのはリリィの鮮やかな橙、ORANGE LIB。
「弾丸デリバリー、お待たせしましたァ」
 ふざけ具合は殺意の証。己のこめかみに人差し指を当て、バァン。と同時に、ショットガンがその鼻先の肉を破裂の如く吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

襲祢・八咫
……やれ、行儀の悪い。

所詮は弱肉強食、獣が獲物を喰らうに思うこともないけれど。此処で取り逃がせば、飽食に肥太った獣は、より多くを求めるようになるだろう。
愛すべき者と思うことはなくとも、泥人共を哀れに思わない訳では、ない。
それに。
喰い散らかされたそれらは、命の破片なのだから。どうせならもっと綺麗に喰って欲しいものだ。
嗚呼、不愉快だ。

……出て来い烏共。喰らえ。

狩りの時間だ。獲物はでかい、さぞ食い出があろうさ。嘴で啄み、爪で引き裂け。己もまた獲物であることを理解させてやれ。
腐肉掃除はおれたち烏の仕事故な。
さあて、おれも疾く往くとしよう。爪嘴はおれにもある、獲物の息の根を止めることくらいは出来ようよ。


夷洞・みさき
餌だけでなくて、飼育員にも手を出したんだ。
餌を潰されてお怒りなのか、それとも猟兵が恐ろしいのかい?
どちらにしろ、それが君の最後の晩餐だよ。

餌だけで満足していれば良かったのに、もう駄目だね。
その食欲が君の業だというなら、僕は、僕等は己の業で君を叩いて潰そう。

敵の攻撃の主は口と食欲。ならばそれを減退する方向で攻撃を組む
【呪詛】【恐怖】にて食欲不振。車輪と【UB六の同胞】による【踏みつけ】で口を強制的に閉じさせる
僕のUBが食べるなら、それ自体を毒としよう。

僕達の呪詛を喰べて吐ける様だけど、深海の冷たさは、食後のお腹に優しくないんじゃなかい?
慣れてる僕でも思い出すとつらいんだしね。

同道お任せ


リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、カイブツ。お前は、カミサマ。何が、違う? 何処が、違う?
リゥ・ズゥは、喰った。敵だから、喰った。お前は、何故、喰った?
リゥ・ズゥを、喰ってみるか? リゥ・ズゥは、お前は、喰わない。
お前は敵だ。だが、お前はきっと、あいつらより、不味い。
(POWで、前章で食べた泥人達を血液代わりとしてブラッド・ガイストを発動します。敵が強化してこようと、「カウンター」「衝撃波」「鎧無視攻撃」「2回攻撃」を駆使して、喰らい付かれてもより強力なダメージで反撃し叩き潰してみせます。私は彼らのことはわかりませんが、敵ではない、味方に近いはずの存在を餌とするものはなんだかとても不愉快です。なので絶対殴ります)



●自然葬
『澱んだ海の底より来たれ』
 邪神は、このぬるく空気の淀む地下しか知らない。海底など以ての外だ。この内陸では、潮の匂いさえ知る機会はない。
 故に、夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)に抱いた違和の名を、邪神は知り得ない。
『身を裂け、魅よ咲け。我ら七人の聲を、呪いを、恨みを、羨望を示そう』
 潮騒。現れるは、虐殺されし六人の霊。濡れた髪、水を吸い青くふやけた皮膚、人為的な死傷、磯の生臭さ。魚類めいた七対の眼が邪神を見つめている。
 邪神にとっては、彼らの魂すら肉である。されどこの、この違和感は。
『忘却した者達にーー懇願の祈りを込めて』
 全ての口の中で舌が震え青ざめるこの感覚を、『恐怖』と呼ぶ事を、邪神は知り得ない。
 六人が、暴食の限りを尽くしていた邪神の生を羨み、呪い、一斉に群がりその肉を千切りはじめる。
 そして邪神の肉を千切らんとするのは、死霊のみではない。80羽の一つ目烏が、羽音を叩きつけ、邪神の身体を覆い尽くさんばかりに舞った。
 死霊に群がられ、烏に啄まれ、その死霊を喰らわんと口を開く。それを、食という娯楽を羨み呪う死霊が捨て身でーーとはいえ、捨てるものなど彼らにはもう何も無いがーー身体を突き込み、内部から抑える。晒される牙や歯肉を、死霊がへし折り、烏がぢぢぢと啄む。無防備な口内に滑り込む海の冷気が、邪神の体内から熱をぞうぞう奪い、その身体が死者のそれと同じ温度まで冷えて行く。消化能力が衰えるーー

 襲祢・八咫(導烏・f09103)が、烏を使役しつつその様を眺めていた。怪物が食われるが先か、烏が食い尽くされるが先か。着実に烏は減ってはいるが、飛んでは啄ばみ、口が閉じかければそれを呪う死霊が阻害するため、減りは少ない。邪神が感じている得体の知れない恐怖も、喰われる数を減らす事に一役買っていた。
 烏と死霊には抗う力があった。喰い散らかされる様を見ながら、抗う力無く喰われた哀れな少女らを思う。猟兵が回復させたり、今も友として使役したりもしているが、全てを全て救えたわけではないだろう。核を砕かれた泥は戻せないのだから。
「……どうせならもっと綺麗に喰って欲しいものだ」
 烏も死霊も泥も、魂の欠片。そこに宿る、生きる誇りを穢されたならばそれは侮辱だ。哀れであろうさ。八咫は静かなため息を一つ。
「餌だけで満足していれば良かったのに、もう駄目だね」
 その隣でみさきが咎人殺しの車輪を回す。みさきは、『犠牲者』が犠牲者として生きて死ぬ事を否定はしないのかもしれない。彼女自身と、使役する同胞六人が、無惨に扱われ、忘れられた側であるが故。
「ああ。所詮は弱肉強食、獣が獲物を喰らうには、思うことは無い。が」
「あの食欲が、あの神の業ならば。僕と僕等は、己の業で叩いて潰すだけだよ」
「それが良い。腐肉掃除の方は任せてくれ、それはおれたち烏の仕事ゆえな」
「それ、僕等の事も腐肉扱いしてない?」
「おや? 水葬よりも鳥葬が好きであれば、それも受け持とうか」
 八咫が子供と語らう老爺の笑みで笑う。みさきは、大人の悪い冗談をかわす娘の様に首を振った。
「うーん、いいよ。いくら海底が冷たくても、やっぱり乾きながら死ぬよりは。僕等は海がいい」

●悪夢

 悪魔が立っていた。

 死霊を喰い、体内を凍えさせられ。烏を喰い、熱を得る。絶えず骨肉が砕かれる水気を帯びる音がする最中、邪神の目の前に、黒い悪魔が立っていた。

 リゥ・ズゥは、カイブツ。お前は、カミサマ。何が、違う? 何処が、違う?

 リゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)が邪神に一歩近づく。邪神から見て、泥人少女達に近しい気配である。餌の気配である。多少見てくれは悍ましいが、生きているものならば喰えば悲鳴をあげるため結局同じ事である。

 リゥ・ズゥは、喰った。敵だから、喰った。お前は、何故、喰った?

 邪神がリゥ・ズゥに喰らい付いた。タールの身体を啜り上げるように、喉が動く。その抉れた鼻先を、リゥ・ズゥの、怪物的に強化された拳が零距離にも関わらず殴り飛ばした。牙にタールの身体が持っていかれようと、カイブツには知った事ではない。拳から滴るのは、黒と透明の粘液。上の階でリゥ・ズゥが泥人から吸い上げた生命力の体液。

 リゥ・ズゥを、喰ってみるか? リゥ・ズゥは、お前は、喰わない。

 死霊が動きを阻害し、烏が邪神の肉を次々引き裂き、そこにリゥ・ズゥが、泥人の命を吸った身体で邪神を殴り尽くす。邪神がリゥ・ズゥの身体を喰らい、その顎門の力が上がろうが傷が塞がろうが知った事ではない。それ以上の破壊力を持って殺すだけ。そう、殺すだけ。リゥ・ズゥは、泥人は食えども、邪神は喰わない。そう決めた。

「お前は敵だ。だが、お前はきっと、あいつらより、不味い」

 カウンター。鎧破壊。連撃。衝撃波。死力を尽くし神を殺す。身を削られれど、この身体に神の生命は吸い上げない。泥人達の命を吸ったこの身体に、お前を決して受け入れない。
 神が、身体の半分以上を口へと変化させた。逃げきれぬほどの巨大な顎が、ただリゥ・ズゥを飲まんと天を覆った。

 その下顎を、駆け込んだ八咫が斬り落とした。烏のみに任せていては大物の急所はつけぬ。息の根を止めるべくその刃を抜き、音も無く傍に居た。べろり、肉が、落ちる。
 上顎を、みさきの車輪が甲高い歪みを立てて撥ね上げる。一回転アクロバット、水流の中を踊る魚の様に車輪を駆使してみせよう。
 その喉奥迫る咽喉を、リゥ・ズゥは見上げていた。落下の如く迫るその勢いを味方としてーーリゥ・ズゥの拳が、その巨体を文字通り打ち上げた。神がおどろおどろしい呻きをあげる。泥人達の残した生命の雫が、飛び散り、リゥ・ズゥに降り注いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユキ・パンザマスト
最下階は杯盤狼藉。
ああお前、本当に喰うのがヘタクソだ。
勿体ないです、勿体ない。

毒づいて先制、捨て身、刻印の牙でデカブツを穿ち、吸収。
反撃は覚悟です。無茶な特攻だ。一度死ぬだろう。

……、良かった。
予め、少女達を喰らっておいて。

仕留めりゃ、敵も一瞬気ぃ緩みますかね。
即、瀕死の肉体を新陳代謝する。
少女達の生命という、大量の蓄えがある今だからこその荒業。
相手に喰われる前に、全身の刻印で内から古い己を喰い尽くす。
新たな身体で再駆動。負荷は激痛耐性で堪える。
他の猟兵達への隙を作るよう、傷口抉って、引きつけがてら。
床に喰い散らかされた、肉片をさらっていく。

ちゃぁんとユキが戴きますよ。
またいつかに廻る為。


浅沼・灯人
さあ、正義の味方に成り下がろうか


目の前のこいつは食うことしか考えてねぇ
意思の疎通なんて必要ねぇ
やることなんてあとは殺すだけだ
俺らがやることは他を見ず、こいつをぶちのめすことだけだ

距離とやつの動きの癖を見極めながら
鉄塊剣で攻撃を受け、アサルトウェポンで射撃する

癖が読めたら接近
武器ぶん投げてでも動きを止めて
腕を竜化させてぶっ裂く
腹の下だろうが口ん中だろうが
俺の渾身の力で叩き込む
名が必要なら【擒餞戈】とでも呼んでおく
名が要らねぇならただの暴力だ

倒し終えたら武器回収して、
できるだけ掃除していこう
このまま放っておくわけにもいかねぇだろ
きたねぇもんは掃除して、たらふく肉食べに行こうぜ、肉


ベルゼドラ・アインシュタイン
とうに嗅ぎ慣れた悪臭は、鼻を掠めても顔色一つ変えやしない
転がる肉片を踏み締め、汚物を見るような目を髪越しに向けながら対峙する

呆気なく喰われる様を目の当たりにしたが
神とはこんなにも空虚なモノだったか…?反吐が出るわ
本当に、まだユキの方が綺麗に喰っていたのに
耳障りな少女だったものの悲鳴にウンザリしながらダガーを構える

【盗み攻撃】で隙を突きながら攻撃しつつ
【ベルゼブブの鉄槌】でデカイ口目掛けて焼き尽くしてやろう

後は【怪力】で【2回攻撃】しつつ時折【傷口をえぐる】

ぁーくそ、何かドンドン腹減ってきたな
こんな汚らしい肉片さっさと片づけて、綺麗な肉の断面を見てェ
綺麗なサシが入った肉とか有ったら良いよなぁ



●時は近い
「ああお前、本当に喰うのがヘタクソだ。勿体ないです、勿体ない」
 周囲に散らばる血肉は、繰り返される戦闘の中、既に教団員のもののみでは無くなっていた。
 猟兵どもの千切られる皮膚、貪られる腹、自己犠牲の血飛沫がびたびたと広がり、悪臭の中では鮮血の鉄の香りは、花の香りにも似た艶かしさであるけれど。ユキ・パンザマスト(八百椿・f02035)は唇を舐めて毒づいた。
「本当に。まだユキの方が綺麗に喰っていたわ」
「……目の前のこいつは食うことしか考えてねぇ。やることなんて、あとは殺すだけだ」
 視界前に下がる黒髪の奥、ベルゼドラ・アインシュタイン(錆びた夜に・f00604)が神を睥睨。転がる肉片にも悪臭にも顔色一つ変えないが、それらを愚かしいまでに貪る様は、それら以上に汚物であると、睨め付ける眼差しが物語る。
 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)が、鉄塊剣とアサルトウェポンという大振りな獲物を軽々と抱え、ーー灯人の砲声を合図に、三つの殺意が、堕ちた神を屠るべく鋭く光った。

 ユキの殺意は飢餓だ。子供が遊ぶような無謀さと、腹を空かせた獣の獰猛さの合いの子だ。満腹を知らぬ幼子が、もっとよこせ、もっとよこせ、おまえのそれがうまそうだ!口の目の前で欲しがるように駆けずり廻っては、刻印で貪り穿つ。

 ベルゼドラの殺意は無関心と拒絶。命への
興味はろくにない。強きが生き弱きが殺される。己はその、弱きを殺す側であるだけだ。ユキが戯れるタイミングに合わせ、ダガーを翻し、ベルゼブブの炎で焼き焦がす。

 灯人の殺意……否、戦意は、推進剤。己が生き、明日へ長らえる手段が戦場だ。鉄塊剣で攻撃を受け、必要となればアサルトウェポンでその牙ごと吹き飛ばす。敵の動きを見抜くべく、眼鏡の奥の眼光が鋭い。

 喉奥目掛け、ユキの刻印が貪りついた時だった。視界がブラックアウト。邪神の口があまりに無謀に飛び込んできたユキを、とうとう口中へ納めた。
「ッ、ユキ!!!」
 戦況を見渡すように立ち回っていた灯人が叫んだ。小さな肉塊が大きな牙に噛み砕かれ奥歯で解される、ぐびゃぐぢゃ汚い咀嚼音。
「ああ、ありゃダメな音だな」
 ベルゼドラが告げる。それは戦い慣れた灯人とて、否、物を口で食べた事がある、全ての人間がわかる。灯人が歯軋りと共に舌を打ち、アサルトウェポンを腹目掛け撃つ。ベルゼドラの蝿の王が、巨体を全て焼き潰さんばかりに火炎球を叩き込んだ。
「ダメならダメでいい。けど骨くらいは拾わせろよ?汚ねえ食い方なんだ、残ってんだろ。」
 ユキが消化される前に拾おうという算段だ、炎の中ベルゼドラが距離を詰めた。灯人が撃ち込み防護を削っていた、腹と思わしき箇所を、ダガーひとつで切り裂き抉り、中身を晒させる。人外臓器が溢れ出し、邪神が嘔吐の音を出す。
 その嘔吐が、口の手前から流れ出す。内側から切り裂かれるように、傷がぐっぱり開くのが見えた。流れ落ちる黄ばんだ汚物の中にーーユキは在った。
「っぐぇ、っぷへ!」
「ーー!!」
 鼻に入った水を出す時のむせ方だ。生きている!!
 邪神はもはや吠え声すら出ない。……ユキの刻印に、無理やり内側から食い破られた喉が。ごぼごぼと、滝のように流れ落つ。
 ユキは潰れた躯を捨て、殻を食い破るよう生まれ落ち、咀嚼の隙間を縫って喉に転がり落ちていたのだ。
 これまでに喰らった命が、ユキの身体を巡らせた。邪神が無残に扱った泥の力と共に。八百椿、ユキの蘇生ユーベルコード。くるん、軽やかに着地。
「っぶえー。あれ、お二人共、驚いた顔なんざしてる場合じゃねえですよ!喰われて生きているなんて、そう驚く事じゃあないでしょう?──廻りゃあいいんです。何度でも」
「……驚くくらいさせろ。死んでない事を、喜ぶくらいはさせろ」
 灯人がぶっきらぼうな苦笑と共に、武器を置いた。

 ーーー食った筈の獲物が生きているはずがない!あれだけ噛み潰した!磨り潰した!肉を皮膚の隙間から押し出した!生きているはずがない!ーーー

 邪神のあぶくを横目に、ベルゼドラは声を上げて笑っている。ユキが嘲るように駆ける。さらに卑しいことに、床に散らばる血肉を広げた骨の手で搔き集めるその低い背に、追いすがる口を伸ばす邪神の眼前。灯人が踏み出していた。
「よお。正義の味方に、成り下がりに来たぜ」
 その言葉は果たして神は聞いたろうか。振り上げた両腕がこれまで背負ってきた命の重量は、神に響くだろうか。
「痛いだけでは済ませねえよ。ーー潰れろ」
 竜化させた両腕が、その頭蓋を粉砕する音が。落雷の如くフロア中に響き渡る。

「……ぁーくそ、何かドンドン腹減ってきたな。こんな汚らしい肉片さっさと片づけて、綺麗な肉の断面を見てェ」
 殴打音の横で、ベルゼドラがため息一つ。
「あと少しの辛抱ですよ姉さん。ユキも新しい身体になったせいで腹ペコです」
 かき集めた肉片を、指の隙間まで舐めとり、灯人の勇姿を見ている。
「綺麗なサシが入った肉とかあったら良いよなぁ」
「……ああ。せっかくの機会なんだ、たらふく食べに行こうぜーーあと、少し後に」
 神を殴り伏せた痺れを指先に感じながら灯人が振り返らずに言う。泡立つ胃液を吐きつつ、なお立ち上がる神を見上げた。
 肉会の時は近い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

桜庭・英治
ふざけんなよ
ふざけんなよお前
彼女たちを殺してきた俺が
彼女たちのために怒る資格はない
けど、我慢してられるほど殊勝な性格じゃねぇんだ

餌用に飼育ってなんだよ
彼女たちは全然そんな子たちじゃなかっただろ!

お前たちもあんな奴を神様って呼ぶんじゃねぇよ!


恐怖に負けない
受けた傷に負けない
常識を外れた怪物に負けない
日常の裏側に潜んでいた理不尽に負けない

挫けた自分を傷ついた仲間を『鼓舞37』して【ヒュプノシス】で立ち上がる
『怪力4』と『捨て身の一撃3』を乗せた渾身の一撃で殴り飛ばしてやる!


在連寺・十未
こうなるって解んないかなぁ、解んないかぁ、邪神……UDCの信徒ってそんなもんか。


お前相手に容赦はしない

ユーベルコード起動、クイックドロウを使用してブラスターで連射する。大きな口なら狙いを付けるのは容易い。口ン中焼き潰してやる、

後は隙があれば破片手榴弾を口の中に放り込んでから、味方の援護に。アサルトウェポンで「援護射撃」しよう。


※アドリブ、連携など大歓迎です。よろしくお願いします


キャリウォルト・グローバー
────あやつか。あやつが此度のすべての原因か。
斬る。斬る。斬る。塵も残さないほどに斬り捨ててくれる。
某の体などは知ったことか、それよりあやつを斬り捨てなければ。
罪滅ぼしになるとも思わないが、そうでもしなければ「正義」のためにと斬り捨てた彼女らに申し訳が立たぬ。
さぁ行くぞ化物、この化物がお相手仕る。

【POW】
某の体は機械だ、痛みなど遮断できる。
攻撃など気にしていてはあやつの体には近づけぬ。
一直線だ。
一直線であの化物に接近し『桜花一閃』にて真っ二つにしてくれる。


雷陣・通
スニーカーに何かが滲みて、元から臭いのがもっと臭くなった
俺は遅れてきたから経過は知らないけど、何があったかは知ってる
そして、目の前の何かでバカな俺も何があったかは分かるよ

【Pow】
来いよ、口だろうが腕だろうが『手刀』でぶった切ってやる。
スライディングで汚れた床を滑っていけば後はお前の目の前だ
「口開けよ」
その舌掴んで、一発入れる。
二回攻撃でもう一回握って……握って……何かを握って
叩きこむ!

「どうせ明日は明日であるけどなぁ! てめえの明日だけはねえ! 絶対だ!!」

握った拳や相手の攻撃より胸が痛いのはなんでだろう?
教えてくれよ、父ちゃん……。



●屈さず吼えよ

 ふざけんなよ
 ふざけんなよお前
 
 桜庭・英治(NewAge・f00459)は震えていた。武者震いでも寒さではない。怒りとも違う。ただ、一度は蘇生したが、この後には死ぬしかない泥人達を見て、拳を握る。
 この『お前』に該当する人物は、すでに全員死んでいる。神にーーあの化け物に語った所で、この湧き上がる感情が理解される事は無い。
 
 彼女たちを殺してきた俺が
 彼女たちのために怒る資格はない
 けど、我慢してられるほど殊勝な性格じゃねぇんだ



「ーーー貴様が。貴様が此度のすべての原因か!」
 キャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)の愛刀『桜』が邪神の表皮を切り裂いた。血飛沫が上がり、激痛に苦しむ声が上がる。
「斬る。斬る。斬る。塵も残さないほどに斬り捨ててくれる!」
 これ以上肉を削がれまいと、邪神があらゆる口を使いその刃を防ぐ。歯列で、胃液で、或いは齧り貪る事で。
 巨体と巨体の剣戟の風圧を感じながら、在連寺・十未(アパレシオン・f01512)が物陰に隠れブラスターの照準を絞る。ーー厳密に言えば、原因はあの邪神と言う名の暴食では無いのだろう。あれを召喚したのは教団員。それを飼育せんと泥人を導入したのも教団員。それがこうして肉片と化しているのも、教団の、自業自得だ。呆れを通り越して、悲しくすらなる。それが自分と同じ人間の所業であるのだから。その感情の表出が、あのウォーマシンは怒りだ。冷静さを失っている。
「信徒達……こうなるって解んないかなぁ、解んないかぁ。……邪神の信徒って。そんなもんか」
 ブラスターのスコープを覗くが、キャリウォルトの接戦が十未を僅かに迷わせる。先の戦いで、仲間を危険に追いやった身として、誤射の可能性に息が上がるようなーー生きた心地がしない。
「撃て、娘! 某の事は、一枚壁に過ぎぬと思え」
 邪神に向け振るい続ける刃を緩める事なく、キャリウォルトが叫ぶ。この身は機械、痛みも損傷もどうとでもなろう。この邪神を必ず殺さねば、キャリウォルトの正義は静まらない。
「……なら。容赦しない」
 言葉に背を押され、十未が引き金を引いた。熱線が肉を穿つ。焦げ臭さと共に、邪神の歯を貫通して、身体向こうまで穴が空く。
 そこからのクイックドロウ。呼吸の乱れなど無かったかのように、仲間を誤射せぬ精密さで連射。文字通り、邪神の身体が蜂の巣となり傾ぐ。
 そこに駆け込むスニーカーは雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)。汗を吸い、泥を吸い、履き潰した汚いスニーカーが更に血を吸い、腐臭を呑む。少年の身体が死臭を知る。ここまでの経緯は知らずとも、邪神の口の端々に人肉や泥肉が垂れ下がっている事は理解が出来た。それになにをすれば良いかもわかる、あの口を潰せば良い!
 スライディングにて巨体の下まで滑りこむ、浅い飛沫が服にまで飛ぶだろう。キャリウォルトの剣の応酬を一瞬見上げながら、斬撃の飛ばぬ怪物の下。
「口、開けよ!」
 少年の手刀が、怪物の身体下の口をこじ開ける。皮膚がべろりと切り裂かれ、自然垂れ下がる舌を体全体で握り込む。

 その時だった。邪神が周囲に、一切斬り裂く波動を飛ばした。
 何が起きたか、一瞬分からなかったであろう。
 真正面にいたキャリウォルトの身体は、胴から斜めに真二つに。
 十未の隠れていた壁が遠距離から叩き斬られ吹き飛ばされ。
 周囲の猟兵も突然の斬撃に血を垂れ流す事となる。
 通もまた、突如切り裂かれた指を見て唖然とし、舌から落ち尻餅をつく。
 喰らい呑む悪食。キャリウォルトの斬撃を命の限り防御し、技を噛み砕き、その斬撃をユーベルコードとして理解をしたのだ。斬撃を一斉無差別にお返しする。血の匂いが、痛みの呻きが、満ちる。
「…………無念……」
 ズ、ン。キャリウォルトの巨体が、上下に崩れ落ちる。
 十未が瓦礫の下で足掻く。
 通が手から流れ落ちる真っ赤な痛みに歯を食いしばり震える。
 援護に回っていた泥人の数体が切り飛ばされ、かみさま。と最後にうわ言のように零した。


「ーーあんな奴を神様って呼ぶんじゃねぇよ!!!」

 叫び声がこだました。
 斬撃の痛みを堪えながら、声の主は立ち上がっていた。

「餌用に飼育ってなんだよ、彼女達は全然そんな子達じゃなかったろ!! 餌だから、泥だからって、決着できる感情じゃねえだろ!!?」

「痛いしキツいし、こんな事件知らなけりゃ良かったかもしれねえ、けど知っちまったんだからもう逃げられねえし戻れないんだ!!あの子たちの友達を殺したんだから、今度はあの子達を喰った化け物を、俺たちが倒さなきゃ決着出来ないだろ!!!」

「こんな痛みが何だよ、強い化け物が何だよ、そんなものに俺たち負けられるのかよ」

「違うだろ!!!!!」

 ありったけの酸素で英治が叫ぶ。
 挫けた自分を、傷ついた仲間を鼓舞をして、叫ぶ言葉はヒュプノシス。

「こんなもんで負けられるかーー意地があるんだ俺たちは!!!!」

 彼の声は暗示に過ぎない。だが、戦線の崩壊に崩れかけた膝を、再び立ち上がらせるにはそれで十分だ。痛みを、恐怖を、理不尽を、猟兵の意地が凌駕する。

 キャリウォルトは思う。桜を防がれ、この身を二つに斬られたところで諦める理由にはなるまいよ。駆けつける猟兵が、ばらけた身体を繋ぐべく回復を試みてくれるのだ。立ち上がる理由にしかなるまいよ!

 十未の胸に宿った動揺が一切晴れる。そうだ、痛みが何だ、恐れが何だ。同じ人間だからこそ、泥人を殺したからこそ、帰らねばならないのだ。命を蹂躙した者として、今日の出来事を覚えている義務がある!

 通の痛みと血が止まっていた。肉体的な痛みではない胸の痛みはあれど、それはきっと癒えちゃいけないものなんだろう。今は、この、ーー怪物を、ぶっちぎってやるのが一番だ!!

 十未が手榴弾のピンを抜き放り投げた。その爆発を隠れ蓑に、英治が捨て身で接近する。飛び散る破片を潜り抜け、身体下まで滑り込んだ時、視界に入ったのは小さな猟兵の少年だ。こんな悪臭の中、悲劇の中、その二本足で立ち続け、瞳に光を失わぬ少年だ。

「殴りあげるぞ!!」
「うん、にいちゃん!!!」

 通が手刀で切り裂いて、英治が怪力で渾身の拳をブチ込んだ。ひたすら重いその化け物の身体が、手に、拳に、直接乗るのだ。この重さが命なのだろう。二人分の渾身に、怪物の身体が、沈む。

「どうせ明日は明日であるけどなぁ! てめえの明日だけはねえ! 絶対だ!!」

 口に変換する体力も、もう無いのだろう。切り裂かれた肉の奥、赤い血肉が酷く早く脈を打つーー

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ナコ・クグモリ
……胸くそが悪い?
生きる為に食べる事、生き残る強さを持つ為に食べる事、それらの何が悪いのか、私には分からない。

ただ……命を喰らうには
君は少し食べ方が汚いよ。


私は【暴力】を振るう、ただの打突に蹴撃だけど、これだけ味方がいるなら当たるよね。
かみさまとやらの肉体が捥げたら囓ってみよう。
どんな味なのかな、あまり美味しくはなさそう。
不味かったら吐き捨てよう。

おなかすいた
今夜は何を食べよう。

※アドリブ改変連携自由にどうぞ、どんな描写も歓迎です


メドラ・メメポルド
ええそう、強いものは弱いものを食べる
当たり前のことよね、わかるわ
だから、今度はあなたの番よ

メドはね、毒使いなのよ
素敵な毒をあげるために
くらげの腕を伸ばしましょう

【使用→あなたのために注ぐ毒】
メドがあなたに毒をあげるわ
メドの毒は甘いのよ

痛いことを忘れましょう
幸せな気分になりましょう
そうして最後、ぜぇんぶ逆さまに
あなたが誰かへ与えたものを
メドが捧いであげましょう

あなたが食べたものが何かとか、誰かとか、知らないわ
メドも、あなたのことなんて知らないままだもの
……ほんとは食べてもいいのだけど、
今日はそんなにお腹減ってないからいいや
さよなら、だれかのかみさま
誰にも食べてもらえないまま、腐っていってね



●いらない
 ナコ・クグモリ(アークティックホーン・f04851)が『暴力』を振るう。
 純粋な殴打。その一撃は肉に包まれた内部まで破裂させる程の破壊力。肉の繊維が千切れる鈍い音。銃弾を散々喰らわされ、かつ己が餌にしていた泥人達の粘液に縛られる状態の邪神には、その攻撃を防ぎ、耐える事も困難であった。
 だから、邪神もまた死に物狂いでナコの細い拳に貪り付いた。ナコの右腕が、身体との別れを告げる。ぶづり千切られる激痛に、ナコは不愉快に眉を顰めて。だから今度は派手に蹴り飛ばしてやった。衝撃音。邪神の巨体がナコの腕だったものを咥えたまま後方に吹き飛ばされる。
「ーー……不愉快」

 生きる為に食べる事、生き残る強さを持つ為に食べる事、それらの何が悪いのか、ナコには分からない。されど、ナコの腕を、べちゃべちゃり、食っているのか吐いているのかも曖昧な咀嚼をする様は。泥人や教団員を食べこぼし放題であったあの様は。こうして近接戦をしている間も、口という口から、肉やら毛やら、腐った匂いと共に鼻先に落ちてくるのは。
「…………命を喰らうには。君は少し、食べ方が汚いよ」
 鼻先を拭う。
 邪神の細い多四肢が、さらに捕食せんと次々伸びた。血の匂いを辿り真っ直ぐに伸びてくるそれを、ナコは片腕で掴み骨ごと引き抜く。もぎ取った細腕を振り回し、他の四肢を追い払う。

「こわがらないで」

 その四肢を追うは、メドラ・メメポルド(フロウ・f00731)の海月の触手。細い手が邪神の腕を絡め取り、甘い甘い毒を捧ぐ。
「痛いことを忘れましょう。幸せな気分になりましょう」
 メドラの声も毒も、この地下で貪るだけであった邪神にとってもあまりに甘美。全身を焼かれ、捥がれてきた痛みを柔ら、それに伴う暴食衝動を抑えさせる。邪神の動きが、眠たげに、鈍くなる。
 ナコは捥ぎたて新鮮な邪神肉を齧ってみる。肉を失ったら肉を食うべきである。そんな当然の本能をもってしてもーーナコはその肉を、飛びきり汚く吐き捨てた。べちゃり。
「どうかしら。おいしかった?」
「ご覧の通りだよ。食べられたもんじゃない」
 硬く、骨っぽく、臭い。
「そう。じゃあ、いらないわね」
「ああ、いらないよ」
 満場一致。ナコは残った腕肉も投げ捨てた。
 メドラがより多量の甘毒を、苦しむ邪神に注ぎ込む。徐々に邪神の身体が、床に重たげに沈んでいく。
「あなたが食べたものが何かとか、誰かとか、知らないわ。
 メドも、あなたのことなんて知らないままだもの」
 ぬるい海底の仄暗さ。幼い呂律が、命への無関心を語る。
 メドラの毒が回った肉は、もう食べられたものではない。同じ死を感じたいならば別かもしれないが。少なくとも、あの邪神の肉を食べ、この身の循環にむかえ入れようなどとは、ナコは思わない。もう今夜のご飯の事を考えている。お腹が空いた。
 メドラにとっても、食べる価値はない。だって。
「……今日は、そんなにお腹減ってないから、いいや」
 飽和するまで毒を注いだ触手が、邪神の身体から退いていく。メドラはちいさなあくびを一つ。

「さよなら、だれかのかみさま。誰にも食べてもらえないまま、腐っていってね」

 ぐずぐずと、神の肉が、痛みも伴わず崩れていく。
 誰かの血肉も、雄大なる大地にも、還る場所はどこにもない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

八月・残照
「あなたにも、悪いとは思っているのでございます」

すえた臭いには息がつまるし、食い散らかされた少女たち残骸を見れば怖気が走った。それでもあれにとって食べたければ貪るが正、ということも分かっている。

毎度ながら、我々は共存ができないという事実を突きつけられ続け、自分は彼らを憎み切ることもできず、愛し抜くこともできずにいる。
弱肉強食よりは焼肉定食を愛する愚かな生き物として。あなたの食事を終わらせて、我々は我々の食事へ行かなくてはいけないから。せめて。

「ごちそうさまを教えてあげるでございますよ」

強く強く握られた宝珠に反応し、首なし竜は大きくはばたいて、その顎の根から抉らんと鋭い爪を閃かせた。



●合掌
「あなたにも、悪いとは思っているのでございます」
 八月・残照(迎え火・f02719)の声は静かな悼みであった。瀕死の神の前に膝をつき、その呼吸を聴く。
 暴食の神も今となっては肉体を限界まで追い込まれ、神経も毒に侵され、口の端から体液を無力に吐き出すだけとなった。それでも、あたりに散らばっていた泥人や教団員の肉よりは、ーーそれすら、別の、餓鬼が、食い攫ってくれたけれどーーそれよりは、無残ではないのだから、憐れむのも妙な話かもしれない。否、憐れむ事に、どれとどれを比べるなど不毛な事だ。目の前のものに、この瞼が重く下がる。それを奇怪な反応とは呼んでくれるな。命が死ぬとは、こうあるべきだ。

 ーー毎度ながら、我々は共存ができないという事実を突きつけられ続け、自分は彼らを憎み切ることもできず、愛し抜くこともできずにいる。

 こんな有様でも、この邪神に触れれば指は千切られ、引き摺り込まれ、頭までたやすく喰われるだろう。ただの肉に心が宿っただけにすぎぬこの身が神にしてやれる事など、最初から最後まで何一つない。

「……弱肉強食よりは、焼肉定食を愛する、愚かな生き物として。あなたの食事を終わらせて、我々は我々の食事へ行かなくては、なりませんので。ですので、どうぞ、せめて」

 この弱肉強食の頂点を蹴落とし、地獄へ送る覚悟として。宝珠を強く強く握る。
 首無しの竜が顕現する。

「ごちそうさまを、教えてあげるでございますよ」

 竜の爪が、神の巨体を、顎から真二つに切り裂いた。血飛沫の一滴もあがらなかった。
 誰にも喰われる事なく、命の巡りにも還れずに、ひとつの命が、ただの肉塊として溶けていく。残照は重い瞼を閉じ、彼だけが静かに手を合わせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『とりあえず焼き肉食べに行かない?』

POW   :    焼き肉を目一杯食べる

SPD   :    焼き肉って言ったら酒と一緒に。未成年はソフトドリンクとデザート食べ放題だ!

WIZ   :    みんなで談笑しながら美味しい焼き肉が最高だ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 少女を殺した。救った。戦った。神を殺し、そして看取った。
 それはそれは食欲も失せるようなひとときだったかもしれないが、うるせえそれでも腹は減る!
 肉を焼け! 甘辛いタレに付けて食え!野菜なんざお好みでどうぞ!酒を持て持て、腹いっぱいになるまで帰るなよ!
 どうせ明日は明日で、辛く苦しく吐きそうなのだ!
 生きているものの権利として、今日を最高の気分で終わらせろ!!

【随時受付。少しずつずつのらくら描写。プレイング再送歓迎!生きとし生けるあなた方に乾杯!!】


 からんからん

 いらっしゃいませ!
 ご予約のお客様ですね

 あちらのお座敷席にどうぞ!
ナコ・クグモリ
【POW】
わかった、おなかいっぱいになるまで帰らない。
店員さん、メニューのやつを上から下まで全部持ってきて。

いただきます。

※好き嫌いはありません



●おなかいっぱいになるまで帰らない。
 エントリーナンバー1番乗り、ナコ・クグモリ(アークティックホーン・f04851)。静かな決意を胸に着席、メニューを指でなぞり、お冷やおしぼりを持ってきた店員に開口一番告げる。
「メニューのやつを上から下まで全部持ってきて」
「全部。でございますか」
「全部。」
「上から下まで。でございますか」
「そう。おなかがすいた。はやく。」
 ぱし、と白い手が卓を叩いて催促。店員は最早電卓も叩かずキッチンに注文を届けるのだった。

 大量即決大人買い。あの身体のどこに収まるのかと、興味をそそられてか猟兵からキッチンからちらちらと視線が集まる。
 メニューを上から下まで全て。すなわち、高級な肉からファミリー向け大皿、ちょっとつまみたい人向けのユッケ、野菜にサラダにライスまで。次々たどり着くメニューを前に、手を合わせる。いただきます。
 焼く、食べ頃、食べる、焼く、焼く、食べる、焼く。ご飯にタレと油を吸わせる。時に焼いたかも怪しいほどの軽炙り。いい牛肉はそれも美味しいから大丈夫。
 カルビのジューシーさはやっぱり王様だ、艶やかな脂と柔らかな歯ごたえ!タレもきっとこの瞬間の最大風速のために作られている。薄切りロースは少し淡白だけれど、食べやすさを追求した馴染みあるお味で勿論おいしい。ご飯を包みやすいのも実に良い。あの部位も美味しかったな、後でどの肉だかメニューで確認しよう。大根と海苔がたっぷりのチョレギサラダがビタミンとして染み渡る。焼きとうもろこしもそろそろ食べ頃、玉ねぎも良いね甘く焼けた。しっかり焼いたホルモンの食べ頃も回ってくる。そしてあらゆる旨味を吸い込んだ、炊き立て白米がなんて美味しい!

 後に並ぶは鮮やかなほど綺麗空っぽな、お皿の花畑。ベルをワンタッチ。お待たせいたしました。再び、最初と同じくメニューを上から下までなぞる指。
「もう一周食べたい。」
「全部。でございますか」
「このお皿に乗ってたやつは、ふたつ。」

 ナコの満腹、店の在庫、他の猟兵の食事の、三つ巴の戦いは、始まったばかりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
……焼肉。
ね、るり遥、るり遥、焼肉。

最早、食べる為だけに出て来たこの黒狐。顔見知りのグリモア猟兵の服の裾を引いた。
他にも知っている顔がいっぱい行っていたようだし、それに、焼肉は食べたい。
普段、キッチンで自分で焼いてみようとすると不思議と焦がすが、網の上の肉を見ていれば良いなら多分何とか食べられるように焼けるだろう。

……依頼は、行こうかと思ったのだけれど。
少女の形をしたものを、殺せる気が、しなくて。猟兵なのに。猟兵に、なったのに。
覚悟が足りないのか、一般人気質が抜けないのか。
殺せないのなら、せめて邪魔にならないように不参加を選ぶしか、なかった。

それはそれとして。
焼肉は美味しいので。
お邪魔します。



●瘡蓋
「早く来すぎちゃったな」
「うん」
「まだ来ないな」
「うん」
お飲み物お待たせいたしましたー。
「どうも」「ありがと」
 るり遥に網を託し、三岐・未夜(かさぶた・f00134)は焼きあがる肉を眺めていた。
 否、最初は未夜も焼こうとしたのだ。焼いていたのだ。肉をたくさん食べようとたくさん並べたのだ。あっという間に網に火柱が上がっただけなのだ。るり遥が慌てて氷を放り込んでから、未夜はトングを触らせてもらえない。おかしい。網の上の肉をみていればいいだけなら、僕にも焼けるはずだったのに。

 周囲はどんどん人が増え、肉だ酒だの注文が飛び交い始めている。全体を見渡せる席に陣取り、ご近所さん御一行が着くのを待つように二人は過ごす。隅っこの席は人見知りの味方である。
 るり遥は「みんなが来るまでは俺で我慢してくれ」なんて言うので、未夜は卓の下で脚を伸ばし、つま先でちょっと蹴ってやった。

「……依頼は、行こうかと思ったのだけれど」
 ドリンクに口をつけながら、ふと、未夜は言葉をこぼす。グラスの中に閉じ込めるように。るり遥が視線だけをあげた。
「少女の形をしたものを、殺せる気が、しなくて」
 同じ団地のご近所さんが次々出向く中、未夜はお留守番をしていた。窓から外を覗く。階段の上り下りを聞く。新規通知に既読をつける。そういった日常的な隣人の気配が、今日一日少なかった。その寂しさが、出向けなかった自責を駆り立てる。
「猟兵なのに」
 UDCとの戦いはグロテスクだ。きっと食欲が無い者もいるかもしれないのに、戦うのを避けて閉じこもっていた未夜
は、肉をみて美味しそうだと思うだけ。
「何でだよ。良いんだよ。来なくて。」
 肉を裏返し、るり遥が言う。脂が垂れて、網の下で火が一瞬強まる。その言葉に未夜の毛並みが少し萎んで、るり遥は少し慌てて言葉を次ぐ。
「違う、そうじゃなくて。なんていうか…………殺せない未夜のままでいるのを、選んだんだから。良いだろ、それで」
「いいのかなぁ……」
「良い」
 断言。るり遥が、肉を皿に盛りつけて、それをそっくり未夜に渡す。
「…………情けないのが、俺だけに、なるのは。ちょっと、……つらい」
 ほとんど独り言の小さな声を、狐の耳が聞き拾う。そっか。同じ程度の声量で、まろく返した相槌は、人間の耳には届かなかったかもしれない。

 それはそれとして。
 お肉は美味しいので。
「冷めるぞ」
「うん、ありがと、るり遥」
 いただきます。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
肉だ肉だ!ギハ、ぐは、クハハ!!!
やることやった後の飯はうめェ~よなァ~?なァ??
酒もうめェ~~~~!!!!

一人で食ってもいいが……大人数で食った方がうめェってモンだよなァ!
つーわけで顔見たことあるヤツに突っかかるとすっか
酔っぱらい?絡み酒?うるせェなオレァ元からこンなンだよ

お前は優しいイ~ィヤツだ
お前はなかなかかっけェ~~ヤツだ
お前は……

ああ、オレが見惚れちまったヤツだ

さてさているかどうか、話せるかどうかも怪しいけどな


浅沼・灯人
肉だ
とにかく肉食うぞ肉

人も多いだろうし相席大歓迎
とにかく肉を焼き、食う
ひとり焼き肉もいいもんだが大勢で食う肉ってのもいいもんだ
とにかく食うぞ

甘辛タレいいじゃねぇか
家じゃ塩ダレが多いんだが、やっぱこういうタレいいな
あっ、サンチュの皿取ってくれねぇ?
タレつけた肉をよ、サンチュで巻いて食うの好きなんだよ
肉の旨味とタレの甘辛さと葉の瑞々しさが最高なんだよ
あ、店員さんこの肉追加もう一皿な

……さー、しっかり食ったらさっさと帰ろうぜ
どうせ明日も誰かが死ぬし、誰かのために殺すんだ
食って、生きて、明日死なねぇように
後悔しねぇように今日を終わらせよう


ケース・バイケース
(鯉は跳ねている)

(鯉はPOWで食べたい)

(鯉は跳ねている)

(ところでこの鯉、どうやってここに居るんだろうか)
(水場は果たして在るのか)

(なんか、いざとなれば団地のメンバーがなんとか、たぶん、なんとかしてくれるはず)

(鯉に難しい事は解らない)
(何故なら鯉だから)

(鯉は跳ねている)

(だってそれが本能だから)

びっちびっち

(MSが畜生のロールを頑張って書いてくれると、信じて鯉は跳ねている)
(もしかしたら、鯉を見てると誰か元気になるかもしれない?)



●鯉
 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)は肉を焼いていた。
 肉を焼き、隣で顔を出す黒い大きな鯉に肉を与えていた。発見次第、灯人が素早く隣の魚屋から水槽を拝借し、水場を確保した献身あってこそ、鯉は同席を可能とした。感謝してほしい。いやあんまりしない。鯉だから。
 鯉は活き良く跳ね、肉に飛びつき、箸からそれを食らう。おいしい。ビチビチと跳ねている。喜んでいる。と感じるかもしれないが、実際のところはただのもっとよこせコールである。灯人は網の上から次の食べ頃肉を取った。
 鯉が果たして焼肉を食べていいのか、という疑問を持つ事はない。なんせこの鯉、ブラックタールのケース・バイケース(鯉・f03188)なのだから。いや、ブラックタールだと知る前からなんでもあげていた気はするが。なんせこのブラックタール、鯉であるから。
 相席歓迎とは言ったが。鯉が焼肉屋まで着いてくるのは、鯉の世話を好む灯人にも予想外であった。とはいえ、時折肉欲しさに膝まで跳ね上がってくるその口に飯を与えるのは、少しささくれ立った心への安らぎではあった。水槽に戻りなさい。戻す。どぽん。
 気づけば無心で鯉に肉をくれていて、自分の分を食べていない。自分のぶんの肉を、網に乗せた。

「お~~~~? オイオイまっさか一人で食ってんのかァ?勿体ねぇなあオレが相席してやるぜ!!喜べ!!!」

 ……電撃作戦のごとく訪れた。正面席にそれはそれは堂々と、黒い肌にマスクの男がジョッキ片手に着席。外見情報としても、状況情報としても、記憶に濃い男はジン・エラー(救いあり・f08098)だ。もう着席するなりジョッキが乾杯を求めてきている。角度がもう明らかにそれ。もう完全に出来上がってる。いや常にこんなテンションなのかもしれない。ひとところに腰を落ち着けず、あちこちを徘徊するタイプだろう。数秒思考後、灯人はグラスを取り、フチとフチを合わせ小気味好く鳴らす。
「構わねえよ。肉は多人数で食う方が美味いしな」
 キシシ。ジョッキを煽り、ぷはぁと呼吸。
「はぁ~~~全く同意見だゼェ、なかなか気が合うんじゃネェのオレ達? 折角良いとこも散々見せつけられたしな、ソレを肴にしない手は無ェよなこんな場? なァ?」
「さあ。兵の仕事を全うしてただけだぞ、俺は。面白い話はできないんじゃねえか」
「いいーーや。お前は優しいイ~ィヤツだ。オレが保証してやるよ」
「そこのサンチュ取ってくれ。お前も食って良いぞ」
「オッ、マジかよサンキュー優しいね~~肉ばっかもイイけどね野菜もね~~」
「このタレつけた肉をよ、サンチュで巻いて食うの好きなんだよ。肉の旨味と、タレの甘辛さと、葉の瑞々しさがな……最高だろ」
「あーーーー美味ェなァーー! こんなんすぐ無くなるだろ、店員サァンこっちに肉と酒と葉っぱ追加ヨロシク!!!」
 はわわお客様どのメニューになさいますか。
 灯人が素早くメニューを開く。
「カルビと上ロース二人前ずつ。あとサンチュとレモンサワーとビール追加。」
 かしこまりましたー!
「おおっと気が効くゥ。オニーサンサポート気質?」
「戦場も日常も同じテンションでゴリ推してるのかよお前。感心するぜ」
「ギシシシ。救いを求めるヤツがいるって点では、戦場も日常も変わらネェだろ?」
「……確かに」
「さっきのビール追加ってオレの分で合ってる?」
「おう。要らなかったか?」
「最ッ高ォォ。」
 びちぃ!!灯人の膝上に飛び出す鯉。
「おっわ」
 びちんばたんびちびちばだばだ。飛び散る水しぶき。濡れる灯人の膝。肉を欲し開く口。目を丸くするジン。
「わかったわかった、暴れるなって。今くれてやるから」
「お前」
 立ち上がるジン。膝の上で肉を食う鯉。穏やかな顔で肉を与える灯人。
 おまたせいたしました。届く注文を横目に、鯉の横に席を変えるジン。何だろうかと、灯人が視線をあげた。

「お前は、オレが見惚れちまったヤツだ。そうだろ?」
 鯉に向け、穏やかに言葉を落とす。

 えっ……これは……もしや……鯉を口説いて…………? 灯人の顰めっ面の頭上に、状況が掴みきれない疑問符が乱舞する。思わず鯉をかばうように腕が行き場なく上がる。
「その夜闇の星色、間違えネェぜ。崩れる泥人の中で、お前だけが星色だったからなァ。なあ『ゆいちゃん』?」
 鯉は口をゆっくりとぱくぱくしている。
「ゆい……ああ、あの件か。……鯉にあんな力があったなんてな」
 灯人は鯉を水槽に返すタイミングをさがしている。
「あの『救い』は、オレにゃあ届かなかったからな。迷える泥人を導く姿。……ッか~~~。全く、思い出してもくらくらする。」
 灯人は鯉を水槽に返すタイミングをさがしている。ちょっと鯉のエラが元気が無くなってきた。
「その姿だと喋れねえのか?パクパクしてっけど」
「鯉だからな」
 今だ。水槽に戻す。
「ほーん。そーいや池にいたもんな。マジカル不思議タール。ま、会えただけでも儲けもんか。乾杯」
 キシシ。水槽と、ジョッキが、ごん。
「……肉焼けたぞ。食うか」
 食ーーーーう!と勢いよく挙手するジンと、三度水槽から激しく飛び出す鯉に挟まれる、賑やかな灯人の食事はまだまだ続く。

 なんやかんやとたらふく食って、次の地獄も圧し潰すちからを蓄えて。
 どうせ明日も誰かが死ぬし、誰かのために殺すのだから。食べて、生きよう。
 明日死なないように。後悔しないように。今日も終わらせていこう。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

真木・蘇芳
【WIZ 】
とりあえず松本の指定した焼肉屋で食べるか。
あいつも呼ぼう、数は多い方がいい。
そう言いつつ店に入って端の方で軽く肉をつまみ物思いにふける。
だいたい冷めてしまう。
あの血湧き肉躍る熱が。
ビルから持って来た黒いゴミ袋を隠す様に、周りが食べ終わるのを眺めていよう。

※松本さんに黒いゴミ袋の中身を後で見せます。
中身は戦闘の際の部位?です。
きっちり始末したことを現物報告します。
外道な方法で話を折るかもしれないので採用はお任せします。



●赤々
 網の上の肉が焼けていくのを視認する。火に焼かれる邪神の匂いではなくて、きちんと食用に用意されたならではの、旨味の香り。日常の気配。ーー血湧き肉躍る戦いの高揚が冷めていくのを感じる。真木・蘇芳(羅刹の化身忍者・f04899)はあくびを一つ。
「ふぅぅあ…………あ? どーした。食わねえのか?」
「……そんな面白くなさそうな顔、されてもよ……」
 ちょいと顔貸せと呼ばれたから、何かとるり遥が来てみれば結局こちらも焼肉で。いや焼肉屋で焼肉以外なのがあるのだ、という点もあるが。肉を拾い、進められる(おそらく、多分。そうだと思う)ままに肉を齧る。
「実際面白かねえからなあ。争いは終わっちまったし、お前はシケた面構えだし。いやあまあ肉は良い店だけどなぁ」
「シケた顔をわざわざ呼んだのはお前だろ……?」
 肉を口に放り込む蘇芳を視界端に収め辺りを見回す。居心地が良くない。来てくれた猟兵には全員に感謝してはいるが、もともと人見知りのるり遥にはこの状況は息苦しい。俯く。
 掘り炬燵席の下に、黒い大きなビニル袋が見える。ゴミ袋?こんな席に。小首を傾げるるり遥を見て、蘇芳の口元が笑みに歪む。
「あー、いいや。後にしようと思ったが、今でもかわんねーだろ。それの中身、確認してくれよ」
 つま先で袋を蹴り出せば、くしゃりとるり遥に向けて袋が傾く。その中身が、篭っていた匂いと共に視認できる。
 血肉の破片。邪神だったものの部位。もともと歪な形が、刻まれて詰め込まれた事により一層グロテスクな有様。血の海、砕けた骨や牙、青く太い血管、腐臭ーーるり遥は口を抑え、息を詰めた。
「そんな顔する程でも無ぇだろう。お前が頼んだ仕事の報告だぜ?」
 わざとらしい批難だ。蘇芳が肩をすくめてみせる。るり遥が呻き、袋の端を引き寄せた。声の具合からして、少し吐いているのだろう。周りに悟られぬよう、可能な限り、静かに。
「泥人も。邪神も。教団員も。あのビルにいたのは根こそぎ殺してきたぜ。優秀な猟兵に恵まれて良かったなァ?」
「……そりゃ……そうだな……ぅぇ」
「邪神にぶッかけるゲロなんざそうそう体験できないぜ。いや、それともお前はほかの依頼でもゲロってそうだな。この程度の肉でグロッキーとか、お前戦えんの?」
 周囲の食事を邪魔するつもりはないのだろう。蘇芳もまた声を潜めてるり遥を嗤う。浅い呼吸を繰り返するり遥が水を飲み、乱暴に口を拭って立ち上がった。せめてもの、せめてもの抵抗のように、蘇芳を睨み見下ろす形にて。
「ーー報告、ありがとう。お前の仕事、確かに見たぞ」
 青い顔で告げて。るり遥は、その席から離れていく。手洗いに向かうその頼りない背中は、多少面白かったが肴にもならぬ。さて旨い日本酒でも一杯頼むかと、蘇芳は平然と注文を再開していた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

犬曇・猫晴
同行者:織譜・奏(f03769)
お疲れ様、かんぱーい!
こっちに来てからこうやってお酒飲んで焼き肉なんて初めてだね、思いっきり楽しもう

んー?食べられそうになってた女の子達助けて、食べようとしてたやつを退治する仕事。
大した仕事ではなかったよ。

【SPD】
鶏肉は良いよ、鶏肉は。歯ごたえがあってすごく良い。
あ、でも味はやっぱり牛肉かなぁ。そうそう、このカルビとか。
え?ごめんこれ奏ちゃんが焼いてたやつ?ごめんごめん、特上頼むから許して?

ちょっとトイレ行ってくるね。

臭い、残ってないよね?
脱臭はしたから大丈夫だとは思うんだけど……。
あぁ、くそ。洗っても洗っても感触が消えない。感づかれてないよね。大丈夫だよね。


織譜・奏
同行者【犬曇・猫晴(f01003)】
お疲れ様でーーす!乾杯っ。
いや私今回同行してないんですけども。首尾はどうだったんですか?(きょとん)

【焼肉】
・WIZ
焼肉とはつまり、理詰めであると。昔の人は言っていたような気がします。
じっくり炙って素早くタレに浸し、食べる!これが1番美味しいと思いま……あーっ!
犬曇さんそれは私が焼いてたカルビですよ!!ああ、なんてことを……(めそめそ)

犬曇さんの話はよく聞くけど、彼がどこまで本当を話してくれるかは分からない。
だから全部信じる。それが、今はまだ、私たちの関係。

アドリブ歓迎



●かくしごと
 乾杯!ビールグラスとサングリアがテーブル中央で軽やかな音を奏であう。
「お疲れ様。こっちに来てから、こうやってお酒飲んで焼肉なんてはじめてだね。思いっきり楽しもう」
「お疲れ様でーーすっ。いや今回私同行してないんですけどもね」
 それでも、彼女と食べる食事は美味しいから勿論呼んだのである。犬曇・猫晴(亡郷・f01003)はグラスを傾けてから肉を配置よく並べ、織譜・奏(冥界下り・f03769)もうきうきと自分の肉を並べるのである。
「今回のお仕事の守備はどうだったんですか?」
「んー?食べられそうになってた女の子達助けて、食べようとしてたやつを退治する仕事」
 半分は、意図的なぼかしだ。嘘ではない。鶏肉は脂が多いから真ん中は避けた方がいい。
「へえー。一人で大丈夫だったんです?」
 奏もカルビをひっくり返していく。こうゆうのは高火力で焼くより、端でゆっくり焼くほうが美味しいのである。
「大丈夫。大した仕事ではなかったよ。置いていったのはごめんね。けど、美味しい肉だけ食べる日があってもいいじゃない?」
 目を伏せがちに微笑んで。手元は肉の面倒を甲斐甲斐しく見る二人である。
「ふふ、贅沢な日になっちゃいますね!なんせ焼肉ですからね、それはもう私の出番ですよ。焼肉とはつまり、理詰めであると。昔の人も言っていたような気がします」
「奏ちゃん、お肉焼くの得意なんだ?」
「はい、焦らずじっくりと待つんです!人間関係と一緒ですよ。是非覚えて帰ってくださいね」
「奏ちゃん語録だ。ちゃんと覚えておきます」
「そうですよ。じっくり炙って、素早くタレにつけて食べる!これが一番美味しいと思います……わあいいただきまあす」
 奏がカルビを取り、猫晴も鶏肉を取る。互いの口の中に肉の弾力性、旨味の詰まった脂が溢れ出る。それを酒で流し込む幸せよ。
「やあ、しかし鶏肉はやっぱり歯ごたえがいいなあ」
「うっ、美味しそうに食べますね……羨ましくなります……。私も次は鶏肉頼みます。決意しました」
「うんうん。ああでも、味はやっぱり牛肉かな」
 そうそうこのカルビとか。網中央寄りで脂を浮かべて自己主張している一枚を猫晴の端が小皿に迎え入れ、奏がショックの声をあげた。
「ああっ!そ、それは私が焼いてたカルビですよ! あぁぁ……なんてことを……」
 さめざめしてみせる奏を見て、肉を飲んでから猫晴は眉を下げて笑ってみせる。
「ええ。ごめんごめん、特上頼むから許して?」
 気づいてなかったなんて嘘だ、彼女に美味しいものを奢る口実だ。
「ーー許しましょう。私は寛容ですからねっ」
 ふふんと、すーぐ笑顔に戻った。そう、この笑顔を見る口実だ。この笑顔が見たくて、ちゃんと帰ってきたのだ。
「ありがとう。奏ちゃんがいてくれると楽しいよ」

 その後届く特上肉は他の追随を許さぬような鮮やかな赤と白いサシ。小さな拍手をしてお肉を迎える奏を見て、猫晴の目元も柔らかく微笑む。赤い肉が地下で幾度となく見た口内を彷彿とさせる。白いサシが切り裂かれた肉から覗いた骨を彷彿とさせる。ーー、
「ほらほらみてください犬曇さん! こんなお肉なかなか食べられませんよ!」
「うん。ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」
「? そうですか? お肉、焼いちゃいますよ?」
「お願い。奏ちゃんが焼いてくれるなら、肉もきっと本望だよ」
 手を振り、手洗いに向かう猫晴の背中を見送り。奏が特上肉を、トングで摘まみ上げる。

 ーーー犬曇さんの話はよく聞くけど、彼がどこまで本当を話してくれるかは分からない。
 少し顔色が悪かった。いつもより覇気もなかった。私をみた時も、妙な緊張感があった。よく一緒にいる私だから、わかる程度の差異だったかもしれないが。
 ーーー全部信じる。教えてくれないならば問い詰めない。それが、今はまだ、私達の関係だ。
 弱火の網の上で、丁寧に、じっくりと。猫晴が戻ってくるのが遅くとも、食べ頃を二人で食べられるように、肉を焼く。


 手洗いからは、水音が響いていた。ただの手洗いにしては、長く。長く。疑われないよう早く戻るべきという焦りもあるが、まだ、感触が消えない。
 少女のかたちをした塊を屠った手応えが。あの醜く分厚い肉が拳に伝えた不快感が。あのフロアに充満していた悪臭が。
 己の体を、犬のように嗅ぐ。臭いは残っていないだろうか。洗浄もした、念のために身につけていたものを新しくもした。道行く人々とすれ違い、しかめっ面をされた覚えもない。大丈夫だろう。大丈夫なのだろう。
 ーー気付かれて、ないよね。勘付かれてないよね。
 僕が少女を殺したこと。少女を食べる肉塊に怒りをあらわにしたこと。
 僕が、本当のことを、いっていないこと。
 天井を仰ぎ、呼吸をする。オレンジ色のランプが極々日常的で、焦燥に染み渡る想いがした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メア・ソゥムヌュクスス
わぁい、焼肉だー、やきにくやきにくー。

悪夢のような凄惨さも終わったしー、美味しい焼肉をたべちゃおー。

気にしちゃったら気に病んじゃったら、美味しくないからねー。

焼肉はー、美味しいー。それでいいじゃないー。

夢(エソラゴト)で人は生きてるんじゃないんだからー、前向いてしっかり焼肉を食べよー。

※アドリブ、絡み大歓迎だよー。


雨宮・冬華
お肉!食べる食べたい食わせろ!
明日は明日で生きたいと思うけど死んでるかもしれないから私は今!胃袋が張り裂けそうなほどにお肉を求めているのです!
あ、サラダもちゃんと食べます。たくさん食べてたくさん寝て大きくなるのです。目指せ二メートル!
牛タン食べたいです、牛タン。カルビも食べたいです。お肉たくさん食べたいです。
えっとね、ここからここまで全部ください(アルコール以外全部指さす欠食児童)
みんなでわいわい食べられたら最高ですね!
お肉サラダお肉ご飯おつまみお肉。
お家のご飯は肉っけあんまりないからモリモリ食べるのです。
…え、ちゃっかり打ち上げにだけ来るなって?
そういうこといっちゃやーですいけず!



●くいたいくわせろ あしたのために
「明日は明日で生きたいと思うけど死んでるかもしれないから私は今!胃袋が張り裂けそうなほどにお肉を求めているのです!」
 一息で言い切る言葉のなんと力強いことか!雨宮・冬華(薄暮の魔女・f00232)の美しく豪奢な外見とはもうちぐはぐな腹ペコモンスターっぷりに、メア・ソゥムヌュクスス(夢見の羊・f00334)はぽかんと小さな口を開いてしまった。注文も男前なことに、上から下まで全部である。あ、子供なのでアルコールはちゃんと外しました。
 注文が届けば、次々と肉を網に並べるのだ。ただ、勢いこそあれど、その手順は少し拙い。ああ、ああ。生焼けのホルモンを取り掛ける冬華の手を、メアが掌を翳しそっと制止した。
「それはもーっと、よーく焼かないとダメだよー。せっかくの焼肉なのに、お腹壊しちゃうと勿体ないからねー」
「おお、これが噂のホルモンでしたか……! お家のご飯は肉っけあんまりないから。ちょっと区別、つきませんでした……ありがとうですよ」
「そうそう。美味しく、焼肉、焼肉ー。あ、ほら、こっちは焼けてるー」
「牛タン!牛タン食べたいです、カルビも食べたいです、お肉たくさん食べたいですっ」
「うんうん、食べようねー。私も、負けないように、食べなくちゃー」
 そう、悪夢のような凄惨さも終わったのだし。
 気に病んじゃっても仕方ないし。
 たまたま相席したこの女の子が、あの泥人達と、見た目の年齢が近いなあとか、思っちゃうのは、泥人にもこの子にも、お肉にも失礼だし。
「んん、このお肉、蜂蜜漬けでおーいしーい。 ね、食べる?」
「蜂蜜漬け! なんて甘美な響きですか、食います食います全部食います」
 元気よく差し出されるお茶碗に、ほいほいっと、タレも絡めてお裾分け。
 一口食べれば、ああきらきら輝く少女の瞳はどんな星空にも負けるまい!
「おいしいです!すごいです!もっとくいたいです!」
「はーあい。ちょっと待っててねー」
 手元の電子注文機で、ぽちぽちと蜂蜜肉の追加。ついでに牛タンももっと食べたい。
「あ、サラダも食べるのです。お姉さんも食べますか?」
「んー?貰っていいなら、食べちゃおうかなー。焼肉と一緒にたべるサラダってー、一層おいしいよねー」
「私もそう思います。それに健康にもいいのです。たくさん食べてたくさん寝て大きくなるのです。目指せ二メートル!」
「二メートルかあー。私、いっぱい見上げちゃうねー」
「ですのでお姉さんも食べて二メートルを目指すといいですよ」
「ミレナリィドールが、ウォーマシンになっちゃうねー。あ、そろそろホルモン、大丈夫だよー」
「すごい!ぷりぷりにくにくです!ずっと食べてられます、ご飯もすすみます!」
「……そういえば、あなた、あのビルにいたっけ。見た気が、あんまり、しないなー」
「ぬっ。打ち上げだけくるのはダメ、とか言っちゃ、やーです。いけずですー」
「あ。ううん、違うのー。そうじゃ、ないのー。それなら、そうで。安心しちゃっただけなのー」
 そう。何も気にせずこの子が食べているならそれでいいのだ。
 私も美味しく食べられて、明日も生きていけるのだ。
 あの泥人の女の子達も、神様のおそばで、お肉とか食べてるといいのだけど。なんて、えそらごとを、思いつつ。
 目の前ではつらつとお肉を食べ続ける少女を眺める今が楽しい。それでいいのだ。
「しっかり、焼肉を、食べるんだよー」
「おまかせください! あ、りんごジュース飲みたいです」
「はーい、はーい。少し待っててねー」
 小柄な女達のお腹は、まだまだ満腹にはならない。
 食べる喜びを、わいのわいのと楽しむ時間はたっぷりある。
 お腹いっぱいになって眠る楽しみもちゃんとある。
 明日死んでるかもしれない今を、満腹平らげるまで帰らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零落・一六八
【POW】
待ちに待ったお肉ですね。
これだけが今日は楽しみだったので!
沢山いただいちゃいましょう。
とりあえずカルビ10皿。
人数的には余裕でいけるっしょ。
ボク1人でも多分ぺろっといけますし。
人が育てた肉とかお構いなしに食べる食べる。
「え、だって、こげちゃいそうだったので。」
(全然悪いと思ってない態度)
誰かが話していることには一応適当ながらも相槌を打つ。
「ほーへふへ。(そーですね)」
(口の中に肉がいっぱい)
お、ここ、ユッケとかもあるじゃないですか。

只管肉ばっかり食べます。野菜は食べません。
野菜差し出されたら見えてないふりをします。
皿に載せられたらそっと隣の人の皿に勝手に置きます。

アドリブ絡み大歓迎


襲祢・八咫
ふむ、焼肉。
……誰かと飯を食うのは、なかなか慣れぬな。
普段は、残骸の世界でひとりきり。人の子が飯を食うのは見て来たが、誰かと飯を食うのは、そうないことだ。まあ、おれ自身、ろくに人付き合いがないものでなあ。

元より器物の身。大食らいの烏共と違って、おれはあまり食う方でもないのでな。
だが、誰かが楽しそうに、美味そうに飯を食うのは、見ていて気持ちがいい。
人の子よ。命を食らうのだから、どうか綺麗に残さず、心から笑って満たされておくれ。
まあ、あえてこの場で言うようなことでもないが、な。

皆、もっとお食べ。
おれも、少しだけご相伴に預かろう。腹がくちくなったら、皆でのんびり腹ごなしでもして帰ればいいさ。


ロク・ザイオン
(ととさま。今日も自分は病葉を焼きました。
ととさま。ととさまの森に行わるるごとく、御旨がこの地にも行われました。
ととさま。自分に肉を。糧をありがとうございます。)
(肉を前に背筋を伸ばして手を組む)
(周りがにぎやかだろうけれど。目の前でお肉は既にカッ拐われているようだけれど。
人間は食事の作法が大事。あねごの言いつけは守るのだ)

…………いただきます。

(ああ、お肉はおいしい。きっと、うたをうたってもらえたからだ)


(ところで)
(病葉を焼く最中、烏を繰る男が自分の方を不思議に見ていた、気がするけれど)
…………おれはなにかしたろうか。


夷洞・みさき
いただきます。

さてお肉に挨拶をしたところで。
ご飯にしよう。

肉だけでなく、モツ系もしっかりと。海産物があったら空気を読まずに注文する。喜々として。

でも、ちょっとお行儀はよく、肉は良く育てて食べよう。
横からとる人はきっといない。いないよね。
でも、無事だったことのお祝いだし、ちょっとのことは水に流そう

水槽にちょいとおすそ分け。

食べ過ぎ胃もたれ辛そうな知人がいたら、水が食べやすい物を勧める程度はできるはず

食べ残しはしないよ。全部綺麗に食べ終えて。
ごちそうさまでした。

同道絡みアドリブ賑やかしお任せします



●肉泥棒若干一名
「ーー僕の焼いたお肉は?」
「んー? もっほ焼けふぁ良いと思いまふよー」
「……うん、そうだね。それもごもっともだ」
 なんせ、開幕に注文されたカルビが10皿もあるのだから。
 夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)はじっくり育てた肉がするっと掻っ攫われ、まさに目の前で食われている現実を静かに水に流すことにした。雄大な海のような心の広さである。
 一方その懐の広さに全身全霊で甘えきっているのが零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)である。同席の襲祢・八咫(導烏・f09103)が焼いてくれる肉も遠慮なく食べている。そして席ごとに置いてある電子注文パッドをこなれた調子で扱い、遠慮なく肉の追加注文。
「あ、僕海鮮も食べたい。一緒に注文しておいてくれるかな」
「はーい。イカとか貝……エビとかありますねえ、適当に押しときますよ」
 ひょいぱくり。また食べ頃の肉をどんどん食べつつ、注文をぽんぽんぽん。ああそれ僕が育てていたお肉……いやいや楽しい席なのだ水に流していこう。みさきが目を閉じ首を横に振る。
「君は、良い食べっぷりだな。見ていてこちらまで気持ちが良くなるようだ。さ、もっとおたべ」
「やったーー八咫さん面倒見良いですねー。子供とかに好かれるでしょう?ありがとうございます!」
「ーーこらこら。野菜も食べなさい」
「えー。肉食べるのに忙しいんで、後にしましょ?」
 八咫に取り分けられた肉と野菜の皿。すかさず野菜を隣席のーー未だに姿勢良く手を組み、静かに祈りを捧げていると思わしき、ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)の皿にぽんぽんぽん。 一六八の胸には、肉しか食べないという決意めいたわがままが輝いている。
 追加のご注文、おまたせいたしましたー!
 目を輝かせるのはみさき。
「やった、ありがとう。貝やエビが殻付きであるなんて嬉しいなぁ」
「海のものを焼くのは、みさき自身がやる方が得意そうだ。肉の方はおれが焼こう、好きに食べなさい」
「うん、こっちは僕自身が焼くね。でもお肉も取っといてもらえると嬉しいな」
「そうですねえ。ここのカルビめっちゃ美味しいですよ。食べないとか損ですからね!」
 網の肉をほとんど一六八が取っていく。それを八咫はにこにこと眺め、ロクは未だに目を閉じ祈りを捧げ、みさきは首を傾げつつ水に流す。いやみさきはそろそろ怒ってもいい。なんならロクもはやく目を開いて怒っていい。八咫も孫を甘やかすムーブをやめてもいい。けれどもワガママって言ったもの勝ちなんですよ。 一六八の楽しいお肉食べ食べ暴君はまだまだ続く。
 焼きあがる肉と海鮮を手に、みさきが「ちょっと水槽に挨拶してくるね」と立ち上がる。わいのわいのの中でもひときわ目立つ、大きな水槽に吸い寄せられるようにちょっと離席。多分この後あの水槽の水飛沫が、また激しく上がるのだろう。
 八咫から渡される肉と野菜、そのままベルトコンベア式の如くロクに押し付けられる野菜を繰り返すうちに、ーーようやく目蓋を上げたロクの皿の上には、色とりどりの野菜がたっぷりてんこもり。
「……これは」
「あっ、あんまり食べるの遅いから取っときましたよ。ほら、タレいります?」
 野菜で重いお皿を持ちあげるロクに、悪びれもしない一六八。
「そうか。……ありがとう」
 ロクから出る声はひどいしゃがれ声ながら、一六八への感謝に溢れる声。ああこの人かけらも疑っていませんね? 流石の一六八もちょっとだけ良心が痛んで、肉の注文を追加した。まあ注文した本人が結局食べる可能性もあるけど。
「…………いただきます」
「ああ。おたべ」
 丁寧に。美しいほどに。食への感謝を捧げるロクに、八咫が穏やかに微笑んだ。

 さて。みさきがさんざ水飛沫テロを鯉と共に起こしてしまい、拭き掃除までしてから卓に戻ってきてみれば。
「あ、モツが食べごろだよね? やった、いただきま」
「えっホントですか食いますね。んー!あち、あひ、脂うんまいですよ!」
「君その肉の食べっぷりはもはや咎だよ
?」
 ちょっと口枷でも出すべきか?なんて微笑むみさきに、八咫が取り分けていた肉を出すので事なきを得る。この卓の平和は八咫に完全に託されている。
 ロクも祈りさえ終われば、獣の俊敏性を兼ね備えて肉を着々と得ているし。それでいて味わって食べる。命への礼儀を重んじている事が見て取れるだろう。
「ねえ、八咫君。ちゃんと食べてるかい。さっきっから焼いてばかりに見えるけど」
 全く食べていない訳ではないのは、八咫の前の皿がまっさらで無い事から分かるが。それにしたって酷く綺麗だ。過酷化した肉取りバトルに落ち着いて箸を滑り込ませながら、みさきが問うて。八咫が笑う。
「元より器物の身。大食らいの烏共と違って、おれはあまり食う方でもないのでな。だが、誰かが楽しそうに、美味そうに飯を食うのは、見ていて気持ちがいい」
「そっか。八咫君がいいなら、いいんだけど」
「ああ。人の子よ。命を食らうのだから、どうか綺麗に残さず、心から笑って満たされておくれ。おれは、それを眺めて、少し同伴に預かれれば。十分に腹はくちくなるさ」
「それに関しては。もちろん。」
 みさきが、エビや貝を追加注文する。彼女の皿の上には、殻の類いすら残っていない違和感に、さて肉に夢中なこの卓はいつ気付くだろうか。
「そういえば」
 砂の声。見れば、ロクが八咫に視線を向けている。
「…………おれが、病葉を焼いていた時。見ていたろう」
「病葉ーーああ。」
 敵の事だろう。その中でも、八咫がロクを見ていたのは、泥人を喰らい、焼いていた時だ。あのときか。気に障ったならば謝ろうと、八咫が唇を開きかけた時。
「……おれはなにかしただろうか」
 お待たせいたしましたー追加の注文でございまーす!
 やったー。並べましょ並べましょ。
 ここの肉は僕のね。僕のだからね。
 ええー。エリア分けとか邪道ですよー?
 ここにエビガード築いておくね。
 えっ何ですそれずっる。ウォールシュリンプずるですよ。
 そんな喧騒の中で、ぽつりと控えめにつぶやかれた砂の声は。あの地獄で見た狂う獣と同じ口から発されるには、なんと酷く純朴で。
「ーーいや」
 八咫は、静かに首を横にひとふり。こどもを愛おしむ声。
「『かなしい』な、と。見ていただけだ」
 ああ、かなしいとは、愛しいとも書くんだ。と、ちょっとした日本語のウンチクおじいちゃんにもなりまして。
 四人がたった席には、文字通り、殻も骨も残らなかった事だろう。命をごちそうさまでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キャリウォルト・グローバー
【四六九九団地の者と合わせ】

怒りに我を忘れ、あまつさえ反撃を受けるとは…
某もまだまだ未熟なり…(体が半分になり下半身は仮ボディのキャタピラが付いている)

だが、悪は滅せたのだ反省はこのぐらいにしておき
宴会を楽しもうではないか。

某の熱源探査装置の機能を持ってすれば
焼かれた肉の焼き加減など一目瞭然である。

むっ、そこの肉はもう焼けている早く取るのだ。
そこのはまだ早い、あと10秒焼け。

そら、子供(自分より年齢が低い者)はいっぱい食べるんだ。
お残しは許さんぞ(残そうとするものに『殺気』を放つ)


八月・残照
【可能でしたら団地面子と】
卓の空いた端に滑り込む。
皿の上に華やかに盛られた赤い肉たちに、少し前に手を合わせたものたちを思い出してしんみりとした気持ちになるものの、賑やかな場の雰囲気に腹は早くも気分を切り替えたようで、脂の焼ける匂いにぐうぐうと鳴いている。周りの空いた皿に負けじと箸を掴んだ。

焼肉は最高だ。
ひたすらに肉を焼いてひたすらに食べるだけのシンプルさは一人でも楽しめる、が、しかし。

「わたくしのしたい"食事"ってやっぱこういうのでございますな、ほんと」

騒がしい周囲を見渡しながらそんな感想が溢れる。そして、うまいでございますと笑って何度も繰り返しながら、肉をかっ食らうことに没頭し始めた。


有栖川・灰治
団地のみんなと同じテーブルで楽しく食事を。
お酒は今回はいいかな。お肉とお野菜をバランスよく、ちょっとだけ。

そうだ、笹鳴・硝子ちゃんと少し話しがしたいな。彼女のあれは、多分ご姉弟かな。僕も妹と戦っているから、少し似ているなって。
家族っていいよねぇ、そこにいるだけで勇気が湧くっていうか。でも今回は無理させすぎちゃったな。

ああ、そうだ。丸呑みされに行った彼。向こうのテーブルにいるみたいだけど、あの光が僕と妹の傷を癒してくれたんだろうから一言だけでもお礼の言葉を言いたいな。

ああ、これで今日もおしまい。痛い思いもしたけど僕の見たかったものも見れたし大満足。綺麗だったね、あの子達。
さ、もう帰ろうか操羅。


ユキ・パンザマスト
【団地面子と】

さぁさ、お待ちかねの焼肉だ! 皆で囲もうじゃありませんか!

焼肉奉行に甘えて、ここは食べ専に徹しましょう。
ほらほら、そのお肉いい具合の食べ頃ですね! 
皆さんちゃんと食べてますかね、先制攻撃で戴いちゃいますよ! 
カルビ中心に赤身肉を頬張るが、もう途中からお肉全種制覇の勢いに!
何てったって大食いの身。ああホルモンやタン塩も美味しそう。一切れずつ、交換してくれません? 

少女らも異邦の神も美味しかった、既に己の血肉だ、けれど、
そうこれは戦では決して味わえない、長く永く、しっかと残る味わい。
左掌で咲く情動喰いが、場の「楽しさ」「心地好さ」に舌鼓を打った。

ええ、勿論、
ごちそうさま、は忘れずに!


ベルゼドラ・アインシュタイン
△再送です!

【団地面子と】

「半額なら、普段食べれない様な良い部位を食べておかないと損よねぇ」
大食らいではないが、人並み以上には食べれる自信はあるから
好物のハラミと味噌ホルモンを特上のやつで取り敢えず3人前ずつ頼んでみる
ライスも必須だよな、後はビールを大ジョッキで一気飲み
ぷはぁ…疲れた身体に染み渡るなァ、…とは口に出さないもののおっさん臭い動作

普段は余り群れる事を好まねぇが、
団地の顔見知りと偶にはこういうのも悪くないなと。
普段団地で見かける一面とは違うご近所さんの姿を見れたから、
それが何気に今回の収穫だったと思う
__ってのを和気藹々してる面子を眺めながら。

【団地面子との絡みは好き勝手にどうぞ!】





 2mのキャタピラ女が鎮座している。

 あ、来た。
 行くか。
 よお。
 (跳ねる)
 (水飛沫を拭いて手を振る)
 なんてやり取りが、別席の端々であったりもして。

 さあさ長机に集まりますは四六九九団地の御一行。一際目立つは前述の通りキャタピラ女もといキャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)。先の戦いで斬撃の反撃を受け切断された身体に、応急処置のボディをつけての同行だ。猟兵の不思議な力で、こんな姿でも一般人は誰も違和感を持たないからいやはや不思議な話である。
「半額なら、普段食べれない様な良い部位を食べておかないと損よねぇ」
「姉さん姉さん、良い肉頼んでください! あっ皆さん飲み物は決まりましたか?」
 ビール、烏龍茶、コーラ。うーん、今回お酒はいいや。僕も烏龍茶。とかなんだの、注文が出揃ったなら、内心では「なんで俺が」とか思うところもなくはないが、注文をこなすのはベルゼドラ・アインシュタイン(錆びた夜に・f00604)。ハラミと味噌ホルモン、両方特上で3皿ずつ。あと、ライスと。求められるドリンクを7杯。
 3皿ずつとかすぐペロリですよ、あれとこれもお願いします!揚々と言葉を滑り込ませる少女がユキ・パンザマスト(夕間暮れの鵺・f02035)。ちょっと、向こうの席の……丸呑みにされにいった彼に挨拶してくるよ。と席を外したのが有栖川・灰治(操羅・f04282)。そして今、ああ寒いでございますな。こちらは空いておりますか?とひょこひょこ遅れて到着しつつもスムーズに端の席に滑り込んだのが八月・残照(迎え火・f02719)だ。おっとドリンク一杯追加で選んでおけよ、と、渡された電子パッドに、おろおろと指を滑らせて。

 さあ、先ずは届くドリンクで乾杯を!

「それでは。宴会を楽しもうではないか。某の熱源探査装置の機能を持ってすれば、焼かれた肉の焼き加減など一目瞭然である」
「きゃっほう!キャリさん肉奉行じゃないですか、頼りになるー!最高の焼肉ですね!」
「熱源探知でございますか……!なんとそれはもしや、肉が生焼けかどうかの不安もなく、理想的な焼き加減で食べられるものなのでは……!」
「左様。ハラミは焼けにくいであろうが、某に任せるが良い」
「ぷはぁ……。あー、そりゃ。それは、助かるわ。ハラミもホルモンも焼き加減が難しいのよね。お願い」
「ねね、ユッケとかもあるよ。頼んでおいていい?」
「勿論じゃんじゃん頼みましょ。ちょうど肉も来ましたし!やっほうお肉とお米は最高ですよ!」
「ああ、鮮度を保証するぷりぷり厚切り肉ではございませんか……!!贅沢でございますな……!」
「よかった。生肉とかね、操羅が好きなんだ。あののめっこい食感がいいよね。ユッケ食べたい人何人いる?」
「ああ、なら私も頂こうかしら」
「はーいはーい!」
「私は……ああいえ頂きたくございます。肉は命の救いでありますから」
「某以外の全員ではないか?ーーベルゼドラ、そこの肉はまだ早い。あと10秒焼け」
「……便利ねほんと。ありがと」
「ううんまい!カルビに赤身、ああ甘いタレが最高ですねえ、塩ダレもきになる旨さですよ!」
「本当だ、いい味付けしてるねこの店。いいとこ教えてもらえたね、しかも半額なんて」
「おお……灰治。お主、サンチュに肉をくるんで食べるとは、中々通な事をする」
「でしょ?向こうの席でやってて美味しそうっだったから、真似ちゃった」
「緑の爽やかさが加わって、無限に食べられてしまう魔の手ではございませんかぁぁ……あ、ユッケ到着で御座いますよ」
「やった、回してください残照さん!どんどん流していきましょう!」
「よしよし、じゃ、操羅にも食べさせてあげようね」
 口からどぅるるるるん
「うわああああああああああ」
「おおおおおおわあああああ」
「ぬおおおおおおおおおおお」
「…………それ、許可取ってから出しなさいよ。ていうか、体内で分けてやれるんじゃないの?」
「うーん、それはそうだけど……やっぱり、可愛い妹が喜ぶ姿は、目の前でみたいじゃない。ね?」
 うなずく姿が、となりに一つ。
「妹さん。で、ございますか」
「そう。僕の家族。 家族が喜ぶ姿って、良いものでしょう」
 ユッケの上でうねる触手。
「ふふ……ほらこんなに喜んでる。ほら、慌てないでもまだあるからね。落ち着いて食べるんだよ、操羅」
「ほほう。妹、ということは、それもまた某の守るべき存在。ほら、こちらの肉も食べると良い、操羅とやら」
「肉うっまいですね、っていうかキャリさんの焼き加減も完璧すぎてもう最高が最強にランクアップしてますよ!」
「塩ダレ頼むわよ。あとカルビと……タンと……」
「こうなってくると、盛り合わせ。という選択肢も、魅力的でございますな」
「ああ、良いね。悩まなくて済むし、色々食べられるし」
「ユキはその案賛成です!どうですか姉さんの注文パッド!」
「もう頼んでおいたわよ」
「さすがー!」
「いやはや流石はできる女性!」
「見てみて、操羅も喜んでる」
「子供が喜んでいるなら、某も嬉しいというもの」
「ごめんなさい、喜んでるかどうかは全然わからないわ」
「そう?ほら、こんなに嬉しそう。操羅がウキウキしてる」
「わからないわ。」
「うねうねでございますなあ」
「ややや肉が来ましたよ……お。ユキのコーラが終わりました。ほかに飲み物欲しい人ー?」
「ああ、それじゃ烏龍茶をもう一杯」
「私は緑茶を頂きとうございます」
「大ジョッキ」
「以上ドリンクお願いしますね!」
 かしこまりましたー!
「むむ。塩ダレ、こちらも技ありの逸品であることが、もはや香りから伝わってこよう……!」
「まだ焼けません?早く焼けません?」
「焦るなユキよ。ユッケでもつまんで、今は待つのみ……」
「先制攻撃で食べれません?ユキならいけます」
「焦るなユキよ」
「ユキ。ほーら。とろっとろのタレがついた、くにくにのホルモン……あーん♡」
「ぁ……」
「あーん♡」
「ぁ……ぁーん……♡」
「はわわ……はわわでございます……」
「ぬおお……意味深……」
「みんななんで顔覆ってるの?」
「んっ♡ はあぁ……おいしいです……」
「でしょう?ほうら、もう一口……もっともっと、欲しがって……」
「はわわわわでございます」
「ぬおおおお塩が焼けたぞ」
「ねえ、みんななんで顔覆ってるの?」
「塩を食べたくぞんじます」
「よしよし食べるがよい、食べるがよい」
「ユキにもとってくださーい!」
「ああ、まことに、美味でございますな。美味いでございますな」
「ええ、ええ!ここでしか味わえない味わいですよね、こうゆうのは!」
「ああ、うん、そうだね。皆んなでワイワイして、場を共有するご飯って、いいものだものね」
「ーーベルゼドラよ、肉が残っているのではないか?」
「ああ、もう少ししてから食べようかと思って」
「ならば良い。お残しは許さん」
 殺気。
「殺気放ってまで言うこと?」
「殺気で操羅が怯えちゃうから抑えてくれると嬉しいな」
「いえいえ、残さずユキが食べるので、安心してくださいな!」
「あら。もっと欲しいなんて、悪いお口……」
「はわわわわわわでございますな」
「え?操羅戻る? わかったよ」
 お口からどぅるるんどぅるんるるんぶるるん
「ぬおおおおおおおおおおお」
「はわわわわわわわわわわわ」
「あーん……♡」
「あーん……♡」

 大賑わいの団体さまが なにも残さず幸せいっぱいのごちそうさままで、それはそれは。注文と笑顔の絶えないことでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜庭・英治
肉は…いいや
ちょっとそういう気分じゃなくてさ

かぼちゃとか玉ねぎ焼けたら貰える?
あとはスープとご飯で充分だ
ああ、デザートの注文もできんのか
じゃあ杏仁豆腐ほしいな


……
甘いな…

これ、もうあの子たちは食べられないんだよな
ごめん、なんでもない

ちょっと疲れたから休む
焼肉会終わったら起こしてくれ
いまは何も考えたくない


在連寺・十未
【POW】※同じタイミングで描写された方がいれば声をかけたり焼肉を奢りに行きます

はー……やっと終わったか。

それじゃお肉を食べるよ。僕は何を隠そう焼肉大好きさん。鳥も牛も豚も羊も行けるよ

……邪神案件なんてそれこそ人の数ほど在るんだからその度に気にして断食してたら死んでしまうよ? あ、経験則ねコレ。

だからお肉を食べよう、美味しいよ。なんなら奢って上げても良いよ……そういやその辺はあれかな、松本君が奢ってくれるのかな?

やっぱお肉美味しいなー……ちくしょう

※アドリブなど大歓迎です


リゥ・ズゥ
リゥ・ズゥは、人を学ぶ。これは、そうだ、「飲みニケーション」という、儀式だな。肉と酒を、回し、食し、心を1つにする、という。リゥ・ズゥは、人を、知りたい。これは、丁度、いい。皆と、食す。皆と、呑む。
(SPD、バウンドボディで伸び縮みし配膳を行います。肉と酒を存分に飲み食いし、戦いで味わった嫌な気分は忘れてしまいましょう。泥の少女たちの命は大変美味でしたが、皆と食べる肉と酒もまた格別です。沈んでる様子の者(るり遥含む)が居たら肉を勧めます。私は気持ちを推し量る情緒はありませんが、美味しいものを食べると元気が出ることは知っています。)※彼はジョークグッズの電子辞書で一部誤った文化を記憶しています



●杏仁豆腐
 桜庭・英治(NewAge・f00459)の姿を見かけた。沈んだ雰囲気が見て取れた。在連寺・十未(アパレシオン・f01512)は、共に戦った一人として席を共にしようとした。そう、あんな戦いの後だから、落ち込んでいる仲間もいるだろうし、そんな時には、声をかけてくれる者があれば、少しは楽かと思ったから。
 えれど英治は、十未が思うよりも疲弊していた。
 明らかに人懐こく、友好の場を好みそうな外見をしているのに、彼がこの焼肉店でしていた事と言えば『せめてもの空間共有』程度で。黙り込んで、最低限のエネルギーをやっと口に含んでいる程度だった。
 十未は困ったように浅いため息一つ。
「……邪神案件なんてそれこそ人の数ほど在るんだからその度に気にして断食してたら死んでしまうよ? あ、経験則ねコレ」
 根元に近いほど白い、十未の特徴的な髪が揺れる。その言葉はきっと、彼女自身にも語りかけている。
 だからお食べ、なんなら奢ってあげてもいいよ。と、さまざまな種類の肉を焼いて取り分けた皿を英治の前に出すが。英治は申し訳なさそうに俯いて笑うのだ。
「あー……気、使わせて、ごめんな。いただきます」
 食べれば元気が、出るだろうか。一口、比較的食べやすそうな鶏肉を食べる。ゆっくり咀嚼し、なんとか飲み込んで。浮かぶのはやっぱり疲れた笑み。
「うん。ごめん。かぼちゃと玉ねぎ、焼けたら貰える?」
 あとはスープとごはんで十分だ。メニューを指先で頼りなくめくる英治に、十未の表情は晴れない。男子というものは、肉となると大体元気になるのにな。
 割り切ることができない英治の心を否定する権利は誰にもない。辛く苦しみながらも、それでも猟兵であろうとする者は、この世には必要だ。そうでなくては、怪物になってしまう。
「じゃ、そうするよ。野菜の盛り合わせを一つと、」
「……ああ、」
「何だい。欲しいもの、あった?」
「杏仁豆腐。欲しいな」
「杏仁豆腐ね」
 注文の電子パッドすら、眩しい。

 注文を終え、届けに来たウェイターを見て十未はお冷やを吹き出しかけた。
 そこにいたのは悪魔のような風貌をしたブラックタールのリゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)であったからだ。おいおい猟兵が配膳してるのかい。その強面で。
 どうやら忙しそうな店員の手伝いに名乗り出たようだ。リゥ・ズゥは知的好奇心が旺盛である。実体験しなければ知り得ない人間性があることを、リゥ・ズゥは知っている。故に、リゥ・ズゥはリゥ・ズタッフゥにもなる。とはいえ、席の近くまで持ってこられた品物を、運ぼう、と受け取る程度だが。
 一人分の肉、一人分の野菜、一人分の杏仁豆腐。若者二人が頼むにしては頼りないメニューを並べていく。それから、恐らくはリゥ・ズゥ自身のドリンクをひとつ手に持って。
「乾杯する」
 と誘うのだ。少年少女が、きょとんと見上げる。
「リゥ・ズゥは、人を学ぶ。これは、そうだ、『飲みニケーション』という、儀式だな」
 いやまあ合っている。たしかにそうである。ここの二人は未成年だが。
「肉と酒を、回し、食し、心を1つにする、という」
 そしてそれが、乾杯の音頭であると。
 二人が視線を見合わせ、控えめながらも笑うと。お冷やのグラスを、カイブツの手元に向けて差し出して。三つのグラスが、鳴り合わさった。リゥ・ズゥが少し黙ったのは、その音の心地よさを、流動体の体全てで感じていたのかもしれない。
 さて、乾杯したからには、食べなければ。十未は肉と野菜を火に並べていく。英治は小さなスプーンを滑らせ、杏仁豆腐の柔らかな白い表面を抉り、掬う。口に含めば、風味のよい甘みが柔らかく溶けて、悲しい気持ちに染み込むようなーーー
 …………これ、あの子達は。もう。食べられないんだよな。
「ごめん。ちょっと、やっぱり休む。終わったら起こしてくれ。十未も、別の席に混ぜてもらうといいんじゃないか」
「…………」
「みんな歓迎してくれるさ」
「そこは、心配してないけど」
 英治が顔を抑えて、座敷の畳に沈むように寝転がり、十未の視界から消えていった。
 十未が、肉をまた口に含む。
 こんな状況なのに、肉はちゃんと美味しくて、なんだかひどく悔しい。

「あー……ちくしょー……」
「リゥ・ズゥは、美味いモノを食べる事を薦める」
「そうだな……うん。なあ、リゥ・ズゥ」
「食べたいものがあるか?」
「ううん、違う。こうしとこう」
「それは何かの儀式か?」
「いいや、いたずら。」

●そのままでいいよ
 それからどれほど経ったろう。十分程度かもしれないし、三十分かもしれないし、もう終わり際の時間だったかもしれないし。
 力尽きるように眠っていたーーように見えただけかもしれないーー英治が、天井を見つめる。
 身体を起こす。賑わいが少し遠い。十未はいない。よかった、別席で楽しんでいるならばそれがいい。
 そうだ、杏仁豆腐も野菜も食べかけだ。エネルギーをもう少し入れておかないと、おちこむにも体力は使う。改めて、周囲を見る。
 たくさんの杏仁豆腐に囲まれていた。

「…………???」

 甘い香りに包まれて、心地よい。器もひんやり心地よい。杏仁豆腐セラピー。なんだこの状況は。
 英治の起床に気づいたリゥ・ズゥが、何個目かの杏仁豆腐を持ち寄ってくる。いやいや何個あるんだ、大丈夫だよ。思わず声に出せばいくつか遠い席から十未が振り返り、調子はどうだい?と問うように首を傾げている。状況をイマイチ把握しきれないまま、リゥ・ズゥが言葉を次ぐ。
「杏仁豆腐なら食べられる。ならば、杏仁豆腐を食べるといい」
「ちょっと、いや、多くないか?」
「好きなものに囲まれると、人間は嬉しくなる。リゥ・ズゥは知っている」
「ーー食べきれないなら猟兵みんなのデザートになるだけだから大丈夫だよ」
 背をそらし、十未が言った。
「食べられるものだけ食べるといい。リゥ・ズゥも杏仁豆腐は好きだ。無理は良くない。人間には無理は毒だと、リゥ・ズゥは知っている」

 ああ、困ったな。全然、笑う余裕も食う余裕も無い。無いのに。
 あの子達はもう、こんな気持ちも貰えないのに。

「うん……リゥ・ズゥ。みんなに、杏仁豆腐、配りに行こうか」
「仲間と食べる食事は美味く、楽しい。リゥ・ズゥも賛成する」
「杏仁豆腐。配るなら、僕も貰おうかな」

 白くて柔らかくて、甘い。やさしさの凝縮めいたそれを、歯列で噛み潰して飲み込むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
(皆が肉を喰らいに行くのを見送る影一つ。)
(それはきっと、醜くも力を持つ機械豹の姿に比べれば
なんとも弱く、小さい、只の少年の姿をしていた。)

「醜かった」

(独り言を零す。)

(形が人である事と、中身が人である事は等式として成立しない。)
(だから、獣で、暴力装置の姿で、醜くとも)
(中身までそうではなくとも良い筈だ。)

「『僕』はあそこまで醜くは、ない」

(自己暗示の様に呟く。)
(怪物の姿になっても、心くらいは、兵士でいたい。)

(いくら兵士を演じようと
鎧を外せば元の弱い『僕』に成り下がる少年は)

(上手く動いてくれない、人型の、只の右手を
もう片手で庇う様にしながら。誰にも見つからない様、その場を後にする。)



●こども
 右腕を庇うように抑えながら、騒がしい焼肉店から離れ行く少年がいた。少年はとある電脳体を持つ兵士だ。もちろん、それを知る者など誰もいない。例えば、ヒーローの素顔を知る者がいないのと同じ事。
 派手に、自爆し、食い千切られた。電脳体を解き、怪我は治るとはいえ、痛みの記憶は色濃い。
 痛みの記憶は、少年兵におぞましい記憶を思い起こさせて止まない。
 回る換気扇が、獣の唸り声を彷彿とさせる。

 醜かった。
 怪物の器に、怪物が入っていた。自然な等式だ。それも見た目以上に、生命体の個としての在り方が、あまりに、醜悪であった。
 ああけれど、痛みとともに疼く記憶は、その醜悪への不快感ではなくて。

 生物として破綻した骨格と筋肉。
 鋭利な牙。圧倒的な暴力。恐怖を与えるその姿。
 電脳体のーー己の豹鎧と、特徴を一瞬でも重ねてしまった事。

 首を横に振る。
 違う。違う。
 外見に重ねようと、その内に在る魂は、天と地ほどの差。水と廃油ほどの差。そうであれ。
 ーー『僕』は、あそこまで、醜くは、ない。

 (本当に?)
 (そう思うのは自分だけではないか)
 (だれが、比べて、答えてくれるという)
 (聞いてみるのも、少し、怖い)
 (あそこまで化け物になって、はじめて、僕は全てを守れるほどに、強く、)

 否。否だ。わかっている、そんな思考は無駄である。非合理だ、非現実的だ。
 僕の心は兵士であるのだ。魂まで怪物に成り下がる事はない。こんな不安は、兵士は持たない。僕の、『僕』としての、弱い部分が、怯えているだけなのだ。

 まだやわらかさの残るてのひらを、爪を沈めるほどに握りしめて。
 
 共に戦った仲間に、あの醜い怪物と、醜いジャガーノート・ジャック(OVERKILL・f02381)の差異を確認する勇気もないまま。ただのこどもが、誰にも気付かれぬよう歩いて行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィ・アークレイズ
【POW】
気が合いそうな猟兵(ヤツ)が居たからそいつと一緒に入るぜ。
一人で入るのも味気無ェしな。
鳴宮・匡ってヤツとだ。
鮮やかなスナイプで
邪神の手ェ吹っ飛ばしてくれたあの猟兵だよ。
あん時は爽快だったな!
誤射も無かったし、腕良いじゃんかよ。
尊敬…とまでは行かねェが、
やるじゃん。
そこは素直にスゲェと思うぜ。

オレ飲みもん、コーラな。
マツモトが言ってたろ?
未成年は酒飲むなーッて。
オレこう見えても未成年だからよ。
瓶のやつな!瓶のやつ!

肉はまんべんなく喰うぜ。
カルビにホルモンとジンギスカン…お!デケェステーキあんじゃん!
コレ喰いてェな!
白飯と一緒に喰うのが
いっちばん、美味いんだよな!

【アドリブ大歓迎です】


鳴宮・匡
世話になったやつを見かけたんで一緒に。
リリィ・アークレイズって言ったっけ
よう、さっきはお疲れさん
お、腕のいいやつに褒められると悪い気はしないな
視るのだけは得意なんで、うまくいってよかったぜ
そっちこそあんだけしこたま撃って一つも外してないじゃん?
なかなかできることじゃないぜ
鼻先が綺麗に吹っ飛んだのは爽快だったな

とりあえず飲み物を二人分、
それから肉はとりあえず一通り
注文やら、焼くのやら、配るやら、まあ一通りするよ
鬱陶しかったら控えるけどな
あれこれ手を出すのは性分っていうか、癖なんだよな

……お、でかいやつか、いいね
一仕事の後だ、贅沢するのも悪くない

因みに、割り勘と奢りとどっちがいい?

【アドリブ歓迎】



●それでは、また明日
「あッの時は爽快だったなぁ。やっと獲物を捕まえたと思った邪神の手が吹っ飛ぶ様!奴に顔さえありゃ、さぞかし面食らったご尊顔拝めたろうにな!」
「そうかなあ。五感破壊の為に、まず顔から重点的に狙撃して、ぐちゃぐちゃになってて尊顔もなにも無いんじゃないか?」
 それも言えてる。リリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)瓶のコーラを傾けて、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は一通り注文した肉を順次焼いている。
「視るのだけは得意なんで、上手くいってよかったぜ」
「謙遜しやがって。誤射も無かったし、腕良いじゃんかよ」
 頬杖をつき、匡の手元を眺める。ニヤリ、少女が凶悪ながら楽しげに笑う。
「尊敬、とまではいかねぇが。やるじゃん。そこは素直にスゲェと思うぜ」
「腕のいい奴に褒められて、悪い気はしないな。そっちこそ、あんだけしこたま撃って外してないじゃん。なかなか出来る事じゃないぜ」
「ハ。あんなデカブツ相手に外せって方が難しいだろーが。もうちょい上手く世辞してくれよ」
「これはこれは、手厳しい。あの鼻先が綺麗に吹っ飛んだのとか、爽快だったな」
「そうそう。そうゆうのだよ。ーー邪神の顔になんざ、興味無ェし。ちゃちゃっと吹き飛ばしてやるのがイイさ」
 お互い、目を合わせて、口角を上げた。
 カルビにホルモン、ジンギスカン。メニューにある様々な肉が、匡の手によって手際良く焼かれていく。リリィはそれを眺めながらコーラを飲むだけで、いい焼き加減の肉と戦後の談笑にありつけて満足、というわけだ。
「しっかしテメエも甲斐甲斐しいな。オレだって肉くらい焼けるぜ?」
「ああ、これは、性分っていうか。癖みたいなもんだから、負担とか別に気にしないでいいぜ。鬱陶しいなら控えるけどな」
「まーさか。楽してていいなら万々歳だ」
 リリィが瓶を煽り、息を吐く。その様は酒を飲む熟練者にも近い。まあ、お互い多くの修羅場をくぐり抜けてきたのだろう。お陰様で、やりやすくて助かるものだ。
「はー。他にどんなメニューがあったか…………お!」
「何かあったか?」
 顔を上げ問う匡。爛々と、飛び跳ねんばかりにメニューを見せるリリィ。
「でっけぇステーキあんじゃん!! これ食いてぇな!」
 見れば、なるほど目玉商品として堂々とメニューに赤身肉が横たわっている。普段の焼肉ならば、金額と、焼くのにかかる時間や食べにくさを考えると中々手の伸びない品ではある。が。本日はなんと打ち上げで、その上半額セール中である。
「いいね。一仕事の後だ。贅沢するのも悪くない」
「ヒュー! そう来ねえとな!白飯といっしょに食うのが一番美味いんだよ、飯も追加しようぜ!」
「勿論。あー、身を乗り出してると危ないぞ。せっかくの髪が焼けたら、大変だろ」
「焼けねーよ、髪なんざ焼いても食えやしねえんだから」

 ステーキをお好みの焼き具合で仕上げれば。注文時の勢いのままに、嬉しそうに肉を食べるリリィの表情は、年相応の活発な少女そのもので。こうみえて酒が飲めないからコーラ、なんて言われても、どうみてもの間違いにしか思えないだろう。匡も頼んでいたドリンクを一口。ステーキを食べれば、肉の質の良さに舌鼓。
「……ああ、因みに」
「あん?」
「割り勘と奢りと、どっちがいい?」
 手のひらを広げ、答えを待つ。
「ンなもん、選べっつわれたら」
 肉を噛み、飲み込んで。
「決まってんだろ。アンタの奢りだ」
 指に跳ねたソースを舐め、自信満々にリリィが言い放つ。匡も、いつもと変わらぬ調子で笑い、頷く。そう言うと思った。少女だから等の年齢の問題ではなく、彼女の気質として。
「オーケーお嬢さん。喜んで支払わせてもらうよ」
「んで、次の機会には、今度はオレが奢ってやる。それが良いだろ?」
 コーラ瓶の底が、卓を叩く。
 ーーもちろんそれも、そう言うと、思った。
「じゃ。別の戦場でも、会う事があればよろしく」
「おう。その眼、覚えたからな」
「食べる邪魔してごめんな。食おうぜ」
「ちょっと冷めた頃合いがまた味が染みて美味いから問題無ぇぜ」
「前向き」


 
 その日の焼肉店は、たっぷり肉が出たにも関わらず
 驚くほど廃棄が少なく済んだそうだ。

 身体に命が巡る。誰しもがどうせ、今日も今日とて喰らう側だった。
 それを喜びととるか、悲しみととるかは、十人十色なれど。
 ただ、ただ。これだけは、集った猟兵、誰しも口にしたことだろう。

 「ごちそうさまでした!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月10日


挿絵イラスト