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バトルオブフラワーズ③~激突! 海怪人ロボ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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 キマイラフューチャーの窮地に集まった猟兵達を前にして、甚平を着た小太りの冴えない男が叫ぶ。

「キマイラフューチャーが真っ二つなんだ! 惑星割断カットインを出してしまった悪い子は速やかに名乗り出るんだ、怒らないから!」

 真顔でそんなことを言う原・ハウスィ(f01358)だったが、その場に集まった全員が、自分と同じく真顔で、無言を貫いたのを見て、ごほんと仕切り直した。

「というわけで、テレビウム・ロックが解除され、中枢に続くメンテナンスルートを開放した所、キマイラフューチャーが大変なことになってしまったんだ。これから、みんなにこの件を解決するための第一歩を踏み出してもらうよ……これを見て欲しいんだ」

 そう言って自身が着ている甚平の懐から、質量保存の法則を無視した巨大な地図を取り出し、全員に見えるように広げる。
 そこに描かれていたのは、割れた世界の間に出現した六つの陸地『ザ・ステージ』、現在オブリビオンによって占拠されているそれらの内一つ『ザ・ビルドステージ』の拡大図であった。
 キマイラフューチャーの表面部を再現したかのような都市が広がるその中央に、巨大な機材や資材が揃えられた基地があるのが見てわかる。ハウスィはそこを指さして、トントンと叩く。

「端的に説明すると、この基地を狙ってオブリビオンが繰り出して来た巨大オブリビオンロボが攻めてくるんだ。これを、みんなが基地にある物を使って作り上げたロボットで撃退して基地を守ることが、今回の目的だね」

 ハウスィはそこから更に説明を続ける。横道逸れまくりで多分に無駄を含んだ説明から要点をあげると、
 一.巨大オブリビオンロボには、猟兵が乗った巨大ロボでしか対処できない。
 二.作れるロボには、資材の数に限りがあるので、無駄に巨大な物は作れない。精々相手の五分の一程度の大きさまで。デザインは自由。
 三.猟兵ロボの力が揃えば、合体してオブリビオンロボを撃滅するだけの力を得ることができる……かもしれない。
 四.上記から外れない限り、手段を選ぶ必要はない。
 五.グリモア猟兵からの直接的支援はいつも通りない。
 ということだった。無駄に長くなった説明を満足気に終えたハウスィは、呆れている猟兵達には目もくれず、右手を高く掲げる。すると、その手に光り輝く四方辺が出現し、段々と眩い光を強めた。

「それでは、大惨事スーパーキマフュー大戦α、開幕なんだ! みんなの命を、ハウスィにくれ!」

 その発言に対する突っ込みをする暇を与えず。強い光が、猟兵達を包み込んだ。


ハの字
 はじめましてこんにちは、新人マスターの「ハの字」です。
「8」ではなく「は」です。よろしくおねがいします。

 今回、皆様には『ザ・ビルドステージ』にて基地防衛戦を行ってもらいます。
 特筆事項としましては、オープニング中にもあった通り、
「猟兵はロボットを作成、乗り込んで戦わなければならない」
「トドメはロボットで合体して行う必要がある(基本的に、最後には必ず合体する)」
「失敗すると基地が破壊されて敗北となってしまう」
 という点が挙げられます。ご留意ください。

 ロボットの形状などは自由です。自分が巨大化するもよし、SFロボット風でもよし、可愛いぬいぐるみ風でもよし、自分が戦いやすい物を選んでください。

 最後にどのような合体をするかどうかなどは、それぞれプレイングに書き示してください。それらを参考に描写します。

 では、ご参加いただければ幸い、プレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『海神ポセ男』

POW   :    ヒッポカムポスわっしょい
自身の身長の2倍の【金色のたてがみをもつ海馬の引く馬車 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    クロノス激おこ
【触手の先】を向けた対象に、【麻痺状態にする電撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    アムピトリテさまさま
【毒を持つ蟹足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:阿賀之上

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレド・ダークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

二天堂・たま
敵は巨大ロボなんだな?
よし、ロボを作って戦う前に、UC:猫の毛づくろいで敵ロボの足元の摩擦を無くして転ばせてやろう。
ただ直接床舐めるのはな…よし、前足舐めながら床磨きしてツルツルにしよう。

ワタシのロボは…安定性を高めるために多足型(八本足)、低重心ロボを作ろう。
飛び道具や特殊な武装はなし、装甲を強くして馬力を高める。
低重心キックやジャンプしての踏みつけて敵ロボを攻撃だ。
トドメは八足による連続キックを見舞おう。
アルダワにはガジェッティアなる“ロボのエキスパート”が多かったからな一度やってみたかったんだ。


天都狐・華夜
「このメインフレームって、鉱山作業用の重装甲仕様ですねー」
持ってきていたホモォビウムを解体し、猟兵ロボの素材に転用。
多脚戦車(亜種)を製造し、【スティレット67d/e 戦術重機動兵器【FUJI】】を機体中枢兼非常用の脱出装置として搭乗し出撃する。
【スティレット02A】からの対地航空支援を受けつつ、戦闘を開始。
隙あらば、UC【全兵装照準】を使用していく。
猟兵ロボの武装
1.頭部:機銃
2.右腕部:戦車砲(ホモォビウムから転用)
3.左腕部:ミサイルランチャー
4.腰部:機関砲
5.脚部(戦車の車体):パイルバンカー


ユウキ・スズキ
「ふむ…機械には疎いのだが…」
 そう言いつつ組み上げたのは、ボディがコクピットの人型兵器。
「右碗部マニュピレーターに散弾砲。左碗部にはパイルバンカー…」
 そして背部に背負った巨大な…展開式チェーンソー?
「ふふふ…かつてレイヴンと呼ばれた私の操縦技術…お見せしよう。」
 ブースターを起動して急接近。右碗部散弾砲で牽制しつつ、隙を見て左碗部パイルバンカーの一撃を叩き込む。
 数発パイルバンカーを打ち込んで炸薬が切れたら左碗部をパージ。
 背部に背負った巨大チェーンソーを接続して一気に突っ込む。
「ここが!この戦場が!!私の魂の場所だ!!!」
 合体は、そのままチェーンソーを使えるように左碗にでもなろうか。


カーバンクル・スカルン
……惑星割断カットインって何。あるなら欲しいけど。

まー、これでもスクラップビルダーの端くれ。協力させていただきます!
私が使ってる拷問器具の設計図はあるからこれだけ材料があればすぐに再現可能。

巨大版「カタリナの車輪」を作って戦場に突入!
パンジャンドラムと違って敵をただ轢き殺すだけのトゲだらけの車輪だけど、見かけた敵は絶対に逃さない追尾機能つき!

合体する時は……背中にくっつくか手持ち武器かなぁ?


ジニア・ドグダラ
……合体?『浪漫は分かるが、合体か……燃えるな』ヒャッカ!?正気ですか!?

正気を乱されながらも【高速詠唱】で巨大な骸骨の霊を召喚、すぐさま【怨嗟の声】で周囲にある資材を【呪詛】塗れにすると、資材が独りでに浮き上がり骸骨に接着し、機械鎧染みた骸骨として現れます。
……え、これ、ロボットです?これに、乗れと?

【覚悟】を決めてフックワイヤーで自身を括り付け、骸骨を動かします。
そのまま機械と骨による巨大な【拳】で相手の脚部を掴み、容赦なくへし折って機動力を減らしていきましょう。相手からの攻撃は呪詛塗れの資材で防御させます。

合体は……どうなるんでしょう、武器あたりになるのでしょうか?
※アドリブ・絡み歓迎


ベイメリア・ミハイロフ
他でもないハウスィさまからのご依頼ですもの
お聞き申し上げない訳にはまいりませんね
わたくし、身を粉にして働きますね

乗り込む機体は真っ赤な
…いえあの真っ赤と申し上げましてもアレではなく
そしてくまさんのような、例えますならばベアッ○゛イのような
かわいらしくも硬い形状のもので戦いたいと思います

激おことさまさまは
絶望の福音にて攻撃を先見し回避したい所
但しその際に基地が破壊されるようであれば
武器受けにて捌く又はオーラ防御にて防御いたします
こちらの攻撃はジャッジメント・クルセイドにて
馬車を狙ってみましょうか
止めを刺せますようであれば
機体を変形し他のお仲間さまとの合体を試みます


※連携・共闘、合体歓迎いたします


ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎

ロボット…ロボットの作成か…はてさてどうしたもんかね。
ソウイエバ丁度ヨク、作ル予定ダッタ、キッチンカーの設計図ガアルンジャッター!
そうだ、これを元にすればきっと簡単にキッチンカーからの変形ロボが作れるぞ!

○戦闘
無事キッチンカーから乗り込み型メックに変形するロボが完成したぞ!
その名も…!「KITCHEN:げんちゃん」じゃ!…ってこれは店の名前じゃな…。
こやつ自身の名前は…そうじゃの、「ゲンチャンウォーカー」じゃ!
戦う車、War Car…なんつってな!!

○合体
装備したUCの通り、今回の売りは拳じゃ!
てわけで、わしのロボは右腕か左腕でも務めるかのぅ。
皆のキズナを併せた拳を叩き込もうぞ!



 ザ・ビルドステージに現れた、身の丈四十メートルはある、巨大な海洋生物のような怪人……否、端々に見える機械的な部品からわかる通り、それは巨大なロボットだった。鋼鉄の巨大生物が、無人の都市を蹂躙しながら、中央部、猟兵達が待ち構える基地へと進撃を続けている。

『ポーセポセポセ! このまま基地ごと奴らを叩き潰してやるポセ~!』

 興が乗った「海神ポセ男ロボ」が高々と笑い声を上げながら、ビルを破壊して進む。その頃、基地では、天都狐・華夜(f01491)やゲンジロウ・ヨハンソン(f06844)、ベイメリア・ミハイロフ(f01781)ら猟兵達が、

「このメインフレームって、鉱山作業用の重装甲仕様ですねー。思ったより資材が多くて迷ってしまいますね」

「おお、そういえば丁度よく、作る予定だったキッチンカーの設計図があるんじゃった……こいつを使えば……」

「どうせ乗るなら、可愛らしいマシンが良いですわね。どう作りましょう」

 と、機材と資材を前にわいわい騒いでいた。このままでは迎撃が間に合わない可能性まであった。

『ポセポセポセ! のろまな猟兵ども! このまま踏み潰してやるポセ~!』

 独特の声で笑いながら突き進むその足元、巨体故にか海神ロボは気付けなかったが、毛玉が一匹、マシンも作らずにせっせと床を磨いていた。

「これだけの巨体、多脚とは言えどバランスをとるのはさぞかし難しいだろうな?」

 言いながら、前足をぺろぺろ、床をてしてし、また前足をぺろぺろ、床をてしてし、と地面をつるピカにしているのは、ひよこなケットシーこと、二天堂・たま(f14723)だった。
 四十メートルもあるロボからすれば、その存在は正に蟻の如き小ささ、気に留める所か、気付くことすらなく、海神ロボは二天堂が磨きに磨いて摩擦ゼロになった場所へと踏み込んだ。
 次の瞬間、つるっと、触手の接地面から地面が逃げた。

『ぬ、ぬおお?!』

 しかしそこは流石の多脚、すってんころりとひっくり返ることはなかった。が、大開脚した状態で地面に脚を投げ出す形となった海神ロボは、足元が滑りに滑って上手く態勢を立て直すことができない。
 そこで初めて、足元に目線を向けた海神ロボが、小さい影を捉える。

『おのれダニがぁ! 消し炭にしてやるポセ!』

 ロボの顔が、パーツを組み替えて憤怒を表す。二天堂がいる場所に触手の先が向いて、電撃を乱れ撃ち始める。だが、安定しない状態で撃ったそれらは、いずれも目標に当ることはなく、周辺のビルを破壊するのみであった。

「今だ諸君、出撃したまえ!!」

 戦果を確認し、電撃を掻い潜りながら自身も基地へと駆け出して、二天堂が偉そうに叫ぶ。
 それに呼応するように、まず二機のロボが躍り出た。

「これでもスクラップビルダーの端くれ、マシンを作るのは御茶の子さいさいなのよ!」

 先頭をきったのは、車輪型の薄円筒形のマシン。作り手兼乗り手はカーバンクル・スカルン(f12355)だ。
 彼女のマシンを言い表すならば、少し詳しい人ならば片輪しかないパンジャンドラム、別の方面で詳しい人ならば輪入道とでも言うだろうか。だがそれは、そのどちらとも違う。

「カタリナの車輪! 発進!」

 車輪状の兵器として有名な爆弾、パンジャンドラムとは異なり、それはただ敵を轢き殺す機能しか備えていない。更に違う点と言えば、

「こいつは敵を絶対逃がさない追尾機能付き! 車輪が発車します、ご注意ください!!」

 言って、直径八メートル程の車輪が、姿勢を低くしている海神ロボに突撃。そのまま、その巨体の上を刃でずたずたに切り刻みながら走り抜けた。

『ぬごごごごごっ』

 カタリナの車輪が駆け抜けた後ろで、海神ロボが呻き声をあげて苦痛にもんどりうつ、反撃しようと触手ものたうつが、その速度に追いつけない。
 そこへ、ホバー移動で高速接近する機影があった。

「ふむ……機械には疎いのだが……」

 これは中々、悪くない。そう呟いたユウキ・スズキ(f07020)が繰るのは、無骨なデザインをした人型マシンだった。両腕には、無骨さを更に強調するかのような武装、散弾砲とパイルバンカーが固定されていた。

「ふふふ……かつてレイヴンと呼ばれた私の操縦技術……お見せしよう」

 言うなり、スズキはトリガーを前に押し倒す。すると、マシンは背中のブースターから全力で火を吹かし、ぐんと急加速していく。

「いくぞ……!」

 まだ態勢を立て直せていない海神ロボに、右腕の散弾砲を向け、無慈悲に発砲。サイズ差はあっても、銃火器による火力は確かに発揮される。銃弾の雨を受けた敵は『ぐげっ』と短い悲鳴をあげて仰け反る。その間にも、スズキは散弾砲を容赦なく撃ち込んで行く。
 そしてどんどん距離が縮み、コクピットのモニターに映る海神ロボの姿が大映しになる。そのタイミングで散弾砲の弾が切れた。

『ば、バカスカと撃ち過ぎポセ……! くらうポセ!!』

 その隙に上半身を起き上がらせた海神ロボの触手が蠢き、スズキのマシンに向けられ、眩い雷光と共に雷撃が放たれる。だが、スズキはそれを回避しない。直撃すると思われたそれを、なんと弾が切れた散弾砲で受け止めた。

「う、おおお!!」

 雷をそのまま押し返すように、更にブーストを駆けて突撃するマシン。海神が触手が焼き切れてはたまらないと照射を止めると、一気に距離を詰めた。左腕のパイルバンカーが重低音をあげて起動する。

「ここが!」

 眼前に迫った海神ロボの前で、右回転、回転に乗せて左腕を叩き込み、トリガー。
 一発目の撃発が叩かれ、杭が敵を穿く。

『うごっ?!』

 海神ロボが、その体格差を無視して一瞬浮き上がる。

「この戦場が!!」

 浮き上がり、胴体ががら空きになった海神ロボに、追撃のように鉄杭が連打される。衝撃に煽られて、触手が宙で踊る。
 弾切れを起こした左腕が、蒸気を噴出してパージされる。その部位に、瞬時に背中から回ってきた巨大なユニットが接続される。巨大な、禍々しさすら感じるそれは、甲高い起動音を立てて刃を回転させた。

「私の魂の場所だ!!!」

 身の丈程あるチェーンソーが、辛うじてガードした海神ロボの触手を叩き斬った。
 斬り飛ばされた触手の残骸が地面に落ち、爆発。

『ポ、ポセ~?!』

 海神ロボがバカなと言わんばかりに悲鳴をあげる。そこに更に、

「回送列車がまいりまーす!」

『おごぉっ?!』

 背後からUターンしてきたカタリナの車輪が引き飛ばす。空中で想定外の体当たりを受けた海神ロボが、前のめりに倒れ込んで、一瞬動きを止めた。

 *   *   *

 その頃、基地では、ジニア・ドグダラ(f01191)が機材と資材を前に困り果てていた。

「マシンですか……? わ、私にはよく、わからないのですが……」

 他の猟兵達、意気揚々と出撃していったスカルンやスズキ、もうマシンの最終調整に入っているヨハンソンと、先ほど戻って来て素早くマシンを組み上げている二天堂。そしていつの間にかいなくなっている天都狐とミハイロフ。
 ドグダラ一人が、周囲のノリについていけずにいた。

「ど、どうすれば……『マシンとロボは浪漫だ……燃えるな』ヒャ、ヒャッカ……?『ワタシの言う通りにしろ』」

 困惑しつつも、第二人格であるヒャッカの指示通りに作業を行う。高速詠唱で巨大な骸骨の霊を呼び出し、怨嗟の声で手近な所にあった資材を呪詛で塗り上げる。すると、資材が浮き上がり、骸骨に接着していくではないか。

「こ、これは……」

 そうして、見る見る内に骸骨は巨大な鎧武者と化した。刀こそ持ってはいないが、見るからに屈強そうである。

「……え、これロボットです? これに乗れと?『そういうことだ』」

「おおーい、そろそろ行かんと乗り遅れちまうぞー!」

「早く出撃するのだ!」

 迷っていた彼女だったが、ヨハンソンと二天堂に呼ばれ、ヒャッカにも『早くしろ』と急かされると、覚悟を決めた。

「ええい、なるように、なれです……!」

 懐からフックワイヤーを取り出し、それで骸骨鎧に自身を括りつける。
 三人の準備が整った。出撃――

 *   *   *

「ばっちりですね。撃たせてもらいます」

 倒れ伏した海神ロボの背中に火柱が上がった。基地のすぐ近くの高層ビル。その上にいつの間に陣取った、天都狐の重武装多脚戦車型マシンの砲撃だ。
 解体してマシンの砲撃ユニットと化して右腕と一体化したホモォビウムが、咆哮をあげて戦車砲をぶっ放す。
 左腕のミサイルランチャーが猛然と火を噴いて射出され、うつ伏せに倒れている海神ロボに殺到して炸裂する。
 更に航空支援ユニット「スティレット02A」が銃撃で起き上がろうとする敵を叩き伏せる。
 それは例えるならば、一人戦略ユニットとも言うべき有様であった。

 全身の火器から砲弾をばら撒きまくる多脚戦車の隣に、そのミリタリー染みた様相とは似つかわしくない、可愛らしいデザインのマシンがぴょこりと着地した。

「天都狐様、十秒後きっかりに反撃が来ます。回避運動を」

 そう告げたのは、丸っこいテディベアをモチーフにした赤いロボであった。そのファンシーなマシンを操縦しているのはミハイロフだ。

「三、二、一……今!」

『ぐおおお! 調子に乗るなポセー!!』

 彼女が警告し、天都狐が機体を跳躍させた直後、今いた高層ビルに巨大な何かが突っ込んできた。
 海神ロボが召喚した、馬車を引いた海馬だった。これらも勿論メカだ。身動きが取れない自身の代わりに反撃させるために召喚したのだろう。
 粉々になったビルから別のビルに飛び移った二人に、目標が逃げたことを認識した海馬が突撃してきた。

「このままでは射撃がままなりませんね……」

 着地したビルが次々と破壊され、バッタのように跳躍して次のビルへと飛び移る多脚戦車と赤いテディベア。攻撃は回避できているが、これでは攻撃ができない。
 その間に、カタリナの車輪とスズキのマシンを触手で弾き飛ばした海神ロボが起き上がろうとしていた。

「任せてください! ジャッジメント……!」

 状況を打開すべく、ミハイロフはテディベアを真上に高く跳躍させた、その真下でビルに激突する海馬。
 衝突した衝撃で動きを完全に止めた目標に対して、丸っこい右手を向ける。その先端が、光り輝き、数瞬で臨界に達したそこから、

「クルセイド!!」

 溢れんばかりの光線が放射された。光は海馬を直撃すると、その巨体を押し返し、そのまま別のビルに叩きつけた。
 しかし、それでも撃破には至らないらしく、海馬は身じろぎして再度動き始めた。

「これでも倒せないとは、なんて硬さでしょう……っと!」

 飛んできた雷撃を身軽な動きで避けて着地する。見れば、海神ロボは完全に態勢を立て直し、支援攻撃をしていたスティレット02Aを触手で叩き落としていた。
 傷を負っているとは言えど、海馬メカと二機がかりで来られたら、苦戦は必須だろう。

「どうにかして動きが止まれば、私の最大火力を叩き込めるのですが」

 天都狐が言う通り、彼女のマシンが持つ火力であれば、更なるダメージを与えることができるだろう。しかし、不意打ちならばまだしも、こちらを警戒している相手に対しては、決定打に欠ける。

 その時、基地の方から最後の三機の猟兵マシンが急発進してきた。

「それならば!」

「任せてください!」

「待たせたな諸君!」

 駆け付けたのは、ブロロロッとエンジン音を響かせて爆走するキッチンカー、低重心の正統派八本脚マシン、そしておどろおどろしい骸骨鎧とバラエティーに富んだ組み合わせであった。

『な、なんだ貴様ら、いや、まとめて捻り潰してやるポセ! いけヒッポカムポス!』

 海神ロボが叫ぶと、指令を受けた海馬メカが、キッチンカーを轢き潰さんと突撃してくる。そのまま交通事故になると思われたその時、

「ふっ、このゲンチャンウォーカーを舐めるんじゃあない! チェーンジ! ウォーカー!」

 ヨハンソンが叫び、片腕を振り上げる。次の瞬間、キッチンカーが節々から光を放ち、なんと可動部を露わにして変形し始めた。一秒未満で行われた変形によって現れたのは、乗り込み型二足歩行マシン。

「とりゃあっ!」

 そして二足の脚で飛び上がったゲンチャンウォーカーは、巧みな動きでビルの壁面を蹴って突撃してきた敵の頭部付近まで駆け上がると、

「どっせい!」

 マシンに備え付けられた二本の腕を組み、ハンマーの如く海馬メカの頭部に叩き落とした。
 ズンッと言う衝撃音と共に海馬メカが崩れ落ち、その上を二天堂の多脚マシンと骸骨鎧が飛び越えて行く。

『おのれおのれぇ!』

 護衛と突破された海神ロボが、怒りを露わにして背中から生える十本の蟹足を一斉に伸ばして二機に攻撃してくる。

『ポセポセポセポセェ!!』

 上部から、降りしきる雨のように怒涛の連続突きが迫る。危機的な状況だが、二天堂は不敵な笑みを浮かべた。

「このマシンの神髄は装甲と馬力なのだ、つまり!」

 そう言って動きを止める多脚マシン、海神ロボは『死ぬポセェ!』と集中攻撃を仕掛ける。そして、連続で振ってきた蟹足が、

「――こういうことも、できるというわけなのだよ」

 その殆どが、多脚マシンの両手と装甲で受け止められていた。海神ロボが『ポ、ポセ?!』と驚愕し、思わず身を引こうとするが、がっちりと掴まれた蟹足は全く動かない。

『は、離せポセ!』

 海神ロボが残った蟹足を多脚マシンに叩きつけようと振り下ろした。だが、そこに割って入る影が複数。

「大車輪アターック!」

 勢いをつけて戻って来ていたカタリナの車輪、スカルンが必殺技名のように叫び、蟹足を蹴散らし、

「まだ私は生きているぞ!」

 敵の視界から外れていたスズキの人型マシンがチェーンソーで蟹足を寸断した。蟹足による攻撃手段を失った海神ロボが『むっきぃぃぃぃ! お前ら全員殺すポセー!』と発狂したように叫んで、地面に接していない触手全てを高く振り上げた。周囲全体に叩きつけるつもりだ。近くにいた猟兵達が防御しようと身構えた、その時。

「『ワタシ達を』忘れて、いますね……!」

 もうすぐ近く、海神ロボの巨体の目の前まで来ていたドグダラの骸骨鎧が、地面で身体を支えていた二本の触手を両手で掴みあげた。そして、

「怨念晴れぬ朽ちた者よ! 今こそ万力の力を現せ!」

 叫ぶ。それに応えるように、骸骨鎧が唸り声をあげて、全力で触手を握る力を込める。瞬間、バキッと致命的な音が二度、周囲に響いた。
 骸骨鎧の剛力で、海神ロボの触手が根元から折れたのだ。

『ば、バカなポセェ?! たかが骸骨にぃ?!』

 驚愕の声をあげて、支えを失いよろめく海神ロボ。
 猟兵達の攻撃はそれだけでは終わらない。その場にいた全員に、マシンに備え付けられた無線から「ばっちりです。皆さん、離れてください」と通信が入る。それを受けた各々が、転がり、走り、駆けだしてその場から瞬時に離れた。

「各兵装全自動照準開始。トリガータイミングの同期完了……今!」

「ジャッジメントォ、クルセイド!!」

 この時を今か今かと待っていた、天都狐とミハイロフの同時攻撃。全身の銃火器を一斉射撃、濃煙と火花をばら撒く多脚戦車と、両手の先から光を発し、先ほどの倍近い太さの光線を発射した赤いテディベアの攻撃。
 海神ロボには、それを避ける術も防ぐ術もなかった。

『ぽ、ポセーーーーーっ!!!』

 爆炎と光の奔流に巻き込まれた海神ロボが、煙に包まれる。

「やったか?!」

 誰かが思わず叫ぶ。

「『むう……それは言ってはならない台詞だ』えっ、どういうことですか……?」

 ヒャッカの言葉に、意味がわかる猟兵が「まずい!」と武器を構え直す。煙が晴れたそこに居たのは、

『ポセポセポセポセ……この程度でこのポセ男様を倒そうなど、片腹痛いポセ!』

 海馬と馬車、それに海神ロボが合体した、なんとも奇妙で、そして巨大なオブジェだった。
 猟兵達が、体当たり、チェーンソー、砲撃、打撃、光線で攻撃するが、傷すらつかない。

『無駄無駄ポセェ! そのまま、絶望しながら死んでいくポセ~!!』

 復活した触手から、先ほどまでとは比べものにならない強さの雷撃が一斉に放たれ、猟兵達のマシンが吹っ飛ばされた。

「くっ、このままじゃ負けちまうぞ!」

「どうすれば……」

 猟兵達が勝ち筋を見い出そうと思案し始めた、そこで、

「『それでは、合体といこう。実に燃えるな』ヒャ、ヒャッカ?! あなた、今日なんだかおかしいですよ?!」

 ドグダラの骸骨鎧から出た「合体」というワードに、全員が強く頷いた。

「合体ね! よーし!」

「そういえば、私達のマシンが力を合わせれば、合体することが出来ると聞きました。それならばあるいは!」

「そうと決まれば!」

「やるしかあるまいて!」

 全員の想いが一つになった。その直後、各々のマシンが光に包まれ、独りでに宙に浮いて、天高くまで舞い上がった。

『な、なにをする気ポセ? やらせないポセよ!』

 合体シーケンスに入った猟兵マシンに電撃が殺到する。だが、それらは全て謎の輝きによって弾かれる。

『な、なんだあれは、バリアだとでもいうのかポセ?!』

 合体海神ロボが戸惑い、狼狽える前で、七つのマシンが合体していく。
 中央に骸骨鎧。右手に大車輪、左手にチェーンソーが装着され、右足と左足に、重装甲と重武装それぞれの多脚が可変した脚が付き、最後に、背中に羽根のように、丸っこいクマ型の腕とごつごつとした無骨な腕が接着した。
 最後に、頭部の骸骨に、呪詛がかけられた装甲が集合し、ヒロイックなデザインへと変貌していく。

『これが猟兵の力だとでも言うのかポセ?!』

 合体を終えてズシンッと着地した合体マシンが、巨大海神ロボと対峙する。

『こ、虚仮威しに決まってるポセ! そのハリボテ、砕いてやるポセ!!』

 虚勢を張りながら、合体マシンに触手を向ける巨大海神ロボ。大して猟兵達は意に介さずに、マシンを一歩、また一歩と前進させる。

『くらえポセー!!』

 一点集中して放たれた電撃は、昼間だと言うのに周囲を猛烈な光で照らし上げた。周囲の水分が蒸発してもうもうと水蒸気が沸きあがり、対象の姿が消える。それだけの火力を前にして、合体マシンは――

『そ、そんな馬鹿なポセ?!』

 全くの無傷であった。煙を突き抜けるように前に出たマシンが、動き方を心得たかのように一気にビル街を駆け抜ける。
 狼狽える敵はもう目前、勝負をつける時が来た。

「合わせて!」

「よし!」

 スカルンが叫び、スズキが応える。すると、右手の大車輪と左手のチェーンソーが唸って回転し始めた。
 助走をつけたマシンがジャンプし、両腕を左右に広げ、

「「ダブル!」」

 息のあった掛け声と共に、巨大海神ロボにクロスするように棘と刃を叩きつけ、強引に表面装甲を削ぎながら、そのまま斬り抜ける。

「「ジグザグ斬!!」」

『ぐああああ!』

 粗い刃のチェーンソーと棘によってジグザグ模様に切り裂かれた巨大海神ロボの胴体から、オイルが鮮血のように飛び散る。攻撃はそれだけでは終わらない。

「続けて行くぞ!」

「行きます!」

 続けて、二天堂と天都狐が叫んで大ジャンプ。それに対し、巨大海神ロボは仰け反りバランスを崩しながらも、マシンがいる方に振り向き、大量の蟹足を突き出して迎撃しようとする。
 それに対し、重力に半ば身を任せ、落下を始めた合体マシンが飛び蹴りの構えを取る。

「甘い! 八足連続キィック!!」

 言った瞬間、右足が鋭い八本の脚に可変し、それぞれが連続で突きを放った。連続する突きと突きの攻防は一瞬だけ均衡したが、位置エネルギーとパワーで勝る合体マシンが、繰り出された蟹足を全て貫き、砕いた。

『ポ、ポセ?!』

「全兵装同期完了、今!」

 着地と同時に、合体マシンが防御手段を失った相手にサッカーキックをお見舞いする。ポセ男の胴体に左足がめり込み、くの字に折れ曲がったタイミングで、天都狐がトリガーを引く。左足に備え付けられた全ての火器が火を噴き、巨大海神ロボを爆風でぶっ飛ばした。

『ポセェェェェェ?!』

 錐揉み回転しながら飛んで行く海神ロボに、同じ速度で跳躍した合体マシンが突っ込む。

「今度は私の出番です! 必殺!」

 ミハイロフが普段見せないようなテンションで叫ぶと、後ろについていた羽根――否、替えの両腕と右腕左腕が入れ替わった。
 拳部分にクマの顔がペイントされた真っ赤な腕が光を纏って輝く。それが、

「ジャッジメント・クルセイド・パンチ!!」

 真下から打撃、まるでアッパーのように、対象を打ち据えた。光が胴体を貫通して天に昇り、遅れて殴られた巨大海神ロボが天高く打ち上がる。

「や、やります!『今こそ、ワタシ達の力を見せる時だ』」

 ドグダラが言うと、力を集中させる。すると、合体マシンの四肢から余計な外装が外れ、打ち上がった海神ロボの触手に纏わり付いて動きを封じた。呪詛濡れの資材をコントロールしたのだ。

「今です!」

「おうよ!!」

 お膳立ては整ったと言わんばかりの状況にヨハンソンが声をあげる。無骨で巨大な右腕をぐるんぐるんと振りかぶり、マシンが身動きの取れない敵目掛けて全速力で突撃する。

「これが、わし達の、猟兵の、絆の拳じゃああああああ!!!!」

 インパクトの寸前で、絆の力を受けて肥大化した鉄拳が、巨大海神ロボの全身を強く強く殴り飛ばした。
 猛烈な衝撃でバラバラになったポセ男が、吹っ飛びながらも忌々しく叫ぶ。

『こ、この、ポセ男様が、こんな奴らにぃぃぃぃぃ!!!』

 そして、爆散。巨大海神ロボは完膚なきまでに撃破された。
 静寂を取り戻した基地に合体マシンが着地すると、力尽きるように、合体マシンはバラバラの元のマシンに戻った。
 各々がマシンから降り立ち、勝利を掴んだことを実感して、ある者は勝鬨をあげ、ある者はほっと胸を撫で下ろした。

「……しまった。流れで名前をつけ忘れたが、あの合体したマシンはなんて呼べばよかったのだろうか?」

「そこは勿論、ゲンチャンダーだろう」

「それはちょっと……」

「ハイパーレイヴンとか、どうだろうか?」

「もっと可愛らしい名前が良いと思います」

「えー、かっこいいのにしようよ」

「『ふむ、ワタシとしては』……ヒャッカ?」

 何はともあれ、こうしてザ・ビルドステージを占拠していたオブリビオンの一体を退けることができた。だが、まだまだオブリビオンは大量に存在し、キマイラフューチャーを狙っている。
 負けるな猟兵、負けるな、マシンロボ! この世界の平和は、君たちにかかっている!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月02日
宿敵 『海神ポセ男』 を撃破!


挿絵イラスト