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バトルオブフラワーズ⑥〜救えよ世界、燃やせよカロリー

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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「hey yo! 実にパンクでクールな事になっちまったな!」
 グリモアベースにて大興奮するエクスデス・エクソシズム(死者還し・f15183)は、半分こになったキマイラフューチャーを見て大爆笑している。とはいえ世界の一大事であることは間違いはなく、どのような事件であっても全力で戦いに臨まなくてはならないだろう。
「つーわけで、愛する猟兵の皆、ダンスは得意か?」
 ――世界の一大事に、ダンス。その瞬間猟兵は思い出した、キマイラフューチャーの「ノリ」を。

 今回戦場となる場所は『システム・フラワーズ』を守るために作られた六つの施設、『ザ・ステージ』。現在その全てがオブリビオンによって奪われており、これを奪還しなくては本命である『システム・フラワーズ』へ到達することは不可能。
 また防衛機構として作られた六つの『ザ・ステージ』にはそれぞれ特殊なルールが用意されているのだという。例え敵を討伐したとしても、そのルールに乗っ取らない、あるいはそのルールの中で敗北してしまうと、ステージから放り出されてしまい奪還は失敗する。
 そして、今回奪還するステージのルールとは……。
「dancing☆fever(ダンシングフィーバー)!そいつが今回のルールさ!」
 びしっと決めポーズを取るエクスデス。それに合わせて彼の背後に立っていた十字架も派手に光り輝いた。
 ……して、そのダンシングフィーバーとは。
 今回の戦闘の一部始終は、常にテレビウム・ロックで救出したテレビウムの画面を通してキマイラフューチャー中に生中継される。そして、戦闘中の立ち回りにダンスパフォーマンスを披露し、視聴者を感動させる事ができれば『フィーバー』というものが発生する。
「『フィーバー』すればその攻撃の効果が2~5倍にパワーアップ! だが、しなかったらその効果は半分以下にパワーダウンしちまうってわけだ」
 巨大なスクリーンに表示されたデフォルメ猟兵のスライドショーで解説するエクスデス。つまり、華麗なダンスを披露しキマイラフューチャーの人々を沸かせながら、戦わなければならない、ということである。
「んでもって、今回戦う相手はコイツだ」
 画面が切り替わり、画面いっぱいに映し出されるオブリビオン……燕尾服を纏うスレンダーな男。しかしその顔は巨大なアイスクリームであり、両手には様々な高カロリーな食べ物を持つ怪人、名をカロリー執事。
「こいつは厄介だぜ……油断してると美味いがすげえカロリーの食べ物をたらふく食わされて、とんでもない体重にされちまう」
 猟兵達の中に戦慄が走る――主に体形を気にする女性猟兵が特に。
 更にオブリビオンはボス格であり、相手もダンスを踊って『フィーバー』を狙ってくることも考えられる。

「色々と縛りはあるし、敵も油断はできない相手だ。けどよ、今回の戦いはキマイラフューチャーの全員に届く――すげえ燃えると思わねぇか?」
 エクスデスは力の籠った口調で言う。戦い、そして勝利を収めたとて誰にも喜ばれない事がある。救ってほしくなかったとまで言われることもある。けれど、今回は違う。
「愛する猟兵の皆、今回の主役は皆だ。ダンスだけじゃない、最高の戦いをオレたちと、そしてあの世界の皆に見せて、魅せて、そんでまた世界を救ってやろうぜ!」
 エクスデスが拳を突き上げるのと同時にゲートが出現し、扉が開かれる。新たなる戦いの幕が、上がろうとしていた。


佐渡
●シナリオフレームについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 佐渡と申します、キマイラフューチャーの戦争シナリオです。
 今回のシナリオには特殊な戦闘ルールが採用されております。オープニングの内容をよくご確認いただくことをお願い申し上げます。
 皆様のダンスと戦闘を共に格好良く書きあげようと思いますので、何卒宜しくお願い致します。

●※おねがい※●
 迷子を避けるため、ご同行の猟兵の方がいらっしゃる場合には同行者名、あるいはチーム名等目印をお忘れないようにして頂けると幸いです。
 またマスタープロフィールに御座います【シナリオ傾向】については是非一度目を通して頂くよう強くお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『カロリー執事』

POW   :    血糖覚醒
【自らの野望の為 】に覚醒して【全身が高カロリーな食べ物】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    カロリーボム
【口に向けて一日分超の高カロリーな食べ物 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    お食事会
いま戦っている対象に有効な【相手が好みそうな食べ物(カロリー激高) 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。

イラスト:はちみつモンテ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユーリ・ヴォルフ
アドリブ大歓迎!

炎のように現れ、黒スーツにシルクハット、赤ネクタイで登場
竜槍をステッキの如く赤い花で飾り小道具とする

キマFが大変な今だからこそ
心に炎を灯し明るく楽しくする必要があるだろう
その勝負、受けて立つ!

テンポ良いジャズミュージックとドラムをべースに
移動はタップダンスの如くリズミカルに踵を慣らしジャンプ
円を意識しながら手足を大きく振りキレのある動きで回転
帽子に手を当てクールにキメる

相手とすれ違いざまに竜槍で小突いて【ドラゴニック・エンド】
パチンと指を鳴らして【属性攻撃】炎で渦巻く炎に包み花のように模造する
深々と一礼し、炎が掻き消えるように退場
…観客の反応は如何だっただろうか?緊張するな



●ダンスバトルは突然に
 転送された先、キマイラフューチャーの中心、『システムフラワーズ』へと至る為の関門の一つ。
 ……のはずが猟兵達の眼前に飛び込んできたのは、眩いばかりの光で照らされる巨大なステージ。 その中央には、両手に多数の料理やスイーツを携えた者がいる。
「ダンスなどと言う健康的な催しを行うなど、甚だ理解に苦しみますが……しかし」
 ぎらりと、目の無い顔が猟兵達を捉えると、バカでかい上に生クリームたっぷりのケーキを構える。
「運動すれば食欲は増す、減ってしまったカロリーは倍に致しませんと!」
 怪人、カロリー執事は舞うような動きで猟兵達の口を狙う――一日分の摂取カロリーを有する魔の料理を食わせる為に!

 一直線に走るカロリー執事の進路を遮るように、突如ステージの中央に火柱が上がる。眩い焔に、中継された映像を見るキマイラ達は悲鳴を上げるが……その声は、直後黄色い歓声に変わる。
 火柱の中心から響くフィンガースナップ。同時に覆いが外れるように煌めく火の粉となって散る炎の中心に立つのは……気品に満ちたスーツ姿に洒落たシルクハット、鮮やかな赤い花を飾りステッキ代わりにした槍で帽子のつばを持ち上げウインクをする一人の青年。
「この世界の一大事にこそ、心に炎を灯し明るく楽しくする必要がある……だからこそ!」
 彼の台詞に合わせ、背から大きく広がる龍の翼。ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)は眼前のオブリビオンを指さし高らかに宣言する。
「勝負だ!」
 ――それが何の勝負かは、言うまでもあるまい。
 ダンスバトルの、始まりだった。
 どこからともなく聞こえてくる軽快なジャズのメロディ、それに合わせユーリは踵を鳴らしてステップを踏む。シックな音に彼の軽妙な技が光りながらも、大きく腕を回す大胆な演技構成は力強さも感じられる。更に振り付けの端々に散る火の粉の煌めきは天然のエフェクトとなり、一層の美しさで以て視聴する者達の心を掴む。
「ふ、見事です――ですがッ! 貴方にはッ! 脂肪が足りないッ!」
 一方のカロリー執事は社交ダンスの如くなステップを踏んで、抱えたケーキスタンドからマカロンを幾粒も指で挟みユーリの口へと投擲する。小粒と侮るなかれ、これ一個には通常のドラゴニアンの半日分に相当するカロリーが詰め込まれた恐ろしい一品だ。
 だが飛来するマカロンは、全て空を切る。はたと天を仰いだカロリー執事の見たものは、回転しながら天を舞う雄々しき大翼の炎龍の威光と、堂々たる眼差しの帯びる覚悟。画面を通してみる者達でさえ息を呑み言葉を失うその様を間近で見、それでいてなお動けようはずもない。
 着地と同時に彼はステッキの如く使っていた槍でカロリー執事の背を小突く。触れるか触れないかの些細なモノではあったが、しかしユーベルコードの発動の条件を確実に満たしている。
 シルクハットに手を添え決めのポーズをするのと同時。轟音と共に現る炎によって模られた龍が、巨大な顎で以てカロリー執事を飲み込むと、艶やかに咲き誇る大輪の向日葵の如くに広がり――爆ぜる。結果は、言うまでもない。テレビウム達の画面の向こうには歓喜の渦が巻き起こっていた。それこそまさに、「熱狂(フィーバー)」といって差し支えないはずだろう。

 だがその熱狂を知るのは少し後になる。ふうと息をついたユーリは、口元に残った違和感と、妙な満腹感。指でなぞれば……それは、生クリーム。
 彼の舞いと攻撃は確かに完全にして無欠であったが、敵の攻撃の対処がやや甘かった。龍に喰われるその刹那、カロリー執事はユーベルコードによって彼に一日分のカロリーを食わせていた。
「――もう少し運動しなくてはなるまいな」
 一仕事を終えたつもりだった彼は再び気合を入れ直し槍を構える。まだ、戦いは終わっていないのだ、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルバート・クィリスハール
この世界やっぱりおかしいよね。今更だけどさ。
戦争までこのノリなんだ……初志貫徹はいいことだね?そうか?

【SPD】
まずコードで鼻から口元までしっかり覆う面頬を作って装着。物理的に食べ物が口に入らないようにする。
あとは踊り、か。いいよ、そういうのは得意だ。
ロックダンスを基調としつつ、コードで作った苦無や手榴弾なんかを手首のスナップで投げたり、ジャンプに交えて蹴りを入れたりしよう。
すれ違いざまに相手の袖を掴んで、足払いして頭から投げ飛ばしたりできないかな。

攻撃の基本は早業と咄嗟の一撃、ダッシュでステップに緩急を付けて、視力で相手の動きを見切る。
最後はカメラ目線でお辞儀、手を振って選手交代するよ!


ユキ・コシイ
…恐ろしい敵だけど…そうだね、このシチュエーション…燃えるものがある
それに…敵の対策を考えてない訳じゃない

気絶している方も踊りだす、ユーベルコード…【Abyss of fear】で
全身を使ったキレとスピン重視のダンスを披露しつつ、観客や会場にいる人も一緒に踊りに誘い、盛り上げます
「さあみんな、一緒に踊ろう!―Let's dance!」
強制力は無いので…その場のノリ次第だけど

…ダンサーを募ったのは、盛り上げる以外にも理由があって
大勢居すぎて「いま戦っている対象」を絞れなくなることで、「お食事会」を不発にさせるという作戦です
上手く行ったら、スタンドマイクでどかーんと殴り飛ばしちゃいましょう


リカルド・マスケラス
連携希望

身体はキマイラさんの身体を借りれれば。そうでなければ念動で道具を動かす

「相手がスイーツで妨害してくるなら、こっちもスイーツで対抗っすよ!向こうが高カロリーなもので来るなら、オーダーは自然と決まりっすね!」
と言って、【戦場の料理人】でおからを使ったパンケーキとか豆乳を使ったクリームで作ったスイーツとか低カロリーなものを踊るような手付きで【料理】する。
そして、相手の食べ物を食べさせる前に味方にそれらの料理を食べさせて感覚(音感、リズム感)を研ぎ澄まさせて、ダンスの精度を向上させる。
「スイーツの力を悪用するやつには負けられないっすよ!」

敵から攻撃が来る場合は【念動力】で鎖鎌を動かして凌ぐ



 燃え尽きたかと思われたカロリー執事は、しかしまだ余力があるように見える。頭部のアイスはやや溶けかけているが、それでも口は滑らかだ。
「いやはや、危うく燃焼しつくされてしまう所で御座いましたが――どうやら、私のカロリーへの執念が勝ったようですね」
 
 だが、また立ち上がるのであれば何度でも挑むのみ。次にダンスステージに立ったのは、二人の猟兵だった。
「戦争までこのノリなんだ……初志貫徹はいいこと、なのかな?」
 ぎらつくステージの照明に目を細めながら、真剣みに掛けた状況にどうにも不思議な感覚を拭いきれずにいるオラトリオの青年、アルバート・クィリスハール(仮面の鷹・f14129)。しかしスカイダンサーである以上、ひとたび舞台に上がったのならば問題なくスイッチが入る。翡翠の瞳は鋭く、猛禽の如くに敵を睨みつけた。
 一方、隣の彼とは随分と背丈に差があるその少女は、しかしきらびやかな衣装に身を包んでいた。普段ならば顔にかかる程の前髪を丁寧にセットしその手に強く握るマイク。ユキ・コシイ(失われた時代の歌い手・f00919)は、強い意志を以てその場に立っていた。眼前の敵は(いろいろな意味で)恐ろしい。しかし、今この状況、世界の存亡をかけたステージというシチュエーションは、彼女の中の何かを熱く燃やしていた。
 ――ダンスバトルの幕が開く。
 まず先手を取ったのは、ユキ。息を吸う小さな音と共に、彼女は高らかに声を上げた。
『一緒に過ごそう。ゾクゾクするようなサイコーの夜を――!』
 震える空気、振動は音となり、そして心から振り絞られた歌声は、人を動かす起爆剤となる。彼女のその歌声と、喉を張り裂けんばかりの声を上げながら、人々へ訴えかけるように全身を使うダンスは、一部始終を見ていたキマイラ達の心を初っ端から、そして片っ端から鷲掴みにした。
 彼女の歌と踊りは見たもの聞いたものを誘う魅力と魔力を持っている。無論それは邪悪なものでは決してない。耳にしたなら死者だって昂る、魂のナンバー。
「ああ、確かに素晴らしい――ですがカロリーがあれば、もっと素晴らしくなるはずですよ!」
 しかし、彼女には一つ誤算があった。それはこの場に辿り着いたのは猟兵が初めてであり、中継こそされてこそすれオーディエンスはこの場に居ない。彼女の声はフィーバーを呼ぶ最高の者であれど……執事の食事会を中止にさせられるほどの者はいなかったのだ。
 迫る高カロリーな食品、しかし、それは途中で「何か」によって迎撃されてしまう。いったい誰が? アイスクリーム頭が捉えたのは――赤く色づくグロリオサ。
「僕の事を忘れてもらっちゃこまるね」
 アルバートの声は、ぞっとするほどに冷え冷えとしている。たじろぐその隙を見逃さずに、彼はキレのあるロックダンスに攻撃を織り交ぜながら、カロリー執事を翻弄する。投げられるスイーツをナイフ等で迎撃しつつ、それを掻い潜るならば軽やかな動きで回避。無論ただ受け手に回るばかりでなく、本来はキックの動きをするだけのところを飛び蹴りに差し替え、執事の顔のアイスの真ん中をダルマ落としの要領でぶち抜く。
「わ、私の顔がぁああああ!?」
 悲痛な叫びにも無論情けなど掛けない。更に足払いで体勢を崩させたのちに、二の腕を掴んでそのまま投げ飛ばす。頭から墜落しアイスが悲惨な事になるのは寸でのところで回避されたが、ゴロゴロと地面に転がされるカロリー執事。
 一方のアルバートはその黒髪を掻き上げ溜息をつく。ユーベルコードによって覆われたマスクによって食べ物を無理やり口にさせられまいとするのは確かに効果的だが、ロックダンスと言う激しい動きはスタミナと同時に酸素を求める。それを阻害する覆いは、彼に確かに通常以上の疲労を蓄積させていた。

 ――ここで、カロリー執事は気付く、おかしいと。
 両方とも、確かに自分に対しての対策を打ち出していた。だがそれは完璧なものではない。穴がある。だというのに自分は尋常ならざる追い詰められ方をしている。フィーバーによる効果の増大が理由か? それとも単純な数的不利のせいか?
 否、そんな単純な事ではない。アルバート、ユキのどちらと戦っていても感じた、奇妙な違和感。自分に対する最強のアンチテーゼの気配……そして、理解する。
「まさか、まさかァァァッ!」
「いっえーす、そのまさかなんすねぇ!」
 怒りの咆哮に対し、実に軽い口調で返す存在が一人。一見すればなんの変哲もないキマイラの青年だが、その手には鎖鎌と言う変わった武器を持ち、目に付く狐の面を被っている。更にその手にあるのはヘルシーおやつの数々。何より喋っているのは、狐の面。そう、彼はヒーローマスク。
 リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)。彼のユーベルコードによって作られた料理は、食べた者の感覚や勘などが研ぎ澄まされる効果がある。
 感覚……今回で言えば、音感とリズム感。そう、ダンスや歌に必要な要素を二つ、彼は料理によって底上げしていたのである。彼らが戦っている間も、彼は踊るような動きで料理を作り続けていた。念動力も用い、宙に浮きながら混ぜ合わされる投入クリーム、素早い手つきで作られるおからパンケーキ。華麗なフライ返しは正にトリプルアクセル。
 料理を作る者として、スイーツの力を悪用するやつには負けられない。そんなプライドに燃え戦っていた彼だが、既に結果は出ている。
 ――自分の嗜好の為に料理を振る舞うこの執事もどきと、人の力を引き出し他人の為に料理を振る舞う彼とでは、天と地ほどの差があるのだから。
 当然彼の援護だけが勝利の鍵だったわけではない。ユキの魂の籠った歌声は、それを耳にした他の猟兵達の能力を底上げしていた。同時に彼女の歌が視聴していたキマイラフューチャーを虜にし、フィーバーを巻き起こしたことで、猟兵への応援ムードが一層加速したのである。
 アルバートは言わずもがな、攻撃を担当していた。勿論それだけでなく、自分一人に狙いを集め、歌を歌うユキや、料理をしていたリカルドに手出しをさせないよう立ち回っていた。黒い翼で視線を遮ったり、遠距離武器で攻撃ではなく迎撃を重視していたのは、そのせいである。
 三位一体。当初は別々の戦略ではあったものの、それらはかみ合い一つの結末へと収束していく。

「さあみんな、一緒に踊ろう! ――――Let's dance!」
 ユキの煽りに合わせ、キマイラフューチャー中の感性が響いた気がした。そしてきっと、それは拡大表現などではない。今この戦いを見ている全ての人々の声援が、彼等へと注がれていた。
「よっしゃ、行くっすよ!」
 自身も豆乳プリンを食べてリズムに乗ったリカルドの鎖鎌が執事の身体を固く固く力を掛けて締め上げるようにぐるぐる巻きにして動きを止める。そこへ、ユキがマイクスタンドをフルスイング。重い音と共に「ぐふ」という苦し気な声を漏らすカロリー執事。最後に、ありったけの手榴弾を生成したアルバートがそれらを投げ付け、全員がくるりとターンする。
 クラッカーのような色とりどりの爆発と、散る紙のリボンや紙吹雪。そして、三人は思い思いのポーズでキメを取る。当然の事ながら、一部始終を瞬きさえ忘れ見入ったキマイラ達はまさに熱病の如き大騒ぎな盛り上がりを見せていた。

 ……ちらりと背後を振り替えた三人は、互いに顔を見合わせ同時に頷く。
 三人とも、最後はアルバートに合わせお辞儀、そしてカメラがどこにあるのかはわからないにせよ手を振る。――最後の猟兵に、交代するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってなあ!
うなれ俺のこの長い脚!
スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!

俺の一番得意なフラメンコを披露してみっかあ
靴も履き替えて、服も動きやすいように調節して
さぁ! 演じるはかの情熱の国。ここに常夏の日差しを降らせようぜえ!

長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「スライディング」で咄嗟に踏みつつ
とにかく楽しく! 見栄えも考えて! しっかり最後まで踊りきるぜえ
ここぞというときに攻撃できそうなら
『スカイステッパー』で蹴り上げるぜえ!



「はぁ、はぁ、まさかここまでとは……ッ!」
 苦し気に息を吐きながら、カロリー執事は立ち上がる。既にダメージを負ってはいるが……トドメはまだ終わっていない。
 膝を付いたアイスクリームが僅かに上を向くと、そこには、一人。最後の猟兵が立っている。

「おいおい、まさかもうヘバってんじゃないだろうな?」
 爽やかな男の声。黄金の毛並みは太陽の如く輝き、堂々とした立ち姿は今この舞台の上に立つに相応しい「踊り手」である事の証左。高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)は、オブリビオンへと手を差し伸べる。
 ――だが敵がそれを取ることはない、無防備なその口腔へと叩き込まれる、超高カロリーのデザート。しかし彼はそれをはじき返すことなくただ味わい、喰らう。
「うめえじゃねえか! でっかい油揚げとか食わされるのかと思ってたぜ!」
 しかしぺろりと平らげるとにっかりと笑う。豪放磊落といったその様に、思わず呆気にとられるカロリー執事。それを尻目に腰に手を当てると、次は自分の番だとばかりに諒一朗は構えを取る。それは決して戦闘のポーズではなく、踊りの為の構え。
 冴えた音が鳴り響く。靴が床を叩く、硬質な音。だがタップともまた違う、独特な節と情熱的な振り付け――それは、フラメンコと呼ばれる踊りだ。その中でも彼が舞うのはブレリアと呼ばれる最も速く、激しいもの。
 情熱的に、ただ己のあらん限りを一つ一つに表すかのような力強い舞いは、言葉にできない「熱」を、見たものの心へと刻み付けていく。
 ――だが、世界を憎むオブリビオンに、その輝きはどのように映るのか。彼のそれを邪魔せんと投げ付けられる数多の食べ物。しかし彼にそれが届くことはない。それは獣としての勘か本能か、それとも舞踊への類まれなる集中がそうさせるのか。一切の攻撃が、彼には届かない。
「う、お、ォおおおおおおおおッ!」
 咆哮し、執事の身体はぐずぐずと崩れその体はありとあらゆるハイカロリーを混ぜ合わせた食べ物となり、最高潮へと向かいゆく彼へと突撃していく。すさまじい速度と重量は、食べる食べないを無視しても命中すればただでは済まない事が容易に想像できるものだ。
 ――しかし、彼にはそれさえも届かない。
 彼は、跳んだ。ただのジャンプではない、天を目指し空を足掛かりにするユーベルコードを用いた跳躍。本来の演目にはないその締め。――それは最後まで間近で自分の舞いを見た者への、礼であり、手向け。
「悪いな」
 刹那、鋭い蹴撃がカロリー爆弾となったオブリビオンの肉体を粉砕する。そして、それを以て、彼の舞いは完結する。捧げた情熱は真夏の日差しより熱く、美しかった。声を上げる事すらできなかったキマイラフューチャーの人々の喝采が、この世界の全てに響きわたる。

 健闘と、素晴らしい舞い、そして世界を救う為に戦い続ける猟兵達に向けての惜しみない拍手は、長く、長く続いた。
 六つのステージの一つにて繰り広げられた一つの「戦い」は、拍手が終わるのと時を同じくし、勝利と言う最高の結末と共に、幕を下ろす――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月03日


挿絵イラスト