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バトルオブフラワーズ④〜チョコット大食いバトル

作者：柊透胡

「ようやっとのお出ましやな、オブリビオンフォーミュラ……キマイラフューチャーの戦争は、開幕も派手やなぁ」
　ぽそりと呟いた各務・瞳子（七彩の聴き手・f02599）は、すぐに猟兵達に向き直る。
「まずは初戦。どうやら『ザ・ステージ』って呼ばれる拠点を落とさなあかんようやね」
　『ザ・ステージ』は６箇所。それぞれ「特殊な戦闘ルール」があり、喩え敵を倒しても、敗北条件を満たすと謎の力で追い出され、強制敗北になってしまうのが厄介だ。
「皆に行って貰うんは、『オオグイフードバトル』っていうルールが適用されたエリアや」
　猟兵を待ち構えるオブリビオンの周りには、『大量の料理』が並べられている。
「敵は、この料理を食べ続ける事で圧倒的な戦闘力を発揮する。このままでは、歴戦の猟兵でも太刀打ち出来へんのや」
　だが、オブリビオン以上の大食いで料理を食べられれば立場は逆転する。強力なユーベルコードで、オブリビオンを攻撃出来るようになるのだ。
「食べた量が同じくらいなら、互角の戦闘に持ち込める。簡単に言えば『大食い競争』やね」
　待ち構えているオブリビオンは、『チョコットキング』。用意されているのは、様々な『チョコレート菓子』だ。
「共食い、でもないやろけど……『真っ白な体は滑らかなホワイトチョコ、尻尾と帽子の先はビターチョコでコーティング』なワンコやさかい、チョコレートの大食いなんて全然平気やろなぁ」
　故に、猟兵達が大食いに勝利するには、『たくさん食べられる理由』や『大食いに懸ける熱意』等「チョコの大食いなら負けないぞ！」というやる気が大きく影響するだろう。
「まあ、チョコ菓子に手を加えるのもOKやさかい。アレンジして沢山食べる工夫も有効やろなぁ」
　それこそ、チャレンジする恋人の為の愛情スイーツとかね。
「ドン・フリーダムへの第１歩。皆、頑張ってな！」

第1章 ボス戦 『チョコットキング』

POW   :    チョコレートテイルズ 【甘味への欲求 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【巨大な溶けかけのチョコレートの尻尾】から、高命中力の【滑らかトリフチョコ】を飛ばす。 SPD   :    蕩けるチョコボディー 【チョコットキング 】に覚醒して【熱々のチョコボディー】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 WIZ   :    超硬化チョコボディー 【 超硬化したチョコボディー】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。 イラスト：笹にゃ　うらら 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　広々としたフロアに漂う芳醇なる香り。そして、所狭しと並んでいるのは、様々なチョコレート菓子だ。
　ワッシワッシワッシワッシ――。
　フロア最奥の、１段高いステージの上。真っ白な狼のような姿のオブリビオンが、一心不乱にチョコレート・ファッジを貪っていた。ファッジを平らげた次は、バケツサイズのチョコレート・トライフルを前脚で引き寄せる。周りにはチョコレート菓子が山盛りだ。
　体は滑らかなホワイトチョコ、尻尾と帽子の先はビターチョコでコーティング。自らもチョコレートなオブリビオン、その名も「チョコットキング」は、只管にチョコレート菓子を食べ続ける。
　オブリビオンが食べ続ける間は、絶大な戦闘力を誇るザ・フードステージ――オオグイフードバトル。
　チョコットキングを倒すには、まずオブリビオンを上回るチョコレート大食いを成し遂げなければ……。
「わーい、チョコだー♪　好きなだけ食べていいんだよね？」
　黄色い歓声が響き渡った。三上・チモシー（カラフル鉄瓶・f07057）は、チョコレート菓子の山を前にピンクの眼をキラキラと。
「いただきまーす！」
　挨拶もそこそこに、特大板チョコに手を伸ばす。チモシーは破戒僧にしてフードファイター。大食いにはちょっと自信があるし、勿論、お菓子も大好きだ！
「成程、チョコのお菓子を沢山食べれば良いのね？」
　チョコレート菓子の山を悠然と見回すのは、シルヴィア・ジェノス（月の雫・f00384）。月下美人、という言葉が似合いそうな白皙の面がうっすら紅潮している。
「オブリビオンと大食い勝負、良いでしょう！　大食いは大の得意よ！」
　嵩高く積み上げられたボンボン・オ・ショコラの山へ向かう、シルヴィアの背中はルンルンとして。元より、その健啖ぶりは恋人も呆れる程。大好きな甘味は勿論、別腹。だって、美味しいものは沢山食べたい。紛う事なき真理だ。
「ふふふ、やっぱりいた、チョコの敵っ」
　そして、ショコ・ライラ（そこにちょこんとショコライラ・f17060）は、敵までもがチョコレートな戦場（と書いて理想郷と読む）を見回し熱い息を零す。早速、テリーヌ・ドゥ・ショコラを分厚く切り分けてパクリ。
「んふふふ、おいひ……毎日飽きもせず食べてるんだ。チョコの大食いなら負けるはずがないね」
　何せ、ショコは未来のショコラティエールとして修行中。大食いの心得なくとも、チョコ愛があればきっとノープロブレム！
「甘いもの沢山食べてもいいんですか！？ 　やったー！！」
　４人目の歓声は、自称『猟兵一の甘党』アーサー・ツヴァイク（ドーンブレイカー・f03446）だ。
「よし！　このアーサーがチョコでも何でも食いまくってやるぜ！」
　嬉々として、巨大チョコレート・マフィンに取り掛かる。
（「チョコは良いよね……ちょっと落ち込んだ日とかに食べると、心が安らぐんだ」）
　今日はテンションマックスだけどね！
「銃を撃ちに来ました！」
　エレクメトール・ナザーリフ（エクストリガー・f04247）の参戦は、些か遅れて。両手にしっかと銃を握って飛び込んできたが、文字通りの甘い光景に思わず碧眼をぱちくり。
「えっ、まずは食べる？　……はい！　チョコレート食べに来ました！」
　切替はすこぶる早かった。スイーツ在る限り、ノンストレスのエレクメトールだ。チョコレートなら幾らでも食べられる。銃を撃つ為なら尚の事。
（「そう言えば、ミレナリィドールに摂食量の限界なんてあるんですかね？」）
　ザッハトルテに手を伸ばしながら、小首を傾げるエレクメトール。鱈腹になるまで食べた経験は無いけれど、自分の限界を知るいい機会かもしれない。
「んー、美味しい！　あっちもこっちも、どんどん食べたーい♪」
「えっなに、もっと食べていいの？　んふふー」
　殺伐とか剣呑とか、常の戦場から程遠い幸せオーラはあちこちで。とはいえ、ボリュームたっぷりのチョコレート菓子だ。同じ物ばかりでは流石に飽きてくる。
「そういや、味変オッケーだよね？」
　アーサーが取り出したる「蜜ぷにシロップ」。まさか、甘いものに甘いものとは……。
「……は？　おかしい？　いやいや、甘い×甘いの相乗効果で、スーパー美味いに決まってんじゃん」
　何だかカメラ目線で熱弁を振るい、特大チョコレート・ムースへたっぷりとろーり。
「味を変えつつ旨さもアップ……もう無限に食えるのでは」
　少なくとも、アーサーにとっては……確かに、大匙が止まる気配はない。
「そうね、美味しく楽しく、もぐもぐするのが大事！」
　焦れば却って満腹を実感してしまう。シルヴィアはマイペースを崩さない。ついでに、オランジェットやポワール・ベル・エレーヌ等、他の素材とのアレンジも欠かさない。
「これは……私も負けてられないね」
　シルヴィアの大食ぶりや料理の手際の良さは、ショコの闘志に火を点けたようだ。
「あっ、いいこと思いついちゃった」
　せっせと板チョコ各種を攻略していたチモシーも、何やら閃いた模様。取り出したるは、お湯が入った熱々の鉄瓶。空いた容器に板チョコを砕いて湯煎すれば。
「じゃーん、飲むチョコレート！」
　チョコを飲みながらチョコを食べる、此れ最強。
「ホント幸せー♪　いつまでも食べてたいなー♪」

　――思い思いにチョコレート菓子を楽しむ、もとい大食いに挑む猟兵がいる一方、仲良し参加、もとい、連携重視の猟兵も。
「美味しいショコラが食べ放題だなんて、素敵よね」
　実にフードファイターらしい、モニカ・ラメール（甘く絡めるカラメリゼ・f14455）のうっとりした呟きに、こっくり頷くシロ・クロ（拾われた子狼・f16253）。
（「モニカとお出かけ。楽しい」）
　猟兵として依頼に臨むという意識のないシロだが、やるべきがチョコの大食いというのは、何となく判る。
「さぁ、ルーヴ。並んだお菓子も可愛いシャンも、みーんな食べちゃいましょう？」
　ステージ上でガツガツとチョコレート・桶プリンに頭を突っ込むチョコットキングを見やり、モニカは唇をペロリ。
（「今日はモニカの為に頑張るぞ」）
　再度こっくり頷いたシロも、内心で意気込んでいる。
　周りを見回せば、チョコレート菓子は減った分だけどんどん補充されており、手を伸ばせば幾らでも。
（「美味しい……」）
　ブラウニーをパクリ。すぐさまユーベルコードで体内時間を引き延ばし、超加速してパクパクと。美味しい幸せ空間に、少女に宿る神格達も今日は比較的穏やかなようだ。
「甘い物なら、いくらでも食べられちゃうわ」
　モニカはチョコレート・ファウンテンに陣取り、ナッツやフルーツにたっぷりチョコレートを浸しては舌鼓を打つ。いつも空腹を抱えているようなものだから、我慢せず好きなだけ、というのが何より嬉しい。
（「キャラメルやシロップで味を変えるのも良いわね」）
　舌が飽きないようアレンジを加えながら、モニカはふと、シロの様子に気が付く。
「もう、ルーヴ？　お口の周りが汚れてるわよ」
（「そう言えば……口周りがべたべたする？」）
　小首を傾げるシロに、モニカは優しく手招き。
「仕方のない子ね、拭いてあげるからこっち向きなさい」

（「キマイラフューチャーは、私の、キマイラの故郷だし」）
　白狐の耳と尻尾に蒼い翼――エルーゼ・フーシェン（双刃使い・f13445）はキマイラだ。故郷を護りたい一心で、この『ザ・ステージ』に挑んだ。
（「チョコ菓子は昔から好きだし……よく作ってくれる人がいるものね」）
「好きだろ、パフェ。今回はチョコパフェだ」
　……まさか、今しも脳裏に浮かんだ彼が、目の前で美味しそうなパフェを差し出しているとは。
「どうして、ここに？」
「挑むなら、ここだろう……分かる」
　不愛想な口調ながら、トリガー・シックス（黒衣の銃剣士・f13153）は手を休めず、次なるチョコレートパフェを作っている。
（「料理なら得意だ」）
　最初から、エルーゼ達大食い挑戦者のアシストに回る心算のトリガー。チョコレートのビター感を強めたり、砂糖やミルク量を変えたり。苺やバナナを使ったパフェも用意している。
（「いける！」）
　彼に参戦は話していなかったのに、来てくれた。喩え怖いもの知らずの挑戦であっても、彼の作ってくれるパフェならば。
　思わず笑み零れるエルーゼ。綻んだ口に運んだチョコレートパフェは、とても優しい味がした。

　――――？
　マカロン・オ・ショコラを丸呑みしていたチョコットキングは、俄かに覚えた違和感に首を上げた。
　――――！？
　そして、気付く。山のようにあったフロアのチョコレート菓子が、明らかに激減している事に。
「じ、銃を撃つ為なら……」
　ゲフッと込み上げてきた何かを呑み下し、エレクメトールは両手の銃を構える。
（「撃つ相手が目の前にいるのに……撃たない訳にもいきません！」）
　もしここで膝突こうものなら、「お前の銃の思いはそんなものか！」と銃の大明神にどやされる。本当に存在するかどうかはさて置いて。
「銃口を突き付けられるとヒヤリとするでしょう？　どこまで耐えられるか、試してみましょうか！」
　オブリビオン目掛けて一気に間合いを詰め、二丁拳銃で零距離射撃！
「当たりました！！」
　手応えの良さに快哉の声を上げるエレクメトール。そう、猟兵達は「チョコレート菓子大食い」に勝利したのだ！
「一気に攻める！」
　大食いはここまで。愛剣『ゲンドゥル』の光刃に炎を纏わせ、エルーゼが剣舞の如く斬り掛かれば、息を合わせたトリガーは剛刀象る『イザナギの覚悟』を以て剣刃一閃！　ホワイトチョコな尻尾を断つ。
　――――！！
　次の瞬間、テンパリングの如く修復されたチョコットキングの尻尾より、滑らかトリュフチョコが礫の如く。『甘味への欲求』を標にバラバラと飛来する！
　――時よ止まれ。
　だが、素早く射線を遮ったシロはユーベルコード『永遠なる刹那【Ewig・Zeit】』を発動。
「ルーヴも手伝ってくれてるし、負けられないわね」
　加速した手技がチョコ礫を叩き落とす間に、モニカは悠々と間合いを詰める。
「知ってるかしら？　エクレールは、素早く食べるのがコツなの」
　フォンダンが溶けない内に。あたかも稲妻の如く。
「アナタも、すぐに食べてあげる」
　それじゃぁ、いただきます――身をたわめて飛び掛かるや、雷気帯びた牙を剥き、喰らい付くモニカ。
「あら、わたしもきちんとお口拭かないと」
　クスリと笑んで、唇に付いたチョコを舐め取った。そんな少女を睨み付け、チョコットキングはいよいよ覚醒。熱々のチョコボディは表面が沸々と滾るよう。
「もっと溶けちゃえ溶けちゃえー！」
　だが、怯む猟兵はいない。曼殊沙華象るエレメンタルロッドに口付け、シルヴィアは無数の天上花を放つ。幾重にもチョコボディに突き刺さり、オブリビオンの生命力を糧に燃え上がらんと。
「この手に宿る太陽の力……受けてみやがれえええええ！！！！」
　アーサーは聖痕に力を集め、食べに食べたカロリーを超高熱量に転換。ダッシュで接近し、大威力の拳撃を叩き付けた。
　ビキリ――。
　猟兵が高熱に怯まぬと知り、チョコットキングはいよいよ奥の手を出す。一転、全身を超硬化。
　ショコゥラァァァァ！！
　咆哮轟く。文字通りチョコレートの猛獣と化し、チョコレート菓子を蹴散らし暴走するオブリビオンに、猟兵達のユーベルコードが次々と突き刺さる。
「いけないいけない、チョコは溶けちゃえー！」
　平丸型鉄瓶――容量1.6L。チモシーの本体たる南部鉄器の注ぎ口より迸る熱湯。ちなみに、チョコレートに水分は大敵。油脂分が浮き出て見た目も、美味しさも失われてしまう。
「ブルーム現象ね、可哀想に」
　ショコは気の毒そうに眉を顰める。今でこそ歪になってしまったチョコットキングだが、元は可愛らしい造形のチョコレート。攻撃をほんの少し躊躇ってしまう程だったのに。
　チョコレィアァァァァ！！
「だーめ……チョコの匂いは、他の何よりもよく分かるんだよ」
　ほんの僅かな香りを瞬時に嗅ぎ分け、チョコットキングの一撃を回避。ショコは軽快な鼻歌混じりに、リボルバー型ビームキャノンを構える。
「ふっふふーん？　沢山チョコを食べて元気いっぱいの私が、負けるわけなかろう？」
　速効、チョコットキングの鼻面を撃ち抜く――刹那動きを止めた、チョコレートの身体が、次の瞬間。音を立てて瓦解した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月03日