バトルオブフラワーズ⑧イロどれ!パステルテーマパーク
そこは明るい色彩で満ちた場所だった。
軽快な音楽と共に回るメリーゴーラウンド。胃の辺りがすうっとするジェットコースター。遠くの風景まで望める観覧車。
全てが黒く、ただ一色に、塗りつぶされていく。
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「キマイラフューチャーで起こってる異変は、みんなももう知ってると思う。デートや遊びじゃなくて悪いけど、テーマパークに向かって欲しいんだ」
軽口を叩きながらも、シトラ・フォルスター(機械仕掛けの守護者・f02466)は真剣なまなざしで集まった猟兵たちに向かって話し始めた。
「街並みの中にテーマパークがあるんだ。遊んでる一般人はもちろんいないんだけど、アトラクションは全て通常通りに動いているみたいだよ。そこに怪人が出現している」
熱く真っ黒な香ばしい塗料を流して塗りつぶすコーヒーポット怪人。
常温だが体が大きく広い範囲に黒い塗料をまき散らすジョウロ怪人。
湯気が立つほど煮えたぎった黒い塗料を流すやかん怪人。
「こいつらがテーマパークの色んな場所で暴れてるんだ。少なくとも、1つのアトラクションに1人以上はいると思う。こいつらを見つけてやっつけて、余裕があれば黒く塗りつぶされたところを綺麗に塗り替えて欲しいんだ。方法は……」
シトラは片膝をつくと地面をココンッとノックする。
「こうすれば、望んだ色のパステルカラー塗料入りバケツが出てくる。元々塗りつぶせるような技や武器を持ってる人は、そっちを使ってくれてもいいよ」
こうしている間も、怪人は世界を黒く塗りたくり始めているだろう。
「この世界に来て真っ黒なんて味気ないもんね。僕はテーマパークの真ん中で転移能力をキープしながら、ここがどんな色になるか楽しみにしてるよ」
氷水 晶
舞台はテーマパークです。
まずはここで暴れている怪人を急いで止めましょう。この時塗りつぶされた範囲が少ないほど、建物が負うダメージは少なくなります。
その後、余裕があれば綺麗な色で彩って下さい。綺麗に塗っても、何か描いてもいいです。
●アトラクション
冒頭に出てきた3つとその周囲の地面です。
怪人はアトラクションによじ登る他に、乗りながら黒塗料をまき散らしている事もあります。
メリーゴーラウンド:馬や馬車が楽しげな音楽と共にそれなりの速さで回ります。
ジェットコースター:パーク内を駆け巡っています。一回転する所もあります。
観覧車:パーク内で一番の高さです。10分ほどかけてゆっくり回っています。
●パステルカラー塗料
好きな色をご指定下さい。
『赤』などと書いて下さればパステルカラーとして薄桃系の塗料が出てきます。
『赤・黄・青』の複数色の指定もOKです。かわるがわる色バケツが出てきます。
特に指定がなければ、ダイスの目を使って割り振らせて頂きます。
第1章 集団戦
『水かけ三人衆』
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POW : コーヒーポット怪人・ウェポン
【コーヒーポット兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : ジョウロ怪人・ジェノサイド
【ジョウロ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : やかん怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【やかん】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ゾーク・ディナイアル
塗り塗り合戦だね、任せてよ!
ボクがサクサクやっつけて、塗り塗りしちゃうからね!
☆戦術
SPD勝負
ボクはメリーゴーランド辺りを担当かな、他の猟兵と被るなら変えるのもアリだけど。
「キャハハハハハ!それ以上はやらせないよん!」
敵の攻撃を『野生の勘』で『見切り』躱しながらダッシュで敵陣に斬り込みUC【強化兵戦技《高速剣》】を『怪力』を発揮して起動、周りの奴らを妖剣でバラバラに斬り刻んだり、刺し貫いて『傷口を抉り』殺す。
「黒はぜーんぶ白にしちゃうんだなぁ、これが!」
コンコンして白い塗料を手に入れたら『クイックドロウ』で『二回攻撃』して撒き散らし、全てを白に染めちゃうよん!
※アドリブ歓迎
本城・やぐら
遊園地ですか?面白そうなカラクリがあってとても楽しそうな場所なのに真っ黒に塗りつぶすなんて酷いです!
絵師としても見過ごせません!
急須みたいな怪人達を何とかしないとですね!?
UC【千羽鶴図】で絵巻から金と銀の鶴図を放って攻撃します!
『舞え!千羽鶴!!』
メリーゴーランド?綺麗な木馬が自動で回るなんて楽しそうな遊具ですね!?
音楽まで奏でてるなんて素敵です♪
黒く塗られた所を見付けたら馬は「白」に、馬具の部分は「白緑」と「白群青」で塗って行きます!
自動的に絵の具が出てくるなんて便利ですねー!?
なんで緑と青なのか、ですか?
自称琳派の絵師なものでして季節柄ちょっと杜若っぽく塗らせていただきますね♪
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誰もいないテーマパークのどこかから、夢見るような軽快な音楽が流れてくる。
街路樹の向こうに見えてくるのは平たい円錐形の屋根。あれがきっとメリーゴーラウンドだ。
「綺麗な木馬が自動で回るなんて、楽しそうな遊具ですね!? 音楽まで奏でるなんて素敵です♪ こんなに面白そうなカラクリがあってとても楽しそうな場所なのに、真っ黒に塗りつぶすなんて酷いです!」
本城・やぐら(ゆるりんぱ絵師・f06242)は琥珀色の一本三つ編みを振って走る。
その後ろから長剣を背負ったゾーク・ディナイアル(強化エルフ兵の出来損ない・f11288)が追いついてきた。
「ボクもサクサクやっつけて、塗り塗りしちゃうからね!」
「はい! あっ、あれは!?」
走りながらやぐらはメリーゴーラウンドの屋根を指さした。赤に黄色で縁取られた屋根が、段々と上の方から流れる黒い筋に浸食されていく。続いて、なんだかすごく香ばしい、目の覚めるような香りが流れてきた。
『もーーーにんぐ!!』
屋根のてっぺんに立てられた旗を片手で持ち、4体の怪人がくるくると回っている。注ぎ口からは香りの良い真っ黒な塗料があふれ出していた。
「あれは……急須でしょうか!?」
「近いようで違うような気がするけど、そっちは任せたよ!」
屋根の上をやぐらに任せ、ゾークはダッシュでぐんぐん加速すると、下の回転木馬に狙いを定めた。
屋根が近付いてくると、やぐらは着物のたもとから絵巻物を取り出した。封をした紐を解き、一気に広げる。
そこに描かれているのは、金泥と銀泥で描かれた沢山の鶴たち。
「舞え! 千羽鶴!」
やぐらの声に生き生きと描かれた鶴たちは絵の中で翼を広げると、紙の中から外の世界へと次々に飛び立つ。金と銀の鶴の群れが、上空から急須ならぬコーヒーポット怪人へ襲いかかる。
マグカップを振るってコーヒーを撒き、何羽かが撃ち落される。しかし、長いくちばしと蹴りの応酬に耐え切れずに1体ずつ滑り落ちていく。
『も、もーにぃ……』
怪人は黒い塗料を僅かに散らして消えた。
『しゃわわわわわわぁ……』
どこかうっとりと夢見心地に音楽に耳を傾け、ジョウロ怪人が自分で染め上げた黒馬に乗って回っている。上下に揺られながら、外に向けた蓮口からは真っ黒な塗料を小雨のように外に向かって撒いていた。
「キャハハハハハ!それ以上はやらせないよん!」
敵が回ってくるタイミングを見切って躱し、ゾークはジョウロ怪人を斬ってダッシュでメリーゴーラウンドに乗り込んだ。
「うわっ……とっとと」
一瞬、ゾークは回転する地面に足を取られる。
チャンスとみて、ジョウロ怪人は次々に木馬から飛び降り、超高速で走り寄ろうとした。
『ふおおぉぉぉ!?』
……彼らも同じように足を取られ、ころころと転んでいる。
その間に体勢を立て直したゾークは、禍々しく青い妖気の立ち上る長剣を構えた。
「――あんまり真面目にやってると……馬鹿見ちゃうよ!」
殺戮衝動が導くままに、妖剣で怪人を斬り刻み、バラバラにし、刺し貫くと傷口を抉っていく。止まりつつあるメリーゴーラウンドの上で、ゾークは黒い残滓を振り払って振り向いた。
「終わったよん」
「こっちもです。……あっ!?」
ゾークの背中を見てやぐらが目を丸くする。うっかりユーベルコードに巻き込んでしまった馬の首がごとんと落ちた。
断面が綺麗だったのと、ココンっと出した白い塗料で首が跡もなく綺麗にくっついたのは幸いだった。
両手に持った白バケツを器用に操って、ミルクのような真っ白な塗料でゾークはメリーゴーラウンドを染め上げていく。黒い筋ができた屋根も同じようにして、戻ってくるとやぐらの手元を覗き込んだ。
「うまいもんだねぇ」
感心するようなゾークの声に、やぐらは筆先を操りながら答えた。
「自称、琳派の絵師なものでして」
まるで空の色のような『白群青』で白馬の鞍を塗り、淡い緑色の『白緑』でその他の馬具を細かに塗っていく。
黒いまだらの世界は夢のような色を取り戻していた。
「季節柄、ちょっと杜若っぽく塗らせていただきました♪」
「カキツバタ、なるほどねぇ」
2人の猟兵は跳ね返った塗料を頬に散らし、満足そうに自分たちの作り上げた作品を見あげた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セルマ・エンフィールド
遊園地には行ったことはありませんが、どうやらこの世界“らしい“施設の様子。黒塗りなど似合いませんよ。
私はジェットコースターの敵を狙いましょう。
索敵用ドローン【ペレグリーネ】を起動。移動範囲を活かしてパーク内を走るジェットコースターの長大なコースから怪人を見つけさせます。
怪人を見つけたら可能であればそのままペレグリーネの機銃で仕留めます。
怪人がジェットコースターに乗っており、追い付けないようなら、私が狙撃しましょう。
高速で移動する物体に乗る相手の狙撃ですが……オブリビオンの中にはこれくらいの速度なら出すものはいますしね。当てられなければ困ります。
アオイ・フジミヤ
遊園地を黒くしようなんて悪いやつ!
子供も大人も楽しく遊べるところは楽しいままにしようよ!
情報収集で急いで探しつつ
コーヒー好きとしては、コーヒーポット怪人を相手にしたいな
いい匂いしそう
高い所やジェットコースターは割と得意なので、
それに乗ってあちこち飛び回りながらおいかけるよ
(落ちても翼で速度を緩めつつ)
kuuを使用して敵のUCを無効化しつつ
Naluの属性攻撃(氷)で戦う
塗料は「青・赤・金色」を使う
観覧車の中と外をそれぞれ海、青空、夕焼け、星空などのイメージで塗っていく
それぞれ違うと、何度乗っても楽しいと思うしね
キマフュってカラフルでポップな世界でいいところだね
ここの遊園地、今度遊びに来たいなぁ
●
「遊園地を黒くしようなんて悪いやつ!」
アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)は透き通るような藍色の髪を翻し、深い海を思わせる色の翼を広げて低く飛ぶ。
「遊園地は初めてですが、どうやらこの世界にとって”らしい”施設のようですね」
そのすぐ近くを走るのはセルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)。
「子供も大人も楽しく遊べるところは、楽しいままにしなくちゃね! 事件が終わったら、遊びに来れるように」
「はい。この世界に黒塗りなど似合いません」
天真爛漫に笑いかけるアオイに、セルマはこくんと頷いて空を見上げた。
偵察に出していたセルマの索敵用ドローン、ペレグリーネが戻ってきたのだ。先ほどからパーク内を走るジェットコースターのコースに沿って飛んでもらい、怪人の捜索をさせていた。
「読み通り、どうやら怪人たちはジェットコースターに乗っているようですね」
辺りを見回しながら情報収集していたアオイは、案内板を指さした。
「ジェットコースター乗り場はこちら、みたいだね」
タン、タン、タン、タン……ゆっくりと怪人を乗せたコースターは頂点まで上がると、急斜面を駆け落ちていく。
『こ、こーふぃーーー!』
『しゃわーー!』
2周目に突入し余裕が出てきたのか、怪人たちは両手をあげる。歓声とともに黒い塗料を撒き散らしているのだから、一刻も早く止めなくてはならない。
「待ちなさい!」
アオイとセルマは階段を駆けあがると、怪人たちが乗るコースターを追いかけるように空いたマシンに乗り込む。
「……なんか怪人たち楽しそうですね」
セルマの言葉に、どこか楽しそうにアオイは答えた。
「うん、私も高い所とジェットコースターは結構得意だよ」
がこん。コースターがゆっくりと動き始める。セルマの初めてのアトラクションが始まる。
『コフィー!!』
後ろの猟兵2人に気付き、コーヒーポット怪人は安全バーを外して振り向くと真っ黒な塗料を吐き出した。……念のため、猟兵でも怪人でもなければ、絶対にやってはいけない。
ふわりと風に香ばしい香りが混じる。多分、香りの良い浅煎りの豆を使っている。コーヒー好きなアオイにはたまらない。だからといって、熱々のコーヒー塗料をかぶるわけにもいかない。
アオイが腕を振るうと、それが瑠璃色の波になって広がった。寄せる波が真っ黒な塗料をきれいさっぱりと打ち消していく。続いて翡翠色の波がジョウロの水滴をさらっていった。
南国の暖かく、宝石のような色合いの波がそれ以上黒い塗料が広がるのを阻む。
セルマはコースターの席に座ったまま、フィンブルヴェトと名付けられたマスケット銃を構えた。
「(……オブリビオンの中には、これくらいの速度なら出すものもいますしね。当てられなければ困ります)」
こうして狙いを定めてみて分かった。
ジェットコースターのコースは基本的に一本道だ。スピードにさえ気をつければ、次の瞬間どこに怪人がいるか読むことはたやすい。セルマの腕前ならばほぼ確実に当てる事ができるのだ。
更にペレグリーネを軌道の横に待機させ、支援射撃して貰う。
セルマの銃が火を噴くたびに、怪人はその分だけ数を減らしていった。
『アフィーーィィ!!』
『しゃわああぁぁぁ!!』
すぐ後ろの怪人が撃ち落され、いよいよ残っているのは先頭の2人のみだ。
こうなればコースターを降りて一度猟兵たちを巻くしかない。頭を下げて銃弾を避けながら、怪人たちは気付いた。最後の一回転を終えればコースター乗り場だ。
シートベルトをいつでも外せるよう準備し、ぐるりと一回転して……。
コースターの先頭部分に、翼を広げたアオイが降り立った。七節棍が振るわれる。怪人たちはそのまま氷の彫像と化して消えた。
大成功
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月守・咲凛
えーと、あれを倒せば良いのですね?
ユーベルコードを発動させて、火線砲を連結させたビームで観覧車の敵から順番にスナイピングです。
あまり建物にダメージを与えても困るので、ビームを細く高圧に収束させて、建造物へのダメージはなるべく抑えておきます。
敵を倒したら水色のペンキでスプラッシュです。空中からパステルカラーの雨を降らせましょう。
シン・バントライン
ある人と観覧車に乗る約束をしたばかりの私です。
約束というのは未来そのものなので、観覧車に乗れなくなるという事は未来を失くすのと同義です。
その未来、返して頂きましょう。
塗料は「青」で。
あの方はとても青が似合う方なので。
たまに黄色も入れておきたい気もします。
UC発動。
召喚した騎士と竜が戦ってくれている間もせっせと色を塗りましょう。
攻撃をやかん怪人に見切られないように、騎士と竜には交互に戦えと指示を出します。
祖国と違いこの世界は色に溢れた明るい場所です。
そんな世界が黒く塗りつぶされていくのを見るのは忍びないですね。
明るい色はきっと世界を救います。
(そして本当に観覧車デートが叶うといいなぁ…)
●
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)は髪と一緒に揺れる結晶体を七色に煌めかせて、観覧車の元までたどり着いた。上空からミスト状になった黒インクが降りかかり、咲凛は目を伏せる。
観覧車の乗りカゴの上に座ったジョウロ怪人が、空に向けた蓮口を傾けて真っ黒な塗料を撒き散らしていた。落ちてくるまでに霧状になったそれは、観覧車の周囲のタイルを薄黒く染めている。
「えーと、あれを倒せば良いのですね?」
任務を独り言のように確認し、咲凛は収束火線砲【ハナシグレ】を構えた。
同時にユーベルコード『コード・イーグルアイ』を発動する。遠く観覧車の屋根に僅かに見えているジョウロ怪人の上半身が、強化された技能によってはっきりと見えた。
観覧車にダメージを与えないよう、細く絞られたビームが空を切り裂く。
悲鳴さえ聞こえぬ距離でよろめいたジョウロ怪人は、そのまま前のめりに落下して黒い塗料に溶け落ちた。
狙われていると気付いた怪人たちは、乗りカゴの屋根の奥へと逃げ込む。隠れながら塗ってしまえとばかりに、ジョウロとヤカンは黒い塗料を吐き出し続けた。
屈みこんだ怪人たちの上から声がする。
「逃がしませんよー」
そこには、背部ウイングスラスターユニットを装着して、悠然と空に留まる咲凛の姿。
怪人たちの中に、空中戦で彼女に適う相手などいなかった。
思ったより塗れてない……。
不審に思ったやかん怪人が頭を巡らせれば――いた。
怪人たちが黒く染めあげた観覧車の上。同じ色の装束で溶け込み、せっせと黒を薄青に塗りかえていくシン・バントライン(逆光の愛・f04752)。
「(あの方はとても青が似合う方なので……。たまには黄色も入れておきましょうか)」
そうして薄青の隣に淡い黄色を添わせる。
油断しているとみて、やかん怪人はシンのいる乗りカゴに向かって飛び降りた。しかし、怪人の足はいつまで経ってもシンの隣にたどり着かない。
『……しゅわっ!?』
やかんの取っ手の部分を、後ろから死霊邪竜がくわえていた。慌ててやかんを投げつけようとするやかん怪人。それを今度は死霊騎士が長剣で斬り払う。
地上に落ちる前に黒インクに溶けて消えた怪人を、見送るようにシンは立ち上がった。
その調子で攻撃を見切られないように交互にお願いします。そう言ってユーベルコードで呼び出した邪竜と騎士をねぎらう。
「私は、ある人と観覧車に乗る約束をしたばかりです」
約束はこれから果たす未来そのもの。シンにとって、観覧車を守るのは未来を守る事と同じだ。
シンの祖国と違って、この世界には色があふれている。音楽に芸術に、人々が明るく豊かに、幸せそうに暮らしている。そんな世界が黒く塗りつぶされようとしているさまを見るのは忍びなかった。
「その未来、返して頂きましょう」
故郷と同じ物をここに作らせるわけには、いかない。
怪人たちを片付け終わったのを見計らって、咲凛は水色の塗料を次々に空に打ち上げる。
パステルカラーの雨が降る。雫は黒の上にしとしとと、観覧車を染めていった。
シンの塗った場所との微妙な色の差が、観覧車全体に美しいグラデーションを作っていた。
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空色に塗り上げられた観覧車に、仕事を終えたほかの猟兵たちも集まってきた。
「ちょっと仕上げをね」
そう言って観覧車に乗り込んで作業していたアオイが降りてくる。
乗りカゴの中いっぱいに青空が描かれたカゴが通り過ぎれば、今度は大海原、金色がかった夕焼け、天井を埋める星空。カゴの中一面にアオイの思い描いた風景が広がっている。
生まれ変わった観覧車を見あげて、シンは思う。
「(次こそ本当に観覧車デートが叶うといいなぁ……)」
これが、世界を救う道中でさえなかったなら。
咲凛は空から地上へ降りた。さっきまで黒ずんでいたタイルは、濃度の違う水色が点描画のような色合いを作っていた。空中から咲凛が降らせた雨粒の跡だ。
「メリーゴーラウンドもいい仕上がりになったよ」
「はい! 絵師として腕をふるわせていただきました」
ゾークとやぐらは顔を見合わせて笑う。
任務は無事に終わった。
今回は乗る時間の無かったアトラクションを振り向いて、セルマは思う。
「(いつか、戦争以外でこういった場所に来ることはあるんでしょうか)」
そして、仲間の背中を追ってテーマパークを後にした。
成功
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