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バトルオブフラワーズ⑤〜悪役令嬢を守り切れ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●スピンオフは胸が躍る。ただし胸は薄い。
 月原・雪花(月兎・f06136)は手に持っていた本を勢いよく閉じる。ウサ耳をピコピコさせて、深く息を吐くと集まった猟兵達を見やる。

「……何かイラっときたけど、皆。集まってくれてありがとう。あれだけのことが起きたから皆気づいてると思うけど……キマイラフューチャーが割れた、ね。本当にびっくりしたけど……この事態は怪人大首領『ドン・フリーダム』というオブリビオン・フォーミュラが引き起こしてる」

 オブリビオン・フォーミュラ。これに聞き覚えのある猟兵は多いだろう。かつてスペースシップワールドを支配していた銀河皇帝。あれもまたオブリビオン・フォーミュラだ。
 この事態を放置しておけばカタストロフが発生しこの自由気ままな世界、キマイラフューチャーが滅んでしまう。

「ドン・フリーダムの所に行くまでには、六つのステージを攻略してシステム・フラワーズに辿り着く必要がある。……で、皆にはそのうちの一つのステージ。ザ・ゲームステージに向かってもらう。ゲームの中に直接入る……いい機会だよ」

 ゲームステージと聞いて一部のゲーム好きな猟兵達が活気だつ。想像や妄想した事があるだろう、もしゲームの中に入れたらと。その夢想を現実に適えるステージがこのザ・ゲームステージだ。

「今回、皆に入ってもらうゲームは……乙女ゲームって知ってるかな? こう……女の子がイケ面と恋愛するあのゲーム……。僕はやった事ないけどちょっと読んだことあるから解るけど……。そのスピンオフだね。皆にはメインのヒロインを――じゃなくて、悪役令嬢の立場にある公爵令嬢のフラン・ドゲザーヌって子を守ってあげてほしいんだ」

 何だろうその謝るのが必定な家名は、と猟兵達は思ったが雪花は無視して続きを語る。

「フランは僕が言うのも何だけど可愛い子で……良くも悪くも純粋。周りのいう事を良く聞く子なんだ。――それが彼女の美貌と立場を利用して自分たちの欲を満たそうとする輩たちの事でも」

 自分たちの立身出世の為に、王太子を自分の物にし王太子妃になるために純粋なフランを利用し、目障りなヒロインを蹴落とす様に促す。その結末は――ドゲザーヌ家諸共の処刑。疑う事を知らないのは罪なのか。罪を罪と知らなかったことは罪なのか。それらを解消するのがスピンオフだ。

「皆には、フランを利用して私欲を満たすメイドや親戚、他の令嬢の手から守って欲しい。守り方は任せるよ。ゲームの世界だから執事やメイドになったりできるし、同じ貴族になって口説き落としたり仲良くするのもあり、かな。クリア条件は断罪を避ける事だから、そう難しくないと思う」

 要するに、フランと仲良くして悪事を吹き込んでくる人らから守ればいい。 ゲーム自体のエンディングは王太子や他の貴族との結婚エンドや、皆で仲良く暮らしましたなどのノーマルエンドと処刑のバッドエンド。バッドエンド以外のエンドを目指すのが目標だ。

「グッドエンド、ノーマルエンドを迎えたら……クリアを妨げようとオブリビオンがやってくるよ。白ブーメランパンツ過激派怪人が」

 なんで乙女ゲームにそんな奴が出るんだよ! と多くの猟兵からのツッコミ。うさも同意する様に深く、深くため息を吐く。

「……本当に乙女ゲームなのになんでこんなのが来るんだろうね。これを倒せば、無事クリアだから……皆、頑張って」

 うさは手に持った乙女ゲームの話を舞台にした本を手に持ちつつ、猟兵達に頭を下げる。

「あ、本編のヒロインは放置して良いから」

 ヒロインは放置されるらしい。


暁月
 はい。暁月です。突発的に戦争置きましたね。仕事中だったのでびっくりです。
 今回は乙女ゲームを舞台とさせていただきました。やりたいようにやってフランちゃんを守ってあげてください。

 参加するにあたってどういう立ち位置でどういう悪役から守るかをご記入お願いします。その後に戦闘に入ります。

 参加者たちの好感度によってグッドかノーマルに分かれます。百合も全く問題ありません。フランちゃんはスタイルは金髪碧眼のロリペタンとなってます。好みの方は頑張って口説き落としてください。

 戦闘に入ればフランちゃんは頭抱えて隅っこで振るえてますので気にせず変態を倒してください。
 それでは皆さん、振ってのご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『白ブーメランパンツ過激派怪人』

POW   :    至高の履物とは
【白のブーメランパンツ】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    白ブーメランパンツとは強さの象徴なり
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【白のブーメランパンツ】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    白ブーメランパンツの魅力を知れ!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【同志】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:くずもちルー

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

京奈院・伏籠
乙女ゲームはやったことない。…のだけど、悪意の第三者が純粋な子を利用して、っていうのは邪神教団の手口でもあるんだよなぁ。
ゲームとはいえ、エージェントとして見過ごせないね。

役柄に入り込めるなら執事の役でゲームに潜り込むよ。
ヒロインを貶めるよう入れ知恵する相手から守ってあげたい。

フランお嬢様、真に相手のことを想うなら、その行動が周囲にどう影響を与えるのかも考えるべきです。
お嬢様の行動ひとつで多くの人の運命が変わる。公爵家たるドゲザーヌには、それだけの力があるのですから。

戦闘は執事になりきりったままで。
執事服の内側から拳銃を取り出しバンバン撃ち込んでやろう。

ええい、下郎! お嬢様に手出しはさせんぞ!


弥久・銀花
アドリブ、ピンチシーン歓迎です。


ふむ、金髪碧眼の公爵悪役令嬢ですか。
では、白髪紅眼の一般市民剣士が助けに入ったら画面映えするかも知れませんね。

私はドゲザーヌ公爵令嬢……、響きが悪いですね、フランさんのメイド兼護衛のナイトとして身の回りに侍っています。

悪事の片棒を担がせようとする輩が居れば台詞を遮って会話の邪魔をしましょう。
退出させられたら、義手を外して覆面を被って(メイド服のまま)後で闇討ちしに行きますね、証拠書類と首謀者と指示された部下をセットで敵対派閥の拠点の傍に置いておけば後は片付けてくれますね。

メイドやる時は腕は着けておきます。


変態が出たら?
人狼咆哮で木っ端微塵にしてあげますよ。


セルマ・エンフィールド
乙女ゲーム、ですか。他種のゲームすらプレイしたことはないのですが、やれるだけやってみましょう。

ドゲザーヌさんのお付きのメイドとしてゲーム内へ。お嬢様、と呼ぶのでしょうか、慣れませんね……
料理はあまり得意ではありませんが、お茶を淹れるくらいであればなんとかしましょう。

あとは本業。お嬢様と言い寄ってくる人の話を聞き耳で立ち聞きし、その中でどうしようもない悪人を夜間にフィンブルヴェトからの狙撃で暗殺します。
お嬢様にはこんなこと話せませんね。純粋な方なので。

怪人が現れても同様、頭部の下着を【氷の狙撃手】で撃ち抜き、対処します。
お嬢様に品のないものを見せないで頂けますか?(ゲームに感情移入している)


オル・クブナス
ふむ、純粋なものは染まりやすい…だからこそ正しき方向へ導いてやる事が必要なのです。

『礼儀作法』には自信がありますのでゲームには執事として参加し、フラン様のお側で彼女を利用しようと近づく悪い虫を追い払うことに致しましょう。
あとは出来ればですが彼女に貴族社会を生きぬく術を、罪が罪であることをお教えしたい。所謂帝王学、「ノブレス・オブリージュ」と言うやつですな。

怪人については…先手必勝しかありますまい。聞く限りでもアレは明らかにお嬢様には目の毒でございます。
間違えるような見た目でもございませんし、現れた瞬間にUCにより攻撃力を高め突撃。ダメージはナノマシンアーマーで防ぎつつ速攻を仕掛けましょう。


キリカ・リクサール
割れた…そうか割れたか…
あまり深く考えたら負けだな

ゲーム世界では護衛として潜入
フランには時に優しく時に厳しく接して信頼を得よう
ゲームの中でも【コミュ力】は発揮できるはずだ

その過程で【情報収集】を行い
他の猟兵とも情報を共有しつつフランお嬢様を利用しようと近づく男達を主に排除する
過激な手はお嬢様に悪影響だからそれは最後の手段だな

「去れ、愚物が
お嬢様に不埒な視線を向けるならば即刻切り落とすぞ」

バッドでなければエンドはどれでもいいが私はお嬢様の意見を尊重する
お嬢様には幸せになってもらいたいものだな

敵が現れたら主にお嬢様を守りつつ迎撃
【苦痛の嵐】で変態を穴だらけにしてやろう
お嬢様の教育にもよくないからな


白峰・慎矢
乙女ゲームの…中に入る……?よくわからないけど、彼女と仲良くなって、守ってあげれば良いんだね?

よし、じゃあ俺は「料理」ができるから、料理人にでもなろうかな。後は……できれば彼女の兄的なポジションにいたいね。い、いや別に最近弟が大きくなってあんまり兄として頼られてない感じだから、その穴埋めってわけじゃないからね!?良き兄として彼女に接しつつ、周囲に目を配って…彼女に寄る悪い虫はこっそり始末するか。

戦闘では、「残像」で攻撃を避けつつ近づいて、「カウンター」で【集霊斬】をお見舞いしてやろうか。ユーベルコードで防御する暇を与えないように一気にいこう。君の存在は彼女に悪影響だ。早々に退場してもらうよ。


コトト・スターチス
悪役令嬢の転生ものを読んでどはまりしているコトトです!

ぼくは見た目が似てるので『フランの妹“コトト・ドゲザーヌ”』として登場します!
お姉様とは【コミュ力】でお話して信頼関係をきずき、そばにいるようにします
悪者と会わないよう「お姉様遊びましょうっ」と誘導してフラグを回避したり、
時には悪事の証拠を【情報収集】して「偶然見つけてしまったのですが」などとお姉様に伝え、世の中には残念ながらお姉様を利用する悪人がいることを訴えたりします
必要なら他の方との恋路をサポートしますね!

あ、怪人がでてきたらさくっと『はなことば』で同志もまとめて一気に攻撃します!
ユリの花びらで、見た目だけでもきれいに退治したいですね


夜月・クリスタ
悲劇の令嬢に群がる欲深い人間達。怪盗として動くには最適な舞台じゃないか。盗ませてもらうよ、悲劇の結末を!

僕はフランと友達の怪盗として、彼女を利用しようとする貴族から彼女を守ろう。具体的には【盗み】で悪事の証拠を盗み、彼女とその貴族が居る場に現れ証拠を叩きつける。
何故ここまでする権利があるのかって?第一僕は怪盗だし、友達を守ろうとするのは普通だろ?

怪人が出てきたら、彼女を庇うように前に出る。君から最悪の未来を盗むと決めたんだ、必ずやり遂げて見せる!
【フォックスファイア】で狐火を頭に被っているパンツ目がけて放ち、パンツを燃やせたら二刀流の小太刀で怪人共を切り払っていくよ。

・アドリブ、絡み歓迎


秋山・軍犬
自分は名は軍犬
元猟兵のフードファイターで
今は一般人の料理人
ドゲザーヌ家の厨房で働いてるっす。

…何この、お前はどこのセ〇ールだ的な設定は?

「…お前の様な料理人がいるかと言いたくなるケキね」

フラン嬢を近くで護衛する為に
お付きのメイド役として奇跡の再会『美食姫』で
喚んだグルメ姫からも思わずツッコミ!

いや、ゲームでもあんな子を処刑する
悪人は全部ぶっ飛ばした方が爽快かなって?
…ほい!フラン嬢のランチの特製お子様ランチ出来たっす!

「プリンも付いてるでケキ!?私も食べたいケキ!」

別に良いけど…フラン嬢の護衛頼むっすよ?

後、怪人出てきたら、ぶっ飛ばすっすけど
グルメ姫はフラン嬢を守ってやって…情操教育的な意味で



●悪とされた令嬢を救い、悲劇を蹂躙せよ、断罪を叩き壊せ。

 春の朗らかな暖かさが朝日と共に訪れ、カーテンの隙間から零れる陽光が一人の少女を照らす。
 その少女の名はフラン・ドゲザーヌ。

 ドゲザーヌ公爵家は古くから代々王家に使えており、フランは公爵令嬢としてこの世に生を受けた。
 フランは華も恥じらう様な令嬢で、華やかでとても(どこかとは言わないが)慎ましく、誰の言う事でも真摯に聞く心優しい令嬢だ。
 だが、成長するにつれ美貌は多くの男性を狂わせ、更には利用しようと画策する貴族や親戚、果てには本来は自らに仕えているはずの使用人によって悪の道を教えられ、罪を罪とも知らずにフランは断罪の道を辿る―――筈だった。
 その運命は猟兵達の手によって粉々に粉砕される。それはもうすりつぶす勢いで。

 コンコンとフランの部屋をノックする音が聞こえる。

「起きてますわ」
「失礼します」

 扉を開け礼儀正しく一礼し、部屋に入ってきたのは一人のメイド――弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)だった。
 彼女はメイド役としてフランの傍に付き添い、お世話兼護衛としてメイドとなったのだ。それも全てはフランを悪事から守るために。

 弥久に続いて部屋に入ってくるのは同じくメイド役を演じているセルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)だ。彼女もフランの御付きとなり、弥久と二人で付き添う形になる。
 弥久が身の回りの護衛ならば、セルマは諜報だ。フランに言い寄ってくる人らの噂や会話を聞き耳だて、その中でどうしようもない悪質な物はセルマの狙撃によって既にこの世から消されている。
 フランを陥れ、奴隷にし赴くままに蹂躙しようと画策した彼女の叔父等はフランが知ることもなくゲームからドロップアウトとなった。シナリオブレイクにしても程があるが、これも可愛いフランの為なら仕方ないだろう。

 そんな鉄壁のメイド達にお世話されているフランは寝起きの髪を整え、薄く化粧を施し、着替えさせてくれる使用人な彼女らにも優しく微笑みかける。

「いつも有難う。ギンカ、セルマ」
「いえ、これが私達の仕事なので」
「それに、フラン様の髪は艶やかでとてもお綺麗なのでこれを手入れさせて頂くだけで幸せです。私の髪は銀なのでフラン様の様な金色に憧れます」
「ふふ、ギンカの銀の髪も、私は好きよ」

 フランがゲームの登場キャラとわかっていても弥久とセルマの二人はフランの笑顔にやられていた。ブラウザ越しでやるのと実際にゲームの中で体験するのとはこれほどの差が出るのかと思い知った二人は尚更フランを守るべく視線を合わせ、無言で頷く。――必ず守ろうと内心で強く誓いを掛けて。

 フランを断罪に導くフラグは本来ならば彼女の味方であるべきの使用人たちの中にもいた。その筆頭がメイド長だが――彼女もまた既に京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)とオル・クブナス(殴られ屋・f00691)の二人の執事によって既に排除されている。
 メイド長はフランの無知さを利用し、高級な装飾品や化粧品を「これはお嬢様には似合いませんね。此方の方がいいでしょう」と安価な物や質の悪い化粧品と取り換え、懐を満たしていたのだ。
 排除されていなければその欲は更にエスカレートし、王宮に呼ばれるようになったフランを利用し、王宮の物を持ってくるようにと盗みの片棒を担がせ最後にはフランに全ての罪を着せて逃げるシナリオになっていたのだが、それもまた煎じて排除されたことにより防がれた。
 現時点でもフランの下着などを売り払い、一部の下種貴族とも繋がっていたが京奈院とオルの二人によって罪が暴かれ、フランにもその事実を教えた。
 流石にフランもショックを受けた様だが、オルが優しくも彼女を諭すように言葉を掛ける。

「お嬢様。世の中にはお嬢様が知らない多くの罪があります。今回、お嬢様にも少なからず罪がありました。それは無知という罪」
「無知が罪……」
「ええ。知らないから、教えてくれなかったからではいけないのです。貴族社会を生きぬくためには多くの事を知って下さい。どれが良くて何がダメなのか知って下さい」
「でも間違えたら……」
「間違えて良いのですよ。その時は私達が今回のようにお守りします。ですが、ずっとという訳にはいかないのです。いずれ自分で自分を守れるように。お嬢様の知によって領民たちを助けるように。そうすれば領民たちもお嬢様をお助けするでしょう。『ノブレス・オブリージュ』。お嬢様ならばやれます」
「……ええ、わかったわ。今回は間違えましたけど、次は何が良くて何がダメなのか、しっかりと学ぶことにしますわ。でも、まだまだいっぱい知らない事があるからオル達も教えてね」
「ええ。お任せください」

 こうしてフランは何が良くて何がダメなのか学び始め、確実に処罰への道が遠のき、罪を犯したメイド長は牢屋の中に囚人として永久就職することになった。

 こうして館の中に潜む彼女を断罪へと陥れるルートは排除され、フランにとって幸せな空間が作られていた。
 朝の身嗜みが整ったフランは秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)と白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)の作った料理に舌鼓を打っていると、ドゲザーヌ家当主である父がナプキンで口元を拭い、フランに視線を送る。

「フラン。今日は昼から王宮で社交界だが、体調の方は大丈夫かい?」
「はい。全く問題ありませんわ」
「そうか……病弱だったフランがこうも元気になって……。やはり腕のいい料理人は違うな」

 以前のフランは栄養が足りず、青白く貧血気味でほっそりとした体形だったが秋山と白峰の料理によって健康になっていた。
 これは料理人の腕が悪いという訳ではなく、主に好き嫌いが原因だったが多くの料理を残した時に京奈院が厳しく言いつけたからだ。

「失礼ですが、お嬢様。少量ならば私も言いませんが多くを残し過ぎです。もっとお食べ下さい」
「……もう食べれないわ。これ嫌いなの」
「お嬢様が好き嫌いするだけで、どれだけの人が苦しむか、悲しむか考えた事がありますか?」
「え……?」
「食材の一つ一つは農家が朝から汗水流して作られております。料理人にしても、如何にお嬢様の健康を気遣って美味しい料理を頂いてもらえるよう日々精進しております。単に嫌いというだけで多くの料理をお残しになるとそれに関わった人たちの努力が無になるのです。ですが――お嬢様が少し頑張って頂ければ、それだけの人達の思いが報われるのです」
「……そうなのね。苦くて嫌いだけど……もうちょっと頑張ってみるわ」
「はい。お嬢様の行動ひとつで多くの人の運命が変わる。公爵家たるドゲザーヌには、それだけの力があるのですから」
「ええ、私は公爵令嬢フラン・ドゲザーヌ。ピーマン如きには負けませんわ!」

 という一幕があり、二人の料理人の手助けもあって今では殆どの苦手な物がなくなった。実はこれも断罪フラグに繋がっており、貧血によるストレスで周囲に厳しく当たることがあり、ヒロインにも当然強く当たってしまいそれが段々エスカレートした所を王太子の目に留まり、断罪という流れになるが健康的なフランは今は本来の優しい性格のまま社交界に出れるようになったのだ。

「それに大事な妹のデビューですもの。出ないわけにはいきませんわ」
「えへへ。ぼくもばっちりですよ。お姉様。お父様」

 妹役として入り込んだのはコトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)だ。同じ金髪碧眼という事もあり、無事妹として馴染んだコトトはたびたびフランと遊びとても親密になっていた。今ではフラン自身もコトトと遊ぶのが楽しみなほどだ。

 社交界に向かうに至ってフランとコトトを守るべく護衛として付き添うのはキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)と秋山が召喚した御付のメイド役……どこかで観たような感じがするが気のせいだろう。『美食姫』と弥久の三人が付くことに。
 はた目から見ると美少女の集団だが、そこらの騎士団より強い最強の護衛だろう。
 王宮に辿り着き、社交界が行われるフロアに辿り着くと既に多くの貴族たちが集まっていた。
 ドゲザーヌ公爵家は王国の有数の名門だ。フランと顔を繋ぎたいと多くの貴族の子息や令嬢が集まり、フランもまたコトトを紹介しながらも優しげな佇まいで応対し、朗らかな笑みを浮かべる。
 しかし、公爵家であり麗しき美貌を持っていたフランは数多くの貴族たちの応対に気疲れし、集まった令嬢や子息たちに一言断ってその場を離れ、一休みするべくベランダに出た時にまた一つ彼女を処刑に導くフラグが立った。

「おおっとぉ、これはこれはフラン様ではありませんか。ご機嫌麗しゅう。ぐっふっふ」
「貴方様は……アックダイカン子爵。御機嫌よう」
「おや、そちらの子はもしや……ぐふふ、妹様かな?」
「はい。この度デビューすることになりましたコトトと申します」
「コトト・ドゲザーヌと申します。アックダイカン子爵様。宜しくお願いします」

 コトトは一目から見る悪人面なアックダイカン子爵を前にし、一瞬眉をしかめるも直ぐに体裁を整えてレディーらしく一礼する。アックダイカン子爵も腐っても貴族か、礼儀正しく礼を返す。

「所でフラン様。少々お願いしたい事がありまして」
「お願い、ですか?」
「ええ。ドゲザーヌ公爵領が所有している我がアックダイカン子爵領との境目にある森を少々お借りいただけないかと。何もない森ですよね。ほんの少しお貸しいただけたらと」
「……ああ。あの森ですね。ええ、少しなら――」
「お姉様。駄目ですわ」

 少しなら大丈夫と言いかけたフランを、コトトがさえぎるように言葉を被せるとアックダイカン子爵は悪人面を更に悪く威圧する様にコトトをにらみつけるが、猟兵であるコトトにとってはどこ吹く風。全く気にせずに何がダメなのかきちんとフランへ伝える。

「少しの間ってどれくらいの期間か書類に起こさないとダメですの。それにこういうのはお姉様ではなくて、お父様に伝えるべきですわ。……と言ってもアックダイカン子爵様の事ですから、お父様には断られたのでしょう」
「お父様が断った?」
「ええ。お姉様のお友達が色々と教えてくださったの。もう出てきていいわよ」

 コトトが手を叩くのを合図に、夜月・クリスタ(怪盗フォックステール・f13971)がその場に降り立つ。闖入者の登場にフランはまぁと喜びの手を叩き、対するアックダイカンは驚きのあまり後ずさる。護衛として付いてきている面々はあらかじめ聞いているので彼女がフロアの人らに見つからない様にカバーしていた。

「待ちくたびれたよ。フラン、御機嫌よう。そのドレス姿も綺麗だね」
「ありがとうクリスタ。貴方もドレスを着たらいいのに。きっと似合うわ」
「僕が着るとしたら君の家のパーティー位だよ。それはそれとして、これがアックダイカン子爵が君のお父様に断られた原因だよ」

 そういうと夜月は数枚の書類をフランへと手渡す。その書類の中身に気づいたアックダイカンは書類を奪うべく手を伸ばすがそれは護衛であるキリカの手によって遮られる。

「未婚の女性に手を触れるのはいかがなものかと」
「くっ! どけ護衛風情が!」
「護衛なのでどけません」

 淡々と告げるキリカ。その間にもフランは書類を見続け、驚きのあまり目を見開く。

「アックダイカン子爵様……あなたまさか……あの森で麻薬を育てていたの!?」
「そ、それはその」
「ダメよ。麻薬は王国法で専用の薬師しか育ててはいけないことになっているわ。もう勝手に育てていたなんて……」

 そう。これがフランを断罪に導くフラグ。アックダイカンの話に何の疑いもなく許可をだし、ドゲザーヌ公爵領で麻薬を育て、流して私腹を肥やし発覚する寸前で全てをドゲザーヌ公爵家に押し付けて一家諸共断罪となるはずだったのだ。
 だがその悪事はコトトとフランの友人役として表れた怪盗である夜月によって未然に防がれた。
 未だ暴れるアックダイカン子爵をキリカが太った腹に一撃を与え、美食姫が食べ終わったケーキ皿で一撃、おまけに弥久が脛をしたたかに打ち据えて轟沈させる。

「愚物が。今後お嬢様に近づけると思うなよ。もし、お嬢様に不埒な視線を向けるならば即刻切り落とすぞ」
「キリカ、聞こえてませんわ」

 コトトが苦笑いしつつ、衛兵にアックダイカンを引き渡す。
 こうして多くのフランを陥れる断罪フラグが粉々に粉砕され、社交界は無事終わりを告げようとしたその時、急に空が暗くなったのだ。

「クリアなどさせぬ! 全ては欲望のままに!」
「キャァァア! 変態ーーー!!」

 パンツを被った変態が落ちてきた。否、白ブーメランパンツ過激派怪人達が空から落ちてきたのだ。
 あまりの衝撃的な光景にフランは顔を真っ赤にし頭を押さえてみない様に片隅で振るえる。
 ゲームのキャラとは言え、こんな変態的な奴を見せ続けるわけにはいかない。確かにフランは現実には存在しない。だが、彼女と触れ合った時に感じた温もりや優しさ、感情などは確かにそこにあった。
 それを踏みにじみるオブリビオンは許すわけにはいかない。

 白パンツを手に猟兵達に迫る白ブーメランパンツ過激派怪人に対し、その場に急遽現れた秋山、白峰、京奈院、オルとセルマ。そして元から護衛にいたキリカ、弥久と妹役のコトト、友人の夜月が一斉に武器を構える。
 そして一斉射撃。
 京奈院の弾丸が、弥久の人狼咆哮が、セルマの氷の狙撃手が、オルの先制攻撃が、キリカの苦痛の嵐が、白峰の集霊斬が、コトトのはなことばが、夜月のフォックスファイアが、秋山の拳が白ブーメランパンツ過激派怪人をぶちのめす。
 フランに感情移入した者が多かったのだろう。一斉に猛攻撃を受けた白ブーメランパンツ過激派怪人達は直ぐにその姿を消滅させ、フランの目に触れることなく消えて行った。汚物は消毒である。

 かくして、フラン・ドゲザーヌを陥れる要因を全て排除した猟兵達はフランをしっかりとケアした後、惜しみながらもゲームの世界から出ていく。まだ戦争が始まったばかりだ。やることが多いが、内心ひっそりとフランの幸せを祈る猟兵達であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月04日


挿絵イラスト