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バトルオブフラワーズ⑥〜バレエ・メカニック

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #挿絵

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「キマイラフューチャーがまっぷたつになるとは、傑作だな!」
 バーチャルキャラクターのグリモア猟兵、天元銀河・こくう(黒猫看守・f16107)が愉快そうに告げ、集まった面々へと顔を向ける。
「かの世界の中枢『システム・フラワーズ』を占領しているのは、この世界のオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』。ヤツを倒さん限り、キマイラフューチャーに未来はない」
 世界の危機も、彼女にとっては娯楽の一部であるらしい。
 にんまりと眼と口を曲げ。
 悪だくみをするように、言った。
「『システム・フラワーズ』を奪い返すため、貴様らに、ひと暴れたのみたい」

 こくうは、今回の戦争マップを猟兵たちの眼前に広げた。
 まっぷたつになったキマイラフューチャーの中央には、6つの領域がある。
「中枢に至るためには、まずは周囲を守る6つの『ザ・ステージ』を全てとり戻す必要がある。今回、貴様らを送りこむのは『ダンシングフィーバー』ステージ。ダンスに関する特殊戦闘ルールが適用されるステージだ」
 グリモア猟兵は黒い猫耳をピンと立て、眼帯をしていない金の片眼をらんらんと輝かせ、続ける。
「この戦場の戦闘は、テレビウム・ロックで救出したテレビウムの画面を通してキマイラフューチャー中に中継される。戦闘中は、ダンスパフォーマンスを披露しながらうまく立ち回れ。視聴者を感動させる事ができれば『フィーバー』が発生し、攻撃の効果が2~5倍にパワーアップする。ただし――」
 この特殊効果は、いいことづくめではないぞと、前置いて。
「フィーバーが発生しなかった攻撃は、その効果が半減以下となる。ダンスと戦闘をうまく融合させられなければ、敵にやられて、ジ・エンド。というわけだ」
 ゆらり、黒い尾を揺らしながら、こくうは笑んだ。
「本来であればわたしの独擅場なのだが、転送に専念する関係でそうもいかない。……ゆえに、無様な負け方は許さん。おのおの、派手に暴れてくるがいい!」


西東西
 こんにちは、西東西です。

 本シナリオは、『キマイラフューチャー』の戦争「バトルオブフラワーズ」に関するシナリオとなります。
 マップ【6】ザ・ダンスステージをオブリビオンから取り戻すべく戦ってください。

 特殊戦闘ルールは「ダンシングフィーバー(敗北条件:なし)」です。

 それでは、ご武運を。
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第1章 ボス戦 『ギヴ』

POW   :    あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD   :    しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:棘ナツ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠コルチェ・ウーパニャンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そのステージの上には、子供の歓声、恋人たちの囁き声、輝くイルミネーション、人の楽しい思い出が凝り固まった、優しき者がたたずんでいた。
 頭部は、メリーゴーランド。
 可憐なダンス衣装は、くるりとまわるたびに、ふわりふくらむ。
 すらりと伸びた足元には、純白のトゥシューズ。
 しかし彼女の周囲には、人との運命を隔絶を示すように、いくつものはさみが浮かんでいて。
 ――コロン、ポロン。
 ステージ上に現れた猟兵たちを前に、オルゴールの音色を響かせた。
キララ・キララ
ダンス!ダンスって言った!?まかせて、大好きなの!
ミュージックは自分で選んでいいのかしら?

これね、《ダンス》で戦うユーベルコードなの。
【レッドシューズ】!
もちろんみんなに見られてるってこと、ちゃんと意識するわね。
見てる人がわくわくして、楽しくて、踊りたくなっちゃうような《パフォーマンス》をこころがけます!
そのほうが踊ってる方もたのしいものね。《ジャンプ》で軽業もできるよ!

すこしのミスは《アート》の一環ってことにしちゃう。失敗だって演出にはちょうどいいのです!ドキってするでしょ?
だいじなのは、自分とみんながたのしいかどうか!
楽しければ楽しいほど強くなるなんてとってもすてきね!

※アドリブ連携歓迎


アカネ・リアーブル
ギヴがバレエを踊るならばアカネもバレエを踊りましょう
最初はギヴに合わせてステップを
曲に合わせて舞いギヴをも引き立ててみせます
観客にとってギヴもアカネも同じ演者
舞台の上では同じ舞手です
腕や足の動きに合わせて2回攻撃を繰り出します
一番盛り上がるシーンで茜花乱舞を
桜吹雪のように散らしながらギヴを攻撃いたします

瀕死のギヴに楽しかった思い出を召喚されたら一瞬心が揺らぎます
兄様と一緒に踊ったあの場面が思い出されて辛いです
泣きそうな頬に走る傷の痛みが思い出されて、我を取り返します
アカネはもう一人ではないのです
たくさんのお友達がいます
震える手で兄様に攻撃を
いつか必ずお探し申し上げます
それまでお待ちくださいませ


デナイル・ヒステリカル
今回の依頼、重要なのは視聴者のハートを鷲掴みにするパフォーマンスであると判断します。
パフォーマンスの質を上げるためには、一人より二人、二人より三人、三人よりもっと多くの協力が望ましい。
敵も味方も巻き込んで、楽しいダンスを作り上げましょう!

オルゴールの音色を確かめながら、リズムに合わせて一歩、また一歩と踵を鳴らして歩きます。
僕が挑むのはタップダンス!
オブリビオンや周囲の味方の音楽を聞いて拍子を見切り、タンタンタタンと軽快な音を高鳴らせようと思います。

音楽が佳境に移ればUC:スワンプマンを生成。
二人分のビートと軽やかなステップでステージを縦横無尽に跳ね回り、オブリビオンの目を回させましょう。


メリー・メメリ
ダンスしながら戦うんだね!だいじょうぶだいじょうぶ
メリーにはライオンがいるもんね!
なかよしのふえをふいてライオンを呼ぶよ!
ぴゅーひょろろー!

ライオンライオン、ダンスの時間だよ!
二人で頑張ろうね!
オルゴールならおしとやかに、女の子らしくがんばる!

背筋を伸ばしてきれいにおじぎ
この前、おしごとでおしえてもらったからできるもんね!
背伸びして回転しながら爪でえいっ!
じゃんぷしてキック!

ライオンの背中に立ってライオンに合図!
とびはねながら攻撃をするよ!
ライオンもおとなしくおしとやかにね!
ねらうのは敵の足!

最後はいっしょにあんどぅーとろわ!


フィロメーラ・アステール
「おおー、ダンスなら任せろー!」
めっちゃ踊るぞー!
光り輝く【ダンス】【パフォーマンス】を見よ!

勢いよく突入して、敵にまとわりつくように寄り添う!
全身から放つ光の粒子は【破魔】の煌き!
踊っているだけでも魔の力を殺ぐぞ!

緩やかに周囲を回り、敵を彩るように【空中戦】!
捕獲や反撃の動きは【第六感】で感じ取り、躍る【残像】で回避!
【オーラ防御】をかすめる演出を加えて、即興のペアダンスに仕立て上げてみせよう!

届かない、触れられない手は世界の隔絶!
追いかけてくる過去との決別!
思い出から飛び立ち、加速していく現在、未来へと!

【星界式瞬間加速法】で宙を蹴り、スピードを上げて!
最後に【踏みつけ】キックでお別れだ!


海月・びいどろ
きれいな音色、なのに
なんだか、不思議なきもちになる、ね
…いっしょに、踊ろう?

電子の海から喚び出した
硝子海月のジェリーの手を取って
くるり、くるりと、はさみを躱しながら
メロディーに合わせて、ふわりと踊るよ
攻撃は、手と手が離れた時に
にびいろのナイフの舞踏で、踊りと混ぜてみよう

ジェリーにも、手伝ってもらいながら
麻痺の毒を、切っ先にひと塗り
いたみは、すくない方がよいもの
翳すナイフにフェイントを仕掛けて

きらきらとして、たのしい、ような
それでも、海に、かえさないと
思い出は、思い返すから、きれいなの

オルゴールの薇が切れるまで
メリーゴーランドが止まるまで
遊び尽くしたら、おやすみなさい


カーニンヒェン・ボーゲン
ダンスは専門ではありませんが、世界知識として社交ダンスやバレエは心得ております。
相手を引き立てる様に動きを追跡して合わせましょう。
(共闘歓迎です、サポート側になるよう行動。
或いは敵に合わせてステップを踏みながら接近。)

UC:剣刃一閃は仕込み杖を使用します。
接近、ステップを踏みながらの抜刀、攻撃へ
常に周りの音やオルゴールへ聞き耳を向けてリズミカルに行いましょう。

楽しげな雰囲気であるのに、どこか物悲しいのはオルゴールの音の効果なのか、はたまたあの方が過去の者だからなのか…。
遊ぶ目的で遊園地を訪れたことはありませんが、閉園を惜しむほどの場所なのでしょうな。
しかし、何事にも終わりはなければなりません。


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

なるほど、ダンスで視聴者を魅せられれば良いのですね
ザッフィーロ君、お手を拝借
リードはきみにお任せします、この場を素敵な舞踏会にしてみせましょう

社交ダンスの中でも比較的得意なワルツを
BGMはUDCアースのワルツ王と呼ばれる作曲家のナンバーを
「手をつなぐ」をもって踊りましょう
やはりきみ相手だと安心感が違いますね

ワルツを披露しつつ「おびき寄せ」を使って注目を集め
「高速詠唱」も併用していき
フィーバーが発生したら「属性攻撃」「全力魔法」を乗せた
『天航アストロゲーション』で狙い撃ちを行いましょう
終われば視聴者に向かって一礼を
僕たちの踊りはいかがでしたか?


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
ワルツ程度ならば昔踊った事がある故忘れて居なければ体が覚えているだろう…と
俺がリードでいいのか?ならば動きやすい様確り務めさせて貰おう

指輪の時も肉を得た後も馴染み深いワルツを踊ればつい懐かし気に瞳が細まるが親しい相手の言葉を聞けば自然と笑みが浮かぶ
背丈が近いと勝手が違うのではないかと懸念したが…踊りやすいのはやはり宵相手だからだろうか
曲に併せゆっくりと踊りながらも宵の天航アストロゲーションが発動の直前、廻るその影から『穢れの影』を放ち敵を拘束し援護を試みよう
いつ見ても美しい攻撃だな…己では喰らいたくはないが
曲が終れば宵と共に一礼を
確りとリードで来ていたのならば良かったのだが、な


高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってなあ!
うなれ俺のこの長い脚!
スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!

俺の一番得意なフラメンコを披露してみっかあ
靴も履き替えて、服も動きやすいように調節して
さぁ! 演じるはかの情熱の国。ここに常夏の日差しを降らせようぜえ!

長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「スライディング」で咄嗟に踏みつつ
とにかく楽しく! 見栄えも考えて! しっかり最後まで踊りきるぜえ
ここぞというときに攻撃できそうなら
『スカイステッパー』で蹴り上げるぜえ!


神埜・常盤
僕の好きな世界がピンチと聴いて駆け付けたが
……これは、舞踏会かね
ダンスの技能をフル活用し、皆に楽しんで貰えるよう善処しよう

演目はワルツで構わないね?
――さて、マヌカンの御婦人よ、準備は宜しいか
『無貌婦人の円舞曲』を、とくとご覧あれ!

召喚した婦人の手を取り三拍子のステップを
無機物相手とはいえ、淑女に接するような恭しい態度を意識
時折、婦人を抱き締めたり顔を寄せたりと
誘惑するような動作を見せ、観客たちを魅了したいなァ

敵と対峙しても尚、婦人の手を取った侭、三拍子も忘れずに
片手でマヒの術や破魔を纏わせた護符を投擲し攻撃を
体力危うく成ればギヴの御手を拝借
ワルツのステップで距離を詰め、一噛み吸血させて貰おう




「ダンス! ダンスって言った!? まかせて、大好きなの!」
 羊の角と耳をもつキマイラの自称芸術家――キララ・キララ(リトル・シープ・ウィズ・ビッグビート・f14752)は、誰よりも早くステージの上に飛び乗って。
 ピンクの瞳を輝かせ、ユーベルコード『レッドシューズ(アカイクツ)』を発動。
 対する優しき者『ギヴ』はポロンとオルゴールの音を響かせ、優雅に一礼。
 つま先立ちのトゥシューズでトンと地を蹴り、
 ――ポロポロ、コロン。
 音色に乗せ、アン・ドゥ・トロワ!
 両足で踏み切って跳ね、片足で着地すれば、己の内の遊園地へ招くよう、キララへと手を伸べる。
 キララはその手を打ち鳴らすようにしてかわし、肩にかけていたレトロデザインの再生デバイスZONY『EXPERT for Chimaira』を見せるように、オブリビオンへ微笑んだ。
「ミュージックは自分で選んでもいいかしら? もちろん、見てる人がわくわくして、楽しくなるような曲を選ぶわ!」
 ――コロコロ、ポロン、ポポ、コロン。
 もの言わぬオブリビオンは、応える代わりにオルゴールを響かせて。
 跳ねた中空でつま先を打ち鳴らし、白鳥を思わせる片足立ちのアラベスクに繋げる。
 ギヴの動きを追っていたキララも、タイミングを見計らい再生デバイスをON!
 アップテンポで軽快なメロディ。
 低音のビートを刻む曲に乗せ、キララは全身を使ったシックスステップで軽快なダンスを披露していった。
 バク転、スピンに、キックアウト。
 入れ替わり立ち代わり、駆け引きのように続くバレエとダンス。
 舞踏に織り交ぜられた攻防に、テレビウム前で中継を見ていた者たちの身体も、しだいに揺れていく。
「この場では、楽しければ楽しいほど強くなる。――だいじなのは、自分とみんながたのしいかどうか。それって、とってもすてきね!」

 互角の力で観衆を魅せたキララとギヴに続き、ステージに加わったのはバーチャルキャラクターのデナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)。
「このステージ、重要なのは視聴者のハートを鷲掴みにするパフォーマンスであると判断します」
 電脳ゴーグルをサングラスへと変え、舞い続けるオブリビオンへと一礼して。
 パフォーマンスの質を上げるためには、一人より二人、二人より三人、三人よりもっと多くの協力が望ましい。
 先にステージにあがっていたキララはもちろん、
「観客にとって、ギヴもアカネも同じ演者。舞台の上では同じ舞手です。ならばアカネは、ギヴをも引き立ててみせます!」
「ダンスしながら戦うんだね! だいじょうぶだいじょうぶ! メリーにはライオンがいるもんね!」
 アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)とメリー・メメリ(らいおん・f00061)も加わり、ステージ上が一気に華やかに彩られる。
 ――ポロポロ、コロン。
 四方を囲まれたオブリビオンは、それでもとけるように優雅なゆっくりとした動きで、猟兵たちへマイムを示した。
 手のひらを胸にあて。 ――『私』。
 その手を、相手に差しだして。 ――『貴方』。
 最後に、こぶしをつくった両手を顔の前でクロスさせ、そのまま下腹部まで振りおろす。
 そのマイムの意は、――『殺す』。
 ――ポロポロポロポロ、ポロン。
 回転とともに鞭打つようなフェッテがしなり、デナイルは後方へ跳躍し、回避。
 哀し気なオルゴールの旋律に耳を傾け、その拍子を見切っていく。
「貴女のバレエも素敵ですが、このステージで僕が挑むのは、タップダンスです!」
 タン、タン、タタンと軽快にかかとを打ち鳴らし、ギヴの動きを翻弄するように旋律を生み出していく。
「ライオンライオン、ダンスの時間だよ!」
 ――ぴゅーひょろろー!
 メリーが『なかよしのふえ』を吹き鳴らせば、
「こういう時は、こうするんだよね!」
 召喚したライオンとともに、背筋をぴんと伸ばしてうやうやしく一礼。
 「この前、おしごとでおしえてもらったからできるもんね!」と、中継用の映像デバイスへ手を振り、笑顔もアピール。
(「ねらうのは、敵の足!」)
 ライオンの背に飛び乗って、ステージ上を駆けめぐりながら、爪やジャンプで攻撃を繰りだしていく。
 しかし、オブリビオンもやられているばかりではない。
 ――コロコロ、ポロン、ポポ、コロン。
 『すてきなプレゼント』とばかりに、メリーとライオンへハサミをさし向ける。
 シャキンシャキンとリズムを刻むように、それはメリーの赤髪と、ライオンのたてがみを狙い舞った。
 ふたりの間合いに飛びこんだのは、鎖舞扇を手に翼を広げたオラトリオ――アカネだ。
「あかねさす 日の暮れゆけば すべをなみ 千(ち)たび嘆きて 恋ひつつぞ居(を)る」
 自身の装備武器を茜の花びらに変え、ステージ上に花吹雪が吹きあれる。
 その勢いに流され、ハサミはステージ上に次々と落ちた。
 キララは持ち前の身軽さで、誰よりも早くハサミを回収に走り、
「さあ、お次は彼に注目だよ!」
 浮かんでいた映像デバイスをひっつかみ、仲間を映さんと角度を固定してみせる。
「頼みましたよ、コピー&ペースト!」
 デナイルがユーベルコード『自己複製召喚(スワンプマン)』を発動。
 自分と同じ戦力と、自我を保有する電子精霊を召喚し、息のあったビートと軽やかなステップで、広いステージを縦横無尽に跳ね回る。
 ――ポ、ポロン、コロ、ポロン。
 翻弄する動きに、オブリビオンの動きが乱れた、その時だ。
 ライオンが、ステージを風のように駆けぬけて。
 ステージライトの下へ、メリーの小柄な身体が躍りでる。
「メリーといっしょに! あん、どぅー、とろわ!」
 伸ばした爪が、ギヴの衣装を引き裂いて。
 続けて見舞ったキックにより、ギヴはステージ上によよと倒れた。


 舞台上の雰囲気にあわせ、あたりは暗転。
 次の瞬間には、ステージ中央に倒れたギヴに、スポットライトが降りそそぐ。
「演目はワルツで構わないね?」
 穏やかな声音でそうささやき、バレリーナの前に膝をついたのは神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)。
 ギヴは常盤の手を掴み、己のメリーゴーランドに触れさせんとしたが、
「マヌカンの御婦人よ、準備は宜しいか」
 言いはなつなり、常盤は大正浪漫の香りまとう飴色のインバネスコートをひるがえし、高らかに声をあげた。
「――『無貌婦人の円舞曲(マヌカンワルツ)』を、とくとご覧あれ!」
 ステージ周囲のスピーカーから流れはじめたのは、UDCアースで『ワルツ王』と呼ばれる作曲家のナンバー。
 常盤はギヴのすべらかな指先を逆に掴みかえし、突き放すように、人狼の老執事カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)の方へと送りだす。
 老執事は、ほっそりとしたバレリーナの身体を受けとめて、
「ダンスは専門ではありませんが、世界知識として心得ております」
 脚を怪我したギヴを支えるように手をとり、オブリビオンをリードする。
 一方、ダンピールの探偵が踊る相手は、召喚した無貌婦人。
 依代は無機物であろうとも、相手はきらびやかなドレスをまとった淑女。
 常盤はヒトの女性にそうするように、うやうやしい態度を徹底した。
 三拍子のステップに交え、ときおり婦人を抱き締め、顔を寄せて。
 誘惑するような動作を見せれば、テレビウムを通して観戦していた観客たちが、そろってほうとため息をつく。
 滑るようにステージを移動し、カーニンヒェンとギヴに近づいた常盤は、無貌婦人の手を取ったまま護符をはなった。
 マヒの術をはらんだ符は、ギヴの肩に命中して。
 手を組み合わせていたカーニンヒェンには、ギヴの手から、力が抜けていくのがわかった。
 特殊戦闘ルールが敷かれ、テレビウム前に観客の眼がある以上、一方的な戦闘を仕掛けるわけにはいかない。
 カーニンヒェンはギヴを支え、あくまでも優雅に踊り続けるべく、相手を引き立てるように動きをあわせ続ける。

「ザッフィーロ君、お手を拝借。リードはきみにお任せします」
「俺がリードでいいのか?」
「もちろん。この場を素敵な舞踏会にしてみせましょう」
「ならば、動きやすいよう、しっかり務めさせて貰おう」
 見上げた逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)に、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)が応え、ふたりのヤドリガミも円舞に加わる。
 宵にとっても、ザッフィーロにとっても、なじみ深いワルツ。
 背丈が近いと勝手が違うのではないかと懸念していたのだが、踊りやすいのは、宵が相手だからだろうか。
「やはり、ザッフィーロ君が相手だと安心感が違いますね」
 そう告げる紫の瞳を見やれば、ザッフィーロの表情にも自然と笑みが浮かぶ。
 ――常盤と無貌婦人。
 ――カーニンヒェンとギヴ。
 ――ザッフィーロと宵。
 妖艶、可憐、繊細な3組が入り混じるステージは、舞踏会さながらで。
「彗星からの使者は空より墜つる時、時には地平に災いをもたらす。それでもその美しさは、人々を魅了するのです」
 つぶやいた宵と歩調をあわせながら、ザッフィーロも唱えた。
「……生きる限り、纏わり積もる人の子の穢れを今、返そう」
 『穢れの影』が、ギヴの下半身を捉えるようにまとわりつき。
 カーニンヒェンとギヴの手が、一瞬、離れた。
「――星降る夜を、あなたに」
 宵の声がギヴに向けられると同時に、招来した隕石がバレリーナに降りそそぐ。
 声もたぬオブリビオンは、メリーゴーランドをかばうように両手で頭部を覆い、震えるようにその身をすくめた。
(「どこか物悲しいのは、オルゴールの音の効果なのか。はたまた、この方が過去の者だからなのか――」)
 仕込み杖を手に、とどめをはなつべく手を伸べたカーニンヒェンだったが。
 ――ポ、コロ、ポロン。
 ギヴは、涙をこぼすように旋律を響かせると、『楽しかった思い出』をステージいっぱいに、解きはなった。


 子供の歓声。
 恋人たちの囁き声。
 輝くイルミネーション。
 人々の楽しい思い出が幻影のようにあたりを満たすなか、傷だらけのギヴを中心に、一斉に『コール・ド・バレエ(バレリーナたちの群舞)』がはじまる。
 二転、三転するステージに、テレビウム前の視聴者たちの感動も最高潮に!
 猟兵たちへと『フィーバー』が発生し、それぞれに力が満ちてくる。
 ――コロリ、コロコロ。
 ――ポロン、ポポ、コロン。
 踊り手たちはそれぞれ可憐に舞いながら、両の手に構えたハサミで猟兵たちを攻撃しはじめる。
「きれいな音色、なのに、なんだか、不思議なきもちになる、ね」
 海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)はそう告げて、
「キミの力を貸して欲しいの。――いっしょに、踊ろう?」
 電子の海から喚びだした硝子海月のジェリーの手を取り、くるり、くるりと、向けられるハサミをかわし、舞い踊る。
(「いたみは、すくない方がよいもの」)
 にびいろのナイフには、麻痺の毒を切っ先にひと塗り。
 フェイントを仕掛けながらひるがえせば、バレリーナたちは次々と動きを鈍らせていく。
 『楽しかった思い出』のなかに懐かしい声を聞き、アカネは一瞬、心が揺らいだ。
 舞い踊るバレリーナたちに、重なるはずのない兄の姿を垣間見て。
 しかし、頬に走った傷の痛みで、我に返る。
(「アカネはもう、一人ではないのです。たくさんのお友達がいます」)
 鎖の描かれた舞扇を手に繰りだされたハサミを払いのけ、構える。
「兄様、いつか必ずお探し申し上げます。それまで、お待ちくださいませ!」
 焦がれる想いもろとも、桜吹雪のごとき花弁の嵐で押し流していく。

 閃くハサミをスカイステッパーで器用に回避しながら、ホッキョクオオカミの人狼、高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)は、文字通り敵の真中に身を投げた。
「ダンスなら任せてくれよお、ってなあ! うなれ、俺のこの長い脚! スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!」
 挑むのは、彼が最も得意とするフラメンコ。
 ハイウエストズボンに、ショート丈のジャケット&ベスト。
 キレのある手腕の振りに、力強い目線。
 長い四肢を活かした足さばきに、情熱的な踊りは良く似合った。
 太陽に惹かれるよう集まったバレリーナたちに囲まれたなら、一斉に向けられたハサミを、スライディングでとっさに回避して。
 拍子が乱れたと、諒一朗眉根を寄せた、その瞬間。
 ――タンタン、タタン!
「敵も味方も巻き込んで、楽しいダンスを作り上げましょう!」
 タップダンスで戦い続けていたデナイルが、召喚した電子精霊とともに、手拍子とステップを高らかに鳴らし、諒一朗を盛りあげる。
 そう、このステージでは、楽しんだ者こそが力を得るのだ。
 とにかく楽しく!
 見栄え良く!
 そして、しっかり最後まで!
「さぁ! 演じるはかの情熱の国。ここに、常夏の日差しを降らせようぜえ!」
 男性二人によるフラメンコ&タップダンスは、ステージの一部を情熱の色に塗り替えた。
 彼らの勢いにのまれたバレリーナたちは次々と力尽き、七色のイルミネーションと化し消えていく。

「おおー、ダンスなら任せろー! めっちゃ踊るぞー!」
 フェアリーの聖者、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は、ここぞとばかりに光り輝き、ステージに煌めきを振りまいていく。
 全身からはなつ光の粒子は破魔の煌きであり、フィロメーラが踊るだけで、バレリーナたちの力を殺いでいく。
 それでも次々と伸ばされる手やハサミは、舞い踊りながら第六感や残像で華麗に回避!
「届かない、触れられない手は世界の隔絶! 追いかけてくる過去との決別!」
 フィロメーラは輝きを増しながら、ユーベルコード『星界式瞬間加速法(スターリー・ロケットスターター)』で宙を蹴り、ぐんぐんスピードを上げていく。
「思い出から飛び立ち、加速していく現在、未来へと! ――世界の果てまで、かっ飛ばすぞー!!」
 連続キックに続いて閃光のごとき輝きがステージを満たし、次の瞬間、一部のバレリーナたちが蒸発するようにイルミネーションと化して。
 傷を負ったバレリーナたちを相手取るのは、ワルツの踊り手たち。
「さあ、きみたちも舞踏会に招待しよう!」
 常盤は無貌婦人とともにステップを踏みながら距離を詰め、バレリーナの御手を拝借。
 牙を覗かせその手を一噛み。甘美な血を味わって。
 ザッフィーロと宵は連携を重ねながら、降りそそぐ隕石で『楽しかった思い出』たちを過去へと還していく。
 ――美しくも、容赦のない攻撃。
 ザッフィーロは「己では喰らいたくないものだ」と考えながら、
「僕たちの踊りはいかがでしたか?」
 中継する映像デバイスへ向かい、宵とともに一礼して見せた。

「えいっ! じゃんぷしてキック! ライオンも、おとなしくおしとやかにね!」
 言葉とは裏腹に、赤髪をなびかせたメリーはライオンライドでステージ上を駆けめぐり、仲間たちの援護をしながら、自身もダイナミックに舞っていた。
 ふいに、着地に失敗して姿勢を崩し掛けたところへ、
「おっと!」
 駆けつけたキララがメリーの手首をつかみ、ぽーんとライオンの元へ放り投げる。
「失敗だって、演出にはちょうどいいのです! ドキってするでしょ?」
「キララ、たすかった!」
 ぱちんとウィンクして見せるキララへ、中空で姿勢をたて直し、サーカスさながらライオンの背に着地したメリーが大きく手を振りかえす。
「光り輝くダンスパフォーマンスを見よ!!」
 敵を彩るように周囲をめぐるフィロメーラの輝きを追うように、カーニンヒェンは仕込み杖を手にステージを駆けていた。
 ギヴの元へ行こうとするたび阻むバレリーナたちを、ステップに乗せ、一刀に伏していく。
「きらきらとして、たのしい、ような。それでも、海に、かえさないと。想い出は、思い返すから、きれいなの」
 にびいろのナイフを手に、びいどろも踊り続けている。
「オルゴールのぜんまいが切れるまで。メリーゴーランドが止まるまで。遊び尽くしたら、――おやすみなさい」
 オブリビオンがイルミネーションと化し爆ぜるたび、硝子細工の海月が煌めきを映し、まるで銀河のようにちかちかと瞬く。
「ダンスは情熱! 溢れるパッションをぶつけるもんだ!」
 諒一朗の熱量が、ひとり、またひとりと、バレリーナを過去の輝きへと還していく。
 どれほどよく似た踊り子たちが居ようとも、カーニンヒェンは間違えない。
 仲間たちが道をひらくように、バレリーナたちを一掃していき。
 そして、残ったのは。
 ――ポロポロ、コロン。
 ほんのひとときであったけれど、手を組み合わせ、ワルツを踊った。
 ――可憐なダンス衣装は、くるりとまわるたびに、ふわりふくらむ。
 ――すらりと伸びた足元には、純白のトゥシューズ。
 今度こそと手を伸べ、引き寄せたオブリビオンは、請うように老執事に顔を寄せたが、カーニンヒェンは静かに首を振り、拒んだ。
「遊ぶ目的で遊園地を訪れたことはありませんが、閉園を惜しむほどの場所なのでしょうな。……しかし、何事にも終わりはなければなりません」
 円舞にあわせ、仕込み杖を抜きはなち。
 抱き寄せるように、優しき者を刺し貫いた。
 ――ポ、コロン。
 ぜんまいがきれるように、ギヴはそのまま、こときれて。
 カーニンヒェンの腕のなかで、七色のイルミネーションと化し、消えていった――。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月02日


挿絵イラスト