バトルオブフラワーズ⑤〜ゴッドスピード・ハイウェイ
●ゴッドスピード・ハイウェイ
夜景煌めくサイバーシティのハイウェイを、流線型のマシンが駆け抜ける。
高層ビルを背景に、発光する道路照明が後ろへ流れ、幾つものマシンが勢いよく急カーブを曲がり切る。デッドヒートを繰り広げるマシン同士がぶつかり合い、クラッシュした車体がハイウェイの壁に激突して爆発した。
一位を争う猛者達は、脱落者など気にも留めない。
大きく弧を描くトンネルを潜り、直線で鎬を削り、崩れた高架を飛び越える。
命知らずが駆け抜ける、苛烈なるミッドナイトレース。
それこそが『ゴッドスピード・ハイウェイ』である。
●グリモアベースにて
「夜のサイバーシティを舞台にバトルレースが幕を開ける。マシンのセッティングは無限大。超高速マシンでハイウェイを駆け抜けろ……的な世界観らしく」
化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)がパッケージ裏みたいな文句を読んで、手にした本から視線を上げた。
「コンピューターゲームみたいですけれど、これもバトルオブフラワーズの戦いです」
キマイラフューチャーで勃発した大戦、バトルオブフラワーズ。その渦中にある『ザ・ステージ』と呼ばれる戦場では、特殊ルールによってオブリビオンと戦うことが求められている。今回は、ゲームのような世界が戦いの舞台だ。
「内容は、そのものずばりレースゲームですね。ゲームの中に入って、レーシングマシンを操縦し、ゴール出来れば勝利なのですが……途中でオブリビオンの妨害があるのは間違いありません」
一つのレースは、コース一周分。一周がそれなりに長く、幾つかの障害もある。
「大きなカーブを描くトンネルや、道路が崩れていてジャンプで乗り越える地点、頭上から滝のように水が降ってきて滑りやすい地点などがあるようで……」
レース開始時点の対戦相手として、CPU操作によるマシンが複数機用意される。それらは大した脅威ではないが、プレイヤーである猟兵を妨害して来るだろう。
「上位を取るのではなく、ゴールがクリア条件になっているのは、このゲームが敵をクラッシュさせることを推奨しているためです……敵がいなくなれば独走ですものね……」
無事にゴールするだけでもクリアと言える。
「CPU機とバトルレースを行い、ゴールを目指して走っていると、やがてオブリビオンの集団が妨害してくるはずです」
レースの途中から現れるオブリビオンもまたマシンに乗り、猟兵達をゴールさせまいと、攻撃や妨害を仕掛けてくる。クラッシュさせに来ると言ってもいい。
「それらを掻い潜り、ゴールできれば勝利となります。あ、走りながらオブリビオンのマシンを撃破してしまっても良いみたいで……寧ろその方が効率的のような……?」
CPU機ともどもクラッシュさせてしまえば、競争相手も減るという寸法である。
「猟兵の皆さんは味方機扱いなので、ゲーム上、お互いに邪魔したりは出来ないようです。プラスになるような支援は可能なので、工夫のしどころですね」
協力プレイでレースを有利に運ぶこともできるだろう。
「マシンは流線型の基本タイプを選択できるほか、自作をすることも可能なようです。自分専用のマシンを作って挑めば、レースを有利に運べるかも知れません」
メイキングの自由度は高く、普段乗っている愛機を再現することもできそうだ。但し、基本的にはコースに沿って走るものであることが求められる。浮遊していても良いが、空を飛んでゴールへ一直線……などはゲームの性質上、不可能となる。
「これもバトルオブフラワーズの戦いを左右する大事な一戦。どうか皆さんの力で勝利を掴み取ってください。宜しくお願いします」
説明を終えると、那由他は猟兵達に深く一礼した。
相馬燈
●概要と戦場
こちらは『⑤ザ・ゲームステージ』のシナリオになります。
レーシングゲームの世界に入り込み、CPUマシンやオブリビオン機とのレースバトルに勝利しましょう。コースは未来都市の街を背景とした夜のハイウェイです。
●レースのルール
1レースはコース1周分。その代わりコース自体は長めです。
まず複数のCPU機とのレースがスタートします。CPU機は手強くはありません。
レースを進めていくと、途中からオブリビオンが集団で妨害して来ます。このオブリビオンの妨害を搔い潜り、見事ゴールできれば成功となります。
オブリビオンの集団が乗るマシンには偽パトカータイプやピックアップトラックタイプなどがあり、荷台からタイヤをごろごろ転がしてきたり投げたり、一方通行の標識を幾つも地面に突き立てるなどの攻撃をしてきます。
皆さんが操縦するマシンは好きにメイキング可能ですが、ゲームシステム上、コースに沿って走り、レースが成立する機体であることが求められます(巨大ロボでコースを滅茶苦茶に破壊しながら、とかは不可能という感じです)。
●共闘について
仲間と一緒にレースに参加するのも勿論オーケーです(一緒のマシンに乗り込んだりとかも)。その場合は、お相手の方のお名前や所属名をプレイングに記載して頂けると助かります。
猟兵への攻撃や妨害はできませんが、プラスになるような支援は概ね可能です。
尚、ご参加頂いた人数によっては、複数人纏めてリプレイをお返しすることも考えられますので、ご了承下さい。
以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『交通トリオ』
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POW : 一方通行怪人・ウェポン
【一方通行兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : タイヤ怪人・ジェノサイド
【タイヤ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 三角コーン怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【三角コーン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
高柳・源三郎
「わしは車は運転できんから【たぬき人形たろう】の能力の有る車で操作は人形と同じにしよう。これなら大丈夫じゃろう。」ゴールを目指すとこを最優先して、襲いかかる敵はユーベルコード【狂乱・狸舞】でたろう車の武器を全展開して身を守る。
リリィ・アークレイズ
【POW】
コンピューターゲームなんてやったこと無ェけどよ
アクセル捻ってぶっ飛ばすだけだろ?簡ッ単だな
難しい事考えなくて良いぜ
急カーブぅ?ジャンプ台ィ?
あのなァ…今更そんなモンでビビるかよ
…エンジンに爆弾でも積んでんなら話は別だけどな
さ、イカれたレースの始まりか!
まァ、クラッシュすんのはテメェらだけだけどな!
(真っ赤なバイクで爆走します
ウィリー、ドリフト何でもござれのめちゃくちゃ走行どんとこいです
右脚は機械なので軸にして無理矢理カーブもOK
身体に仕込んである銃達で敵を迎え撃ちます
大量の銃弾、手榴弾で無差別攻撃。味方へはしない…はず)
おっと悪ィな。手が滑ったぜ!
【連携、アドリブ大歓迎です】
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【SPD】(共闘・アドリブ可)
「レースゲームは得意なんだから」
メイキング:愛車Flying Broom GTRを模したバイク
役割:完走を目指す
■準備
[情報収集]と[ハッキング]を駆使しゲーム内のコースデータを保存
レース中はフォーカスに展開+インカムで弟と通信・共有
■作戦
[騎乗]技能を駆使しコース情報を基に的確なコース取りに腐心
コーナリングは[操縦]を駆使し減速を抑えて走行
交通トリオが出現したら相手はフォルセティ達に任せて
【ペガサスの翼】を発動し[ダッシュ&ジャンプ]で強硬突破する
それでも妨害してくる敵には[高速詠唱]による【ウィザード・ミサイル】で蹴散らしていく
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(共闘アドリブ可)
「カスタマイズはこんな感じかな」
Flying Broom GTSみたいなバイクにカスタムするよ!
フィオ姉ちゃんと参加。ボクはオブリビオン排除・妨害阻止を重視だね
【行動】()内は技能
転送してもらったコース情報を基に(騎乗&操縦)を使って走行
CPUのマシンは(ダッシュ)や(フェイント)で軽くかわすよ
オブリビオンの集団が現れてからが本番だよ
「フィオ姉ちゃん、ここはボクに任せてよね」
迫る敵にはタイヤを狙って(スナイパー)クラロ・デ・ルーナ
猟兵達を狙う攻撃にはグアルディアン・サトゥルノで防ぐんだ
そしてとどめはカラミダド・メテオーロでまとめて吹っ飛ばすよ!
リア・ファル
SPD
共闘アドリブ歓迎
【イ・ラプセル】
レースは久しぶりだね、今度は優勝を狙おうか
愛機制宙高速戦闘機『イルダーナ』を転写してエントリー
戦艦流のナビゲーション&操縦テクを見せてあげる
クロエさんをタンデムシートに乗せて発進
ディープアイズとハローワールドを起動して
コースの情報、敵の挙動を収集し妨害も躱す
「ゲームデータとしての情報に視聴覚情報もプラスして更新演算する!」
避けきれない分はクロエさんに伝えつつ対処は任せる
チャンスとみたらスリップストリームから
追い込みのカウンター
UC【五光の神速疾走】で勝負!
「ここだ! 最大船速で振り切る!」
上手く行ったら
「やっぱりイルダーナは最高だね!」
クロエ・ウィンタース
【イ・ラプセル】
レースか。リアの運転する車の後部に乗ろう
今回は相手の車に飛びついても戻れないだろう
足場が狭いが何とかしよう
>行動
【SPD】
基本はリアの護衛
オブリビオンの妨害が入るまではCPU機は放置
妨害が入ってきたら攻撃開始だ
車がよけきれないものに対しては俺が対応する。
飛んでくるものは【見切り】で見切って【カウンター】。
刀や苦無で叩き落す。リア自身を狙うものを優先して落とすぞ
寄ってくる車があれば
UC【無銘・参】で【鎧無視攻撃】をブースト
タイヤ、本体、ドライバー問わず叩きやすいところを
真っ二つに叩き斬り後方へ飛ばし後続車の障害物にするぞ
CPU機もこのタイミングで同様だ。精々障害物として利用しよう
●深紅の狂馬
「コンピューターゲームなんてやったこと無ェけどよ。アクセル捻ってぶっ飛ばすだけだろ?」
猟兵とCPUのマシンが唸りをあげるスターティンググリッド。その中央で、深紅に輝くレーシングバイクのハンドルを握り込みながらリリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)は不敵な笑みを浮かべる。
左右には金や銀に彩られた流線型のCPUマシンが並んでいるが、その中にあってリリィのカスタマイズ機は一際目を引くものだ。
周りのマシンにも負けずに豪快なエキゾースト音を響かせていると、目の前に架けられたスタートシグナルが点滅を始める。ゲームらしく視界にカウントダウンの数字が現れた。
3、
2、
1、
START!
「さ、イカれたレースの始まりだ! まァ、クラッシュすんのはテメェらだけだけどな!」
スロットルを全開にすると、鞭打たれたように機械の奔馬が爆進する。
「簡ッ単だな。難しい事考えなくて良いぜ!」
スピードメーターの針が一瞬も緩むことなく限界速度に近づいていく。
間もなく左を示す矢印の標示版が前方に見えてきた。最初のカーブだ。
リリィはそのままスピードを緩めることなくコーナーに進入した。左にハンドルを切りながら微塵の躊躇もなくハングオフ。車体を傾け、タイヤを滑らせながら力技のコーナーリングを披露する。
深紅のバイクが赤の軌跡を描いてハイウェイを疾走する。
●イルダーナ、発進
「レースは久しぶりだね、今度は優勝を狙おうか」
スタートダッシュを決めたリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が、制宙高速戦闘機『イルダーナ』のエンジンを唸らせる。量産型艦載機をカスタマイズしたその機体は、推進機関と電脳機構と二輪を追加したワンオフ機だ。
スターティンググリッドの時点で最前列(ポールポジション)を獲得していたリアは、他者の追随を許さない程の速さでコースを駆け抜ける。
「このコース、思ったより走りやすいかも」
目元に装着した不可視の皮膜片――ARディスプレイ『ディープアイズ』には今、コースの全体マップが表示されていた。ヘッドセット『ハローワールド』がコース内の情報を収集し続け、随時マップを補足している。
――ゲームデータとしての情報に視聴覚情報もプラスして更新演算する!
自機の現在位置や敵味方の数まで色分けして示したコースマップは、無論、デフォルトではない。リアが超凡なハッキング技術を駆使してゲームシステムから情報を拝借、再構築した特別性だ。
「クロエさん、大丈夫?」
インを攻めた見事なコーナーリングでカーブを曲がり、加速しながら、リアはタンデムシートに乗ったクロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)に声をかけた。
「問題ない」
敵の出現に警戒しながら、クロエは淡々とリアに応じた。タンデムとは言え、刀を振るうのに不自由はないだろう。何しろイルダーナに乗せてもらうのはこれが初めてではない。
腰の辺りで雑に括った銀髪が向かい風を受けて靡く。オブリビオンが出現する気配はまだなく、クロエには背景の摩天楼、サイバーシティを眺める余裕さえあった。
(「レースゲーム……このような世界もあるものか」)
トンネルに入ると、道路照明が流星のように後方へ流れていく。
クロエはちらと後ろを振り向いて呟いた。
「CPUとやらの相手はするまでもなさそうだな」
すぐ後ろを猛追してきているのは猟兵の駆るバイクだ。CPU機はその更に後方にいる。
ここまではまだ小手調べ、真の戦いはここからだろう。
「戦艦流のナビゲーション&操縦テクを見せてあげる」
上機嫌にリアが言い、スロットルを開いて更に機体を加速させた。
●空飛ぶ箒の名のもとに
流線型の機体を美しく輝かせながら『Flying Broom GTR』が疾走する。ハンドルを握るフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)は速度を上げながら頷いた。
(「上手く行ったみたいね。これさえあれば」)
戦闘用デバイス――VF-1オートフォーカスに映し出されているのは、駆け抜けるべきコースの詳細な全体図だ。フィオリナはその卓越したハッキング技術によって、レース直前、一種のデバッグモードへの侵入に成功していた。
「遅れないでね、フォルセティ」
蒼白く発光する夜のハイウェイを駆け抜けながら、フィオリナが追随する弟に声をかけた。
高機能インカム『アポロンの髪飾り』も良好に機能しているらしく、双方向通話・通信を実現する羽根付きブローチ型のその装置から、フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)の声がクリアに届く。
「うん、大丈夫。ちゃんとカスタマイズもできたみたいだし」
フォルセティが駆るのはFlying Broom GTS――Vターボ搭載により高速走行が可能な流線型のバイクである。
姉のハッキングの成果により、インカムを通してフォルセティの視界斜め上にもコースマップと現在位置が表示されていた。加えて味方機とCPU機を表す光点まで映し出されているのだから、有利なのは言うまでもない。
「後ろに付いてきてるね……でも、させないよ」
緩やかな右カーブを曲がろうとした時、金色のCPUマシンがアウトコースから急激に速度を上げ、横並びのサイド・バイ・サイドで車体をぶつけようと迫ってきた。フォルセティはコーナーリングしながらも急加速。フェイントを喰った金色の敵機が後続車に激突して脱落する。
「甘い甘い、そんなんじゃボクには勝てないよ」
「ゴールするまで気を抜いちゃ駄目よ」
この手のレースの怖さを知るフォルセティは、弟の活躍をちらと確認した後、見事なコース取りでハンドルを切ってハングオフ、速度を殺さずコーナーを曲がり切る。
必ずゴールしてみせる――その意気を漲らせながら、しかし冷静にコースを見極める。
「レースゲームは得意なんだから」
●たぬき人形たろう車、出陣
蒼白く発光するサイバーハイウェイを、たぬきが疾走する。
……もとい、たぬきの描かれたレーシングカーが駆け抜ける。
「わし、車は運転できんからな」
心なしか赤らんだ顔の高柳・源三郎が、さらっと恐ろしいことを口にする。彼の収まる運転席、否、操縦席は、通常のものとは明らかに一線を画す代物だった。見たところハンドルはなく、アクセルがあるのかどうかさえ怪しい。
「操作は人形と同じにしたし、まあこの分だと大丈夫じゃろう」
それもその筈、源三郎がいま猛然と疾駆させているのは、普段から用いている『たぬき人形たろう』の操作法そのままで動かせる特別仕様なのだ。外見は古めの乗用車っぽいが、車体に『たろう』の絵が派手に描かれた特別製である(絵は気付いたら勝手に描かれていた)。
「ゴールせんことにはどうにもならんからな。行くぞ。たろうよ」
源三郎が操縦席をぽんぽんと叩くと、たぬき印のレーシングカーが見る見る加速。
追突してこようとするCPU車をまるで蛇行するような動きで避ける。
……酔ってはいないと信じたい。
●猟兵VSオブリビオン
「現れたね。ちょっと数が多いかな……!」
幾つかのコーナーを曲がり、ストレートを駆け抜け、トンネルを潜り抜けた先で事態に動きがあった。リアのARディスプレイ『ディープアイズ』が表示するマップ上に、突如として敵機を示すマーカーが無数に浮かび上がったのだ。
『猟兵達を発見、これより妨害を開始する!』
「来たか」
無論、タンデム席に乗るクロエも、前後方に出現した敵機を視認していた。
前方には荷台に怪人を乗せたピックアップトラックタイプ。
後方から迫るのはサイレンを唸らせ、パトライトを点灯させたパトカータイプの群れだ。
「だいぶ近付かれてるね。避けきれない分は任せたよ」
「承知した。……いざ」
澄んだ蒼の瞳に迫る敵機を映してクロエが応える。
『これを転がすんだナ! 猟兵どもをクラッシュさせるんだナ!』
前方に並んだピックアップトラックの荷台で、バイク頭の怪人が間断なくタイヤを転がしてくる。ジグザグ走行でそれを避けるリア。尚も妨害するように転がってくる漆黒の輪に何かが突き立ち、タイヤが風船のように破裂した。
暗器「翠尖」。
クロエが投じた苦無だ。
「軌道は単純だな。対処しやすくていい」
タイヤの転がる方向を完全に見切ったクロエが、必要最低限の苦無の投射で障害物を効率的に排除し、あまつさえ荷台に乗った怪人達をも貫き倒した。
続けて鮮やかに二刀を抜刀したクロエが、後方から迫るパトカータイプを振り向く。
『ここから先は地獄への一方通行だ! これでも喰らえ!』
パトカータイプを運転する一方通行怪人が叫ぶと、虚空に幾つもの交通標識が浮かび上がった。槍と化したそれらがリアとクロエを串刺しにすべく高速で飛来する。
「あれはちょっとまずいかも」
「リアは運転に集中していてくれ。この程度、何とでもなる」
夜の闇に二刀の剣閃が輝いた。
飛んでくる標識の軌道を読み切ったクロエが間合いに入ったものから妖刀と脇差で切り払う。パトライトを輝かせて尚もイルダーナに迫ってくるマシンが左右に並び挟撃してくるが、
「――みっつ」
無銘・参。
『黒』と称される妖刀が横に並んだマシンを一刀のもとに叩き斬り、もう片方の手に握られた黒鞘の脇差『白仙』が運転席の怪人を容赦なく刺し貫いていた。
打ち続くブーストした妖刀の一閃が、蛮勇振り絞って並走してきた敵機を更に両断する。
まるで玩具を斬るような容易さで断たれた機体が真っ二つになりながら転がり、後方の敵機が残骸に巻き込まれて次々にクラッシュする。
「邪魔者たち……これほどの数がいるなんてね」
フィオリナのVF-1オートフォーカスもまた、突如として前後方に出現した敵影を捉えていた。敵機の群れは、猟兵達の機体を、前と後ろから挟むような形で走行している。さながら前方と後方から圧迫してくる数の壁だ。
「フィオ姉ちゃん、ここはボクに任せてよね」
「ええ、しっかりお願いね」
インカムを通してフォルセティとフィオリナが短くやり取りを交わす。
目の前を走るピックアップトラックの荷台に、タイヤ頭の怪人が乗っていた。
『ここから先には行かせないんだナ! このタイヤが当たればイチコロなんだナ!』
荷台に無尽蔵に出現するタイヤを一つ一つ投げてくる辺り間抜けな怪人だが、それが何台も、となると侮りがたい。
フィオリナはFlying Broom GTRのスロットルを開いて加速しながら機体を左に流した。
「ボクらの邪魔はさせないよ。放て!!」
間髪入れずにフォルセティのFlying Broom GTSから閃光が迸る。眩い光と衝撃波を生じさせるエネルギー波の連射が前方から転がってくるタイヤを次々に破裂させ、更にはピックアップトラックのタイヤさえも正確に狙い撃ってスピンさせた。
クラッシュした車体が左右の壁にぶつかり爆炎を上げ、フィオリナが構わず駆け抜ける。
やがて目の前の道が山なりに傾斜するポイントに至った。
その向こうには崩れた高架が口を開けており、少しでもスピードを緩めたり妨害に遭えばサイバーシティの奈落に真っ逆さまだ。もちろんここを逃さぬ怪人ではない。
『お前らは奈落行きだ! 飛び越えさせはせんぞ!』
追走するパトカータイプのハンドルを握る一方通行怪人が、虚空に交通標識を展開。
槍と化した標識が今にもジャンプしようとするフィオリナの背後から迫った。
「雷光を運べ、ペガサスの翼よ!」
フィオリナの声に呼応してFlying Broom GTRが変形を果たしたのは、まさにその時だ。爆発的に速度を上げて機体が空高く飛び上がる。
「暁闇を統べる星刻の大神。七界を照らすは虹鱗の彩光」
続いて跳躍したフォルセティが詠唱し、二人を守るように虹色に輝く魔法の盾が出現した。
降り注ぐ一方通行の交通標識が纏めて防がれ、弾け飛ぶ。
フィオリナもただ守られているだけではない。愛機を操りながら、空中で唇を動かし高速詠唱。180を超えるウィザード・ミサイルが機体から一斉に射出され、追随する敵マシンを空中で纏めて爆発炎上させる。
Flying Broom GTRとFlying Broom GTS――空飛ぶ箒の名を冠する二台が宙を飛び、続けざまに着地。ゴールに向かってひた走る。
「ジャンプ台ィ? 今更そんなモンでビビるかよ」
リリィもアクセル全開で傾斜を駆け抜け、ウィリー気味にバイクを宙に躍らせる。
危うげなく着地した真紅の二輪を、パトライトを光らせながらオブリビオンのマシンが猛追してきた。
「そうでなくちゃな」
サイドミラーで確認すると、リリィは不敵に口端を歪めた。
橙色のダブルバレルショットガンを抜くと後方めがけて連続射撃。上方から体当たりを仕掛けようとしたパトカータイプ数台が空中で一挙に爆散し、残骸にぶち当たった後続車数台がクラッシュする。
後方から猛スピードで走るパトカータイプの群れをミラーで確認すると、リリィは右前腕内側から赤い自動式拳銃を取り出した。早打ちに特化したRED PEPPER――左手でそれを掴むと、振り向いてタイヤや運転席を狙いクイックショット。敵機がバランスを崩してコースアウトし、次々に脱落する。
と、クラッシュを免れたパトカータイプがスピードを上げて左右から挟撃してきた。
「喰らいな」
リリィは左前腕内側からも黒い自動式拳銃を射出。
左手にRED PEPPER、右手にBLACK ONION――車体を両脚で強く挟み、両側を併走する敵マシンの運転席に容赦なく銃弾を撃ち込んだ。
「おお、派手にやっておるな」
源三郎が操るたぬき人形たろう車も、他の猟兵達と共に、オブリビオンの熾烈な攻撃を避けながら疾走を続けていた。
やはり普段から扱い慣れている『たろう』と操縦系統を一にしているのが大きい。手足のように動くマシンが前方から転がってくるタイヤを蛇行しながらスレスレでかわし、路面の不陸を利用してジャンプまでしてみせた。
『なんだあのたぬきは……車の動きじゃないぞ……!』
『いや、酔ってないかあれ……酔っぱらい運転じゃないか……』
『とにかく囲め、無理やりコースアウトさせろ!』
パトカータイプのハンドルを握る一方通行怪人が驚愕し、タイヤ怪人が助手席で首をひねり、後部座席に座る三角コーン怪人が天井に頭をガツガツ当てながら叫ぶ。言われなくてもと複数のパトカータイプが左右と後方から、たろう車に迫った。
「残念ながら休肝日じゃ!!」
源三郎の声と共に、たろう車のボディ各所に隠された武器口が一斉に開いた。暗器の鉄杭が散弾さながらに射出され、前後方のマシンに突き刺さって大破させる。どかんと音を立てて開いたトランクからも撒菱その他の障害物がバラバラと転がり出て路面に撒き散らされる。
追いかけるオブリビオンのマシンが次々にタイヤをパンクさせ、スリップして互いにぶつかりあい、惨憺たる有様を呈した。
●激走の果てへ
『こうなったら捨て身だ! 総員、何としても奴らのゴールを阻め!』
猟兵達の猛反撃により、オブリビオンのマシンも急激にその数を減らしていく。だが追い詰められた怪人達は、事ここに至って、残るピックアップトラックとパトカータイプを総動員して体当たり攻撃を仕掛けてきた。
ゴールは間近、まさにこれが最後の関門だ。
猛追するパトカータイプは思いのほか速く、誰かが止める必要がある。
「しつこい奴らじゃなぁ」
源三郎が危うげに蛇行しながら撒菱のようなものを撒き散らして多くをコースアウトさせる。
「面白ぇ」
頭上から滝のように降る水に髪と体を濡らしながらリリィは凶悪に笑った。
急加速して左カーブに突っ込むと、車体を傾けながら速度を上げてリアタイヤをロック。濡れた路面をタイヤが滑る。リリィは機械の脚を地面に突き立て、衝撃に耐えながら再びアクセルを開いた。真紅の機体が路面を離れて弧を描く。
360度急回転(アクセルターン)。
サイボーグであるリリィによる、恐らくはゲーム世界ならではの離れ業だ。
まるでアクションムービーさながらのスローモーションのような一瞬。
雫が撒き散らされ、回転する車体の上でリリィの赤の自動拳銃が火を噴いた。
銃弾が後方から迫る敵マシンのフロントタイヤと運転席の怪人を撃ち抜く。
着地したリリィが再びフルスロットルで失った速度を取り返しながら、右太腿から手榴弾を転がして追い打ちをかけ、
「オレの前に出るんじゃねぇ」
前方のピックアップトラックに散弾を浴びせかけた。
「荷台の怪人は良い的だな。隠れる場所さえないとは」
目の前を阻むように疾走するピックアップトラックの荷台に、既に怪人の姿はなかった。クロエが投げた苦無で次々に串刺しにされ、消滅していたからだ。
「これで邪魔者は消えたか。存分にやってくれ」
「了解! 最大船速で振り切る!」
イルダーナが、ピックアップトラックの後方に入ることで空気抵抗を低減させ、速度を上げる。
『なにィ!? スリップストリームだと……!?』
運転席の一方通行怪人が気付いて急ブレーキをかけたが、もう遅い。
「突撃形態(アタックモード)へ移行。いくよ、イルダーナ!」
変形し猛加速したイルダーナが追越し(オーバーテイク)を果たして爆走する。
それこそは卓越した操縦技術と五光の神速疾走(ブリューナク)の賜物。
「……相変わらず大したものだな」
「やっぱりイルダーナは最高だね!」
タンデム席でクロエが感心し、リアが快哉を叫ぶ。
「フォルセティ」
フィオリナがインカムで弟に好機を告げる。彼女の駆るFlying Broom GTRも最後のストレートに入り、最早、ゴール目指してひた走っていた。
「とどめだよ!」
後方を疾走するフォルセティが聖箒ソル・アトゥースを出現させ、掴み、振るう。サイバーシティの上空に現れた灼熱の巨大隕石が猟兵達の背後から迫る敵マシンを巻き込み、木っ端微塵に吹き飛ばした。
味方機には余波は行かないし、コースが破壊されることも勿論ない。
遂にオブリビオンが壊滅し、猟兵達が一斉にラストスパートをかける。
リアとクロエの乗るイルダーナと、フィオリナのFlying Broom GTRが殆ど同時にゴールに滑り込み、その後にフォルセティのFlying Broom GTS、最後まで敵を足止めしてみせたリリィの深紅のバイクと、源三郎のたぬき人形たろう車がそれに続いた。
無論、順位がどうという話ではない。
レースに参加した猟兵達全員がゲームをクリアし、見事、勝利を収めたのである。
成功
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