1
バトルオブフラワーズ⑤〜白熱!バトルロワイヤル

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#戦争
🔒
#バトルオブフラワーズ


0




 突如真っ二つに割れたキマイラフューチャー。
 その中枢『システム・フラワーズ』を占拠しているオブリビオン達を叩き出す為の戦い【バトルオブフラワーズ】。
 此処は、システム・フラワーズを取り巻く様に置かれた戦場『ザ・ステージ』の一つ、ザ・ゲームステージだ。
 コンピュータールームの様な大きな部屋の中央に、巨大なゲーム機が鎮座している。
 その周囲にはそれぞれ座布団と卓袱台とやたら大きいモニターが置かれ、卓袱台の上には無線式のコントローラーが置かれている。
 左右は仕切り版で区切られ雑音が一切入らない。
 更には高級そうなヘッドホンやイヤホンも置かれており、引き篭もってゲームするには中々に良さげな空間となっている。
 そんな部屋の奥に一人佇んでいる怪しげな風貌の人物。
 文字通りの怪人である彼はリア充の存在を許せない『リア充どもは爆発しろ怪人』である。
 このザ・ゲームステージを守る傍ら、リア充への呪詛を撒き散らしている。
「リア充は皆爆発してしまえば良い。そうしたら非リア充が蔑まれる事も無くなるだろう……リア充爆発しろ。寧ろする」
 人類の環境破壊から地球を守る為には人類を抹殺したら良いよね!みたいなトンデモ理論を胸に抱く怪人。
 キマイラフューチャーの危機を救う為にも、手早く倒してしまいたいものだ。
「リア充は爆破するリア充は爆破するリア充は爆破するリア充は爆破するリア充は爆破するリア充は爆破するリア充は爆破するリア充は爆破する」
 傍から見ると最上級に危ない人だが、怪人らしいと言えばそうかもしれない。

●――傍迷惑な奴
「えー、はい。そんな感じの怪人です。なんか凄いですね!」
 キマイラフューチャーの怪人周りを予知した望月・鼎。
 一発目から妙なものを見た所為か若干反応に困っているが、猟兵達もそんなものを聴かされれば困る。
 微妙な雰囲気の中で、鼎は説明を始める。
「えー、と。今回の戦いでは特殊戦闘ルールが裁定されています。先ず皆さんにはゲーム会場に移動して、そこで怪人となんかこう、ゲームをしてもらいます。でっかいコンピューターと筐体とモニターが有って、そこで怪人とゲームで対戦をして頂きます」
 どういうことなの……と疑問が渦巻く猟兵達を見て、鼎はいつもの様にホワイトボードを押してくる。
 ボードに描かれた棒人間の周りに、何やら光っぽいエフェクトが描き込んである。
「なんと!今回はゲームで戦い終わるまでお互いに攻撃が届きません!決着が付いてから改めて殴り合い、言わばリアルファイトに持ち込む訳です。あ、今回みたいな戦いじゃない時はリアルファイト厳禁ですよー?」
 うむうむと腕を組んでしたり顔の鼎。
 鬱陶しい顔を止めて続きを話せと促せば、そっぽを向いて鳴らない口笛を吹いてからホワイトボードに何やら描き込む。
 新たにマジックで彩られたのは、やたら上手い某スパイ映画の主演俳優の似顔絵。
 いつ練習したのか。
「今回のゲームはとあるスパイ映画をモチーフにした対戦型ゲームですね。細かいルールは現地で対戦前に怪人が宣言しますけど、私からも説明します。ルールはサバイバル、皆さんと怪人が一度に戦うバトルロワイヤルなアレです。最後まで生き残ったらー、って事ですがまぁどこかで怪人のキャラが倒れたらその時点でこっちの勝ちですね。流石に多勢に無勢となるので一応チーム分けは無し、プレイキャラもそれぞれ誰がどのキャラを選んだかは解らない様にはなってます。見敵必殺とするか、こっそり試合前に味方を見分ける符号を決めておくかは……お任せで」
 にんまりと悪い顔をする鼎。
 当人もそこそこのゲーマーなので、こう言う悪知恵は回るらしい。
「まぁサクっと倒してサクっと勝ちましょう!ゲームで勝てば知らない内に怪人も弱体化する筈です!」


一ノ瀬崇
 春。
 それは花粉症との戦乱の幕開け。
 こんばんは、一ノ瀬崇です。
 初めてキマイラフューチャーのシナリオを書きます。

 今回は怪人とゲーム対決ですね。
 お気軽にボコボコにしちゃってください。
 それと実在する何かしらの名詞が入っているとプレイング不採用となる可能性が有ります。
 武器の名称等、それとなーくほんわかした言い回しになるかと思いますが、ご了承ください。
65




第1章 ボス戦 『リア充どもは爆発しろ怪人』

POW   :    リア充は爆破する!
予め【リア充への爆破予告を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    リア充は爆破する!!
【リア充爆破大作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    リア充は爆破する!!!
単純で重い【嫉妬の感情を込めて】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:くずもちルー

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォーネリアス・スカーレット
 私はオブリビオンを殺しに来たのだ……まずはゲームで殺す!

 バトルロワイヤルの定石は一人にならない事、適切なタイミングで裏切る事だ。私は、この気弱そうな少年を選ぼう。
 序盤は逃げる、隠れる。只管に数が減るのを待つ。怪人共は徒党を組む事に慣れている、このゲームに慣れている。怪人を識別するのは観察すればできる。逆に、奴らは定石を外れて一人で逃げ惑う初心者などいつでも殺せると放置する筈だ。
 そもそも私がゲームに勝つ必要はない。他の猟兵が上手くやるだろう。私は多くの怪人を道連れに自爆、定石から最も外れた行為故に予測は出来ん。

「ゲームオーバーだ、オブリビオン」
 その後で惨たらしく殺す。


ラモート・レーパー
「ゲーム?……」

 ゲーム自体に疎いので自分なりのやり方で戦わせてもらうよ。間引きの厄災を応用してプログラムそのものをハッキング。チートやらバグやらを発現させてごり押しで暴れさせてもらうよ。やり過ぎるとコンピューターそのものを壊しかねないけど壊したら弁償は出来ないのでそうならないよう気を付けはする。


アマータ・プリムス
ゲームですか
最新の物はわかりませんがこれくらい簡単なら当機でもできそうです

UCを発動してアリウスとネロを呼びだす
アリウスはゲームの手伝いを、ネロには戦闘を任せます
「ゲームといえど数は力、二人いれば有利でしょう」

ゲームでは【目立たない】様に隠れながら【学習力】で操作キャラと他のキャラの動きを覚え、別キャラを操るアリウスを囮に【だまし討ち】で敵ごと皆様を狙撃で狙わせていただきます
チームではないとはいえアリウスは当機の意思で操れますから
「グッキル……という奴ですね。やりました」

ゲームが終わって敵が弱体化したらネロに動いてもらって首を狩りとってもらいましょう
「さ、お仕事の時間です。あとはお願いします」


リア・ファル
SPD
共闘アドリブ歓迎
【イ・ラプセル】

そうだね、ボクもキャラ名は「い・らぷせる・りあ」とかにしておこうか
手信号も了解さ
やるからには勝ちたいけど…まあ楽しみながら取り組もうか
「ハッキング」で予め、ボクとクロエさんのキャラ造形を似せられるなら、
アクセとかそれとなく配置しようか
逃げ回りながら戦ってみよう

リアルファイトになれば、「情報収集」や「視力」で
攻撃の出し始めを狙って
UC【慧眼発動】を使用し敵の攻撃を回避

無防備な死角から足に向かってヌァザで斬りつける
ゲームは楽しかったかい?
ボクと一緒に遊んだなら、キミも立派な『リア』充だよね?
というわけで自分を爆破してくると良いよ、
一名様ごあんなーい!


クロエ・ウィンタース
【イ・ラプセル】
ゲームはあまり得意ではないが、やるだけやってみよう
まあ、負けたとしてもやる事は変わらん。気負わず楽しもう

>行動
【SPD】アレンジ共闘歓迎
ゲームでは俺自身に近い外見のキャラを選ぼう
勝手に決められるようなら耳尻尾のアクセサリーをつけるぞ
キャラ名を「い・らぷせる・くろえ」とかそういう名前に
あとは手信号か。リアと予め決めて置こう

リアルファイトは前衛
【フェイント】【2回攻撃】で攻撃
敵の攻撃は【見切り】【カウンター】
超高速攻撃にはUC【黒】を使用
俺も超高速化して正面から打ち合う
爆発寸前に敵蹴り離れるぞ

…む。なるほど。では俺もリア充か
リアは愛らしいからな。嫉妬したくなるのも判らなくもないな


ニレッド・アロウン
つまり……全員ブッ倒せばいいのですね!

というのは冗談に?
ゲームに集中するふりをして【全力魔法】で魔力を大量にかつ【高速詠唱】で素早く水晶鋏に魔力を充填していきましょう。
本番はゲームよりも後なんです、ゲーム自体は適当にスモークグレネードを投げつけたり、無駄に乱射して警戒を煽ったりと妨害に徹しつつ魔力に充填することを優先しておきます。

そんでリアルファイト開催時は真っ先に駆け付け、ダメージ覚悟の魔力障壁の【オーラ防御】で持ちこたえつつ、【捨て身の一撃】である水晶鋏による大切断をぶちかましてやります!

え、見破られやすい?相手もゲームに集中しているはずだからきっとセーフです。

※アドリブ・他者との協力歓迎



「フフフフフ……来たな、猟兵共もといリア充共め! 此処が決戦のバトルフィールドにして貴様等の墓場となるのだぁ!」
 転移して到着した猟兵達を迎えたのは怪人の野太い声。
 ボンバーヘッドにムキムキマッスル、真っ赤なスーツに燃え上がるデザインのマント。
 一目見て怪しい人と解る怪人の鑑だ。
「俺は『リア充どもは爆発しろ怪人』だ! 覚えておくが良い!」
「また随分とストレートな名前ですね」
「斃す敵の名に興味は無いな」
 ビシっとポーズを決める怪人に胡散臭さげな目を向けるニレッド・アロウン。
 彼女とその背後に佇む鎧を着込んだ女性、フォーネリアス・スカーレットは油断無く怪人を見据えているが、他の面々は如何やら部屋の中央に鎮座するコンピューターとゲーム機の方が興味深い様子。
 特にラモート・レーバーはこう言った娯楽には疎いのか、興味深げに周りを覗き込んだりモニターを眺めたりしている。
「ゲーム? ……」
「ゲームですか。最新のものはわかりませんがこれくらい簡単なら当機でもできそうです」
 横にユーベルコード【Date et dabitur vobis】で呼び出しておいた人形『アリウス・プーパ』を控えさせているのはアマータ・プリムス。
 今回のゲームの様な戦いにおける能力はアマータと遜色無い為、実質自分が二人に増えたのと同じだ。
 この数滴有利が後々如何効いて来るのか。
「このタイプのは余りやった事無いかなぁ」
「ゲームはあまり得意ではないが、やるだけやってみよう」
 仲良し二人組と言った様子でまったりと筐体を眺めているのはリア・ファルとクロエ・ウィンタース。
 出会ってからまだ二月と経っていない彼女達だが、最近は二人一緒に依頼を受けたりもしている。
 そんな二人に目を付けて、怪人が憎さを滲ませた雰囲気を出す。
 顔が昔懐かしいタイプの爆弾となっているので表情は解らないが、仮にヒューマンタイプだったなら盛大に顔を顰めている所だろう。
「こら、そこの二人! 到着早々リア充な雰囲気を出すんじゃあないッ!」
「リア充だって、クロエさん」
「……む。なるほど。では俺もリア充か。リアは愛らしいからな。嫉妬したくなるのも判らなくもないな」
 言葉遊びをしながら拳一つ分、距離を詰めてみる二人。
 おちょくりは効果的だった様で怪人はムキーと絵に描いた様な悔しがり方を見せる。
 が、先ずはゲームをこなすのが目標。
 何とも珍妙なルールではあるが気を取り直して怪人は両手をパンパンと打ち鳴らす。
「ええい、この持て余し気味な感情はさておいて注目! 今から貴様等には習熟訓練を行ってもらう!」
「しゅーじゅく?」
 コントローラーを弄り回していたラモートが顔を上げて怪人を見る。
「戦いであるなら問答無用で爆破する、それが戦場の流儀だ! しかし今回は先ずゲームで戦う、ならばゲームを確りとプレイ出来る様になってから改めてスタートするのがゲームの流儀だ!」
「つまりチュートリアルがてら操作に慣れてもらうと」
 妙な所で律儀ですね、とアマータは首を傾げる。
 とは言え操作も何も解らない状況でゲームをやるよりは余程良い。
 早速各々好きな席に着いてコントローラーを手にする。
 と、横のスピーカーから怪人の声が流れてきた。
「電源の操作やら何やらは此方で行う! 安心しろ猟兵共、俺はリア充爆破の為なら如何な悪事も厭わんがゲームは公正公平にプレイする主義だ! ズルは行わん!」
「意外と真面目ですね」
 モニターの角度を調整しつつニレッドがスピーカーを見遣る。
 元々彼女が真面目にゲームをする心算は無い。
 本番はゲームを終えた跡のリアルファイト。
 その時に備えて手持ちの武器『水晶鋏』へと魔力を充填していく。
「フフフ戦いと言うものは敵の二手三手先を読んで行うのですフフフ」
 既に後の戦いへ向けて策を巡らせるニレッド。
 そんな彼女の右隣のブースではラモートが密かに悪戯をしていた。
「ふーっと……」
 モニターの後ろ、中央のコンピューターへと繋がっている配線の先へ向けて、人によっては艶かしく感じるであろう吐息を送り込んでいる。
 ユーベルコード【間引きの厄災】によるものだ。
 本来は息に含ませた病魔で相手を攻撃する技だが、今回彼女は効果を多少アレンジしてゲームのプログラムそのものへの攻撃を仕掛けてみた。
 生命ではない数列への攻撃とあって本人も出来るか如何かの確信は持てなかったが、賭けには勝ったらしい。
「うぉぉぉ!?」
 重厚なメインテーマと共にオープニングの映像が流れ出すが、画面中央に歩み出た主人公のスパイが突如奇怪な動きと共に銃撃音を撒き散らしている。
 突然のバグった動きに慌てて怪人が電源を落とし、端子の接続部をフーフーし始めた。
 バグった動きをした時にその行動をしても無意味なのだが、この辺りはゲームに慣れ親しんだもの特有の行動だろう。
 改めて電源を入れると、再びメインテーマと共に主人公が現れる。
 一瞬怪しげな動きを見せるも取り敢えずはバグった動きをしていないので怪人も一安心。
 その一連のオープニング映像を見て、ラモートは少しヒヤヒヤしていた。
「壊しちゃったら弁償出来ないからね……」
 最初はうっかりやりすぎたかと思ったが、ゲームそのものは破壊されていない様だ。
 妙に動きが速かったり銃を構えても照準が出なかったりと細かなバグは発現している様だが、まぁ許容範囲だろう。
「色々と怪しい感じもするが、まぁ動くので問題なかろう! ではコントローラーは持ったな? キャラは後で選び直すとして先ず移動方法だが……」
 そこから十分程、操作に付いてのレクチャーが始まる。
 オブリビオンと怪人が一緒にゲームをすると言う傍から見たら良く解らない光景が広がっているが、当人達は至って真面目である。
 全員が一通りの操作をマスターし、漸くゲーム本番である。
「良し、これで心置きなくプレイ出来るな! ルールを説明する! 使用するマップはランダム、登場する武器は何でも有り、チーム分けは無し、復活は無し、キャラクター使用制限も無い! 好きなものを使え! それと試合開始は全員が参加を押したら自動で始まる! この通信も切るから此処からはお互い連絡を取り合うのは禁止だ! 俺も守るから貴様等もズルは無しだぞ? 隣のブースをこっそり覗いたりとかはダメだからなッ!」
 怪人の念押しと共にスピーカーの音声が途絶え、代わりにゲームの音楽が流れ出す。
 此処からは各々の選択時間だ。
「既存のものにちょっとしたエディット要素もあるのかー」
 登録ネームに『い・らぷせる・りあ』と付けるリア。
 それぞれのキャラの情報は解析銃と言う身も蓋も無いネーミングの銃を照射する事で画面左上部に表示される。
 専ら敵を倒した後でそれが誰だったのかを特定する為に使われるが、中にはこれを構えておちょくった挙句相手の銃撃を避けながら素手で殴り掛かってくるトンデモプレイヤーも居るらしい。
 小柄な女性にネコミミ型のイヤーデバイスを取り付けて準備完了だ。
 再現度は高く無いが、既存のものを使っているのでこの辺は仕方が無い。
「流石に狼耳は無いか……」
 その隣のブースでは同じ様にクロエが女性キャラに犬耳と尻尾を付けていた。
 本当なら狼耳が良いのだが、無かったので犬耳で妥協だ。
 同じ様にキャラネームは『い・らぷせる・くろえ』とする。
 奇しくも同じキャラと同じ様なアクセサリーを付けた二人。
 ネームは無くとも出会えばお互い直ぐに解りそうだ。
 ちなみに二人が選んだキャラは特性としてタグを付けた相手の位置が黄点として常にレーダーに表示されるようになる。
 強敵の動向を調べるも良し、味方の状況を知るも良し。
 情報を武器とするテクニカルなキャラだ。
「私は、この気弱そうな少年を選ぼう」
 フォーネリアスが選んだのは気弱そうな少年。
 元になった映画には居ない、ゲームオリジナルのキャラである。
 キャラの特性はしゃがんでいる間は攻撃をしてもレーダーに映らないと言うステルス向きのもの。
 通常は立った状態で常に、しゃがんでいても移動や攻撃をしたならレーダーに表示される。
 つまりこのキャラはフルステルスが可能だ。
 初心者向けではあるがしゃがみ移動は遅い為、目視されたり背後から追われると離脱する前に距離を詰められやられてしまう事も多い。
 しゃがみと通常移動を上手く切り替えて戦うのが重要だ。
(如何にも初心者なキャラ選択、加えて特性発揮の為に一人でうろつく。バトルロワイヤルの定石を外した動きをしている相手ならば怪人も然程脅威とは思うまい。寧ろ此処まであからさまであるなら囮を疑い周囲の警戒に勤しむだろう。解析銃も怪人が使おうとはすまい、私達が怪人を判別するのには使うかも知れんが、奴にしてみれば自分以外が敵なのだ。つまり解析銃を使わず、何となく行動を共にしてくるのは十中八九此方に紛れ込もうとする怪人。ならば程好く時間が経った頃に自爆して道連れにしてやろうではないか……)
 鎧兜の下でニンマリと笑みを浮かべる。
 策は十分に練った。
 後は怪人が罠に掛かるのを待つばかりである。
 果たして彼女の目論みは上手く行くのか。
『全員の準備完了を確認。10秒後、ゲームを開始します』
 秒数の部分がカウントダウンされる字幕が画面中央に浮かぶ。
 如何やら他の皆も選び終えた様だ。
 前哨戦、バトルロワイヤルが始まる。

「さてー……どうしようかな」
 ラモートはスティックをぐりぐりと動かしながら室内を動き回る。
 画面は一人称視点、薄暗い室内には他の人影は無い。
 如何やらマップは寺院らしく、石の壁とゆらめく松明の炎が何処か神秘的な雰囲気を出している。
「先ずは移動っと……おぉ?」
 動いた瞬間画面がかなりな速さで流れていく。
 バクの影響か、キャラの移動スピードは通常よりもだいぶ速くなっているらしい。
「これじゃ銃撃ってもあまり命中しなさそう」
 手近な場所に置いてあったエンピツの様な銃を拾って構えるキャラを動かしながら、周囲の状況を探っていく。
 右上のミニマップには自分を中心にレーダーが表示されている。
 部屋の形や自分との高低差は解らないが、別のキャラが居れば赤点が表示される。
 微妙に不便では有るが接敵は解ると言うこの微妙なレーダーが対戦の駆け引きを面白くしている。
 早速レーダーに反応が有るが、直ぐに範囲の外へ出る。
 同時に一瞬だが通路の向こうを人影が過ぎった。
 敵か味方か、取り敢えず突っ込んでみよう。
 エンピツ銃を携えてラモートはキャラを進めていく。
「あり?」
 通路を抜けた先、広々とした部屋が有るが何処にも人影は無い。
 向こうの小道から行っちゃったかなーと思った矢先、左後方にレーダーが光点を映し出す。
「おぉっ!?」
 慌てて振り向くと解析銃を構えてしゃがんでいる大男が見えた。
 解析銃、と言う事は怪人では無さそうだ。
 対応してラモートも解析銃を向けると、一秒程の解析時間を経て左上部に結果が出る。
「あまーた……あ、アマータさんか」
「ラモート様でしたか」
 互いの声は聞こえないが似た様な事を呟く二人。
 ちなみに右後方には同じく大男キャラのアリウスがしゃがんだまま狙撃銃を構えており、怪人が相手だった場合即座に撃ち抜く事が可能な布陣であった。
 割とガチな立ち回りに感心と羨望を抱きつつ、ラモートはアマータについて行く事にした。
 これで三人。
 例え怪人が突っ込んで来ても、返り討ちに出来るだろう。
「もう一人二人味方にしたいなー♪」
 左右にぷるぷる動きつつ銃を構えているラモート。
 ちなみに、彼女が選んだキャラも二人と同じ大男である。
 特性は被弾時のノックバック無効とHP微増。
 マシンガン相手でも突っ込む事が可能な脳筋性能だ。
 特に考えず選んだのでキャラ被りは全くの偶然だが大男が三人も固まっているのは中々に異様な光景と言える。
 大男三人組は索敵を繰り返しながら注意深く進んでいく。
 此処だけスパイ物ではなく傭兵物になってそうなビジュアルだった。

「さてー、何処行こうかな?」
「武器は拾ったが……弾薬が心許無いな」
 幸運にも開始早々に合流出来たリアとクロエのコンビ。
 今は拳銃しか手元に無い為、出来れば強力な銃に持ち替えたい所だ。
「次の部屋行ってみる?」
 事前に決めた合図を使って意志の疎通を図るリア。
 元々は手信号だったがそこまでキャラを自在に動かせる訳ではなかったので、レーダー上のキャラの軌道で信号を描く方法に切り替えた。
 多少時間は掛かるものの、確りと互いの考えを共有出来るのは強みだ。
「よし、前衛は俺だ。援護を頼むぞ」
「はいはーい」
 チャットでもしているかの様にすいすいと呼吸を合わせて進んでいく。
 なるべく松明の灯の届かない暗がりを慎重に進みながら、部屋を回って索敵していく。
 道中でクロエはエンピツ銃、リアは手榴弾を見付けた。
 これで多少火力も上がった。
「此処からは攻めに回れるが……如何するかな」
「んー、見敵必殺で良いんだっけ?」
「そうだな、隙を見せるよりは倒した方が良いだろう。最終的に残れば勝ちだからな」
 レーダーにまだ敵の反応は無い。
 相手がしゃがんで居ない限りは少なくとも近場には誰も居ない筈だ。
「フロア移動してみるか」
「じゃあ上行ってみる?」
 リアのキャラが動いた先、他と色が違う壁が有る。
 アクセスしてみると壁がスライドして上部へと続く隠し階段が現れた。
「寺院と言うよりは遺跡みたいだな……」
 わくわくした様子のリアを連れて階段を上がっていく。
 勿論壁は元通りに閉めてある。
 上がった先に敵が居るかもしれないが、後方から奇襲を仕掛けられるよりはマシだ。
 そうして上がってみると幸いにも他の人はまだ踏み入っていないらしくアイテムが無造作に置かれたままだった。
「お、覗き穴。此処から下の様子が見えるよー」
 リアが中央に空いた穴を見付けた。
 システム的に射線は通るが此処から落ちたりはしないらしい。
 灯も近くには配置されていないので覗き込んでも下からバレる事は無さそうだ。
「折角だ、此処でキャンプして様子を窺ってみるか」
「そうだねー……早速レーダーに反応が」
 しゃがんで階下を窺っているとレーダーに二人分の反応が有る。
 遠くから爆発音も聞こえて来た。
 誰かが戦っている、と言うよりはレーダーの反応を見る限り逃げて来ている様だ。
「さて、誰が動いているのか」

「バトルロワイヤル。それはつまり……全員ブッ倒せばいいのですね!」
 怪人を差し置いて爆弾魔と化しているのはニレッドだ。
 偶々見付けた小部屋が手榴弾やグレネード置き場となっていたのでレーダーの反応を探ってはポイポイ投げて周囲に爆炎を撒き散らしている。
 何故かデフォルトでイっちゃってる顔付きのボスっぽいキャラの見た目も相俟ってかなり怖い。
 特性が爆弾系の威力増加なのも性質の悪い所だ。
 追われているのは気弱そうな少年と、主人公のスパイ二人。
 一人は操作の覚束ない初心者を装ったフォーネリアス。
 そしてもう一人はひっそりと紛れ込んだ心算の怪人だ。
 手にした拳銃で時折ニレッドを牽制しながらフォーネリアスを誘導しつつ逃げ道を確保している様はもう敵味方が如何なっているのか解らない絵面だ。
「ええい、見境無しのボマーとは厄介な!」
 怪人のキャラは自キャラの周囲に他のキャラが居た場合各能力が微増する。
 接近戦や今回の様に誰かを庇いながらの戦いで真価を発揮するキャラだ。
 特性と合わせて猟兵達に紛れ込む事で最後まで生き残り、共闘した事ですっかり気を許した最後の一人を倒すと言う戦法を取っていた。
 本来で有れば見事にハマったであろうその思惑だが、しかし見事に看破したものが居る。
 そう、隣で物陰に隠れているフォーネリアスだ。
(まさか此処まで見事に掛かってくれるとはな……!)
 モニターを眺めながらほくそ笑むフォーネリアス。
 既に逃げる最中にこっそりと向けた解析銃で、この主人公キャラが怪人だと見破っている。
 此方が解析銃を向けた事に気付いた様子も無いので、後は仕掛けるタイミングを見計らうだけだ。
「リア充なんて括りは必要有りません! 等しくボンバーです!」
「もう追い付いてきたか!」
 曲がり角の先にまで届いてきた爆発の光を見ながら、フォーネリアスはこっそりと拾っておいた手榴弾のピンを抜く。
 投げるまで待つとか言う親切設計では無く、引いてからきっかり5秒後に爆発するタイプだ。
 投擲後即座に爆破させたり逃げ道に置いて追って来た相手を攻撃するのにも使えるが、今回の様に抱えたまま相手を追尾して諸共爆発するのにも使える。
 ただ、仕様上ピンを抜いた音は近くのキャラにも聞こえてしまう。
 キャラを振り向かせた怪人も手にしたままの手榴弾を見て、即座に走り出した。
 それを追い掛けて行くフォーネリアスのキャラ。
「此処に来て裏切り……まさかバレたのか!?」
「大人しく爆破されるが良い!」
 通路を抜けた瞬間、手にしていた手榴弾が爆発する。
 爆炎に飲まれたフォーネリアスのキャラは即死するが、怪人のキャラは生き残った。
 逃げ出したので多少距離が空いていた事と、正面に居たニレッドと後方のフォーネリアス二人分の能力増加の効果で防御力が増していた事が幸いした。
 なんたる悪運。
 だがHPを表すゲージはもう残り少ない。
 正面のニレッドは投擲武器を手にしていたので迎撃が間に合わず拳銃で撃ち抜かれた。
 倒れ伏す二体のキャラを見て如何にか危機を脱したと思った怪人に次の攻撃が襲い掛かる。
「ぬおぉぉ!?」
 天井に空いた穴から身を乗り出して銃弾をバラ撒いてくる二人の少女キャラ。
 リアとクロエのコンビだ。
「まさか真下で戦闘が起きるとはな」
「ふふ、ボクって冴えてる」
 片やエンピツ銃で直接狙い、片や手榴弾を投げ込み逃げ道を塞いでいく。
 ゲームでも見事な連携を見せる二人に怪人は防戦一方。
 何よりマズルフラッシュくらいしか見えない上に照準を定めていてはやられる事必定。
 天井からの距離が遠かった事と絶えず動き回っていた事で掠り傷を負うだけで済んだが、このままではやられてしまう。
 隣の部屋へと逃げ込もうとした怪人だったが、そちらから銃弾の雨が襲い来る。
「ヒャッハータイムだー♪」
 部屋の先で待機していたラモートがエンピツ銃を構えて銃弾を照準も合わせずにバラ撒いてくる。
 狙いが不十分な事で余計プレッシャーが強い弾幕が形成され、堪らず怪人はもう片方の通路へと逃げ込んだ。
 長い一直線の通路だが、此処を抜ければ体力増幅効果の有る防弾チョッキが手に入る。
 正面からの撃ち合いなら技量差で圧倒出来る。
 そう考えた怪人だったが、突如画面が真っ赤に血塗られた。
「な、なに……!?」
 キャラの死亡を示すエフェクトの向こう、しゃがんだまま狙撃銃を構える二人の大男が通路の奥にちらりと見えた。
「グッキル……という奴ですね。やりました」
 回り込み潜伏していたアマータが、見事に怪人のキャラの脳天を撃ち抜いていた。
 図らずも見事な連係プレイを見せた猟兵達。
 その知略と豪運の前に、怪人は為す術無く敗れたのだった。

『ビーッ!ビーッ!』
 電子音がゲームの終了を告げる。
 ヘッドホンを外してコントローラーを置いてブースを出ると、何とブースごと床下へと収納されていく。
 やけにハイテクな仕組みだ。
 他の皆もブースから出て来た様で次々と収納されて行き、やがて中央のコンピューターも床下へと消えて行った。
 部屋に残っているのは猟兵達と項垂れる怪人のみ。
「バカな……俺の必勝の策が破られるとは……!一体なぜオブフッ」
 言葉の途中だったが怪人は吹き飛ばされた。
 リアルファイト突入直後の硬直を狙っていたニレッドの水晶鋏による一撃が華麗に怪人の横っ面を殴打したのだ。
 言うなれば、この瞬間を待っていた、だろうか。
「この瞬間を待っていましたー!!」
 実際に口にするニレッド。
 切断する心算で振り抜いた一撃だったが、妙に硬かったのでそのまま殴り飛ばす結果となった。
 転がる怪人へと追撃を仕掛けるのは妖刀『黒』を構えたクロエだ。
 鋭い剣閃が怪人を襲い、そのマッスルボディに赤い筋を刻んでいく。
 体勢を立て直される前に素早く蹴りを見舞い、その身を転がす。
「リア!」
「おっけい!」
 飛ばされてきた怪人を阿吽の呼吸で斬り付けるリア。
 手にした魔剣型デバイス『ヌァザ』で膝裏やアキレス腱を狙い機動力を削いで行く。
「はい、おねがーい!」
「任せた!」
 息の合ったコンビネーション斬撃で怪人をピンボールの様に飛ばす。
 その先では南瓜頭の案山子『ネロ・フラーテル』が大鎌を手に待ち構えていた。
「さ、お仕事の時間です。あとはお願いします」
『けけけ』
 アマータの要請を受けてネロが大鎌を振るう。
 切れ味が悪いのと妙にタフな所為で怪人の頭は何度もガンガン打ち付けられている。
 ボンバーヘッドで無ければえらい事になっていそうだ。
 その横ではラモートが黒剣を槍の様に変化させてちくちくと突いている。
「中々刺さらないなー」
「いででで!」
 割と渾身の力で脇腹を刺しているので怪人は痛そうに悶えている。
 そこへ叩き込まれた『対艦チェーンブレード』の痛烈な一撃。
 当たれば何でもバラバラにすると言う触れ込みのチェーンソー剣の腹で吹き飛ばされ、壁に激しく打ち付けられながら怪人は顔を上げる。
 その先では先頭のフォーネリアスを始めとした猟兵達が武器を構えている。
 えらく絶望的なビジュアルに、怪人は再び口を開いた。
「バカな……この俺がリア充ごときに……!」
「んー、リア充って言うけどさ」
 一歩前に出たリアが悪戯を思い付いた様に口の端を持ち上げる。
「ボク達と一緒にゲームを楽しんでた時点でキミも立派な『リア充』だよね?」
「なん……だと……!?」
「だって非リア充は一緒にゲームする相手も居ないし。何よりキミ以外女の子しか居ない訳だし……お、これはもしやハーレム系リア充?良いねー、今時漫画や小説の中くらいにしか居ないテンプレなリア充だよー♪」
 その言葉に頭の導火線からバチッと火花を散らす怪人。
 人間風に言うならば目を見開いた、と言う辺りか。
「というわけで自分を爆破してくると良いよ!」
「バカな……この俺が、俺がリア充だと……!? じゃあ俺は何を、誰を……!」
 置かれた状況が自身の存在意義や行動理由すら揺るがす状態だったと気付いて精神不安定に陥る怪人。
 そこへ畳み掛けるのはフォーネリアスだ。
「そもそもリア充を爆破して如何する気だ?」
「俺は……俺はリア充を爆破して、非リア充が、非リア充と蔑まれる事の無い世界を……」
「阿呆か。リア充を爆破したとて非リア充は非リア充のままだぞ。そんな考えしか持てないからいつまで経っても非リア充なのだ」
「ぐふっ」
「大体爆破するくらいなら自分を磨いて出直して来い。他人を妬んでばかりで進歩しない様な腐った奴に誰が好き好んで手を伸ばすのだ?」
「むぐっ」
「まぁ貴様はそうやって腐っていると良い。そうしている間に、貴様が同類と見ていた筈の非リア充は自身を見詰め直してリア充の仲間入りをするだろうがな」
「……う、うわぁぁぁ!?」
「これは惨い」
 心をそれはそれは惨たらしく殺された怪人の様子に思わずアマータがしみじみと呟く。
 オブリビオンが此処まで哀れに見えたのはもしかしたら初めてかもしれない。
「まぁ……ゲームオーバーだ、オブリビオン」
 フォーネリアスがチェーンソー剣を構えると、他の皆も武器を構える。
 これより先は、それはもう目を覆いたくなるような無惨さだった。
 端的に言えば見事オブリビオンは討ち果たされた。
 斃した後で、クロエは誰に言うとでもなく小さく呟きを零した。
「あのゲームへの真摯さを、もう少し人付き合いに向ければ良いものを」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月05日


挿絵イラスト