#ダークセイヴァー
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●招かれざる篝火
遠くで幾つもの火が揺れている。
夜と闇に覆われた世界で、その火だけが浮いて見える。
不規則に揺れる火をもっとよく見ようと目を凝らしてみれば、火を持つ手を辿り、腕をなぞり、やがて揺れているのは篝火を手にした人間であることが分かった。
いや、人間というには些か語弊があるだろうか。
ふいに篝火が照らし出した全貌に、思わずと眉を顰める。
照らされたその顔は既に腐り落ち、本来の人相までをも歪めてしまっていたのだ。窪んだ目も暗く果てしなく、その向こうには何もない。
ーー亡者である。
死に絶えたはずの亡者たちが、篝火を手に列を成して暗い道を進んでいるのだ。
それは怖気さえ覚えるような光景だった。けれど、目を逸らすことは出来ない。
そうして目を凝らして見据えた悪夢の際涯。
列を成す篝火の先で、黒い鎧に身を包んだ騎士と目が合った気がした。
●異端なる者
「やぁ、親愛なる君」
拠点となるグリモアベースに集まってくれた猟兵を見上げて、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)はにこやかに口を切る。
本来であればここで自己紹介のひとつでもしたいところだったが、何せ時間もない。クリストは手にしていたステッキでコツリと床を打つと、自分の使命を果たすべく鷹揚と予見について話し始めることにした。
「今回僕が案内するのは、夜と闇に覆われた世界。ある村で暴虐の限りを尽くす異端の騎士、このオブリビオンを倒すことが最大の目的になるだろうね」
そこは常に夜と闇に覆われ、異端に服う者たちが跋扈している世界。
多くの村や領地で圧政が敷かれ、人々はオブリビオンによる支配に苦しみながらも息を殺すように暮らしている。今回の事件もその内のひとつであると推測される。
クリスは考えるような仕草で尻尾を揺らしながら、ひくひくと揺れる髭をなぞる。最大の目的が異端の騎士を倒すことであるのは確かだが、しかし。
「まず、君を送り込むのは辺境の村になる。君には手始めに、そこで情報収集をしてもらいたい」
予見した異端の騎士が支配している小さな村は、戸も窓も締め切られ、誰も出歩こうとしない程に寂れている。異端の騎士に怯えながら暮らす住民たちは、突然訪れた猟兵にも反発することはないが、歓迎もしないだろう。
村の様相を簡単に伝えたところで一度言葉を区切り、クリスは猟兵の目を見てからはっきりと告げる。
「村の住民たちは異端の騎士へ貢物を定期的に差し出しているからね。騎士がいつ来るのか、どこから来ているのかも知っているはずだよ」
簡単には教えてくれないだろうが、もし聞き出せたなら確実に有利に事を進められるようになる。これを逃す手はない。
とはいえ、情報収集とひとえに言ってもやり方は人それぞれ。
力強さを見せつけることで住民の安心を得るのも良いだろうし、住民とコミュニケーションを取ることで信頼を得るのもひとつの手段だろう。村や周囲を地道に探索することで見つかるものだってあるかもしれない。
「やり方は君の自由だ。重要なのは異端の騎士に繋がる手掛かりを得ることさ!」
冒険の初めは何事も情報収集が定石だろう?
クリスはそう言って片目を瞑ってみせると、手にしていたステッキをくるりと回し、シルクハットを深く被り直す。線を描くようにして現れたグリモアがより強く光り輝いたなら、それが猟兵を次なる世界へ送り出す合図だ。
「健闘を祈ろう、親愛なる君。ーーさぁ、準備はいいかい?」
atten
お目に留めていただきありがとうございます。
attenと申します。
▼ご案内
今回は闇と夜に覆われた世界が舞台となります。
困難を乗り越え、事件の解決を目指しましょう。
なお暗い場所での冒険となりますが、視界の悪さが戦闘などで影響することはございません。
皆様のプレイングをお待ちしております。
クリス共々、よろしくお願い致します。
第1章 冒険
『支配された村』
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POW : 強さを見せて村人を信頼させる
SPD : 村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する
WIZ : 会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルコーン・アフェシス
それでは、探索での情報収集とまいりましょうか。
異端の騎士、鎧に身を包むとなれば、さぞ重たいことでしょう。
足跡、もしくは……通り道に、踏み固められた様子など見て取れるやもしれません。
来る方角と、上手くいくならその頻度まで得たいところ。
騎士だけでなく、手下の情報も見落とさぬように注意いたします。
ただ念のため、村の方々からは離れて行動を。
探索と言えば聞こえは良いものの、見ていて不審ではあるでしょうから。
余所者への警戒心をいたずらに刺激して、他の方の情報収集の邪魔にならぬように。
●はじまりの村
「それでは、探索での情報収集とまいりましょうか」
夜と闇に覆われた世界へ送り込まれたアルコーン・アフェシス(ロトゥンフラット・f00510)がまずはじめに行ったのは、寂れた村の周りを探索することだった。
異端の騎士が鎧を身に纏っているならば、さぞ重たく足跡を残していることだろうと推測したアルコーンは注意深く通り道を見下ろして異端の騎士の形跡を探り、村からは身を隠すようにして情報収集に努める。彼の白磁のような肌は月明かりによく映えたが、漆黒が上手く森に隠してくれたことだろう。
「これは……、」
探索をはじめてから暫く。
アルコーンは数ある獣の足跡に紛れて、人間の足跡が複数残っていることを発見する。住民たちは村に閉じこもっていることを考えればこの足跡が件の騎士、そしてその手下たちのものである可能性は高いだろう。そして足跡が出来てからそう日にちが経っていないことも見て取れた。つまり、異端の騎士はつい最近にも村へ訪れていたのだ。
「足跡が続いているのは、この先か……」
探り当てた足跡を辿った先に見えたのは、ふもとの山道だった。ここを進んだ先に、異端の騎士の住処があるのだろうか。
遠くに篝火を見たような気がして、村へ向かった仲間たちと合流するべく情報を手に村へ戻ることを決めたアルコーンは再び闇へ紛れていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
まずは村人と会話をせんことには始まらん。
ともかく、我々の情報をできる限り開示しておこう。猟兵の仕事として、奴らを狩るのが目的だ……というのは、話しておいた方がいいかもな。もちろん、対価は要らんとも告げねばなるまい。この私は、世界のために戦っているのだからな。
我々の作戦が成功すれば、当面は怯える必要もない。そのためには貴様らの協力が必要だ――というのも、事実だ。伝えておいて損はあるまい。
そうそう……子供がいるなら飴の一つでもくれてやろうか。
浅沼・灯人
【WIZ会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す】
俺は傭兵だ。雇われたならどんな戦場だって行く
……が、まずは情報収集か。暴れすぎはよくねぇな
まずは自分の目での状況確認、
村人の様子を見つつ厄介ごとの有無を聞こう
でかい町に行くため日銭を稼ぎながら旅してるって言えば、
多少なれ疑いの目は薄れるだろう
力仕事や火の扱いは得意なんだ
害虫退治の類いもすぐ片付けてやる
報酬は要相談ってことで頼む
それで村人に亡者退治の依頼をされたなら亡者退治に暴れにいこう
もしくは亡者に見つかって襲い掛かれりゃやり返すさ
俺も命が惜しいんだ
他にお仲間がいて連携が可能なら是非とも
ひとりより複数人でのミッションのが成功率あがる
一方その頃。
まずは村人たちの信頼を得ることを選び寂れた村の中へ足を進めたのは ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)と 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)だ。村はあらかじめ伝えられていた通り、窓も締め切られ寂れた有り様ではあったが、猟兵として研ぎ澄まされた感覚は確かに『見られている』ことを知らせていた。
「……お兄ちゃんたち、だあれ?」
キィ、と小さく音を立てて戸が開かれた先にいたのは、まだ幼い子供だ。澄んだ眼でよそ者である猟兵たちを見上げ、首を傾げている。子供の奥で老人が慌てているのもよく見えた。
「私たちは仕事に来た猟兵である。ーーおいで、飴をやろう」
「……ま、暴れすぎは良くねえからな。おい爺さん、なんか厄介事があるんだろ? ちょっとでいい、俺らに話してくれねえか」
二ルズヘッグが飴を差し出せば、子供は目を輝かせて駆け寄ってくる。異端の騎士に搾取され続けた村では、こういった嗜好品は久しく見ていなかったのだろう。
続いて、そんな子供を慌てて追いかけてきたのは腰の曲がった老人だ。子供に飴をやる二ルズヘッグの傍らで、灯人は無骨ながらも老人へ声をかけた。
「猟兵? な、なんなんじゃ君たちは……。わしらの村なぞに一体何の用じゃ!」
関わりたくない、そんな心の内が見えるような老人の様子に目配せしあう二ルズヘッグと灯人は、疑いの目を晴らすために自らの情報を開示することにした。
「私たちはこの辺りに根を張っている異端の騎士、奴らを狩りに来たのだ」
「そんなこと、出来るはずがなかろう……!」
老人は気色ばみながら、子供を家へ戻そうと手を伸ばす。けれど、そんな老人の気迫に負けるような猟兵ではない。それも当然のことだと受け止めた様子で、言葉を重ねていく。
「対価はいらん。私たちは世界のために戦っている。……作戦が成功すれば、貴様らも当面脅える必要がなくなるだろう」
「力仕事でも害虫退治でもなんでも手伝ってやるぜ。ただ今は騎士に関する情報が知りたいんでな」
ふたりの言葉は飾り気ないものであったが、それでも真剣であることはよく分かった。伸ばしかけた手を止めた老人は考えるような素振りをみせて、それからはっと思い出したように子供を自分の傍へと引き寄せる。
「お兄ちゃんたちは、ぼくらを助けに来てくれたの?」
そんな老人の腕の中で、子供が問いかける。二ルズヘッグは深く頷いてみせると、自信に満ち溢れた表情で笑った。
「そうだとも。しかし、それには貴様らの協力が必要だーー」
やがて。
先に折れたのは老人であった。
老人は言葉少なに、異端の騎士が来るのはいつも決まって月の満ちる頃で、月が変わるまでの束の間の平穏だけが心の支えなのだと告げる。
「奴らは村の向こうに見える、山奥からいつもやって来るんじゃよ。わしらは見たことも、行ったこともないが……若い者たちは皆、山奥にあるという屋敷に連れて行かれてしまった」
寂れた村に残っているのは自分のような老人や子供ぐらいなものだと言う嗄れた声には、数多の絶望と深い諦観が色濃く残っていた。
月の満ちる頃、そして山の奥にある屋敷。その情報を胸に、話してくれた老人へ感謝しながら、二ルズヘッグと灯人はオブリビオンを倒してみせると強く誓いを立てた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イデアール・モラクス
暴虐の騎士だと?
気に入らんな、私の前で好き勝手をやろうなどという輩は跡形も無く消し去ってやる。
まず手始めに村人に接触し、騎士に困っているなら私が倒してやろうと豪語、信じぬようなら壊しても良さそうな建造物を破壊するか、魔物退治でも引き受けるか、騎士に従っていそうな村人を痛めつけるかして信用を得る。
「私の魔法をあまり舐めるなよ、何なら貴様らを見せしめにして騎士を誘きだしても良いんだぞ?」
騎士の居場所が分かったら先制だ、乗り込んで遠距離から容赦なく攻撃を仕掛け完全に屠り去るまで攻め続ける。
「私の前で暴虐を気取るなど、許せるはずなかろうが!」
猟兵たちの機転により、異端の騎士にまつわる情報は着々と揃いはじめていた。村の周囲を探索するのも、村人たちから情報を引き出すのも、方向性は異なるが確実な手段である。
そんな中、この寂れた村をに足を踏み入れまた異なるアプローチをして見せたのはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)だった。
「暴虐の騎士――気に入らんな。私の前で好き勝手やろうなどと言う輩は跡形もなく消し去ってやる」
血のように赤い切れ長の瞳を煌かせた美しい面立ちに反し、尊大な仕草でイデアールはそう吐き捨てる。そんな彼女に慌てた様子で言葉を返したのは、美しく若い余所者の女に早くここから立ち去るべきだと忠告しようと民家から顔を出した老婆だった。
「滅多なことを言うでねえぞ! あんたみたいな若者は皆、騎士に連れて行かれてしまってんだ。こんなところにいたら、あんただって危ない。分かったらとっとと立ち去るんだね!」
「ふん、屋敷ねぇ……」
老婆の気迫にも意に介さず、イデアールは凶悪に笑ってみせる。
村人たちは騎士に困っている。そしてイデアールは異端の騎士などという輩が気に食わない。ならばやることはただひとつ、そんな奴は倒してしまえばいい。彼女にとってはひどく明快な答えだった。
「異端の騎士に困っているというならば、この私が倒してやろう!」
そう豪語するイデアールだったが、しかし老婆は彼女の言葉を信じる様子はなかった。それも仕方がないのかもしれない。イデアールはその言動こそ尊大に見えたが、しかしその容姿は美しくか弱い魅惑的な美少女そのもの。とてもではないが、あの騎士に勝てるとは老婆には思えなかったのである。
「何度も言わせるでねえぞ、あんたみたいな若い女が騎士に勝てるわけねえ! 怪我する前にとっとと帰んな!」
老婆の言葉はひどく冷たいものであったが、それもイデアールを心配するが故のものだったのかもしれない。この村では若いものたちは皆、騎士に連れ去られ今では老人か子供しか残っていない。老婆の娘も、随分と前に連れ去られてしまった。こんな美しい女が連れ去られてしまえば、いったいどんな目に合うというのか。想像するに容易く、老婆は一刻も早くイデアールをこの場から立ち去らせようと手を払う。
しかし、そんな言葉ではイデアールの胸には響かない。イデアールは笑顔を消すと、不機嫌そうに鼻を鳴らし――自分から少し離れた場所に立つ大木に、手にしていたウィザードロッドの先端を向けてみせた。
「――私の魔法を、あまり舐めるなよ」
それは目を瞬いた程度の、一瞬のことだった。
イデアールが向けたウィザードロッドから放たれた炎の矢が大木へと突き刺さると、燃え盛る炎に包まれ、大木は轟音の中に倒れていく。燃え盛る炎を背にイデアールの赤い瞳は鈍く光るようで、老婆はあまりの光景に恐れ戦くように後ずさる。そうして気付いたのだ。ただの若い女ではない。この女は――魔女である。
「ひっ……」
「言え、騎士の館はどこにある?」
「あ、ああ……、騎士は、多くの亡者たちを引き連れて向こうの山奥にある屋敷にいる。や、屋敷なんていったら、山にはひとつしかない。遠い昔、領主が住んでいたという古い屋敷だよ」
震えた声で老婆は語る。異端の騎士に支配された今では領主なんてものは存在しないけれど、誰も覚えていないけれど。老婆だけは、覚えていた。この村の向こうにある山を登り、橋を渡り、洞窟を抜けた先の古い屋敷。その屋敷こそが騎士の住処である。
情報を得るが早く、イデアールは踵を返していく。居場所さえ分かれば、後は異端の騎士を倒すだけだ。気付けばあれほど燃え盛っていた炎は嘘のように消え去り、焼かれ倒れた大木が残るのみ。その去り行く魔女の背中を、老婆はまるであるはずのない夢でも見たかのように立ち尽くし、魔女の背中が闇に消えるまで見つめていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『篝火を持つ亡者』
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POW : 篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:トギー
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●揺れる篝火
暗い、暗い、夜の底。
闇だけが息衝く静けさの中で、篝火が揺れている。
列を成した篝火が洞窟を進んでいく。
その亡者の群れを、欠けた月だけが見ていた。
●Interval
「やあ、親愛なる君」
村から少し離れた暗い森の中。切り株に腰掛けたクリスは軽い仕草で手を振った。そして情報収集を終えて再び森に帰ってきた猟兵を見上げ、クリスはまずは労わりの声を掛ける。お疲れさま。
どうやら情報収集は上手くいったらしい、と猟兵の顔色から察したクリスはそのまま切り株から立ち上がると、そっとステッキを持ち直す。
「いやあ、手伝えなくてすまないね。少しくらい猫の手を貸したいところだけれど、僕がやられちゃうと帰せなくなっちゃうから」
家に帰るまでがお仕事ってやつさ、親愛なる君。
クリスがそう言って笑ってみせれば、手の中のグリモアが呼応するように瞬いた。
「しかし、そうか。あの山の奥深くに異端の騎士がいるんだね」
ふむ、とひとつ頷いて村から向き直るようにして山を振り返る。このあたりにも魔獣などがうろついていたが、屋敷の近くへ行けば行くほどオブリビオンの数も増えるだろう。屋敷の近くには異端の騎士だけではなく、夢で見たあの篝火の列だっておそらく控えている。
「――気を付けてくれ、親愛なる君。敵は何も異端の騎士だけじゃない」
冒険はもう、はじまっているのだ。
オブリビオンとの戦いは、もうすぐそこまで迫っている。
アルコーン・アフェシス
さて、さて。
まずは前哨戦、といったところでしょうか。
(篝火の列を見回すと、ほんの少し眉をひそめたが、すぐ好戦的な笑みに作り替えて)
ふふ、申し訳ありませんが私は非力なもので……。
一撃で楽に、とはいかないでしょうが。
最後にはきちんと葬って差し上げますゆえ、ご安心を。
(【シーブズ・ギャンビット】自身の速度で以て翻弄しながら、隙を見れば即座に攻撃を浴びせる。技能:フェイント・2回攻撃)
(相手取った個体を撃破できたならば)
……さようなら、黄泉返りよりも悍ましく、哀れな誰か。
お休みなさい。今度はどうか、良い夢を。
⚫篝火燃ゆる
山を登り、橋を渡り、洞窟を抜けてーー。
魔獣も眠る夜更けの頃、猟兵は異端の騎士の屋敷を目指して深い山奥へと足を踏み入れていた。まるで嵐の前の静けさのように、何事もなく。つつがなく。いっそ静かすぎる程のその夜道で猟兵が異変に気付いたのは、枯れた木々の向こうに古びれた屋敷が見えてくる、そんな時だった。
「ーー さて、さて。まずは前哨戦、といったところでしょうか」
音もなく、姿もなく。
不気味な静けさを携えて、いつの間にやら列を成していた篝火に亡者の影を見たアルコーン・アフェシス(ロトゥンフラット・f00510)は少しばかり眉を顰めたが、次の瞬間には好戦的な笑みを浮かべていた。
猟兵を囲むように列を成した篝火は、目に見える範囲だけでもかなりの数だ。これらすべて、異端の騎士が従えている亡者なのだろう。けれど、溢れる亡者の群れを前にしても、アルコーンの笑みが崩れることはない。
「 一撃で楽に、とはいかないでしょうが。最後にはきちんと葬って差し上げますゆえ、ご安心を」
申し訳ありませんが、私は非力なもので。
笑みを浮かべたまま、アルコーンは篝火を揺らめかせた亡者にそう語りかけるが早く、身に付けていたダガーを目にも止まらぬ速さで引き抜き素早い一閃を放つ。亡者が篝火の影に触れようとも、その攻撃からは免れない。
亡者の運が悪かったのか、それともアルコーンの実力が亡者を上回っていたのか。どちらにせよ、確実なのは戦闘には相性があるということだ。
篝火の影に触れた亡者が攻撃を予測し回避してみせたのは初撃のみ。対してーーアルコーンの放つ シーブズ・ギャンビットはフェイントを交えた二段攻撃だったのだから。
「 ……さようなら、黄泉返りよりも悍ましく、哀れな誰か」
沈みゆく亡者の影と、転がり落ちて消えていく篝火を見下ろしてそっと目を伏せる。おやすみなさい。その声を聞く者はいなかったが、それでもアルコーンは祈りを捧げるのだ。死しても眠れない残酷な世界から解放され、今度こそ、亡者が良い夢の中で眠れるように。
大成功
🔵🔵🔵
イデアール・モラクス
騎士の場所は分かった後は焼くだけだが…フン、邪魔が入ったようだな。
戦法
「消えろ、貴様らに用はない」
亡者共を睥睨し数を確認する、どうせ言って退散する連中ではない。
「フン…私の慈悲を無駄にしたな?
その不敬、万死に値する!」
予め確認しておいた亡者共にまとめてウィザードミサイルを叩き込む、遠距離からの一方的な蹂躙こそ我が戦いの王道。
「アッハハハハ!
どうだ、心地良いだろう?
私の炎に抱かれて逝けるのだ、咽び泣き跪いて果てるがいい!」
魔力の限り、亡者を殲滅するまで私の炎は止まらない、全てを焼き尽くすまで。
「騎士に早く会いたいなぁ、お前はどんな声で哭いてくれるんだろうなぁ?
アーハッハッハ!」
そこかしこで剣戟の音が響いている。
戦いは既にはじまっているということだろう。そしてそれは、この場でも同じことである。
「消えろ、貴様らに用はない」
篝火に照らされたイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)の血のように赤い双眸が、亡者たちを冷たく睥睨する。どうせこの程度で退散するような連中ではないと想定していた通り、ゆらりと距離を詰めるように揺れる亡者たちには意思などないのだろう。異端の騎士に操られるがまま、死してなお眠れない骸の体は敵と見なした猟兵を始末するまで、そうでなければその骸の体が再び死に絶えるまで止まらないということだ。
「……私の慈悲を無駄にしたな? その不敬、万死に値する!」
距離を詰められるよりも早く、イデアールはウィザードロッドを掲げ攻勢に出る。炎を纏った魔法の矢ーーウィザードミサイルは瞬く間に空を駆け、亡者の窪んだ目を突き刺した。
猟兵の戦い方は様々だが、魔女であるイデアールにとっては遠距離で戦うことが基本なのだろう。自分の技能を熟知した彼女は、燃え広がる炎と崩れ落ちる亡者たちを視界に収めて凶悪な笑みを浮かべる。ーーしかし。
ずるり。
重い体を引きずるように、崩れ落ちたはずの亡者が再び起き上がる。
「ーー!」
消えた篝火が、気づけばひとつ。ふたつ。みっつ。
ゆらり、ゆらりと篝火が増えていく。
ひしめいた篝火たちからまっすぐとイデアールを燃やすべく炎が放たれたのはそれからすぐのことで、いくら暴虐の魔女であろうともその数には成す術がなかった。
「ぐっ……」
燃え盛る炎が、イデアールに襲いかかる。その炎は決して強すぎるということはなかったが、何せ数が多すぎた。肌を舐める敵の炎に憎々しげに顔を歪めたイデアールは、痛みを耐えるよりも強く猛々しく吠える。その反逆を許してはならない。暴虐こそが、蹂躙こそが己の王道なのだから。
「この私に、触れたな!」
敵の炎など痛くも痒くもない。炎こそ暴虐の魔女の領分であり、篝火などに屈することはない。敵が蘇るのならば、塵も残さず燃や尽くしてしまえばいいのだ。
燃え盛る炎を前にイデアールが再びウィザードロッドを掲げれば、魔法の矢は先ほどよりもごうごうと燃え昇るような炎を纏って現れる。そしてその幾つもの魔法の矢が空を駆ければーー、
「アッハハハハ! どうだ、心地良いだろう? 私の炎に抱かれて逝けるのだ、咽び泣き跪いて果てるがいい!」
苦しむ間もなく、二度と起きることもなく。
すべて、すべて燃やし尽くす。
空を駆けた魔法の矢が蘇った亡者たちを焼き消していく。その魔女の炎は、今度こそ亡者が殲滅するまで、魔力が尽きるまで止まらないだろう。
「騎士に早く会いたいなあ、お前はどんな声で哭いてくれるんだろうなあ?」
すべてを燃やし尽くす蹂躙の炎によって消し炭となった亡者を一瞥することなく、イデアールは進んでいく。その歩みが止めるものは、もういない。
篝火さえも飲み込むような暴虐の炎の痕、骸が跡形もなく消え失せた戦場に暴虐の魔女の哂笑が響き渡っていた。
成功
🔵🔵🔴
ナナ・モーリオン
戦いになるって、聞いた。ボクも……ボクたちも、手伝うね。
哀しい声が聞こえたの。
死んで、死ねなくて、死にたくて、死にたくなくて、どうにもならない、哀しい声。
ちょっと強引だけど、終わらせてあげよう。
一緒に行こう、小さな怨嗟の獣たち。
みんなまとめて、終わらせてあげよう。
恨む相手を間違えちゃダメって、教えてあげなくちゃ。
…あ、でもボクは動けないから、近くに来る相手からはちゃんと守ってね。
ボクからあまり離れすぎないように。
それに、ボク以外にも、狙われてる人が居たら守ってあげて。
浅沼・灯人
前哨戦ってやつか?
慣れない土地だし敵も多そうだし下準備は必要だな
人手も欲しい
誰か組めるやつがいたら同行させてもらおう
必要なのは地図、目的地までの現地人の情報だ
仕入れられたなら歩きやすくなるが、なければ自力で進む
魔獣は足跡や木の傷などを便りに、
亡者は灯火を目印に距離を測る
隠密行動を心掛けるが、奇襲できれば運が良い方だ
魔獣は遭遇すれば殺しきり、死体も残さず焼く
死体が残って、万が一にも亡者が増えるのは御免だ
慎重に、確実に、仕留めて減らす
亡者の炎の影は俺自身の炎で相殺を試みる
こいつら自身も倒せるなら塵も残さず焼き払おう
お前の炎では俺の灯りは消せねぇよ
俺の命は、燃料は、そう簡単に尽きたりしねぇんだ
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
さて、先の子との約束、果たさねばなるまいな。その前に、肩慣らしとでもいこう。
亡者どもに阻まれていては、例の騎士にたどり着くこともできなかろう。消耗は避けたい、呼び出した死霊騎士と死霊蛇竜に任せて、私自身は回避に徹する。
とはいえ、こいつらを呼び出している最中はほぼ無防備だ。誰かと連携ができるなら、それに越したことはないな。
⚫篝火墜つ
遠くで響く轟音を聞いた気がした。
ふと顔を上げたナナ・モーリオン(スケープドール的なモノ(本人談)・f05812)はその音に目を細めたが、やがてしっかりと前を見据えるように揺れる篝火を見る。自分だけではなく、遠くでも猟兵が戦っているのだろう。ならば自分もやるべきことは、ただひとつだ。
「一緒に行こう、小さな怨嗟の獣たち」
篝火を見据えたまま小さくナナが囁くと、彼女の影から生まれ出るように黒々しい怨念の炎を宿した動物たちが形を成していく。小さな猫と、小さな犬。その怨念の化身こそが、彼女の武器なのだろう。
ナナにはずっと、哀しい声が聞こえていた。
死んで、死ねなくて、死にたくて死にたくなくてどうにもならない。この世のすべてを嘆くような、そんな哀しい声がずっと響いているのだ。だからこそナナはここへ来た。皆まとめて、終わらせてあげるために。
「……先の子との約束、果たさねばなるまいな」
ナナが生み出す怨念の化身に共鳴するかのように、時を同じくして ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)の足元からも怨念の化身は生み出された。怨念を根幹に抱えた存在であることは同じだったが、しかしその姿かたちはまったく異なる。ニルズヘッグが召喚したのは騎士、そして蛇竜を象る死霊である。
死霊術士の成せる技は素晴らしい叡智の結晶だが、その扱いはひどく難しい。怨念の化身を召喚した者は、その存在を固定することに集中しなければならず、戦闘に注力することは出来ないのだ。それはつまり、自分を庇う手立てがないということに他ならない。
しかし、幸いなことにこの戦場ににいる死霊術士は1人ではなかった。
そして。
「ーーよう、背中は俺が預かるぜ」
戦うことの出来ないふたりの背中を守るように、浅沼・灯人(ささくれ・f00902)が不敵に笑った。
この場に猟兵は3人。篝火の亡者は多いが、敵わない敵ではない。灯人はうまく連携出来るように位置取りながら無骨な鉄骨の如き巨大剣を構える。
「……ありがとう。さあ、ボクたちも始めよう。恨む相手を間違えちゃダメだって教えてあげなくちゃ」
無防備になってしまう背中を預けたナナがそう言うが早く、彼女の召喚した子犬と子猫が飛び出していく。どれだけ可愛らしい姿かたちをしていようとも、しかしその正体は怨念の炎を宿した怨念の化身だ。2匹は黒々しい炎を身に纏いながら瞬く間に戦場を駆けると、亡者の喉笛を食い千切っていく。
そして2匹に続くように、ニルズヘッグの呼び出した死霊の騎士も剣を振り捌き、蛇竜が戦場を這いずり回る。その力は強く、戦場を照らす篝火は見る見るうちに消えていくように思えた。けれど。
初めに気付いたのは、慎重に戦場を見据えていた灯人だった。
消えたはずの篝火が、倒れ伏していたはずの亡者が、ぽつりぽつりと起き上がりまた増えていく。篝火は、減っていない。
「体ごと燃やさなきゃダメだ! コイツら、倒れてようが何だろうがお構いなしたぞ!」
それもそのはず。篝火の亡者たちは、倒れ伏した亡者までもを操り再利用しているのだ。いち早く気付いた灯人はこれでは力を消耗するばかりだと小さく舌打ちすると、守りに徹してばかりはいられないと前に出ようと動いてしまった。その隙を縫うように、亡者の篝火から放たれた炎が猟兵へ襲いかかる。
赤々と燃えた敵の炎に狙われたのは、当然のようにニルズヘッグとナナだった。けれど、死霊を操っている己は動けないことを知りながら、ふたりは吠える。
「ーー行け!」
「ーー行って!」
攻勢に出た灯人の背中を押すように、戦場にニルズヘッグ
とナナの声が響く。その声に心得たとばかりに頷いた灯人は、振り返らない。
駆けて行く灯人が自らの体を切り裂き噴出させた地獄の炎が、戦場に燃え広がっていく。これ以上死体が残ったまま増えないように、篝火ごと呑み込むように紅蓮の炎は燃えている。
「お前の炎では、俺の灯りは消せねぇよ!」
そして。
ニルズヘッグとナナへ炎を向けた篝火の亡者へ、灯人は放たれた紅蓮の炎ごと襲い掛かり、掲げた巨体剣で切り裂くのだった。
大成功
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第3章 ボス戦
『異端の騎士』
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POW : ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:神手みろふ
👑17
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
⚫Interval
すべて燃やし尽くし、すべて死に絶えた戦場の先。
篝火が消えて暗くなったそこに、古びれた屋敷はあった。
屋敷も同様に暗く、月明かりに照らされるばかりだったが、猟兵が訪れるとまるで迎え入れるかのように屋敷の灯りが点っていく。
そして、鈍い音を立ててーー屋敷の扉は開かれた。
イデアール・モラクス
フン、私を待ち構えようとは…生意気だな。
屋敷ごと燃やしてやろうかと思ったが気が変わった、串刺しにして嬲り殺しにしてやろう。
・戦法
「堕ちた騎士…私を出向かせた代償を払う用意はいいか?」
騎士を見据えたら高速詠唱で鏖殺魔剣陣を展開、全力魔法を乗せ一気に放つ。
「貴様は串刺しの刑だ!」
遠距離から大威力の先制、向こうも反撃してくるだろうが遠距離魔法戦なら遅れは取るまい。
「もう焦れたか?
早い男は嫌われるぞ!」
距離を詰めて来たら鏖殺魔剣陣で迎撃しながらも煉獄の大鎌を取り出し、薙ぎ払いで応戦。
「私とヤリたいのかぁ?
なら下は貴様だ!」
近接戦でもただ負けはしない、大鎌で串刺しにして踏みつけ、傷口を抉り生命力を奪う。
アルコーン・アフェシス
これは何とも恐ろしい。
怖気がついて、震え上がってしまいそうです。
(大仰に。そして、含み笑いを隠そうともせず)
私一人で向かうなど、とてもとても……。
ですので、このような手も致し方ないことかと。
(からくり人形『あの子』にダガー『指切り』を持たせて先行させ、遠距離から近接戦を仕掛ける。技能:先制攻撃)
(『あの子』を抜けて近付いてきたならば、ただの繰り糸を装っていた両の手の『繋がり』で奇襲。技能:2回攻撃・傷口をえぐる)
これでも、止まりませんか。
予定が狂いましたね……見逃していただくことは?
(ここまで全て仕掛けとして、最後に攻撃を受ける瞬間。本命の【オペラツィオン・マカブル】。技能:早業・だまし討ち)
●異端の騎士
「どうやら我の歓迎はお気に召さなかったらしい」
鈍い音を立てて扉が開かれると同じくして、足を踏み入れた猟兵たちをそう言って迎えたのは豪奢な仕立ての黒い鎧に身を包んだ騎士だった。先打つでもなく、緩慢な動作で猟兵たちを振り返った彼こそが予見された異端の騎士なのだろう。その声は尊大な仕草とはうって変わりまだ若いように思える。しかし、全身を鎧に包んだ騎士の全貌を察することはできない。
「亡者共も所詮は家畜の成れの果てか……」
使えないな。
心まで凍えるような、冷めた声が落とされる。誰に聞かせるでもない呟く程度の声はしかしこの静かな屋敷ではよく聞こえた。
「……これは、何とも恐ろしい。怖気がついて、震え上がってしまいそうです」
冷気さえ漂うような屋敷で、アルコーン・アフェシス(ロトゥンフラット・f00510)は笑った。その大仰な口振りとは裏腹に、含み笑いを隠す気もなければその深い夜のような漆黒の双眸も笑ってなどいない。その瞳は真っ直ぐに異端の騎士を射抜き、見据えている。そして、それはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)も同じだった。
「ふん、堕ちた騎士め。私を出向かせた代償を払う用意はいいか?」
「――この世界にまだ、我ら上位種に歯向かう者がいたとは」
異端の騎士の冷めた声色に、僅かに愉悦が混じる。
この夜と闇に覆われた世界、ダークセイヴァーは既に100年にも及ぶ長い年月を異端に服う者たちが支配している。それは絶望に満ちた世界だ。すべてが彼らの完全な支配下にあり、もはや暴虐に逆らう者などいなかった。
しかし、猟兵は違う。このとき異端の騎士が見せた変化は、僅かばかりの興味だったのかもしれない。
「御託はいらん。――貴様は串刺しの刑だ!」
騎士の思惑などどうでも良いと言わんばかりに先手を取ったのはイデアールだ。高速詠唱により空中に展開された無数の鏖殺魔剣陣は魔力によって構成された剣を召喚し、イデアールの視線の先、異端の騎士に向かって一斉に放たれる。
その魔力の細密さは命中率にも影響しているのか、鏖殺魔剣陣は寸分の狂いもなく異端の騎士へ向かって空を駆け抜けて行く。そして、その横を剣にも負けぬ速さで異端の騎士に距離を詰めたのは1人とからくり人形だった。そう、この場にいる猟兵は1人ではない。このからくりはアルコーンが操っている人形なのだ。
「ああ、恐ろしすぎて私にはとてもとても……。ですので、このような手も致し方ないこと」
笑みは変わらない。指切りと名付けられたダガーを持った『あの子』が駆けて行くのを見守りながら、アルコーンはその目を弓なりに細める。大仰な言葉も、態度も、彼なりの考えがあってのことだった。
2人の目にも留まらない速さの先制攻撃は、攻撃を避けようとする様子さえ見せなかった異端の騎士にしっかりと打ち込まれた。先制攻撃とはいえ、そこに油断はなかった。魔力によって高められた、全力の攻撃だった。だが、異端の騎士が怯むことはない。
「―――他愛ない。この程度か、牙を持つ者よ!」
攻撃を受けて見せた異端の騎士が吼えれば、ごう、と屋敷全体が揺れるように響いた。そして。異端の騎士に共鳴するかのように、闇の底から現れた漆黒の軍馬が嘶く。
異端の騎士は漆黒の軍馬に跨ると、その身の丈ほどある大剣に手をかけた。それは異端の騎士のために誂えられたものなのだろう。鎧と同じように黒に染まった大剣は、しかし抜刀された瞬間に見る見るうちに先端から溶け出していく。色を変えて散っていくそれは、血のような色をした薔薇の花びらだ。
花びらはあっという間に広がり、イデアールとアルコーンに襲い掛かった。
「もう焦れたか? 早い男は嫌われるぞ!」
自らに近づく花びらをイデアールは取り出した煉獄の大鎌で薙ぎ払う。異端の騎士が此方に近づく様子はなかったが、敵の攻撃もある程度予想していたイデアールには応戦する程度なら造作もないことなのだろう。
しかし。
「っ……!」
からくり人形を操っていたアルコーンは、そうもいかなかった。花びらによる攻撃をまともに受けてしまったアルコーンは、小さく呻いて後退する。
それは、彼が見せた隙にも思えた。しかし、そうではない。彼は初めから攻撃を受けることさえ見越していたし、それを含めた上での策を講じていたのである。
「予定が狂いましたね……見逃していただくことは? ――なぁんて、ね」
オペラツィオン・マカブル。
それがアルコーンの本命だった。花びらを受け止めた彼のダメージは無効化され、その瞬間、からくり人形から排出された攻撃が異端の騎士へと襲い掛かる。
「何ッ!?」
それは騙まし討ちのようなものだ。しかし、戦闘にはそれも有効な手段である。
異端の騎士の余裕はこれによって崩れたも同然だろう。自らを上位種として立てた尊大な態度は、猟兵たちの手によって圧し折られたのだ。
予想の範疇を超えた攻撃を受けた異端の騎士はそこではじめて、声を荒げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ようやっとたどり着いた……というところだな。とっととカタをつけて、少しでも平穏を取り戻さねばならん。
勝率を上げるためである。共闘できる者があれば、共に戦いたいものだ。
速攻勝負の一筋縄――というわけにも行くまい。【ドラゴニック・エンド】の発動のためでもあるが、まずは槍を使って奴の動きを鈍らせたい。
なるべく、腕なり足なりを狙って動くこととしよう。
呼び出すのは黒い蛇竜である。こいつの牙は中々痛いぞ。並みの鎧で防ぎきれるか、試してみるがいい。
【呪詛】が通じる相手なら、隙を見て叩き込んでやる。多少の役には立つだろう。
浅沼・灯人
ようやっとご対面だな。
……亡者共とは明らかに違う、目に見てわかる強さだ。
まだ気は抜けねぇ、攻め込むぞ。
俺は前に出る。
ここまでのように誰かがいるってんなら、背中は任せた。
序盤は敵の様子や癖を見るために防戦気味に。
相手の癖を見極めれば、弱点も見つけやすくなるだろう。
対策だって練りやすい。
が、仲間への攻撃があったなら鉄塊剣で受けて庇う。
多少の傷では怯みはしねぇよ。
ある程度動きを見たなら灼焼で焼き尽くす。
薔薇も、軍馬も、流した俺の血さえも、全部だ。
地獄の炎よりも熱い、俺自身の炎だ。
ちぃっとばかし熱いけどよ、蒸発するくらいがちょうどいいだろ?
そうだ、俺達は、てめぇを狩りにここまで来たんだ。
「おっと、俺たちの相手も頼むぜ」
声を荒らげる異端の騎士に向かって、 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)は不敵に笑う。異端の騎士は亡者たちとは明らかに強さが違う目に見えた脅威ではあったが、しかし猟兵たちには背中を預けられる仲間がいる。異端の騎士がどれだけ強かろうとも怯みはしないと鉄塊剣を向けて見せた灯人の瞳には強い意志が灯っていた。
「俺は前に出る。背中はアンタに頼むぜ」
「良いだろう。とっととカタをつけて、少しでも平穏を取り戻さねばならん」
灯人の隣に立ったニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は深く頷くと、自ずと槍を構えて異端の騎士を見据える。脳裏に描いた村の子供のためにも。この世界のためにも。このオブリビオンを倒さねばならない、その決意を秘めて。
「家畜共がーー我を倒せるものかッ!」
猟兵たちが構えるがいなや、漆黒の軍馬を嘶いて異端の騎士が広間を駆け抜ける。形を取り戻した大剣は、黒く鈍い光を伴って煌めいた。
ガキン、と音を立てて反響したのは刃と刃がぶつかる音だ。異端の騎士の剣戟を受け止めた灯人は敵の癖や弱点を見極めようと視線を逸らさずに防戦に出たが、しかし。
「付け上がるなよ、下等種族が!!」
異端の騎士は怒号とともに、更なる力を加えてその鍔迫り合いを振り払う。その切っ先は灯人の腕を掠め、痛みに顔を顰めた灯人は追撃を受ける前にその場から飛び退かざるを得なかった。
「私たちは1人ではないぞ!」
飛び退く灯人の影から、二ルズヘッグが飛び出す。突き出された矛先が狙うのは異端の騎士の四肢だった。腕でも足でもいい、手数を奪いその動きを鈍らすことが出来たなら勝機はこちらにあるはずだと信じた二ルズヘッグの攻撃に、異端の騎士が応戦する。紫電一閃の煌めきが音を立てて屋敷に響いていた。
そして。
ついに、二ルズヘッグの矛先が異端の騎士の関節を貫いた。鎧の隙間を通り届いた関節への一撃に、一瞬異端の騎士の攻勢が止まる。二ルズヘッグはその成果に口角を上げると、次なる攻撃に打って出た。
「こいつの牙は中々痛いぞ。並みの鎧で防ぎきれるか、試してみるがいい!」
命中した一撃を媒介とし、二ルズヘッグの足元から召喚され現れたのは一匹のドラゴンだ。その大きさは中々のもので、天井が崩れ薄暗い屋敷にも月明かりが覗く。ドラゴニック・エンド。月明かりに照らされたドラゴンは、どこまでも深い闇のように黒い邪竜の姿をしていた。
「はっ、それが貴様の力ということか。ならば、我も見せてやろうーー」
再び。異端の騎士が手にしていた大剣が溶けてゆく。
しかし、移ろうその姿かたちは先のような花びらではない。剣先に付着していた灯人の血液を代償として、封印が解放された大剣は殺戮喰血態となったのだ。その殺傷力は先程までの比ではないだろう。だが、それでも怯まずに猛々しく灯人は叫ぶ。
「薔薇だろうが、剣だろうが、俺の血だろうが何でもいい! すべて、すべて燃やし尽くす。地獄の炎より熱い俺の炎が!」
二ルズヘッグの邪竜が吐く呪詛の炎が、灯人が己さえ血を燃やした地獄の炎が、燃え盛り踊り狂う。崩れた屋敷、燃え広がる炎。けれどその中でも、異端の騎士は炎さえ切り裂いて笑っていた。
「やって見せるがいい。炎なぞ、この切っ先で斬り伏せてやるわ!」
ぶつかり合うのは真正面からの、純粋な力勝負だった。どちらの思いが、力が、そしてその意思が勝るのか。そこに目に見える勝機がなくとも、猟兵は負ける訳にはいかない。
「やってやるさ! そうだ、俺達は、てめぇを狩りにここまで来たんだーー!」
灯人の声に応えるように炎は踊る。
戦いは、まだ終わらない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルトリンデ・エーデルシュタイン
暴虐を行う存在、見過ごす事はできません。他の方々に続いて私も戦いましょう。
かの騎士はこれまでの戦闘での消耗もあるはず。剣を抜き、攻める手は緩めずに斬り結びながら騎士の動き……負傷による隙を探ります。深追いして反撃を受けないように注意しながら慎重に。
隙が探れた頃か、剣を花弁に変える攻撃を仕掛けてきたら【聖光示すは神苑の階】を使用します。範囲攻撃を散らし、騎士を囲うように聖なる光を放って聖域を敷き、私の動きをより早く、鋭く。相手が慣れた今までの動きを上回る速度で相手の隙を突きます。その後は力の続く限り聖なる光と剣で攻めていきましょう。
たとえ祈りが天に届かずとも……貴方に剣を届かせる事は出来ます。
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
――ひぃ、う、うう!行かなきゃ、行かなきゃッ!戦わなきゃ、村を助けるって約束したっ……したのっ……!
倒して、この世界も救わないと、ああでも、でも、でも私ッ、私は何が……!
落ち着いて、考えないと、焦らないで……!状況的に、今、は、ぶつかり合っているなら
いま、トリガーピースで【騙し討ち】を使えば、【謎を喰らう触手の群れ】で……対抗できるかもッ!――【ヘイゼル】!
『かッははは!わざわざ攻撃特化の【俺様】に変わるたぁ、ガチじゃねェか!
いいぜ、――お高くとまった騎士さまよォ。ツケがたまってんだ、お前の命そのもので、村ひとつぶん――返しやがれッッ!!!』
(アレンジ歓迎です)
イデアール・モラクス
フン、しぶとい奴だ…その気概に免じて私が手ずから殺してやろう!
・戦法
「堕ちてもなお騎士の誇りは失わず…か、結構な事だ。
だが、私はそんなものに付き合うつもりなど毛頭ない!」
高速詠唱、全力魔法を乗せて色欲の触手を大量に放つ。
四肢を拘束し、鎧の間に触手を這わせ、完全に動きを止める事で自分と他の猟兵が攻撃する隙を作る。
「イイ格好だ…今、逝かせてやる」
触手で動きを封じたら煉獄の大鎌を取り出し、その刃で串刺しにして更に動きを封じ、突き刺した刃で傷口を抉りながら吸血、踏み付けにして息の根を止める。
「私に殺されるのだ、悦んで旅立つがいい」
緋翠・華乃音
……前衛は充実している様子。だったらいつも通り、俺はスナイパーとして援護に徹させて貰おうか。
狙撃に適した場所に身を潜め、優れた「視力」を生かしつつ最低限初弾だけでも奇襲になるよう身を隠し、「スナイパー」として攻撃を行う。
メインは味方前衛への「援護射撃」
射線が割れたら潜伏場所を移動して狙撃再開。
良くも悪くも戦況が傾いたら接近戦へと移行。
毒塗りのダガーとナイフ、白銀の二挺拳銃、鋼糸等多彩な武器を使い分けて、敵の攻撃を「見切り」つつ、隙を見ては「二回攻撃」で畳み掛ける。
ユーベルコードは奇襲の側面が強い為、無駄打ちせずに確実に決めれるタイミングで使用。
●夜と闇に覆われた世界
戦いの夜は未だ明けない。
炎が猛り半壊したその屋敷で、異端の騎士との戦いは均衡していた。しかしその均衡の終わりも近いのだろう。慎重に戦場を見極めていたアルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)は、変わりゆく戦況の中で確かに異端の騎士の消耗を感じ取っていた。
「どうした! 防ぐだけでは我は倒せぬぞ!?」
響く剣戟と、騎士の怒号。消耗さえ打ち消すほどの猛攻がアルトリンデに迫る。
アルトリンデはその猛攻を交わすように斬り結びながら、なおも冷静に戦況を見極めていた。深追いすることなく、一見防戦の一手に見えるその行いは、騎士の消耗に隠れた勝機の瞬間を得るために他ならない。
そんな彼女を援護するのは緋翠・華乃音(ambiguous・f03169)の打つ援護射撃だ。スナイパーとして潜伏していた彼は、アルトリンデの防戦を支えるように異端の騎士を狙撃していく。
やがて、その瞬間は来た。
「――隙あり、だな」
異端の騎士の大剣がゆらりと溶け、薔薇の花びらへ移り変わっていくその瞬間。そこに出来る小さな隙を、華乃音とアルトリンデは見逃さなかった。
異端の騎士の手から大剣が離れる瞬間、その背後に移動した華乃音は僅かな時間で複数の銃弾を続けざまに撃ち込む。そして、その流れに乗るアルトリンデもまた剣を掲げるようにして高らかに声を上げた。
「天よ光を与えたまえ。我らが闇に惑わぬよう、神の庭へと至る道を照らしたまえ――!」
それは、薔薇の花びらごと掻き消してしまうような強い光だった。
異変を感じ取るが否や、すかさず薔薇になり損ねた大剣を払い距離を取った異端の騎士が見たのは屋敷に降り注ぐ聖なる光。あと少しでも飛び退くのが遅ければ、その光は異端の騎士を焼き払っていたことだろう。
「貴様、聖者か……ッ!」
異端の騎士に僅かな動揺が走る。その聖なる光は、彼にとってあまりにも相性が悪い。屋敷に降り注いだ聖なる光が聖印となり、周囲一帯が変化していくのが肌で分かった。ここは最早、異端の騎士の領域ではなくなったのだ。
「例え祈りが天に届かずとも……あなたに、剣を届かせることは出来ます」
必ず、あなたを倒して見せましょう。
援護をしてくれた華乃音と目を合わせ頷くと、聖なる光に誓うようにアルトリンデは再び剣を握り締めるのだった。
一方で。
聖なる光が屋敷を包む中、か細く乱れた呼吸を抑えるようにヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は心の内と戦っていた。
行かなきゃ、行かなきゃ。自分も戦わなくては。村を助けると、約束したのだから。
「ああでも、でも、でも私ッ! 私に何が……ッ!」
頭を掻き毟るように抱えたヘンリエッタが強く唸る。
落ち着いて考えなくてはならない。落ち着いて、焦ってはいけない。この状況で、今、自分が出来ることを考えなくてはならない。対抗できる術を考えなくてはならない。逸る思考の中で、ヘンリエッタは自分の片鱗を手繰り寄せる。
「ああ、そうよ、そうだわ! ――【ヘイゼル】!!」
そして。顔をあげたヘンリエッタが異端の騎士を見上げる。
いつの間にか乱れていたはずの呼吸は落ち着いていた。聖なる光を映すようにきらきらと光る銀色の瞳は、いびつに歪んでいる。自分は今、泣いているのだろうか。笑っているのだろうか。ヘンリエッタにはもう分からない。何故なら今の自分は――、
「――お高くとまった騎士さまよォ。ツケがたまってんだ、お前の命そのもので、村ひとつぶん――返しやがれッッ!!!」
今の自分は、もうヘンリエッタではないのだから。
「ほう、あの女――ただの臆病者ではないようだな」
それに中々良い趣味をしている。
豹変したヘンリエッタが召喚した夥しい触手を視界に収め、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は唇を釣り上げる。触手から現れた悍ましき呪われた狗の群れが異端の騎士へは食らいつく中、そうしてイデアールは自分も続くように空中に浮かべた無数の魔方陣から色欲の触手を放つのだった。
「このッ、家畜共がぁぁ!!!!」
アルトリンデが見極めた異端の騎士の消耗は、とうに限界を過ぎていた。度重なる
猟兵たちの攻撃はいかに強靭なオブリビオンだとしても決して耐え切れるものではない。
異端の騎士は最後の力を振り絞り触手を切り払うが、ヘンリエッタとイデアールが呼び寄せる触手の数はあまりにも多く、また華乃音の撃つ銃弾が、アルトリンデの成した聖なる光が、そして聖域が異端の騎士を更に追い詰めていく。
そうして追い詰められた異端の騎士は触手に絡め取られ、壊された屋敷にて、手から滑り落ちた剣と共に床に膝を着くこととなった。
「私に殺されるのだ。悦んで旅立つがいい」
薄汚れた鎧ごと貫いた煉獄の大鎌に、異端の騎士が手を伸ばす。けれど、その手が掴むものは何もなかった。
イデアールによって踏み付けられた異端の騎士は、その兜の奥で何を思ったのか。それを知るものは誰もいない。知る必要も、きっとないだろう。
やがて砂のように崩れた異端の騎士だったものが、吹き荒んだ一陣の夜風に消えていくのを見つめて、猟兵たちはその夜の戦いに幕を下ろしたのだった。
●夜明けの灯
寂れていたはずの村に、歓声が響いていた。
異端の騎士がいた屋敷で囚われていた村人たちが解放され、異端の騎士によって支配されていた村に戻ってきたのだ。息子と再会した老人、両親に抱き上げられ笑う子供。娘と抱き合う老婆。村人たちは笑顔で、去っていく猟兵たちを見送った。
村を支配していた異端の騎士はもういない。夜と闇に覆われたこの世界が朝を迎えるのは、まだずっと先のことかもしれない。けれど確かに、この寂れていた村は救われたのだ。
その夜。歓声の止まないその村を、笑う三日月だけが見守っていた。
大成功
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