バトルオブフラワーズ⑧〜街が色を失う前に
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「さー、どんどん塗るよー!」
「真っ黒♪ 真っ黒くろくろ♪」
「あっ、こぼしちゃった。いいや、どんどん広げちゃえ! ぺたぺた~!」
着ぐるみだろうか。幼児番組の人形劇に出てくるようなゆるい見た目の彼らは、そこかしこに黒い塗料を塗りつけていた。
「ねえねえ、猟兵が来るかもしれないんだって」
「仲間を集めて返り討ちにしちゃおう!」
「えー、じゃあぼくは隠れて塗ることにするよ」
めいめいに塗料の入った缶を持ち、街の至る所に散っていく。だが、彼らのやる事はただ一つ。街中を『闇のような黒色』に塗り潰す事だけだ。
キマイラフューチャーを模したサイケデリックな印象すら受ける配色の街並みは、黒に飲み込まれつつあった。
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「システムの仕組みだとか何だとか、あたしにはさっぱりわかんねー。ただ『ザ・ステージ』の敵をどーにかする必要があるから、皆の力を貸して欲しい」
キマイラフューチャーが真っ二つに割れたという途轍もない出来事に頭がついていかないとぼやきつつも、二本木・アロは猟兵達に頭を下げた。
「皆に向かって貰いたいのは、キマイラフューチャーの街並みを模したこのフィールド。ゆるキャラみてーな怪人達が、壁やら地面やらをただただ真っ黒に塗り潰してる」
彼らの用いる黒い塗料が一体何から出来ていて、どういった効果があるのか、目的は何か。不可解な事はあれど、『戦場を黒一色に塗り潰されてしまうと非常にまずい』という事だけははっきりしている。街並みを全て黒で塗り固められてしまえば敗北。それがこの戦場におけるルール、『クロヌリスレイヤー』だ。
「ま、難しいコトは考えなくてイイ。とにかく敵を倒せ、街を塗らせるな。皆にお願いしたいのはこれだけだ」
ただし、と思い出したように付け加える。
「敵の行動には二パターンある。数体で集まって目立つ場所を塗りつつ、襲ってきた猟兵を返り討ちにするヤツら。それと一体のみでこそこそと隠れて塗ってるヤツだ」
前者は数の暴力で広い範囲を塗っている為、見つける事は容易だが、同時に複数体を相手にしなければならない。塗れる範囲は狭いものの、着実に塗り進めている後者は意識して探さないと見つけられないだろう。
「どっちの敵を相手にするかは皆に任せるよ。ユーベルコードとか技能とか、自分に合った方に行ってくれ。じゃ、頼んだぜ!」
宮下さつき
可愛い宿敵さんがいっぱい並んでたからこれはもうシナリオ書かせて頂くしかありませんね……! 宮下です。
●世界
キマイラフューチャーです。
●『クロヌリスレイヤー』
この戦場では、街並みが全て塗りつぶされると『敗北』になります。塗り潰される前に怪人の撃破をお願い致します。
それではよろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『つよくてかわいいアニマルズ』
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POW : 丸太クマさん怪人・ウェポン
【丸太兵器 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 鉄球ワンちゃん怪人・ジェノサイド
【鉄球攻撃 】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ピコハンウサちゃん怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ピコハン 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カーバンクル・スカルン
せっかくの綺麗な街を真っ黒に塗りつぶすなんて……芸術家の気持ちを踏みにじる気!?
とりあえず、派手に動き回ってる奴には車輪をぶつけて「水責め」で塗料を洗い流してその後何も出来ないようにさせる!
あと、隠れてコソコソしてるやつは私が【ロープワーク】を使って空を渡りながら探して、見つけ次第飛び降りて金槌でぶん殴るよ!
鎧坂・灯理
オブリビオンを片付ければいい。
なんだ、いつもと変わらんな。
【SPD】
バイクに乗り、黒い部分を踏まぬよう《運転》しながら近づき、【UC】で取り出した手榴弾を大量に投げつける。
手榴弾の種類は問わない。
発煙弾、催涙弾、焼夷弾、爆弾。
攻撃できればなんでも構わん。
鉄球攻撃を仕掛けてきたなら、《念動力》による急ターンで離れ、攻撃が終わったらまた近づいて手榴弾。
予定外の事が起きようと、私の《覚悟》の前には動揺するほどの事もない。
何があろうが《気合い》で必ず任務を遂行する。
私のプライドにかけてな。
「そーればっしゃーん!」
勢いよく塗料をぶちまけ、けらけらと笑う怪人・つよくてかわいいアニマルズの耳に、バイクのエンジン音が届いた。猟兵が来たのだと気付き、音の方向へと向き直る。
「オブリビオンを片付ければいい。なんだ、いつもと変わらんな」
敵に気付かれる事も厭わず、鎧坂・灯理はシフトペダルを蹴り込んだ。迎撃の姿勢を見せる怪人達に突っ込む直前、念動力を駆使した急ターンをしながら置き土産を一つ。
「ば、爆弾だー!」
「え、不発? ……違う、スモークだ!」
「だいじょーぶ、猟兵はそっち行ったよ!」
噴き出した煙に視界を奪われるが、音と煙の流れでバイクの位置を予測する事は不可能ではない。然したる混乱も無く、猟兵を侮るような空気すら流れた瞬間、
「うわっ?! 熱っ、あっつい!」
ザア、と水が落ちる音がした。まだ視界が晴れない中で次々と響き渡る、バスタブからお湯が溢れるような戦場にそぐわぬ音と、仲間の悲鳴。突然の事態に狼狽えるウサちゃん怪人の前に、艶やかな赤い髪の少女が姿を現した。
「次はあなたね!」
カーバンクル・スカルンは煙の中から躍り出るなり、スレンダーな身体に似つかわしくない程に巨大な車輪を軽々と掲げ、怪人へと叩き付けた。一見舵輪のようにも見えるそれは数々の機能を以て怪人を拘束し、彼女のガジェットである浴槽へと沈む。
「冷たっ!」
手にしていたペンキ缶諸共水の中に叩き込まれ、息も絶え絶えに水面から顔を出した怪人は、不敵に笑う灯理と目が合った。
「暖かくなったとはいえ、水風呂では風邪をひいてしまうな」
――乾かしてやろう。彼女の親切な言葉に反して獰猛な光を宿す眼差しに、怪人が嫌な予感を覚えるが早いか、辺りを猛火が襲った。
「幸い、補充したばかりでな」
「うわああ!」
灯理の携えたトランクが広大な武器庫に通ずるなど露知らず、いくらでも出てくる焼夷弾に恐慌状態に陥ったクマさん怪人が、丸太を捨てて逃げていく。
「逃がさないよ!」
カーバンクルは華麗なロープ捌きで建物の上へ跳び上がり、逃げた怪人の追跡を開始した。高い所から見下ろすと、色彩鮮やかな街並みの至る所が虫食いのように黒で塗り固められている事がよりはっきりと分かる。
「せっかくの綺麗な街を真っ黒に塗り潰すなんて……!」
路地を走るクマさん怪人の姿を捉えるなり、カーバンクルは背丈に迫るサイズの金槌を振り下ろした。
ゴオォオ……ン!
「まったく、芸術家の気持ちを踏みにじる気なの?」
地面にめり込んだ怪人に、問いは届かない。黒一色となったビルを睨めつけ、猟兵達は次の戦場へと向かった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
スノウ・パタタ
真っ黒なら、すのー見つかりにくいかも、かなあ?
【香水瓶の魔法】選択
自分の表面に黒のインクを纏い、既に塗られた風景に擬態。体の中の宝石やインク、飾りの類いは内側に包んで目立たぬ様。
…瞳はね、ほんとは無くても、見えてるのよ。わたしらしさ、より今は、キマイラさんの世界を助けるの。
水色の宝石も内に包み、隠れて塗り進める単体の敵を探します。
Hello World.
属性の精霊へ干渉し広範囲に探索、経路を見つけ出せたら自前のインクを塗り重ねて陣取りゲームらしく追い詰めて行きます
自分のインクの上に誘き寄せられたら、水性インクに雷の精霊魔法を発動して属性の相乗効果を含めて狙い撃ち
倒せたら、早く元に戻りたいのよー
セルマ・エンフィールド
なんともとぼけた感じですが、起きる結果は致命的です。気を抜かずいきましょうか。
私も隠密行動は苦手ではありません。隠れてこそこそと何かをするのに適した場所はある程度分かります。
そういった場所を探索し、スコープの視力補助機能も合わせて街を黒く塗っている怪人に見つかる前にこちらが先に発見、逃げられるより先に【氷の狙撃手】で暗殺します。
ただしここはキマイラフューチャー、私の常識が通用しないこともあるでしょうし、最近塗られた形跡はあるけれど怪人は影も形もない場合など、違和感があるときは第六感も駆使して怪人の捜索を。
妙なルールはありますが……私がやることは変わりません。
「~♪」
一体のワンちゃん怪人が、機嫌良く刷毛を右へ左へと撫でつけていた。ビルとビルの隙間、大型の室外機の陰になる位置は、そうそう猟兵に見つかる事もないだろう。
ぱしゅ。
安心感からか、鼻歌まで混じる怪人の額に穴が開いた。貫通した箇所からみるみる氷の膜が広がり、自身の身に何が起きたか理解する事なく怪人は倒れ込んだ。傍らのペンキ缶が倒れるが、凍て付いた中身が零れる事はない。
「――クリア」
雑居ビルの屋上に伏せたまま、セルマ・エンフィールドは愛銃のスコープを覗く。
「なんともとぼけた感じですが……」
先程から何体も屠ってきた怪人達は愛らしいと評する事も出来なくはないが、一様に間の抜けた風貌をしている上、やっている事といえばペンキ塗りだ。とはいえ引き起こす結果を思えば看過出来ないと、セルマは気を引き締める。
「あれは……」
孔雀のように冴えた青の瞳が細められ、彼女はひらりと地に降りた。向かった先では生乾きの塗料の跡があれど、敵の姿が見当たらない。
「ああ、そちらにいましたか」
五感以上の感覚を研ぎ澄ましたセルマは、地面の黒い膨らみ――否、仲間へと声を掛けた。ひょこり。大粒の宝石が二つ、美しいシラーを見せる。
「わるいウサギさん、やっつけたのよ!」
誇らしげに胸を張るような曲線を作り、スノウ・パタタは答えた。黒塗りされた風景に擬態した少女の姿を認め、セルマは頷いた。
「ではこの辺りは任せますね。私はあちらを」
「はーい、なのよー」
ぽよぽよと揺れながら、それでもスノウの足取りはしっかりと。歩むべき道は、滑らかな身体を撫でる風の精霊が教えてくれる。
(「わたしらしさ、より今は、キマイラさんの世界を助けるの」)
トレードマークのポンチョもキラキラした宝物達も全て液状の体の中に包み、黒いインクを纏って、自分らしさを押し殺した少女は呟いた。
「『Hello World』」
「猟兵……いつの間に?! くそーっ!」
塗り潰したはずの黒い路地に広がる、空色のインク。怪人は猟兵の襲来に戦闘態勢を取るでもなく、少しでも範囲を稼ごうと塗料の缶を持ち上げる。
「そこはもう、すのーの陣地なの」
液状の身体はするりと怪人の手元に滑り込み、缶を奪う。怪人は慌てて鉄球を手にするが、既に振り回せるだけの距離が無い。眼前に迫る雷を帯びたインクになすすべもなく、怪人は淡い色の海へと沈む。
「うーん、早く元に戻りたいのよー」
隠れた怪人達の討伐は至って順調だ。彼女が元の姿に戻れるまで、さほど時間は掛からないだろう。
大成功
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山田・キリン
ぐあー!黒塗りだなんて何てことしてくれんだ!
キリンさんはこのキマフュの明るい街並みを見てアートに目覚めたというのに…
いくらお前たちが可愛くっても許さんぞ!
【グラフィティスプラッシュ】で応戦だ!
キリンさんは目立つ場所で動いてる奴らを、赤青黄色の明るい色でべったべたに塗ってやる!
あいつらが持ってる色自体をカラフルにしちまえば、黒くしてくことも出来ないだろってくらいにな
ピコハンが来たら、自慢の3本の尻尾で叩き返してやる
一段落したら最近練習してるグラフィティアートで「We are JAEGER」って描いて
この街を守るキリンさんたちの存在をアピールしてやるんだ!
樫倉・巽
すべて切り伏せればよい
そう言うわけだろう
では俺は隠れまわっている者を斬って回ろうか
路地裏や小さな水路、大きな構造物の影になっている場所などを探し回りながら見つけた敵を【無風刃】で切り捨てていく
仲間が制圧した地域の近くなら隠れられる場所を特定しやすいと考え
丹念に確認していない箇所を潰していく
「後々自陣奥を襲われてもかなわんからな」
基本は気配を潜め足音を忍ばせながらも走りながら
敵を見つけたときは一気に近寄り一撃で仕留める覚悟で刀を抜く
傷つくことはあきらめ早く倒すことだけを考えて戦う
「痛みとは闘う者が負うもの、街を生きる者が負う者ではない。俺はお前達が嫌いなわけではない。ただ、生き方が違っただけだ」
カメリア・クラウゼヴィッツ
鮮やかな街を黒で塗りつぶすことに一体何の意味があるのかしら
塗料の性質も気になるけど、触れないように気をつけておきましょう
誰かと合流できれば固まって居るところを叩いてもいいわね
ま、しばらくは人目につきにくい所から敵を潰していこうかしら
予め【サモニング・ガイスト】で弓兵のお兄ちゃん«Apostel»を喚んでおくわ
弓で敵に先制して引きつけてもらおうかしら
そこに後ろから『衝撃波』をぶつけられたら優位に動けるかなって思うのよね
たとえ逃げようったってそうはいかないわ、私の箒はこれでも最高級品なの
逃げられるなんて思わないでね
ところでお兄ちゃん«Apostel»、走りながら弓引ける?
共闘/アドリブも歓迎です
「ぐあー! 黒塗りだなんて、何てことしてくれんだ!」
聳え立つ黒い塔を前に長い首を反らせ、山田・キリンは悲痛な叫びを上げた。
「キリンさんは、このキマフュの明るい街並みを見てアートに目覚めたというのに……!」
派手にプロジェクションマッピングを活用している隣でレトロなネオンと安っぽい電飾看板がひしめき合う、ちぐはぐな煩雑さもこの世界の魅力の一つだ。それが今、黒一色に侵されようとしている。
「あ、猟兵だ! やっつけろー!」
キリンの存在に気付いたウサちゃん怪人が、ピコピコハンマーを振り上げた。
「いくらお前たちが可愛くっても許さんぞ!」
ぴきゅっ。
ふさふさの尾に弾かれて気の抜ける音を立てたピコハンが、くるくると回りながら宙を舞う。無防備になった怪人の身体から地面に掛けて、目が覚めるような赤が彩った。
「よくも!」
尾を振り抜いたキリンが着地するより先に、怪人が丸太を振りかぶる。
――ゴォッ!
「熱っ?!」
突如として丸太が燃え上がる。火矢だ。矢を放った敵を見つけるべくキリンから意識を反らした怪人の横っ面を衝撃波が襲い、吹き飛ぶ。
「お兄ちゃん≪Apostel≫、次はあそこ」
喚び出した古代の弓兵に指示を出し、カメリア・クラウゼヴィッツ自身は死角へと回り込んだ。アポステルと呼ばれた兵は彼女に下された命を忠実にこなし、弓兵に気を取られた怪人はカメリアの衝撃波を真後ろからまともに喰らう。隙の無い連携に、怪人達は徐々に追い詰められてゆく。
「ウサちゃんは弓のやつに行け! ぼくは魔女をやる!」
「りょーかい!」
二手に分かれた怪人の鉄球が、カメリアへと迫る。彼女は眉一つ動かす事なく、高速で振り回されるそれを容易く躱し、鞍の付いた箒をひと撫でした。
「私の箒は、これでも最高級品なの」
鉄球の勢いを殺せず、怪人が背を見せる。交戦中とは思えぬ程に凪いだ金の瞳が細められ、衝撃波が放たれた。どうと音を立て、怪人が地に伏せる。
「ところでお兄ちゃん≪Apostel≫、走りながら弓引ける?」
間合いを詰められ過ぎては戦い辛いだろうと弓兵の視線を向ければ、弓兵を庇うように割り込んだキリンが、怪人を叩き伏せている所であった。
「やっぱ、キマフュはこうじゃないとな!」
赤、青、黄。それぞれ違う塗料を含んだ三本の尾が、黒で塗り潰された風景を、鮮やかに彩っていく。
「はあ……、やっぱり地道にやろっかな」
ビル前での戦闘からこそこそと逃げ出した怪人が、高架下で大きく息を吐く。思いの外手強い猟兵達を相手にしなくとも、クロヌリスレイヤーで勝利を収める事も出来るのだ。
「よいしょ……ん?」
持ち上げようとしたペンキ缶が、嫌に軽い。足元を見やれば、鋭利な刃物で切断されたかのように、容器から取っ手が綺麗に離れている。
「いつの間に?!」
「……後々、自陣奥を襲われてもかなわんからな」
深縹の着流しに懐手をし、樫倉・巽は怪人をぎろりと睨み付けた。もしや逃走する先が読まれていたのか。視線だけで射殺せそうな男の登場にクマさん怪人は肝を冷やすが、同時に巽の姿に隙を見出した。目の前の猟兵は得物を佩いたまま、手にしていない。先手必勝とばかりに丸太を振り下ろす。
「くらえええ!」
ガツ、と鈍い音は確かにした。躱す事もせず、真っ直ぐに摺り足で踏み込んだ巽の左の肩口には、確かに血が滲んでいた。だが、ごぶりと血を吐き、ゆっくりと倒れたのは怪人の方であった。
「……攻撃、見えなかった……」
「俺はお前達が嫌いなわけではない」
一体いつ抜いたというのか、かち、と刀をしまう音がした。
「――ただ、生き方が違っただけだ」
恐らく巽の言葉はもう聞こえていないだろうが、さして気にする風でもない。すべて切り伏せる。危機に瀕した世界においても、彼はその刀を振るうだけだ。
やがて猟兵達の活躍により、黒い塗料の浸食が止まった。フィールドの多くは賑やかな色彩を残しており、この区域においては猟兵達の勝利が確定した。
黒塗りされてしまった建物の壁も、今はビビッドな色合いで描かれたスローアップが存在を主張している。
『We are JAEGER』
一面の黒の中に輝くように描かれたそれは、どんな闇の中でも光明となる猟兵の存在を表しているかのようであった。
成功
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