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バトルオブフラワーズ④〜御澱流・真剣必喰!

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●テレビウム・ロック・ボーナス!
「うっわー、ほんとぱっくりキレーに割れてるね~」
 そのあんまりに荒唐無稽な絶景っぷりを目の当たりにしてグリモア猟兵である巳六・荊(枯涙骨・f14646)からは思わず笑いが零れてしまう。
 絶えず揺らぎ変わるグリモアベースの風景へ混じる一つの『世界』の一大事。
 いつだってイカしたたのしー未来世界『キマイラフューチャー』は現在絶賛まっぷたつ中なのである。
「今のところ特にぜんっぜん支障ないカンジなあたりおさすがなんだけどこれも大戦争。まっぷたつなのはいわばボーナスタイムで今のうちにオブリビオンから中枢の『システム・フラワーズ』を取り戻さないと結局、キマイラフューチャーといえどもやっぱりなんやかんやで滅亡しちゃうみたいなんだよねー」
 そして中枢システムへと辿り着くためには、まず、その周囲を守る6つのザ・ステージをオブリビオンから取り戻さなくてはならない。
 今回、荊が猟兵を送り込む戦場は『オオグイフードバトル』のルールに支配されたザ・ステージである。
 倒すべきボス敵は大量のあつあつおでん鍋に囲まれるオブリビオン『餅巾着侍』だ。
 どちらかといえば間違ったニホン文化系のイロモノっぽいその外見に決して惑わされてはならない。周囲から供給され続けるおでんの力を得た御澱流はまさに鬼に金棒。
 猟兵側が『餅巾着侍』を上回る大食いを発揮しておでんを食べ尽くしてしまう以外に、勝ち目は無いのだとグリモアは告げたらしい。
「つまり『食』を制するものが剣を制する! ……みたいな~?」
 長巻術はどちらかといえば槍の部類かもしれないが細かいツッコミは野暮である。

●おでんはじめましたでござる、の巻。
 剣鬼たる男から立ちのぼるは闘気――と、昆布だしの香まとう白い湯気。
 鮮やかなる一閃とともに、轟と、その向こうから無銘の大切先が姿を現す。
「田楽一心、我が御澱の剣の真髄は味噌にこそ在り!」

 季節はずれなどとは言わせまい。
 ――もとよりこの戦場は過去と未来の意志交わる境界線上。
 並べられた鍋という鍋はあつあつおでんつゆと具とに満たされ……ただ一心不乱に猛者を待ち侘び、煮込まれるのみであった。


銀條彦
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 あつあつおでんを食べまくってボス敵1体を倒してください。
 獲得したおでんパワーは猟兵を大幅パワーアップさせ、逆に敵オブリビオンは一気に弱体化してしまう事でしょう。
 『餅巾着侍』を上回る勢いでおでんを食べられるという説得力に満ちたプレイングによって大食い対決を制することで彼我の戦闘力はあっさり覆せます。
 そういうステージです。
 大食いは苦手だけどとってもおいしく味変アレンジして味方を援護します、等の行動もOKです。
 戦闘場面が描写されるかどうかは……多分に運が絡んで来そうなので保証しかねます。何はともあれまずは大食い勝負がんばってください。

 みなさまのご参加、心よりお待ちしておりますね。
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第1章 ボス戦 『餅巾着侍』

POW   :    御澱流・田楽刺し
【長巻を用いた鋭い刺突攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【煮え滾る味噌だれ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    御澱流・チカラモチ
自身の肉体を【つきたての餅めいた形質】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    ちくわと鉄アレイ
【伝説的なニンジャマスター】の霊を召喚する。これは【食べると体力を回復出来るちくわ】や【当たるとダメージを受ける鉄アレイ】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:marou

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハヤト・ヘミングです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トリガー・シックス
(まあ、予想はしてたが放っておこう)
アシストに回る。
からしや柚子胡椒を用意し、食べやすいように熱を取って二人に渡していく。
巾着は餅以外にもうどんや七種類の具を入れたものを用意。
味も一種類だけではなく、静岡おでんや地方の物を入れてみる。
二人の様子がおかしいと思ったら、エルーゼ……冷酒持ってきたな。
効率上がってるからいいか。
あと、大将って……俺は屋台の店主か?
戦闘になったら剛刀型に形成した『イザナギの覚悟』を持ち、【見切り】からの【カウンター】で、【早業】での居合を繰り出す。

※アドリブ、絡みOK


藤宮・華澄
エルーゼ先輩のため、キマイラ・フューチャーの為にも頑張るわよ!
フードファイターでもある私が負けるわけ行かない!
得意の【大食い】で多くのおでんを食べていくわ。
マスター(トリガー)の援護で食べやすくなってる。
水で口直ししながらより多く食べれるようになってる?それに気持ちよくなってもっと食べれる!
「どんどんもってきてぇ~」
そう、華澄も酒に弱い。エルーゼに比べれば多少強いが、多少である。
戦闘になれば『試作型元素光線銃』で応戦。酔ってるけど、【援護射撃】や【スナイパー】は何時もより上がっている。
※アドリブ、絡みOK


エルーゼ・フーシェン
まあ、季節とか置いといて、今はおでんを食べないといけないのね。
私の故郷であるキマイラ・フューチャーを護るためにも、勝たないといけないわね!
アシストはトリガーに任せて、私と華澄は【大食い】でひたすら食べるだけ!
でも熱いから水も欲しいから合間に水を入れて……。
「どんどんもってきてぇー」
なんだかいくらでも食べられそうになってきてぇ、いい気持にぃ。
誰かがこう言ったような気がする。
それ水やない、冷酒や!
戦闘は『ゲンドゥル』を抜いて光刃を形成して【ダンス】による剣舞で攻撃。
※アドリブ、絡みOK



 転移された先はサムライエンパイアに誤送されたかと見間違いそうな純和風の道場。
 まず目に飛び込んで来たのは鍋・鍋・鍋の光景。
 板間の上にこれでもかと並べられたおでんに囲まれて、オブリビオンは悠然と猟兵達を迎え入れる。
「御澱流を極める為、はてなきおでんの力を我が剣に……これもまた修行でござる!」
 小紋の着流しで颯爽と長巻を構えたその姿からは強者たる風格が漲る、が、頭部は餅巾着なのでどうしても危機感だだ下がりな点は否めない。

「まあ、季節とか置いといて、今はおでんを食べないといけないのね」
 故郷であるキマイラフューチャーの未来を護る為にと立ち上がったエルーゼ・フーシェン(双刃使い・f13445)。
 蒼き翼広げた白狐のキマイラがおでん怪人の前にまず(喰い)倒すべきは鍋である。
「エルーゼ先輩のため、キマイラ・フューチャーの為にも頑張るわよ!」
 フードファイターでもある自分がこの戦い負ける訳にはいかないと俄然燃え上がっている藤宮・華澄(新米猟兵・f17614)と共に、煮えたぎるおでん鍋へと挑みかかる。
 エルーゼは大根、華澄は卵。両者ともまずは目についた薄味つゆに浮かぶいかにも定番な具をすくいあげてはふはふと頬張った。丁寧な下茹でを施されたのち長時間じっくりと煮込まれ続けたのであろう熱々なそれらからはふんわりとだしの香りが漂う。
 味の方も中々に美味である、が、じっくりと堪能もしていられない。
「おなご相手とて手は抜かぬでござる!」
 かんぴょうの封がはらりと解かれ巾着型の頭部が豪快にオープンヘッドされると同時に始まった電光石火。何本ものくたくた汁だくなちくわが一気に内へと吸い込まれてゆく。
「食べるのそこから!?」
「確かに口らしきものは他に見当たらなかったけど……」
 はふはふもぐと既に次のおでんに取り掛かっているエルーゼ達とて女性としては、否、猟兵としてもかなりのハイペースな大食いっぷりを発揮していたが……それでも現時点の戦況は2人がかりでようやく互角といった所だろうか。
 だがそれは――あくまで2人のみであるならば、の話である。
「私と華澄はひたすら食べるだけ! アシストは任せたわよ!」
 大方の予想通りの流れにやれやれと黒頭巾の下で溜め息ひとつ漏らしつつも任された援護役をトリガー・シックス(死神の代行者・f13153)は迅速かつ完璧な手際でこなしていた。
 おでん種ごとに異なる食べ頃、エルーゼと華澄各々に特徴の有る早食いペース、飽きさせず食べ易くを最大限に配慮した味の組み立てや変化――それら全てを瞬時に計算し一片の無駄すら排した所作をもってひたすらに、よそおう。
 料理はもっぱら作る方が専門の彼だったが、このオオグイフードバトルルールに支配された戦場においても黒子役に徹する事で歴戦の傭兵としての実力(?)を十全に発揮していたのだった。

「はふぅ。あら、うどん巾着♪」
 さっきの具だくさん巾着もおいしかったけれどこちらも格別とニコニコ顔で舌鼓を打つエルーゼに、先輩が口にしたらさしずめきつねうどんだと華澄も楽しげに笑いながら柚子胡椒効かせたごぼう天に齧りつく。
「これもおいしい……マスターのご当地おでんアレンジ、どれも最高ね!」
 マスターといってもこの場におでん屋店主が存在するわけではなく、普段はトリガーの事を兄さん呼びしている華澄が戦場に相応しい呼称で呼びかけたのである。胡椒だけに。
 ストイックに味噌おでんをつつき続ける餅巾着侍の孤高に対するは、よりどりみどりで時に女子トーク飛び交う猟兵達のあたたかな団欒パワー。
 戦いは既に中盤戦に差し掛かかり、戦況はわずかに猟兵側優勢。
 だが……季節外れの鍋の熱さこそが最後にして最大の壁として、キマイラフューチャーの未来かけた戦いで立ちはだかる。
(やはり、水の分だけ不利か)
 人間やキマイラである猟兵側はあつあつおでんをあつあつのまま飲み込む事が出来ず、冷ます間を惜しんだエルーゼ達は多量の水分摂取を余儀なくされている。
 一方、オブリビオンでそもそもおでん怪人である餅巾着侍はただ座してあつあつのままのおでんを巾着の中へと取り込むだけでよいのだから、この差は、終盤にさしかかる程に重くのしかかってくる大きなハンディと言えよう。
 多少の手間と時間をロスしててでもここは冷やしおでん等の別アレンジに踏み切るべきか――女性陣へと給仕する手は止めないまま思案するトリガーだったが……気がつけば、なにやら様子がおかしい。
「「どんどんもってきてぇ~♪♪♪」」
 すっかりと夢見心地に蒼瞳をうるませたエルーゼが空になったコップと取り皿を掲げてハイテンションにおかわりを要求し、その横では同様にうっとりと恍惚の表情を浮かべた華澄が青のりたっぷりの黒はんぺんを食みながら呼吸ぴったりに異口同音のおねだり。
 ランナーズハイならぬおでんずハイというヤツなのだろうかと、トリガーも最初は全く気にも留めなかった。
「ほら~大将、もっともっとぉ♪」
「だから俺はおでん屋台の店主ではないと……」
 食が進むとの言葉通りにたしかに彼女達の食べるペースは衰えるどころか更に加速しだしていたのだから。戦争の勝利を目指すにあたって止める理由は何一つ無い。だが……。
「せんぱぁい~私なんだかとっても気持ちイイ~~」
 きりりと冷えたコップ水をガブ飲みするごとにおでんは霧散するかの勢いで消費され、ついでに美女2人の肌はますます赤らみ、しっとりと汗ばんでゆく。
「……まさかこの鍋の中にはよからぬ妖しげな薬物が?」
「御澱流を愚弄するでござるかっ!? つーかそれは水ではござらん酒なのでござる! あつあつおでんに冷酒をきゅっとなどとそりゃ極楽に決まっているのでござる!!」
 またかまたなのか。つーかその誤飲率はなんなんだいっそユーベルコードなのか。
 さしあたって事態を把握したトリガーは2人に今度こそ正真正銘の水を飲ませたが時、既に遅し。
「あれぇ~なんだかもうすこしもアツくないわぁ~~♪」
「いくらでも食べられそうになってきてぇ、いい気持にぃ」
 酒にはめっぽう弱いエルーゼと、彼女ほどではないがやはり強い方ではない華澄。
 完全に箍が外れた酔っ払い女性2人による――ニ喰開眼。
「く、くぅ……拙者も熱燗を用意するべきでござるか……いや……田楽一心、味噌味のみに邁進してこその我が御澱流であるべきで……うぬぬ」
 一方で、日本酒案件テロの直撃を精神に喰らってしまったらしい餅巾着侍の剣には曇りが生じ、ここまで邁進し続けて来た彼のおでん喰いはここに来て大幅なペースダウンを見せる。

 かくて訪れたおでん杯オオグイフードバトル、決着。
 ザ・ステージからすべてのおでんが喰らい尽くされたその瞬間、『場』のもたらす圧倒的な力すべてが勝利者たる猟兵へと注がれ始めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルーゼ・フーシェン
酔った状態で戦闘に。
『ゲンドゥル』を持って『クロス・エレメント』で陽焔の刃と風雷の刃を形成し、【ダンス】を用いた剣舞を繰り出す。
舞うように【武器受け】を行い、【カウンター】を繰り出す。

酔ってるので、なにしでかすか分からないが……。

※アドリブ、絡みOK


トリガー・シックス
「さて、倒せるか?」
剛刀型に形成した『イザナギの覚悟』を抜き、対峙する。
エルーゼの動きをアシストする形に。
一番面倒なのはオブリビオンより酔った二人だろう。

※アドリブ、絡みOK


藤宮・華澄
酔ってる状態で戦闘。
『試作型元素光線銃』による【援護射撃】を行う。
【スナイパー】で狙撃したりする。

酔っているので何をするか分からない……。

※アドリブ、絡みOK


ヴィクトル・サリヴァン
故郷のピンチとあっちゃちょっと頑張らないとね。
…でも流石イカれた未来というか、うん?大食い?
ええと、少々行儀悪いのは承知だけど頑張るよ。

熱にはちょっとだけ耐性はあるけど基本は気合い。
こんなに美味しいのが沢山あるのに止まってなんていられないよね。
食べ物は肉とかはんぺんとか蒟蒻とか中心にぱくぱくと。
いい出汁出てるねーと言いつつ火傷は活力の雷で癒やしつつ次々に。
辛子も酒もどんと来い、テンション上げて食を楽しもう!

戦闘では活力の雷で多少の傷を無視しつつ氷の魔法を全力詠唱。
熱々すぎるから冷ましてあげるよ。

戦いの後にはご馳走様を忘れずに。
…体が重くなった気がするけど気のせい、きっと。

※アドリブ絡み等お任せ



「故郷のピンチとあっちゃちょっと頑張らないとね。 ……でも流石イカれた未来というか、うん? 大食い? ええと、少々行儀悪いのは承知だけど頑張るよ」
 固い決意の上にちょっぴりの戸惑いを振りかけながら、いただきますと、極上な食材達に向けて行儀良く両手が合わせられる。
 餅巾着頭の怪人を取り囲むおでん鍋と対峙するシャチ頭の紳士、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)もまたキマイラフューチャーの未来の為に立ち上がった勇者のひとりであった。
「うんうん、いい出汁出てるねー。こんなに美味しいのが沢山あるのに、止まってなんていられないよね」
 串打ちされた牛スジのプルプル食感にやや甘口でコクのある黒スープが贅沢に絡む。
 湯気立てるそれへ思わず豪快に齧りつけばじゅわりと染み出る肉汁と出汁の旨味。
 おいしいだけでなくこの肉それ自体が溶け出してエキスによって出汁として他の食材の味を引き立ててくれるのだから、本当に、おでんとは素晴らしい。
 怪人ならぬ猟兵の舌を飽きさせない為にと仲間の猟兵が工夫を凝らしてご当地アレンジしてくれたおでん鍋の数々に、ヴィクトルもすっかりと相伴預かっていた。
「蒟蒻にはからしと味噌を合わせてみようかな? お酒もどんと来い!」
 既にテンションはアゲアゲに絶好調。厚くて熱いぷるんぷるんの板コンニャクを物ともせずにヴィクトルは一口に収め、存分に歯応えを堪能した後に、辛口の冷酒とともに喉へと流し込む。
「フルーティさはやや抑えめだけどその分コクが広がってゆく……おでんにぴったりの、とってもいいお酒だねぇ」
 本業はバーのマスターだというヴィクトルは箸を動かすスピードは保ちつつもすっかりとその白黒の相好を崩して和のマリアージュを堪能していた。
 海のハンター的見た目に反して人並み外れた大食いという程ではない彼は、だが、季節はずれの熱々バトルへと臨むにあたってぬかりなく、元々備える耐熱加護を舌と消化器官のみに集中させていた。
 そして何よりも――おでんを楽しみ鍋に感謝する彼の全身に漲る気合いは誰よりも熱く大きかった。
「く、くぅ……拙者も熱燗を用意するべきでござるか……いや……田楽一心、味噌味のみに邁進してこその我が御澱流であるべきで……うぬぬ」
 一方で、餅巾着侍にとってのおでん愛はこのザ・フードステージでいつしか力を得て剣を極める手段に過ぎなくなってしまっていたのだから――既に勝負は決していたのだ。
 かくしてヴィクトルもまたオオグイフードバトル勝利者の1人としての『力』を今まさに受け取ったのであった。

「拙者の御澱流、まだまだ修行不足でござったか……ならば!」
 おでん勝負でのまさかの敗北にしばし打ちひしがれていた餅巾着侍だったが、オブリビオンとしての欲望が彼から尽きる事は決して無い。
 すばやく印を結ぶと同時、からっぽの鍋が無数に転がるこの道場内へ新たに召喚されたのは伝説的なニンジャマスター『チ・チウエ』の霊。
 もしも戦場がザ・フードステージではなくザ・ゲームステージだったとしたら、確実に辺りはドット絵っぽくなっていたであろう謎の存在感に満ちたソレから振り撒かれるのは無数のちくわ時々鉄アレイ。
「さて、倒せるか?」
 そう呟いたトリガー・シックス(死神の代行者・f13153)の黒頭巾姿などはこの場においてはもはや狙ったとしか思えない程ベストにマッチしていたのだが、あいにくと彼はまなこをドングリにしたり語尾がニンニンござるになったりはしなかったのである。
 というか――そんな余裕はいっさい無かった。
 彼の相棒であるエルーゼ・フーシェン(双刃使い・f13445)はその両手に二刀一対の『ゲンドゥル』を構える。
 この上なく優美でありながら全く無駄の無いその所作は舞踏劇の始まりすら想起させた――すっかりとデキあがって据わったその眼差しさえ無ければ。
「げんそをぉ、こーささせてぇ~」
「おい、お前まだ酔って……」
 酔っ払い状態から全く醒めぬままオオグイバトルの影響で大幅パワーアップを果たした今の彼女は、魔力の制御も相棒の制止も一切お構いなし。
「――――よりつよーーーーーーーーーーーくぅぅん♪♪♪」
 交わる光刃と光刃から放たれたパワーアップ版『クロス・エレメント』は瞬く間に焼きちくわと焼き鉄アレイを量産した後に道場を半壊させた。
「無茶苦茶なのでござるーーーー!?」
 直撃を蒙っての虫の息ながらどうにか踏み止まった伝説的なニンジャマスターの霊も、もう1人の酔っ払い、藤宮・華澄(新米猟兵・f17614)が大笑いしながらデタラメに乱射した試作型元素光線銃の前に霧散する。あっさりとボーナスステージ終了のおしらせ。
「あはははァ、レリゴ~エンゴォ~♪」
「……オブリビオンよりも面倒だな」
 散々な惨状を前に、それでも、トリガーは神器『イザナギの覚悟』を厚刃の剛刀へと変じさせて餅巾着侍へと対峙する。傭兵と侍の睨み合い、先に動いたのは侍。
 長巻からの繰り突きを紙一重で回避したトリガーがカウンターの呼吸で振るった『界境無き刃(ワールドライン・ゼロ)』が薙ぎ払ったのは何も無い筈の虚空。だが――。
「何っ!?」
 空間を超えて現れた斬撃は狙い違わず草履履きのオブリビオンの片脚をゴトリと斬り落としていた。鮮血の代わりに白き湯気まとって噴き出すはおでんつゆ。
 咄嗟に全身を餅化させてそれ以上の消耗は抑えた様だがその傷は深い。
「熱々すぎるから冷ましてあげるよ」
 餅巾着侍のみならず過剰な元素密度で荒ぶる『場』に煽られる精霊達へと向けてふわり語り掛けたのはヴィクトルだった。
 漆黒の瞳の精霊術士が紡ぐ詠唱に、応えて応じて、膨れあがる氷の精霊力はしんしんとオブリビオンの心身へと染み渡り――絶対の零度世界へと包み込んだ。
 総てを凍りつかせ終わらせる眠りの中で餅巾着頭の怪人の命は終焉を迎え――ザ・ステージを巡る戦いはここに猟兵の完全勝利で幕を閉じるのであった。

「ちょっと痺れるよ」
 2人のレディに向けてヴィクトルが一声掛けた直後にピリリと奔った心地良い衝撃。
「ひゃん!?」
「きゃっ……♪♪♪」
 術者の疲労と引き換えの高速治癒『活力の雷(ガルバニズム)』を酔い覚ましに使ったのである。代謝を活性化させれば理論上はアルコール濃度を下げられる筈と試しに行った施術はちゃんと効いたらしくエルーゼも華澄もすっかりと落ち着いて今は幸せそうな寝息を立てている。
 手間をかけさせたと2人に代わってトリガーが詫びを入れたが本戦とも言えるオオグイフードバトルにおける2トップの大活躍を考えれば、まあ、特に気にする事でもないと、シャチの青年は笑った。
 ようやくの一段落の後、思い出したかのようにすっかりと満腹となったおなかを重たげにさするヴィクトルだったがご馳走様だけは決して忘れない。
 再び行儀良く、シャチの紳士の両手がしっかりと合わさる。
「おでんに対してご馳走様の心を忘れてしまった事がキミの敗因だった、かも、ね?」

 そんなキマイラの青年の足下――護るべき故郷は猟兵達を『システム・フラワーズ』へと迎え入れるべくいまだぽっかりと綺麗に割れたまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月14日


挿絵イラスト