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バトルオブフラワーズ⑥〜オルゴールと踊って

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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 ジィィ、ジィィ――。ぜんまいがまかれる。
 舞台はパステルカラーの遊園地。
 繊細な金属板に弾かれる、機械仕掛けの優しい幸せ。
 オルゴールの音楽に包まれて、無人のコーヒーカップやジェットコースターが回る。
 中央のステージでは、メリーゴーランドのバレリーナが踊っていた。
 「――。――。」
 オルゴールの声はBGMに溶けてしまう。
 くるくるくるり。ここは彼女の世界。
 ここが欲しいなら。彼女よりも、もっともっと。
 魅力的なダンスで心を奪って――。


「なんてこったい。世界がまっぷたつだよ」
 これがメンテナンスルートとか、世界そのものも派手好きなのかねぇ……とキマイラフューチャーの一大事に、メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は目をまんまるくする。急いで猟兵たちに召集をかけて、依頼内容の説明に取りかかった。
「ご存じの通り、キマイラフューチャーの中枢のコンコンシステム『システム・フラワーズ』のピンチだよ。周囲を守る6つの『ザ・ステージ』をオブリビオンから全部取り戻さないと、目的地の『システム・フラワーズ』に辿り着けないのさ」

 今回猟兵たちに奪還の手伝いをしてもらいたいのは、『ザ・ダンスステージ』だ。ここでは『ダンシングフィーバー』という特殊戦闘ルールで戦うことになる。
「テレビウム・ロックで救出したテレビウムが沢山いるだろ。彼らの画面を通して、キマイラフューチャー中にこの戦闘が中継されているんだ。」
 戦闘中の立ち回りに、ダンスパフォーマンスを披露して視聴者を感動させることが出来れば『フィーバー』が発生して、その攻撃の効果が2~5倍にパワーアップする。更にその間は遊園地のからくりが作動して、舞台をより一層盛り上げてくれるだろう。
 逆に、フィーバーが発生しなかった攻撃の効果は半減以下となる。

「ダンスと戦闘の合わせ技が必要になるね。そうそう、今回の敵は『ギヴ』っていうオブリビオンだ。彼女は遊園地中に鳴り響くオルゴールの音楽に合わせて、すでにダンスを披露しているよ。彼女よりも魅力的に踊ってみせて、格好良いフィーバー攻撃を決めておくれっ。元々、ヒトの声は聞こえないオルゴール音だけの舞台だ……無理やり音楽を打ち消し負かすよりも、音楽を味方につけたダンスの方が、より効果的かもね」
 とはいっても、ダンスの心得や経験がないと戦えない、というわけではない。極端な話、音に合わせて体が動けばオッケーなのだ。そして何かしらの手段で観客の心を掴み、踊らせることが大切なのではないか、と最後に付け加えた。

 メリーと相棒のからくり人形Reは、手を繋いで踊ってみせる。ボタン型のグリモアもくるくる回って転移の光を放った。
「それじゃあ頼んだよ。よろしゅうにーっ」


葉桜
 OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
 作業用BGMは基本ピアノ楽曲ですが、今回はオルゴールを聞きながら書いてみようかと。

 戦争始まりましたね! 一足遅れての参戦でございます。
 ルールはOPの通りです。特殊ルールを必ずご確認下さい。
 敵UCの【吸い込まれた遊園地内での行動】【すてきなプレゼント】【楽しかった思い出】。
 についてのご希望があれば、プレイングに記載して下さい。

 沢山のシナリオ、沢山の人手が必要となる期間です。
 こちらの依頼は成功度に達しましたら締め切らせて頂きます。
 予めご了承下さいませ。
 締め切りはマスターページやTwitterで、なるべく早めに告知致します。

 それでは、皆様の心踊るプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ギヴ』

POW   :    あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD   :    しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠コルチェ・ウーパニャンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レナータ・バルダーヌ
メリーゴーランドのバレリーナさんにオルゴール……回転するものだらけですね。
バレエはおろかダンスもしたことがありませんけど、くるくる回るなら秘策があります!

わたしは【ブレイズソニックトレイル】を応用して、失った両翼の痕のうち片方だけから炎を噴射し、ねずみ花火のように回転しながらBGMにあわせてそれらしいポーズをとります。
観てくださっている方々に喜んでいただけたら、回転速度を上げて独楽のようにオブリビオンさんに接近し、噴出する炎と体当たりで攻撃します。

「あ~、目が回ってきました~」

目が回りすぎたせいか、実家の風景が見えてきました……。
楽しい思い出の気がしますけど、気持ち悪くてよくわかりません……。




 空っぽのコーヒーカップは回転しながら舞台を回り、ジェットコースターは宙を回りながら止まることを知らずに走り回る。パステルカラーの遊具たちを、レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)は目で追いかけていた。
「メリーゴーランドのバレリーナさんにオルゴール……回転するものだらけですね」
 くるくるくるり。メリーゴーランドのバレリーナ『ギヴ』はピルエットがお好きなようだ。
「それなら、共に舞いましょう。ブレイズソニックトレイル・ダンスです」
 レナータは背中からバイオレットの炎を咲かせた。絢爛に咲く炎の片翼の美しさに、キマイラテレビのカメラも彼女をアップで映し出す。炎が激しく噴出されれば、まるでねずみ花火のようにくるくるとレナータの身体を回転させていく。オルゴールのリズムに合わせて、つま先はピンと伸ばし、指先まで綺麗に見えるように。時折、羽根が散るように紫炎の花びらが舞うのも、また美しい。ダンスの心得はなくても、一生懸命踊ってみようとするその姿勢、そしてカメラが捉えたレナータの柔和な笑顔の魅力に、キマイラフューチャーの観客たちは大盛り上がりだ。
 すると、彼女の活躍を世界が応援するように、炎のオラトリオの周りにスポットライトが当てられた。パステルパープルの光が彼女の周りでくるくる踊る。これは『フィーバータイム』だ!
「回転速度、上げます! もっともっと、盛り上がりましょう!」
 炎を更に噴射すれば、舞台の熱も上がっていく。頭に巻いた包帯をヒラヒラ舞わせながら華麗に回転するレナータは、素早いピケ・ターンでギヴの元へ。ギヴも負けてはいられないとその場で美しいピルエットを続けるが、レナータの勢いには叶わない。激しい炎の体当たりによって、ギヴは吹き飛ばされて宙を舞った。
「あ~、目が回ってきました~」
 慣れない回転の連続に足元が覚束なくなったレナータの視界には、懐かしい風景が映し出されていた。
「これは、実家、ですか……うぅ、楽しい思い出の気がしますけど、気持ち悪くてよくわかりません……」
 それは限界を突破した幻か、それともギヴが思い出させてくれたいつの日かの楽しい思い出だったのか。

 飛ばされたギヴは再び立ち上がる。炎に焼かれて彼女の全身は黒焦げだったが、くるりくるり――回転すれば、不思議なことに始めと同じ美しい衣装を纏っていた。だが、受けたダメージが無かったことになるわけではない。
 くるくるくるり――お次はだあれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

チトセ・シロガネ
なに楽しい過去の幻影が襲ってきても一分一秒刻みで"今"を楽しんでいるボクは負けないヨ!

【変装】で華麗な衣装に着替えて
【礼儀作法】で淑やなレディとして振る舞うネ
【浪漫銀貨】、「今を楽しむ」という思いをコインに込めて【ダンス】を踊るヨ
この【早業・念動力】を使った優雅なステップについていけるかナ?

攻撃は【カウンター】からの【空中戦・属性攻撃・2回攻撃】でハゲしくいくネ!




「次はボクの出番ヨ!」
 名乗りを上げたチトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)は、光子変換装置を搭載した変身機能のあるフォトントランサーで、エメラルド色の華麗なドレスに早着替えをした。そのパフォーマンスで、まずは観客たちの視線を奪う。こんな美しい衣装を纏う淑やかなレディは、いきなり暴れるなんて粗野な真似はしない。ドレスの裾を摘まんで丁寧に礼をした後、チトセの手に握られていたのは一枚のコインだ。
「白く輝く銀のコインよ、『今を楽しむ』思いを込めて、我に勝利を!」
 コインは召喚した投入口に吸い込まれて、思いを力に変える『浪漫銀貨』が彼女を味方する。軽やかなオルゴール音に乗って、チトセは舞う。足音すら感じさせない念動力による無重力のステップ。回転すればドレスの裾が優しく広がり、大輪の花が咲く。そうして地上の花は回転を重ねて宙に浮かび、空へと舞台を移していく。キマイラテレビに放映されるその優雅な無重力ダンスに、観客たちは大きな歓声と拍手を送った。
 パステルグリーンのスポットライトがチトセを照らし、銀の紙ふぶきもキラキラと舞い出した。
「きたネ、『フィーバータイム』! 力あふれるヨ! ハゲしくいくネ!」
 と、ギヴへ攻撃しようとした時。すでに傷だらけのまま踊り続けるギヴから何かが飛ばされた。それは様々な世界で彼女が飲んだお酒の席の記憶たちだ。チトセを酩酊させようと、好物の酒がずらりと並ぶ。
「お酒はだいすきネ。でも思い出じゃ酔えないヨ。なに楽しい過去の幻影が襲ってきても、一分一秒刻みで『今』を楽しんでいるボクは負けないヨ!」
 キマイラの応援も、敵に誘惑されるピンチも、浪漫銀貨は力に変える。チトセの心は躍り、表情も楽しげだ。軽やかなステップで、ギヴの元へと宙を駆ける。四肢に輝く四本の刃は眩しいくらいの光を放つ。ザザン――とバレリーナと光の淑女は交差した。

 宣言通り激しく切り付けられたギヴだったが、その身体から鮮血が舞うことはなかった。赤い血の代わりに傷口から溢れるのは、パステルカラーの紙ふぶきだ。それでもバレリーナは踊りを止めない。
 くるくるくるり――きれいでしょ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
wiz
「そういえば踊った事が無かった」
先ずは【学習力】でギヴや他の猟兵を観察し、ダンスとギヴのテンションを確認する
【目立たない】ように何度も練習していく
転んでも諦めない
【楽しかった思い出】で修行時代の仲間や思い人達が現れても一心不乱に踊る
「今は依頼中だろ?お前が良く言ってたよね」
馴れてきたら【残像】を駆使してオルゴールの音を消さないよう注意しつつ幻想的に踊りながら斬る
時折細胞達が感じるキヴの踊りにかけるテンションには逆らわない
「それを越えるのが今だよね。時間は短いけど…それを越えて魅せよう」
オルゴールが途切れる瞬間【ダッシュ】で間合いを詰めて斬る
刹那の瞬間に想いを込めて




「そういえば踊った事が無かった」
 戦場に訪れたものの、どう踊ればいいのか見当も付かない仁科・恭介(観察する人・f14065)はまずは身を潜めて、ギヴや他の猟兵たちのダンスバトルを見学することにした。華やかな戦場の陰で、このような努力をする者がいるとは誰も思わないだろう。恭介は隠れて練習を重ねた。片脚を軸に回転、移動しながら回ろうとすると、軸がずれて転んでしまう。それでも諦めずに何度も何度も。どうにか形になったところで、恭介は携帯食料の干し肉を頬張った。ギヴのテンションと『共鳴』させて、漸く恭介は舞台に立った。
 オルゴールの楽曲は優雅で穏やかだ。過度な回転の連続までは出来なくても、音に合わせてステップを踏み、丁寧にターンを行うだけでもどうにかなる。ただ、それだけのダンスのはずなのに、観客の盛り上がり様はかなりのものだった。それもそのはず。実は彼が目立たないようにこっそり行っていた自主練習も、バッチリとカメラに映されていたのだから。コンコン慣れして努力をしなくても暮らしていける住人たちの心に、恭介の陰の努力は熱く響いたようだ。
 パステルレッドのスポットライトが多方面から恭介を照らす。そしてギヴとの戦闘を後押しするように、『フィーバータイム』の光の道が彼女の元へと続いていた。傷口からパステルカラーの紙ふぶきを散らしながら、ギヴは踊る。その紙ふぶきの舞は、恭介に過去の記憶を思い出させる。そこにいたのは修行時代の仲間達、そして思い人だった。
「――――」
「今は依頼中だろ?お前が良く言ってたよね」
 幻と会話をしながらも、恭介は動きを止めることはない。先程練習した通り、ステップステップターン。慣れてきたら、残像も使ってギヴを取り囲もう。くるくるまわるギヴの周りを囲んで、恭介も回る。そうしていると、ギヴのテンションが恭介の細胞を呼応する……その心は躍っていた。ピンチを楽しんでいるわけではなく、ただ華やかな舞台で踊ることが心から嬉しいようで。共演者と共に踊れる今が幸せの最高潮だと言わんばかりに。
 そんな彼女の心内を覗きながら、恭介はその高揚に逆らわずに、自分も胸を高鳴らせながら踊り続けた。心を通わせた者たちの共演は、今まで以上に幻想的な舞台を作る。
 永遠に踊っていたい……自分でさえ、そう思ってしまいそうになる。しかし、このオルゴール曲はもうすぐ終わる。そろそろ、頃合いか。
「それを越えるのが今だよね。時間は短いけど……それを越えて魅せよう」
 ポロロン――。オルゴールが途切れる瞬間、恭介はダッシュでギヴまでの間合いを詰めた。刹那に想いを込めて、親方から貰った刀で渾身の斬撃を放つ。懐かしい幻影も共に斬られて、消えていった。

 更に美しい紙吹雪が舞った。だんだんと、衣装の修復も追いつかなくなってくる。それでも、ギヴは立ち止まらない。踊らないと死んでしまうと言わんばかりに。オルゴールは次の楽曲を奏で始めた。
 くるくるくるり――ああ、まだ踊れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェルベット・ガーディアナ
シャルローザと一緒ならばきっと素敵なダンスが踊れるよ。
さぁ、メロディに乗って二人で踊ろう。
シャルローザのドレスを翻し【フェイント】を
しなやかにターンして【二回攻撃】
敵からの攻撃は華麗に【見切り】
うん、いい感じに踊れてる。
ボクの踊りは彼女を引き立てるもの。
UC【輪廻に導く光】を撃ち込んでフィナーレ。

(シャルローザとともにお辞儀して終了)




「シャルローザと一緒ならばきっと素敵なダンスが踊れるよ」
 次に舞台に現れたのは、一人の人形遣いと白いドレスを着た美しい人形だった。
「さぁ、メロディに乗って二人で踊ろう。」
 ヴェルベット・ガーディアナ(愛しい君と踊る・f02386)はそう相棒に呼びかけて手を取った。流れるオルゴールはワルツのアレンジ曲だ。ヴェルベットがリードしてシャルローザが舞う。背丈の足りない人形でも、ヴェルベットの手にかかれば生きているように軽やかなダンスを披露する。
「うん、いい感じに踊れてる」
 自分の踊りは彼女を引き立てるものだと。あくまでもシャルローザが映えるようにヴェルベットは舞う。そして、彼女たちは踊りながらギヴの近くへと歩み寄った。
 くるくるまわるバレリーナの横でしなやかなターン。ふわりと翻るシャルローザのドレスがギヴからの死角を作ったところで、精霊銃アリアで素早く二回射撃。至近距離での発砲で撃たれたギヴの足から、血液代わりのパステルカラーの花吹雪が噴き出す。傷はそのままに、踊り続けるギヴのスカートに飾られた鋏たちが、意志があるように踊りを邪魔するヴェルベットに切りかかる。しかしその攻撃も見切っていたヴェルベットは、シャルローザをリードしてターンをしながら華麗に避けて見せる。踊りながらの見事な攻防に、観客たちの歓声が沸いた。
 パステルイエローのスポットライトがヴェルベットたちに降り注いだ。これは『フィーバータイム』。天上へ導いてくれるようなその光が、ヴェルベットの精霊銃アリアを照らして、聖なる力を溜めていく。その間も、彼女たちは踊り続けていた。傷を負っても踊り続けるバレリーナ。オブリビオンではあるが、その姿は美しい。敬意を込めて共に舞いながら、ヴェルベットは銃口をギヴに向けた。
「この光が死を超えて輪廻に導かんことを」
 アリアから輝きを増した『輪廻に導く光』が放たれる。ギヴの左腕が弾け飛んだ。
 溢れる紙ふぶきにヴェルベットの視界が覆われる。それは過去の記憶、シャルローザと出会ったあの日の思い出だった。抱き締めに行こうとして、留まる。自分の相棒は、すぐ隣。今、手を繋いでいるこの子だから。もし近づいていれば、ギヴの鋏に切り刻まれていただろう。思い出は一瞬で流れて消えた。

 メリーゴーランドの動きがぎこちない。腕は生えてこないし、紙ふぶきを流し過ぎた。それでも、壊れた人形のようにギヴは踊る。
 くるくるくるり――もう少しだけ。

成功 🔵​🔵​🔴​

エレニア・ファンタージェン
あら、殿方ならパ・ドゥ・ドゥをご一緒頂きたかったのだけど
ご婦人なら仕方がないわね
ここはデュエットと洒落込みましょう

見切りでギヴの動きを読みながら動きを合わせる
…エリィよく見えてないからほぼ第六感なのだけど
ギヴと二人で舞台を、観客を盛り上げられたら良いと思うの
もちろん主役はエリィだけれど
誘惑、催眠術を使用して観客に訴えましょう
ねえ、エリィの方が魅力的でしょう?

素敵なプレゼントは阿芙蓉の花束かしら?
え、もしかしてダメージを受けるの?
…舞い散る花びらすら演出に使ってあげるわ
ふふん

フィーバー攻撃は、くるり、優雅なピルエットでギロチンの刃を叩きつけます

最後は観客にレヴェランス
礼儀作法は大切です




「あら、殿方ならパ・ドゥ・ドゥをご一緒頂きたかったのだけど……ご婦人なら仕方がないわね。ここはデュエットと洒落込みましょう」
 踊り続けるギヴの前に、エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)は歩み寄る。左手を失い、体中から血液の代わりのパステルカラーの紙吹雪を零すバレリーナの身体はもうボロボロだった。それでもくるり、残り少ない命を削るように回るピルエットは、より一層美しさを増している。その彼女に合わせて、エレニアも踊る。常に視界が霞むエレニアは第六感で相手の動きを読むしかないのだが……。
「……もしかして、合わせて下さるの? いいわ、一緒に舞台を、観客を盛り上げましょう」
 エレニアのステップに、気付けばギヴの方が合わせてくれていたのだ。壊れて動けなくなるまでひとり踊り続ける運命のバレリーナにとって、誰かに共に踊ろうと誘ってもらったのは初めての経験だった。オルゴールの音楽も喜びを現すように、心なしか軽やかに飛び跳ねて聞こえる。戦い合うはずの猟兵とオブリビオンが手を取り踊る姿に、中継を見る観客たちは感動に心を震わせていた。
 彼女たちを彩るように、パステルカラーの七色の光が舞台を優しく包み込む。『フィーバータイム』の中、二人きりの舞台に気を良くしたエレニアは、少しだけ茶目っ気も覗かせる。
「ねえ、もちろん主役はエリィよね? エリィの方が魅力的でしょう?」
 カメラ目線で魅惑的な『阿芙蓉の雫』。電波を越えてまで効果があるかは不明だが、キマイラフューチャーでエレニアのファンが生まれたのは確かだった。
 そんなエレニアへ、踊りながら歩み寄るギヴは、どこからか取り出した花束を手渡した。
「これは……阿芙蓉の花束?」
 阿芙蓉の香りがエレニアを包むと、一瞬何かの映像が頭を過った。それはエレニアがいてギヴもいる、ほんの少し先の未来。踊るギヴに、エレニアは――。すぐに阿芙蓉は舞い散った。
「……それが、貴女の望みなのね?」
 ギヴは小さく頷いたように見えた。そして再び踊りに誘う。
 二人合わせてのピルエット。それは儚く美しく、くるくるまわって――。
 エレニアは、仕込み杖のギロチンでギヴの細い首を断ち切った。身体とメリーゴーランドが地に落ちる。オルゴールはゆっくり、ゆっくりと、止まった。
「一番幸せな時に、終わりたい。……ギヴ、貴女の願い、叶えたわ」
 踊る為に生きて、踊りながら死にたいと願った、彼女の代わりに。
 エレニアは観客に向かってレヴェランスをして、幕を閉じる。
 ――ありがとう。それはもう動かないオルゴールの、最後の言葉。

 音のない、役目を終えた、遊園地。アンコールは叶わない。
 勝利した猟兵たちは静かに舞台を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月04日


挿絵イラスト