バトルオブフラワーズ⑥〜Q・Q・S・Q Step!
●Dance! Dance!! Dance!!
「キマイラフューチャーの異変は皆、知っているね」
氷の結晶を模したグリモアをくるくると指先で弄びながら、ユエ・イブリス(氷晶・f02441)は唇の端を上げた。
テレビウムの事件から程なくして、キマイラフューチャーが文字通り真っ二つになった。中枢『システム・フラワーズ』を占拠するオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』を倒すために、まずは中枢に至るまでの6つの領域を奪還しなければならない。諸々の作戦については――。
「説明は省略するよ。我々がすることは、実にシンプルだからね」
グリモアベースには様々な音楽が鳴り響いている。
いわゆる――王道のクラシック、熱狂のロック、イカレたヒップホップ、情熱のラテン、情緒あふれる民族音楽――並ぶスピーカーからはすべて異なる音楽が流れ、グリモアベースを充たすようだ。
「音楽は良い。心を浮き立たせ、慰め、奮わせる」
薄氷の翅を震わせて、スピーカーひとつひとつから溢れる音を愛しむように空を漂う。
「音を奏で歌を唄うも良いが、君たちに頼みたいのは」
グリモアが光を放つ。肌を掃くのは一瞬の冷気。
壁一面に目映い光が弾け、きらめくネオンサインに変わった。
「ダンスだ」
石榴石の双眸を細め、ユエは笑う。
中央にはダンスフロア。奇怪な姿をした踊り子が一人、スポットライトに照らされている。
機械的なグランフェッテの爪先は、わずか5センチの円から1ミリたりともはみ出さないけれど。
「心の無いダンスに、どれだけの力があるのだろうね」
このフロアにはルールがある。先の事件から救出されたテレビウムの画面から、ダンスの様子は全キマイラフューチャーに中継されている。視聴者の熱狂が、感動が、興奮が伝播してフロアに『ダンシングフィーバー』を巻き起こすのだ。
ダンスと戦闘、相反するものがあったとしても、フィーバーを起こしたならユーベルコードを数倍の力で叩き付けることができる。失敗のリスクがあったとしても、挑戦する価値があるだろう。
心に旋律を、唇に歌を、手足はそれらに従うまで。
ダンスの心得があってもなくても、ミスを恐れて踏みださない選択肢など無い!
「猟兵の本気を、魅せてやろうではないか。さあ、路を開こう」
キマイラフューチャーを魅了する、息つく暇も与えぬダンスバトルの開幕だ。
高遠しゅん
高遠です。ダンス! 待っておりました!! 精一杯頑張らせていただきますので、よろしくお願いいたします。
ダンスパフォーマンスに関する特殊ルールがありますので、お考えの上のプレイングをお願いいたします。
●採用人数について
戦争という特殊な状況のため、いただいたプレイングは順に目を通し、採用可能なものから執筆いたします。
成功数に達した場合、プレイング内容によって採用を決めさせていただきます。全員を無条件での採用は難しいことをご承知おき下さい。
●プレイングについて
ダンスの傾向(バレエ・ボールルームダンス・ヒップホップ・ジャズ・その他創作ダンス等)をプレイングに記入をお願いいたします。ダンスは全く知らないけれど、こんな音楽や気持ちでダンスが踊りたい! という希望で構いません。高遠が全力でなんとかいたします。
ダンスを踊ったことのないキャラクター様でも心配ありません。
複数名様でご参加の場合、プレイングは【一行目にお相手のお名前とID(グループ名)】を記入の上、同一日で送信をお願いいたします。
では、皆さまの熱いプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『ギヴ』
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POW : あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD : しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:棘ナツ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠コルチェ・ウーパニャン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
くるくる、くるり、くるくるくる。
トゥの音がかすかに聞こえる。調子外れのメロディに、ぜんまい仕掛けの踊り子は、独楽のようにひとり回る、スポットライトの中。
ここはキマイラフューチャー、歌い踊り楽しむ世界。なのに歌も音楽も彼女に届かない。心のない踊り子は、孤独にくるくる回り続ける。
高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってなあ!
うなれ俺のこの長い脚!
スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!
今回はヒップポップで踊ってみるとするかあ
若者向け人気楽曲をBGMにして
音楽に乗りつつ、とにかく楽しく! 動きだけでもリズムや音を表現できるように
ダンスは楽しいものだと、観客に見せてやんねえといけねえ!
これぞスカイダンサー! ってな演技をしたいぜえ
あと、大事なのは笑顔! 楽しく踊ってると印象付けるためには、笑顔がいちばん大切だ
危ないところは「野生の勘」で咄嗟に踏みつつ
とにかく楽しく! 見栄えも考えて! しっかり最後まで踊りきるぜえ
ここぞというときに攻撃できそうなら
『スカイステッパー』で蹴り上げるぜえ!
●鼓動
流れだすビート。軽いキック&オープンで場を温めていく。
「最初はおれだぜ、お嬢さん」
ダンスの真髄はあふれるパッション! 何も難しいことなんてない。
流れだすのは流行のビート、高鷲・諒一朗が裏ノリのカウントでステージの中に歩み出る。メリーゴーラウンドの踊り子は、リズムも無視してくるくるくるり。
「もったいねえなその技術。ご機嫌なリズムに乗っていこうぜ?」
きゅ、とシューズを床で鳴らし、諒一朗のショウタイム! 一瞬でリズムを掴む、準備運動とばかりにボディウェーブで踊り子ギヴに合わせてみせる。
黄金の瞳は真剣に、だが唇には情熱の笑顔。心がリズムを刻まなければ、観客の心を掴めるものか。
「暗ぁい顔してひとりぼっち、おまえのパッション感じねぇ。ダンスは楽しむモンじゃないのか? きれいなドレスは飾りじゃないだろ」
ギヴ、踊り子はぴたりとターンを止める。首を傾げてみたならば、歪んだオルゴールが音を歪める。ならばやってみろ、とでも言わんばかり。ダンスにはダンスで返せと。
観客を温める役は引き受けた。チャールストンのステップから一転、諒一朗が迸る。大きく身体を左右に揺らし、右、右、左、右、刻むビートは早くなるばかり。
緩急を付けてダイナミックに、低く高く弾むキック&ステップ。
ギヴのオルゴールが不快に響く。自分の方が高く跳べると、センターからのグランジュテ。どこか意地っ張り、癇癪起こした猫の子のよう。
「いいぜいいぜ、その調子。おれも負けちゃいられない」
諒一朗はさっぱりと笑う。ひゅうと息を吸い一足、二足、宙を跳ぶ。スカイダンサーの真骨頂、宙を駆け巡るクライマックス。巻き起こる旋風のボリューム、観客と中継役のテレビウムが虹色の光を放つ。
ころりころがるプレゼント、中身は何やらお楽しみ。口笛と歓声、拍手の渦。ギヴのドレスにひと筋の裂け目、からりころりとメリーゴーラウンドが鳴る。
大成功
🔵🔵🔵
古叶・日見花
子竜(f14324)と舞うよ
あはは、楽しそうじゃないか。ほれ、君も笑いたまい。
なーに、誰しも最初は初心者さ。それを導くのが経験者の、そして大人の務めってものさ。
というわけで礼儀作法の一つ、社交ダンスといこうか。
スローワルツだ。はい手を取って、もう一つの手はこっち。
私が一歩踏み込んだら一歩下がる。逆も同様にね。
いちに、さん。いちに、さん。そうそう、筋がいいよ。
顔が鬼気迫ってなければもっといいんだが。まあそれは追々だ。
さて、ダンスに特化した式を何人か喚びだして、と。
おまえたち。あたし等は楽しく練習してるから、おまえたちはオブリを囲んでマイムマイムでもしながら囲んで殴ったり蹴ったりしておいで。
イリーツァ・ウーツェ
御前(f16408)に手を引かれて
改めて申し上げますが。
御前(ごぜん)、私は踊りに関しては完全な素人ですよ。
ご期待には添えないかと。
……確かに、礼儀作法としてならば、聞きかじっておりますが。
…………。
(真剣な顔でステップに集中している)
(UCを使いながら踊っています)
(攻撃がこちらに飛んできたら、日見花を持ち上げてくるりと回避する)
(そのほかにおいて、こちらは戦闘にはあまり役立ちません)
●調和
曲調は変わって三拍子、優雅で典雅なスローワルツ。
イリーツァ・ウーツェは渋面で、パートナーをリード……する?
「御前」
「なーに、誰しも最初は初心者さ。ほれ、君も笑いたまい」
「御前、私は素人です」
なかなかにしてぎこちない、イリーツァのリードをフォローするのは可憐な乙女、古叶・日見花は余裕の表情。黒い瞳に底知れぬ年月を湛え、宿る光は外見相応。頭一つ背の高いイリーツァを導くように、右に左にゆらゆら揺れる。
「肘上げて」
「はい」
「肩の力抜く」
「はい」
「一歩は大きく」
「はい」
「回るよ」
「はい」
「頭を天井に吊る気持ちだ」
「はい?」
容赦ない指示がイリーツァを襲う。ドレスの裾をふわふわ揺らし、くすり日見花は笑みを含んで。
「そう緊張せずとも社交だよ。気楽に楽しくゆこうじゃないか」
「はあ」
日見花が指を弾いたなら、喚ばれた式が二重に円を描く。いつもは不可視の式も今日は特別。晴れ着の童らが手に手を取って輪を描く。三拍子に乗って輪舞を始める。
中心に据えるはオブリビオン。からころ鳴るはオルゴール、ギヴはたいへん困った様子。得意のグランピルエット、式を掠めてバランス崩す。
いちに、さん、にに、さん。大きく、ゆるりと回って、回って、回って静止。最初に戻って、ステップ、ステップ。
コツを掴み始めたイリーツァの尾が、ターンとともに弧を描く。ひらり日見花のドレスの裾から光の粒がこぼれる。
持ち前の直感でフロアを読み、踏みだした革の爪先に日見花のサテンの爪先が添う。日見花の花の微笑みは観客を魅了し、師の普段とは違う一面にイリーツァもまた目を瞬かせる。
式に囲まれたギヴは、観客の視線にいらだつ様子。満足に踊れていないのに、観客は二人に首ったけだ。踊り子の誇りが無視を許さない。式の輪を蹴る勢いのフェッテ、式らは体を隠してすり抜ける。
中継のテレビウムがそちらを向かぬよう、イリーツァが大きくリードした。不意の強さも日見花にとっては余裕のあしらい、髪に飾った野山の花が、視線集める熱さに薫る。
「支えて」
呼吸が一つに重なれば、日見花の身体が高く上がる。大輪の花開くドレスの裾、見下ろす視線が慈愛に満ちる。
「筋がいいよ、上出来だ」
「……はい」
「あとはその怖ぁい顔だな。そこはそれ」
おいおい慣れていけばいいさ。満場の喝采の中で優雅に礼する日見花の背に、戦場とは違う緊張に息乱し、イリーツァも紳士の礼をした。
大成功
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榎・うさみっち
ダンスに必要なのはハートだぜ!
というわけで俺もイケメンのハートで対抗するのだ!
【みわくのうさみっちジェントルメン】発動!
✨イケメンダンス開演✨
お嬢さん、お前のダンスも悪くない
特にその寸分の狂いもないスタップ、素晴らしいぜ
と、相手を褒めることも忘れない
だって俺は紳士だから
だが、ただ整然としているだけのダンスでは
本当に観客の心は掴めないぜ
ジャンルは創作ダンス
俺は自分を見てくれる人の為に魅せるダンスをしてみせよう
時には【残像】でスローモーションのような動きでキラキラを振りまき
時にはテレビウムに向かって華麗にウィンク
かっこいいワイヤーを新体操のように動かしつつ攻撃
武器による攻撃も立派なダンスうちだ
●魅惑
ギヴ、メリーゴーラウンドの踊り子。『ザ・ダンスステージ』の護り人のひとり。すり切れた衣装は不名誉の証。ならば巻き返すまで。
「お嬢さん、お前のダンスも悪くない」
どこかから声がした。次の挑戦者がふわっと上の方にいた。
「正確なステップは、たゆまぬ努力の証明だ。努力するものは美しい」
ふよふよするなにかが力を解き放つ。渦巻く光の中心から羽化するように、フロアに謎の光を纏って立つのは、身長180cmの青年だ。その名は――!
「俺は榎・うさみっち。通りすがりのイケメンさ。お手をどうぞ、お嬢さん」
座り込んでしまったギヴに手を差しのべ、微笑みかけるうさみっち。ギヴのハートにずぎゅーんときた。カメラ目線を向けたなら、中継のテレビウムの画面に次々ハートが灯って光る。
片手を上げて指を鳴らせば、軽快な音楽が流れだす。身体全体でリズムを感じ、軽く爪先でビートを刻む。
それだけで。たったそれだけで! ステージに巻き起こるダンシングフィーバーの嵐。
敵であっても賞賛を惜しまないジェントルな振る舞いが、敵であるギヴの視線をも虜にする。いけない、とギヴが演技を始めたなら、
「パ・ド・ドゥはどうだろう。姫君には王子が必要だろう?」
アラベスクをそっとサポート。腕の中でギヴがくるくる回る。
なんて紳士。なんてジェントル。
「だって俺はイケメンだから」
ステージをゆっくり歩くだけで。歩くだけで! 謎のキラキラした光が尾をひきフィーバーが止まらない。
「観客の視線を掴み、呼吸を読むこと。見たい俺を魅せること――技だけじゃない、ダンスは心で踊るものさ」
翅を広げたならあちらから、視線を投げたならそちらから。一部のテレビウムがショートする火花が散る。
ステージの中央で、首の痛いイケメンのポーズで決める。首の痛いイケメンのポーズではあるがイケメンなので問題ない。ギヴは瀕死の白鳥の終幕のごとく、胸を押さえてステージに伏した。
『これが……恋?』
たぶん、違うけれど。
大成功
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ボゴ・ソート
※アドリブ歓迎
ヒップホップはブレイクダンスでいざ勝負!
身長2.7mの重量級ボディに備わった【怪力】をフル活用して、矢継ぎ早にパワームーブを繰り出すよ。
背中と肩を支点にして足を広げて高速回転したり、片手逆立ちでドシンドシン【ジャンプ】したり、倒立した状態から足を床につかずに側転してみたり……回転系の派手な技を中心とした組み立てで、視聴者を【鼓舞】すると同時に『ギヴ』を【挑発】するんだ。
ゴロゴロと床を転がりながら『ギヴ』に近付いて、スキあらば【帝国式レスリング】で捕まえて空中高く放り投げてやる。
「この戦いが終わったら真面目にパフォーマンスやってみようかな……」
無明・緤
みんなで盛り上がるのが
キマイラフューチャー流だろ?
おれが選ぶダンスはこれだ
レトロなミュージックを流しUC【エレクトロレギオン】召喚
敵を囲んで円陣組ませ、絡繰人形とおれも加わり踊る
「みんなで楽しむダンス」の定番、フォークダンスだ!
数体の小さな輪から始め、兵を一体ずつ加えて
目指すは百体以上による大円陣。【操縦】技能を駆使して限界に挑む
「百体でフォークダンス踊らせてみた」中継よろしく!
巧く踊るのが目的じゃない
挑戦するおれ自身が楽しくて
見たヤツがバカだなあって笑ったり
自分も踊りたいって思ってくれたらいいんだ
敵の誘いは尻尾や肢先で払いのけて抵抗しつつ
フィーバーに包まれたタイミングで機械兵達に攻撃を命じる
●喝采
だん! と足踏む音が聞こえた。見上げに見上げる長身の男、ボゴ・ソートが音楽を止める。
「飽きさせないよ、最後まで」
軽いトップロック、フロア中央に進めば肩に乗っていたケットシー、無明・緤が手を高く掲げた。あふれる音はどこか懐かしい、しかし新鮮なロックアレンジ。
身軽に三回転で飛び降りた、緤が更に喚びだすのは無数の機械兵器たち。普段は銃器持つ彼らはみな、手を取りステージを囲む円陣を作る。百体を超えるマシンたちが、ボックスのステップで音に乗る。
「『踊らせてみた』、中継よろしく!」
テレビウムたちが立ち上がる。全身でリズムを刻む。
ボゴが高く跳ねた。2・7mの長身が唸りを上げるパワームーブ。床に手をつき竜巻のように、長い手足が風切り回る。旋風起こすウインドミル、テレビウムたちの画面のまばゆいフラッシュが、フロアにフィーバーを巻き起こす。回る、回る、その姿は自由そのもの。ダンスを楽しむ心の結晶、ハートまで踊らせてこそダンサーだ!
「ギヴ、君のダンスを見せてよ。本物のダンスをさ」
肩と頭で倒立した、ボゴの視線の先は自信を失った踊り子の姿。華奢な身体をステージの隅に、立ち尽くすその背を押してやる。ダンスパフォーマンスのステージを、独り占めする気はないのだから。本気のダンスとダンスでぶつかり合って、盛り上げていくのがパフォーマーの役目。ステージを降りるなんて許さない。
緤がギヴの手を引き、ステージ中央に導いていく。
「自分も踊りたいって思ってくれたらいいんだ。『ギヴ』の名は『与える』んだろう?」
過去の亡霊、キマイラフューチャーを脅かすオブリビオン。だとしてもステージに居るのならば、表現しなければならない。感動を、歓声を、与え与えられる権利がある。
ステージが巨大なメリーゴーラウンドに変化した。翼持つ馬が、華麗な馬車が、オルゴールの音とともにからりころりと回り出す。
「【楽しかった思い出】か」
「悪くない」
二人は視線を交わし、にやりと笑う。
円形のステージ中央でボゴが更に繰り出すパワームーブ、ヘッドスピンが唸りを上げる。
広がり、集まり、二重三重に円を組んで、緤が操る機械兵器たちがウェーブする。
その後ろでギヴもまた、生き生きとしたフェッテでくるくる回る。
会場で踊っていないものはない。テレビウムも、観客も、参加者たちも皆、声を上げ手を叩き、身体をリズムに揺らしている。ダンシングフィーバーの光がステージに満ちみちて、あふれて広がっていく。
そうして音が静まったとき、ギヴの姿は消えていた。
骸の海に抱かれて、鮮やかな夢を見続けるだろう。
大成功
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