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バトルオブフラワーズ⑤〜襲いかかる課金要素

作者：雨都瑣枝

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　突如２つに割れたキマイラフューチャー。
　中枢「システム・フラワーズ」からの救援要請に従って、猟兵達は開放したメンテナンスルートを進んでいく。
「しかし、中枢の周囲を守る６つの『ザ・ステージ』を全てオブリビオンから取り戻さない限り、『システム・フラワーズ』へ辿り着く事はできないわ」
　彼らを転送する時、掻巻・褥（家庭内女神様・f16422）はそう説明していた。
　猟兵たちはザ・ステージのひとつ、『ザ・ゲームステージ』へと挑む。

●夏休みの宿題と課金要素
　そこは、強いて例えるならＶＲハードでオープンワールドゲームを体験しているかのような、いかにも『ゲーム内の世界』といった風情の場所だった。
　頭上にはメールアイコンやリュック——恐らく所持品リストを見る機能だろう——が浮かび、その横にはレベル表示やＨＰのゲージが並んでいる。
　滑らかな３Ｄで描かれた建物や人々は、違和感の谷へ到達しないよう、程よいデフォルメ具合で統一されている。
　そして、ゲームの舞台はＵＤＣアースやヒーローズアースの高校の教室を模していた。
『時限イベント～始業式が終わるまでに夏休みの宿題を手に入れろ！』
　猟兵たちの目の前に透明なメッセージウィンドウが表示される。
　長い説明を要約すると、夏休み遊び呆けていた主人公は、始業式が終わるまでに夏休みの宿題を様々な方法で入手し、写し終えるミッションだと言う。
　宿題の種類によってクリアすべきゲームのジャンルは様々で、まずは教室や校内を散策し、宿題を持っているキャラクターを見つけなければならない。
　力や頑丈さに自信があるならば、体育館裏にたむろしている不良たちへ喧嘩を売って、格闘ゲームに勝つと良いだろう。
　早さや器用さに秀でているなら、職員室に忍び込んで教師の監視の目を掻い潜る横スクロールアクションゲームをクリアして、主要教科問題集の解答集を盗むのも手だ。
　頭の回転や知識に優れているなら、教室内で始業式をサボっている同級生へ交渉し、彼らと落ちものパズルゲームで対決。
　勝利すれば自由研究を見せてもらう事ができる。
　また、猟兵達は自分が獲得した宿題を仲間と共有したりＮＰＣと交換できるので、１人で全ての宿題を集める必要は無い。
　ちなみにこのゲームへ課金要素は無い筈だが、猟兵達がゲームクリアへ差し掛かると、財布や宝石、金庫のアイコンの姿をした『マニーギャザラーズ』が直接攻撃によってゲームを妨害してくるので、気をつけて撃退して欲しい。

第1章 集団戦 『マニーギャザラーズ』

POW   :    金庫怪人・ウェポン 【金庫兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 SPD   :    おサイフ怪人・ジェノサイド 【おサイフ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    ジュエリー怪人・リフレクション 対象のユーベルコードに対し【ジュエリー】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。 イラスト：まめのきなこ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●職員室の攻防
「なつやすみ……しゅくだい……？」
　ダンピールにとって見慣れぬ明るい景色を目にして、神威・くるる（神の威を狩る黒猫・f01129）は不思議そうに辺りを見回す。
「うち、学校いうとこ行ったことあらへんさかい、どないなもんか知らへんねんけど……へぇ、楽しそうどすなぁ」
　花街や商家特有の語尾と流暢で違和感のない上方言葉の入り混じった話し方が、くるるのおっとりした雰囲気を更に強めている。
「こうしてゲームの中で学校を体験出来るとは思うてへんかったわぁ」
　物珍しそうに廊下を歩き、教室を見て回るくるるは、純粋にこのシチュエーションを楽しんでいた。
「どれがええんやろなぁ……しょくいんしついうとこ忍び込むゲームしてみよかな。猫ちゃんも一緒に行けるやろか」
　早速、壁の下の引き戸から職員室へ忍び込んだくるる。
「誰だ、そこにいるのは！」
　——カッ！　カッ！　カッ！
（「あわわ」）
　すぐにコンパスが手裏剣よろしく３連投で飛んできたが、第六感が働いて間一髪躱せた。
「逃げても無駄だぞ！」
　ドガシャーーン！！
　更にはローラーつきの背凭れ椅子に跨った教師本人が突撃してくるも、これも机の下へスライディングして回避。
「全くすばしっこい奴だ……この机の下か！？」
　連なった机の周りを等間隔でぐるぐる回っている体育教師陣へは、
「にゃぁ〜」
　咄嗟に召喚した猫ちゃんをにゃぁと鳴かせて事なきを得た。
「あったあった。これやな。しゅくだいのどりるいうやつは」
　その後も聞き耳を立てたり忍び足を駆使して、無事にドリルの解答集を盗み出したクルル。
「……ところで、課金要素あらへんハズやのに、このオブリビオンさんらは何に課金してはるんやろなぁ？」
　と、 『マニーギャザラーズ』の存在意義について首を傾げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

●宿題をかけた決闘
「学校とはこういうものか……さて、ここは体育館裏一択、ですね！」
　百鬼・甲一（不死傭兵・f16959）は、やはり興味深そうに校舎や中庭を見回しながら、渡り廊下を通って体育館へと向かっていた。
　サムライエンパイア出身で物心ついた時には既に戦場に立っていたという根っからの戦場傭兵な甲一だから、生徒が緊張感なく騒いでいる高校の空気が殊更新鮮に感じられるのだろう。
「えぇと、すいません……宿題を写させていただいても？」
　体育館裏にたむろしている、土管の裾を引き摺ったいかにもワルそうな不良たちへ、臆する事なく声をかける甲一。
「アァン？　俺らが毎日丹精込めて育てたトマトの観察日記を丸写ししたいだァ？」
「良い度胸だなテメェ！」
「……ダメ？　なら、力ずくです！」
　妙に可愛いキレ方でいきり立つ不良達とのバトルが始まった。
　まず、甲一が連打コンボをキャンセルしてフェイントをかけつつ、不良２人を二回攻撃で軽くいなしていく。
　不良もハイキックやメリケンサックパンチ、鉄板振り下ろしなど様々な攻撃を仕掛けてきたが、武器受けの腕を活かして蹴りをガードしたり、残像を駆使してパンチを回避するなど隙を見せない甲一。
　それでも細かい拳の乱打や鉄板によって蓄積したダメージのお陰で、ついに必殺技のゲージが満タンになった。
「無慚一刀……ただ、切り捨てるのみ……」
　これ幸いと無銘の業物を抜き払う甲一。
　極限まで効率化された無情な斬撃が不良達をひと息に斬り捨て、奴らの体力ゲージをゼロに減らした。
「……なんか、何時もよりエフェクトが派手ですねぇ……」
　一太刀ごとに巻き起こる刃風や、白刃が閃くたびに弓なりに光る演出を見て、思わず苦笑する甲一だが、
「テメェ、強いじゃねぇか」
「ほらよ、観察日記。漢たるものケジメはしっかりつけねぇとな」
　ともあれ、夏休みの宿題『自由研究の観察日記』を手に入れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●屋上にて
「落ちものゲームはあまり得意ではないんですよね。クイズゲームとかの方がまだ好きかな？」
　春霞・遙（子供のお医者さん・f09880）は、のんびりそう呟きながら屋上へ続く階段を昇っていた。
「というのもあるけど、楽しむよりキマイラフューチャーを救う方が優先なのでズルしちゃいましょう」
　できるなら早いところオブリビオンを退治したいと、女の子のクイズへ挑む遙。
「このクマさんを無に帰すにはどうすれば良いと思う？」
「２．クマのクを消してマを鏡写しにしてム、ですね」
　遙が正しい答えを伝えた瞬間、晴れていた空が突然黒い雲に包まれた。
「正解……この世界ももうすぐ無に帰る……繰り返される始業式もゲーム対決ももう終わり……校舎と体育館しか無い広くて小さなセカイ……」
　少女がセリフを言う間にも空からデータの残滓を模した極彩色の光が降り注ぎ、屋上を構成要素が剥き出しの空間へと変えた。
「何ッ、もうゲームをクリアしそうな奴がいるだと！？」
「ロクな足止めにもならないなんて！」
　慌てふためく金庫怪人・ウェポンとお財布怪人・ジェノサイドの群れ。
　それを良い事に、遙は召喚した絡みつく紫の触手のかたまりから謎を喰らう触手を伸ばして、奴らへ先制攻撃をお見舞いする。
「さっさと始末すればよいだけだ！」
　一方、ジュエリー怪人・リフレクションは、反撃とばかりに煌めく宝石を投げつけ、相殺を狙ってきたが、間一髪、遙が援護射撃の腕を活かしてそれらを撃ち落とした。
「課金すると色々ショートカットできたりするけど、課金は無理のない程度にね」
　と、『マニーギャザラーズ』へ対して、まるで廃課金者を諭すように言い聞かせる遙だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　一方。
「んー……やることありすぎるな！　何からやっていいかわからん！」
　亜儀流野・珠（狐の恩返し・f01686）は、このゲームの選択肢の多さに当惑していた。
　銀のフサフサした髪を持つ小柄な俺っ娘妖狐だ。
「……ん？　なぞなぞか。とりあえずそれからやってみるか！」
　どのゲームからやろうかと校内を巡りに巡った結果、珠が辿り着いたのは屋上だった。
「このクマさんを無に帰すにはどうすれば良いと思う？」
「クマを無に、か。無、む、ム……む？」
　女の子に問いかけられて、少し考え込む珠だが、
「答えは２だな！　『ク』を隠して『マ』を『ム』に鏡写しだ！」
　頭の回転が速いのか、すんなりと正しい答えを導き出してみせた。
「正解……この世界ももうすぐ無に帰る……繰り返される始業式もゲーム対決ももう終わり……校舎と体育館しか無い広くて小さなセカイ……」
　お陰でゲーム世界は隠しエンディングの崩壊を始め、遙と交戦中のマネーギャザラーズが血相を変えて襲いかかってくる。
「あっ、またゲームクリアしかけてる奴が！」
「許さんッ！！」
　ドザーッ！
　お財布怪人による超高速の連続攻撃——財布の中身を滝のようにぶちまけるのを喰らっても、けろっとした顔で首を傾げる珠。
「んん？　今度は戦闘か？　ゲームはいいのか？」
　ともあれ攻撃されたからには応戦しようと、巨大木槌の砕を軽々とぶん回した。
「……まあわかりやすくていいな！」
　珠の怪力を活かした重い打撃をモロに頭部へ喰らって、フラフラとよろけるマネーギャザラーズ。
「財布以外は硬そうな奴らだが……まあ殴れば吹っ飛ぶだろ！」
　何か上手い事を言いつつ、勢いに乗った珠が奥義『大薙ぎ』を繰り出す。
「纏めて吹き飛べ！」
　ただでさえデカい砕を更に巨大化させた為に、一振りしただけでマネーギャザラーズ全員へそれはもう高威力な大打撃を与えて、卒倒させた。
　かくて、無事にマネーギャザラーズを撃破した遙と珠。
「……これで良かったのか？」
　剥き出しの電脳空間に淡々と流れるスタッフロールを見て、珠が呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月03日