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星辰の可能性より

#UDCアース

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#UDCアース


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 その本が図書館に寄贈されたのは、前世紀まで遡るという。古ぼけた表紙はかすれ、本に記された文字もかろうじてラテン語であることが判明している。
 長らく閉架図書に置かれ、目に留まることはなかった。ただ目録には、「著者:不明 題名:不明 歴史的資料」とだけ記されていただけ。
 だからこそ、その市立図書館で起きる惨劇にその本が関係があると思う者は一人としていなかった。

「――――!!」
 昼間の図書館に、悲鳴が上がる。逃げ惑う人々、起こる混乱。一体何が起きたのか、被害者で理解している者はいない。
「あ、ああ……あ――――」
 ぐちゃり、と湿った水音を立てて、ソレは倒れた警備員を咀嚼していく。ソレは、棄テラレシ可能性――己の成長を許さなかった未来に牙剥くオブリビオン達は、宙に浮かびながら逃げる人々を追いかけていく。

 ――今だ。

 それを見て、ほくそ笑む者がいた。我が神に必要なモノを手に入れる、そのための力が必要なのだ、と……。


「……本に罪はないと思うのだがな」
 言い捨て、ジョー・パブリック(名も無き断章・f17003)は改めて語り出す。
「UDCアースで、とある市立図書館に寄贈された本を、邪神教徒が狙っているらしい」
 一番の問題は、閉架図書――貸出禁止であるその本を持ち出すために、オブリビオンを利用しようというところだ。そのせいで、多くの人々が犠牲になってしまう――そんな未来を、許す訳にはいかない。
「おそらく、この本も力ある書、魔導書の一冊なのだろうが……強引な手を使ってくれる」
 人と本を守るために力を借りたい、そうジョーは言った。
「まずは、オブリビオンから人々を守る必要がある。みんなには事前に市立図書館に潜入した上、対処願いたい」
 オブリビオンは、昼下がりに出現する。人払いは間に合わない、オブリビオンが出現する端から処理する必要があるだろう。
 そして、潜入した邪神教徒に対応する必要がある――魔導書を渡してしまえばどうなるか、その後の騒動も面倒なものとなるのは間違いない。
「まずは、人々と魔導書を守る必要がある。敵がどう出るか不確定だが、よろしく頼む」


波多野志郎
この手の力技もできて、オブリビオンはいいですね。どうも、波多野志郎です。
今回は、図書館に寄贈されていた魔導書と人々を守るため、活躍していただいきます。

第一章は、邪神教徒の手によるオブリビオン襲撃から人々と魔導書を守ることとなります。なお、市立図書館は四階建て。四階に閉架図書があり、三階から下は市民に開放されております。プレイングの参考までに。

それでは、可能性の導きのままに――お楽しみくださいませ。
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第1章 冒険 『魔導書を守りぬけ』

POW   :    図書館に張り込んで警備する

SPD   :    怪しげな行動をするものを探し出す

WIZ   :    邪教徒の情報を収集する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジナ・ラクスパー
本好きとしては腕の振るいどころなのです
一般の皆様ともども、護り抜いてみせます…!

武器は隠して一般人の皆様に溶け込み
予め館内表示やリーフレットで情報収集
敵がどこから現れても正確な避難経路をお伝えできるように
非常口や通路をしっかり覚えておきますね

猟兵の皆様と情報共有・連携
特に襲われるという警備員の方の周囲に気を配り
各階に配置されていれば、一般人の安全重視で猟兵が少ない階へ
様子のおかしい人影や悪意の湧く気配
違和感を感じたら武器を現し飛び出します

火も水も本には厳禁
風の精霊さん、力を貸してくださいませね
逃げる人や本がない方向へ攻撃を逸らしつつ
防御強化を花盾に乗せて
…皆様を逃がしきるまで、耐え抜きます!


無累・是空
【POW】
他の猟兵と協力するぞい。

図書館より博物館のほうが相応しい古書じゃな。
そうであれば博物館が襲われただけじゃろうし、きっとあまり大差はなかったのう。

どうも予知を聞く限り、陽動なのか人が襲われるようじゃな。真っ直ぐ閉架図書を狙ってくるなら守るのも容易いのじゃが……。
わし探知とか索敵とか得意じゃないんじゃよな!
自慢の【念動力】による『神の見えざる手』で襲われた者を掴んで敵から引き離したり、逆に敵を捕まえて被害者から遠ざけたりじゃな。敵は握り潰すぞい。
【地形の利用】も得意じゃから、本棚を念力で倒して進路を塞ぐこともできそうじゃな。本は痛むが人命には替えられんの!


ウイシア・ジンジャーエール
連携、アドリブ歓迎。
SPD行動(警戒しつつ不審な人物・物を探す)

まずは潜入。
オラトリオの羽と花を隠し、[変装][目立たない]服装と行動を。
髪色から外国人を装います。日本の歴史書を読みながら勉強をしているフリ。

出来れば狙われている本の傍で見張りたい。…けれど、4階なので入れない、と。
郷土資料に関する書物がある辺りで不審者に警戒します。
私はUDCアースが好き。どうせ本を捲るだけなら興味のある本を。

避難経路の場所も確認しておく。

不審者を探す。
キョロキョロしたり、長時間本を探している者はいないか。

不審者と思われる人間を発見したら [忍び足]で[追跡]。
ユーベルコード【透明】で隠れながら、不審者を追う。


クララ・リンドヴァル
この静かな図書館が、今日の昼には地獄絵図と化すだなんて……そんなこと、許すわけにはいきません。
【WIZ】
……。(息を吸い込む)
良い図書館です……ね。
事件が起きる前の図書館に、利用者として潜入。邪神の教徒について、あるいはの情報を収集します。関係ありそうなのはこの地域の歴史を記した本などでしょうか。書誌を紐解いて、邪教徒のターゲットである本そのものに対する情報を探してみても良いかもしれません。
仮に邪教徒が潜入を済ませているとしたら、おそらく警備員に怪しまれない為に本を読んでいるかと。触りそうな本は魔術とかでしょうか。試しに本棚の空きを覗いて見るのもいいですね。


リュカ・エンキアンサス
図書館…
あんまり賢くないけれども、本は好きなんだ
そういうところで、事件は、起こさないでほしいと思う

…ということで、先ずは図書館に潜入して、怪しげな行動をする人を探し出す
本を借りに来る人とは、明らかに目線も、動作も、違うだろうから、
そういう違和感や第六感を頼りに、対処していければいいと思う
途中でオブリビオン及びそれを呼び出そうとする姿を見かけたら、問答無用で撃ちたい…所だけど、
人がいて無理そうなら、なるべく人命を優先して。先に人を逃がすとか、さりげなく誘導して被害は少なくしたいところ
必要そうなら邪神教徒は捕縛する。捕縛は難易度が高いからなるべく避けたいけれど…この場合は仕方ない、頑張る


ナイア・アルハズラット
心情:仕事は仕事として魔導書は読みたい。

相手の目標が分かってるなら対処は楽な方よね?
ワタクシ、非力な乙女です故、市民を守るのは皆に任せて先回りして魔導書を守らせて頂きますわ?
えぇ、えぇ、勿論仕事の為ですもの!!魔導書を読みたいだなんてそんなそんな……(ニッコリ)
そそくさと4階まで上がって、受付とか警備の人は【催眠術】やユーベルコードでごまかして【忍び足】や【鍵開け】で中に入って魔導書を探すわ。
後は相手がくるまでのんびり閲覧でもしつつ、待ちましょう?
とても、興味深いわ。


比良坂・美鶴
【夜鷹】の皆と一緒に

まぁ随分と手荒ね
ずっと眠っているような本なら
こっそり盗んでしまえばよかったのに
それをしないということは
一般人の犠牲も必要なのかしら

アタシは花の図鑑を探しながら
カメリアちゃんと手分けして
怪しい行動をしてる子を探しましょう
適材適所、他は2人に任せましょ

悪いコトを考えている人は
無意識に人の目を避けるものだわ?
特に警備員さんの視線なんか
気になっちゃうわよね

人目を避けるように動いていて
明らかに本を探していない挙動をしている人間に
目を付けておきましょう

不審者を見つけたら皆と共有
松路くんが纏めてくれた情報も頭に叩き込んで
いつ動かれてもいいよう動向を把握しておきましょ

※アドリブ歓迎


末野木・松路
【夜鷹】の皆さんと一緒に。

はあなんでこんな面倒な真似をするんだ、頭が痛い…
奪われた先何に使われるか…ここで止めておかないと…

…人の探りは、任せました
俺は調べ物を装いつつ、ルートの把握を徹底します。
人の情よりも計算、暗記…そっちの方が得意で…
侵入経路にも逃げ道にもなる、位置関係を記録します
四階に至るまでの入口、そして抜け出せそうな
場所があれば周辺を調べましょう
人が襲われることはまず避けたいですし
安全な死角があればそこも…

纏まったら持ってきた記録媒体、
もといかけていた眼鏡に書いた地図を記録

重要なポイントは合流した美鶴さんとカメリアさんに共有
そうしたら見えてくるものもあるでしょうから…

/アドリブ歓迎


カメリア・クラウゼヴィッツ
【夜鷹】の皆と一緒に
アドリブ歓迎

ほんと、荒っぽいやり方だこと
ただのコソドロの方がまだ…いや、そうでもないわね
宗教も色々あるけど、暴力的な手段を選ぶなんてろくな教義じゃないことだけは分かるわ
ベーコン教がいかに平和か思い知らされるわね

それじゃあ私は、職員に人探しのていで聞いて回ろうかしら
”いつも見かけない人を見かけなかった?”って。
いつもいる人はいつもいない人に詳しいんじゃない?
明らかに目的が違う人って、きっと目が違うと思うのよね―――悪いコトを企む輩は特に

とはいえ無駄な混乱は避けたいし、言い回しには気をつけたいわね

収穫の多少に関わらずある程度で美鶴と松路と合流して情報の共有を
報連相は大事でしょ?


ステフ・ウッドワード
(しかし、何でそんなコワイ本がこんな図書館にあるのかなあ。)
ユーベルコードを展開。影を出現させて一緒に怪しいモノとかオブリビオンを探します。アタシは狭いとこに入り込めるし、コイツは高いとこから周囲見渡せますよー。
といっても、怪しい行動かあ。ナニカ出現させようと唱えているとか、挙動不審な人物。あとは異形の化け物をとりあえずの対象と定めます。ゴー!
ついでにアタシは嗅覚でオブリビオンの嫌ーな腐臭でも嗅ぎ捕れたらラッキーですかね。
なんかそれっぽい不審なのがあったら仲間に共有できたらしたい。アタシが召喚した影を遣いにやっても大丈夫かな?


虻須・志郎
アドリブ連携可

SPD

怪しい奴ねぇ
先ずは組織に業者の偽装身分を貰うか

図書館のネットワーク周りをハックして
閉架図書区画への立入り記録と
館内見取り図を出しておこう
記録にある奴は敵かもしれん
念の為気を付けておくか

次に閉架図書区画に忍び込んで
呼び止められたら催眠時計で『忘れて貰う』さ
俺はVIPだ、何したって良いんだよ

該当の怪しい本の配置を変えて
内蔵無限紡績兵装でガワだけ複製し
触れば痺れる罠として色んな棚に置いておく

見取り図を元に館内でオブリビオンが出たら起動し
動きを鈍らす為の網を張るか
一般人を巻き込まない様に制御はインセインへ直結
監視カメラ情報と合わせ的確に起動させる

ま、巣を張るにゃ時間が掛かりすぎたか



●穏やかな図書館
 その日は晴天に恵まれた、穏やかな春の日であった。
(「……良い図書館です……ね」)
 大きく息を吸い込み、クララ・リンドヴァル(本の魔女・f17817)は図書館の光景を見下ろした。
 三階建ての図書館は二階から一階まで吹き抜けがあり、一階の様子がよく見える。一階が児童文学の本が集まっている事を考えれば、保護者が二階からでも子供が見つけられるようにと言う事なのだろう――他にも細かい部分で利用者を考えた配慮があった。
「……これでしょうか?」
 クララは本棚から、一冊の本を取り出す。地域の民話伝承の本であり、またクララが探していた情報が載っている物だ。
(「『仮面の教団』……ですか」)
 実際、江戸末期の伝承に過ぎないが異国人の教祖――黄金の仮面を被った男の元、数十人の集団となり、当時としては大きな騒動を起こしたと書かれている。そして、この本に行き着いた最大の理由はこれがただの民話伝承の本ではなく、実在した出来事かどうかの検証本であったからだ。
(「当時、商人の内藤家が残した記録では、『仮面の教団』が犯した騒動……誘拐事件によって人が死んだ、と残っていた、と……あれ?」)
 クララは気付く。本に載った当時の地図を見て、手元の図書館のパンフレットへ視線を落とすと――慌てて、視線を上げた。

「まさか――!?」

 その瞬間、図書館の一角で悲鳴が上がった。

●魔導書
 ――時間は、わずかに戻る。
(「相手の目標が分かってるなら対処は楽な方よね? ワタクシ、非力な乙女です故、市民を守るのは皆に任せて先回りして魔導書を守らせて頂きますわ? えぇ、えぇ、勿論仕事の為ですもの!! 魔導書を読みたいだなんてそんなそんな……」)
 ニッコリと微笑みながら、ナイア・アルハズラット(いずれ深淵に至る魔導書・f04959)はそそくさと四階の閉架図書へと潜り込んでいた。
「イア・フガゥルグ・チャウグナー……深い夢の中へ沈みなさい」
 受付の職員を深き夢への誘い(ドリーム・コンフューズ)によって幻覚で寝かしつけると、ナイアは足音を消して通り過ぎる。鍵も、電子錠ではない旧式の鍵ではないも当然だ。ナイアは閉架図書へ侵入すると本棚を眺めていき、目的の魔導書はすぐに見つけた。
「とても、興味深いわ」
 後は相手がくるまでのんびり閲覧でもしつつ、待てばいい――ナイアは本を開いた。そこに書かれているのはラテン語であるが、魔導を収集する者にとって古代の物を手に入れるのには必須と言っていい言語だ。
 ナイアは読める部分から、紐解いていく。

『いあいあ、黄金の仮面は語る。すべては星辰と可能性の重なりなのだ、と。千、という数が重要なのではない、顔がないという無の文字こそその神の本質だ。いあいあ、無を0とする概念が生まれたのは、はるか彼方の地たる天竺であり、数学の大発見と言えただろう。しかし、それはあくまで人の認識範囲の間だけ。
 いあいあ! 神にとって0と無限に差異はない。だからこそ、その神の名とは人に理解させるための方便だ。千、とは人のための、無貌こそが神のための名。
 さぁ、注げ注げ。千あれば十分、しかしなおも注げ。いあいあ、注がれた可能性だけ無貌は選択肢という名の力を持つのだから――』

●星辰満ちる刻
(「まぁ随分と手荒ね。ずっと眠っているような本なら、こっそり盗んでしまえばよかったのに……それをしないということは、一般人の犠牲も必要なのかしら」)
 比良坂・美鶴(葬列・f01746)の指先が、本棚に並ぶ本の背を撫でていく。美鶴は花の図鑑を探しながら、ふと視線を背後へ向けた。
 そこには見慣れた、カメリア・クラウゼヴィッツ(林檎椿・f17005)の姿がある。
(「ほんと、荒っぽいやり方だこと。ただのコソドロの方がまだ……いや、そうでもないわね。宗教も色々あるけど、暴力的な手段を選ぶなんてろくな教義じゃないことだけは分かるわ。ベーコン教がいかに平和か思い知らされるわね」)
 宗教にも色々ある、とカメリアは目の前の年かさの言った職員に問いかける。
「いつも見かけない人を見かけなかった?」
「いつも、かい? そうだねぇ」
 何人かいる、カメリアを含む猟兵達などその筆頭だったろう。しかし、職員は無粋な指摘はしない。真剣に聞かれたからこそ、真剣に考えた。
 職員の視線が、周囲を見回す。その動きを、美鶴は追った。

(「悪いコトを考えている人は、無意識に人の目を避けるものだわ? 特に警備員さんの視線なんか、気になっちゃうわ――」)

 よね、と続く前に、不審な男を美鶴は見つける。職員の視線に気付き、足を明らかに早めたのだ。見つかりたくない、あるいは記憶に残りたくないというそういう動きだ。
「……今日は人がいつもより多くて、よくわかんないねぇ」
「そうか、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
 カメリアの礼に、職員も笑顔で応える。カメリアは美鶴の視線に気付くと、さり気ない動きで彼の元へ戻った。
「どうしたの?」
「向こうに、怪しい男がいたわ」
 美鶴の言葉に、カメリアは素直に振り返らない。こちらが怪しまれては、意味がないからだ。
「松路と合流しましょう」
「それがいいわね」
 カメリアの提案に、美鶴は同意。本棚を盾に二人は遠回りを取って、動き出した。

 
「はあなんでこんな面倒な真似をするんだ、頭が痛い……奪われた先何に使われるか……ここで止めておかないと……」
 末野木・松路(Silence・f16921)は、理解できないという表情で呟いた。松路は調べ物を装いつつ、ルートの把握を徹底していく。
(「四階の閉架図書は出入り口は一箇所のみ、そこを抜けられたと仮定すると――」)
 常に最悪を想定して動く、松路のような人の情よりも計算、暗記が得意な者にとって当然の思考だ。

「四階に至るまでの入口、そして抜け出せそうな場所があれば……」

 松路は持ってきた記録媒体、もといかけていた眼鏡に書いた地図を記録して――手を止める。そう、ここですべてのルートの把握に徹底したからこそ、想定していなかった一つのルートが見つかってしまったのである。
「松路くん」
「美鶴さん、カメリアさん。実は――」
 ちょうど訪れた美鶴とカメリアに松路が口を開いた、その時だ。

 その瞬間、図書館の一角で悲鳴が上がった。

●図書館の怪

「きゃあああああああああああああああああああ!!」

 その悲鳴に、ウイシア・ジンジャーエール(探索者・f09322)は本の世界から現実に引き戻された。幻想的な四季がまとめられた郷土資料に、心躍らせていたウイシアの気分を壊すのには十分なものだった。

(「不審者はいませんかね?」)

 ウイシアは、すばやく周囲に視線を走らせる。吹き抜けから見えるのは、宙に浮かぶ棄テラレシ可能性、それが警備員に襲いかかろうとする光景だ。それを見てウイシアは、とっさに駆け出しそうになる。
 だが、それよりも半瞬早く。見えない手で引っ張られたように、警備員が宙に浮いて逃された。
「やらせんはせんぞ!」
 無累・是空(アカシャ・f16461)の神の見えざる手(ゴッドハンド)だ。即座に追いすがろうとする棄テラレシ可能性へ、是空は左手をかざす!

「念力収束! ゆくぞ神パワー!! ゴッドハーーンドッ!!」

 急に、空中で棄テラレシ可能性が動きを止めた。体がぎゅうぎゅうと萎んでいき――やがて、内側から爆ぜたように四散した。

「みなさん、外へ! こちらです!」

 ジナ・ラクスパー(空色・f13458)の誘導の声に、一瞬の空白の後一般人達が先を競うように逃げ出した。ジナの視線を受けて、是空はうなずく。ここは任せい、と背中で語った是空は、次々と現れる棄テラレシ可能性を、神の見えざる手(ゴッドハンド)で握り潰していく。
「お気をつけて。慌てなくて大丈夫ですよ」
「あ、ありがとう……」
 足をもつれあせた老人に手を差し伸べ、ジナは避難経路へと誘導した。その間も、ジナは周囲の観察を怠らない――しかし、その余裕を与えてくれる相手ではなかった。
「ひっ!?」
 頭上に現われた棄テラレシ可能性に、老人が悲鳴を上げる。ジナはすばやく花陽を引き抜き、その藍水晶の花を向けた。
「風の精霊さん、力を貸してくださいませね」
 ゴォ! と巻き起こった突風が、棄テラレシ可能性を吹き飛ばす。ここは図書館、火も水も本には厳禁だ。そのまま、迫る棄テラレシ可能性をいなしながらジナは避難を優先させた――。

「……チッ」

 その舌打ちを、ウイシアは聞き逃さなかった。一人の男が、苛立たしげに図書館の奥へ向かうのを、ウイシアは透明(インビジブル)によって透明化してついていく。

(「目的地は四階、ですか」)

 この男が邪教徒だ、と確信を得て、ウイシアはその後を追った……。

●閉架図書にて
「……何やってんだ?」
「あはははは」
 呆れたように言う虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)に、ナイアは愛想笑いをするしかない。
 志郎は業者の偽装身分を手に入れ、侵入。図書館のネットワーク周りをハックして閉架図書区画への立入り記録と館内見取り図を入手すると、閉架図書に行く――つもりだった。
「職員が寝てて、先を越されたかと冷や冷やしたぜ」
「そう? でも、有意義な時間だったよ」
 ナイアは魔導書を閉じて、そう言った。その言葉に、志郎は頭を掻く。
「なら、具体的に何がわかったんだ?」
「んー、そうね……例えば――」
 ナイアは考え込みつつ、わかりやすい所から試適する。
「閉架図書の常連さんに……内藤さんはいなかった?」
「――いたな」
 志郎の表情が、明らかに変わる。閉架図書区画への立入り記録、そこで頻繁に記録されている人物に内藤という人物は確かにいた。志郎自身、怪しいと目星をつけておいた人物でもある。
「ねぇ、この魔導書を寄贈した人の名前、わかる?」
「ちょっと待て」
 志郎はハックしたデータを、改めて確認し――その手を止めた。
「おい、これ――」
「寄贈したのも、内藤さん……でしょ?」
「ああ、内藤布袋(ないとう・ほてい)……って人物だが……」
「ね、なら――」
 ナイアが言う前に、志郎はその意図を察している。だからこそ、迷わず答えた。
「内藤布袋は、この市立図書館設立に多額の寄付金を出してる……いわば設立者の一人だ」
「うん、間違いない。これ、壮大な自作自演だ」
 ナイアは魔導書を撫でながら、そう言う。その言葉に、志郎は理解できないという表情で呟いた。
「いや、無意味だぜ、それ。この騒動は魔導書を手に入れるために起こしてるんだろ? なら、その推定内藤さんはどうしてここに寄贈した? 割に合わないだろ?」
「多分、その逆なのよ」
 志郎のもっともな疑問に、ナイアは推論を語る。
「今、この時までこの本がここにあったって事実が必要なの。魔術の世界ではよくある話よ、時間と場所が重要だって言うのは」
「……非効率極まりないな」
 志郎の言葉はもっともだ。しかし、魔術に関わる者ならばこう答えるだろう。

 ――ソレこそが、魔術なのだ、と。

●それは、あまりにも壮大な――
 邪神教徒の男は、ふと気付く。四階に、人の気配がまったくしない事に。

「まさか――!?」

 ここに至り、一つの可能性に到達した男は周囲に視線を巡らせる。
「何者だ、出て来い!!」
(「出て来いって言われて出て行くヤツはいないのです」)
 ステフ・ウッドワード(夕暮れ森の花咲猫・f17855)は物陰に潜みながら、そう心の中で呟いた。しんと静まり返った四階に、三階から下で起きている騒動の声が響いてくる。ステフは、ふと視線を上に上げる――そこには隙間に身を隠した半実体化した体長2mの人型UDCの影がいた。
(「四階にいるってツタえてきてー」)
 ぺらり、とうなずいた影が、消えていく。男が周囲に警戒しながら閉架図書へ向おうとすると――志郎とナイアが姿を現した。
「悪いな、ここから先へは行かせられない」
「くそ! UDC(アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ)か!」
 志郎は、否定しない。それよりも、閉架図書の職員が眠らされている事に気づかれ、人質にでもされる方が問題だ――志郎と向き合う事しばし、男は即座に後ろへと逃げ出した。
「そうね、あいつは魔導書に『拘る必要がない』――」
 ナイアは、意図に気づいている。だが、彼女が動く必要はなかった。男が逃げ込もうとした先から、美鶴とカメリア、そして松路が現われたからだ。
「行く先は――屋上ですか?」
「――ッ」
 松路の指摘に、男が息を飲む。そう、松路が気づいた『もう一つの四階への出入り口』――それこそが、屋上だった。
「屋上に書かれていた魔法陣は消させてもらったわ。あれは、棄テラレシ可能性を召喚するものでしょう?」
 カメリアの指摘に、男は答えない。ただ、表情に忌々しげな苦いものが交じるだけだ。
「残るは、あの棄テラレシ可能性を倒すだけね」
 美鶴が油断なく一歩踏み込むと、男も一歩下がる。男は腰に隠していたナイフを抜くと、身構えた。

「……まさか、UDC(アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ)がここまでやるとはな。だが――まだだ!」

 男は、迷わない。賊座にナイフの切っ先を繰り出した――狙うのは、『己の首元』だ。
「ダメです!」
 物陰から、ステフが飛び出す。だが、一歩間に合わない――!

「――な!?」

 誰も間に合わないと確信していた――だからこそ、この瞬間こそ、男がもっとも驚愕した瞬間だった。リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)が駆け込み、ナイフを紙一重で蹴り飛ばしたのだ。そして、姿を消していたウイシアが後ろから、ステフの暗きに繋ぐ彼誰の腕(アテンド・トワイライト)の影が、男を上から押し潰すように動きを止めた。
「死ぬなんて、させないわ」
 突然現われたウイシアの声に、男は混乱する。しかし、まだ失敗した訳では――。
「な、が――!?」
「舌も噛まさせないよ」
 リュカはすばやく布を噛ませ、男の自害を封じていく。リュカはそこでようやく安堵の息をこぼすと、小さく言った。
「自分が死ぬのも計画の内、か……させないよ」
「っ!?」
 男が驚きに目を剥くと、やって来たクララが言った。
「江戸末期、『仮面の教団』による誘拐事件と殺人事件が起きました。その事件の場所が――『ここ』、なんですね?」
 クララの問いに、男は答えられない。しかし、その表情こそが肯定していた。
「当時の商人である内藤家の記録は、きっと子孫であるあなた達に向けたメッセージだったんですね」
「今日、この時、この場所で人に命が――可能性が、失われる。それこそが邪神の召喚儀式。そして、それを確実に行なうために魔導書は必要だったのね。あくまで、保険として……」
 魔術には、時間と場所が重要になる。それこそが魔術における星辰、星の並びが重要になる。
「あれ? でも、おホシサマ出てないですよ?」
 ステフが、小首を傾げる。その疑問は、もっともだ。昼下がりの昼間に、星など見えない――しかし、それをリュカが否定した。
「いや、夜と同じように星はあるんだ。ただ、陽の光で輝きが見えないだけでね」
 星を見るのが好きなリュカだからこそ、わかる。見えなくとも、星はいつもそこにあるのだ、と。ならば、星辰の条件は昼間であろうと確かに効果を発揮する。
「ま、巣を張るにゃ時間が掛かりすぎたが、今いるこいつらを始末するか?」
 監視カメラ情報と同期し、志郎が言う。監視カメラの中では是空が空中を舞う棄テラレシ可能性を薙ぎ払い、ジナもまた牽制しながら一般人の避難を終えようとしていた。
「おそらく、邪神の召喚はもう止まらないわね。でも、弱体化はさせられるはず」
 ナイアは、魔導書から読み取った知識で語る。
「『千あれば十分、しかしなおも注げ。いあいあ、注がれた可能性だけ無貌は選択肢という名の力を持つのだから――』……可能性、おそらくは命のことだと思う。注がれなくても、今日、この瞬間なら邪神は復活できたけど、もっと強くなるためには生贄が必要だったって事ね」

 ――そう、すべてが今日この時のために。百年以上の歳月をかけて仕込まれた儀式だったのだ。
 一般人の死は免れた。魔導書も、奪われなかった。そして――邪教徒の自決さえ、止めた。
 邪神の企てを阻むべく、猟兵達は戦わなくてはならない。この星辰の可能性の中で……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『棄テラレシ可能性』

POW   :    未来捕食
戦闘中に食べた【敵対者の血肉】の量と質に応じて【醜怪な姿へと成長を遂げ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    現在汚染
【周辺同位体の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【恐怖と絶望に塗れた腐敗性瘴気】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ   :    過去顕現
【悍ましさや痛(悼)ましさ】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象の喪った存在の幻影】から、高命中力の【憎悪を感染させる精神波】を飛ばす。

イラスト:オペラ

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●棄テラレシ可能性
 躯の海へと堕ちた可能性は、求めていた。
 意味を、価値を、祝福を――可能性を抱いたまま朽ちたからこそ、思うのだ。せめて、生まれた事に意味が欲しい。生まれたからには、価値がほしい。そして、許されるのならば祝福を……生まれた者ならば誰もが与えられたソレを、与えられる間もなく奪われていった『過去』――それこそが、棄テラレシ可能性という存在だ。

 ――ならば、我が与えよう。その可能性に、意味を、価値を、祝福を――!

 なればこそ、邪神の呼びかけに応じる。それが自分達が失った可能性目当ての、ただの燃料としてしか見ていない召喚であろうと――それほどまでに、焦がれていたのだ。
 だから、棄テラレシ可能性は戦う。命を欲する。お前もまた、我らのようになれ、と『過去』から誘うのだ。

 だからこそ、この邪神召喚儀式においてこの戦いは必定。屋上の魔法陣が破壊されたため、想定よりも少なくはあるが意気は十二分。棄テラレシ可能性達は、自ら捨て石の役目を、この市立図書館の戦場で果たすべく動くのだった……。
ウイシア・ジンジャーエール
『過去』……ね。
ねえ、それってどんなものなの?
暖かいの?懐かしいの?微笑ましいの?誇りたいの?
それとも、後悔があるの?悔しいの?やり直したいの?
過去から誘ってくれるんでしょう?

さあ、記憶の無い私に、説明しなさいよ。


オラトリオの姿を顕現。
強い気持ちで[オーラ防御][全力魔法][激痛耐性][呪詛耐性]

[空中戦]で[全力魔法]の【白木蓮の舞】。
アイテム【花の盾(ビームシールド)】で防ぎながら[第六感]で回避。
[呪詛耐性][オーラ防御]、万が一は[激痛耐性]で耐える。

空中戦を活かして、ヒット&アウェイ戦法。

【花の盾】で防御しつつ[第六感]で攻撃の隙を探す。
[早業]で[カウンター]を繰り出し反撃する。


ハニー・ジンジャー
ダメだよ
そんなにきらきら、輝くお前を
捨て石になどさせまいよ

可能性らの、手管を避ける気は更々なくって
我らを食もうとするものだから、あんまり嬉しくって
ああ、そんなに我らが欲しいの?我らもお前が欲しいよ、なんて、笑って
価値が祝福がほしいのでしょう?我らがソレを永劫あげる
だからどうか啼かないで
我らとひとつになりましょう?

おいでおいでと手招きをして。
爪で弾くは『柘榴』石。
我らは取り込み続けた果ての『chimera』。
我らがお前を取り込む姿は、美しい光景ではないそうだから。
お前の最期は我らだけが見れば良い。
闇の中で逢瀬といこうか。
暗転。
出てきた時には、もうお前は我らとひとつだ。
「ああ、愛しているよ。」


無累・是空
憐れれなり。
憐れには思うが、わしらには救えぬものじゃ。
意味も、価値も、祝福も。人ならざる神であっても、わしにはなにひとつ与えられん。
躯の海にこぼれたミルクを嘆いても詮無きこと。生み出すものであるわしは、より多くの誹りを受けねばならんのかもしれんな。

じゃが!生きるとは可能性を選び摘むことじゃ!間引きの果てに選んだ可能性を育むことじゃ!!
仲良く躯の海に沈んではやれぬ。
道理の正しさだけで争いがおさまるならこれほど苦しまずともよいものをな。
真っ正面から打ち破るぞ!
俄然、黒幕の横面を殴り飛ばさねば気が済まなくなったのでな!

超神足通を使用するぞ。
輪廻なぞがあるのなら速やかにそっちに転送してやるわい!


クララ・リンドヴァル
その瞳に映すは未来を持つ全てに対する嫉妬……。
来ましたね。棄テラレシ可能性。

4階でリザレクト・オブリビオン発動。召喚した2体を向かわせます。死霊が痛ましさを感じるかはわかりませんが……少なくとも自分よりは希薄かな、とは。
うち1体は敵が4階に上がって来ない為の迎撃役。3階に降りて、4階に上がる階段の手前で立ち回って貰います。もう1体は3階を好きに動き回らせます。他の猟兵の皆さんを手助けして下さいね。
その間自分は【目立たない】場所で息を潜めて、被弾しない事を第一に立ち回ります。3階が片付いたら迎えに来て下さいね。2階でも同じ事をしますから。
2階と1階が吹き抜けで繋がっている点は留意。


比良坂・美鶴
【夜鷹】の皆と一緒に

使い捨てのような召喚でも応えるのね
残念だけどそちらには行けないわ
アタシは送る者だからね

近付きつつある敵を
衝撃波で吹き飛ばし十分距離を離して
『リザレクト・オブリビオン』
さあいらっしゃい 仕事の時間よ

戦いをよく観察しながら
攻撃が届きにくい距離を維持
二人との連携を意識しつつ
二回攻撃と薙ぎ払いを駆使し
距離が近いものを優先して仕留める

接近された場合は
観察していた動作を元に動きを予測し回避
躱しきれないものは
残った敵を引っ掴んで肉盾にして防ぎ
即カウンターをお見舞い

2人に攻撃が及んだ場合も
同様にして死霊達に防がせるわ

欲しがりさんね――でも、駄目よ
二人には触れさせない

※アドリブ歓迎


カメリア・クラウゼヴィッツ
【夜鷹】の皆と一緒に
アドリブ歓迎

”棄テラレシ可能性”
お前たちは、私たちの人生にあった無数の、選ばれなかった道
そしてこれから生きていくことで、無数にあるだろう、選ばれない道
…と私は解釈してるんだけど

自分で自分を見捨てない限り、私はお前たちのようにはならない
選んだ未来が選ばなかった過去に台無しにされるなんてあっちゃいけないのよ

美鶴に合わせて衝撃波で敵避けを
【サモニング・ガイスト】で騎馬兵を召喚
過去には過去を
蹴散らしなさい、お兄ちゃん«Apostel»

ハッピーバースデー、R.I.P.
お前たちには意味も価値も祝福すらも与えてあげられないけど
せめて、これまでも、これからも、お前たちの分まで生きてあげるわ


末野木・松路
【夜鷹】の皆さんと一緒に
アドリブ歓迎/

利用されて、それでもなお焦がれるのか。
ああ、俺は羨ましい。それ程に欲する理由があることが。
可能性の意味は生み出すものだ。なにかを犠牲にして得られるもんじゃない。

来い、JOKER。
少しだけ許してやる。俺の中の忌々しい住人。
美鶴さんやカメリアさんと連携して攻撃を、そして足止めを。
…クソ。それにしても相変わらずよく暴れる野郎だ。傷口が痛む。
だが苦しんでもいられない
その間に俺は棄テラレシ可能性の動きに気を配ろう
一定の距離は保ちつつ、苦戦している者や危ない者がいればそちらに優先してサポートを。

さようなら
せめて次に目を覚ます場所が、生き甲斐のあるものでありますように。


虻須・志郎
アドリブ連携可

段取りが狂っちまったが、まあいい
先ずはこいつらを片付けてやらあ
覚悟は出来た、さあ行くぜ

機神覚醒――詠唱省略、推して参る
流血を代償に、流れた血は王者の石で回収
腐敗性瘴気対策には内蔵無限紡績兵装で
耐腐食性素材で追った外套を縫製し装備
多少の呪詛なら、耐えてやるさ

周辺同位体の寿命で強化されるってなら
個別に生命を喰らい尽くして
さっさと余剰の寿命を使い果たさせてやろう

仲間の援護に精神波対策でアムネジアフラッシュを
インセインで解析した波長に合わせて放出するぜ
相殺出来れば多少はマシになるだろうよ

回りくどいのが魔術ってか……相変わらずだが
矢張り宇宙の民には理解しかねるな
それもこれも――此処で終いだ


ナイア・アルハズラット
内藤さんにもこの魔導書にも、なんだか親近感わいちゃうのよね。
なんでかしら?不思議よね?

それはさておき、『アレ』の対処をしないといけないんだけど……倒す事すら想定済みってホントいやらしい儀式ね。
存在ごと消し去るような魔術は用意してないし……とりあえず、サポートに回りましょうか。
【ング・アルグァの三重拘束魔術結界】で瘴気を発生させたヤツから縛り上げるわ。
近寄り難くなるし周辺被害とかもヤバそうだし?直接倒すのは戦いが得意な方にお任せするわ。
この隙に内藤さんに逃げ出されても困るしね。
彼がかの神を見て何を思うか、興味があるわ。だからニガサナイわよ?(にっこり


リュカ・エンキアンサス
価値…か
そういうのは、よくわからない
意味も、価値も、与えてくれる人なんて俺にはいなかった
それを、寂しいと思うこともあるけれど…
でも、そんな邪神なんかに与えてもらっても仕方がないと思うんだ

銃での一斉掃射を行う
敵が目に入った瞬間から片っ端から撃ちつくす
近くに敵に接近する仲間がいるなら、援護射撃に切り替える
なるべく攻撃を妨害する感じで
怪我しない優先

醜悪な姿も正気も、目に入った途端に不快さを感じるんだから、
それも立派な意味であり価値だ。
…けれど、求めているのはそれじゃないんだろうなって思うから、
…なんだかそれはとても、残念なことのように思うから
祈りをこめて引き金を引く。何を祈るかは自分でも解らないけど



●かの神
「内藤さんにもこの魔導書にも、なんだか親近感わいちゃうのよね。なんでかしら? 不思議よね?」
 ナイア・アルハズラット(いずれ深淵に至る魔導書・f04959)は魔導書の表紙を撫でながら、視線を虚空へ向けた。
「それはさておき、『アレ』の対処をしないといけないんだけど……倒す事すら想定済みってホントいやらしい儀式ね」
 次々に、棄テラレシ可能性が市立図書館の中に姿を現していく。それでも、屋上の召喚儀式を止めただけ少なくあるのだから、どこまで念入りに用意されていたかわかる光景だ。
「存在ごと消し去るような魔術は用意してないし……とりあえず、サポートに回りましょうか――」
「ヒ、イ!?」
 足元に転がった内藤へ、棄テラレシ可能性が群がっていく。自分で命を落とせても、食われて死ぬ覚悟のある者など、そういるはずもない――ナイアは、すかさずうごいた。
「一つでダメなら三つで縛る……ッ。アグゥア! ツグゥア!! イグゥア!!!」
 ビシィ! とナイアのング・アルグァの三重拘束魔術結界(トリニティ・バインド)が棄テラレシ可能性達の動きを止める。捕食を封じられ、棄テラレシ可能性達がビチビチと蠢いた。
「はぁ、はぁ……助かっ、んぐ!?」
 内藤の身もまた、ング・アルグァの三重拘束魔術結界(トリニティ・バインド)が縛る。身動き出来ない状態であがく内藤を、ナイアは見下ろした。
「この隙にあなたに逃げ出されても困るしね。あなたがかの神を見て何を思うか、興味があるわ。だからニガサナイわよ?」
 ニコリ、とナイアは微笑む。存在ごと消し去るような魔術は用意してない――ならば、サポートに回るべきだろう。ナイアは内藤を確保したまま、仲間達の背中を見送った。

●可能性とは
「『過去』……ね」
 市立図書館の中で、所狭しと溢れ出す棄テラレシ可能性に、歌うようにウイシア・ジンジャーエール(探索者・f09322)が問いかけた。
「ねえ、それってどんなものなの? 暖かいの? 懐かしいの? 微笑ましいの? 誇りたいの? それとも、後悔があるの? 悔しいの? やり直したいの? 過去から誘ってくれるんでしょう?」
 答えはない、答えなど求めてもいない。ただ、ウイシアは問いかけるのみ。

「さあ、記憶の無い私に、説明しなさいよ」

 バサリ、とオラトリオの証である翼を広げてウイシアは身を虚空へ踊らせた。二階と一階をつなぐ吹き抜け――落下の途中で舞い上がると、棄テラレシ可能性達が襲いかかる。

「散って」

 真実の木が無数の白木蓮の花びらへと変わり、吹き荒れる。ウイシアが振るう両手の動きに合わせ、花びらが棄テラレシ可能性達へと迫り削っていった。
「多いわね」
 無駄に、とウイシアは吐き捨て、花びらを掻い潜ってきた棄テラレシ可能性を、オーラを宿した花の盾によって受け止める。ウイシアの目の前で、『何カ』が生まれようとした――しかし、その過去が形をなす前に綻びたように掻き消えていった。
「使えないわね」
 ならばいらない、と高速で放たれた白木蓮の舞(フワラー)の花びらが、上から棄テラレシ可能性を『重み』で潰した。

 無累・是空(アカシャ・f16461)は、真っ直ぐに駆けていく。
「憐れれなり」
 是空は、ただ一言そう言い表した。棄テラレシ可能性が、それに何を想うか知る術はない――それが例え、神であろうとだ。
「憐れには思うが、わしらには救えぬものじゃ。意味も、価値も、祝福も。人ならざる神であっても、わしにはなにひとつ与えられん」
 棄テラレシ可能性達が、瘴気をまとっていく。ドス黒い弾丸と化して迫る棄テラレシ可能性達を、是空は左右にステップ。掻い潜っていった。
「躯の海にこぼれたミルクを嘆いても詮無きこと。生み出すものであるわしは、より多くの誹りを受けねばならんのかもしれんな」
 轟音を鳴り響かせ、間にあった障害物を破壊して棄テラレシ可能性達が∪ターンしてくる。まるでやり場のない想いをぶつけてくるような攻撃に、是空は憐れみの視線を向けて――憐憫を、断ち切った。
「じゃが! 生きるとは可能性を選び摘むことじゃ! 間引きの果てに選んだ可能性を育むことじゃ!! 仲良く躯の海に沈んではやれぬ」
 道理の正しさだけで争いがおさまるならこれほど苦しまずともよいものをな、と是空は身構え、∪ターンして来た。棄テラレシ可能性達へ、真正面から突っ込んだ。
「真っ正面から打ち破るぞ! 俄然、黒幕の横面を殴り飛ばさねば気が済まなくなったのでな!」
 超神足通(スーパージンソクツウ)――溢れ出す神気を見にまとい、是空が飛翔。ガガガガガガガガガガガガガガガガガガン! とすれ違った棄テラレシ可能性達を、念動力によって打ち砕いた。

「輪廻なぞがあるのなら速やかにそっちに転送してやるわい!」

 これで終わりではない、次の救いを与えるために神は飛んだ。

「その瞳に映すは未来を持つ全てに対する嫉妬……。来ましたね。棄テラレシ可能性」
 クララ・リンドヴァル(本の魔女・f17817)は、リザレクト・オブリビオンによって死霊騎士と死霊蛇竜を召喚した。

(「死霊が痛ましさを感じるかはわかりませんが……少なくとも自分よりは希薄でしょうか?」)

 死霊騎士と死霊蛇竜の表情は、わからない。三階へ降りると死霊騎士を四階へと上がる階段の前に残して、死霊蛇竜と共にクララは向かった。
 そこでは、迫る棄テラレシ可能性達を灯り木の掃射で撃ち貫くリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の姿があった。
「価値……か。そういうのは、よくわからない。意味も、価値も、与えてくれる人なんて俺にはいなかった。それを、寂しいと思うこともあるけれど……でも、そんな邪神なんかに与えてもらっても仕方がないと思うんだ」
 自分の想いをどう言葉にすべきか、きっとリュカ自身わからない。それでも、違うと言える事はある――絶望の福音によって見た十秒後の未来、それに合わせて死霊蛇竜を引き連れるクララへ向かおうとした棄テラレシ可能性を、リュカは振り返らずに撃ち抜いた。
「ありがとうございます」
「構わない」
 礼を告げて物陰に滑り込むクララに、当然の事をしたまでとリュカは愛用の改造アサルトライフルを構えた。
 次の瞬間、空中をのたうつように死霊蛇竜がその牙を振るった。まとう瘴気さえ物ともしない牙が、棄テラレシ可能性を噛み砕いていく。その軌道を確保するように、リュカは支援射撃に徹していった。
「醜悪な姿も正気も、目に入った途端に不快さを感じるんだから、それも立派な意味であり価値だ――」
 ……けれど、求めているのはそれじゃないんだろうなとリュカは思う。
 ……なんだかそれはとても、残念なことのように思うから、リュカは祈りをこめて引き金を引く。一発一発、可能性を終わらせる銃弾に祈りを捧げるかのように――。
 何を祈るかは自分でもわかっていないリュカの姿に、クララは皮肉を見る。祝うと呪う、その字のなんと似た事か。せめて、誰よりも真摯に祈るリュカの想いが、失われた可能性の救いであって欲しい、そう思わずにはいられない……あまりにも、悲嘆に満ちた光景だった……。

 市立図書館の一階。そこ立ち、目の前を埋め尽くしていく棄テラレシ可能性達に、虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)は言い捨てた。
「段取りが狂っちまったが、まあいい。先ずはこいつらを片付けてやらあ。覚悟は出来た、さあ行くぜ」

 ガシャン――と内蔵無限紡績兵装を展開。志郎は、身構える。

「機神覚醒――詠唱省略、推して参る」

 ドロリ、と体から血が流れるのを感じながら、志郎は床を蹴った。現在汚染によって瘴気をまとった棄テラレシ可能性達の突撃に、内蔵無限紡績兵装によって耐腐食性素材で覆った外套を縫製。バサリと身を包んだ。
「多少の呪詛なら、耐えてやるさ――」
 ドドドドン! と迫る棄テラレシ可能性達を受け止め、志郎は手足を振るった。肘を落とし、膝をぶち上げ、蹴りで薙ぎ払い、拳を振り下ろす――丁寧に一体一体打ち砕きながら、志郎は前へと出る。
「逃がすか」
 間合いをあけようとした二体の棄テラレシ可能性を、志郎は両手で掴んだ。ミシリ……と棄テラレシ可能性の外殻を軋ませながら志郎は言い捨てる。
「さっさと余剰の寿命を使い果たせ」
 生命力を喰ら尽くされ、ボロボロと棄テラレシ可能性が砕け散った。逃げようとする棄テラレシ可能性達だったが、不意にその動きを止めた。
 ハニー・ジンジャー(どろり・f14738)の姿が、そこにはあった。
「ダメだよ。そんなにきらきら、輝くお前を捨て石になどさせまいよ」
 まるで、幼子に語りかける老人のように、あるいは届かぬ月を見上げる獣のようにハニーは微笑む。棄テラレシ可能性達が、ハニーへ殺到する――それに、ハニーは囁いた。
「可能性らの、手管を避ける気は更々なくって我らを食もうとするものだから、あんまり嬉しくって。ああ、そんなに我らが欲しいの? 我らもお前が欲しいよ」
 囁く口が、笑みを刻む。吐息のように、甘く甘く――。
「価値が祝福がほしいのでしょう? 我らがソレを永劫あげる。だからどうか啼かないで――我らとひとつになりましょう?」

 湿った水音が、響き渡る。貪るように棄テラレシ可能性達が、ハニーへ牙を突き立てた――その、はずだった。
「我らは取り込み続けた果ての『chimera』。我らがお前を取り込む姿は、美しい光景ではないそうだから――お前の最期は我らだけが見れば良い。闇の中で逢瀬といこうか」
 チン、と『柘榴』石を爪弾くとハニーを中心に溢れる夜の幕が展開される。抵抗するモノは、いなかった。まるで、自ら夜へと旅立つように棄テラレシ可能性達は闇の中に飲まれていったのだ。
 しばらく立って、闇の中からハニーが現れる。
「問題ないようだな」
「ええ、もちろん」
 無事を確認した志郎は、次の戦場を求めて駆け出す。それを見送って、ハニーは夢心地の表情で呟いた。

「ああ、愛しているよ」

 もうお前達は我らとひとつだ――そう告げるように……。

●意味とはどこに――
 二階、無数の本棚が立ち並ぶそこに【夜鷹】のメンバーはいた。
「“棄テラレシ可能性”。お前たちは、私たちの人生にあった無数の、選ばれなかった道。そしてこれから生きていくことで、無数にあるだろう、選ばれない道……と、私は解釈してるんだけど」
 カメリア・クラウゼヴィッツ(林檎椿・f17005)はそう呟くと、棄テラレシ可能性達を見上げた。
「自分で自分を見捨てない限り、私はお前たちのようにはならない。選んだ未来が選ばなかった過去に台無しにされるなんてあっちゃいけないのよ」
 答えはない。あるいは、答えという可能性を彼らは持っていないのかもしれない。だとすれば、その可能性は自分の中にあるはずだ――そうカメリアは、心に刻んだ。
「使い捨てのような召喚でも応えるのね。残念だけどそちらには行けないわ、アタシは送る者だからね」
 比良坂・美鶴(葬列・f01746)が左手を掲げ、ドン! と衝撃波を撒き散らす! かき乱される大気、吹き飛ばされる棄テラレシ可能性達――わずかに空いたその瞬間、美鶴とカメリアが同時に動いた。
「さあいらっしゃい 仕事の時間よ」
「過去には過去を――蹴散らしなさい、お兄ちゃん«Apostel»」
 美鶴の眼前に死霊騎士と死霊蛇竜が召喚され、カメリアの目の前に騎馬兵が召喚される。死霊騎士が剣を振るい、死霊蛇竜が牙を剥く――そして、騎馬兵がランスを腰溜めに構え突進した。
 無数の斬撃音と咀嚼音、貫く音が二階に響き渡る。その隙間を抜けた棄テラレシ可能性を、末野木・松路(Silence・f16921)がクランケヴァッフェで打ち砕いた。
「利用されて、それでもなお焦がれるのか。ああ、俺は羨ましい。それ程に欲する理由があることが」
 ――それでも、と松路は思う。羨んでも、自分はそちら側になれないのだ、と。
「可能性の意味は生み出すものだ。なにかを犠牲にして得られるもんじゃない」
 松路が着地と同時、次の棄テラレシ可能性が美鶴とカメリアを狙う。知識ではなく本能が、死霊達や騎馬兵を消滅させる最適解を導き出したのだろう。
 させない、そう松路は首元のチョーカーに触れた。

「来い、JOKER。少しだけ許してやる。俺の中の忌々しい住人」

 チョーカーを外した松路の首元から現われたのは、漏れ出す電流をまとう異形の影だ。体中に電流が走る、しかし、開放された影は意に介さない。開放された喜びのまま暴れまわり、美鶴とカメリアに迫る棄テラレシ可能性を破壊した。
「……クソ。それにしても相変わらずよく暴れる野郎だ。傷口が痛む」
「無茶はしちゃ駄目だからね?」
 そういたわりながら、美鶴は戦況を見極める。自分だけではなく、カメリアや松路に迫る棄テラレシ可能性を死霊騎士に斬り伏せさせた。
「欲しがりさんね――でも、駄目よ。二人には触れさせない」
「ハッピーバースデー、R.I.P.。お前たちには意味も価値も祝福すらも与えてあげられないけど、せめて、これまでも、これからも、お前たちの分まで生きてあげるわ」
 そして、カメリアが騎馬兵が取りこぼした棄テラレシ可能性を衝撃波で薙ぎ払っていく。
 数は減っていき、やがて姿を消していった。それを見送り、松路はこぼす。

「さようなら。せめて次に目を覚ます場所が、生き甲斐のあるものでありますように」

 ――その祈りを嘲笑うように、強大な気配が頭上に生まれた。
「こ、れは……!?」
「……屋上ね」
 見上げた松路に、美鶴は答えた。カメリアは、押し殺した声で告げる。

「ようやく神様が、重い腰を上げたみたいね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『暗黒面客将』ナイ・アルアー・ト・テフ』

POW   :    『無貌の神(フェイスレス・ゴッド)』
自身の身体部位ひとつを【顔のない黒いスフィンクス】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    『輝く多面体(シャイニング・トラペゾヘドロン)』
【負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【無数の死した宇宙の遺骸で出来た多次元牢獄】から、高命中力の【牢獄へ引きずりこもうとする邪神の触手】を飛ばす。
WIZ   :    『闇に囁くもの(ウィスパ-・イン・ダークネス)』
戦闘中に食べた【他者の負の感情】の量と質に応じて【『白痴の魔王』の力を借り受け】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。

イラスト:猫背

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『暗黒面客将』ナイ・アルアー・ト・テフの誤算

 演算――可能性の習得数。

 ニンゲンの生贄――なし。もっともあるべき贄がない。
 術者の生贄――なし。最低限のトリガーさえ贄がない。
 可能性の生贄――想定よりも少量。されど、これを起動のトリガーに代行せり。
 魔導書の生贄――なし。叡智による『補強』はなし。

 なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし。なし――何だというのかコレは。

 百年を超えるスパンの計画に、問題は一切なく。今日、この一日だけでこれだけの計画の修正を余儀なくされるなど。

 計算違い? 否、神に間違いなど無い。ならば、このエラーの数々は何なのか?

 神は、これを『計算外』と呼称する。計算違いなどではなく、元より計算になかった因子が混じったからこその結果。

 ならば、ぶち壊そう。この先の計画を全てご破産に。目の前の因子を潰し、手当たり次第に可能性を溜め込もう。それでいい、それがいい、もはや計画など知るものか!

『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――!』

 市立図書館の屋上、破壊された魔法陣の上で『暗黒面客将』ナイ・アルアー・ト・テフが吼える。まずは適当に人々の可能性を奪うために、ここに顕現した……。
ジナ・ラクスパー
ここまでの邪魔をされてもまだ
思惑がが覆ることを思わないのですね
可能性を手当たり次第に奪うと仰るなら
ひとつでも多く守るだけ、奪い返すだけ
できると信じることと、断じる傲慢は違うのです

エンハンスは防御強化
槍に変化させた花陽で前へ
身躱しの術で敵の死角を味方に晒すよう誘導しながら
スフィンクスの口に花盾を突き込み耐える
そのまま噛みつかれても構わない、痛みなら過ぎれば消える
でも奪われる命は、決してもとには戻らないから
適当になんて浅い理由で譲りはしません
真正面から熄みの雨花を

絶対を騙る神様は、絶対なんてないと知る私たちには勝てない
敗北の『可能性』を読めなかったことがあなたの誤算です
さようなら、お熄みなさい


ウイシア・ジンジャーエール
これが神、だなんて。なんて傲慢なのかしら。
天啓を受けたオラトリオとして、見過ごすわけにはいかない。

屋上なら飛行に問題ない。[空中戦]を継続。
【花通り】で[視力][暗視]補強。

[全力魔法]のUC【白木蓮の舞】。
アイテム【花の盾(ビームシールド】で防ぎながら[第六感]で回避。
[呪詛耐性][オーラ防御]で耐える。

空中戦を活かして、ヒット&アウェイ戦法。
敵SPD触手は回避し、追ってくる物をUCの花ビラで切断。

【花の盾】で防御しつつ[第六感]で攻撃の隙を探す。
[早業]で[カウンター]を繰り出し【白木蓮の舞】で攻撃を繰り返す。

●連携歓迎。中後衛。範囲攻撃型。
前衛が居れば動きやすいようUCの軌道を変える。


リュカ・エンキアンサス
これが…神様なんだ
なんだか神様って、碌でもないのばかりだな
一日の計算違いぐらい、飲み込んでこそだと思うけれど…と、言っていても仕方がない

やることは変わらない。銃を構えて撃つ
基本は援護射撃だけど、噛み付いてくるならその口(?)の中にも一発お見舞いできたらいい

そうだね…想定外のことが起こっても
あわてず騒がず対処していけたら
敵が思いのほか強いとか
倒しにくいとか
そういうのはじっくり腰すえてやっていくしかないし
負傷者がでるなら応急手当ぐらいは出来るし
危険なら逃走も視野に入れる
本当に想像も出来ないようなことが起きたら、驚くだろうけど…自分に出来ることを探す
あなたのそれは、子供の癇癪だと思うよ。どうかな


ナイア・アルハズラット
心情:似た力を持つ者としてあんな無様な姿は認められない。ゆえに真っ向から力を示してやる!

コレが呼び出した神さまねぇ、なんだか期待はずれだわ?
まるで駄々をこねる子供か、獣じゃない。
神とあろう者が優雅さのかけらもないなんて……。
内藤さんも、極々普通狂信者みたいだし……深読みが過ぎたかしらね?

ともあれ……良いわ、負担が大きいから使うつもりは無かったのだけれど、あの神様も、どうやらよく似たあるいは類似する可能性のひとつの様だし、私もその断片を魅せてあげましょう!

ユーベルコードで黒い甲冑の様な姿に変身し、魔槍を片手に突っ込むわ。
触手は槍で斬りはらったりスピードで翻弄する。
小細工なしの真っ向勝負よ!


虻須・志郎
アドリブ連携可

計画倒れだぁ?
次に目覚める時は自称起業家の公開セミナーでも行って
いい話でも聞いて出直してこいや。次があればだがな!

兎に角相手の動きを封じてやる
噛みつき攻撃をしてくるなら死紡誘伎――内蔵無限紡績兵装の
攻撃回数を最大に、ロープワークで罠拵えてその口塞いでやるぜ

それでも破って出てくるようなら
紡いでこさえたダミーの肉体に毒を捻じ込んで喰らわせてやる
奪ってみろよ、耐えられるならな!

こっちだって多少の痛みは耐える覚悟で来てるんだ
ある程度動きを止められたら正面から捨て身で殴って
逆にその生命を喰らい尽くしてやらぁ

こっちもその名と貌は散々付き合いがあるんだよ
伊達で名乗るなら一遍堕ちて出直してこい!


無累・是空
共闘するぞい!

ようやく黒幕のお出ましじゃな!
なんじゃ、貴様どこぞの悪神か?
どんな悪巧みしとったか分からんがの、いつまでも人の世でデカいツラしようなどと、情けない奴め。
わしにも貴様にも、世界をどうこうする権利などありはせんわい!
幅を利かす顔のデカいOBなぞウザいだけじゃろ!大人しく骸の海に沈んでおれ!

『超神足通』でぶっ飛ばすぞ!
【念動力】全開じゃあ!【空中戦】で回避行動しつつ避けられなければ【オーラ防御】じゃな。
相手は神じゃからの、油断はできんぞ。じゃが、横っ面殴り飛ばすとわしは決めておったのでな!
歯あ食いしばって覚悟せぇ!!


クララ・リンドヴァル
……。(ぐらり)
あ。す、すみません。
なんだか、震えが止まらなくて。
とても巨大で、悪意に満ち満ちていて。これが、邪神……。
……絶対に、ここで封じます。
『不変』のリンドヴァル、参ります……!

初撃は【高速詠唱】で荷台を呼び出すと同時に高速で【突進】させて、味方の【援護射撃】を行わせます。魔法陣から突如放たれる豪速の風、果たして避けられるでしょうか……!
基本は自分と一緒に味方のフォローをしつつ、【突進】を食らわせる機会を伺うと良いでしょう。
触手に取り付かれたら、無理に暴れるより【魔力放電】を行った方が振り切り易い筈。
神ですらも「時」を逸すれば滅ぶのみ……川とは、決して逆流したりはしないものです……!


比良坂・美鶴
【夜鷹】の皆と

あら
邪神様は寝覚め最悪ってトコかしら
それならもう一度寝直して貰いましょ

他の猟兵の戦いをよく観察しつつ
時間差で仕掛けましょう
攻撃が届かないギリギリの位置を意識するわ

相手が強力なら頭数は多い方がいいわ
指を鳴らして『リザレクト・オブリビオン』
造り物の死霊に感情なんてあると思う?
さあ 仕事の時間よ

死霊蛇竜を邪神に嗾け
触手を食い千切らせ相手の手数を減らしましょう
それに不完全な復活だもの
再生の限界もあるでしょう?

騎士は2人の傍に控えさせ防御に徹させるわ
邪神の攻撃が飛んで来たら
衝撃波を乗せた騎士の攻撃で弾き落し
生じた隙を二人に託すわね

言ったでしょ
貴方達には触れさせないって

※アドリブ歓迎


カメリア・クラウゼヴィッツ
【夜鷹】の皆と一緒に
アドリブ歓迎

どうもごきげんよう、神様
せっかく重い腰を上げて貰ったんだけど、今からその腰を砕かせて貰うわ
二度と立ち上がれないようにね

お兄ちゃん«Apostel»、暫くその剣と盾で守って
相手の出方を見たいわ。観察すべきは…味方の表情?
どれも厄介なことには変わりないみたいね
お兄ちゃん«Apostel»、スフィンクスを優先して倒しましょ
残念だけど神様、今のアナタの状況はさっきの生贄たちと大差ないと思うわよ

いやな感情は棄ててきたわ。今の私には必要ないもの

私は私の仕事をしなきゃね、ありがと、美鶴とナイトくん
寝かしつけてあげるわ神様、衝撃波«子守歌»はご入り用?

それじゃごきげんよう、神様


末野木・松路
▽アドリブ歓迎
【夜鷹】の皆さんと一緒に

なん、だアレ…
いや、邪神には違いないんだろうが…
悍ましい姿だ
けど思考回路は暴走気味のようだな
吼える声が耳には喧しくてかなわない
暴れまわる前に、眠ってくれよ

トドメの一撃には心許ないが、攻撃を試みる
それにしてもどう範囲に入るか
…あれ。あなたは美鶴さんの操る死霊…?
ああ、そうか、ありがとうございます…これで安心して集中できる
この両眼で視える範囲ならば…捕らえたあいつを逃しはしない
気付かれないように、近づきすぎないように、目立たずに
けれど炙るようにじっくりと…邪神を見据える
その生命力
じわじわと削ってやる

はあ…終わった、か…?
だめだ、集中した後はふらふらするな



●千の無貌
 市立図書館が、鳴動する。比喩ではない、屋上に現われた存在の怒りが震わせているのだ。
「…………」
「おっと、大丈夫か」
 屋上へ至る階段の途中でで体勢を崩したクララ・リンドヴァル(本の魔女・f17817)を、虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)がとっさに支える。建物の揺れだけではない、クララ自身も小さく震えていた。
「あ。す、すみません。なんだか、震えが止まらなくて。とても巨大で、悪意に満ち満ちていて。これが、邪神……」
「ロクでもない事は、大体邪神の仕業だ」
 ひどく実感を込めて、志郎が吐き捨てる。志郎自身も、屋上に現われたのがその類だとすぐに察したのだ。
 ――猟兵達が、屋上へたどり着く。そして目にしたのは、巨大な仮面だ。『暗黒面客将』ナイ・アルアー・ト・テフ――千の無貌の神、その一面だ。
「コレが呼び出した神さまねぇ、なんだか期待はずれだわ?まるで駄々をこねる子供か、獣じゃない。神とあろう者が優雅さのかけらもないなんて……。内藤さんも、極々普通狂信者みたいだし……深読みが過ぎたかしらね?」
 身に覚えの有りすぎる気配に、ナイア・アルハズラット(いずれ深淵に至る魔導書・f04959)はため息をこぼす。あの内藤さんはあくまで子孫、完成へ至るための生贄に過ぎなかったのだろう――婉曲的な計画を好むのは、もはや千の異貌が持つ本能のようなものだが、あまりと言えばあまりだった。
「これが……神様なんだ。なんだか神様って、碌でもないのばかりだな」
 思わず本音をこぼしたリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)へ、ウイシア・ジンジャーエール(探索者・f09322)は強い口調で言い放つ。
「これが神、だなんて。なんて傲慢なのかしら。天啓を受けたオラトリオとして、見過ごすわけにはいかない」
『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――!』
 ナイ・アルアー・ト・テフが、吼える。その殺意と怒りを真っ向から受け止め、無累・是空(アカシャ・f16461)が前へ踏み出した。
「ようやく黒幕のお出ましじゃな! なんじゃ、貴様どこぞの悪神か? どんな悪巧みしとったか分からんがの、いつまでも人の世でデカいツラしようなどと、情けない奴め。
わしにも貴様にも、世界をどうこうする権利などありはせんわい! 幅を利かす顔のデカいOBなぞウザいだけじゃろ! 大人しく骸の海に沈んでおれ!」
 神として言わずにはいられない、そういう剣幕の是空へナイ・アルアー・ト・テフが返したのは実に単純な行動だ。
 自らを顔のない黒いスフィンクスの頭部へと変化させる――ナイ・アルアー・ト・テフの無貌の神(フェイスレス・ゴッド)だ。
「あら、邪神様は寝覚め最悪ってトコかしら。それならもう一度寝直して貰いましょ」
 その変貌を目にしてなお笑みを崩さず、比良坂・美鶴(葬列・f01746)は言い切る。それに、カメリア・クラウゼヴィッツ(林檎椿・f17005)も一礼して見せた。
「どうもごきげんよう、神様。せっかく重い腰を上げて貰ったんだけど、今からその腰を砕かせて貰うわ。二度と立ち上がれないようにね」
『オオオオオオオオオオオォッ――!!』
 獅子の咆哮に似た叫びと共に、ナイ・アルアー・ト・テフが猟兵達へと襲いかかった。
●仮面に形など、あるはずもなく
 どこまでも無が広がる、夜空のような黒いスフィンクスが牙を剥く。目には見えない、しかし肌を突き刺すような感覚に末野木・松路(Silence・f16921)は後退しながら言った。
「なん、だアレ……いや、邪神には違いないんだろうが……悍ましい姿だ。けど思考回路は暴走気味のようだな。吼える声が耳には喧しくてかなわない。暴れまわる前に、眠ってくれよ」
 ガゴン! と屋上の床が『削れる』。牙の跡が生々しく残るそれを見ながら、ジナ・ラクスパー(空色・f13458)は花陽を槍へと変化させた。宿る地水火風の精霊の内、トリニティ・エンハンスで風の魔力を開放――そのまま、前へ出た。
「ここまでの邪魔をされてもまだ、思惑がが覆ることを思わないのですね。可能性を手当たり次第に奪うと仰るなら、ひとつでも多く守るだけ、奪い返すだけ――できると信じることと、断じる傲慢は違うのです」
 ナイ・アルアー・ト・テフの形が崩れ、ヒュガガガガガガガガ! と無数の触手がジナへと放たれる。千にして無貌、形など意味がない――その触手を誘導するように、風を身にまとったジナは鉱石の花で受け止めた。
 その間にナイ・アルアー・ト・テフの頭上、死角を取ったのはウイシアだ。
「散って」
 翼で風を受けながら、ウイシアの真実の木が白木蓮の花びらへと変わり、ナイ・アルアー・ト・テフへと放たれる! 白い花びらの滝が黒い仮面を穿っていく――そこへ溢れ出す神気を身にまとい飛ぶ、是空が殴りかかった。

「念動力全開じゃあ!」

 ドォ! と是空の念動力を帯びた拳が、ナイ・アルアー・ト・テフを粉砕する。しかし、一秒も満たない時間で再生、元の形を取り戻した黒いスフィンクスの仮面が牙を剥いた。
『オオオオオオオ――ッ!』
「させるかぁ!」
 それを防いだのは、志郎だ。死紡誘伎(シボウユウギ)による内臓無限紡績兵装の超強化、膨大な量のワイヤーが形のない顔を受け止めた。
「いい位置だね」
 その瞬間、リュカが引いた灯り木の引き金が一発の銃弾をナイ・アルアー・ト・テフへ撃ち込む! 黒いスフィンクスの顔が歪め、元の仮面へと戻っていった。

「――汝に木の壁を与え給う」

 クララは高速詠唱で魔導書を満載した図書運搬用の荷台を召喚、同時に突進させた。黒い仮面と荷台が激突する最中、駆ける松路の両の目HYSTERICがナイ・アルアー・ト・テフの生命力を削っていく。
『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「……ッ!」
 それを敏感に察知したナイ・アルアー・ト・テフの触手を、松路は転がるように回避した。生命力を、可能性を削られる事を極度に嫌っているのだ――松路のHYSTERICは、ナイ・アルアー・ト・テフからすれば憎悪の対象でさえあるだろう。
「相手が強力なら頭数は多い方がいいわ」
 パチン、と美鶴が指を鳴らせば、死霊騎士と死霊蛇竜が召喚された。その横で、カメリアも囁くように呼びかける。
「お兄ちゃん«Apostel»、暫くその剣と盾で守って」
 カメリアの背後に、古代の戦士が現れた。増えた敵に、ナイ・アルアー・ト・テフは敵意を剥き出しに触手を放っていく。
「ともあれ……良いわ、負担が大きいから使うつもりは無かったのだけれど、あの神様も、どうやらよく似たあるいは類似する可能性のひとつの様だし、私もその断片を魅せてあげましょう!」
 ナイアは意識を自らの内側へ集中――詠唱した。

「汝、混沌より来たる不条理! 享楽の果てに嗤う者! されど、汝は無貌なる者! ゆえに、アルハズラッド名において! 汝は正の貌を持つ!!」

 機神召喚・無貌なる神の断片(アクセス・クルーシュチャフラグメント)――ナイアの高らかな詠唱に応え、その身を黒い装甲が覆っていく。千の無貌が無限の可能性を内包する、ならばその一片でさえ――神を殺すにたる、力となるのだ。

『ナァイアァ――!!』
「気安く呼ばないでくれるかしら!」

 ガシャン、と魔槍を引き抜くとナイアはナイ・アルアー・ト・テフと激突する。黒と黒、己を喰らうかのごとき相対がそこに生まれた。

●星辰の可能性より――
 ――ただ一言で言うのならば、ナイ・アルアー・ト・テフは強大な邪神であった。
(「これで、弱体化してるのですか?」)
 ジルが、そう戦慄するのも仕方がない。計画が大きく狂い、得られるはずだった可能性を手に入れられずなお、この強さだったのだ。

 ――もしも、人々の可能性が喰われていたのなら?
 ――もしも、魔導書によって召喚の補助があったなら?
 ――もしも、トリガーとして内藤の生贄が捧げられていたのなら?

 そのifは、本来なら果たされていたのだ。必要以上、もはや偏執的とさえ言える過剰(オーバーキル)を持ってして成功と言い切る精神性。ナイ・アルアー・ト・テフ――否、それこそが千の無貌の本質なのだ。
「そうだね……想定外のことが起こってもあわてず騒がず対処していけたら敵が思いのほか強いとか、倒しにくいとか、そういうのはじっくり腰すえてやっていくしかないし。負傷者がでるなら応急手当ぐらいは出来るし、危険なら逃走も視野に入れる」
 屋上を駆け抜けながら、リュカは呟く。そのための計画、そのための作戦――事前に想定するからこそ、心の余裕が生まれるのだ。
 それを覆された、その怒りはどことなくリュカにも理解できた。
「でも、本当に想像も出来ないようなことが起きたら、驚くだろうけど……自分に出来ることを探す」
 しかし、ナイ・アルアー・ト・テフが選択したのはすべてを破壊だ。

「あなたのそれは、子供の癇癪だと思うよ。どうかな」

 ドン! とリュカの銃撃が、ナイ・アルアー・ト・テフが穿つ。振り返りざまの触手、それを美鶴が召喚した死霊蛇竜が襲いかかり、食いちぎっていった。
「不完全な復活だもの、再生の限界もあるでしょう?」
 仮面と蛇竜が、絡み合いながら屋上へその身を叩きつける――その隙を見逃さなかったのは、クララだ。
「神ですらも「時」を逸すれば滅ぶのみ……川とは、決して逆流したりはしないものです……!」
 ナイ・アルアー・ト・テフと荷台が接触した瞬間、蹂躙の駄馬(ワゴンガイスト)の魔力放電が巨大な仮面を撃ち抜く! ナイ・アルアー・ト・テフの形が崩れ、死霊蛇竜が床へ叩きつけた。
「こっちもその名と貌は散々付き合いがあるんだよ。伊達で名乗るなら一遍堕ちて出直してこい!」
 直後、ナイ・アルアー・ト・テフの上へと着地した志郎が拳を振り下ろす。何度も、何度も、捨て身で殴打、殴打、殴打――!
「逆にその生命を喰らい尽くしてやらぁ!!」
 殴った箇所から志郎に奪われる可能性に、ナイ・アルアー・ト・テフが怒声を込めてその名を讃える。

『―――――The Blind Idiot God!!』
 
 ギュゴ! と形を失ったナイ・アルアー・ト・テフが、天を跳ぶ。無数の黒いスフィンクスの顔を化したナイ・アルアー・ト・テフが上空から降ってきた。
 だが、それを受け止めたのはカメリアの古代の戦士と美鶴の騎士による衝撃波だった。
「……あれ。あなたは美鶴さんの操る死霊……?」
 騎士の背中を呆然と見上げた松路に、美鶴は微笑んで言った。
「言ったでしょ。貴方達には触れさせないって」
 カメリアの目の前で、古代の戦士が剣を振りかぶる。仮面の形に戻るナイ・アルアー・ト・テフへ、カメリアが告げた。

「私は私の仕事をしなきゃね、ありがと、美鶴とナイトくん。寝かしつけてあげるわ神様、衝撃波«子守歌»はご入り用?」

 ゴォ! と古代の戦士が振るった剣による衝撃が、ナイ・アルアー・ト・テフに直撃。だが、無貌の神は屈しない。
「ああ、そうか、ありがとうございます……これで安心して集中できる。この両眼で視える範囲ならば……捕らえたあいつを逃しはしない」
 松路のHYSTERICが、炙るようにナイ・アルアー・ト・テフの可能性を奪っていく。ナイ・アルアー・ト・テフは、怒りに身を任せて暴れた。放たれる触手の群れに、ウイシアは白木蓮の舞(フワラー)で迎撃する。
「通すわけないでしょう――!」
 ことごとく、触手が切り刻まれていく――そこへ、真上から拳を振りかぶった是空が迫った。

「歯あ食いしばって覚悟せぇ!!」

 気合を込めた神の拳が、異貌の仮面を割った。最初と同じ、しかし、違う点がある――再生の速度が、遅いのだ。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
 割れた姿のまま、なおもナイ・アルアー・ト・テフは動く。それを抑え込まんとしたのは、ナイアだ。暴れる触手を魔槍で貫き、そのまま本体ごと屋上へ縫い止めた。

「終わりよ、なり損ない」

 ナイアが、すかさずナイ・アルアー・ト・テフを蹴って退避――ウイシアの白木蓮の花びらが覆っていた空が、不意に割れた。
 真円、ウイシアが空けたそこから降り注ぐのは、眠りに誘う青い花の雨――ジナの熄みの雨花(ヤスミノアメハナ)だ。

「絶対を騙る神様は、絶対なんてないと知る私たちには勝てない。敗北の『可能性』を読めなかったことがあなたの誤算です――さようなら、お熄みなさい」

 ジナの言葉と同時、ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ! とウイシアとジナの白と青の花が滂沱の雨となってナイ・アルアー・ト・テフを無へと帰していく。だが、なおも抗おうとしたナイ・アルアー・ト・テフは、松路のHYSTERICによって最後の可能性まで吸い取られていった。

『オ、オオオ、オ……オ……』

 無限ではなく、零という意味での無へ――ここに、『暗黒面客将』ナイ・アルアー・ト・テフが砕け散った……。

「それじゃごきげんよう、神様」
「はあ……終わった、か……?」
 カメリアは砕けた邪神へ、そう別れを告げた。その後ろで、よろけた松路を美鶴が支える。
「大丈夫?」
「はい……」
 だめだ、集中した後はふらふらするな、と松路は頭を横に振る。最弱の状態でさえ、油断出来る相手ではなかった。まさしく、邪神の一面にふさわしい強さは持っていたのだ。 それでも、勝った。猟兵達は人知らず、多くの命を救ったのだ。その結果を胸に、猟兵達はそれぞれの帰路へとつくのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月13日


挿絵イラスト