バトルオブフラワーズ⑧〜彩結びの狐
●いろむすび
街を模した壇上で少女は躍る。
くるりとその身を翻して、手にしていた札を舞い飛ばす。すると途端に札が当たった場所が暗色に染まっていった。
淡い彩の尻尾がふわりと揺れ、少女――オブリビオンは更に炎を飛ばしてゆく。
「ふふ、燃え上がる恋の炎は何でも焦がして真っ黒にしちゃうんだから!」
宙を舞う幾重もの炎の軌跡。
それらは瞬く間に都市めいたステージの建物を暗黒に染め上げていく。
まるでこの世界を闇で包み込むかのように、暗く、昏く――。
●システム・フラワーズとザ・ステージ
キマイラフューチャーが真二つに割れた。
それは突然のことであり、この世界に住む誰もが予想だにしていないことだった。
この世界の理そのものとも呼べる『システム・フラワーズ』。そして、その周囲を守る六つの『ザ・ステージ』。
「何とも、面妖なものじゃのう」
世界の現状と実際の配置図を説明したグリモア猟兵、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は集った者たちへ戦いに出向いて欲しいと願った。
しかしこの戦いは普通のバトルではない。
エチカは今回の戦場を示し、詳しい話を語ってゆく。
ザ・ステージにはそれぞれ特殊な戦闘ルールがあり、たとえ敵を倒しても敗北条件を満たすと謎の力で追い出され、強制敗北になってしまう。
「此度の戦場はザ・ペイントステージじゃ!」
其処ではヌリツブシバトルという特殊戦闘が行われている。
このステージはキマイラフューチャーの街並みを模して作成されているが、壁や床は『闇のような黒色』に塗り固められている。
この闇黒色により、猟兵のユーベルコードはオブリビオンに直接ダメージを与える事が出来ず、一方的に攻撃を受けてしまう。そのかわり、ユーベルコード或いは武器で直接、床や壁を攻撃すると違う色で周囲を塗り潰すことができるらしい。
「壁や床に攻撃を続けて一定以上の範囲を塗り潰すと、一度だけ本来のユーベルコードの力で敵を攻撃することが可能になるのじゃ」
その状態で敢えてオブリビオンを攻撃せずに壁などに力を当てると、広範囲を一気に塗るスーパー攻撃にもなる。
「一度だけユーベルコードが使えるようになるタイミングはステージマップの四分の一ほどをこちらで塗ったときじゃな。しかし、三分の二以上が猟兵の色になった場合、本来の力を無制限に使えるようになるようじゃ」
敵も陣地を塗り返そうとするのでそこまで塗り潰すのは大変だが、繰り返して行けばきっと勝利は見えてくる。
「一定範囲を塗り潰してオブリビオンに攻撃を繰り返すか。或いは暫くは戦わずに三分の二以上を先に塗り、その後ひといきに攻撃するかは向かうお主らの自由じゃ」
どのような作戦を取り、どのように当たるか。
作戦は向かった先で判断すればいいと話したエチカは仲間たちを見つめる。そうして、頼むぞ、と告げた言葉には信頼が宿っていた。
犬塚ひなこ
こちらのシナリオは『バトルオブフラワーズ』の戦争シナリオです。
一章のみで完結するシナリオとなります。
●特殊ルール
ここはザ・ステージのひとつ「ペイントステージ」です。
皆様が到着した時点で街を模したステージ内は暗黒の色に塗り潰されています。
このままではユーベルコードが通じず威力のないものになるので、まずは壁や床、建物などを攻撃してください。そうすると黒以外の様々な色でその一帯が上塗りされます。
赤や青、ピンクに黄色。何色になるかはプレイング内で指定してください。何もなければその方のイメージっぽい色に染まるよう描写します。
●攻撃可能判定
一定範囲(四分の一)を塗り潰す:一回だけユーベルコードが有用になる。
三分の二以上を塗り潰す:本来の力を無制限に使えるようになる。
ただし、敵もどんどん色を塗り返してくるので要注意です。急にユーベルコードが使えなくなった、という状況もありえるのでどんどん塗っていきましょう!
第1章 ボス戦
『ムスビ』
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POW : かみさまの縁結び(物理)
【指名札】が命中した対象を爆破し、更に互いを【運命の赤い糸】で繋ぐ。
SPD : 燃え上がる恋の炎(物理)
レベル×1個の【恋】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ : 恋する乙女は無敵(物理)
全身を【リア充モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
イラスト:華月拓
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠カスミ・アナスタシア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天御鏡・百々
ふむ。オブリビオンが世界を闇へと黒く染めるならば
我ら猟兵の光でもって闇を塗りつぶしてやろうではないか
できれば塗ることに集中し2/3以上を目指したいが
敵を放置するのは得策とは言えぬか
我の手に乗った人形の左右に鏡を召喚
合わせ鏡の中より、100をも超える鏡像兵の部隊を呼び出そう
(合わせ鏡の人形部隊)
鏡像兵には敵から離れて散開させ、塗りつぶすことに専念させるぞ
(塗る色は白)
その上で我自身が敵を牽制し、塗り返すことを妨害してやろう
真朱神楽によるなぎ払い20と
神通力による障壁(オーラ防御51)を用いての近接戦だ
そうして2/3を超えれば
人形を集中させてトドメと行こうか
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
二條・心春
敵だけでなく街も攻撃しないといけないのは、ちょっと気が引けますね…。作り物だということはわかっていますが。
私は塗りに専念して、皆さんをサポートしたいと思います。とはいえ、まずはユーベルコードが使えるようにしないと。槍を振り回して「衝撃波」を放って、広範囲を塗っていきましょう。ビルの間とか、皆さんが塗りづらい細かいところも逃さず塗ります。
敵の攻撃は「ジャンプ」して建物に飛び移ったり、「地形の利用」をして上手くかわしましょう。
ユーベルコードが使えるようになったら、呼び出したフルフュールさんに乗って、上空から建物とか壁を雷で一斉攻撃しましょう。遠慮は要りません、思いっきりやっちゃってくださいね!
●炎は黒く燃ゆる
降り立ったステージはこの世界の街によく似ていた。
だが、普通の街と違うのは建物や地面が闇のような黒に塗り潰されていること。
「ふむ」
天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)はこの世の終わりであるかのような光景を見つめた。
「オブリビオンが世界を闇へと黒く染めるならば、我ら猟兵の光でもって闇を塗りつぶしてやろうではないか」
そう宣言した百々の赤い瞳はまるで鏡のように壇上の景色を映している。
二條・心春(弱さを強さに・f11004)も百々に倣い、ステージを見渡した。まだ幼く見えるというのに堂々としている少女が少し羨ましく感じ、心春は気を引き締める。
見ればオブリビオンは遠くの方で炎を飛ばし、街を黒く塗り潰し続けていた。
「敵だけでなく街も攻撃しないといけないのは、ちょっと気が引けますね……」
作り物だということはわかっていますが、と続けた心春は槍を握る。そして、戦いへの思いを強めた。
「偽物ならば遠慮はいらぬ。行くとするか」
百々は心春に呼び掛け、先ずは街のステージを塗り替えようといざなう。
こくりと頷きを返した心春は地面を蹴り、一気に跳躍した。敵が向こうの方を塗っているのならば此方は到着地点から塗り潰していくだけ。
「私は塗りに専念しますね」
皆をサポートする方が役に立てると感じた心春は槍を振り回す。其処から生まれた衝撃波が建物の壁を穿った。
その瞬間、周囲がやさしい青緑の彩に変わっていく。
うむ、と頷いてその様子を見遣った百々は自らも腕を前に差し伸べた。
「――我が眷属よ」
呼び掛けと同時に、その手に乗った人形の左右に鏡が召喚される。合わせ鏡の中からゆうに百をも越える鏡像兵の部隊が呼び出された。
敵から離れ、辺りを塗り潰せと命じられた兵たちは散開する。
壁や地面を兵が攻撃する度、黒に染められていた場所が白に塗り替えられた。
しかし、それほどの眷属が現れれば敵とて此方の存在に気付く。それを見越していた百々は身構え、心春と鏡像兵にあとを任せた。
「敵を放置するのは得策とは言えぬからな。来るがいい」
「もう! せっかく塗ったのに何してくれてるの?」
ムスビが怒った様子で此方に近付いてくる。軽やかに建物を飛び越えて迫る敵を見つめ、百々は朱色の薙刀の切っ先を向けた。
ムスビは猟兵を攻撃するため、恋の炎を燃え上がらせる。
それは恋とは言葉ばかり。焔は恐ろしい勢いとなって百々や心春、そして鏡像兵に襲い掛かっていく。
兵たちは炎に焼かれて一瞬で消え去る。だが、百々は真朱神楽で迫る炎を逸らし、心春は咄嗟にビルの上に跳躍することで避けた。
されど心春ははたとする。攻撃を避けたことで炎が建物にあたり、自分が塗り返した場所が黒く染まってしまっていた。
「気をつけてください。塗った場所がまた真っ黒になっています」
「ならば打ち消してやろう」
心春からの呼び掛けに応え、百々は新たに飛来した炎を薙刀で斬り裂く。
真正面からぶつかった炎は相殺され、何を染めることもなく消え去った。むっとした様子のムスビはそれによって百々を敵視しはじめたらしい。
敵の気を百々が引いてくれていると感じた心春は身を翻し、建物の間へと飛び降りた。その狙いは他の皆が塗り辛いであろう細かな場所を逃さぬ為。
「私も出来ることを頑張らないと……」
自分の力が役に立つなら、と心春は槍を振るう。
建物の影で見えなくなってしまったが、百々がムスビと対峙している雰囲気は感じられた。まだ此方からの攻撃は通じないいま、助けに行くよりも周囲を塗り潰す方が仲間の力になることができる。
心春は黒から青緑に変わっていく建物や地面を見つめ、決意を抱いた。
百々もまた、放たれる炎を刃で薙ぎ、敵を引き付け続けている。ムスビと百々の視線が交差した。鋭い敵意が身を貫くかのようだったが、百々は決して怯まない。
「我らを甘く見るでないぞ」
神通力による障壁を張り巡らせ、百々は炎と痛みを退けた。
戦場はまだ殆ど黒ばかり。兵たちが塗る白も周囲に散った炎が更に黒へと変えていく。それでも、戦い続ければいつか勝機は見えてくるはず。
そう信じた少女たちは自分が出来ることを行うのみだと決め、其々の力を揮った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
終夜・凛是
トトリ(f13948)と
きまいらふゅーちゃー……俺、はじめて。トトリは?
そっか、はじめてどうし、がんばろ
黒く、塗り潰されたところばっかり
俺、色塗るなら……トトリみたいな色が良い、みどり
トトリが最初の色を付けたら、俺はその傍を攻撃していく
俺の色、つけるなら……やっぱ拳
近くの壁を殴ることから始める
俺の塗る色、何色だろ
赤、かな
高い所、色塗りたい。塗るの難しいだろうから
トトリの手を借り跳躍して塗ってくる
敵、みつけたら俺は近くに走りこむ
懐踏み込んで、拳で攻撃
多少撃たれてもそのまま耐える
トトリには攻撃、させない
痛いのは…我慢できる
トトリ、塗ってて
それが俺の力にも、なるから
灰燼拳が使える気配あれば力の限り
トトリ・トートリド
凜是(f10319)と
キマイラフューチャー、は…トトリも、はじめて
…色塗り、なら、まけない、まけたくない
凜是、よろしく(ぐっ
闇黒色のエリア
高い建物に、空駆けて、手早く上って
どう、みえた?
一度に、塗りつぶせそうな、できるだけ開けた、場所
見つけたら、…うん、いこう、凜是
トトリの色…ちょっと、てれる
孔雀緑青の蔓で黒を塗り潰して、陣地に
拠点防御しながら、岩群青と使い分け
高いとこは、凜是、投げ上げて、塗ってもらう
少しでも早く、色、翻したい
塗り潰し、最優先
敵を凜是が、留めてくれるうちに
効率よく跳んで、色を散らす
…信じて、くれるから。トトリは色塗り、専念
コード、使えるようになったら
おまたせ。一緒に、戦おう
●紅と蔦緑
真二つに割れてしまった世界。
此処は騒々しいほどに賑やかで明るい場所だと聞いていた。けれど、転移の力で移動してきたこの場所は真っ黒だった。
「黒く、塗り潰されたところばっかり」
終夜・凛是(無二・f10319)は初めて訪れる世界を見渡す。
彼の傍らに降り立ったトトリ・トートリド(みどりのまもり・f13948)も辺りをまあるい眸に映し、本来とは違う彩に染められた街を見遣った。
「キマイラフューチャー、だけど……ほんとは、ちがうんだね」
此処は壇上。
奇妙なルールに支配された不可思議なステージ。
凛是とトトリは並び立ち、悪意と闇の色に塗り潰された景色を見つめた。
はじめてどうし、がんばろ。そういって戦いの音が聞こえる方角を示した凛是はトトリに視線を送る。自分たちがやるべきことは分かっている。よろしくね、とぐっと爪めいた手を握り締めたトトリは凛是に信頼の気持ちを抱いた。
「……色塗り、なら、まけない、まけたくない」
決意の言葉を口にしたトトリは崩壊しかけたこの世界を思う。たとえ知らない場所であっても危機の最中にあるならば救いたい。
言葉にしなくとも、彼らの気持ちはよく似ていた。
そして、ふたりは一気に駆け出した。
先ず進むのは戦いの場ではなく近くのビルの上。
高い建物へとひらりと駆けて、手早く上ったトトリ。其処に続いた凛是は眼下を見下ろしてみる。
「どう、みえた?」
トトリが問いかけ、凛是が頷く。
「あった、この下」
「……うん、いこう、凜是」
闇黒色のエリアの中、ふたりが狙いを定めたのは一度に塗り潰せそうな開けた場所。友の名を呼んだトトリはえいやっと地面を蹴り、凛是と共にひといきに跳躍した。
その手にしたペイントローラー、雨弓は黒を違う色に塗り替えるにはぴったりの道具。其処から飛ばした緑絵具の飛沫が勢いよく舞う。
マラカイトグリーンと表すに相応しい深くやさしい翠が辺りを染め上げた。その彩に目を細めた凛是は、実に彼らしい色だと感じる。
そうしてふたりは建物の間に跳躍する。既に足元は黒ではなく、美しい緑。
「俺、色塗るなら……トトリみたいな色が良い、みどり」
「トトリの色……ちょっと、てれる」
凛是の言葉にふるふると首を振って照れたトトリは気を改め、あっち、と指先で壁を示す。其処にはまだ塗り潰せていない黒の領域が合った。
頷いた凛是は拳を握る。
「俺の色、つけるなら……」
やっぱり拳で殴るのが一番良い。そう感じた凛是は振り被り、真横の壁へと思い切り拳を振るった。鈍い衝撃音と同時に広がったのは炎にも似た紅い色。
「凜是の色、きれい」
トトリは彼の髪の色めいた彩に染まった壁を見つめ、ぱちぱちと拍手するように両手を合わせた。褒めてくれたのだと感じた凜是は、トトリの色ももっと見たい、と告げる。
もちろんだと答えたトトリは雨弓を振るいあげた。
宙を舞う絵具は次々と暗黒の色を染め替え、落ち着いた緑へと変えていく。
凛是は赤と緑のコントラストが黒を塗り潰していく様に双眸を緩める。そして、ビルの中腹に未だ塗られていない黒を見つけた凛是はトトリを呼んだ。
「高い所、色塗りたい」
「わかった。おもいきり、投げる、からね」
凛是が示した頭上を見遣ったトトリはぐっと両手を揃える。こく、と首を縦に振った凛是は踏み込み、軽く跳んだ。
そして、トトリは凛是を受け止めるようにしてから自分の腕を大きく上げる。
その勢いに乗って跳躍した凛是は目標地点に狙いを定めた。
刹那、灰燼の一閃が壁を貫く。広がった軌跡は燃えあがった焔のように黒を塗り潰し、猟兵の陣地にもなる領域をつくりあげた。
「トトリ、まだ行ける?」
「……うん、向こうの方、行こう」
くるりと宙で回転して着地した凛是が問いかけると、トトリが別のビルの間に続く道を示す。まだ先は暗黒に染まっていた。
それならば自分たちはたくさん、いっぱい塗っていくだけ。
頷きあったふたりは駆け出す。この世界を壊させないために。そして、真っ黒なステージを自分たちの色に染めあげて行くために――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鵜飼・章
きみが世界を闇で包むなら
僕は朝焼けの紫で塗り潰す
まずは四分の一を塗り潰す事を目指す
【見切り】で攻撃を避けつつ
【投擲/早業/二回攻撃】を駆使して
手当たり次第に針や鋏を投げまくる
火力が不足しそうな分は鴉達に補ってもらい
とにかく手数で勝負
敵が塗り返した場所に即攻撃を加え妨害等も
順調に進んだらUC発動に備え
仲間を巻き込まない離れた高所へ移動
夜明けの時間だ
ほんものの黒を見せてあげる
UC【裏・三千世界】
鴉達に広範囲の壁や床を無差別攻撃させ
一気に勝負をつけよう
三分の二以上を塗り潰せたら
使用UCを【悪魔の証明】に変え単体攻撃
全てを漆黒で染め上げたら
赤い糸も黒ずんでしまうんじゃない
きみは神様じゃない
乙女の敵だよ
●夜から明仄へ
何処までも黒く、深い漆黒が広がる。
それは色鮮やかで賑やかな世界には似つかわしくない奇妙な光景だった。
転移された先は街めいたステージの中の高いビルの上。闇色に染められた景色の向こう側を見つめ、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は双眸を鋭く細める。
その視線の先には炎を振り撒き、ステージを黒に染める少女が居た。
あれがこの舞台を支配するオブリビオン、ムスビだ。そう直感した章は敵を見据え、立っていた地面を蹴りあげた。
そして章は跳躍と同時に鋏を構え、一気に投擲する。
「――きみが世界を闇で包むなら、僕は朝焼けの紫で塗り潰す」
その声は少女に届いていたらしく、ぴくりと耳が動いたのが見えた。それと同じくして放たれた鋏が地面や建物の壁に衝突し、その一帯が朝焼けめいたはした色に染まる。
「止めてほしいな。黒の方が映えるのに!」
ムスビはそれまで戦っていた猟兵を振り払い、章のいる方に駆けてきた。
とん、とん、と建物を飛び越えてくるムスビは札を取り出し、章に向けて一気に投げ放つ。指名札は此方に衝突する勢いだったが、章は身を翻して後方に下がった。
対するムスビはむむっと頬を膨らませる。
更に炎を飛ばす準備を始めたらしいオブリビオンは章を狙い撃つ気のようだ。しかし、黒色が舞台のほとんどを塗り潰している現状、此方からの反撃は無意味になる。
章は敢えてムスビから距離を取り、別の領域へと駆けた。
追い縋ってくる気配はするが炎程度ならばきっと見切ることが出来る。
「まずは夜の色に黎明を」
手当たり次第に針や鋏を投げれば、紡いだ言葉通りに黒が淡い紫に変わってゆく。
背後からは少女が追ってくる気配がするが、章は真正面からは相手取らない。猟兵の領域を広げることを優先すべく章は辺りの気配を探った。
自分とオブリビオン以外にこの付近には誰も居ない。
無差別に鴉を飛ばしても大丈夫だと感じた章は掌を頭上に掲げた。
――人類は滅んだ。美しい朝が来る。
詠唱を紡ぐと周囲に鴉の群れが現れ、辺りの黒に塗り潰されている場所へと舞う。ムスビにも何羽かが飛びかかり、その進路を阻んだ。
もう、と怒ったような少女の声が聞こえ、鴉が跳ね飛ばされる気配が感じられる。
それでも章は駆ける足を止めなかった。背後から放たれた炎を察知し、建物の影に入ることで避ける。
炎が衝突した部分が黒く染まるが、章の鴉が吶喊して塗り返す。
そして――許の色はステージを塗り替えてゆく。
再び高いビルの上へと駆け上った章は黒一色だった領域を見下ろす。いつしかムスビは此方を見失ってしまったようだ。
他の猟兵たちが彩る様々な色を眺め、章は確信した。
闇色の領域で封じられた力は間もなく開放される。
ならば絶えず塗り続けるだけだとして、章は朝焼けの彩にも似た双眸を細めた。
成功
🔵🔵🔴
シャルファ・ルイエ
この場所は真っ黒ですけど、恋ってもっと綺麗な色なんじゃないでしょうか。
広範囲への攻撃なら任せてください。
広く塗り潰せば攻撃が通りやすくなるみたいですし、わたしは他の人の攻撃が通りやすくなるように、塗り潰す方に集中します。
『全力魔法、範囲攻撃、高速詠唱』で【鈴蘭の嵐】を使って、相手が塗り返してくるよりも早く白と水色でステージ内をどんどん塗り潰して行きますね。
手が届きにくい高い所から翼で飛んで、『空中戦』で落下しながら塗り潰してみたりも試してみます。
動く分塗り潰せる範囲が広がるかもしれません。
一定数を塗り潰せたら、オブリビオンよりも壁や床を攻撃です。
攻撃が通る様になったら、一気に畳み掛けますから!
●白と青の花舞
黒、黒、黒。
闇と見紛うほどに一面の黒を見下ろし、シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は頭を振った。遠くで恋の炎で辺りを燃やし、黒に染めている少女。
あれがこのステージの主でもあるのだと感じ、シャルファはぽつりと思いを零す。
「この場所は真っ黒ですけど、恋ってもっと綺麗な色なんじゃないでしょうか」
声は炎の主には届かなかったが元より聞かせるつもりもない。
真二つに割れた世界を救うために先ず行うべきはこの舞台を塗り変えること。
敵が未だ此方に気が付いていないうちに、とシャルファは両腕を胸の前に掲げる。
「広範囲への攻撃なら得意です」
そっと意気込むシャルファはウィルベルを構え、魔力を注いでゆく。
今、殆どが黒に染められている領域では本来の力は封じられているも同然。だけど、この力自体を振るうことは出来る。
詠唱から紡がれた力は杖へと伝わり、その姿は鈴蘭に変わっていった。
広く塗り潰せば潰すほど此方の有利になる。
だからこそ自分は他の人の助けになる為に色を齎していくのみ。
シャルファが解き放った花の嵐は先ず周囲を白く染め上げ、建物の壁や地面へと広がっていった。花弁が触れれば黒一色だった其処は水色へと変わる。
「黒ばかりだったさっきよりは良い景色ですね」
それでも、都市の形をした場所が色で塗られているのは不思議なものだ。
されどそう思ってばかりもいられない。
シャルファは次なる領域を探そうと決め、翼を広げた。飛んで辺りを見渡せば狭い路地めいた場所が見える。
ああいった場所がきっと塗りの死角になる。そう感じたシャルファは敵に見つからぬよう素早く急降下を行い、路地裏に降り立った。
その際に散らした鈴蘭の花は着地と同時に辺りを淡い色で染めあげる。
花が舞い、風が更に彩を運ぶ。
それはまるで闇に光が射すような、希望が齎されるかのような光景に見えた。
シャルファはこれならば自分たちの領域をうまく広げられると感じ、もう一度飛び立つ。敵が他の人に気を取られている間に出来るだけたくさんの場所を白と青に染めよう。
抱く思いに呼応する形で鈴蘭はふわりと舞い続けた。
ウィルと共に、真っ黒な世界を彩る。
こうすることが今の自分の役目なのだと心に決め、シャルファは翼を羽ばたかせた。
きっともうすぐ。
間もなく反撃と、一気に畳み掛ける好機が訪れるはずだから――。
成功
🔵🔵🔴
イデア・ファンタジア
黒っ!全く殺風景ね?私のアートで彩ってあげるんだから。
セプテントリオンはそれぞれが赤・橙・黄・緑・青・藍・紫に対応してるの。虹を描くように塗り潰していくよ!
ユーベルコード、補助系なら効果あるかしら。可能なら『生命賛火』で身体能力を強化して縦横無尽に駆け抜けちゃうわね。
一定範囲を塗り潰した時に使うのはグラフィティスプラッシュ!七本の絵筆を空へ向けてドバーッってね、塗料の雨を降らせるよ。
これで広範囲を一気に染め上げるわ。今日の天気は塗料のち虹!
三分の二以上を塗り潰したらそのまま敵にスプラッシュよ。丁度地形も塗り潰されてるしね。
そのはた迷惑な炎、全部消し飛ばしてあげる!
シャーロット・リード
ペイントの色:濃いクリーム色
少しずつ少しずつ進めていけば打ち勝てるはずなのですよ
まずは武器で周囲を攻撃してどれだけ塗り替わるか確認です
周囲の塗りつぶし優先で範囲が狭かったらユーベルコードで塗っていきますよ
一定の範囲が塗り替わってユーベルコードに本来の力が戻ったら
スーパー攻撃で一気に塗り替えてしまいましょう
少しずつやるのもいいですが、決める時はどーんとした方が気持ちがいいのですよ!
3分の2以上塗りつぶして
本来の力が使えるようになったら塗るのをやめてオブリビオンに攻撃です
もう真っ黒な世界は見飽きたのですよ!
色が沢山あるから世界は美しいのです!
この景色に様にあなたも塗り変えてあげるのです!
エリス・ガーデナー
塗り塗り、面白い戦いになりそう!不謹慎だけどワクワクするわね!
「私が世界を空の色、自由の色に染め上げるわ!」
ただ叩いて回るだけじゃなく、地面を擦りつつ壁に向かい槍投げ!
ダッシュして壁に刺さった槍を抜いて広く壁を刻む二回攻撃!
楽しく暴れ回るの!
UC使用可能になれば敵に全力疾走で一閃!
グラウンドクラッシャーでぶっ潰し!敵の武器を落とし!地面を塗りつぶす!
「アタシって太陽の輝きで、アンタの世界も明るくしてあげる!」
一石三鳥のかしこいアタシ!そこから二回攻撃を捨て身の一撃でぶっこむ!
尻尾が落とせるか?やってみなきゃ分からないじゃない!やるわ!
「オブリビオンでも、アタシという輝きを覚えておきなさい!」
●青空のち虹の天気雨
転移先は闇色に塗られた世界。
「黒っ!」
その光景を目にしたイデア・ファンタジア(理想も空想も描き出す・f04404)の第一声は素直な感想の言葉だった。
街の形をしたステージは実に奇妙で不思議なもの。イデアは辺りを見渡し、賑やかさが相応しい街の変わり果てた姿に肩を竦める。
「全く殺風景ね? 私のアートで彩ってあげるんだから」
「塗り塗り、面白い戦いになりそう! 不謹慎だけどワクワクするわね!」
やるべきことは色塗りバトル。
同時に転送されたエリス・ガーデナー(不器用なニンギョウ・f01337)も意気込み、白銀の槍を構えた。
辺りは見渡す限りの黒。ちらほらと他の猟兵が塗った箇所も見えるが、現在はオブリビオンの領域の方が多い。でも、とシャーロット・リード(ホーリープレイ・f04624)は舞台を見つめた。
「少しずつ少しずつ進めていけば打ち勝てるはずなのですよ」
何故なら敵はたったひとり。対して自分たちには仲間がいる。
三人が同じ場所に降り立ったことも好機だとして、シャーロットは右手の聖なる傷跡に振れた。
まだ敵は少し離れたところにいる。
先ずはステージの特殊なルールに縛られた力が何処まで通じるか、今で言うならばどれほど黒を自分の色に塗り変えられるかを確かめるとき。
「行きましょう」
「私が世界を空の色、自由の色に染め上げるわ!」
シャーロットが穏やかに呼びかけるとエリスが威勢よく答えた。
そして、シャーロットは武器を振るう。すると攻撃した半径一メートルほどが花葉色――濃いクリーム色に塗り潰された。
その様子を瞳に映していたエリスは、先程よりもわくわくした気持ちが強くなったことを感じる。
「なかなか綺麗な色じゃない」
「本当ね。じゃあ私もやっていくわ!」
エリスの称賛にイデアも頷き、ふたりは身構えた。
次の瞬間、其々に左右の壁へと狙いを定めた彼女たちは力を揮う。槍で地面を擦りながら壁に向けて槍を投げたエリス。七大絵筆、セプテントリオンをすべて浮遊させたイデアは壁に絵筆の軌跡を散らした。
エリスが染めた空色にイデアの描いた虹色が重なる。
それは虹の橋が掛かったような青空めいていて、少女たちは思わず微笑みあった。
「せっかくだから楽しくね!」
「楽しく……そういう戦い方もこの世界らしいですね」
エリスが次なる一手に移ろうと駆けていく。その言葉を聞いたシャーロットは幾度かぱちぱちと瞼を瞬き、その方がキマイラフューチャーらしいと納得した。
そしてシャーロットは両手を重ねて祈る。
イデアたちを見ていて分かったのは、思いきり力を振るえばそれだけ広範囲を塗っていけるということ。
聖なる光を放ったシャーロットは新たな範囲を彼女の色に染めてゆく。
黒が其々の色に変わる。何だかこの効果が楽しく思え、エリスは全力で槍を振るえることが嬉しいことだと感じた。
壁に刺さった槍を引き抜き、エリスはひといきに壁を刻む。
空色が更に広がった様に双眸を緩めたイデアもふたたび絵筆に己の力を込めた。
「私も負けていられないわね」
その言葉と共にふわりと浮かんだ七の筆。赤のアルカイド、橙のミザール、黄のアリオト。先ずは暖色が彩を描き、其処に続いて緑のメグレズと青のフェクダが舞い、藍のメラクと紫のドゥーベがステージに色を与えていく。
シャーロットとエリス、イデアの連携は鮮やかだとあらわす他なかった。
だが、それほど目立つとなると敵も此方に気付かざるを得ない。
「敵が近付いてくる気配を感じます。気を付けてください」
逸早くオブリビオンの動きを察したシャーロットが注意を呼びかける。その読み通り、建物の影からムスビが現れた。
「派手に塗り潰されてると思ったら……もう、許さないんだから!」
ムスビは此方を排除しようと炎を紡ぎ、三人に向けて解き放つ。危ない、とエリスがシャーロットの手を引き、イデアも身を翻して炎を避けた。
しかし、躱した炎は壁にぶつかって虹色になっていた部分を黒に染め直してしまう。
「厄介な炎ね……!」
「ええ、けれどあんなものに後れは取らないよ!」
イデアはエリスと共に描いた空の彩が消されたことに唇を噛み締めた。されどエリスは怯んではいない。
塗り返されたならばまた同じことを繰り返すだけ。
シャーロットだって先程、少しずつ進めていけば打ち勝てると言っていた。それにまだ此方の攻撃は通じないと分かっている以上、ムスビを正面から相手取ってはいけないことも分かっていた。
シャーロットは聖光でまだ黒に染まっている場所を狙い撃つ。
すると、次の瞬間。
イデアがはっとしたかと思うと、七本の絵筆を空へ向けた。それは今まで効果を成していなかった生命賛火の力がその身に力を与えてくれたことで気付けたこと。
つまり、今の仲間の攻撃で一定範囲が塗り潰されたということだ。
「ユーベルコードの力が戻ったみたいね。反撃開始よ!」
イデアの声に頷いたエリスは薄く笑み、ムスビに向き直った。
「アタシって太陽の輝きで、アンタの世界も明るくしてあげる!」
宣言と同時の全力疾走。そして、槍による一閃。
地を砕くほどの一撃でムスビを穿とうとしたエリスの表情は明るいが、その気迫は強い。わ、と声を上げた敵は慌てて後方に下がった。
一瞬後、砕かれた地面から瓦礫が散る。
「そんな、あんなの当たってたらひとたまりもないよ……!」
ムスビは血相を変え、思わず逃げ出そうとする。おそらく三人を相手取るよりも他の場所を塗り潰したほうがいいと判断したのだろう。
だが、それよりも先にイデアたちが動く。
イデアとシャーロットは敢えて敵に攻撃を行わず、更に猟兵の領域を広げようと狙っていた。塗り替えされるのが分かっているのだからユーベルコードの力が一度だけ戻った今が塗り潰しの大チャンス。
「少しずつやるのもいいですが、決める時はどーんとした方が気持ちがいいのですよ!」
そういって朗らかに笑んだシャーロットは指先を天に向けた。
其処から放たれた聖なる光が周囲を明るく照らす。それと同じくしてセプテントリオンが空に舞いあがった。
「これで広範囲を一気に染め上げるわ。今日の天気は塗料のち虹!」
七本の絵筆が翻り、カラフルな雨が降る。
更にはシャーロットの光が闇色の領域を明るく染めあげていった。
エリスが描いていた空の色に光と雨が降りそそぐ。その光景は宛ら天気雨のよう。
「もう真っ黒な世界は見飽きたのですよ!」
「そうね、もっと鮮やかにアートに塗っていかなきゃ」
シャーロットが思いを言葉に変えると、イデアが明るく笑ってみせた。そして、ムスビは尻尾を巻いて逃走していく。
されどそれを易々と逃がす猟兵たちではない。
「逃げたわ。追いましょう!」
エリスはその背を追って地を蹴り、ふたりに呼び掛ける。頷いたイデアたちもその後に続き、光や絵具で以て周囲の黒を鮮やかな彩に変えていった。
闇の世界はきっと、もうすぐ終焉を迎える。
そのために最後まで力を揮い続けることを決め、少女たちは駆けてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎!
暗黒色か。キマFには似つかわしくない闇の色だな
本来の色を取り戻して見せる!
私が選択するのは情熱の赤だ
炎霆を構え
『先制攻撃』炎、『スナイパー』『範囲攻撃』『二回攻撃』で一気に攻撃だ
縁結び(物理)は『見きり』で回避
難しければ『オーラ防御』で軽減しながら左腕で受ける
『激痛耐性』で不敵な笑み
「運命の赤い糸か…ロマンがあるな。これは私からの贈り物だ!」
糸に『属性攻撃』炎を乗せ、情熱的に伝わせる
恋の炎とやらにも燃やされてみたいものだな
本当に飛んで来たら『生命力吸収』『火炎耐性』で取り込む
繋がれたまま2/3まで一気に攻め上げ
【メギドフレイム】で敵壁地面纏めて炎の海に沈めてくれる!
月山・カムイ
黒く染める恋の炎とは一体……
ならば世界を切り裂く事で、その闇に染めた部分に光を当てて見せましょう
壁や床へ向けて、数千万の斬撃を放って明るいオレンジに染めましょう
1/4を塗り潰せたら、ムスビの相手は他の方に任せて彼女が新たに塗り潰した領域へ向かい、彼女の元来た方向へ向かって進撃
更に領域を拡大していく
敵の足止めも重要ですが、この場合こちらへ科せられた制限を解除すべきでしょう
いっそのこと、このまま全て塗り替えてやるのもいいですね
場合によっては宇宙バイクで機動力を追加、一気に広範囲を塗り潰してやるのも一興
一心不乱に塗り潰していくとしましょう
……案外楽しいですね、ヌリツブシバトルって
菱川・彌三八
神隠しだ
俺ァさっきまで蕎麦食ってて、後は帰ぇって寝るつもりだっ
たん
だが
……何でぇこりゃ
開いた口が塞がらねェ
取り敢えず隠れて様子を見たとこ、二つわかった
一つ、何でもいいから塗ってください!との事(怒られた)
二つ、俺の得意分野だってェ事
元来、考えるのァ苦手なンだ
それならやるしかあるめェよ
丹で千鳥をぶちまける
……が、当たったがどうで、不思議なモンだ
色は「天色」に、「青海波」まで浮かびやがる
こりゃ面白ェ!
攻撃としちゃあ千鳥がベースだが、描くとしちゃあ別だ
夢中であちこち描き散らす
美人画、風景画、文様、それから
はぁ、よくわからねェが
神隠しも悪かねェ
(陣地の塗りつぶしに注力。絵を描く=攻撃)
●昏き恋の焔
暗黒の闇。
その彩は賑やかなキマイラフューチャーには似合わぬ昏い色。しかもそれが燃えあがる恋の炎が齎したのだというのだから、何だか不穏だ。
「黒く染める恋の炎とは一体……」
「不可解な事ばかりだな。だが、本来の色を取り戻して見せる!」
月山・カムイ(絶影・f01363)が軽く首を傾げる傍ら、ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)はこの世界の危機を退ける決意を抱く。
ユーリの宣言に頷きを返したカムイは絶影の柄を握り締めた。
「ならば世界を切り裂く事で、その闇に染めた部分に光を当てて見せましょう」
幸いにもオブリビオンはこの付近には居ない。それゆえにこの周囲は既に真黒に塗られているのだが、今から塗り潰し返すのだから問題はない。
ユーリは炎霆を構え、焔を巻き起こす。
その瞬間。彼の周囲に灼熱の赤が迸り、漆黒の闇めいた色が塗り替えられていく。同時にカムイも一瞬で数千万にも及ぶ斬撃を解き放つ。
剣閃は橙の彩に変わり、太陽めいた明るい色が宿った。
この調子で行けばこの一帯は炎と陽の色でいっぱいになるだろう。視線を交わしあったユーリとカムイは新たな領域を広げるために踏み出す。
その光景を見つめている者がいた。
「……何でぇこりゃ」
建物の陰から思わず呟いたのは菱川・彌三八(彌栄・f12195)だ。
開いた口が塞がらないとは今のことを云うのか。
自身が生業とする絵描きという性質と、この世界の異変――それも舞台に色を塗るという不可思議な出来事が引き合ったのやもしれない。
彌三八はこの状況を整理するために、今見た光景を自分なりに考えてみる。
わかったことはふたつ。
一つ、何でもいいから黒を違う色で塗ればいいということ。
二つ、自分の得意分野だということ。
更にはこれが今いる世界の危機の一端だということも分かり、彌三八は頷く。元来、考えるのは苦手だ。
「それならやるしかあるめェよ」
先程この辺りを塗った青年たちのように自分も力を振るえばいい。そう考えれば至極簡単なことだ。そして、絵筆を手にした彌三八は立ち上がる。するとユーリたちが此方に駆けてくる姿が見えた。
「あなたも猟兵か。良ければ手伝ってくれないか?」
「向こうはすべて塗りました。次はあちらを塗り潰します」
ユーリとカムイは絵筆を持った彌三八が居れば心強いと感じ、まだ暗黒の色に塗られている領域を示した。
「勿論、同道させて貰うゼ」
彼らに頷いて見せた彌三八はその後に続く。
攻撃を行っただけであれほどの彩が広がるのならば、絵を描けばどうなるか。黒く染めあげられた箇所に辿り着いた彌三八は、好奇心のままに筆を振るった。
途端に宙に描いた千鳥が舞い、壁へと飛翔する。
「こりゃ面白ェ!」
浮かんだのは天色。更には青海波まで。
ユーリの炎めいた赤やカムイが色付けるオレンジとはまた違い、空模様めいた彩と無限に広がる波の文様は美しい。
「なかなか、いや……とても素晴らしいな」
思わず感嘆の声を零したユーリは、自分も負けていられないと意気込む。
それほどに彌三八が描く色は美しかった。カムイも薄く目を細め、彼が振るう筆捌きを真似るが如く刃を振り下ろす。
カムイが描く明るい色にユーリが解き放った焔の色が重なり、黒など最初からなかったかのように辺りを鮮やかな景色にしてゆく。
「それは……人物画ですか?」
其々の力で領域を塗り拡げていく中、カムイは彌三八が向かう壁を見遣った。
「ああ、とびきり美人に描けてるだろ?」
夢中であちこちに己の絵を描き散らしていた彌三八は振り向き、双眸を緩める。
美人画に風景画、様々な文様。それから未だ描けていないものがある、と語って筆をふたたび取った彌三八は意気込んでいた。
だが――。
カムイが感想を告げようとしたそのとき、その場にいる三人全員が顔を上げた。
「……来るぞ」
「この黒で辺りを塗り潰した主ですね」
「へェ、そいつぁ用心しないとな」
彼らが身構えた刹那、少女の姿をしたオブリビオンがその場に現れる。ムスビはあちこち傷だらけだった。おそらく他の猟兵と交戦し、尻尾を巻いて逃げてきたのか。
其処でユーリがはっとする。
ユーベルコードの力が一時的に取り戻せている。それゆえにムスビに傷が与えられているのだろう。
「まだ猟兵がいる! こんな落書きして……もーっ!」
ムスビは怒り心頭の様子。尻尾を逆立てた敵は懐に手を入れ、指名札を取り出した。
ユーリは即座にふたりの前に飛び出し、すぐに放たれるであろう攻撃に備える。カムイは彼に敵の相手を任せることを決め、数歩後ろに下がった。
「後は任せました。こちらへ科せられた制限を解除すべきでしょう」
「それなら俺はそっちの兄さんを手伝うとするかね」
カムイがこの場を離れて策を仕掛けるつもりだと気付き、彌三八はユーリの後ろに付いた。戦いも大事だが、このステージはヌリツブシバトルの力に支配されている。この好機を一気に利用するべきだと考えたカムイは宇宙バイクを稼働させた。
駆動音が響いた直後、カムイはムスビが来た道へと飛び出す。
「わ……逃げるの? 別にいいもんっ。そこのお兄さんと縁を結んじゃうから」
ムスビは一瞬だけ驚いたがカムイに目もくれず、ユーリへと札を投げつけた。避けられぬと感じたユーリはオーラで防御を行い、札の爆発威力を和らげる。
しかし、札から赤い糸が現れてムスビとユーリを繋いだ。されど彼は揺らがず、不敵な笑みを標的に向けた。
「運命の赤い糸か……ロマンがあるな。これは私からの贈り物だ!」
ユーリは糸に炎を乗せ、情熱的に伝わせる。
その熱は衝撃となってムスビを穿つ。冗談交じりに恋の炎とやらにも燃やされてみたいものだとユーリが口にすれば、頬を膨らませて怒ったムスビが本当に炎を放ち返した。
だが、その動きは予測済み。
「させるかよ。こっちを忘れて貰っちゃ困るってモンさ」
彌三八は筆を宙に滑らせて千鳥を描く。
鳥は恋の炎を打ち消すが如く羽ばたき、空中に火の粉を散らせた。ユーリは敵と対峙する中で僅かに視線を彌三八に向ける。
それが礼を示す仕草だと気付いた彌三八は首を振り、当たり前の行動だと視線で伝え返した。いつしか、遠くからは幾つもの足音が聞こえてきていた。
それが別の猟兵だと察したユーリは敵と自分を繋ぐ赤い糸を確りと掴んだ。
逃さない。
そう告げるかのような眼差しがムスビを貫いた。
同じ頃、バイクで駆けたカムイは一番高いビルの上に辿り着いていた。彼の狙いは天辺まで漆黒に染められた建物ごと、周囲を明るく染めること。
見れば他の場所は別の猟兵が様々なカラフルな色に塗ってくれていたようだ。
おそらく、自分がこのビルを塗り潰せば形勢は逆転する。
「一気に広範囲を塗り潰してやるのも一興ですね」
カムイはエンジン音を響かせるバイクを駆り、ひといきに刃を振るった。
黒の世界に色を宿す為に舞い飛ぶ数千万の斬撃。それは瞬く間に壇上を太陽の色で染めあげ、すべてを塗り変えてゆく。
●色鮮やかな世界
そして――本格的な戦いが幕を開ける。
もうこのステージはたった一度きりしか力を使えぬ不便な場所ではない。黒から鮮やかな色に変わった壇上は猟兵たちのもの。
逃げて身を眩ませたムスビを追い、猟兵は集う。
「見つけたわ!」
彌三八たちと対峙するムスビの背を見据え、エリスは槍の切っ先を差し向けた。
敵もはっとして両方に対応できるようにと壁を背にして身構える。しかし、そんな小細工はエリスには通用しない。
「オブリビオンでも、アタシという輝きを覚えておきなさい!」
ふたたび全力を込めた一撃を振るうエリス。
その一閃は敵の持つ鞠を落とし、地面を塗り潰す。更には鋭く重い痛みまで与えるのだから一石三鳥。
特に尾に多大な痛みを与えられたムスビは苦しげに呻いた。
だが、これは猟兵たちによる怒涛の連撃の始まりに過ぎない。
「そこに居たのか。逃走もここで終わりにしようか」
百々の声が響き、その後ろから心春が姿を現す。ユーベルコードが通常通りに使えるようになった今、心春は雷鹿を連れていた。
「フルフュールさん。遠慮は要りません、思いっきりやっちゃってくださいね!
翼の生えた鹿はその声に従うように一歩踏み出す。
それと同時に嵐を伴う雷がまだ黒く塗られていた壁ごと、敵を貫いた。更には百々が呼び出した人形部隊が吶喊していく。
その頃、敵の気配を探った凛是たちも標的の居場所に辿り着いていた。
「トトリ、塗ってて」
道中に暗色の場所を見つけた凛是はトトリに願う。
それは猟兵の領域を更に確保するためでもあるが、凛是なりに彼を心配する気持ちを宿した言葉でもあった。戦えばきっと痛いから。でも、自分ならば痛いのは我慢できる。それにトトリならばきれいな色でこの世界を彩ってくれる。
少ない言葉から凛是の思いが感じ取れた気がして、トトリは頷いた。
「……信じて、くれるから。トトリは色塗り、専念」
そして、トトリは的に向かって走り込んでいく凛是の背を見つめる。
更にトトリは自分の役目を果たすために跳び、指先を天へと向けた。
そして――其処から降りそそぎ始めたのは青い雨。恵みのいろを宿している彩はやさしい雫となって闇黒を翻してゆく。
凛是の方にはムスビが放った炎が襲い掛かってきていた。
だが、彼は大きく踏み込んで一気に敵の懐に入る。炎は身体に痛みを齎したが構わない。それが、己の力にもなる。
力の限り拳を振るえば、ムスビの身体が吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
しかし相手もぐっと堪え、数多の炎を凛是に放つ。
「近付かないで……!」
その怒涛の連撃によって凛是が揺らいだ。されどその身が倒れることはなく、とん、と誰かが後ろから身体を支えてくれた。すぐにわかった。この腕は急いで駆けつけてくれたトトリのものだ。
「おまたせ。凛是、だいじょうぶ?」
「……トトリ。うん、へいき」
「それじゃあ、一緒に、戦おう」
交差する視線は不思議とあたたかく、悪くないものに思えた。
そんな少年たちの遣り取りを見守っていたシャーロットは微笑ましさを覚えた。今ここに集った仲間たちは皆、戦いの終わりを目指している。
よろめいたムスビはもう逃げられない。
何故ならユーリが糸を絡め取り、強く繋いでいるからだ。更に彼のことは彌三八が支え、援護を行っている。シャーロットは仲間に感謝を懐きつつ祈りを捧げた。
「色が沢山あるから世界は美しいのです!」
「そうね、黒も悪くないけど色んな色があってこそだわ」
シャーロットの言葉に同意を示し、イデアは身構えた。祈りから聖なる光が紡がれる中でセプテントリオンも敵へと向かう。
「この景色に様にあなたも塗り変えてあげるのです!」
「そのはた迷惑な炎、全部消し飛ばしてあげる!」
同時に放たれた光と虹の軌跡が敵を貫き、そこに色を与えていった。
彌三八も追撃として千鳥を飛ばし、ユーリも更に繋がれた糸を手繰り寄せて敵との距離を詰めた。
「燃え上がる程の恋が好きなら、炎の海に沈めてくれる!」
「粋だねェ、兄さん」
ユーリの放った焔が周囲ごとムスビを焼き尽くさんと迸る。緋色の一閃を見つめた彌三八は戦いの終わりが近付いていることを悟った。
其処へカムイが現れ、素早くバイクから降りる。
「……案外楽しいですね、ヌリツブシバトルって」
つい塗りすぎてしまったと話したカムイはこの場に集った者たちへ告げた。このステージにはもう、何処にも黒い一帯はないのだと。
「何で、いっぱい塗ったのに!」
それを聞いたムスビは慌てはじめる。きっと少し塗り返せばまた自分のペースになると思っていたのだろう。だが、宇宙バイクで駆けたカムイは残っていた闇色の域をすべて消し去っていた。
それも此処にいる猟兵たちが様々な場所をしっかり塗り潰したからだろう。
シャルファは静かに目を細め、唇をひらく。
「もう終わりですね。せめて、この歌で葬送してあげましょう」
ムスビはもう逃げることも色を塗ることも出来ぬほどに弱っていた。シャルファは手にしていたウィルベルを揺らす。すると鐘が穏やかな星の歌を奏ではじめた。
――空を見て、手を伸ばして。今なら星にだって手が届く。
音に合わせて紡いだ歌声は空から降る流れ星を呼び寄せた。シャルファの歌によって現れた星の一閃によってムスビはその場に膝をつく。
なんで、どうして、と震える声が聞こえた。
章は淋しげに笑む。もはや何処にも、あの闇のような黒は存在していない。漆黒が好きならば最期に見せてやろう。それがせめてもの手向けになるのならば――。
「夜明けの時間だ。ほんものの黒を見せてあげる」
章は指先をオブリビオンに向ける。
そして次の瞬間。昆虫標本に見立てるかのように、標的の胸に大針が突き刺さった。更に濡羽色の鴉たちが翼を広げ、少女へと羽撃く。
全てを漆黒で染め上げたらきっと赤い糸も黒ずんでしまう。
「きみは神様じゃない。乙女の敵だよ」
告げた言の葉は冷たかった。
悲鳴は羽音に掻き消され、辺りは一瞬だけ漆黒の色に染められた。されどそれは鴉の羽根の色が見せた幻想。
羽が風に舞って宙に散った後、少女が居たはずの場所には何も残っていなかった。
「躯の海に還ったのね」
イデアはオブリビオンが居た場所を見下ろし、シャーロットが静かに頷く。アタシの輝きを忘れてたら許さないから、とエリスは彼女なりの葬送の言葉を送った。
彌三八はあっという間に着いた決着の速さに感心し、辺りを改めて見渡す。
「はぁ、よくわからねェが悪かねェ」
最初は黒一面だった舞台の景色は色鮮やかな世界に変わっていた。
凛是とトトリは無事に戦いが終わったことに安堵めいた思いを抱き、すっかり見違えた壇上に目を向ける。
「きれい、だね」
「俺たち以外が、塗ったところもすごい」
少年たちの会話を聞きつけたユーリは彌三八が描いた絵を思い返し、自分たちが先程まで居た区域を示す。
「そういえば向こうに見事な絵を書いた場所もあるぞ」
「そうでした。美人画だそうですから、じっくり見るのも良いですね」
カムイも感想を告げ忘れていたと思い出し、改めて絵を眺めに行きたいと申し出た。百々も興味を惹かれたのか歩き出した少年やカムイたちの後に続く。
「ふむ、それくらいは許されるだろう」
「いいですね、私も行ってみたいです」
「戦いの最中ですけど、きっと少しだけなら……」
シャルファと心春も百々に付いていき、一行はステージの奥へと向かった。心春の言う通り、まだこの戦いは始まったばかり。
しかしこれほど頑張ったのだ。猟兵たちの合作とも言えるステージをほんの少しだけ見て、記憶のひとつにするのも悪くない。
白に水色、青緑。赤に緑。夜明けの彩や天色。
空色に架かる虹と光のいろ。炎や明るい陽の色。
鮮やかでやさしい色に塗り替えられたちいさな世界を眺め、章は思う。
戦いが終わってみればまるで狐に化かされたかのような心地だが、あのオブリビオンは縁を結ぶ存在だったらしい。
それならば、今此処にいる者たちの縁も紆余曲折あって繋がれたのだろうか。
「考えすぎかな」
ぽつりと呟いた章は歩き出し、仲間たちの背を追った。
未だ続くであろう戦いへの思いはある。されど、今だけは彩結びの景色を眺めてもいいだろう。多分、きっと――。
鮮やかで、賑やかで、楽しい心地。
それこそがこの世界、キマイラフューチャーに在るべきものなのだから。
大成功
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