バトルオブフラワーズ⑦〜カートゥーンをぶち壊せ!
●システム・フラワーズの輪の下で
「みんな、キマイラフューチャーの話は聞いたわね?」
クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)は、早速切り出した。
2つに割れたキマイラフューチャー、中枢の『システム・フラワーズ』を占拠したオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』。
彼を止めなければ、キマイラフューチャーの面白おかしい暮らしを支える「コンコンコン」は失われてしまう。
それは、キマイラフューチャーの本物の危機だ。
「というわけで、『システム・フラワーズ』に向かってもらうわけだけど、その前提として、『ザ・ステージ』と呼ばれる6つのエリアを完全制圧してもらわないといけないの。
そうしないと奥に進めないから注意してね」
●ステージブレイク!
「さて、今回みんなが行ってもらうのは、『ザ・サウンドステージ』という場所よ。まず、オブリビオンについて説明させてもらうわ」
クリスはホログラムの3D映像を映し出す。
いかにもイタズラ盛りという感じの、ネズミのキマイラの少年だ。
「彼はザニーユ・モア。撮った映像がカートゥーン(欧米の子供向けアニメ)風に変換されるテレビカメラでイタズラを撮影して、動画をアップするオブリビオンよ」
彼のペースに巻き込まれたら、間違いなく金床に潰されてぺちゃんこになったり、慣性を無視して空中に留まった後落下したり、ネズミ捕りに挟まれて、指がありえないぐらい膨れて腫れたりするだろう。
「もうひとつ、『ザ・ステージ』にはそれぞれ特殊戦闘ルールがあるの。今回戦ってもらう『ザ・サウンドステージ』では『パッショネイトソング』よ。自分自身を奮い立たせる歌を歌い続けないと、攻撃そのものが効果を発揮しなくなるわ。……この期に及んでもお気楽よねぇ」
クリスはため息をつく。
ただ、すぐに気を取り直し、声のトーンを上げて続けていく。
「ただ、歌に自分の強い思いを乗せれば、それを乗せた攻撃は大幅に強くなるわ。例えば秘密にしてたこととか、誰かに対して秘めた想いとか……」
クリスは顔を赤らめているが、それはそれとして。
強い思いであれば、内容は問われない。
別に「プリン食べちゃったごめん!」とか「オブリビオン許すまじ!」でもいいのだ。
「そう、このパワーを上手く使えば、相手のカートゥーン時空を音楽時空に塗り替えることができるわ! みんなの魂の歌声で、カートゥーンをぶち壊し、『システム・フラワーズ』への道を切り開いてきて!
よろしくお願いするわね!」
ややテンションの高い状態で、クリスは頭を下げるのだった。
西野都
こんにちわ、西野都です。
ついにキマイラフューチャーでの戦争が始まりました。
頑張っていきますので、よろしくお願いいたします!
今回は世界観とオブリビオンの関係上、そのままでは比較的コミカルな感じとなります。
が、歌の内容次第でそこらは大分変わります。
ぶっちゃけ、皆様の歌の世界観に塗り替えて行きます。
ミュージカルしても、2.5次元しても、絶唱しても構いません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ザニーユ・モア』
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POW : ぺちゃんこになっちゃえ!
【対象の頭上】から【対象のレベルの二乗tの重さの金床】を放ち、【ぺちゃんこにする事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : スラップスティックショータイム!
いま戦っている対象に有効な【コミカルな結果を引き起こす道具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : もっと笑わせる為に!
戦闘力のない【カートゥーン風に変換されるテレビカメラ】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【出演者の滑稽な姿を見た視聴者の笑い】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:笹にゃ うらら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「クロ・ネコノ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナミル・タグイール
歌えば時空が変えれるにゃ?楽しそうにゃ!
歌は下手だけど強い思いなら任せろデスにゃ!
金ぴかほしいにゃ!じゃらじゃらキラキラ欲しいにゃー!!
まだまだ足りないにゃ!もっと寄越せーにゃー!
金ぴか欲しいの歌を元気に歌うにゃ!
リズムなんて適当にゃ。勢いだけにゃ!
おもしろ時空より金ぴか時空のほうが絶対楽しいデスにゃ。
【呪詛】も込めて歌ってみんなも金ぴかスキーにしてあげマスにゃ!
金ぴか世界にできたら最高デスにゃ!!
邪魔するやつは誰であろうと容赦しないにゃ!
邪魔するならお前が金ぴか寄越せデスにゃー!!
金ぴかが出なかったり他のものがでたらしょんぼりする猫
何でも歓迎
●金ぴかフルコース!
「きししっ、やっぱり猟兵がやってきた!」
手にした小型のテレビカメラを振り回し、オブリビオン、ザニーユ・モアは笑う。
「いーっぱいイタズラして、動画をバズらせてやる!」
彼自身もカートゥーンの世界から出てきたような風貌だが、彼の撮影した動画もまたカートゥーン風に戯画化される。その中で猟兵をコケにして面白おかしい動画を撮影し、バズらせる。
「やー、楽しみだなー! 猟兵のアホ面をキマイラフューチャー中にいーっぱい流してやるんだ!」
その時を想像し、ザニーユはまたきししと笑いを上げた。
「歌えば時空が変えれるにゃ?楽しそうにゃ!」
まず現れたのはナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)だった。
金と紫の瞳を輝かせ、お腹だけが白い黒い毛並みはもっふもふだ。
カートゥーンにも出てこれそうな風貌だが、彼女はザニーユの思惑に乗るつもりは毛頭ない。というか、思うことはただ一つ。
「金ぴかほしいにゃ! じゃらじゃらキラキラ欲しいにゃー!! まだまだ足りないにゃ! もっと寄越せーにゃー!」
口を開けば出てくる衝動を、渇望を、ナミルはそのまま歌にする。
リズムなんて知らない、技術なんて知らない!
ただ、「金ぴかほしいにゃー!」の一念のみで……!
ほしい ほしい 金ぴかほしい
もっと もっと 金ぴかほしい
いっぱい いっぱい ぶらさげたら
ナミルは とっても うれしいにゃ!
「な、なんだこいつ!」
突然歌いながら現れたナミルに、ザミーユは狼狽えた表情を浮かべた。
元々、割とカートゥーンに出てきそうな風貌のためか、テレビカメラの中のナミルの姿は現実とあんまり変わっていない。もっふもふの猫が歌い踊っている。
ただ、ザミーユはそこに反応しているのではなかった。
「このままじゃ、ただの猫が踊ってみた動画じゃないか! ボクが欲しいのは、猟兵がイタズラでアホ面になったりひどい目にあう動画なんだよぉ!」
実際、動画に流れるコメントは
「もふもふで金ぴか草w」
「もっと!もっと!」
「いっぱい!いっぱい!」
「金ぴか!きらきら!」
と、ナミルに好意的なコメントばかり。
実は、ナミルの装飾品の放つ呪詛が彼らの嗜好を金ぴか寄りにしているのだが、それはザニーユの知るところではない。ただ、動画を乗っ取られそうな危機感は強かった。
「調子に乗るなよ!」
ユーベルコードで、ナミルの頭上に金床が突如出現した。
側面に「1444t」と刻印されたそれは、ノリノリのナミルの脳天を直撃し、蛇腹状に圧縮されるか、本人が見えなくなるぐらい床にめり込む代物だ。
それは、カートゥーンにオチを付ける必殺兵器。
「ぺちゃんこになっちゃえ!」
踊ってみた動画は強制終了、いつものカートゥーンイタズラ動画に戻る。
はずだった。
「きーんーぴーかー!」
ナミルの魂のシャウトがキマイラフューチャーのシステムを揺り動かしたのか。
呪詛が何らかの影響を与えたのか。
横へくるりと回転したナミルの横に落ちた金床は、金の塊になっていた。
「やったにゃー! 金ぴかにゃー!」
重々しい音を立てて落ちた金の金床を見て、ナミルが歓声を上げる。
「なんでだよっ! そこは潰れるのが筋だろ!?」
対象的に、ザニーユが怒りの声を上げる。
「カートゥーンが分かってない! 金床が落ちてきたら潰れて圧縮されたり、地面にめり込むもんだろ!? それに従えよぉ!」
「そんなの知らないにゃ! 邪魔するやつは誰であろうと容赦しないにゃ!」
ナミルが両手で黄金の爪を光らせる。
「ひっ!?」
ザニーユの喉の奥から悲鳴が漏れる。
金運アップの輝きも、彼にとっては単なる凶器にしか見えない。
ナミルはそんなザニーユに飛びかかりながら、歌を紡ぐことだけは忘れなかった。
邪魔するやつは!(邪魔するやつは!)
誰であろうと(誰であろうと!)
容赦しないにゃ!(にゃーん!)
歌のフレーズごとに、黄金の爪が振るわれる。
「いだだだだっ! 顔が、顔で○×ゲームができちゃうよ!」
あっという間にひっかき傷だらけになっていくザミーユ。実際は顔だけではなく全身が切り裂かれているのだが、カートゥーン脳の悲しさか、描写がいちいちカートゥーンに準じてしまう。
なお、コーラスは動画のコメント有志である。
そして邪魔をされたという怒りの感情と共に、歌と爪が次々と飛び出していく……!
邪魔するなーら!(にゃーん!)
お前が金ぴか!(どばどばーっと!)
寄越せデスにゃー!(きらーん!)
サビのフレーズと共に、両腕の爪を同時に、上下に振り下ろす。
金の軌跡とともにザニーユは縦にばっさりと切り裂かれ、
「ちっくしょう、おぼえてろよー!」
と、踵を返して全力逃走した。
このステージでの最初の歌は、こうして刻まれたのであった。
なお、金ぴかになった金床であるが。
そもそもユーベルコードで形成されたものであるため、ザニーユの逃走により雲散霧消し、ナミルは悲しみに包まれたのだった。
「しょんぼりデスにゃ……」
成功
🔵🔵🔴
ヴロス・ヴァルカー
天道さん(f12190)と協力を。ここがキマイラフューチャー…私には馴染みの薄い場所ですがここを故郷に持つクルーもいます、必ず守らねば。ここでは歌を…それに強い想いですか。天道さん、一曲お願いしてもよろしいですか?私達の…仲間への想いを乗せた曲を。…私は仲間に救われました、1人では決して見つけることの出来なかった道を…照らしてくれました。これは私にとって1番強い想いです、だからきっと届く。天道さんの歌に合わせ、【常世の花】を使った演奏を。爆音でテレビカメラの破壊を狙います。私達の歌は人を笑顔にしても…笑われるものじゃない。それを見せつけるとしましょうか。
天道・あや
ヴロスさん(f03932)と一緒に!
カートゥンかぁ、懐かしいなー、昔見てたっけ?って今はそれは置いといて、よーし、ミュージック、バトル!!
あたし達が想いを込めて歌うのは仲間への想い! 仲間がいるから楽しい!仲間がいるから共に頑張れる!仲間がいるから……悲しいかったり辛かったりしても……一緒に居てくれる仲間がいるから共に乗り越えられて強くなれる!さあ、一緒に行こう?素敵な仲間とまだ見ぬ未来へ!仲間と一緒なら行ける!どんな険しい道でもね!
そんな想いを込めて【サンダー!ミュージック!】で【歌唱】!ついでに相手の攻撃や妨害は見切って(【見切り】)【ダンス】【パフォーマンス】に利用しちゃう!
●歌おう!感電するほどの(仲間への)想いを!
「いでででで、ひどい目に遭った……って、また猟兵! きししっ、今度こそ面白おかしい動画撮ってやるからなっ!」
顔のひっかき傷に絆創膏を貼って、とりあえずザ・サウンドステージに戻ってきたザニーユは、新たに現れたステージへの闖入者を見て、再びテレビカメラを構えた。
さて、対する猟兵側はというと。
「カートゥーンかぁ、懐かしいなー、昔見てたっけ?」
ザニーユのカートゥーンの登場人物的なルックスを見て、明るい声を上げるのは天道・あや(駆け出し猟兵・f12190)。長い黒髪をさらりと揺らし、快活な笑顔を浮かべる。
「ここがキマイラフューチャー……」
無機物の触手を人型に撚り合わせた姿のウォーマシン、ヴロス・ヴァルカー(優しい機械・f03932)は、このキマイラフューチャーという世界そのものを興味深く見つめていた。
スペースシップワールド生まれの彼にとって、この世界は馴染みが薄い。しかし、彼の属する船のクルーには、このキマイラフューチャー出身の者もいる。
(必ず守らねば)
内心で、彼は仲間の故郷を守る決意を固めていた。
「よーし、ミュージック、バトル!!」
「ええ、確か歌を……それに強い想いですか。天道さん、一曲お願いしてもよろしいですか?」
「もちろん!」
あやは取り出した中型ラジカセを床に置き、再生ボタンを押す。
流れ始める軽快な音楽。
古いカートゥーンにありがちな、吹奏楽中心のものではない。
UDCアースにおける2010年代のJ-POP、それに基づくものだ。
Dear My Friends!
この世界は楽しいかい?
Dear Your Friends!
もちろんさ、楽しいよ!
黒いウェーブヘアを揺らし、弾ける笑顔であやは歌い始める。
弾けるほどの思い、溢れ出る思いを、歌に乗せる。
たとえ闇の中だって
仲間(あなた)となら歩いていける
どんな絶望の中でも
仲間とだから進めるんだ
感電するほどの喜びが、ユーベルコード《サンダー!ミュージック!》に昇華。
「あばばばばっ、しーびーれーるー!?」
歌を聞いたザニーユは、本当に感電し、がくがくと痙攣する。
伝記を受けたわけでもないのに、スパークが全身から発せられて、中の骨格が透けて見えてしまう。
更に、歌声に華を添えるは時に軽く、時に重く響く破裂音。
こちらはヴロスのユーベルコード《常世の花》。
効果として引き起こされる爆音を制御しつつ、ドラムのように響かせる。
「あばばばば……あーっ、ビデオカメラがー!」
動きの止まったザニーユのビデオカメラを、ヴロスの触手が指し示す。
《常世の花》の爆発が、それを粉々に吹き飛ばした。
「……なんだよ、これ! こんなのカートゥーンじゃない!」
ザニーユが叫ぶ。
それはカメラを壊されただけではない、自分の世界を否定されることへの慟哭。
「そう、これは仲間への想い!」
そんなザニーユに、あやは指をびしりと突きつける。
「はい、これは私達の……仲間への想いを乗せた曲」
既に触手を突きつけていたヴロスが、フードの下の目を赤く輝かせる。
彼自身が、旅の果てにあやたちの乗る船に救われ、仲間として認められた身だ。
だからこそ、新たな道を見出すきっかけとなった仲間への思いは強い。
それは、ヴロスの中で一番強い思い。
それは、あやの中で一番強い思い。
だからこそ、この『ザ・サウンドステージ』では力になる。
過去を打ち破り、未来への道の灯火となる。
彼女たちにとっての仲間がそうであるように。
「うるさい、うるさいっ! ならぺちゃんこになっちゃえ!」
「いいえ、私達の歌は人を笑顔にしても……笑われるものじゃない」
たとえ金床が降ってきても、それは決して譲れない。
Dear My Friends!
一緒に行こう 新たな未来へ
Dear Your Friends!
どんな険しい道だって 仲間がいれば
Precious Journey!
サビの最後の一声と同時に、あやが指を天に指す。
パイプオルガンのように触手を広げたヴロスの爆音が高々と響き、残響を響かせる。
そして、爆音と痺れる音楽に晒されていたザニーユが、ついに吹き飛んだ。
「ちっくしょう、おぼえてろよー!」
「これ様式美ってやつ?」
「かもしれません」
あやの軽口に、ヴロスが穏やかな声で答えた。
吹き飛んだだけなので、滅びてはいないだろうが、思いを笑わせることなく、突きつけることができたのだ。ザニーユの存在は揺らいでいるだろう。
あやとヴロスは、確かな手応えを感じていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
な、なんなのこの世界!料理を作らされたり
ペンキもってるやつ追いかけたり、踊らされたりしたけど
今度は歌なの!?戦争よね?今世界が大ピンチな戦争なのよね!?
ちょっとしたアトラクション気分なんだけど!
ああー、もういいわ。突っ込むのも面倒くさくなってきたわ!
フィーナ・ステラガーデン!歌うわ!
とぉおーーつぜんっファンシー世界がまーぷーたーつー!
いーまこーそーイェーガー!しゅーつーげーきーだーっ!
昂れー!(ほえろー!)集めろー!(魔力をー!)
もーうーいっそ世界ごとー焼き尽くしたーいー!
「でも・・私。イェーガーなのよね!」
もえーっろー!DADA!DA!
オブッリー!ビ・オ・ンー!
まーりょーくーで大爆発ー!
●今に見ていろオブリビオンは爆発だ!
「な、なんなのこの世界!料理を作らされたり、ペンキもってるやつ追いかけたり、踊らされたりしたけど、今度は歌なの!?」
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は半ば涙目になりながら叫ぶ。
既にいくつかの『ザ・ステージ』の攻略戦に参加してきたフィーナだが、スペースシップワールドの鉄風雷火の限りを尽くす戦争とは全く異なる様相に、戸惑いを覚えざるを得なかった。
故郷のダークセイヴァーにも、こんな戦争はないと断言できる。
「戦争よね?今世界が大ピンチな戦争なのよね!? ちょっとしたアトラクション気分なんだけど!」
「まぁ、キマイラフューチャーだから仕方ないよな!」
再び現れるオブリビオン、ザニーユ・モア。
ユーベルコード故に、先の戦いで壊されたビデオカメラも再び携えている。
オブリビオンとは言え、ザニーユ自身もキマイラフューチャーのキマイラである。世界に対する憎しみはあれど、世界のノリへの理解はある。
「というわけで、今度こそキマイラフューチャーらしく、面白おかしい動画になっちゃえ!」
すかさずカメラを構えるザニーユ。
二度も動画配信に失敗したのだ。今度こそは成功させてバズりたい。
だが、フィーナは黙り込んで動かなかった。
カメラの液晶に浮かぶカートゥーン映像も、全く動きがなく、面白くも何ともない。
「ったく、ノリが悪いよお姉さん! んじゃま、毎回やってる気がするけど……ぺちゃんこになっちゃえ!」
フィーナの頭上に現れる「1369t」と刻印された金床。
超自然現象たるユーベルコードによって顕現した金床は、その瞬間に物理法則に支配され、怒涛の質量を叩きつけんとす……!
だが、その瞬間、フィーナが『弾けた』。
「ああー、もういいわ。突っ込むのも面倒くさくなってきたわ!
フィーナ・ステラガーデン! 歌うわ!」
背景が突如大爆発!
爆風に煽られて金床が吹き飛び、二分割されたキマイラフューチャーの間の虚空に放り出されて第二宇宙速度を突破、ザニーユの視界から消えた。
いつの日か、宇宙の旅の果てに再びキマイラフューチャーの重力圏に入り、流星としてキマイラたちを楽しませる日が来るかもしれないが、さしあたっては今回の話とは関係ない。
閑話休題。
力強い声で、魔力も込めて、フィーナは歌い始める。
とぉおーーつぜんっファンシー世界がまーぷーたーつー!
いーまこーそーイェーガー!しゅーつーげーきーだーっ!
猟兵になってからどこかで見たであろう、ロボットアニメ風の楽曲。
と言うか、歌詞が完全に今のフィーナの境遇である。
顔もヤケを起こした人のそれだが、それはそれで楽しそうに見えるのが不思議だ。
「な、なんだこいつ!?」
カメラを回しつつ、戸惑うザニーユ。
今までの猟兵も、ルール上全員歌ってきたが、いきなり爆発から入るのは初めてだ。
カートゥーンと言うよりは、特撮の世界である。
だが、爆発ネタはカートゥーンの持ちネタでもある。
「きししっ、ならお姉さんも爆発させる!」
ザニーユの目の前に、「TNT」と書かれたボックスが現れた。
箱の上にはT字型の押し込み式スイッチが付いていて、導火線が長く伸びている。
その先は……フィーナの足元である。
「そーれっ、ふっと……」
ザニーユが言えたのはそこまでだった。
昂れー!(ほえろー!)
ザニーユの眼前で大爆発が起き、彼自身が吹き飛んだ。
ユーベルコードの効果で顕現していた爆破スイッチと爆弾は消滅した。
さっきの金床は……どうだろう。
集めろー!(魔力をー!)
「みぎゃー!?」
落下地点に魔力が集中し、再度の大爆発。
ザニーユは頭と上体を反らし、空の星になりそうな勢いで再び宙を舞う。
このまま銀河に呑まれそうだな、と一瞬だけ思う。
もーうーいっそ世界ごとー焼き尽くしたーいー!
その益体のない思考を吹き飛ばすように、三度大爆発。
今度は『爆炎』と言うべき性質のもので、ザニーユの尻尾にも火が着いていた。
「あちゃちゃちゃちゃっ!?」
物理法則を無視して垂直に飛んでいくザニーユ。
「でも……私。イェーガーなのよね!」
フィーナの歌が台詞パートに入り、ようやくザニーユは地面への帰還を許された。
顔から。
「んーっ、んんーっ!!んーっ!?」
しゅぽん、という擬音とともに、床に穴を開けてめり込んだ頭がどうにか抜ける。
「よし、効いてるわね! それじゃトドメ……じゃない、サビ行くわよ!」
「かんべんしてよぉぉぉぉっ!」
オブリビオン倒すべし。慈悲はない。
訳の分からないルールへの感情とか、戦争という言葉のイメージとの落差とか、今こうして歌う羽目になっている事とか、そんな諸々の感情の乗ったユーベルコード《圧縮セシ焔ノ解放》がザニーユを再び襲う。
ついでに、何故かロボットアニメ風のバックミュージックが流れ始めていた。
もはやフィーナを止められる者はいない。元からいないが。
もえーっろー!DADA!DA!
音節ごとに爆発。
リズミカルにザニーユが宙を舞う。
オブッリー!ビ・オ・ンー!
一瞬のタメと、その分強力になった大爆発。
「ビ・オ・ンー!」の歌詞とともに、ザニーユの飛距離は記録を更新。
実はザニーユは悲鳴を上げ続けているのだが、文章のリズムの関係上、ここでは割愛する。
まーりょーくーで大爆発ー!
サビの締めは、予算余りで大量の火薬を投入したかのような大爆発。
いい加減悲鳴をあげる気力もなくなったザニーユは、再度頭から地面に落下。
頭を床にめり込ませ、気をつけの姿勢で硬直した体を、撥条細工の人形のように震わせて沈黙した。
ザニーユ自身が、カートゥーンの爆発オチを体現した格好だ。
そして、一曲歌いきったフィーナはというと。
「あー、すっきりした!」
色々なストレスを爆裂魔法と全力歌唱で昇華したのか、満面の笑みを浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵
草野・千秋
キマイラフューチャーの危機です!
僕も歌い手としての矜恃がある
負けられないませんよ
UCで歌を披露します
(以下歌詞)
時には孤独と自責の念で
眠れない夜もあるだろう
誰かを傷つけるのは怖いことだって
最初は一人で生まれてきた
どうせ死ぬ時も一人
そんな風に思ってないかい?
だけど今の僕は孤独を乗りこえ
僕達は「独り」じゃない
共に戦う仲間がいるんだ
愛する友と愛するたった一人の人のために
戦う、戦えるんだ
この気持ちだけは
誰にも負けたくないって思えるんだ
自分のためだけじゃなくて
みんなで戦うんだ
Get to the Chance!
この機会逸するな!
こっちはいつでも準備は出来てるよ
歌詞も含めてアレンジアドリブ等歓迎
●
「キマイラフューチャーの危機です!」
白薔薇を飾ったマイク『pulchre, bene, recte』を握りしめ、『ザ・サウンドステージ』に飛び込んできたのは草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)だ。
『radu』名義で音楽活動をしている彼は、高く澄み渡る声に定評があるが、作詞作曲のセンスは並程度、というのが大方の評価だ。
だが、ここはザ・サウンドステージ。
歌い手の思いこそが力となるバトルフィールド。
ならば、作詞作曲の凡庸さなど関係ない、胸に滾る歌への思いを乗せれば……!
一方、ザ・ステージを守るオブリビオン、ザニーユは苛つきを隠せない。
「くそっ、何回邪魔すれば気が済むんだよ……!」
イタズラ動画の撮影を止めて、健全な動画撮影に切り替えれば良さそうなものだが、その気はないようだ。
オブリビオンであるが故の思考の歪み。彼もまた例外ではないのだ。
「今度こそ、イタズラ成功させて、ギャフンと言わせてやるっ!」
……言葉のチョイスの古さもそうかは、定かではないが。
ともかく、ザニーユの言葉に応じて、新たなアイテムが顕現する。
シンバルであった。
「これで頭を挟んで、頭をぺしゃんこにしてやるからなっ!」
彼は三脚でカメラをセットすると、大きく手を広げて、挟み込もうと千秋の許へと走っていく。
勿論、足が高速回転しすぎて、謎のぐるぐるしたものに変わっているのだが。
そんなザニーユに対して、千秋の歌が響く。
♪時には孤独と自責の念で
♪眠れない夜もあるだろう
♪誰かを傷つけるのは怖いことだって
「うるさい、うるさいっ! そんなの知ったことかっ! 誰かをコケにして、楽しいイタズラができればそれでいいんだっ!」
ザニーユが叫ぶ。なぜか、ひどく不快だ。
イタズラに凝り固まったオブリビオンが過去に忘れてきた気持ち。
それを突きつけられているような気がする。
♪最初は一人で生まれてきた
♪どうせ死ぬ時も一人
♪そんな風に思ってないかい?
千秋にとって、それは過去を抉るものでもあった。
邪神に家族を殺され、自らも改造手術を受けさせられ、一人で後悔と自責の念で潰されそうになりながら過ごした夜のことを思い出しながら、彼はこの歌詞を書いた。
彼自身の見た闇。
その中で見つけた光。
その全てをぶつけて……!
♪だけど今の僕は孤独を乗りこえ
♪僕達は「独り」じゃない
♪共に戦う仲間がいるんだ
「黙れ、黙れよっ!」
そんなものはかつてのザニーユにも、今のザニーユにもいない。
かつて焦がれたかもしれないものが、胸を灼いていく。
骸の海に置いてきたそれを、千秋の歌が、歌詞が、あぶり出していく。
それらを無視して、ザニーユは走る。
背後に回って、思い切りシンバルで叩いてやると、大きく腕を広げた。
♪愛する友と愛するたった一人の人のために
♪戦う、戦えるんだ
♪この気持ちだけは
♪誰にも負けたくないって思えるんだ
♪自分のためだけじゃなくて
♪みんなで戦うんだ
それは千秋の至った思い。
仲間たちと出会って、改造されたこの身で守りたいと願った。
肩を並べて戦いたいと願った。
その思いが、カートゥーンなイタズラになど、負ける道理がない……!
♪Get to the Chance!
♪この機会逸するな!
「ふぎゃっ!?」
サビに入った歌と高まった思いが『ザ・サウンドステージ』に共鳴し、物理的な力と変じることで、千秋に向けて走っていたザニーユを吹き飛ばした。
見えないけれど、確実にある力。
歌の力を証明するかのように!
♪こっちはいつでも準備は出来てるよ
サビの、最後の一小節で、思いは最高潮に。共鳴も最高潮に。
それはザニーユを『ザ・サウンドステージ』から吹き飛ばす威力に変じる……!
「準備なんて、そんな準備なんてできてないっっっっっ……!」
胸を焦がされながら、痛みを覚えながら。
あくまで彼はカートゥーンのように、この戦いから退場した。
まだ滅びていないから、戻っては来るだろうが。
そして、千秋は額に浮かんだ汗を拭う。
思いの丈をぶつけて、全力で歌い切ったことによる疲れも、今は心地よかった。
成功
🔵🔵🔴
フローライト・ルチレイテッド
では歌いましょう。
何者でもなかったぼくの歌を
誰でもなかったぼくの歌を
歌よ届け!
歌しかなかったケモノを受け入れてくれた、大好きなこの世界の果てまで!
Phantom!Ignition!魂に、火をつけろッ!!
活性UC4【情熱の華】を発動
機材、メンバー、発信力、ステージを増強(演出で可)
【楽器演奏、歌唱、誘惑、鼓舞、パフォーマンス、存在感、早業、マヒ攻撃、催眠術】を駆使し指定UCを演奏
この世界と、自分を受け入れてくれた人達への愛を込めて歌います
攻撃は【野生の勘】【早業】で回避
被弾は【激痛耐性】で耐久
空一面 帳降り星もない
退屈な暗闇
唇には煌めく赤いルージュ
開幕 さあ 笑えよ
※サビは指定UCの詠唱部分です
●
「な、何とか戻ってきた……」
足をガクガクさせながら、ザニーユが再びザ・サウンドステージへ戻ってきた。
猟兵たちの魂の歌によって、大きなダメージを受けたザニーユの存在は、もはや風前の灯と言える。
「こうなったら、絶対カートゥーンのイタズラ動画を撮ってバズってやる……!」
その思いが、彼の身体を動かしていた。幾多の挫折が頑なにしているとも言う。
そんなザニーユの前に新たに猟兵が現れる。
白皙の肌に金の瞳、銀髪からは獣の耳と一本の角が生え、背には小さな翼を背負ったキマイラ、フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)である。
少女と見紛う容姿の彼が抱くのは、緑色のダブルネックギター『蛍灯』だ。
「きししっ、こんな弱そうなやつなら、今度こそいける! 行くぞビリオン再生!」
すかさず、ユーベルコードで召喚されたビデオカメラを構えるザニーユ。
そしてその左手には……パイだ。
パイの皮にホイップクリームが山程乗っかった代物で、大抵は顔に飛び、顔はクリームまみれになってひどいことになる。
しかし、フローライトは動じなかった。
「なるほど、君はそういう手段に訴えるんだね」
「きししっ、パイ投げは王道だからな! ベッタベタにしてやる!」
パイを持ったまま、その腕をぐるぐる振り回すザニーユ。
遠心力ですっ飛んだり、クリームが飛び散らないのもお約束である。
対するフローライトは、ダブルネックギターを構える。ピックを持ち、まずは一音。
適度に歪んだ、甲高い音が響き渡る。
これから歌われるのは、何者でも、誰でもなかったフローライトの歌。
「歌よ届け!
歌しかなかったケモノを受け入れてくれた、大好きなこの世界の果てまで!」
声と同時に、ザ・サウンドステージ全体が揺れ動いた。
「な、なんだっ!?」
ザニーユは驚いて……目を剥いた。
ザ・ステージに、どこからか現れた戦艦が突き刺さっていた。
戦艦の甲板部にはスピーカーなどの音響設備、妖精による合唱団や演奏隊が完備されている、まさにステージである。
これぞユーベルコード《情熱の華~Living Passion》。楽団や音響・配信設備、ステージ化した戦艦を召喚する歌声である。
フローライトはバックジャンプし、その上に立つ。
同時に演奏隊が軽快な音楽を奏で始める。フローライトもまた併せてギターを奏で始め、36世界の全てに届けとばかりにシャウトした。
「Phantom!Ignition!魂に、火をつけろッ!!」
♪空一面 帳降り星もない
♪退屈な暗闇
演奏と歌唱の技量、美声……フローライトの歌い手としての全てが彼の力となる。
歌しかなかったケモノ。
彼を受け入れてくれた世界に、愛を届かせるために。
この世界の果て……中心へと届かせるために。
♪唇には煌めく赤いルージュ
♪開幕 さあ 笑えよ
「って、オイラはミュージッククリップを撮りに来たんじゃない! くらえー!」
手にしたパイが次々とフローライトめがけて飛んでいく。
腕を一回転させる度に無限に補充されるのは、ザニーユのユーベルコード故だ。
だが、その全てをフローライトは紙一重で回避する。
まるでステージ演出であるかのように、ステージ中を縦横無尽に駆け回って。
そして歌はサビへと突入する。
♪祈れ ただ祈れ
♪行くぜ! 空走る
「って、なんだありゃ!」
ザニーユは見た。歌い続けるフローライトの傍らに、幾多の影が現れるのを。
そして、影の数が増えていく度に、声が積み重なり、物理的な力さえ持ち始めるのを。
「やらせるかっ!このっ!このっ!」
ザニーユは再びパイを投げるが、音の壁に阻まれ、その全てがフローライトに届くことなく、叩き落とされる。
ザニーユは知らない。
影たちは、かつて歌に魂を賭けたロックアーティストであることを。
そして、フローライトを含めた彼らの覚悟が、イタズラ動画でバズろうなどというザニーユの思惑など寄せ付けない、気高く苛烈なものであることを。
♪突っ込むのさ! 獣のように吼えてやれ!
♪例えもう壊れても 最高の歌を歌うのさ
フローライトを守っていた歌は反転し、ザニーユに襲いかかった。
ネズミの耳の端が、シャツの袖が、靴先が、次々と虚無へと還元されていく。
「こんなの、こんなの認めない……! オイラはカートゥーンを撮るんだ! 猟兵どもをコケにして、バズって、人気者に……!」
身体が次々と虚無に還る中、ザニーユは叫ぶ。
それだけのために骸の海から還ってきたのに、なんでこんな、歌なんかに……!
(僕は、その『歌なんか』のために命を賭けてるんだ。そんな事しか言えない奴に負ける気なんて、これっぽっちもない……!)
フローライトは今歌える全てを込めて、最後の一声を……!
♪歌うんだ!
最大の衝撃がザニーユを襲う。
四肢の末端が、尻尾が、胴体が、次々と無に還っていき。
最後に残った顔が、
「ああ……オイラ、なんでカートゥーンを撮ろうって思ったんだっけ……」
そう言い残して、このザ・ステージを守っていたオブリビオン、ザニーユ・モアは消滅した。
歌が終わり、ギター演奏が止まり、ステージは沈黙に包まれる。
「それを忘れなければ、オブリビオンになんてならなかったかもしれないね」
消滅したザニーユのいた場所を一瞥し、フローライトはそう呟いた。
こうして、このザ・サウンドステージを守っていたオブリビオンは斃れた。
歌声を積み重ねて勝利を勝ち取った猟兵たちは、先へと進んでいく……。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月08日
宿敵
『ザニーユ・モア』
を撃破!
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