バトルオブフラワーズ⑦〜欝ソングを吹き飛ばせ!
●叫べ! パッショネイトソング!
「緊急事態発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々と――しかし若干の興奮と困惑が入り交ざった調子で語りだした。
「キマイラフューチャーが、まっぷたつに割れました」
今なんて?
「キマイラフューチャーが、割れました。北半球と南半球で、綺麗に」
……さすがに、いかにキマイラフューチャーと言えども、星が半分に割れるのは緊急事態だろう。というかそれで住民は大丈夫なのか。
「順を追って説明します。先日よりこの世界では、キマイラフューチャーの中枢『システム・フラワーズ』からの救援要請が発せられていました」
テレビウム・ロック事件と呼ばれる一連の事件でそれを耳にした、あるいは噂に聞いた猟兵もいるかもしれない。
「その要請に答え、猟兵はシステムへと続くメンテナンスルートを開放したのですが、その結果……キマイラフューチャーが割れました」
これがメンテナンスルートだと言うなら、あまりに豪快すぎる気がする。
「冗談のような光景ですが、事態は冗談では済みません。リム達グリモア猟兵は、現在『システム・フラワーズ』を占領しているのが、この世界のオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』であることを予知しました」
つまりこれは、キマイラフューチャーの世界を脅かすオブリビオン、その元凶を打ち破る好機であり――恐るべきカタストロフの前触れでもあるのだ。
「『ドン・フリーダム』がシステムを完全掌握する前に、フォーミュラを撃破しなければなりません。しかし『システム・フラワーズ』に辿り着くためには、その周囲を守る6つの『ザ・ステージ』と呼ばれる領域を、全てオブリビオンから取り戻す必要があります」
リミティアが今回依頼するのは、その『ザ・ステージ』の一つである『ザ・サウンドステージ』の攻略である。
「『ザ・ステージ』の内部ではそれぞれ特殊なルールが課されます。今回皆様が向かう戦場に存在するルールは『戦闘中、常に"自分自身を奮い立たせる歌"を歌い続けなければならない』というものです」
歌わずに戦ったらどうなるのか? という猟兵の疑問に、リミティアは淡々と。
「攻撃がまったく効果を発揮しません。逆に、強い思いを歌に乗せることができれば、より強力な攻撃を行う事ができます」
なので、歌唱技術の上手さよりも、どれだけアツいソウルを歌に込めて放てるかが重要になる。例えば『秘密にしている事をカミングアウト』したり『恋人への告白を歌にして捧げる』といった行為がポイント高いだろう。
「皆様の前に立ちはだかるオブリビオンの名は鬱詐偽『ウサギ』さん。『どうせ、私は嫌われ者』『私に近寄ると不幸になる』『世界に私の居場所は無い』といった鬱々とした思いを歌うことで自らを奮い立たせながら襲ってきます」
彼女はかつてメインキャラを引き立たせる為に陰湿・根暗・不幸なキャラとして作られたバーチャルキャラクターだったと言う。その辺の境遇が歌の内容に現れているようだ。
「皆様も、彼女の欝ソングに負けないよう、強い思いを歌に乗せて戦ってください。リムは武運を祈っています」
リミティアはグリモアを手のひらに浮かべ、戦場への道を開きながら告げる。
「『バトルオブフラワーズ』の始まりです」
戌
こんにちは、戌です。
ついに始まりました、キマイラフューチャーの戦争。導入からしてこの世界らしいとしか言えない状況ですが、それでも世界の危機は危機。頑張って世界を救いましょう。
この戦場ではオープニングの通り、特殊な戦闘ルールが存在します。ルールに則って戦わなければ大きな不利は免れないため、ご注意ください。
必要なのは「自分自身を奮い立たせる歌」なので、無理に相手の歌に対するアンサーソング等にする必要はありません。ともかく思いの丈をぶちまけましょう。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『鬱詐偽『ウサギ』さん』
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POW : どうせ、私は嫌われ者
【自身への好意的 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【陰湿な雰囲気】から、高命中力の【自身への悪印象】を飛ばす。
SPD : 私に近寄ると不幸になる
【自身でも制御できない近寄らないでオーラ 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 世界に私の居場所は無い
小さな【自身が引き籠った鬱詐偽小屋 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【自身の心象風景が広がる空間】で、いつでも外に出られる。
イラスト:慧那
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エルス・クロウディス
よそでも見たけど、それで奮い立つとは一体。
オブリビオンだからやろか……?
だがしかぁし! そういわれちゃ黙ってらんねぇなぁ!
世の中にはそれこそ色んな人がいる!
どれだけの人間に嫌われても、間違いなくそんなお前を好きな人がいる!
そいつからすれば、近寄るどころかお前がいるだけで幸せだろう!
バーチャルキャラクターであるのならば! その時点でもう居場所は出来ている!
そして世界は広いと言った!
つまり!
お前を好きな奴なんて、探しゃーそれこそ掃いて捨てるほどいるんだよぉッ!!!
この事実をッ! 歌に乗せてッ! 一直線にッ!
その魂に響かせてやるッッ!!!
あのちょっと色々足りないんですけど!?(
やりたい放題歓迎
どうせ、私は嫌われ者
居場所なんてどこにもないの
優しさなんてうそっぱち
滅んでしまえ、こんな世界――
ザ・サウンドステージに転送された猟兵達を待ち受けていたのは、暗澹とした欝ソングを奏でるウサミミ少女のオブリビオン、鬱詐偽さん。
ステージの効果によって彼女の欝オーラは増幅され、何人たりとも近寄れないほどの禍々しいパワーを発している。
「よそでも見たけど、それで奮い立つとは一体。オブリビオンだからやろか……?」
その様子を見て思わず呟いたのはエルス・クロウディス(昔日の残響・f11252)。
オブリビオンだからと言うよりは、たぶん彼女は自虐によって心のヨロイを強固にするタイプなのだろう。
「だがしかぁし! そういわれちゃ黙ってらんねぇなぁ!」
そう叫ぶなりエルスは相棒たる可変武装、骸装を構えて鬱詐偽さんに吶喊する。
欝な気持ちを撒き散らす彼女への思いの丈を歌に乗せて叩き込みながら。
世の中にはそれこそ色んな人がいる!
どれだけの人間に嫌われても、間違いなくそんなお前を好きな人がいる!
そいつからすれば、近寄るどころかお前がいるだけで幸せだろう!
「そんな人……いるわけない……わ……」
エルスの歌を否定し、さらに陰湿な雰囲気を強く纏う鬱詐偽さん。だが彼女が拒絶しようとも、重要なのはその歌でエルス自身が奮い立つか否かだ。
骸装を弓から槍へ、槍から剣へと変幻自在に変形させ、エルスは押し寄せる欝オーラと雰囲気を払いのけながら歌う。
バーチャルキャラクターであるのならば! その時点でもう居場所は出来ている!
そして世界は広いと言った!
つまり!
エルスの骸装の芯となる彼の意思――ウィルは、ステージと歌の効果によってさらなる輝きを発し。
突き出された穂先は一条の閃光となって、欝オーラの中心に立つ鬱詐偽さんへと一直線に向かう。
お前を好きな奴なんて、探しゃーそれこそ掃いて捨てるほどいるんだよぉッ!!!
「う……ぅ……?!」
渾身のシャウトに思わず鬱詐偽さんの魂が震えた瞬間、骸装の刃は彼女の身体を切り裂いていた。
「ぅ……る……さいっ……!」
直後に近寄らないでオーラを再発生させエルスを吹き飛ばすものの、その表情からは動揺がありありと見て取れる。
このオブリビオン、あんまりメンタルは強くなさそうである。
大成功
🔵🔵🔵
バレーナ・クレールドリュンヌ
●
【WIZ】
歌唱とUCで相手の歌に応え、わたしの世界を見せましょう。
わたしの歌で、誰かを救えるのなら。
哀しい人、わたしもかつてそうだったもの、
望まれず、蔑まれ、踏み躙られる、そんな世界だった。
だから、わたしは心の限り、歌いましょう、
レクイエムに籠めた祈りは、
命ある限り、確かにあなたが存在した証。
決して、過去は覆せはしない。
それでも、わたしは前に進もうと思うわ、
世界は灰色で、諦めてしまえば楽になることばかりかもしれない、
そんな世界で、
わたしは命を謳歌する花の色、生を抱擁する海の色、
わたしが知ることのなかった色で世界は満たされていた。
世界は思うよりもずっと美しいものよ、
その色の名を知りさえすれば。
愛してくれる人なんて、いるわけない
みにくくてきたない、こんな世界で
世界に私の居場所は無い
だから私は、私だけの世界を作るの――
猟兵の歌を拒絶するように欝オーラをさらに増幅させる鬱詐偽さん。彼女は悲観的な歌を紡ぎながら、ステージ上に建てられていた小屋の中へと引き篭もってしまう。
その内部は彼女の心象風景が投影された、彼女だけの世界。鬱詐偽さんはそこで外の世界の一切を否定し、カタストロフの時を待つつもりなのか。
しかしその時、バレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)が鬱詐偽小屋の前にすっと進み出る。
「わたしの歌で、誰かを救えるのなら」
自分だけの世界に引きこもる鬱詐偽さんに、わたしの世界を見せましょう、と、心を込めて歌を紡ぐ。
哀しい人、わたしもかつてそうだったもの、
望まれず、蔑まれ、踏み躙られる、そんな世界だった。
だから、わたしは心の限り、歌いましょう、
レクイエムに籠めた祈りは、
命ある限り、確かにあなたが存在した証。
それは暗澹とした鬱詐偽さんの歌に応える歌であり、死霊を骸の海へ還し、魂に安寧を齎す鎮魂歌。さざ波のように戦場に広がっていく甘やかな歌声は、小屋の中に引きこもる鬱詐偽さんの耳にも届く。
「知った風なこと……言わない……で……!」
レクイエムを拒絶しようと、ぎゅっと耳を塞ぎ目を瞑る。それでも、バレーナの歌声は止まない。
決して、過去は覆せはしない。
それでも、わたしは前に進もうと思うわ、
世界は灰色で、諦めてしまえば楽になることばかりかもしれない、
そんな世界で、
わたしは命を謳歌する花の色、生を抱擁する海の色、
わたしが知ることのなかった色で世界は満たされていた。
灰色の闇に包まれた鬱詐偽さんの心象風景を、バレーナの歌が塗り替えていく。彼女が外の世界でその目と心に焼き付けた、鮮やかな生命の色に。
「や……めて……!」
孤独な世界に広がっていく歌と色。鬱詐偽さんがどんなに鬱ソングで反撃しても、バレーナの歌は優しく包むようにそれを呑み込んでいく。
世界は思うよりもずっと美しいものよ、
その色の名を知りさえすれば。
――気がつけば、鬱詐偽さんは自らの足で小屋を飛び出していた。
「キラキラ……まぶしい……そんな歌……見せ付けないで……!」
その目からポロポロと零れ落ちる涙に、本人は気が付いていない。
バレーナの歌は孤独だった鬱詐偽さんの心を、大きく激しく揺るがしていた。
成功
🔵🔵🔴
アリス・フェアリィハート
アドリブや他の方との絡みや連携も歓迎です
キマイラフューチャーが
真っ二つになるなんて…
私達で…世界を護らなきゃです…!
『自分自身を奮い立たせる歌』
を歌いつつ
鬱詐偽さんと戦闘
歌の内容は
『いつも自分の側にいて、護りお世話をして下さる一人のメイドさんへの感謝と好意』
歌い上げながら
自身の剣
『ヴォーパルソード』で
【属性攻撃】や【なぎ払い】等の剣戟や
剣からの【衝撃波】
剣の光焔の【誘導弾】等の
遠距離攻撃等で攻撃
敵さんの攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【オーラ防御】等で
踊る様に回避・防御
『――♪いつも…有難う…私の側で…私を…護って下さって…大好き…♪』
もし味方が負傷したら
歌っている歌をそのまま
UCにして回復
ヴィサラ・ヴァイン
リムめっちゃビックリしてたよね…安心して、地元民の私ですら超ビックリしてるから
それにしても歌か…『恋人への告白を歌にして捧げる』…?
なるほど…これは…フリだね?
私歌とか苦手だけど、ちょっと頑張るよ…!
私が歌うのは、お誕生日を祝う歌
UDCアースの人なら誰でも知ってる、とても有名で、ありふれた歌
…この歌の何処が恋人へ向けた曲だって?
この前私の恋人の誕生日だったからね。もっとお祝いするんだよ
…これからの一年も、その次の、次の次の一年も。
歌は歌詞だけじゃなくて、歌われるシチュエーションも大事だよね♪
さて、戦闘は【頂点捕食者】でウサギさんの負の感情を食べるよ
それでも鬱ソング、気持ちを込めて歌えます…?
「キマイラフューチャーが真っ二つになるなんて……。私達で……世界を護らなきゃです……!」
鬱詐偽小屋から出てきたオブリビオンに、すかさず挑みかかったのはアリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)。
空色の光焔を纏う「ヴォーパルソード」の白銀の刃が閃けば、鬱詐偽さんの肌から血飛沫が舞う。
アリスが歌い上げるのは、いつも自分の側にいて、護り世話をしてくれる一人のメイドへの感謝と好意。
瞼を閉じれば、いつだって彼女の笑顔がはっきりと浮かぶ。そっと髪に手を伸ばせば、そこには誓いの言葉と共に受け取った虹色の二枚貝の輝きがある。
紡ぎ紡がれてきた想いは、どんな時でも決して揺らぐことはない。
――♪ いつも……有難う……私の側で……私を……護って下さって……大好き……♪
溢れんばかりの想いを歌に乗せて自らの心を奮い立たせれば、剣が纏う光焔はさらに眩く輝いてオブリビオンを灼いた。
「そんな……まぶしい……キズナ……ずるい……!」
麗しい主従の絆の歌に、嫉妬の焔を燃え上がらせた鬱詐偽さんは、光焔を鬱オーラで振り払いながら襲い掛かる。
だが、踊るような体さばきでその身を翻すアリスに、彼女の手は届かない。
ならばこの嫉妬の感情を歌の力に変えて、再び己を奮い立たせるまで。サウンドステージにまたも鬱詐偽さんの鬱ソングが響き渡らんとした、その時――。
ハッピーバースデー、トゥ、ユー……♪
聞こえてきたのは、UDCアースの住人なら誰でも知っている、とても有名で、ありふれたバースデーソング。その歌い手は、ヴィサラ・ヴァイン(魔女噛みのゴルゴン・f00702)。
「リムめっちゃビックリしてたよね……安心して、地元民の私ですら超ビックリしてるから」
真っ二つに割れたキマイラフューチャーの現状を呟きつつも、依頼を引き受けた時から彼女が歌う曲は心に決まっていた。
「『恋人への告白を歌にして捧げる』……? なるほど……これは……フリだね? 私歌とか苦手だけど、ちょっと頑張るよ……!」
そうして気合十分に、バースデーソングを歌い上げる。
「なんで……恋人に……この歌を……?」
「この前私の恋人の誕生日だったからね。もっとお祝いするんだよ……これからの一年も、その次の、次の次の一年も」
鬱詐偽さんの疑問に、ヴィサラは満面の笑顔で答える。未来への希望と、幸福に満ちた表情で。
「歌は歌詞だけじゃなくて、歌われるシチュエーションも大事だよね♪」
大切な人への想いと祝福をこめて歌われるバースデーソングを聞いているうちに、鬱詐偽さんの心からは、あれほど燃え上がっていた嫉妬の炎が消えていく。
「な……ぜ……? こんなの……妬ましくてたまらない筈……なのに……!」
ヴィサラのユーベルコード【頂点捕食者】が、鬱詐偽さんの嫉妬や鬱といった負の感情を食い尽くしたのだ。
「それでも鬱ソング、気持ちを込めて歌えます……?」
「余計……な……ことを……!」
得意げに微笑むヴィサラに、苦し紛れに殴りかかる鬱詐偽さん。だが、食らった負の感情を力に変えた今のヴィサラに、その程度の攻撃は痛打とはならない。僅かな負傷も、アリスのシンフォニック・キュアがすぐさま癒してしまう。
そして鬱ソングの力を失った鬱詐偽さんに、想いを込めて再び振るわれたヴォーパルソードの斬撃が襲い掛かる。
あなたと一緒なら……何も……怖くないです……♪
その斬光は一筋の空色と白銀の軌跡となって、オブリビオンの肉体を深々と切り裂いたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
須藤・莉亜
「下手でも魂込めたらおっけーてのはありがたいねぇ。」
では、聞いてください。『血をください』
血をください。飢えた僕に血をください。貴方の血はどんな血?甘いの?しょっぱいの?それとも苦いのかな?何でも良いよ、血をください。
僕の【吸血】衝動を込めに込めたバラード風な歌を歌いながら戦うよ。
取り敢えず、眷属の腐蝕竜さんを召喚。
彼には爪での引っ掻き、尻尾でのなぎ払い、体当たりなんかで攻撃してもらう。
僕は彼の攻撃に合わせて悪魔の見えざる手でぶん殴って行く。
腐蝕竜さんに敵さんを押さえつけてもらうか、拷問具の深紅で縛り上げてからの【吸血】も狙っとこうかな。
敵さんのオーラは腐蝕竜を盾にして回避出来たら良いな。
「下手でも魂込めたらおっけーてのはありがたいねぇ」
ザ・サウンドステージの特殊ルールにそんな感想を呟きつつ、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は倒すべき標的たる鬱詐偽さんを見る。
より正確には、彼女の傷口から流れる血を。
「では、聞いてください。『血をください』」
「血……?!」
驚愕する鬱詐偽さんをよそに、莉亜は歌い始める。
血をください。
飢えた僕に血をください。
貴方の血はどんな血?
甘いの? しょっぱいの? それとも苦いのかな?
何でも良いよ、血をください。
自らの吸血衝動を込めに込めたバラード風な歌を歌いながら、彼が召喚したのは眷属たる【腐蝕竜】。高層ビルにも匹敵する巨躯を誇るドラゴンが、翼を広げて鬱詐偽さんに襲い掛かる。
その光景はまさしく恐怖である。
「こ……っ、来ない……で……!!」
真っ青になった鬱詐偽さんは全周囲へと近寄らないでオーラを放ち、接近する腐蝕竜を跳ね飛ばす。
だがその隙に、莉亜は竜の巨体を盾にしてオーラを回避しながら、敵の懐に音もなく潜り込んでいた。
じゃらり、と彼の手から放たれた深紅の鎖が、まるで生きているかのように鬱詐偽さんの体に絡み付いていく。
「は……放し……」
「放さないよ、喉渇いたから」
もがく鬱詐偽さんを縛り上げながら、莉亜は昂ぶる吸血衝動のままにダンピールの牙を突き立てる。
……彼女の血はあまり美味しくなかった。というか、薄味だった。体質的に貧血なのか、バーチャルキャラクターだからなのか、理由は分からないが。
「まあいいや」
とりあえず血を吸えて満足した莉亜が離れた瞬間、再び距離を詰めた腐蝕竜が勢い良く突っ込んでくる。
「きゃ……?!」
悲鳴を上げる間もなく、強靭な爪と尾が鬱詐偽さんの肉体を引き裂き、速度の乗った巨体が激突する。それに合わせて莉亜も透明な「悪魔の見えざる手」による猛烈な打撃を叩き込む。
ズドンッ!! と凄まじい激突音を上げて、鬱詐偽さんはステージの彼方まで放物線を描き吹き飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
澪織・梅
鬱ですか?マイナス思考ですか?
分かりました、それでは唐揚げです!
唐揚げへの熱い思いや熱意、そしてその美味しさを沢山伝える電波ソングを、ユーベルコードの力込みでぶつけます!
「カラカラアゲアゲ☆唐揚げ!
今揚げるよー今アガるよーそーのー美味しさー♪
じゅわっじゅわっ、弾けるー
かりっさくっ、溢れるー
夢に溢れる唐揚げーを
め☆し☆あ☆が☆れ♪」
相手が動きを止めたら隙を突いて唐揚げを口に突っ込んで更に【コミュ力】を駆使した【催眠術】じみた歌詞で唐揚げの良さを更に強く歌い刷り込みます。
逃げようとするなら【マヒ攻撃】で動きを止めます。
やっぱりみんな、私をいじめる
みんなの世界は、キラキラなのに
私の世界は、まっくらやみ
羨ましい、妬ましい、憎らしい――!!
ド派手にステージの端まで吹っ飛ばされ、よろめきながら戦場に戻ってきた鬱詐偽さん。彼女の心は今再び、孤独感と嫉妬心でドス黒く燃え盛っていた。
これまで以上の鬱オーラを撒き散らしながら鬱ソングを歌い上げる彼女の前に、一人の猟兵が立ちはだかる。
「鬱ですか? マイナス思考ですか?」
その名は澪織・梅(謎照らす光となりて・f02562)。いつもは真面目な小学校の保険委員、しかして裏の顔はUDCエージェントにしてクレリック。されど今の彼女はそのどちらでもなく――。
「分かりました、それでは唐揚げです!」
――唐揚げを熱狂的に愛する一人の女の子だった。
カラカラアゲアゲ☆唐揚げ!
今揚げるよー今アガるよーそーのー美味しさー♪
じゅわっじゅわっ、弾けるー
かりっさくっ、溢れるー
「な……何……これは……?」
電波的なリズムに乗せて歌われる、ほとばしる唐揚げへの熱い思いや熱意、そしてその美味しさを沢山伝える歌詞。
唐揚げ、それは宇宙の真理。ただ唐揚げが大好きという気持ちをユーベルコードの域にまで昇華させたそれは、呪言にも近いパワーで聞く者の心を圧倒する。
ぐぅぅ~、と飯テロを食らった鬱詐偽さんのお腹が鳴った瞬間、梅は駆けた。
その手には山盛りの唐揚げがある。
夢に溢れる唐揚げーを
め☆し☆あ☆が☆れ♪
「もぐぅ……っ?!」
口に突っ込まれた唐揚げを思わず咀嚼する鬱詐偽さん。からりと揚がった衣の食感、噛めばじわっと溢れ出す肉汁の旨みが彼女を襲う。
食べてる場合じゃないのに止められない。おかしい、ここってフードステージだっけ。
「お……おいしい……」
「まだまだ揚がるよーまだアゲるよーはてしないー美味しさー♪」
鬱詐偽さんが食べても食べても、梅はすぐさま新しい唐揚げを放り込む。唐揚げの良さをさらに強く歌い上げながら。
「おいしい……カラアゲ……オイシイ……はっ?!」
催眠術めいた歌であやうく唐揚げの信者になりかけた鬱詐偽さんだったが、すんでのところで我に返る。
「も……もう……おなか一杯……だから……!」
口を押さえて逃げ出そうとする彼女を、梅の警棒が打ち据えた。打撃と同時に放たれる電撃が鬱詐偽さんの身体をマヒさせる。
「おのこしはーだめですよー♪」
高らかに唐揚げソングを歌いながら、動けない相手に唐揚げを食わせ続ける梅。
鬱詐偽さんの受難は完食するまで終わらない。
成功
🔵🔵🔴
アリス・フォーサイス
ウサギちゃんの曲も、お話にあふれてて、素敵だな。
ぼくも負けてられないや。あえて鬱詐偽小屋に入って、対決するよ。
グッドナイス・ブレイヴァーでキマイラフューチャーに生配信しながら戦おう。みんな、応援してね。
ぼくは未来への希望を歌いながら戦うよ。
「それは子どものころに聞いた話 誰もが笑うおとぎ話」
「今なら私は信じられる あなたの作る未来が見える」
持ち込んだビー玉をアナロジーメタモルフォーゼでウサギやペンギンなどのキャラクターに変化させ、夢いっぱいの空間を作り出して攻撃していくよ。
今が悪くても、明日にはきっと。そう思う心が新しいお話を生み出すんだよ。
「うぅ……もうやだ……イェーガー……こわい……」
猟兵の力を(いろんな意味で)味わった鬱詐偽さんは、再び鬱詐偽小屋の中に逃げるように引きこもる。
色に溢れた美しい世界も、手を差し伸べてくれる誰かも、自分にはやっぱり無縁の存在なのだと。愛するものも傷つけるものも無い孤独な心象世界で、誰にも聞かれることのない歌を紡ぐ。
それこそが自分に相応しい在り方なのだと――。
「ウサギちゃんの曲も、お話にあふれてて、素敵だな」
――そう思っていた鬱詐偽さんの小屋に、あえて入り込みながらアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は言った。
「ぼくも負けてられないや。みんな、応援してね」
グッドナイス・ブレイヴァーを発動し、召喚された動画撮影ドローンの向こう側にいる大勢のキマイラフューチャーの住民に手を振って、アリスは歌いだした。
「それは子どものころに聞いた話 誰もが笑うおとぎ話」
童謡のようなリズムで紡がれるのは、未来への希望と夢の詰まった歌。
その想いを歌詞だけでなくカタチで表現するように、アリスは手のひらからビー玉を転がし、それを【アナロジーメタモルフォーゼ】でウサギやペンギンなどのキャラクターに変化させていく。
そればかりではない。アリスのユーベルコードは鬱詐偽小屋そのものを情報的に分解・再構成し、どこまでも灰色の闇が広がるだけだった心象風景を夢いっぱいの空間に作り変えていった。
「わ……私の……世界が……っ、ぐぅ……?!」
驚愕する鬱詐偽さんを、創造されたキャラクターたちが一斉にぺしりと攻撃する。
一見すると大した威力のなさそうなその攻撃は、サウンドステージの法則によって何倍にも増幅され、鬱詐偽さんを打ちのめした。
「今なら私は信じられる あなたの作る未来が見える」
夢に溢れた世界でアリスが紡ぐ希望の歌は、キマイラフューチャー全土に生配信され、「いいね!」や高評価の嵐が吹き荒れる。
もはや勝敗は決していた。アリスの――そして猟兵たちみんなの想いの籠もった歌の力は、鬱詐偽さんの鬱ソングを完全に凌駕していたのだ。
「私の……負け……ね……」
最後の砦だった鬱詐偽小屋も完全崩壊し、敗北を認め消滅していこうとする鬱詐偽さんに、歌い終えたアリスはそっと告げる。
「今が悪くても、明日にはきっと。そう思う心が新しいお話を生み出すんだよ」
だから、どんな悲劇に襲われても、世界からお話が失われることはない。
陰湿で根暗で不幸だった鬱詐偽さんのお話も、きっと新しいお話を生み出したはずだ。
「……何色……だったの、かしら……そのお話の……世界の、色は……」
最後に、ふっと苦笑めいた笑みを残して、居場所の無かった少女は骸の海に還っていった。
かくして『ザ・サウンドステージ』を巡る攻防のひとつに幕が下りる。
だが、戦いはまだ終わらない。六つの『ザ・ステージ』を完全解放し『システム・フラワーズ』を取り戻すその時まで――バトルオブフラワーズは続く。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月05日
宿敵
『鬱詐偽『ウサギ』さん』
を撃破!
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