バトルオブフラワーズ③〜決戦、八八絶対防衛線
●幻獣は踊る、されど怯まず
「この緊急事態の中、集まって貰って本当助かる」
ありがとう、と虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)は猟兵達に礼を述べた。
グリモアベースの仮設作戦室、既に『バトルオブフラワーズ』――キマイラフューチャーの命運を賭けた戦いは、至る所で展開されており、志郎の予知もそれに関するものだった。
「件の戦争だが、俺が視た戦場となる場所はここだ」
志郎が背面のスクリーンを点灯、そこに映し出されたのはがらんとした軍事基地めいた建物。
「第八八絶対防衛線、と呼ばれているらしい。入口の看板にそう書いてある」
いきなり看板のアップがスクリーンに映されて。基地めいたその建物の周りは市街地の様であるが、映し出された映像からは少なくとも人影が見当たらない。無人なのだろうか?
「そうだ。そして皆にはここを守ってほしいんだ。ただ相手が厄介でな……。」
続いてスクリーンに映し出された映像は、翡翠色の巨大な人型マシンだった。スラリと伸びた一枚装甲をブーツの様に履きこなし、鋭いヒールが一歩歩く度に地面を抉る。両の腕は極端に肥大化して先端に爪を伸ばし、青いドレススカートの様な装甲板が前進と共にヒラヒラと上下する。一見優雅なこのマシンこそが、今回最大の敵だった。
●翡翠仮面ジェイダイト
「敵オブリビオンは翡翠葛、敵マシン名はジェイダイト。そして奴の攻撃手段が――」
映し出されたのはロボットの頭部。陶器の様に滑らかなフェイスマスクと、カメラを保護する分厚いゴーグル。頭頂にはピンと立った一対のアンテナが、そこから地面に向かって伸ばされたロングヘアの様な武装コンテナが目を引いた。
「このアンテナで支援メカを呼び出し、武装コンテナからは支援攻撃兵装を出したり、更には敵の――俺達のあらゆる攻撃を再現する事が出来る」
特に攻撃の再現は厄介だ。理論上どんな距離でも対等に戦う事が出来るのだから。正に一部の隙も無い、拠点攻略をするには十分な威力を誇るマシンが相手である。
「そこでだ。皆には先の基地でマシンを建造して搭乗し、こいつを迎え撃って欲しい」
志郎曰く、その基地には対抗するマシンを作る為の各種素材、機械部品、製造機材、生産ライン、武装、燃料、エネルギー、支援システム……。何だって揃っているという事だ。
「つまり大体何でも作れる。皆が使用するユーベルコードに合わせて、好きなマシンを作ってくれ」
形も機能も思うまま。だがそれだけで本当に奴を倒せるのかと、一人の猟兵が志郎に問う。その質問にニヤリと笑みを浮かべて、志郎は言葉を返した。
「単独では厳しいだろう。即席のフォーメーションでも難しいだろう。だから合体するんだ」
●炎の群となりて
「皆のマシンが完成したら、全ての力を結集し合体して巨大マシンになるんだ。奴を倒せるとしたらそれしか方法がない」
全てのマシンが合体すればその出力は相対する敵マシンを超え、攻撃の再現すら許さない、それを上回る怒涛の攻めを受ければただでは済むまい。
「ああそれと、どうやら生身で戦う事は出来ないルールらしい。マシンを使って上手く戦い抜いてくれ」
もし生身で戦って勝利出来ても、キマイラフューチャーらしく謎の力で【敗北した事になる】そうだ。
「その点特に気を付けてくれよな。ただその分、かなり自由にマシンを創造出来るようだ」
人型でも獣型でも乗物でも何でもいい。最後に皆のマシンの力を結集するという事さえ心に刻んでいれば、必ず奇跡は起こせる。
「それじゃよろしく頼む。後はルールに従って」
志郎はグリモアをかざして、がらんとした基地内部へ入口を繋げた。
「好きな様に暴れてくれ。期待してるぜ」
ブラツ
こんにちは、ブラツです。
キマイラフューチャーの危機、立ち向かえるのはそう、戦闘ロボだけです。
今回は特殊ルールがありますので、お手数ですが以下をご確認下さい。
●キョダイロボバトル
敗北条件:猟兵基地の破壊。
勝利条件:猟兵達は基地施設を利用して以下を行う。
『自分が乗るマシンを建造する』
『自分のマシンでオブリビオンマシンを迎撃する』
『上記と共に基地を守りきる』
以上です。『』内の条件を全て達成後、猟兵達のマシンが出そろった後にクライマックス合体戦闘シーンに突入します。
また各マシンの戦闘で仲間との連携作戦などがあれば、文頭に連携相手のIDを記載したり、連携チーム名を記載して下さい。
それではよろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『翡翠葛』
|
POW : 蹂躙せし牙デルフィニウム
自身の身長の2倍の【牙を持つ、仮面を被った巨大怪獣】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : 狂い躍るロベリア
見えない【高性能トラップを展開、誘導するよう攻撃】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ : 蒼き閃光ブルースター
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【その強化版で攻撃、追撃の蒼い閃光】が出現してそれを180秒封じる。
イラスト:佐倉弥美
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「宇冠・由」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●翡翠の仮面騎士
遠目に見えたその姿は、何も知らなければ美しき白い電気騎士の行軍といった所か。
しかしその実態はキマイラフューチャーにカタストロフを齎さんとする尖兵、世界の敵だ。
駆動部がギャリギャリと軋む音を響かせて、その動力部が悲鳴の様なけたたましい音を上げる。
翡翠の瞳を仮面に隠し、その心は何を思うか。否、心など無い。あるのは虚ろな破滅への祈り。
第八八絶対防衛線――会敵まで、あと僅か。
リステル・クローズエデン
かなりの強敵のようですね。
しかし、小細工なしで行きますか
作成
形状:黒い猛牛型
武装:インパクトホーン。前肩部と背中にミサイルポット追加
メカニック+怪力+武器改造+防具改造+世界知識+ハッキングで作成。
怪力は、部品が重い時用。
世界知識とハッキングは作成の為の機械知識と制御系作成に
戦闘
運転しながら、視力と見切りで情報収集。
拠点防御が目的だが、地形も利用してダッシュで追跡し
【我流闘法】グラップル+鎧砕き+吹き飛ばし+衝撃波+武器落とし
にて接近戦を行い時間稼ぎを行う。
「インパクトホーン!」
場合によっては、誘導弾にてミサイルの一斉発射で目潰しも。
相手の攻撃は武器受けとオーラ防御で防ぐ
●ブラックインパクト
「かなりの強敵のようですね」
リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は基地のメインモニタに映る白い巨人を見やり、その能力を見定めて決意した。
支援メカに攻撃端末、それにユーベルコードの複製による反撃。想定できる対抗手段は膨大だ。しかし。
「――小細工無しで行きますか」
小細工を弄する事で手段が限られるなら、あえてそれは捨てた上で真っ向勝負を仕掛けてやる。
正面火力と装甲を重視、そしてどんな装甲すら貫く鉾さえあれば少なくともその進軍は止められる。
そして色は……。
「敵は青のスカートに白の鎧、ですね」
だったら答えは一つだ。リステルは基地のマザーマシンへ必要な機体のデータ諸元を入力した。
DBS-031 ブラックタウロス
全長:11.6m
全高:5.2m
重量:105t
動力:KFG一型
装備:超硬合金製インパクトホーン1×2
肩部ミサイルポッド8×2
背部ミサイルポッド32×1
血のような赤いラインが全身を奔る漆黒の猛牛が基地のマザーマシンで組み上げられた。細部の武装はリステル自ら最終調整を。己の知識と力を総動員して算出したデータを基に、装備の取り付け角度や機体の骨格強度をチューニングする。
不意に基地内に警報が鳴り響く。ジェイダイトが遂に絶対防衛線の第一層に差し掛かったのだ。
「では、行きましょう」
この漆黒で、迫る白を塗り潰してやる為に。
――第八八絶対防衛線、第一層
足元に瓦礫を散らしながら、白と青の巨人が勇壮に前進する。しかしここから先は敵の、猟兵の巣窟。
「目標確認――行きます、全弾発射!」
がしゃんと黒い猛牛の両肩と背部のカバーが一斉に開き、秘められた暴力の牙が一斉に放たれる。それぞれが等速ではなく、ジェイダイトの回避を妨げんと緩急をつけた総勢48発のミサイルが、上方から、側方から、まるでジェイダイトを取り囲む様にその牙で喰らい付いた。
「やりました――!?」
濛々と立ち込める爆炎の中、しかしジェイダイトは健在だった――いつの間にか巨大な機械の巨獣に騎乗して。同じ様な仮面を被ったその巨獣は、群がるミサイルの雨からジェイダイトを守ったのか、全身がやけに煤けていた。
「出しましたね、ならば!」
ここからが本番。全身を奔る赤いエネルギーラインが煌めいて、黒い猛牛は巨獣とジェイダイト目掛けて果敢に突進した。拠点防御が目的だとしても、迫る敵を遠くから見ているだけなど出来る訳が無い!
猛牛目掛けて巨獣の目から稲妻の様な光線が発せられる。だが慣れぬ操縦とは言え自ら手掛けたこのマシン、早々にやられるものでは無い。リステルは迫る光線をすんでの所で見切り、強引なハンドリングで回避の着地と共に再び猛牛を敵目掛けて前進させた。その巨体が大地を揺らし、己に向けて放たれた光線が大地を灼く。
「センサーは健在、強化した甲斐がありました」
予め強化された猛牛の地力か、爆炎の中を漆黒が疾駆する。その頭上に聳える超鋼の一撃がジェイダイトを、巨獣を狙って鈍い光を放って。
「外しません――インパクトホーン!」
ブンと衝撃で吹き飛ばされた爆炎の中から、必殺の突進が巨獣の腹に風穴を開けた。
その衝撃でジェイダイトが巨獣の上から吹き飛ばされ、機械の巨獣は果敢なく地に伏せる。
「ここから先は、そう簡単には通しません」
嘶く猛牛の様な冷却音を轟かせて、ブラックタウロスは守護者の威容を燦然と示すのだった。
成功
🔵🔵🔴
伊美砂・アクアノート
【SPD】【オルタナティブ・ダブル】
合体ロボこそ漢のロマン…!
デュフフ、拙者、こういうのに乗ってみたかったんでゴザルよ…!
多脚多腕型の戦車を作成。複座のコックピットに分身して乗り込み、運転は冷静な女性人格のボクが、射撃管制はオタク気質な拙者が担当するでゴザルよ。射撃武器はガトリング砲、近接武器はパイルバンカー。無駄に狭くてレバーやボタンがいっぱいのコックピットで、あえて不便なアナログ手動操作で機体を操るでゴザル……ロマンは大事でゴザルからな!(力説) …欲を言えば無機質で事務口調な戦闘AI(美少女ボイス)にナビゲートして欲しかったでゴザルが。
各機体集合時は、「「ーーー合体!」」と叫ぶ
●HEATS
基地のメインモニタには支援メカを破壊されつつも尚、威圧的に市街地を前進するジェイダイトの姿が映し出されている。
振り落とされた巨獣を囮に、単騎で防衛線第一層を抜け出していたのだった。
薄暗い空模様の下、マシンが進む度に窓ガラスが割れ、道路にヒビが入り、無人でなければ大惨事が引き起こされていた事は想像に難くない。
「全く……ここまでお膳立てされている戦場というのも、気味が悪いわね」
(しかし……嫌いではない。お主もそうであろう?)
ノーコメント。伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)は昂った内なる己を制して、早々にマザーマシンへ機体諸元を入力した。
そうよ、シンプルに正面から戦うだけ――しかし敵の勢力は圧倒的、続々と各戦域に新たな敵が出現している現状は、正に分の悪い賭けだけどね。
そうこう思案している内に、伊美砂の機体が組みあがる。それは真紅の鬼めいた、異形のマシン。
JM441R レッドアーリマン
全長:16.2m
重量:122t
動力:KFG五型
装備:脚部フレキシブルスラスター6×4
220mm大型ガトリング砲1×4
対装甲炸裂突撃槍(火薬式)1×8
「デュフフ、拙者、こういうのに乗ってみたかったんでゴザルよ……!」
我が意を得たりと眼前のマシンに恍惚の表情を浮かべる【オルタナティブ・ダブル】――もう一人のイビサは、四脚四腕に火器を満載した異形のマシンにへばりつく。
「先ずは火力、それも面制圧を考えた――」
ストップ。今はいい、と伊美砂がイビサを制止する。さっさと乗り込んで迎え撃つよと、先に狭いコクピットへ自らの身体を押し込んだ。
「そうですな。敵は目前、迫る危機、そして」
合体ロボこそ漢のロマン……! イビサも続いてマシンへ乗り込む。
「ちょっと何これ! ボク聞いてないんだけど!」
明滅する計器にずらりと並ぶ大小さまざまなレバーとボタンが伊美砂を困惑させた。もうちょっとスマートな……。
「無駄に狭くてレバーやボタンがいっぱいのコックピットで、あえて不便なアナログ手動操作で機体を操るでゴザル……ロマンは大事でゴザルからな!」
ロマンなら仕方ない……って分かるかッ! 内心に怒りを秘めた伊美砂に、興奮した面持ちでイビサが続ける。
「……欲を言えば無機質で事務口調な戦闘AI(美少女ボイス)にナビゲートして欲しかったでゴザルが」
『おはようございます。当機の戦術支援AIアンリです。全システム戦闘モードへ移行完了、直ちに出撃します。よろしいですか?』
よろしいですとも! キタコレ何だか行ける気がする! 鼻息荒くイビサは全兵装のセーフティを外しながら、開いた天蓋から飛び立つ己のマシンの雄姿に心を躍らせた。
――第八八絶対防衛線、第二層
黙々と破壊と前進を続けるジェイダイト。行く手を阻むものが無い静寂の中、ひたすら機械の駆動音だけが場に響き渡る。
「ヒャッハアァァァァ! ターゲットインサイト! 消し飛べよやぁぁぁぁ!!!!」
そこへ突如飛来する真紅の嵐、ジェイダイトの頭上へ無数の弾丸が空を裂く音と共に、一斉に放たれた。炸裂する火線を避けようと、ジェイダイトは前進を止め、跳ねる様にアーリマンと距離を取る。
「4番スラスター調整プラス5°、姿勢制御、目標を正面に70°を指定って――ああもう!」
『支援します。ジャイロ調整、角度制御計算をプリセット』
「助かる!」
頭上の真紅――アーリマンは4本の脚部を広げスラスターを展開、それをコマの様に回転させながら不規則な機動でジェイダイトへ迅速に迫りつつあった。
そしてアーリマンの複座型コクピットは喧騒に包まれながらも、捉えたジェイダイトを離さないと繊細なコントロールが続けられていた。
「さあ、ここから先は一歩も通しませんぞっ――と、何ですと!?」
コクピット内に響き渡る警告音、レーダーには反応も無い。モニタをよく見ると、不可視の攻撃端末が迎撃の光条をアーリマンへ向けて放射し続けているようだ。
「姿が見えないんじゃどう避ければ!」
「私にいい考えがあるのでござるよ、まあ見たまえ」
光条を避ける様にフラフラと着地したアーリマン。蜘蛛の様にその脚を地面に広げて、その先端には鋭いパイルバンカーの矛先が鈍く煌めく。
『設置角計算完了、いつでもどうぞ』
「よろしい。では行きますぞ……炸裂!」
ガチャガチャとレバーを弄るイビサの叫びと共に、パイルバンカーが一斉に地面へ打ち付けられた。戦艦の装甲すらも打ち砕く強烈な一撃が、4本全て大地を穿つ。その勢いで巻き上げられた瓦礫が周囲を煙幕の様に覆い、不可視の攻撃端末はその軌道を露わにした。
『敵攻撃端末確認、シーカー起動。自動迎撃開始します』
アンリの無機質な声と共に、モニタに無数の赤い光点が映し出される。同時に4本の腕に備え付けられたガトリング砲が火を放ち、姿が捉えられた端末が即座に撃ち落とされた。
「なるほど――こっちも、前進するよ!」
「お任せいたす! ターゲット選定は拙者が!」
ガシャン、ガシャンと多脚が蠢く音に合わせて、迎撃の火線が空に走る。瞬く間に不可視の攻撃端末は無力化され、巻き上げられた噴煙に紛れてアーリマンはジェイダイトの喉元に迫っていた。
「目標零距離、バンカーセット」
『レディ、この距離では外せません』
「そういう事、全弾持っていくがいい!」
多脚の不整地踏破性能を舐めてはいけない。棒立ちで周辺警戒と端末制御を続けていたジェイダイトは、いきなり現れた異形のマシンの1対の脚に組み伏せられ、その胸元に6本の炸裂槍が突きつけられていた。
炸裂。胸元で爆ぜた圧倒的な暴力はその装甲を抉り――否、直前で爆ぜた装甲が、紙一重でその衝撃を受け切ったのだ。
「爆発反応装甲か……。敵ながらあっぱれ」
しかしその体で、これより先へ楽に進めると思うなよ? 正面装甲が剥がれ落ち、灰色の二次装甲が露わになったジェイダイトを見据えてイビサが呟く。
真紅のマシンはまさしく荒ぶる蜘蛛神の如き異様で、白いマシンに対峙するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アト・タウィル
巨大ロボ……ふふ、想像よりなかなかキレイな姿の方がお相手ですね
破壊するのが惜しい気もしますが、やらせていただきますよ
相手が支援兵器を展開するなら、それを邪魔することにしましょう
指示を出すのは電波のはず、ならばそれを掻き乱すことにしましょう
ふふ……音響と電波に、私の『狂気の行進曲』を上乗せし、判断を狂わせましょう
味方の耳に入っても問題はありません
狂気は正しく使えば、能力も引き出せます
……相手も同じものを使うならば、狂気を垣間見ることになるでしょう
ふふ……それに耐えられるでしょうか?
合体攻撃では、周りの人の攻撃をそっとひと押しするくらいの手助けを
テン・オクトー
年相応にマシンやロボに興味あり割とノリノリ。でも知識無し。
基本は【拠点防御】必要があれば移動して陽動や迎撃。ハッキング等苦手なので勢い感覚系気味行動。
ま、ましん?作戦もぶっ飛んでいるね。さすがキマイラフューチャー。色々出来るとはいえ勝手が分からないから攻撃のイメージを伝えて作ってもらうね。
【UC】の竜巻効果と【衝撃波】等を増幅させて攻防。移動速度にも竜巻の力を。鉤爪効果はロケット等に転用。ケットシーサイズの小さい機体ですばしっこく動くよ。【第六感】
ベースは何かしらの生き物を模した丸っこいフォルムで、節々のモールドは光ってるの。モールドはマシンのロマンだよ(マシンお任せ)
アドリブ連携いじり歓迎。
バロン・ゴウト
にゃ!自分で好きなロボットを作って乗れるのにゃ!?(わくわく)
とはいえ、浮かれてばかりもいられないのにゃ。
キマイラフューチャーを守るために、強いマシンを作るのにゃ!
作成
名前:グレートシトラス号
形状:金色のライオン型。高機動タイプ。
武装:両前脚にビームクロウ。両肩にはビームライフルを装備。
戦闘
「さあ、一緒に戦うのにゃ、グレートシトラス号!」
高機動を活かして敵に【ダッシュ】で近づき、敵に【2回攻撃】をし、敵を大きく【吹き飛ばし】にゃ。
敵が体制を立て直す前に両肩のビームライフルを叩きこむのにゃ!
他の人との連携、アドリブ大歓迎にゃ。
●Wild Flowers
来たるべき時に向けて、三者三葉の戦いが静かに動いていた。
「ま、ましん? 作戦もぶっ飛んでいるね。さすがキマイラフューチャー」
モニタに映る激しい戦闘を見ながら、テン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)は年相応にマシンやロボに興味あり割とノリノリだった。
「とはいえ、浮かれてばかりもいられないのにゃ。キマイラフューチャーを守るために、強いマシンを作るのにゃ!」
隣でバロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)も気合十分、いざ戦いへ向かわんと性能諸元をマザーマシンへ打ち込んでいる。
「巨大ロボ……ふふ、想像よりなかなかキレイな姿の方がお相手ですね。破壊するのが惜しい気もしますが、やらせていただきますよ」
ケットシーの二人を遠目にアト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)は、先に一人戦場へと足を向けた。マシンでの戦いは彼らがきっと上手くやるだろう。私はそれを助けられればと。
目指すは防衛線第三層、ジェイダイトが次に現れるとすれば、そこしかない。
JM402G グレートシトラス
全長:16.5m
全高:7.6m
重量:137t
動力:KFG三型
装備:アサルトブースター1×2
ストライクビームクロウ1×2
肩部ビームライフル1×2
JM223W テンキャスター
全長:10.5m
全高:4.6m
重量:87t
動力:KFG四型
装備:ビームチャクラム1×1
マギアリアクター1×1
勇壮に立ち上がったライオン型のグレートシトラス号が、黄金色に輝くたてがみ状の放熱板より灼熱の蒸気を放出する。高機動タイプらしく四肢には姿勢制御のスラスターが、背面には巨大な突撃用ブースターを。前脚には格闘用ビームクロウと、両肩にビームライフルを。迅速果敢に攻め立てる機械獅子がここに誕生した。
その傍らに丸まって眠る様な猫型の機動兵器がテンキャスター、呪力増幅機関を内蔵した魔導機械兵器だ。リベットが目立つ一見古めかしい機体だが、その全てが呪力発生装置、発現したユーベルコードを立体的に纏わせる恐るべき装置だった。自衛用に首輪型ビームチャクラム発生装置を備え付け、万全の態勢でジェイダイトを迎え撃たんとする。
「バロンさんのマシン、すっごく大きいねえ!」
「テンさんのマシンも丸モールドがカッコいいのにゃ!」
二人のケットシーが互いのマシンを褒めちぎる。これから背中を預けて共に戦う仲間同士、互いを知り、互いを称え、戦意を高めるのだ。
「それじゃ行くかにゃ」
スタッとコクピットへ飛び込んだバロン、インターフェイスは相棒のシトラス同様、騎乗した姿勢で戦える特別製だ。バロンを感知したグレートシトラスは、その顔に髭模様の起動印を浮かび上がらせて咆哮する。
「よし、ボクも行くよ!」
オクトーもコクピットへ潜り込みマシン起動のキーを捻る。それに合わせて伸びをする様な動作と共に、テンキャスターが立ち上がった。全身のリベットが一度伸縮し、その身に呪力のオーラを纏わせる。
二頭の鋼鉄の猛獣はそのまま基地のカタパルトへ爪先を掛けて、爆音と共に戦場へ射出されるのであった。さあ、戦いが始まる。
――第八八絶対防衛線、第三層
第二層での戦いは熾烈を極めた。破壊された正面装甲に無効化された攻撃端末、辛くも直撃を回避したジェイダイトは追撃を避けるべく、今度は自身が噴煙を纏って高空より第二層を離脱した。
そして敵の射程、索敵範囲から逃れたジェイダイトが迂回する様に辿り着いた場所が、絶対防衛線第三層であった。しかしそこは猟兵達の狩場、獲物の到着を待っていた猛獣の双眸が、ギラリと輝いた。
「来たにゃ――さあ、一緒に戦うのにゃ、グレートシトラス号!」
眼前に敵を捉えたグレートシトラスは咆哮を上げると共に背面のブースターを点火、音の壁を越えた金色の獣が猛然とジェイダイトに襲い掛かった。完全に不意を打たれたジェイダイトは突き出されたビームクロウの一撃を、スカートアーマーでもろに受けてしまう。
「まだまだ終わらないのにゃ! 続けて行くのにゃ!」
突撃した勢いをスラスターで相殺し空中で姿勢を整え、そのままブースターが再び火を噴く。ジェイダイトに体勢を立て直す間も与えず二撃目のビームクロウが、今度はそのどてっ腹目掛けて飛び込んだ。
しかし寸前で振り回されたジェイダイトの両腕が、直撃の手前で辛くも振り払う事に成功する。それでもビームクロウに乗せられた威力がジェイダイトを吹き飛ばし、その先には次の刺客――テンキャスターが待ち伏せていた。
「進路そのまま……捉えた!」
テンキャスターの全身からずらりと生えるリベットが輝き、呪力の粒子を解き放つ。【サモニング・ガイスト】――それは両腕に鉤爪の様な装備を形作り、同時に輝く竜巻の様な渦を無数、吹き飛ばされてきたジェイダイト目掛けて放った。
かろうじでスカートアーマー内のスラスターが姿勢を制御するも、崩された態勢のままではその解析も儘ならない。竜巻が下半身の装甲を抉る様に穿ち、続けて飛び出してきたテンキャスターの魔力の爪が、止めと言わんばかりにそれを引き剥がした。
「――狂気は正しく使えば、能力も引き出せます」
それは狂奔とも言うべき、圧倒的な野生の威力。アトの【狂気の行進曲】が、バロンとオクトーの精神を、マシンの力を増幅したからだ。
かつてビルだった瓦礫の上で『魔笛≪Guardian of the Gate≫』を奏でるアトは、祈りを込めて一心不乱に演奏する。力が欲しければくれてやらんと、力をかざすならば狂気を与えんと。
「さぁ進みましょう。進めばすべてがうまくいきます」
捻じれた音色が仲間には力を、敵には幻惑を与え――しかしながら、敵の力の源泉を探るジェイダイトは、その音色に気づいてしまった。
反撃の機会は不意に訪れた。狂気の音色を遮断すべく音響センサをカットしたジェイダイトはその発生源目掛け、両腕の爪の間より青い光弾を連射する。同時に周囲へ、気が狂いそうな不協和音を放出した。
「にゃ……。これは一体、何なのにゃ!?」
「ボクのマシンも様子がおかしいよ!」
それはマシンの運動系を阻害する信号だった。伝達系に介入し正しい動きをブロックする呪いの様な波動。更にアトへ直接撃ち込まれた青い光弾が、既に崩れていたビルの瓦礫を跡形も無く消し飛ばす。
「これは……まずいですね」
その攻撃をまともに受けて、崩れる瓦礫の波にのまれたアトは姿を消す。間一髪命拾いしたのだろう、マシンのモニタにはその生存を示す光点だけが煌々と輝いていた。
「このままじゃ……いけないにゃ!」
バロンはすかさず、グレートシトラスの両肩より迎撃のビームを放つ。アトへの追撃を止めさせなければ、そしてこの音を止めなければ自分達のマシンが危ない。ふらつくマシンから放たれた光条は、しかし空しくジェイダイトの装甲を掠めるにとどまる。そしてぎこちない動きの黄金の獅子を見やり、ジェイダイトは攻撃対象を変更した。
「今度はこっちに……来る気だにゃ」
光弾を止め爪を伸ばし、勢いそのまま光条を放った主へと一気に駆けだす。吹かしたスラスターが瓦礫を巻き上げ、漆黒の風を纏った様なジェイダイトがグレートシトラスへと迫った。
「まだ――そう簡単にはやらせないよ!」
チェンジマギアモード、セット! オクトーの叫びに合わせて、テンキャスターの後ろ脚がのたりとその全身を持ち上げる。リベットからはこれまで以上の呪力の粒子が放たれて、それはローブの様な姿を形作り。
「ボクのマシンは、ただの機械じゃない」
テンキャスターは二足歩行のケットシーの様に面を上げて、ふわりと身体が浮かび上がるそれは魔導兵器。機械系のセンサを魔力感知に切り替えて、マシンを狂わせる音を遮断したケットシーのマシンは、そのままグレートシトラスとジェイダイトの間に割って入った。
「テンさん! 無茶だにゃ!」
「大丈夫……これより怖い白いロボットだっていたんだから!」
この程度でやられたりはしない! テンキャスターは振り下ろされたジェイダイトの攻撃を、呪力のオーラで受けて動きを止める。その隙にグレートシトラスは両肩のビームライフルで、今度こそジェイダイトの両腕のクローを破壊する。
「やったにゃ!?」
「――まだだよ!」
2体が繰り出した一瞬のコンビネーションで攻撃手段を失ったジェイダイトは、状況を把握すべく狂気の音色を止める。そしてセンサ系を再起動すると、逃げる様に撤退した。
「ここは何とかなったかにゃ……?」
「そうみたい。でも流石にもう――追えないや」
グレートシトラスもテンキャスターも既にあちこちがボロボロになっていた。そして攻撃を受けて姿をくらましたアトも探さなければならない。
しかしクローも装甲も破壊した、もし前進された所でまだ仲間もいる。
絶対防衛線第三層は猟兵達の勝利と言って、過言では無いだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
羽馬・正純
【POW】
(アドリブ・連携歓迎)
…マシンを作って迎撃?い、いや…いやいやいやそんな無茶な!?
と、とりあえず…攻撃はもちろん基地が破壊されると元も子もないから守りもキッチリ備えたいところ…
…タンク。どうだろう。主砲と機銃を備えた戦車。折角なんで合体時には盾形に変形する機能もつけて。
…よし!そうと決まれば基地の素材を見ながら<学習力>で適した部品を組み立てていこうか!
出撃したら<存在感>と砲撃で牽制して基地ではなくこちらへ攻撃を<おびき寄せ>るようにする、
狙いは召喚される巨大怪獣、大振りの一撃を引き出したところで【無敵城塞】と<オーラ防御>で受けきり、<力溜め>した主砲で<カウンター>を狙う!
ヘスティア・イクテュス
同じ攻撃を再現するマシン厄介ね
ならある程度遠距離から攻撃を躱しながら攻撃できる迎撃機を作ってみようかしら?
作成:ホバーリング戦車
武装:ビーム主砲とミサイルポッド、煙幕弾
近づいてきたらまずはスモークミサイルを発射、相手の視界を奪うわよ
こちらはアベルを使うことで、リンク…相手の位置を把握
そして主砲やミサイルを発射した反動を利用しホバーで滑ることで回避しなが攻撃ね
可能なら他の猟兵と連携して援護する感じがいいんだけど…
響・夜姫
まるでアニメ。ちょっと燃える。
建造
無機質でシンプルな人型ロボタイプ
武装はビームライフル×2、拡大版サバーニャの【ビット】。
本体は反応速度以外をある程度まで犠牲に、ビットの火力と防御力にパラメータをつぎ込む。
むしろ本体がオマケ、ビットがメイン。
ガンコントローラー+接続したサバーニャによる脳波制御。
戦闘
【拠点防御】技能を発揮。
ビットの【オーラ防御/武器受け】で自機と基地への攻撃を機動防御、
あるいは【クイックドロウ/誘導弾/範囲攻撃/一斉発射】で迎撃を優先。
隙あらば【スナイパー】として嵐の砲火で敵機を攻撃。
「防御的、砲撃特化。とりあえず、これでいい」
最終的に。基地を守り切れればおっけー。
●アニメじゃない
「……マシンを作って迎撃? い、いや……いやいやいやそんな無茶な!?」
羽馬・正純(雷刃の代行者・f02626)はモニタ上で繰り広げられている戦闘を見て、改めて自身が置かれた現実に狼狽える。世界の埒外である猟兵とは言え、今回の作戦はそれすら上回る異常事態だと。
「と、とりあえず……攻撃はもちろん基地が破壊されると元も子もないから守りもキッチリ備えたいところ……」
ブツブツと何事かを呟きながら、やるべき事を思考して基地内をふらつく。
「――同じ攻撃を再現するマシン、厄介ね」
ならある程度遠距離から攻撃を躱しながら攻撃できる迎撃機を作ってみようかしら? 一方ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は既にやるべき事を定めて、己が登場するマシンの製造へ踏み切った。入れるべき性能諸元に『ティンク・アベル』との連携も加味して……。
JM004A フロームンド
全長:14.1m
全高:4.2m
重量:67t
動力:KFG七型
装備:主砲(粒子加速器内蔵可変速ビーム)1×1
小型ミサイルポッド8×2
スモークディスチャージャー1×2
造られたモノはホバータンク、正面にあらゆる物を撃ち貫く長大なビーム主砲を備え、その砲塔側面には牽制用の小型ミサイルポッドとスモークディスチャージャーが配される。横から見れば履帯の無い戦車の様相、しかし上面を含め避弾経始とステルス性を加味して造形された、流面系の海洋生物の様な、ある種威圧的でありつつも優美な形状である。
「可能なら他の猟兵と連携して援護する感じがいいんだけど……」
ちらりと横を見れば、いた。それも知ってる娘が。
「まるでアニメ。ちょっと燃える」
響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)は何の迷いも無く、すたすたとマザーマシンに向かって必要な機体の諸元を打ち込んだ。
G2610YC オートマム
全長:14.6m
重量:96t
動力:KFG六型
装備:ビームライフル1×2
対装甲遠隔自動攻撃端末【ビット】1×10
「本体がオマケ、ビットがメイン。ビットの火力と防御力、反応速度以外は捨て置いてもいい」
造られたそれは巨大な漆黒の機械人形。鋼鉄を羽織り無機質なブロック状の塊を組み合わせた武骨な形状は、可憐な夜姫とは余りにも対照的。しかし夜姫との相関性を滲ませる翼の様に背負った5対のビットが、語るまでも無くそれが夜姫のものである事を静かに誇っていた。
「防御的、砲撃特化。とりあえず、これでいい」
数多の空駆ける砲を抱えた姿は砲身の母たる威容。出来上がったマシンを満足げに眺める夜姫の後ろで、正純が遂に自らの成すべきを形作った所であった。
JM005 ミョルニル
全長:14.9m
全高:4.5m
重量:78t
動力:KFG二型
装備:400mm両用主砲(各種実弾/ビーム)1×1
主砲同軸機銃1×2
展開式大型装甲板1×1
「……タンク。どうだろう。主砲と機銃を備えた戦車。折角なんで合体時には盾形に変形する機能もつけて」
そうと決まれば作るのみ。諸元入力の前に基地内の部品を学習した己の力でカスタマイズし、それをマザーマシンで組み込んでもらう。合体時に大型のシールドに変形する様な長大な装甲板をつけ、基地を守り切れるように防御力を極限まで高めた至高の戦車。シンプルイズベスト、合理性の極みの様な楔形の形状に、あらゆる攻撃に耐えるべく増設された各種装甲。矢でも鉄砲でもビームでも何でも耐えきって見せると鼻息荒く、正純は早速愛機に搭乗した。
残る二人もそれに合わせて出撃に備える。既に防衛線は第四層まで辿り着く寸前だ。ここを越えられれば基地への道のりはたった一つ、是が非でも負けられない戦いが迫っていた。
――第八八絶対防衛線、第四層
先の戦いで装備の大半を失ったジェイダイトは、それでも尚前進を止めない。第一層で自らの代わりに猟兵と対峙していた機械の巨獣を呼び戻し、下半身の装甲代わりにそれに跨る。現地点――第四層さえ越えられれば攻撃目標の基地まであと僅か。全身から関節の軋む音を響かせながらジェイダイトと巨獣が駆け上がる速度を速めたその時、凄まじき数の光条と火線がジェイダイトを奇襲した。
『第一射着弾確認、誤差修正は――不要ですね』
アベルが状況を報告する。それもその筈、これまでの戦闘で得た全ての情報が集積された今、猟兵達には一部の隙もありはしなかった。事実、3体のマシンから放たれた波状攻撃は、その全てが任意の地点へ外れる事無く到達した。それらが全てジェイダイトを狙ったものではない。ジェイダイトの動きを封じ、威力を削ぎ、確実に致命の一撃を与える為の第一射。足元の地形が抉れ、装甲代わりの巨獣は容赦の無い砲火に晒され、剥き出しの二次装甲も崩れ落ちる寸前まで迫っていた。
「上出来よ。以降は作戦通り、敵の行動を封じつつ本命を叩き込む!」
「了解だ! このマシンだったら耐えてみせるよ。ミョルニル、前進!」
「任されて。サバーニャリンク――乱れ撃つのよ」
2体の戦車と1体の巨人が再び、圧倒する火力を解き放った。第二射以降は各自遊撃戦へ移行、ふわりと浮いたフロームンドは飛び跳ねる様にミサイルとビーム砲を交互に撃ちつつ、ジェイダイトへと近付いていく。反対にミョルニルはその場から不動の姿勢で、巨獣の足元目掛けて主砲を撃ち続けた。その砲撃は同軸機銃で細かく射線を整えながら、よろめく巨獣に回避の一手を許さない。更にその背後からはオートマムが、展開したビットを重ね合わせて、より強力な5対のビーム砲としてジェイダイトの四方より猛攻を加えていた。
「これなら勝てる――!?」
不意にジェイダイトが、巨獣が空を飛ぶ。スラスターと強靭な四肢が繰り出した跳躍が、砲撃のほんの僅かな間隙にその窮地を脱したのだった。そして反撃の第一歩、充填し修復した不可視の攻撃端末が再び空を舞う。
「熱源反応……? 一体どこ」
随分とスリムなパイロットスーツを召した夜姫は、自身の挙動とリンクさせた動作連動型コクピット内で、けたたましく響くアラートに耳を疑う。レーダーに感は無い。しかし目の前には、四方八方から迫る光条が映し出されていた。
「……何て言うと、思ったの?」
がしゃんとオートマムは鋼鉄を羽織り、更にはビットを防御形態に変えて展開する。そう来ることは分かっていた。そしてその対処法も、既に手の内だ。先ずは敵の攻撃を全て、展開したビットのエネルギーフィールドと、羽織った鋼鉄の外套で防ぎ通す。
「夜姫! パターン、サンドブラスト!」
「おのれアビ星人……」
じゃなかった。既にフロームンドから放たれたスモークがオートマムの周りで爆ぜ、その煙幕が攻撃端末の軌道を見せる。その数合計で12基。
「思ったより数が多い」
けど、止められない数じゃない。再び纏った鋼鉄を跳ね上げたオートマムの手には2丁のビームライフルが。
「乱れ撃って、狙い撃つ」
愛銃を模したコントローラーを手に、攻撃の合図はサバーニャに念じて。瞬間、ビットとライフルから放たれた12本の光条が全ての攻撃端末を叩き落した。
「やったわね。後は――」
ジェイダイトが、いない。先程まで空中にいた巨影がいつの間にか姿を消していた。ヘスティアはレーダーと目視でそれを探すが、生憎の煙幕で地上の様子が直ちには伺えなかった。
「アベル! 目標はどこ? 後は奴だけよ!」
『ご安心をお嬢様。手順は飛びましたが、作戦は既に最終フェイズです』
淡々と語るアベルの口調にヘスティアは口元を歪ませる。思ったよりも早い――ならばやる事は一つだけ。
「分かったわアベル、タイミングは任せるわよ」
『承知しました。ではさっさと終わらせましょう』
恐らく彼でもそこまで持たない筈ですし、と。
全ての攻撃端末を失う少し前、ジェイダイトは眼下のミョルニルを踏みつける様に飛び掛かっていた。地道ながら確実に機動力を削がんとするその攻撃を、このまま見過ごす訳にはいかない。そう判断した故の奇襲――踏みつけられたミョルニルは砲塔を上げる事も叶わず、深々と地面に埋まりつつあった。
「痛った――作戦通りとはいえ、流石に辛いな……。」
ガツン、ガツンと装甲越しに聞こえる音は、確実にミョルニルを潰す地獄の鐘の音の様。だがそれすらも猟兵達の作戦の上。既に手の内は明かされているのだ、何も焦る必要はない。
「目立つ様に精密砲撃をした訳だけど、ここまでとはね」
正純の意図通り、誘き出されたジェイダイトは他の猟兵には目もくれず、一心不乱に【無敵城塞】と化したミョルニルへ打撃を加えていた。
「じゃあそろそろ……行こうか!」
これだけ基地からも離れている。フィナーレを飾るにはおあつらえ向きの戦場だ。指に掛けたトリガーへ力が入る。同軸機銃、弾種は発光弾。
「――見えたわ。照準調整、風向把握……弾道予測」
『承知しました。夜姫様も、準備はよろしいですか?』
「問題ない。続けて」
アベルの支援を受けた両名は、己のマシンに全ての力を込めて止めの一撃を放たんと集中する。
「虚数物質解放。選択虚数軸・複製」
ぶぅんと、オートマムの周りには340基の浮遊砲台が姿を現し、それらが魚群の様な長大な砲身を形作る。
フロームンドの主砲が伸展し、バレルが上下に割けて巨大な砲身に姿を変える。
『合図より3秒、時間です』
「――現世を満たせ、虚構の器」
「射軸安定……今!」
時空をも歪ませかねない苛烈な【虚構兵装・嵐の砲火】と【ミスティルテイン・長距離砲撃モード】が悲鳴の様な轟音と共にその力を開放した。放たれた轟雷が一直線にミョルニルが埋まる地点の直上へ、一切の遠慮も無く猛烈な勢いで迫り来る。
「分かっちゃいるけど、本当に大丈夫なんだろうねッ!」
着弾、衝撃――音も無く空間ごと抉ったそれらはジェイダイトと巨獣を中心に交錯し、跡形もそれらを無く消し飛ばした。遅れて信じられない様な、頭を破裂させかねない爆音を伴い、周囲の瓦礫も噴煙も何もかもを無くして。
「……。やりました、か?」
正純はコクピット内で明滅する計器を、レーダーを、モニタを改めて――ジェイダイトの存在を確認した。
残った骨格がかろうじでそれであった証左を示すだけ。むしろ残っていること自体が奇跡とも呼べる状況だった。それでも尚ジェイダイトは、当初の目的を達成すべく、その足を基地へ向けて前進する。
「――なんて、させませんよ」
長距離照準器スタンバイ、正純はスコープ越しによろめくジェイダイトを見据え、主砲の発射トリガーへそっと指を掛ける。
「どうせ自爆狙いでしょうが、させません」
エネルギー充填120%、仰角修正、目標相対距離100m。この距離では、外す方が難しい。
「ターゲットロックオン、発射」
カチリ、とトリガーが絞られて。ミョルニルの主砲から特大のビーム砲がジェイダイトの背後目掛けて放たれた。その威力はユーベルコード程ではなくとも、鋒鋩の体のマシンを倒すには十分。
光の奔流がジェイダイトの胴体と頭部を飲み込んで。その輝きが消えた後には、最早何も残る物は無かった。
「これで終わり、かしら?」
『お待ちください、熱源反応多数。数は――8』
中空に浮かぶフロームンドの中で、ヘスティアはアベルの恐るべき報告に目を丸くした。
事実、レーダーには未確認機を示す光点が8つ、その内の一つは以上に大きい。
「まさか、未だ戦いは終わってないっていうの!?」
『その通りよ』
不意に通信が。それは気怠そうな女の声。
『何であの子が一度も声を出さなかったか――おかしいと思わなくて?』
声の主は最大反応の光点より。そして残る7つの光点が、その正体をモニタに映す。
「え――ジェイダイトが、7機」
『成程……お嬢様、これはあくまで推測ですが』
不意にアベルが口を挟む。それはいつもの慇懃無礼な口調では無く、少しの焦りを感じさせて。
『敵のユーベルコードには攻撃端末を飛ばすものがありました』
その端末はこれまでの戦いで全て破壊したはず。それと目の前の敵と、一体どういった関係があるというのだ?
『もしこれまでの相手がそれだったとしたら、敵の本体は』
あの巨大な人型マシンです。それがアベルの推測、知る限り最悪の推測であった。
『さあフィナーレよ。全身全霊を持って死合いましょう、猟兵』
翡翠葛はニヤリと口元を歪ませて、巨大マシン――ビッグJのコクピットで愉悦に浸っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒谷・つかさ
事前情報的には万能にも程がある、と。
なら、逆に一点突破で打ち崩してあげるわ。
機体形状は人型、性能は装甲及び出力、加速力を重視
武装は巨大な片刃の大剣「零式・改三」をロボ用にスケールアップしたものと胸部エネルギー砲、鉄拳
戦闘ではまず背部ブースターを全力で吹かして上空へ
その後敵へと方向転換、自機をブースターで吹き飛ばしながら大剣を構え【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】を発動
機体重量及び出力を十全に生かした、鎧どころか大地をも砕く一撃をぶち込むわ。
この時発生する衝撃波で範囲攻撃、トラップ類も纏めてなぎ払うわよ。
追撃で胸部エネルギー砲(属性攻撃)も叩き込んであげるわ。
我が剣に……打ち砕けぬ物無しッ!
●その一刀は烈火の如く
――第八八絶対防衛線、第四層
新たに出現したジェイダイト7体に、その本体らしきビッグJは悠々と大地に降り立つと、我が物顔で基地へ向かい行軍を始めた。
既に猟兵達の各マシンはその力の殆どを使い果たし、敵の進軍を止められる者はいなかった。
『意外と脆いものねぇ――そんなので世界を救おうなんて、片腹痛いわ』
嘲笑する翡翠葛はコクピット内で足を組み、周囲に散らばる戦いの跡を一瞥すると、配下のマシンへ指示を飛ばした。
『では仕上げに入るとしましょう。行きなさい』
その号令と共に、1機のジェイダイトが巨獣を召喚し、正に基地へと駆けだそうとしたその時。
『何? 直上よりマシンが接近中――いや、違う!』
それは暗闇を切り裂いて、憤怒の如き炎を纏い、遥か高き天空より現れた鋼。
翡翠葛が制止の声を上げる間も無く、雲耀の速さでそれは飛来した。
巨獣が悲鳴の様な奇怪な音を上げる。それは鋼、ジェイダイトよりも巨大な鋼の大太刀。刀身より炎――スラスターの噴射炎を放ち、巨大な出刃包丁のような切先で巨獣の首から先を身体から分断したのだ。
「零式大旋風、断」
零式之大太刀、人が扱う野太刀をそのままスケールアップしたかの様な威容。飛来した鉄塊は無慈悲な斬撃を進軍する悪鬼達へとくれてやったのだ。
「遅くなってごめんなさい。でも、もう大丈夫」
不意に放たれた雷鳴を背負い、ごうんと大地に音を響かせて、鬼の如き形相の人型巨大マシンが戦場に姿を現す。
「このスルト、尋常ではないわ」
荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)は動作連動型コクピットでその両手を前に突き出す。
「それにフィナーレなのはこちらも一緒。皆、データを受け取って」
急に、戦場にいる全てのイエーガーマシンのモニタへ【最終合体・承認/却下】の文字が表示される。
「承認を選んだらアップデートが始まるわ。その間は私がなんとかする」
さあ……行くわよ! 烈火の如き気迫でつかさは、反撃の拳をジェイダイト目掛けて解き放った。
XGG00 スルト
全長:22.7m
重量:215t
動力:KFG零型
装備:対要塞白兵武装・零式之大太刀1×1
胸部展開式超大型エネルギー砲1×1
腕部噴進爆砕鉄拳機構1×2
首を無くした巨獣目掛けて、追撃の鉄拳が迫る。これ以上は持たないと巨獣の背から離脱するジェイダイト。鉄拳は地に立てられた大太刀を強く握り、その勢いのまま大地ごと残された巨獣の本体を真っ二つに断ち切った。
「それで逃れたつもり? 遅いわ――轟烈、機神熱破!」
逃げるジェイダイト。しかしそれすらもつかさの読み通り。がこんと、スルト胸部の突起が星上に展開し、内部に仕込まれた高エネルギー爆縮放射器が姿を現す。
「我が心、動かざること水鏡の如く……されど、我が魂は烈火の如く!」
その言葉のまま、照星にジェイダイトを冷静におさめ、燃える轟爆がスルトの胸部より、天に向かって放たれる。煌々と光を放つエネルギーの奔流は必中の一撃、上空へと逃げたジェイダイトはなす術も無く直撃を喰らってしまう。
「そしてこれで終わりとは……思わない事よ!」
スルトの背部――ハリネズミの様に増設された加速用スラスターが一斉に火を放ち、その巨体を空へと昇らせる。行先には放たれた両の拳と大太刀が。
「立ち塞がるなら、真っ向から叩き斬るのみ!」
スルトの両腕が再び身体と一体に。そしてその手には大太刀が。柄と峰の部分の持ち手に超重量を乗せて、煌く星を背負った鬼が墜落するジェイダイトへ引導を渡す。
「重剣術奥義……この剣に、打ち砕けぬもの無し!」
放たれた【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】は交差する刹那に押し込んだ刀身でジェイダイトを両断、その勢いで大地に叩き付けたその半身を跡形も無く撃ち砕く。
大地に立ったスルトは背部から揺らめく噴射炎の余韻を残して、再びビッグJへと向き直る。それはここから先へは一歩も通さないという、強い意志の表れ。
第八八絶対防衛線、終局の時が迫りつつあった。
『やるわね』
翡翠葛は立ち塞がるスルトの形相を一瞥すると、それでも尚余裕ぶった表情で言葉を続けた。
『でも今はアナタ以外に、誰が戦えるというのかしら?』
ジェイダイトは残り6機、幾ら機械の鬼めいたその機体が強かろうと、最後まで立っていられる?
「そうね……。本当に、私だけだったら」
危なかったかもしれない。ニヤリと口元を歪ませるつかさ。
『何を余裕ぶって……。いいわ、これが最後よ』
全機突撃、翡翠葛が眼下のジェイダイト各機へ号令を飛ばしたその時、空に星が瞬いた。
否――それはミサイルと榴弾の雨。前進するジェイダイトの正面に、その進路を塞ぐように降り注いだ火薬の雨は大地を抉り、再び戦場を瓦礫に包む。
「最後、それはあなた達の方だ」
黒い猛牛が、ブラックタウロスが大地を蹴って猛然と駆け上がる。巻き上がった瓦礫を物ともせず、背部のミサイルポッドから次々と炎を走らせて。
「フハハハ怖かろう、我々がただ何もせず地に伏せてるとでも思ったか!」
「射撃間隔をコンマ2秒遅らせて、振動で着弾がばらけてる」
『コマンド了解、次弾リロードより反映します』
真紅の悪魔、レッドアーリマンがガトリングの弾幕を張りながら天より飛来する。稲妻の様な機動でそれは、大地に無慈悲な爪痕を穿ちながら。
『貴様ら、まだ戦うとでもいうのか――!』
「その通りです」
不意に閃光が地を這う様に滑り、その光条がジェイダイトの足元を狙い撃つ。進行を止められた白い電気騎士の群は飛び上がり、かろうじでその直撃を避けた。
「まだ基地は残っている。ボクたちの戦いは終わってないのにゃ!」
「お待たせ、何とか間に合ったみたいだね!」
駆ける二頭の猛獣――グレートシトラスが背負ったビームライフルを間断無く放ち、テンキャスターが魔力でそれに衝撃波を乗せる。そして少女の祈りが、戦士達へ力を与えて。
『フン、だが小物が幾ら揃おうと』
「誰が小物ですって!」
「その胸、抉ろうか?」
「全機アップデート完了! これでいけます!」
スルトの後方、防衛線第四層から2両の戦車と1体の機械人形が噴煙を巻き上げながら迫る。これで全てのイエーガーマシンが、切り札がここに揃った。
「そういうわけよオブリビオン、覚悟しなさい」
クライマックス
ここからが、本当の最 終 決 戦だ。
●鋼の絆
「気力は十分、全員で行くよ」
「そうよ、その為に私達はここに集ったのだから」
リステルとつかさは猟兵として、世界を破滅の魔の手から守る者として己を奮い立たせる。
「血が滾る……かつて無い程拙者の猟兵力(ちから)は昂っておりますぞ!」
「モニタに表示されている、これを押せばいいんだな?」
伊美砂達は揃って、己の役割を心に刻む。モニタに表示された<< 合 体 >>という文字に指を這わせて。
「了解だにゃ。行くよテンさん」
「分かったよバロンさん、合わせるね!」
「フフ……結集した猟兵の力、どんな奇跡でも起こせそうですね」
バロンとオクトー、そしてアトは眼前の脅威に立ち向かう為、力を一つに。
「つかさ! 準備いいわよ!」
「変形、合体――負ける気がしない」
「プログラムスタンバイ、どうぞ!」
ヘスティアと夜姫と正純、軋むマシンに最後の力を込めて。
「大事な事を忘れてた、合体する時は掛け声を合わせるのよ」
つかささん、それ最初に言ってよと誰かの声が……いや、そんな事を続けている場合ではない。
全マシンから金色のオーラが立ち込めて、頭上の暗雲を徐々に解していく。それが世界の選択か。
「じゃあ行くよ皆、声を揃えて」
リステルが続けて、タイミングを計る。3,2,1……
【フォーメーション・ゴッド・イエーガー――合体!】
猟兵達が叫ぶと同時に、モニタに表示された<< 合 体 >>の文字を力強く押した時、金色の閃光が一体を眩く包み込む!
閃光の中、先ずブラックタウロスがその首を上げ、4つの脚を折りたたむ様に曲げ、左右に身体を分ける。それは漆黒のブーツの様、爪先には燦然とインパクトホーンが輝いて、その威力の健在を見せつける。
レッドアーリマンはその首と頭部を胸部胴体へ仕舞い、4つの手足を八方向に伸ばす。まるで後光の様な形状に。それぞれの先端には鈍い光を放つ重火器が。
グレートシトラスはその獅子の頭を中心に、前脚を畳み後ろ脚をスラリと伸ばす。そして獅子の頭が90度倒れこみ、腰部が180度回転。新たな胴体を形成した。
テンキャスターは更に丸まり、尻尾だった場所からじゃらりと鎖が伸びる。リベットが装甲表面に新たなフィールドを形成、刺々しい『フレイル』の形状を再現した。
フロームンドは流面系の全身から白い翼の様なスタビライザーを展開し、主砲が更に伸長し、その姿はまるで天翔ける巨砲と化した。
オートマムは連なったビットを展開し黒い翼の様なスタビライザーを形成、両脚が左右に90度回転し、踵から合わさって接合する。上半身は折りたたまれて、飛翔する黒い巨砲めいた姿に。
ミョルニルは上面の大型装甲を更に展開し、主砲を縮ませ大型の盾に。火器は全て内側に仕舞われ、履帯が展開して腕部と接合するアタッチメントが露出する。
スルトは天地を反転、その脚部の先端が開き新たな剛腕が。両腕だった物は折りたたまれスラスターの様な形状に。鬼神めいた頭部はそのまま胸部に仕舞われ、脚部が90度開き新たな上腕を形成する。
変形したグレートシトラスを中心にブラックタウロスの黒いブーツが装着され、その腰には白黒一対の翼と巨砲が接合する。背部には新たに形成された上半身が合体し、挟み込むように真紅の後光じみたバックパックが装着される。右腕にはフレイルを、左腕にはシールドを装備。最後に獅子の形をした胸部から武将めいた厳めしい機械の頭部が出現し、その双眸に光が点った。全身から眩い七色の光が放たれ、合わせて関節の駆動音が空間に響き渡る。
『ふざけるな……一体何なのよ!?』
「知りたいか? これこそ……!」
超奇跡合体巨神ゴッドイエーガー
全長:33.5m
重量:907t
動力:全段直結型キマイラフューチャージェネレーター
装備:マギアチックフレイル1×1
シールドオブアイアンウォール1×1
超高密度バーストビームキャノン1×1
超高初速プラズマレールキャノン1×1
背面マルチウェポンデバイス1×8
インパクトクラッシャー1×2
??????(必要〓〓300以上)
「という訳だ、ジェネレータが焼き付く前に終わらせてくれ」
パラメータを見ながら伊美砂が呟く。持って5分、だが十分な時間だろう。
「コントロールは難しくないわ、皆で念じれば最適な動きをトレスしてくれる」
つかさが語る。それがキマイラフューチャーの選択だとか何とか。
「それじゃあ行くわよ、GO! ゴッドイエーガー!」
全員が揃ったコクピットで、皆の思いを一つにして、奇跡の巨神が遂に発動した。
自分達より2倍近く巨大なそのマシンに向けて、ジェイダイト達が光弾で抵抗する。しかしそんなやわな攻撃が鉄壁の盾を崩す事は叶わない。ブンと振るわれたフレイルの鎖が伸びて、進路上のジェイダイトが薙ぎ倒される。続いて放たれた端末による一斉砲火も、背面のガトリングが瞬く間に無力化、巨神が一歩歩く毎にジェイダイトの戦力がみるみる削がれていくのであった。
「そんな攻撃で僕らを止められると……思って!」
リステルの叫びに合わせて、足元のジェイダイトがインパクトクラッシャーの餌食に。伸びる様に突き出された爪先の先端には、未だその威力を失っていない鋼鉄の角が生えている。
「その端末はもう当たらない。猟兵に同じ攻撃が二度通じないのは最早常識!」
マルチウェポンデバイスのパイルバンカーが、不用意に飛び出したジェイダイトを串刺しに。イビサの昂ぶりが形となった様に、圧倒的な暴力を見せつける。
「それでもまだ敵が多いのにゃ……もう少しエネルギーをチャージ出来ればいいのににゃ……」
「そうですね。でも諦めてはいけません」
未だ残る光点を見つめ項垂れるバロンに、アトが優しく後押しする。
「今こそ、皆さんに――力を」
その手には歪な笛が、しかし奏でるのは狂気の音色ではない。今度こそ奇跡を、皆に。
「何これ、ディメンション・サテライトリンカー?」
「5秒後にスーパーコズミックウェーブ……来る!」
ヘスティアと夜姫が不意にモニタへ映った正体不明の文言に動揺する。それは彼女達のマシンに、ゴッドイエーガーの主砲に直結するエネルギーを秘めているのだった。
そして訪れたそれは、天空を裂いて現れたエネルギーの塊はゴッドイエーガーの翼めいたスタビライザーに直撃し、そのエネルギーを瞬時に最大まで高めた。
がしゃんと、展開した翼に合わせて屹立した1対の巨砲の先端に光が集まる。ロックオンシーカーは既に散らばるジェイダイト達を捉えて、その先にはビッグJも。
「エネルギー充填120%、アベル!」
『問題ありません、照射時間最大で行きましょう』
「何だか――行ける気がする」
カウント省略、ファイア。放たれた二条の爆光が大地を溶かし、舐める様に進路上の全てを跡形も無く消滅させた。それは例え上空へ逃げようと、地に隠れようと、射角を自在に変えて容赦なく問答無用で屠っていく。
遅れて聞こえた叫び声の様な砲口の咆哮、全てが消えた後、大気の組成すら塗り替えた恐るべき一撃の爪跡は、何の痕跡も残さないという結果を持って、その威力をここに示した。ただ一つを除いて。
『本当に、よくもやってくれたわね――!』
それでも尚ビッグJは、翡翠葛は健在だった。恐るべき体躯の機械巨獣に跨って、この作戦の最終攻略目標は己の健在を誇示する。
「あれだけの攻撃を受けてまだ無事とはね」
正純はゴッドイエーガーの残武装を確認しながら、ビッグJへの攻撃手段を模索する。最後の武器、何故か使えなかった最後の一つ……これさえ使えれば奴を倒せるかもしれない。
「フン……相手にとって不足なしだ。まだ私達は負けちゃいない。そうでしょう?」
つかさの呼び掛けに一斉に頷く猟兵達。残り稼働時間は凡そ2分弱、それで全てを決めなければならないのだ。出なければこの世界の終わりに、一歩近づいてしまう。
「そうだよ、ボクたちがここで負けるわけには――いかないんだ!」
オクトーが叫ぶ、その時ゴッドイエーガーの胸部――グレートシトラスの頭部から黄金の煌きが姿を現す。
「これは、まさか……!」
『あれだけの攻撃、大したものだと褒めておこう。だがそれまで――』
翡翠葛がゴッドイエーガーに止めを刺そうとにじり寄った時、その異変に気が付いた。奴等、何かを手にしている。まさか……。
『まさか、まだ戦うというのか!?』
「何度も言わせるなお主」
我等は誰一人諦めたりはしない。ゴッドイエーガーの手には黄金色に輝く剣の柄が。それは。
【ゴッドイエーガー・ファイナルキマイラブレード!】
あらゆる可能性を綯交ぜにした、この世界がこの世界たる所以。絶望の昨日から希望の明日へ、その為に今を紡ぐ世界の祈り。
ゴッドイエーガーが両脚を軽く開き、ブンと振りかざした剣の柄を斜めの正眼に構える。その鍔元から眩いばかりの光が刀身を形作って。
【いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!】
八相に担ぎ上げた刀身を掲げて、全スラスターが猛然と火を噴いた。突進、ビッグJを正面に見据えて、金色の猟兵が大地を駆け抜ける。
『貴様らぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
巨獣の目から破壊光線が。しかしそんなモノ、とうに通用などしない。
【これで、終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!】
振りかぶった巨剣の一撃が、縦一文字に悪意の塊を両断する。
瞬く間に紫電が奔り、ビッグJは爆散。
その爆光を背に、ゴッドイエーガーがすっくと立ちあがる。
遂に戦いは終わったのだ。
ゴッドイエーガーは翡翠葛の撃滅とほぼ同時にその姿を消した。
後には9人の猟兵達が残り、基地には朝日が昇りつつある。
この戦いは終わった、しかし戦争はまだ続いている。
次の戦場へ向かう為、猟兵達は一時この世界を後にしたのだった。
その胸に、黄金の希望を宿しながら。
大成功
🔵🔵🔵