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バトルオブフラワーズ④〜おらの米さ食うだ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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「みんなキマイラフューチャーがまっぷたつに割れたのは知ってるよね。」
 豪快すぎる字面であるが事実である。グリモア猟兵である妖精の少年、トゥール・ビヨン(時計職人見習い・f05703)の呼びかけによって集まった猟兵達にトゥールは事件の経過を語り始めた。
 先日、キマイラフューチャーのテレビウム達を通じて発せられたキマイラフューチャーの中枢「システム・フラワーズ」からの救援要請。猟兵達はこれに答え、システムへと続くメンテナンスルートを開放した結果、キマイラフューチャーがまっぷたつに割れたのである。
「この先がボクらが目指すシステム・フラワーズに通じているんだけど、実は困ったことが起こっているんだ。」
 キマイラフューチャーの内部は猟兵達が目指すシステム・フラワーズに通じているのだが、そこへ辿り着くためにはいくつかの超えなければならない壁がある。その内の一つ、システム・フラワーズの周囲を守るように存在する「ザ・ステージ」と呼ばれる6つのポイント。現在、このステージは全てオブリビオンに占領されておりこれらの6つのステージを全て取り返すことがシステム・フラワーズに辿り着くために必要なのである。
「そこでみんなにはそのステージの内の一つ、「ザ・フードステージ」を攻略して貰いたいんだ。」
 トゥールが言葉を切ると、グリモアベースの背景にザ・フードステージと呼ばれる場所の情報が映し出されていく。
「このステージでは、オブリビオン達が、海や畑や田んぼや狩の出来る山林などで、食材を集めているんだ。みんなに向かって貰うのは、ここ。田んぼのステージだ。」
 6つのザ・ステージにはそれぞれの性質に合わせた特殊な法則が適用される。
「このザ・フードステージでは、食材を収穫中のオブリビオンには攻撃が無効になるという特殊な法則が適用される。しかも、一定以上の収穫をされてしまうとボクらの強制敗北になってしまうんだ。」
 強制敗北になってしまえば、たとえ敵を倒したとしても謎の力でステージから追い出されオブリビオンの占領からステージを解放することは出来ない。何とか収穫が終わる前にオブリビオ達を全滅させる必要がある。
「普通にやれば攻撃が無効化されるオブリビオンを収穫が終わる前に倒すことは出来ない。そこで、ボクから提案させて貰う作戦がある。」
 それが、これだ!とトゥールが取り出したフリップを猟兵達に指し示す。そこには、「米料理」とだけ書いてあった。頭にハテナマークを浮かべる猟兵達に向け、トゥールが説明を加える。
「ボクが見た予知のオブリビオン達は収穫した米を米俵につめて山のように積み上げようとする。なので、そいつを拝借して料理を作っちゃおうと思うんだ。」
 実はこのオブリビオン達、米料理が大好きなのである。料理が美味しそうならば、食欲を刺激されたオブリビオンが作業を中断して、料理を食べてしまい攻撃無効の効果が無くなる。そこを攻撃して撃破してしまおうと言うわけだ。
「キッチンやその他の食材諸々はステージに設置された民家のものを使わせて貰えるよ。これも、フードステージの設備の一つみたいだね。」
 ただし、米だけはオブリビオンが収穫したものを使うしか無い。米を如何にしてオブリビオンからいただいてくるかも作戦が必要になる。
「少し特殊な戦いになると思うけど、キマイラフューチャーの未来を救うためにみんなの力を貸して欲しい。」
 そう言うと、グリモア猟兵の少年は集まった猟兵達に向け頭を下げるのであった。


西駝きゅー
 米料理はビリヤニが好きです。
 こんにちは、マスターの西駝きゅー(にしだ・きゅー)です。
 おこしいただき、ありがとうございます。
 成功条件はオブリビオンが米を全て収穫し終える前に、オブリビオンを殲滅することとなります。

●難易度
 普通

●このシナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 オブリビオンはあまり強くないので、「どのように米を拝借するか」、「どんな米料理を作るか」、「格好良く敵を倒す方法」辺りをバランス良く書いていただくと良い感じになると思います。

●オブリビオン・食卓の友同盟
 マヨネーズ怪人、コショウ怪人、しょうゆ怪人によって結成された、調味料系怪人です。いっぱいいます。
 農作業着で米の収穫に没頭しており、猟兵達が攻撃しなければあちらから攻撃をすることはありません。
 ただし、無理矢理米を強奪するところを見つかると調味料をスプラッシュしてきたりするので注意しましょう。

●特殊ルール
 このシナリでは、「シュウカクフードバトル」という特殊戦闘ルールが適用されます。
 このステージでは、食材を収穫中のオブリビオンは攻撃が無効になるという特殊能力があり、一定以上の収穫をされてしまうと、猟兵側の敗北になります。
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第1章 集団戦 『食卓の友同盟』

POW   :    マヨネーズ怪人・ウェポン
【マヨネーズ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    コショウ怪人・ジェノサイド
【コショウ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    しょうゆ怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【しょうゆ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィロメーラ・アステール
「まいったな、料理はしたことがないぞ!」
こんなあたしに作れる料理なんて……?
ん? もしかしてアレも料理に入る?

とりあえず【迷彩】魔法と【忍び足】で米を【盗み】取る!

そして、たまごかけご飯を作るぜ!
かき混ぜるだけの簡単調理ならあたしでも余裕!
まずはスタンダードでシンプルなしょうゆ+卵+ご飯スタイル!

この良い匂いで怪人を誘引!
特にしょうゆ怪人は黙っていられないはず!

せっかくだしマヨやコショウ系のアレンジも挑戦してみないか?
その調味料で!
と素材やアレンジレシピを添えよう!
自分で手軽に作れてしまうのでおかわりし放題!

アレンジしてる隙をついて攻撃だ!
くらえ【スーパー流れ星キック】!

なんかお腹すいてきた!


虚・楓
ふぅむ、中々変わった毛色のみっしょんじゃな。しかし料理となれば俄然燃える、遣り甲斐がありそうじゃ。
【POW主体での行動】
まずは米を用意せねばな。【忍び足】でこっそりと仕入れ、その後【ダッシュ】でささっと戻ろう。
さて、それでどういう料理を作ろうかと考えたが……シンプルながらに千差万別の味が楽しめる、握り飯を作ろう。
基本は魚を具材として使わせてもらおうかのう。【料理】をしつつ【パフォーマンス】がてら若干見せつけるように作る。
出来栄えにつられて敵がやってくるのであれば、相手の進行方向上に設置しておいた【UC】を発動させてしまおう。

作った物に関してはちゃんと自分でも食べるし周りにも振る舞うつもりじゃ。


サギリ・スズノネ
お米が好きなんてオブリビオンも分かってるじゃねーですか!
サギリもお米大好きです!ほかほかご飯は最高なのです!

まずはどうやってお米を頂戴するかですね!
お米を収穫している敵の様子を確認し【目立たない】ように米俵に近づいてみます
上手く近づく事が出来たら米俵の影に隠れて【小鈴鳴丸】で米俵に穴をあけ中のお米を取り出し、必要な分だけ鞄に入れてそっと離れるのです!

お米をゲット出来たら民家さんの台所をお借りして【料理】するのです!
今回は生米から作れるリゾットにするですよ
戸や窓を開けて匂いも届くようにして作ります

●戦闘
敵が料理を食べ出したら【火ノ神楽】でぶっとばすですよ!
お米と同じように炊き上げてやるのですよ!


温水・千歳
連携アドリブ歓迎

収穫中のお米を拝借する作戦を考える
相手はお米料理が好き
…なるほど、ならこれがいい。多分

まず、カレーを作る
ことこと大鍋で煮込んでいい匂いを辺りに充満させる
そう、収穫中のオブリビオン達にも届く様に

今日はカレーパーティしようと思ってたんだけど
お米が足りなくなっちゃった
分けてくれるなら貴方達にも食べさせてあげるけど、どうかな

そう言って合意を取り付けお米を頂いていく
ご飯は炊けるまで時間がかかるけれども
こうやって期待させておけば、素直に待ってくれるかも

炊けたら皆で一緒に食べつつ【米飯礼賛】発動
自分は高速で食べ切ってまだ食事中のオブリビオンを殴る

ん。カレーライス美味しかった、ご馳走様


神凪・狐毬
ふむ、用は彼らからお米をもらい受けた上で、お米を使った料理を作れ、ということですね。

それなら、使うのは香りがあってイメージができるものが良いですね。それならば、ちらし寿司はどうでしょう。

酢の香りにつられて見れば、そこにあるのは色とりどりの海鮮。それを用いた【誘惑】でお米をもらい受けましょう。ええ、寿司が食べられるのであればきっとお米を恵んでくれるはず、だっておいしいじゃないですか!

「そこのお人。ちらし寿司というものを作りたいので、お米を分けてはくれませんか」
「色とりどりの海鮮にあまーい桜でんぷん、食べれば不思議、とってもおいしいですよぉ」


ユース・アルビトラートル
 “米料理が好き”……ほほうほうほう。まず、「オブリビオンだと気づいていないフリ」をすれば、次の話には損得勘定的にノッてくるハズ。

 失礼いたします、ワタクシこの度米料理パーティーを開催しておりまして、現在米が不足し急遽こちらで収穫されるお米を使いたいと考えております。お礼に皆様もご招待したく、おこげ料理やビーフン、炒飯等(世界知識的に美味なの)ご用意しておりますので是非ご来場ください。お連れ様も歓迎です。

 えっと。収穫を止め収量を減らしオブリビオンを一箇所に集めるいい方法だと思ったんだよ。死霊で色々人員は確保するとして。満腹になって倒れたなら……別室に運ばせてそっと骸の海にお還り願おう。うん。


霧枯・デスチーム
【2m半のガジェットブラザーに乗り込み行動。アドリブ協力歓迎】
「ブラザー、おいらパエリアが食いたいナ」
『分かりましたガージ。チャーハンを作ります』
「おいらパ『チャーハンを作ります』…うん」

作戦を説明する!まずは霧枯が生身でオブリビオンから米を強奪する。当然抵抗されて程よく味付けされるだろうが、その隙にブラザーがお米をゲットする。
その後ブラザーがハムチャーハンを作る。隠し味としてガーリックバター醤油を投入する!この匂いに惑わされないやつはいないはずだ!ちなみにチャーハンを作る理由はブラザーがそれ以外作れないからだ!
敵の弱体化に成功したらガトリングガンで敵を一掃するのだ!説明は以上だ、幸運を祈る。



●その米いただきます。
 田園風景が広がるフードステージへとやって来た猟兵達は、先ずオブリビオンが収穫した米を回収するため行動を開始していた。積み上げられた米俵の近くの草むらには現在、四人の猟兵達が、息を潜めてオブリビオンの米を頂戴する機会をうかがっている。
「よしっ、それじゃあ先ずはあたしからだな!」
 最初に、仲間達にだけ聞こえるようにヒソヒソと声を上げたのは金髪碧眼のフェアリー、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)である。フィロメーラは迷彩魔法を自らに施すと、羽音を潜めてゆっくりと米俵の元まで飛んでいった。
「ふー、作業が捗るべ。」
 近くで収穫作業を行うオブリビオンはフィロメーラの気配に気付いた様子は無い。その様子を確かめたフィロメーラは手際よく米俵に穴を開けるとその小さな身体に持てるだけの米を集め盗み出していった。一度に運べる量はそれほどでは無かったが、何度か草むらと米俵の間を往復することによって十分な量の米を確保することに成功していた。
「全く気付いてないな。へへっ、さっすがあたしだ!」
 Vサインを作り誇らしげに仲間達に笑いかけるフィロメーラ。彼女の手際に感心したように応えたのは褐色肌の人間の少年、虚・楓(霊魂料理人・f14143)である。
「ほお、見事なもんじゃのう。では、次は俺の番じゃ。」
 虚はパーカーのフードをかぶり直すと、忍び足で音を殺しながら米俵の元まで近付き、そのまま米俵の内の一つを担ぎ上げダッシュで草むらまで駆け戻っていった。
「ん、今何かそこを通っただか?」
 不意に気配を感じたオブリビオンが米俵の方に目をやると、そこには既に虚が駆け抜けた後で、米俵が盗み出された異変に気付くことは出来なかった。
「ふう、ざっとこんなもんかのう。」
 重たい米俵を担いだままの猛ダッシュにも涼しい顔の虚に仲間達から感嘆の声が上がる。
「お二人とも見事じゃねーですか。サギリも頑張るのですよ!」
 三番手に動いたのは白いおかっぱ髪のヤドリガミ、サギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう。・f14676)である。サギリはオブリビオンの様子を確認し、米俵から目を離したことを確かめると、体勢を低く目立たないように米俵に近付いていった。
「む、そこにいるのは誰だ!」
 いい加減何かおかしいと勘付いたのか、米俵の方から聞こえてきた足音に敏感に気付いたオブリビオンが近寄ってきた。
「……チリン。」
「何だ、ただの古い鈴が転がった音だか。」
 とっさにサギリは本体である鈴を手前に転がし、受肉した身体は目立たないように積み上がった米俵の影に滑り込ませることで事なきを得ていた。聞こえてきた足音を鈴の音と勘違いしたオブリビオンは再び収穫作業に戻っていく。
 オブリビオンが離れたのを確認したサギリは本体の鈴をこっそり回収すると、懐から取り出した短刀、小鈴鳴丸で米俵に穴をあけサギリの鞄に必要分を集めると、また目立たないようにこっそりと草むらへと戻っていった。
「はー、何とか誤魔化せましたのです。」
 作戦成功に安堵の声を上げたサギリを労うように仲間達から声が上がる。
「上手いことやったナ!よしっ、最後はおいら達だ。頼むぜブラザー!」
 最後に動いた灰毛のケットシー、霧枯・デスチーム(100万回殺しても殺せない猫・f13845)は一緒に伏せるように身を隠している全長二メートル半の機動型ガジェットに声をかけ作戦を開始する。
「む、何だおめえは!」
 これまでとはうって変わり、堂々と米俵に近付いていった霧枯。当然のようにオブリビオンに見つかり警戒の声が上がる。しかし、無論 霧枯も無策では無かった。
「にゃーん。」
「何だ猫か。」
「(よしっ、バレてない!)」
 小さくガッツポーズをあげた霧枯は揚々と米の回収へと手を伸ばす。
「っておめえみたいな二足歩行で歩くデカい猫がいるか!」
「だよナ!」
 霧枯もまさかこれで誤魔化せるとは思ってはいなかったが、割とのりの良いオブリビオンであった。取りあえず手近な米俵を担ぎ上げた霧枯は一目散にその場から逃げ出していく。
「待て米泥棒!マヨネーズスプラッシュ!」
 霧枯に向かって、マヨネーズ頭のオブリビオンから連続してマヨネーズビームが放たれる。
「うわわっ、退散退散!後は頼んだぜブラザー!」
 マヨネーズまみれで米俵もろともぐしゃぐしゃになって逃げていく霧枯の背中を見送るマヨネーズ怪人は気付いていない。霧枯を囮に、この隙に動き出した霧枯のガジェットがこっそりと本命の米俵をその手に収めて運び出していくことに。
 こうして、四人の猟兵達は無事に米を回収することが出来た。次なる作戦に向けて、調理場のある民家へと向かっていく猟兵達。霧枯は隣を歩くガジェットを見上げながら、民家にシャワーが付いてるといいナ、と身体に付いたマヨネーズを手で払いながら歩いて行くのであった。

 一方で別アプローチから米を回収する作戦に出た猟兵達もいた。
「そこのお人。お米を分けてはくれませんか!」
 収穫作業を行うオブリビオンに向かって声をかけたのは、大きな丸メガネをかけた金毛の妖狐、神凪・狐毬(巫女の姿をした小悪党薬師・f00559)である。
「なんだぁおめえ?さっきの米泥棒の仲間か!」
 突然声をかけられたことに警戒を示すオブリビオン。そこへ白髪のフェアリーの少年、ユース・アルビトラートル(Arbitrator・f03058)が説明を加えるように言葉をかける。
「失礼いたします、ワタクシ達この度米料理パーティーを開催しておりまして、現在米が不足しこちらを訪ねさせていただきました。」
「そう、折角のパーティーなのにお米が足りなくなっちゃったの。」
 ユースの言葉にうんうんと頷きながら桃色の髪の羅刹、温水・千歳(桜花・f13514)が続ける。
「米料理だぁ?」
 訝しんだ表情をうかべながら、オブリビオンは表れた三人の猟兵の言葉に応える。
「急な話で申し訳ありませんが、こちらで収穫されるお米を使わせていただけないでしょうか?」
「分けてくれるならあなた達にも私達が作った料理を食べさせてあげるけど、どうかな。」
 オブリビオンの警戒を解くように、交渉を持ちかけるユースと温水。しかし、オブリビオンは大きなコショウ瓶の頭を横に振りながら応える。
「ふんっ、今はステージバトル中だべ。んな、阿呆な誘いにおら達がのるわけ……おめぇ、何かすっぺえ匂いがするな?」
 風に乗ってふわりと神凪から発せられる匂いに気付いたオブリビオン。
「ふふっ、良く気がつきましたね!そう、酢の香りにつられて見れば、そこにあるのはジャン!」
 取っておきとばかりに神凪が取り出して見せたのは、甘くすっぱい香りを漂わせる寿司桶であった。
「私が作るのはちらし寿司!色とりどりの海鮮にあまーい桜でんぷん、食べれば不思議、とってもおいしいですよぉ。」
 オブリビオン達を誘惑するように、寿司桶の中には鮮やかな彩りを魅せる海鮮や具材が宝石のようにつめられていた。
「ゴクリ……。」
 生唾を飲み込むような音がオブリビオン達から上がる。
「私はカレーを作っているんだ。大鍋でじっくりことこと煮込んで、ほら良い香りでしょ。」
 温水も取り出した大鍋の蓋を開けると辺りにスパイシーなカレーの良い匂いが広がる。
「ゴクリゴクリ……。」
 生唾を飲む音が二倍になったような音が聞こえたところで、ユースがたたみ掛ける。
「他にもおこげ料理やビーフン、炒飯等もご用意しております。お米をいただけた暁にはお礼に皆様もご招待したく、勿論お連れ様も歓迎です。」
 にこりと微笑みながら、誘いをかけていくユース。
「……はっ、ははははは!」
 突如、オブリビオン達から笑い声が上がる。
「さっきも言ったべ!これは大事な米だ。おめえらに食わせる米はねえ!!」
 すわっ作戦失敗かと互いに目配せをし合う猟兵達。
「……んだが。」
 しかし、そこへこしょう瓶頭のオブリビオンが明後日の方を向きながら言葉を続ける。
「おら何だか、急にあっちの方で収穫作業をしたくなって来ただー。んだから、そこに積んである米俵からは目を離しちまうかもなあー。」
「おっと、急に目に汗が入っただー。しばらく目を開けてらんねえから米俵が目に入らねえだー。」
 マヨネーズ頭のオブリビオンがわざとらしく目をこすりながら応える。
「おらは作業に没頭しちまう性質だからなあー。作業中はそこの米俵に何かあってもなーんも気付かねえだろうなあー。」
 しょうゆ差し頭の怪人も独り言ちるように言葉を放つと、オブリビオン達は一斉に猟兵達に背を向けて収穫作業を始めだした。
「これはつまり、勝手に持ってけってことかな。」
「だよね。司法に携わる身としては、不正が行われる現場を見てしまったのが何とも。」
 首をかしげる温水に応えるように苦笑いを浮かべるユース。
「取りあえず、目を瞑ってくれるというなら有り難く頂戴していきましょうか。」
 神凪の言葉に、三人の猟兵達はオブリビオン達が積み上げた米俵を必要なだけ回収すると次なる作業に向けて揚々と歩き出すのであった。

●それではパーティーの時間です。
 各々オブリビオンから米を回収し、集まった猟兵達は民家の施設を利用しながら庭先で立食式の米料理パーティーを開催することにした。
「というわけで、あたしはたまごかけご飯を作るぜ!」
 直前まで、「まいったな、料理はしたことがないぞ!」と嘆いていたフィロメーラであったが、これならいけるとシンプルなたまごかけご飯を披露していた。
「まずはスタンダードでシンプルなしょうゆ+卵+ご飯スタイル!ふふっ、かき混ぜるだけの簡単調理ならあたしでも余裕!」
 ほくほく顔でたまごかけご飯を作っては、オブリビオン達に配っていくフィロメーラ。特にしょうゆ怪人からの食いつきが良く。
「こちらの玉子かけご飯専用しょうゆを使ってみなさい。味がひと味も二味も違いますよ。」
 としょうゆの提供を受けるほどであった。
「マヨネーズやコショウかけたアレンジなんかもあるぜ。」
 他の怪人への配慮も抜け目ないフィロメーラ。怪人達がたまごかけご飯を頬張りながら、用意された調味料で自分なりのアレンジを加えようとわいわいし始めたところを見計らって。
「さて、それじゃあ!くらえっ、スーパー!流れ星!!キーーーック!!!」
「ぐわー!!」
 超加速で助走を付けたフィロメーラの必殺キックが完全に食べることに夢中になってる怪人達を吹き飛ばす!
「よしっ、任務完了!はー、作ってばっかいたらなんかお腹すいてきた。あたしもたまごかけご飯食べようっと!」
 集まったオブリビオン達を全てぶっ飛ばしたフィロメーラは自分用にと盛り付けたご飯で美味しいたまごかけご飯を作るのであった。

「こう見えて俺は料理人の端くれ。それで、どういう料理を作ろうかと考えたが……シンプルながらに千差万別の味が楽しめるこれを作ろうと決めたのじゃ。」
 一方こちらは虚が怪人達に料理を披露していた。いよいよ料理となれば、料理人である彼の気持ちも燃えてくるもの。
虚は怪人達の前で新鮮な魚を空中で目にも止まらぬ包丁捌きで三枚に下ろすと、丁寧にそれを炭火で炙っていく。焼き上がった魚は手際よくほぐしてご飯に混ぜると、虚の鮮やかな手さばきで次々と三角形に握られていく。そう、虚が作ったのは混ぜ込みおにぎりである。
「見事!しかし、何故具材を魚に?」
 虚から受け取ったおにぎりを頬張りながら、質問を返す怪人。
「それはのう。」
 虚が応えようと口を開くのと同時に、おにぎりを頬張っていた怪人達が突如バラバラに切り裂かれていった。
「弐の型・微塵億枚下ろし。魚を捌くついでに設置した斬撃じゃ。これなら効率的じゃろ?」
 調理の作業と同時に空間に斬撃を設置し怪人達を攻撃していた虚。魚の如く切り身にされた怪人達が骸の海に消えていくのを見送った虚は。
「それでは、俺も相伴に預かるかの。」
自らが握ったおにぎりを美味そうにぺろりと頬張るのであった。

「ここでリゾットが炊きあがったら、湯通しした菜の花とアサリを加えてさっと混ぜ、こしょうとしょうゆで味を調えていくです!」
 こちらではサギリが怪人達と一緒になってリゾットを作っていた。
「こしょうはおらの頭から出るのを使ってけろ。」
「しょうゆは私が。」
 やはりここでも自分の調味料を推してくる怪人達。きっとそういうものなのであろう。
「あ、じゃあお願いするです。」
 怪人達と一緒に料理の最後の仕上げをするサギリ。
「そして、これが出来上がったリゾットなのです。それでは早速食べてみましょう!」
 出来上がったリゾットを皿に盛り付け怪人達に配っていくサギリ。受け取った怪人達は熱々のリゾットを夢中で口に運び始める。
「最後にこれもどうぞ。」
 サギリは仕上げにと、盛り付けた皿の横に金色の鈴のようなものを置いていく。
「これは?」
 怪人達はスプーンでサギリが置いた鈴のようなものをすくい上げると不思議そうに口元へ運んでいく。
「はい、それでは鈴を鳴らして舞いましょう!」
 サギリが手元にある鈴をシャナリとならすと突如、怪人達の口元で金色の鈴が爆炎を上げた!
「ぬわー!!」
 サギリが配って回ったものは鈴の形をした炎の塊であった。
「まったく。みんな食いしん坊でやがりますね。」
 爆発した怪人達が骸の海へと消えていくのを見届けると、サギリは熱々のリゾットを自分の口へと運ぶのであった。

 これは時間を少し遡って霧枯と彼のガジェットの様子である。
「おしっ。ブラザー、おいらパエリアが食いたいナ。」
「分かりましたガージ。チャーハンを作ります。」
「おいらパエリアが食いた」
「分かりましたチャーハンを作ります。」
「……おいらパ」
「チャーハンを作ります。」
「……うん、わかってた。ブラザーはそれ以外作れないもんナ。」
 回想終わり。
「という事でここではチャーハンを作ってるよ。」
「チャーハン作るよ!」
 ユースと霧枯、そして彼のガジェットはチャーハンを怪人達に振る舞っていた。
「大鍋でたくさん作ったのでどんどん食べていってね。みんなに行き渡るようにボクの書記官達に運ばせるから。よろしくね、ジャスティーナ!」
 ユースが召喚した死霊騎士達はジャスティーナと呼ばれた者を筆頭にてきぱきと霧枯のガジェットが作ったチャーハンを盛り付けて怪人達に配っていく。チャーハンを受け取った怪人達は熱々パラパラのチャーハンをかき込むようにたいらげていった。
「みんな喜んで食べてくれているようで何よりだ。あ、おかわりもあるから遠慮無く言ってね。」
 怪人達が次々とおかわりの声を上げていき、すかさずそこへユースの書記官達が給仕に回る。そして、怪人達が満腹になる頃合いを見計らい。
「それじゃあ、そろそろ。書記官達、捕らえろ!」
 ユースが声を上げると、それまで給仕に回っていた死霊騎士達が突如怪人達を羽交い締め目にし始める。
「満腹になったのなら速やかに骸の海にお還り下さい。お願いします霧枯さん!」
「いくぜブラザー!ガトリングガンで一掃するのだ!」
 中華鍋の大鍋を振るっていた霧枯のガジェットも霧枯の言葉でガトリングガンを構え、死霊騎士達に羽交い締めにされた怪人達へ向けて一斉に掃射していく。
「あばー!!」
 しばらく派手な銃声音が続いた後に、辺りの怪人達が骸の海へと飲み込まれていった。
「よしっ、綺麗になったね。それじゃあ、ボク達もチャーハンをいただこうか。」
「おいら、やっぱりパエリアが。」
「了解です、チャーハンを作ります。」
 霧枯のガジェットが再び大鍋を振るい始めると様子を、ユースと霧枯は待ちきれない面持ちで眺めるのであった。

「いらっしゃい、ようこそ!」
 威勢の良い掛け声で怪人達を迎えた神凪は寿司桶からちらし寿司をとりわけ始める。
「おお、酢飯の良い匂いだべ。美味そうなちらし寿司だな。」
 辺りに漂う酢飯の香りに食欲を刺激された怪人達が我先にと取り分けられた神凪のちらし寿司を手に取っていく。
「こっちにはカレーもありますよ。」
 温水もカレー鍋の蓋を開けて、じっくりと煮込まれたカレーの盛り付けを始めて行く。辺りに、カレーの香りと酢飯の香りが漂い、何とも幸せな空間を作っていた。
「よしっ、それじゃあみんなで食べましょうか!」
 神凪のちらし寿司と温水のカレーが怪人達に行き渡ったところで、神凪の掛け声で食事が始まる。
「どうですか、美味しいですか?」
 怪人達はみな美味しそうに寿司とカレーを頬張っている。食べ合わせ的にはどうかと思うが、美味いもの+美味いものはやっぱり二倍美味いのだ。
「見てください。ほら、カレーとちらし寿司の美味しさに温水さんも身体からやる気をもりもり出してますよ。」
 怪人達も美味しそうに食べているが、温水も負けず劣らず良い食べっぷりである。心なしか肌つやも良くなり、身体中から闘気が迸っているようにも見える。
「カレー美味しかった、ごちそうさま!こっちのちらし寿司も食べて良いの?」
 温水は自ら作った大盛りカレーをひとしきりたいらげると、神凪のちらし寿司にも手を伸ばし始める。こちらも勿論大盛りである。
「ああ、たくさん食べてください。何て言ったって温水さんにはパワー百倍になって貰わないとですし。」
 神凪の言葉にもりもりとちらし寿司もたいらげていく温水。闘気の量が目に見えて増大しているのがわかる。
「うん、ちらし寿司もごちそうさま。パワー千倍!」
 温水は大盛りのちらし寿司も綺麗に食べ終えると、力こぶを作るようなポーズを見せる。
「それは何より!それでは、そろそろ。」
 神凪は怪人達も満足したような腹を揺すっている様子を確かめると、温水に向けて合図を行う。
「はい。それじゃあ、行くよ!」
 米料理をお腹いっぱい食べて全身の細胞がこれでもかと活性化した温水は怪人達の集まるところへ向けて拳を思い切り振り抜いた!
「ぎえー!!」
 拳が空気を揺らし、衝撃波を生むと怪人達はみな一様にふっ飛ばされていった。
「あは、すごい威力ですね。」
 衝撃に耐えた怪人達も温水の怪力によりちぎっては投げちぎっては投げの一方的な攻撃にあっという間に骸の海の彼方へとぶっ飛ばされていく。

 辺りが静かになった頃、他の猟兵達も怪人達を片付けたようである。
 こうして、ザ・フードステージは猟兵達の勝利に終わった。猟兵達はみなで持ち寄った米料理を改めて集め、ささやかな祝杯を挙げるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月05日


挿絵イラスト