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ドミノ君を止めてくれ

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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 キマイラフューチャーの片隅で、とある遊戯がブームを巻き起こしていた。
 それはずばり――ドミノ倒し!
 あの並べて倒すアレだ。実は倒す以外にも遊び方があるのだが、かつての人類は並べる事に躍起となり数百万個並べたとか並べてないとかいう記録があるとかないとか。
 ともかく、このドミノ倒しがごく小さな区域でめちゃくちゃ流行してしまっていた。
 ただそれだけなら、何も問題ないように思えるが……!

●危険な流行を止めよう
「――このブームは自然発生したものではないのです」
 グリモア猟兵の一人“テュティエティス・イルニスティア”は、一同を見回して言った。
「怪人。そう、キマイラフューチャーを脅かすオブリビオンである怪人が、善良で純粋なキマイラの皆さんを扇動しているのです」
 目的は、ドミノではしゃぐキマイラを撮影してネットにアップすること。
 それが旧文化、旧人類の凄さの喧伝に繋がり、ひいては世界破滅の危機を呼ぶ、とか。
「申し訳ありませんが、私の予知では怪人の正体まで掴むことが出来ませんでした。ですが敵の狙いを考慮すると、流行に横槍を入れれば尻尾を出すはずです」
 まずはドミノブームを止めましょう。
 そう呼び掛けて、テュティエティスはさらに説明を続ける。

 猟兵達がテレポートする先は、キマイラフューチャーの街中。
 そこでは多数のキマイラが熱心にドミノを並べているだろう。
 どうやら、とにかく長く、とにかく多くが特にブームの最先端になっているらしい。
 また、ドミノ牌は現場付近でコンコンすると幾らでも湧くそうだ。
「キマイラの皆さんの意識を新たなブームに向けるか、往来でドミノという遊戯を行う問題点を指摘するか、またはドミノブーム自体を怪人から猟兵のものに乗っ取ってしまうか。効果的と思われる方針については、以上の三つがあります」
 キマイラ達はおもしろおかしく暮らしている種族であるから、何をするにしてもより単純で分かりやすく、そして面白いと思わせるような方法を採った方がよさそうだ。
 加えて、猟兵が猟兵であることは最大限利用すべきだろう。このキマイラフューチャーにおいて、猟兵が“怪人をやっつけるめちゃくちゃカッコいいヒーロー”として認知されている利点を活用しない理由がない。
「無事にキマイラの皆さんを解放できたなら、騒動の根源である怪人との戦いになるでしょう。ある種の情報工作を行うような怪人ですから単純に戦って終わりとはならないかもしれませんが……皆さんなら高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応できるはずです」
 ぜひとも、ご助力願います。
 テュティエティスは一同に礼をすると、自らも準備に移った。


天枷由良
 天枷由良です。よろしくお願いしますね。

 シナリオ全体の目的は、
『ドミノブームを止め、扇動していた怪人を倒すこと』
 ですが、その為にどうするのかは猟兵の皆さん次第であります。
 能力ごとの方針を基準に、どうぞ様々な挑戦をしてみて下さい。

 またプレイングの取り扱いについて、
 特に記述がないものに関しては、三名程度まで組み合わせるかもしれません。
 お一人の描写をご希望の場合は、プレイング冒頭に【1】と。
 ご友人などで協力なさる場合は、共通したチーム名などをご記入下さい。

 それでは、ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『ブームを終わらせろ』

POW   :    熱意と勢いで新たなブームを広める

SPD   :    怪人が広めたブームを乗っ取る

WIZ   :    文化の問題点を指摘する動画をアップする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

影守・吾聞
並べて倒すだけしか知らないなんて、味気ないなぁ
他の遊び方も楽しいよって伝えてみようかな

ということで、ドミノを使ったゲームのルールをみんなに伝えることで
怪人のブームを乗っとるよ!
ルールは事前にしっかり『情報収集』して把握しとくね

今回の現場で説明するのは、ファイブアップってゲームだよ
複数人でやるものだから
【バトルキャラクターズ】で説明用の面子を呼び出して実演するね

使う牌の種類はこれで、手札は5枚
山札が尽きた場合はパスして
最後に点数を計算して……とゲームを見せつつルールを解説

ねえねえ、みんなもやってみない?
とキマイラたちを遊びに誘ってみるよ


アリシア・マクリントック
うーん、そうですねぇ。ドミノ倒しも面白いですが、せっかくですしここは本来の知的なゲームの「ドミノ」を皆さんにご教授いたしましょう。
使うのは二つのサイコロの目が描かれたドミノ牌。
基本ルールは簡単です。場札の末尾と同じ目を含む牌を手札から出して並べていくだけ……出せる人がいなくなれば終了、残った手札の目の合計が少ない人が勝ち、というものです。
トランプがそうであるように、ドミノにも様々なゲームがあります。
端の合計が5の倍数になればその値に応じた点が入り、合計を競うゲーム。
両端の目がそろえば点が入り、目標に達したら勝利というゲーム。
最初は難しいかもしれませんが、慣れると面白いものですよ。



●Case1
「並べて倒すだけしか知らないなんて、味気ないなぁ」
「そうですねぇ。ドミノ倒しも面白いですが……」

 此処は一つ、ドミノ本来の遊び方を教えてやろう。
 影守・吾聞とアリシア・マクリントックは、牌を並べるキマイラ達へと歩み寄った。

「ねえねえ! ドミノで遊ぶなら、もっと楽しい遊び方があるよ!」

 吾聞の呼び掛けに、すぐ何人ものキマイラが身体をぴくりと動かす。
 楽しい。その単語にとりあえず反応を示し、とりあえず食いついてみるのは同じキマイラの吾聞なら分かるところだろうか。
 ともかく注意は引きつけられた。
 ここからが二人の腕の見せどころ。

「まずは基本の、簡単なルールをご教授いたしましょう」

 アリシアが賽の目柄のスタンダードなドミノ――所謂“ダブルシックス”を用意して語りだす。
 内容は宣言した通り、ごく単純な遊び方の説明だ。
 伏せた牌を配って手札とし、場に置かれた牌の数字と同じ目の牌を並べて繋ぐ。
 誰も場に出せなくなった時、残った手札の目の合計が一番少ない人が勝ち。
 たったそれだけで面白いの? なんて声も上がるが、しかしこれが始めて見ると意外に奥深い。
 場に出ているもの、自らの手にあるもの。それらから他の人が持つ手札も想像しつつ、なるべく目の多い牌を処理していこうとすれば、多少なりとも頭を使わざるを得ない。
 そして頭を使うということは、他に意識を向ける余裕がなくなるということ。
 キマイラ達の思考は賽の目の扱いに塗り替えられていく。そこに在ったはずの“怪人が流行らせたドミノ倒し”は、過ぎた遊びの宿命として納屋の奥底――キマイラ達の記憶の彼方にしまいこまれてしまう。

「だんだん慣れてきたみたいだから、もっともっと面白いゲームをしてみようよ」

 頃合いを見て、今度は吾聞が納屋の施錠にかかった。
 事前の『情報収集』で、教えようとするゲームのルールはバッチリ把握済み。分かりにくいところがあれば噛み砕いて伝えられるだろうし、質問が来ても狼狽えるような事にはならないはず。
 それではまず最初にと、実演用のゲームキャラクターを十六体ちょちょいと召喚。
 猟兵たる吾聞の技に、キマイラ達もぐっと期待の眼差しを向けてくる。
 なんだろう? それでなにするんだろう!? ……同族ながら少し笑ってしまいたくなるほどの熱量だが、それはつまるところ企てが上手く進んでいる証。
 次に、吾聞はキャラクターを四人に纏めた。そのままだと、ちょっと多い。
 折角だから額の刻印が6、4、3、3と強さに差が出るようにしてみよう。そもそもが戦闘用の存在であるが、まあ、ブームの乗っ取りもある種の戦い。
 そうだ情報戦だ。そう考えれば、上手く働いてくれるはず。
 いざ、実戦実演。とはいえ、基本的なルールはそのまま。
 そこに『牌の列の端にある目の合計が5の倍数になったら、それを5で割った値を、その時牌を置いたプレイヤーの得点にする』というルールを付け加える。
 これが“ファイブアップ”というゲームだ。現世地球では半世紀以上も前に考案されたものだが、本当に面白いものはいつまで経っても面白いもの。
 何より、必要なのはドミノ牌と、一緒に遊べるお友達だけ。
 前者はコンコンすれば幾らでも湧いてくるし、後者は此処に集う善良で純粋なキマイラ達にとって問題にもならない。

「――最後に点数を計算して、一番多い人が勝ち! どうかな? 今度はこのルールで、みんなもやってみない?」
「他にもドミノには様々なゲームがありますよ。最初は難しいかもしれませんが……慣れると、どれも面白いものですよ」

 勝ち誇る“6”のゲームキャラを傍らに置いて、二人はもう一度呼び掛ける。
 それに対する、キマイラ達の反応は――。

「――やるー!!」「一緒に遊ぶー!」「もっかい教えて教えてー!!」

 上々だ。
 何処かで怪人が見ていれば、身悶えしたに違いない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

竹城・落葉
 ドミノだと?成程、とても面白い遊びのようだな。我は、ドミノの新しい遊び方を提案するとしよう。
 我が提案する遊び方は、ずばり『人間ドミノ』!人間をドミノに見立て、次々に倒れ込む事によってドミノを再現するのだ。従来のドミノであれば繊細な動作しかできないが、人間ドミノであれば体を大いに動かせる分、別の楽しみを感じるだろう。
 何、やり方が分からない?仕方ない、我がお手本を見せてやろう。そこで、協力者してくれる住人を募集して実演する。この世界では猟兵はヒーロみたいな扱いらしいから、きっと集まってくれるだろう。
 現在ブームになっているドミノを別の形で流行らせる事で、敵の企みを打ち砕いてやるぞ。



●Case2
「成程、とても面白い遊びのようだな」

 かたかたと音立てて倒れゆくドミノを眺め、竹城・落葉が大仰に頷く。
 口調のそれといい、真剣な際の冷酷な人格が顔を出しているのだろう。およそキマイラ達なら見せそうもない無の表情で歩を進めた落葉は「一緒に並べる?」との誘いを制して、手近な者に宣言する。

「猟兵の我が、ドミノの新しい遊び方を提案するとしよう」

 おおっ!
 キマイラ達は声を上げ、瞳を輝かせた。
 新しい遊び方。そんな言葉だけで胸躍るというのに、めちゃくちゃカッコいいヒーローな猟兵さんが教えてくれるなら、めちゃくちゃ楽しいに違いない。
 なにするの? なにするの?
 待ちきれずに寄ってくるキマイラ達。
 その手に当然の如く握られているドミノ牌を――落葉は受け取らず。
 そしてさらに、自信を持って宣する。

「我が提案するのは……ずばり、人間ドミノ!」
「人間? 人間いないよ! 全然居ないよ!」
「……ああいや、では言い換えよう。キマイラドミノだ!」

 なにそれー!
 先程よりも大きな歓声が上がる。
 それに続くのは、勿論「どうやってやるの?」という疑問。

「仕方ない、我がお手本を見せてやろう」

 だが、一人では見せられない。
 その為の協力者を幾らか募集する――と、落葉の呼び掛けには凄まじい勢いで応募が殺到した。
 さすが、猟兵大人気のキマイラフューチャー。
 人手の借りやすさは他の世界の追随を許さない、かもしれない。

「では、貴様は此処だ。……貴様は、その後ろに」

 期待のあまりに落ち着いていられないのか、そわそわと身体を揺らすキマイラ達に落葉は淡々と指示を出していく。
 やがて短い連なりが完成すれば、自身も先頭から二枚目のところに収まった。

「……? これでどうするのー?」
「終わりー? あんまり楽しくないよー?」
「まあ、待て」

 本番はこれからだ。
 少しばかりのざわめきを抑えて、落葉はいよいよ人間ドミノ改めキマイラドミノの幕開けを告げる。
 それは、つまり。

「……いっくよー! えーい!」

 先頭のキマイラが元気よく声を上げて、倒れた。
 そういうことだ。
 人そのものをドミノ牌とするこの遊びは、誰かが倒れることで始まる。
 続いて落葉が無言で倒れ、その後ろに立つキマイラが驚きながら倒れ。
 あとは玩具のドミノ牌と変わらない。
 勢いづいた流れは、全てが倒れるまで止まらない。
 歓声と悲鳴が入り混じり、街中に響く。

 それから暫しの静寂が訪れれば、ずらりと倒れ込んだキマイラ達に向かって落葉は問う。
 どうだ、楽しいだろう、と。
 だが――。

「いたーい!」「ひじ擦りむいちゃったよー」

 そんな叫び、或いは呟きを漏らしたキマイラ達は、また元のドミノ倒しを始めてしまう。
 中にはキマイラドミノを続けようという者も幾らか見られたが、しかし往来でどたばたと倒れていく事の危険性が、殆どのキマイラ達に二の足を踏ませたのだろう。
 残念ながら、新たなブームとまでは至らなかったようだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルエリラ・ルエラ
また変な事してる・・・
ドミノは楽しいけど怪人が関わってるならなんとかしなきゃ。
ドミノ牌が幾らでも出てくるなら積み木なんかのようになにか作ってみせるのがいいかも。
ドミノ牌でお城とか乗り物とかをその場で作って見せたら皆喜ぶだろうし新しいブーム到来!になるかも?
やるだけやってみよう。



●Case3
「また変な事してる……」
 現場を見たルエリラ・ルエラの第一声はこれであった。
 まあ、キマイラフューチャーの住人でない者としては正しい反応だろう。
 しかし、なんだ、その。
 ルエリラが現れた時、透明な壁の向こうに「また芋煮てる……」と声が響いた事は記しておきたい。

 それはさておき。
 変な事とは評したけれど、ドミノは楽しいものとルエリラも知っている。
 だが、怪人が関与している部分は取り除かねばならない。
 さてどうしたものか。
 ルエリラはちょっと考えた。そしてすぐに答えを出した。
 ドミノ牌が幾らでも湧くのなら、それで何か作ってみせるのはどうかと。

 かくしてルエリラのドミノクラフトが始まった。
 小細工抜きの出たとこ勝負だ。
 お城か乗り物か、とにかくその場で作れそうな物を作ってみようと手を動かす。
 ポニーテールが微かに揺れて、その度に長方形が少しずつ積み上がっていく。

「なになに? なにしてるの?」
「ドミノは並べるんだよ? 積むんじゃないんだよ?」
「……積んだ方が楽しいかもしれないよ」

 外野の声に細々と返して、ルエリラはさらに積む。
 これは「新たなブームを広めようとしている」のか。
 はたまた「怪人が広めたブームの乗っ取り」なのか。
 ルエリラの胸中――新しいブームを到来させようとする心意気を額面通りに受け取れば前者なのだろうが、しかしドミノを用いた流行の矛先を変えるという点からして、後者であるのが適切か。
 何より、その方が色々と捗る。
 ルエリラは強引なブーム変更に必要とされる力より、さらりとブームを乗っ取ってしまうような器用さに優れているのだから。

「……出来た」

 積み重ねること暫くの後。
 ふぅと息吐くルエリラの前には――どうにかそれらしい芋……じゃない。
 それらしい城が築かれた。

「すっげー!」「長く並べるよりすっげー!」

 善良かつ純粋なキマイラ達が揃って拍手を送る。
 その称賛の渦は巡り巡って、次第に好奇心へと形を変えた。
 百聞は一見にしかず。目の前でお手本を見せられた事が奏功したのだろう。怪人の広めたドミノ倒しから、ルエリラが授けたドミノ積みに心奪われたキマイラ達は、かき集めた牌で銘々に楽しい創作活動を始めたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハーバニー・キーテセラ
ドミノ自体が悪い訳でもないですしぃ、折角なのでぇ、ブームを乗っ取ってしまいましょ~
ということでぇ、現在流行中の長く多く並べるというのに対してぇ、倒れた後に絵や文字が浮かび上がるようなぁ、パフォーマンス前提の仕掛ドミノをやりますねぇ
最初ですしぃ、簡単なハートマークとかでぇ
ただぁ、1人だと大変なのでぇ、近くにいるキマイラさん達に概要を説明してぇ、一緒にやるのもいいかもですねぇ
共同作業で距離感も縮められるかもですしぃ

無事に出来たらハイタッチですぅ
ただ、最後に一言付け加えておきますねぇ

ドミノで遊ぶ時はぁ、人の邪魔にならない室内かぁ、決められた場所でやりましょうねぇ~
猟兵のお姉えさんとの約束ですよぉ?



●Case4
 意図的に流行らされたドミノ倒しは止めなければならない。
 だがドミノ倒しという遊戯、ドミノという遊具に罪はない。
 悪いのはそれを利用しようとする怪人であって。
 ドミノそのものが“悪いもの”であるかのように訴える必要はない。
 キマイラさん達が楽しげにしているのを、わざわざ壊す必要もない。

「――ということでぇ」

 ハーバニー・キーテセラは、両掌を軽く二度ばかり叩いて注目を集めた。
 ドミノ倒しに興じていたキマイラさん達が一斉に首を傾げる。
 無理もない。街中で突然――突然エルフのバニーガールに話しかけられたら、キマイラさんだって“ぽかん”とするだろう。
 とはいえ、キマイラさんには見慣れぬ非日常もハーバニーには着慣れた日常。
 むしろドミノを並べる手が止まって好都合。

「もっと楽しいドミノの並べ方ぁ、知りたくありませんかぁ~?」

 ハーバニーは呼び掛ける。
 途端、期待を孕んだざわめきが広がっていく。
 釣れた。反応は十分だ。
 あとはこの、楽しむ事に従順なキマイラさん達を羊飼いの如く導いてやるだけだ。
 まあ、こちとらバニーだけども。

「もっと楽しいってなに? なに? どうやるの!?」
「おしえておしえて!!」
「はぁい。それじゃあですねぇ、まずは赤とかピンクのドミノが欲しいんですけどぉ~」
「あるよあるよ! いっぱいコンコンしたからあるよ!」
「あらぁ~、ありがとうございますぅ」

 ちょろい。
 といえば聞こえが悪いかもしれないが、しかし楽しい事への協力を惜しまないキマイラさん達は何とも扱いやすくて助かる。
 あるよあるよ、いやあれよあれよと言う間に集まった牌を掴み取ると、ハーバニーはまず目の前に一つ置いた。
 続けて二つ、三つ、四つ五つ六つ……あ、まずい。これやっぱり一人だと大変なパターンの奴だ。
 
「ん~とぉ……あの、何人か一緒に遊んでくれませんかぁ?」
「遊ぶの!?」「やるやる!」「どうやるの?」
「え~っとですねぇ」

 この赤いのを此処まで。こっちのピンクは此処まで。
 そうして出来た四角の手前に……白でいいか。これを枝分かれさせていって。

「なんか模様みたい?」「なんか見たことある?」
「どうでしょ~。それは、倒してみてのお楽しみということでぇ」

 整いました出来ました。
 キマイラさんご協力のもと、ずらりと並んだドミノから少し離れるよう告げて、ハーバニーは起点に指をかける。

「瞬き厳禁ですよぉ。……えいっ」

 かたん。
 かたんかたんかたんかたんかたかたかたかたかたかたかたたたたたたた。
 たたたたたたたたた、かたん。

「ハートマークだー!!」
「成功ですぅ。いぇーい」
「イエーイ!」

 ぱちぱちぱちぱちハイタッチ。
 僅かな時間ながら共同作業を行ったおかげか、すっかり打ち解けたキマイラさん達とハーバニーは手を合わせた。
 綺麗に広がったハートマークも、雰囲気作りに一役買っている気がする。

「こうやってぇ、倒れた後に絵や文字が浮かび上がるようなドミノの方がぁ、ただ長く並べるより楽しいと思うでしょ~?」
「思う思うー!」
「それじゃあ皆でやってみましょ~。……あぁ、でもですねぇ~」

 最後に大事なお話が一つ。

「ドミノで遊ぶ時はぁ、人の邪魔にならない室内かぁ、決められた場所でやりましょうねぇ~。猟兵のお姉さんとのぉ、約束ですよぉ?」
「はーい!!」

 それじゃあ俺んちでやろーぜー!
 などと言う声が方々で聞こえると共に、ハーバニー先生の教えを受けたキマイラ達はドミノを抱えたまま散っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

竹城・落葉
 我はリベンジをしようと思う。次に紹介するのは、人間ドミノの改良版だ。今度のものは、次々に倒れる必要は無い。代わりに、全員が色付きの板を持ち、順番に上へかざすように持ち上げるというものだ。それを上から見ると、徐々に絵が浮かび上がるという寸法だ。これなら、安全性が確保される事だろう。最も、やっている住人は見る事ができないが、住人を感動させる事は代えがたいやりがいがあるだろう。
 だが、この紹介をする前に、怪我をした住人には治療を、そして迷惑を掛けた住人には謝罪をするぞ。猟兵が守るべき相手を傷つけてしまうとは、猟兵にあるまじき行いだからな。



●Case2-Re
「先程は済まなかったな」

 何処からか調達した応急セットでキマイラの治療を終えると、落葉は頭を下げた。
 不慮の事故、不測の事態だったとはいえ、ヒーローである猟兵が住民を負傷させるなどあってはならない事だと。そんな真剣さをまじまじと示す落葉に、キマイラ達はちょっぴり驚き、そして笑顔を返した。
 おもしろおかしく暮らす彼らは引き摺らない性質、なのかもしれない。

「それで、我にリベンジの機会を貰いたいのだが」

 落葉は続けて尋ねる。
 反応はまちまちだ。現行のブームであるドミノ倒しに戻りたいという想いと、今度は皆が楽しいものなのかもしれないという期待、半々というところ――いや、後者の方が少々大きいか。
 キマイラ達は、次の言葉を待っている。
 落葉は一つ息を吐き、彼らの前にドミノとは違う道具を差し出した。

「……? なぁに、これ?」
「特別なものではない。皆が持てる程度の板だ」

 板。
 確かに、何の変哲もない。ただ幾つかの色に塗り分けられた板だ。
 これをどうするのか。
 期待に困惑を加えたキマイラ達に目的を説明してから、落葉は再びあちらへこちらへと移動させる。
 整列を終えるまでは、また暫くの時間を要した。

「では、合図をするから順番に掲げてくれ」

 用意が整うと、落葉は集団を見渡せる位置に立って言う。
 何が始まるのか。
 ざわめきが起こり、やがて収まる。
 そして全員の視線が集まったのを確かめると、落葉は片腕を振った。

 ぱっ、ぱっ、ぱっと板が掲げられていく。
 即席にしてはいい動きだ。
 微かに手応えを感じて頷く落葉。
 その前で、キマイラ達は従順に作業を続け、程なく終わらせた。

「……? これで終わりだよね?」
「終わりだね。……面白い?」
「うーん……?」

 歓声でなく、動揺が滲み出る。
 そうなるかもしれないという不安は、落葉の中にもあった。
 この遊び――色違いの板を掲げて絵を作るという遊びは、先の人間ドミノよりも極めて安全性に優れている。怪我人の発生などありえないと断言してもいいだろう。
 しかし“当事者が完成作を見られない”という重大な欠点があるのだ。
 またか。また、キマイラ達を満足させることは出来なかったのか。
 落葉は唇を噛んだ。

 ――が、その時だった。

「すっごーい!!!」

 無邪気な叫び声が街中に轟いた。
 その源は、板を掲げる者達……ではない。
 彼らを見下ろせる高さの建物から、ひょっこりと顔を覗かせたキマイラだ。

「すっごいよー! ねえ、見て見て!」

 一人が一人を呼んで二人となり、二人が二人を呼んで四人となり。
 あっという間に集まった観衆は高みから称賛の渦を巻き起こす。
 それに引き上げられるような形で、落葉の前にも少しずつ明るい表情が広がった。
 完成品を見られていないという事に変わりはない。
 だが“他人を楽しませることができたらしい”という感触はある。
 それが混じり合って、キマイラ達の好奇心をくすぐる。
 すると、どうなるか。
 落葉に従っていたキマイラ達も、見る側に回ってみたいと思い始めたのだ。

 かくして落葉が見守る前で、キマイラ族の大移動が始まった。
 板を掲げていた者達が上へ。彼らを見ていた者達は下へ。
 その脳内に、ドミノ倒しなどという遊びは、もう存在しない。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『怪人さんは布教したい!』

POW   :    怪人の意見を否定し議論する。怪人が嫌うものを好きになるよう説得する。

SPD   :    怪人の意見に同意し語り合う。怪人が好むものを見せてそちらに集中させる。

WIZ   :    怪人の意見とは関係なく自分の好きなものを語る。むしろ自分が好きなものを布教する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ブームの元凶
「な、なな――なんてことをしてくれたんだよ!!」

 各々の手法でドミノ倒しブームを粉砕した猟兵達に、悲痛な叫びが届く。

「もう少しで十分な撮れ高だったのによォ!!」

 どったんばったん。激しく地団駄を踏むそれは。
 それは――リスだ。かなり大きめの。
 ずんぐりむっくりした、リスだ。

「もう少しで“いいね!”が沢山集まりそうな動画を作れたのによォ!
 なんだお前らァ! ドミノ倒しに怨みでもあんのかよ! コラァ!」

 見た目はネズミ目リス科の癖に、やたら三下じみた態度で挑発してくる。
 それを叩き潰せば、猟兵の任務は終わりに思える。
 だが、しかし。
 周辺には、ブームから解放されたばかりのキマイラさん達が沢山残っていた。
 怪人の出現を見て逃げ始めているが、今すぐに戦いを始めれば、彼らを巻き込んでしまうかもしれない。

「ドミノ倒しはなァ、すっげーんだぞ! ドミノ倒しはなァ!」

 ……幸か不幸か。
 怪人“いいねリス”は、どうにもドミノの魅力を語りたくて仕方ない様子。
 猟兵達が論戦に乗ってやれば、暫くは実力行使に出ないだろう。

「ドミノ倒しはなァ、まず一人でも出来る! だが大人数でも出来る!
 それから集中力が高められる! あとは創造性も豊かになるしなァ!
 子供から大人まで楽しめんだよォ! それに電源も課金も必要ねェ!
 あとなんつったってSNSで映えんだろォ!?
 すっげーじゃねーかドミノ倒し! だからお前らもやれよ、ドミノ倒し!!」

 ……あれと言い争うのは、とても疲れそうではあるが。
竹城・落葉
 好きな物を暴言めいた口調で言うとは、クレーマーに似ているな。それに比べれば、住人達の方がよっぽど好印象に思えるのだが。
 さて、我は、何故ドミノ倒しである必要があるのか、という形で否定しよう。別に、ドミノ倒しではなく、絵を描くのでも良いのではないか?
 絵は一人でも描けるが、大きなキャンパスを用意すれば大人数でも出来る。また、絵を描く為に集中力も高まる。当然、絵を描く事で創造力が豊かになる。これは子供から大人まで楽しめるだろう。それに、描くだけなら電源も課金も必要ない。加え、SNSで映えるだろう。つまり、絵を描くのは凄い事である。
 このように、ドミノ倒しと絵を描くのとは何が違うのか議論しよう。


アリシア・マクリントック
私はドミノ倒しが嫌いというわけではないのです。
ですから、もっと面白くなる方法を考えているのです。
そうですね……私が先ほど紹介した『ドミノ』と組み合わせるのはどうでしょう?
決まった数のドミノ牌のセットを使って、数字がつながるように並べていって、倒れた分の出目の合計を得点とするとか。
全体の形状の芸術点、倒した数による技術点とかも組み合わせると面白そう!
分岐させれば芸術点は高くなるけどうまく倒すのが難しくなるし……どうかな?ともかく一度やってみよう!
そうだ、せっかくだからユーベルコードでドミノ倒しも好きというのが本心だって伝えてみましょう。きっとその方が話も盛り上がるもの!


ハーバニー・キーテセラ
そうですねぇ、ドミノ倒し自体はぁ、いいものですよねぇ

そこは同意ですしぃ、ひとまずは怪人さんに同意してぇ、注意を惹きましょ~

全部を並べ切った時の達成感やぁ、それが全部見事に倒れた時の爽快感~
あの倒れている間のぉ、リズミカルな音とかもぉ、好きですよぉ~

貴方はどうですぅ? と問いつつ、ほらぁ。と、幾つか並べて音を奏でてぇ、爽快感も演出ですぅ

どうですぅ? どうですぅ?
今度はもっと長くやりますからぁ、しっかり見ててくださいねぇ
もし手隙だったらぁ、手伝ってくれてもいいですよぉ?

注意を惹いている間にぃ、擬獣召喚で呼んだ子達でぇ、キマイラさん達の避難誘導指示出しておきますよぉ~
しっかりとお役目、お願いねぇ~?


ルエリラ・ルエラ
ドミノは怪人の人?の言う通りドミノはとっても良い遊び。
そして怪人の人の意見に全部当て嵌まるドミノ積みもやっぱり最高に良い遊び。
つまり組み合わせてしまえば最強だという事。
でも怪人の人は来たばかりだからドミノとドミノ積みが組み合わさった物がどんな物かあまり想像できないと思う。
という訳でこちらを見て欲しい。こんな事もあろうかと既に出来上がったものを用意してあるよ。
ドミノ積みで作ったお城や乗り物の中や上を走るドミノ・・・まさに最強で最高の組み合わせ。
さぁ倒すのはあなた。それが終わったら一緒にSNSに投稿する?いいねを貰うのは私だけど。
そして一仕事終わった後の芋煮は最高なので一緒に食べよう?



●北風と太陽的手法
「好みの物を語るに暴言めいた口調では、クレーマーのように見えてしまうぞ」
「なんだとコラァ!?」

 脊髄反射的な反応を見せる怪人“いいねリス”。
 それに動じることもなく、落葉は尋ねる。

「貴様の言うドミノ倒しの魅力だが、それは他のものにもあるのではないか?」
「あァ!?」
「例えば……そうだな、絵を描くのでも良いのではないか?」
「テメェ何聞いてやがったんだコラァ!」

 ドミノ倒しがドミノ倒しであるからこそ布教していたというのに。
 いいねリスの怒りは頂点に達した。
 そして、それは荒々しい言葉の繰り返しとなって噴き出した。

「いいか、耳の穴かっぽじってよく聞けよ! ドミノ倒しはなァ、まず一人でも出来る! だが大人数でも出来る!」
「絵も一人で描けるが、大きなキャンパスを用意すれば大人数で楽しめるぞ」
「ッ……!?」

 間髪を入れずの反論。
 落葉の纏う雰囲気に恐れを感じたか、いいねリスは僅かに後ずさる。
 だが、決して敗北したわけではない。
 いいねリスには、まだまだ語るべきドミノ倒しの魅力があるはずだ。

「……ド、ドミノを多く長く並べるのには集中力と創造性が不可欠ッ! これが鍛えられるぜェ!」
「それは描画でも同じだろう。どのように線を引くのか、どのような色を塗るのか。そもそもどんな絵を描くのか。十二分に創造力を必要とされるし、それを描き切る為には集中力が必要だ」
「こ、の……野郎! ドミノ倒しはお子様からご老人まで楽しめんだぞコラァ!」
「絵画も幅広い年齢層に楽しまれているぞ。ともすれば幼子にしか描けない視点や、歳を重ねてこそ描き出せる味わいというものさえある」
「がッ……ぐ……そ、そうだ! ドミノには電源も課金も要らないぜェ!?」
「どちらとも、絵を描くのにも不要だな」
「SNS映えして“いいね!”だって集められるんだぞッ!」
「昨今、SNSでは日夜数多の絵が公開されている。それこそ世界中の人々から称賛されるほどの――貴様が言う“いいね!”を多く集めているものもあるだろう」
「……」
「我は絵を描く事も十分に凄い事だと思うのだが……さて、ドミノ倒しと絵を描く事にどれほど魅力の違いがあるというのだ?」
「……」
「ああ、答えを急かすつもりはない。だが、我には些か腑に落ちぬ点が多いのでな。この際どっしりと構え、腹を割って話そうではないか」

 一番槍にして、実にとんでもない論客を呼び寄せてしまったものである。
 落葉の舌鋒は猛将が振るう槍の如く、怪人が語るドミノ倒しの魅力を的確に尽く叩き落とした。
 これは議論、討論などという生易しいものではない
 論破だ。ぐうの音も出ない程の、論破だ。

「……このッ……テメェ……このッ……!」

 至極冷静な落葉の黒い眼に見つめられて、いいねリスは言葉に窮す。
 片手に握り締めている小さなハートが今にも砕けてしまいそうだ。
 或いはそのまま、いいねリス自身の心を木っ端微塵にするのも有りだろうか。
 ……まあ、キマイラさん達が避難する時間を作れるならそれでも良いのだろうが。
 しかし、いいねリスとしては幸いな事に、この場に居合わせた猟兵はド正論の使者ばかりではなかった。

「そんなにッ……そんなにドミノ倒しが嫌いかよッ……!」
「いえ、私は――私達は。別にドミノ倒しが嫌いというわけではないのです」
「ドミノは怪人……人? ……ドミノはあなたの言う通り、とっても良い遊び」
「そうですねぇ。ドミノ倒し自体はぁ、いいものだと思っていますよぉ~?」

 血圧急上昇中のいいねリスを囲んで、アリシアとハーバニー、それにルエリラが慰めじみた言葉をかける。
 ……なんだか、この構図では落葉がいじめっ子のようになってしまう。

「うむ。我とてドミノ倒しを憎んでいるわけではない。ただ――」
「はぁい、お口チャックですぅ」

 理論武装でボッコボコにするターンは終了だ。
 討議を続けようとした落葉を穏やかに制しつつ、ハーバニーはこっそりと兎の群れを喚び出す。
 数は十六匹。……何故だか一匹だけ猫が混ざっていたが、さして重大な出来事でもないので流しておこう。
 それよりも、その喚び出された群れの行く先の方が遥かに重要。とたとたぴょんぴょんと駆けていく兎を追って、キマイラ達も走り出す。
 彼らの足音が聞こえなくなるまで時間を稼げば、戦端を開いても問題あるまい。それまでは何だか卑屈になりかけているいいねリスを、上手いこと宥めてあしらおう。

「嫌いじゃねェなら何で邪魔すんだよコノヤロー……」
「邪魔をしたつもりはありません。私達もドミノの素晴らしさを広めようとしていたのです」

 アリシアは真摯に語るが、いいねリスの目は訝しげ。
 まあ企てをぶち壊したに違いはないのだから、疑われても仕方がない。
 だが、少しくらいは話の通じる相手だと思ってもらわなければ。
 そこで一つ、策を講じるとする。
 ぽんっと喚び出したるは、好意伝えるハートを持ったリス。
 奇しくも今、相対している怪人と同じようなものだ。

「……」

 怪人いいねリスと、アリシアのいいねリスが見つめ合う。
 それはやがて――互いに持つハートを渡し合い、ちょっと顔を綻ばせた。
 和解だ。歴史的和解。ドミノに橋渡しされた異種族間の友好条約が今此処に結ばれた。
 ――が、それはいいねリスとアリシアの間のみでの話。
 他の二人は言葉を交わすに足る人物なのか。
 値踏みの視線は、続いてハーバニーに向けられる。

「私はぁ、全部を並べ切った時の達成感やぁ、それが全部見事に倒れた時の爽快感にぃ~、あの倒れている間のぉ、リズミカルな音とかもぉ、ぜぇんぶ好きですよぉ~?」
「……ほぉう」
「貴方はどうですぅ?」
「俺ぁ、倒す時も好きだが並べてる時も好きなんだよ。始めたばかりの時に覚える期待、何処までどう並べようかと想像する中で感じる高揚。ちょっとした不注意で倒してしまうかもしれないという、あの緊張感……」
「あぁ~、わかりますぅ」
「そうか? ……へへ、そうだよな、へへへ」

 ちょろい。
 キマイラさん達も大概だったが、怪人の方も随分ちょろい。
 まあ、語りたがりなんて好意的に肯定してあげればこんなものだろう。
 ついでにもう少し「興味ありますよー」感を出しておけば完璧だ。

「ほらぁ。せっかくですからぁ、並べてみましたよぉ~?」
「おっ、いいねぇ」
「これをですねぇ、ちょんっと」

 かたん。
 かたかたかたかたたたたたた、かたん。

「どうですぅ? どうですぅ?」
「いいねぇいいねぇ!」
「じゃあ今度はもっと長くやりますからぁ、しっかり見ててくださいねぇ。……あ、もし手隙だったらぁ、手伝ってくれてもいいですよぉ?」
「しょうがねぇなぁ。それじゃあ、俺流ドミノをちょいと見せてやろうか」
「わぁ~、楽しみですぅ」

 ぱちぱちと手を叩くハーバニーの前で、いいねリスは得意気な顔をしながらドミノ牌を集め始めた。
 ……が、その手もすぐ止まる。
 思い出したのだ。もう一人、立場を質さねばならない者がいる事に。
 しかし、いいねリスがそう思った頃には、もうルエリラは準備万全。

「私を疑うなら、これを見て欲しい」
「お……おおっ!?」

 目を見開くいいねリス。
 その前に聳え立つ、ドミノ倒しとドミノ積みを融合させた力作。
 キマイラさん達に見せた城の改良と言っていいだろう。人の高さほどにまで積み上げられたドミノ牌の中に、倒される時を待つドミノ牌がずらりと並んでいる。もはや芸術の域だ。

「まさに最強で最高の組み合わせ……そして、これを倒すのは、あなた」
「お、俺が倒していいのか……?」
「うん。倒していい。何ならSNSに投稿してもいい。……いいねを貰うのは私だけど」
「お、おおお……」

 マジか。本気だ。
 なら倒そう。遠慮なく。
 いいねリスは城の入口に手をかける。
 きっとその脳裏には、これだけの作品を作り上げるに必要な技術と労力への想像が走馬灯の如く過っていただろう。暫し遠くを見やってから、いいねリスは惜しむような素振りを見せながらも最初の一枚を倒す。
 かたん。
 かたかたかたかたたたたたたたたたた――。

「おっほー!」

 いいねリスの興奮が限界に達した。
 しかし感極まって打ち震える怪人を、アリシアがさらに煽る。

「これに、私が先程紹介したゲームを組み合わせるのはどうでしょう? 決まった数のドミノ牌のセットを使って、数字が繋がるように並べていって、倒れた分の出目の合計を得点とするとか……積み上げた形での芸術点、倒れた数による技術点を組み合わせるとか!」
「長く多く並べることにもっと意味を持たせるってことか……ちくしょう、悔しいが面白そうじゃねぇか!」

 ぱしーんと手を叩くいいねリス。
 そこにすかさず手渡されたのは。

「新しく並べる前にこれ、芋煮を一緒に食べよう?」
「芋……?」
「一仕事終えた後の芋煮は最高。これを食べる事でドミノ倒しがもっと楽しくなる」
「な、なんだかよくわかんねぇがそういうなら受け取っておくぜ」

 ルエリラから芋煮を受け取り、ががっと掻っ込む。
 そしてほっと一息ついたいいねリスは、理解者を得た希望で両眼を輝かせながら、ドミノを並べ始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『いいねリス』

POW   :    強いっていいね! いいね!ボム
【いいね! 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【いいね!ボム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    足がはやいんだね! いいね!ビーム
レベル分の1秒で【いいね!ビーム 】を発射できる。
WIZ   :    いいね!って思ったらみんなあつまれー!
戦闘用の、自身と同じ強さの【共感者】と【いいねリスの分身】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠青景・黒影です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●所詮、理解り合えぬ運命
「――よし!」

 並べて倒すを繰り返すこと暫くの後。
 いいねリスは猟兵達を見やると、言った。

「お前らが協力してくれれば、
 もう一度キマイラ達にドミノを流行らせるのを……お、おお?」

 そして気づいた。
 往来でドミノを並べていたキマイラ達など、もう一人も残っていないことに。

「……は、は、謀ったなこの野郎ォ!
 つーか、テメェらよく考えりゃ猟兵じゃねェか!」

 ドミノ牌を握り締め、いいねリスは尻尾を逆立てる。
 すっかり和やかな雰囲気になってしまっていたが、所詮はオブリビオン。
 最終的にはこうならざるを得ない。
 数多のドミノ牌が散乱するなか、猟兵と怪人の真なる戦いが始まる。
ルエリラ・ルエラ
まぁうん。怪人だししょうがないよね。
怪人は倒されるものって様式美もあのリス理解してるよねきっと。南無南無。
とりあえず私は援護射撃で味方の支援。
後方から狙撃して前衛の人が戦いやすくなるように動くよ。
仲間がいるなら連携って大事だし、しっかり頑張ろう。
終ったらキマイラの人達に芋煮を振舞いつつドミノはいいよーって布教しよう。
怪人…貴方の死は無駄にしないよ。あ、皆いいねよろしく。


竹城・落葉
 言論で相手を攻撃し続ける事は戦争に発展するリスクを伴う。だが、互いに思いやり分かち合う心があれば、根本的な問題は解決せずとも一時的には戦争のリスクを避けられる。いいねリス、貴様は言論から和平へ移り戦争を回避する好機を自ら手放してしまったのだ。元武将として、その失策は愚かと言わざるを得ない。何より、我を制して和平を試みた者達への裏切りだ。それは絶対に許さぬ。貴様を倒してやろう、ドミノだけにな!……いざ、尋常に参る!
 我は『剣刃一閃』を用いて切り伏せる。戦闘中は冷酷な雰囲気を醸し出し、無表情で攻撃を仕掛けるぞ。


影守・吾聞
【】ユベコ
『』技能

ん、今キマイラって言ったよね?(「呼んだ?」って感じでわざと大きく尻尾揺らしてアピール)
まあ俺、キマイラはキマイラでも猟兵だからね。お呼びじゃないよね
……俺にとってのお前もお呼びじゃないよ!
キマイラフューチャーの平穏を乱す怪人死すべし、慈悲はない!

SPD勝負だ!
魔法剣を構え『野生の勘』『武器受け』を駆使して
敵の攻撃を回避・防御して、ダメージを最小限に抑えつつ距離を積めてくよ

敵の間合いに入ったら剣での『2回攻撃』をお見舞い
……だけど、この攻撃は囮!
本命は尻尾で放つ【ガチキマイラ】だ!
尻尾の先の部分を変化させて、敵に思いっきり齧りついてやる!


ハーバニー・キーテセラ
はぁ~い、実は猟兵さんでしたぁ
ドミノも楽しかったですけれどぉ、そろそろぉ、本来のお仕事へ戻らせてもらいますねぇ?

避難誘導を終わらせた擬獣さん達を呼び戻してぇ、いざぁ、合体ぃ~!
15匹分の兎さんとぉ、1匹分の猫さんの力を集結したスーパーな兎さんと協力してぇ、懲らしめてあげますよぉ
ではぁ、御覚悟を~

スーパーな兎さんと機動力を活かしてぇ、跳んでぇ、跳ねてぇ、走ってとぉ、相手を攪乱翻弄ですぅ
どっちを狙うにしてもぉ、どっちかがフリーになるのでぇ、その瞬間を狙って攻撃しますねぇ
どっちからもぉ、目を離したら駄目ですよぉ?
でないとぉ、あっという間に死出の旅路へご案内することになってしまいますからねぇ



●栗鼠狩り
「まぁうん。しょうがないよね」
 だって怪人だし。
 ルエリラはさっと気持ちを切り替えて弓を取る。
 一方で、ハーバニーはひらひらといいねリスに片手を振り。
「はぁ~い、実は猟兵さんでしたぁ」
 間延びした声で再度のネタばらしをしつつ「そろそろぉ、本来のお仕事へ戻らせてもらいますねぇ?」と、此方も銃を取る。
 そうした所作の一つ一つが、いいねリスの感情をまた一段と高ぶらせる。
「よくも騙してくれたな!」
 激高するあまり、握り締めていたドミノ牌が地面に叩きつけられて跳ねた。
「……愚かな」
 顔の近くに飛んできたそれをすっと躱して、落葉は語る。
「全く愚かだ、いいねリス。貴様は言論から和平に至る好機を自ら手放してしまった」
「うるせぇ! 何が和平だ! この卑怯者め!」
「何を言う。この者達は我を制して、事を穏便に済ませようと力を尽くしていたではないか」
「そうやって俺を油断させて、キマイラ達を逃がしやがったじゃねーか!」
「――ん、今キマイラって言ったよね?」
 すっかりひと気、というかキマイラっ気の無くなった街角から吾聞が顔を出す。
 ふっさりたてがみの生えた爬虫類系の尻尾がこれみよがしに揺らされて、それがまたいいねリスを煽る煽る。
「キマイラァ! テメェは全然『いいね!』じゃねェ! ぶっ潰す!」
「……もはや何を言っても聞かぬか。ならば――」
 落葉の掌が刀の柄に触れる。
「この者達への裏切りを、我は許さぬ。貴様は此処で倒してやろう。――ドミノだけにな!」
「じゃっかしぃーわァ!!!」
 最後の一言は完全に爆弾だった。
 いいねリスがハート(いいね!)を振りかぶって、思いっきり投げつけてくる。
 が、真正面から来る塊など落葉にとって脅威ではない。
「いざ、尋常に――参る!」
 気合一閃、剣刃一閃。抜き放たれた刃がハートを真っ二つに斬り捨てる。
「なっ……」
「遅い!」
 彼我の間合いすら切り取るようにして一気にいいねリスの懐に入り、落葉は顔色一つ変えずさらに一太刀。もっふりとした齧歯目の体毛が、その下の肉ごとバッサリと裂けた。
 鉄板を擦りつけたような、酷く耳障りな悲鳴が上がる。怪人の外見と相まって動物愛護なんてフレーズも頭を過りそうだが、しかしルエリラの言葉を思い出そう。あれは怪人、しょうがない。
「ではぁ、御覚悟を~」
 避難誘導用に用いた兎プラスワン、いやニャンを呼び戻して一塊に集めて、身体の刻印を『16』まで増やしたスーパー兎と共に、ハーバニーが攻勢に出る。
 対するいいねリスはビームの連射。僅かに先んじて迫る合身スーパー兎に狙いを定めて、ひたすらに連射連射連射。
「――!」
「よっしゃあ!」
 手数で押し切り、飛び跳ねる兎を撃ち貫く――が。
「目を離したら駄目ですよぉ?」
「ッ!?」
「でないとぉ……」
 あっという間に、死出の旅路へごあんなぁい。
 もちろん導くのは兎、バニー、ハーバニー。
 スーパー兎にかまけて視線を切ったが運の尽きだ。完全に背を取ったハーバニーは、いいねリスが振り返る前にガラ空きの背中へと銃弾を打ち込む。
「クソっ――おおッ!?」
 やり返そうとハーバニーを追えば、今度は仕留めたはずのスーパー兎が体当たり。
 さらにさらに、遠目で口を真一文字に結び、隙あらば芋煮と言い出しそうな雰囲気を一時脇に置いたルエリラがお手製の弓から次々と矢を撃ち放つ。
「ぐっ……!」
「此処だっ!」
 驟雨の如き援護射撃の合間を縫って、魔法剣を構えた吾聞が突撃。
「キマイラァ! テメェはお呼びじゃねェ!」
「……俺にとってのお前もお呼びじゃないよ!」
 襲い来る『いいね!ビーム』を勘と剣で受け流し、踏み込む。
 使い手の心に呼応した刃が青白い輝きを増して、一度瞬く間に二度、その軌跡はいいねリスをなぞった。
 だが。
「浅いぜキマイラァ!」
 刃が切り取ったのは、僅かな白毛のみ。
 至近距離からならビームの連射も避けられまいと、怪人がニヤリと笑う。
 ――しかし、吾聞も不敵に笑い返す。
「本命は――此方だ!」
 大きな尻尾の先端がライオンの頭部へと変わって、敵の柔らかそうな腿にがぶりと齧りつく。
「ぐあああああああ!」
 痛々しい絶叫が街に木霊した。
 身を捩り、必死で獣王の牙から逃れていくいいねリス。
 ……かなりの消耗を強いたようだが、まだ立っているだけの力はあるらしい。
 芋煮もドミノも、もう暫く後になりそうだ。
 ルエリラは胸中で無念に思いつつ、再び矢を放った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

純・ハイト
離れた位置で狂気の人形劇を発動して血塗れの武装した人形を召喚し攻撃するために向かわせる。自身は【迷彩】【忍び足】で身を隠して人形の指示をするができたら人形の指示をしながらいいねリスの背後に忍び寄ってから【殺気】【恐怖を与える】をのせて攻撃する。


影守・吾聞
【】:ユベコ

割と可愛い見た目のくせにしぶといなぁ
成功度が17も必要なだけはあるね
…なんて、メタは話は置いといて
引き続き、SPDを生かして攻めてくよ!

とはいえ、流石に何度も同じ手は使えないよね
だから、今度は【バトルキャラクターズ】を発動!
召喚したキャラは全部合体させて、俺と同等の強さの1体だけ残すね
ついでに残す1体は、リスの天敵のヘビがモチーフのキャラにしよう。怪人への嫌がらせに

敵がビームを当てにくいよう
キャラと二人がかりで別方向からガンガン攻めるよ
チャンスがあったら総攻撃!フルボッコタイムだ!


ハーバニー・キーテセラ
皆さん、お強いですねぇ
ですがぁ、流石にぃこれらだけではぁ、まだ終わりませんねよねぇ
ではではぁ、お次の一手と参りましょ~

召喚しておいたスーパーな兎さんとぉ、いざ、合体ぃ~!
よいしょっとぉ、と乗らせてもらってぇ、パワーアップですぅ
乗っただけぇ?
いえいえ~、立派な合体ですよぉ?
その証拠にほらぁ、強化されたスーパーな兎さんの機動力とぉ、私のヴォーパルによる火力でぇ、四方八方遠距離近距離から滅多撃ちですよぉ
最後にはぁ、スーパーな兎さんを弾丸のように突進させてぇ、距離を詰めたらぁ、近~零距離でありったけの弾丸をプレゼントぉ

さぁ、これは私の奢りですからねぇ~
弾丸全部ぅ、持って行ってくださいなぁ~



●続・栗鼠狩り
「見た目の割にしぶといなぁ」
 黙っていれば可愛らしくも映るのに。
 さすが怪人。いやボスキャラと呼ぶべきか?
 吾聞は自問しつつ笑って、再び攻めの姿勢を見せる。
 またライオンの頭で喰らいつかれるのか、それとも今度こそ魔法の剣で肉を裂こうとするのか。
 とにかく接近戦だろうと踏んで、いいねリスは飛び退いた。
 ――が、そこはまたしても吾聞の掌の上。
「続けて同じ手は使わないよ!」
 俊敏性を活かして攻める事に変わりはないが、しかし繰り出すのは変化でなく召喚だ。
 キマイラ達にドミノのルールを教える際、用いた戦闘用ゲームキャラクター。戦いを経て召喚者自身の力量も高まったのか、二体増えて合計十八で再出現したそれは、一体を残して全て合体。額の刻印を17にまで上昇させてから、主と共にいいねリスに攻めかかる。

「あらぁ、何だか負けていられない感じですねぇ~?」
 営業モードを堅持するハーバニーも、合わせて動く、
 先に見せたスーパー兎さん(含む猫一匹)との連携は、まだほんの序の口に過ぎない。
「ではではぁ、お次の一手と参りましょ~」
 観光地案内でもするかのような語り口で言って、仕掛けるは擬獣合身。
「よいしょっとぉ」
 ……合身? いや、うん。これは合身だ。
 凡そ3メートルほどの巨兎に乗りかかっているだけにしか見えないが、これは超合身なのだ!
 その証拠に――。
「じゃあ、行きますぅ」
 などと、いまいち締まりのない宣言に反して巨兎は力強く地面を蹴りつけ、敵との間合いを一息で詰める。
 慌てふためくいいねリスからはまたしてもピームの嵐が放たれるが、回避など到底間に合わないだろうという至近距離から兎は真横に跳躍。さらには敵の背後に回り込む。
 その最中、ハーバニー愛用の小型拳銃からは二発の弾が飛び出して、いいねリスの身体に新たな風穴を穿った。

 尚も縦横無尽に駆けるスーパー兎から銃撃を行うハーバニー。
 そこへ吾聞も加わって、いよいよ進退窮まった怪人の様子を、遠目から見やる小さな影が一つ。
 何か常ならぬものを表情に滲ませるそれは、純・ハイト。
 妖精でありながら翅を持たず、しかし地に足を付ける事なく在る彼は、敵を討つべく密やかに手駒を放つ。
 主同様に小さく、様々な血塗れの得物で武装した九十機もの自律人形。
 そろりそろりと進み始めた狂気の殺戮部隊は、その小ささ故に乱戦を繰り広げる敵の目には全く止まらない。
 そしてハイト自身もまた、キマイラフューチャーの街並みに己を溶け込ませながら怪人へと近づいていく。

「――な、なんだコイツら!?」
 結局、驚愕の定型句が発せられたのは自らが侵されてから。
 此処までには存在し得なかった小さな兵達が悍ましい武器と共に襲い来る様は、いいねリスだけでなく吾聞とハーバニーさえも一瞬怯ませる。
「ええい、ちくしょう! 離れろコラ!」
 爪で薙ぎ、尻尾で払いと、抵抗される度に人形達は容易く消し飛ばされていく。
 が、とかく数が多い。それに対抗するべく自らも分身を喚び出そうとするいいねリスだったが、出した途端に人形から斬りつけられて、術の解除条件である“自らが傷を受ける”を満たしてしまうからどうしようもない。
 挙句の果てには――人形の働きに紛れて忍び寄ったハイト自身が、妖刀でさっくりと背中を貫く。
 既に多くの傷を作った怪人の身体。その一撃は大したものでないように思える――が、しかし。
「ひッ……!?」
 不意を突かれたからか、突いてきた相手から何か余計な雰囲気を感じ取ってしまったのか、いいねリスは叫ぶでも喚くでもなく、只々腰を抜かしてへたり込む。
 そこにふらりと現れる、リスの天敵――ヘビをモチーフにしたゲームキャラクター。
 額に1と刻まれたそれは、吾聞が合体させなかった一体。
 生命でなく気力を削ごうと用意していた隠し玉に睨まれて、いいねリスからは逃げるという選択肢すらも消え去る。
「今だ!」
「はぁい、やっちゃいまーすぅ」
 此処が攻め時、フルボッコタイムだと息巻く吾聞の合図で総攻撃。
 魔法剣が唸り、ゲームキャラ(LV17)が躍動し、スーパー兎がまるで弾丸の如き速さで敵の鼻先まで迫り。
「さぁ、これは私の奢りですからねぇ~」
 死出の旅への片道切符を手に、ついぞ自らのペースを崩す事のなかったハーバニーが薄っすらと笑った。
「弾丸全部ぅ、持って行ってくださいなぁ~」
 土産にも、三途の川を渡る駄賃にもならないだろう鉛弾が撃ち込まれる。
 真正面からそれを浴びたいいねリスはゆっくりと後ろに倒れ、ハートを握り締めたまま消滅していった。


 ……かくして、キマイラフューチャーの一角における騒動は収束を迎える。
 程なく避難先から戻ってきたキマイラ達の頭にドミノ倒しなんてものは欠片も残っておらず、旧人類の偉大さを喧伝しようとした怪人の目論見は、脆くも崩れ去ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月05日
宿敵 『いいねリス』 を撃破!


挿絵イラスト