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国に必要な物~滅亡の愛姫~

#サムライエンパイア

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 山間に位置する多野藩は、領土も小さく牧歌的な日常を営む平和な地であった。
 だが、今より二週間前の事だ。
 突如武者の大群が現れ、この地を占領せんと多野藩の村や宿場を襲い出したのである。
 無論、それを放置する事など出来ず、多野藩藩主十石・上埜信(といし・かずのしん)は、自身が先陣に立ち兵を率い武者軍団の討伐へと向かい……そして帰らぬ者となった。
 藩主亡き後、多野藩の行く末を決断せしは今年14になったばかりの一人娘、美濃姫。
 美濃姫は混乱する家臣たちを鎮め、優先せしは民であると、領地の民達に隣国へ逃れるよう指示を出し、その上で戦える者達は城で籠城し武者軍団の足止めを行なうと宣言したのだった……。

「姫様、城下や周囲の村の民は、なんとか逃げ出したとの事です」
「そうか……」
 鎧をまとった家臣からの報に、美濃姫は厳かになるようできるだけ低い声で頷く。
「姫、民の次はあなたです。どうか民たちと共に隣国へ、犬神藩へとお逃げ下さい」
「ならぬ。民が逃げ出したとして敵に追いつかれては元も子もない、あと数日はここで敵を抑え込む必要がある。違うか?」
「それは……そうでございますが……」
「心配するな、妾も藩主の娘だ。民の安全確保せずして逃げられようか」
 美濃姫は決して武士として育てられたわけではない。
 跡継ぎは別に生まれるだろうと本妻以外に2人の側室を抱えていた上埜信は、美濃姫をことの他可愛がり蝶よ花よと育てた。
 問題は、美濃姫以外に子供ができなかった事だろう……。
 姫の気丈な言葉に、家臣は喉と目の奥から何かが込み上げてくるのを必死に我慢する。
「………………」
 気取られまいとしているが、今も目の前の姫様はグッと両手を握込み、小刻みに震えているのだ。
 刀も触った事も無い姫様が、民を想い、そして残る兵達の士気をあげる為に死地に残ろうとしている……。
「美濃姫様!……場内の兵達に、あと数日辛抱するよう……はっぱをかけて参ります」
「うむ。頼むぞ」
「はっ!!!」
 去っていく家臣の背を見送り、美濃姫は1人になると。
「民さえ逃げきれれば……あとは妾にも考えがある、だから……」
 覚悟の表情でそう呟くのだった。


「興味深い……実に興味深い……」
 グリモアベースに黒い陰陽服を着た男が1人、彼は自らが視た予知に想いを馳せる。
 やがて事件の概要を頭の中で整理し終わると……瞬間、グリモアベースの背景が和風の城下町へと変化する。
 グリモアベースは向かう世界の風景に変わる特性あり、つまり今回の事件は――。
「サムライエンパイアの世界にて興味深い事件が起こっているようです」
 黒い陰陽服の男――陰陽師・五行(黒き狂言回し・f02996)が言うには、多野藩と言う山間の小さな領地がオブリビオンの軍勢に襲撃を受けていると言う。
「多野藩の藩主・十石上埜信が兵を率いて討伐に向かったのですが……合えなく惨敗、藩主たる上埜信も討ち死にしたとの事です」
 その後、一人娘の美濃姫が藩主代行となり、民を隣国へ逃し決断を行ない、今はその時間稼ぎの為の籠城戦の真っ最中との事だった。
「蝶よ花よと育てられた姫ですが、さすがは藩主の血筋……援軍の無い籠城戦で民を逃がす時間を稼ぐとは……ふふふ」
 何が面白いのか笑う五行。
「そうそう、オブリビオンの軍勢は大将を倒せば配下の軍団は消滅するようですが、真正面から軍勢に立ち向かっても勝ち目はありません。大将たるオブリビオンに辿りつく為には、まずは美濃姫達がいる城へ行き籠城戦が成功するよう協力してあげて下さい」
 籠城しているのは死を覚悟した兵士と家臣団、そして美濃姫との事だ。
「それが成れば、おのずと次にやるべき事も見えてくるはずです……」
 五行はそう告げると、ニヤリと口許に笑みを浮かべ。
「さて、この事件のきっかけが、どんな物語を紡ぐのか……それはあなた方猟兵の行動次第です。興味深い、実に興味深い……」


相原あきと
 マスターの相原あきと(あいはら・-)と申します。
 成功条件はオブリビオンの軍勢の大将を倒す事です。

●多野藩
 山間の小さな領地です。城は山肌の中腹に造られた普通の大きさの物です。
 城の周囲には城下が広がっていますが、小さな村程度の大きさです。
 城下も含め多野藩の民は皆は皆、すでに家を捨てて逃げ出し始めています。

●籠城戦
 籠城してすでに3日が経っています。
 亡霊のような武者軍団に攻められていますが、まだ持ち堪えています。
 あと3日ほど持ち堪えれば、民は安全圏まで逃げられると目算しています。

●藩主代行『十石・美濃(といし・みの)』
 14歳の姫君、父親で藩主の上埜信が死に、美濃の他に子がいなかった為、急遽跡目を継いだ。
 蝶よ華よと育てられた為、戦など本当は怖くて仕方が無い。
 責任感が強く、多野藩の事も父親の事も好き。

●章の目的と無関係な事を行なうプレイング
 何か気が付いた事が有られましたら、遠慮なくプレイングをかけてみて下さい。

●シナリオの結末
 何もしないでシナリオクリアのみを目指した場合、たぶん美濃姫が死にます。
 (別に美濃姫が死んでもオブリビオンのボスを倒せばシナリオは成功となります)
 皆様のプレイング次第で2章の展開や美濃姫の結末等は変わります。
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第1章 冒険 『籠城戦の準備』

POW   :    落石用の石や弓矢などの武器になりそうな物を体力が尽きるまで城に運び込む。

SPD   :    煮え湯や煮え油の罠を作ったり、馬防柵などを作成する。

WIZ   :    籠城人数や籠城日数を計算し食料や飲み水の調達を指示する。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レイチェル・ケイトリン
お城に行ったら幕府から猟兵としてもらった「天下自在符」をみせるね。

「まず、十石殿をはじめとする勇士の方々の死にお悔やみを。
その志を継ぎ民を守る姫君の力になるためきました」

これで「幕府の意が姫君を認めている」と示すね。

「されど、民を守るはその地の武家の任。わたしはその手伝いです」

そう言って、すでに使われて城の外に落ちてる石とか
わたしが得意な念動力技能を使ったサイコキネシスで
どんどん集めてく。不自由はさせないよ。

敵の大将はわたしたちが倒す。
でも、時間稼ぎの籠城戦は「姫君の勝利」にしとかないと。

「姫君の功績」がこれから、どうしても必要だとおもうもの。

このお姫さま、いいひとだからがんばってほしいもの。


吹鳴管・五ツ音
兵員はこれだけ。であればその腹を満たす糧食は……と
兵站は基礎中の基礎でありますからねぇ…。
思い出すであります。ひもじかった塹壕の日々…(遠い目をしながら算盤を弾く)

しかし防衛戦、でありますか
好いでありますな
我が物顔で攻め来たる敵兵を寡兵にて受け止め、その野望を砕きて以て臣民の盾となる
正しく身命を賭するに足る軍人の本懐と言えましょう

…しかし姫君。美濃姫殿の目は軍人の其ではありませんな

いえ、覚悟を穢すつもりはないのであります。
けれど戦場の狂乱に濁らせるには余りに惜しい、澄んだ目をしておられるので…

我らの誇りはそうした美しいものを戦の狂騒から護るためにこそあると、覚え置きいただけたなら幸いであります


死絡・送
「俺も加勢するぜ、頑張れば勝てる!!」
美濃姫と謁見したら彼女を勇気づける声をかける。
「俺や仲間があんたもこの地も守り抜く、勝とうぜ。」
大将を励まし士気を高めてから、煮え湯を流し込めて敵を沈められるように
塹壕を掘ったりと罠と陣地構築を行う。


逢坂・宵
僕、こういう地道な仕事は得意なんです
力仕事は肩や腰をいわして仕方なくて……ふふ

食糧飲み水の調達に回りましょう
籠城して3日目とのこと、残っている方々と残りの食料等を確認しつつ
効率的に振り分けて行かねばなりません
反撃ののろしを上げるならなおのこと、
食物がなければヒトは動けませんからね

気象、湿度、気温などを計測し
この先数日の天候、気温などを推測
その結果により雨水で飲み水が作れるかを判断、
また食糧残存数と平均食糧消費値の結果により調達の目安を算出
調達目安と飲み水の作成判断を上申
ところでこちらにはお堀や井戸などはありますか?
水が湛えられているならば、濾過や蒸留で飲み水は作れますから


伊美砂・アクアノート
【SPD】使えそうなモンは何でも持って来てくれ!敵の攻勢が弱まってる時に、できるだけ防衛線を作りたいからな…!オルタナティブ·ダブルで分身を作り…これで、最低でも私は二人力。竹束や大盾を前線に準備する私と、穴掘ってブービートラップ作る俺で手分けするぜ。見てろよ、俺は多重人格の中でも性格が宜しくないんだぜ…ククク。……食料計算してる猟兵に、とりあえず米と塩をくれと要求するわ。3日は決して短くないもの。前線の兵は、交代でも少し休ませたいし、ご飯食べてほしいのだわ。あと、生きて帰ったら恩賞を出せないか、姫様に掛け合いたいわね…。兵も貴女も、生きてこその物種よ? 死んだら、お洒落も恋もできないのだわ。


寺内・美月
何者かを聞かれたら『天下自在符』を見せて『将軍直轄の伝習隊』とでも名乗る。
『前衛部隊召還』にて一個大隊を呼び出し、城外に六割と城内に四割を配置する。
城外の部隊は遊撃戦を展開して敵戦力を分散させる。その際一部戦力を抽出して脱出した民間人を秘密裏に護衛する。
城内の部隊は負傷者の治療、破壊筒の埋没設置などの罠作成、防御設備の増築と補修、歩哨による警戒などを行う。その際一部戦力を抽出して美濃姫と側近の護衛を行う。
美濃姫は城で一番安全な場所にて堂々としてもらう。
一応、藩主代行の名で幕府と周辺諸国に援軍を要請する(拒否されても兵士には援軍が向かっていると言って士気をあげる)。


コノハ・ライゼ
籠城戦、なぁ。そーゆーのは初めてダケド
ま、健気な姫サンの為にってネ

【WIZ】
「天下自在符」だっけ?手っ取り早くアレ使おう
時間も勿体無いデショ
城内人数や配置、備蓄食料の数を確認
煮炊きはちゃんとできてる?温かいモンは命綱だよ
いつでも用意できるように整えて
それから飲み水の管理は特に厳重にね
予備の水場も確保、必要ならオレらの手も使って

さあ、一番肝心なのは姫サン、アンタだ
この状況下とは言えちぃとばかし顔色が悪すぎる
アンタの意気は臣下全員の意気
それとも、言うに言えない覚悟でもお持ちで?
民や臣下を想えど、ソレで国に影が落ちちゃぁヨシとは言えんデショ
なあに、そんな覚悟を必要とさせん為に
オレらが居るってぇの


佐田・忌猿
・SPD
(あの姫さん死ぬ気だべな)
寝てる内に装飾品として城に飾られてしまい、一歩引いた場所から顛末を眺めていてそう思った。姫の志は尊いがまだ若すぎる。
「十石の姫よ。我は佐田権現の遣い鬼面の忌猿である。民を救いたいのならば力を貸そう」

・SPD指定。姫様の隠れた知恵袋として【暗殺】用の罠の伝授、【武器受け】の知識を生かして馬防柵や矢避けの工夫を助言する。
もし姫様が着用するなら、自身の持つ武人としての能力も授ける。
・信頼関係が築けたなら態度を崩す。
「まぁ姫さも焦らない事だ。どっしり構えるべさ」
・死に急ぐ危うさが見えたら【挑発】し短慮に陥らない様に配慮。
「やれ。十石の姫は死に酔われてはおらぬか?」


桐・権左衛門
WIZを使用

蝶よ花よ…かウチみたいなプリチーな姫やな!

●無関係な事
一番気になるンは何で突如武者の大群が発生したかやな
正直山間の領地を襲うのはリターンが合ってへん気ィするわ

【情報収集1】【第六感2】でちょいと他方面から調べてみよか

美濃姫様の考えがあるって…なーんか気になるな、首を差し出すとか言わんよな?国に必要なんは民だけやないで、姫も必要や
美濃姫に【コミュ力1】【言いくるめ1】で考えの真意を探る

●籠城戦
【地形の利用1】罠で時間稼ぎを試みる
山肌の中腹ちゅう事は多少なりとも傾斜や土砂がある筈、使えるモンは何でも使うで

【鼓舞1】で兵士と家臣団の士気を維持
流石に美濃姫様並やないけど色気と檄を飛ばしたろ


涼風・穹
まずは美濃姫達に謁見を求めて、一騎当千の強者達が援軍として此方に向かっている旨を伝えるぜ
猟兵達の事だけど『天下自在符』を見せればそれなりには信じて貰える筈
先に希望が見えれば籠城している方々の士気は大きく上がるだろうしな
……ついでに、特攻でもしそうな方がいれば、今無駄死にする位なら生きて風向きが変わる時に備えておけ、とでも伝えておく

その後はオブリビオンの軍勢の偵察に向かう
相手の規模、今の陣地の場所や陣形、侵攻速度や先遣隊の有無やら情報が欲しい
気取られない程度に近付いて偵察
地位のありそうな相手がいれば影の追跡者の召喚で追跡させて陣地の中も調査
特に大将のいる本陣はどうなっているかは確認しておきたいな


ヴィクトリア・アイニッヒ
【WIZ】を使用。

まずは、美濃姫にご面会を願わねばなりません。
天下自在符を持つ我々猟兵の存在、籠城戦を助ける目的、攻城方の首魁を討ち果たせるのが我々以外にない事…
お互いの目的や取るべき策のこと。意思の統一を果たさねば、この苦境を乗り越えることは難しいでしょう。

私達は、この世に混乱を引き起こす者を討つ為、此の地にいます。
ですが、私個人としては…敵を討つ事よりも、此の地に生きる人々を護る事こそが最も大事な事なのです。
…脱出する民も、城に籠もり奮起する兵も将も、そして美濃姫様も。
勝利を得られても皆が死しては、私にとっては片手落ちの結果なのです。
どうか、皆が生きる為に。我らの行いを信じて頂けませんか。


月舘・夜彦
戦は力で制し、力が無ければ奪われるのが世の常
私が戦うのは同情しているからではありません
人々を脅かすオブリビオンは、猟兵である私が戦う相手
美濃姫は若く戦いも知らぬ方
ですが、戦いを知ることは人々を守ることにもなります
私達はやれることをしましょう

投石、弓矢といった遠隔武器の準備
籠城の基本は敵が接近するまでに如何に戦力を削ぐかで大きく状況が変わります
武器は一ヶ所に纏めず場所を分けて配分
一ヶ所に纏めてしまうと、そこを狙われてしまえば不利になりましょう
格子窓があるのなら、そちらには多めに弓矢を用意
隙間から弓矢で狙えるようにします
投石は城の2階以上の所にも運んでおき、そこから投げられるよう準備


ジェフリエイル・ロディタ
【WIZ】
僕は兵糧集めについていくよ。背負い籠や引き車の類は十分かい?調達は区域分担を決めて被りを防ぎながら、何がどこからどれだけ運び出されたのかの記録をつけるようお願いしよう。僕もやるし。名前はわからないけれど、いずれ避難した人達に聞けばわかるはずさ。内容は纏めてからお姫様に渡すか、渡るよう頼みたい。
城主が必要な物を徴収するのは当たり前の事だ。でも、もしこれを藩の借りと思う子であれば、暗い方には行かせない。僕の故郷はこの世界がこのまま進んだ後の有様だからね。ところが、今ここにはなんと僕ら猟兵がいるんだ。あとこれは僕視点のまめ。立て直してくれるならその土地と人が好きで可愛く輝く人が良い!


レッグ・ワート
【SPD】俺は藩地図あたりを借りて写すとか、城下や各村から犬神藩までの大きな道や避難に使われそうな道の話を聞く。使う必要ないのが一番だけどごねられたらまあほら天下自在符。で、一応ロープとかクッション変わりになりそうな物を少し借りて出発だ。
俺は避難の助っ人に行く。ようは子供とかお年寄りあたりの全体のペース落とす人を山越えたり大きな道に出る敵いないトコまで運ぶのを細々繰り返すつもりだ。子供はまあメンタルタフそうならロープで俺に結ぶだけ。必要そうな人にはロープにクッション挟んで、移動も慎重にいくよ。宇宙バイクは着脱しながら使える範囲で使う。民間人の避難に必要な時間、少しでも短くできりゃいいけどな。



●第一章予告
 突如現れたオブリビオンの軍勢によって多野藩は滅亡に瀕していた。
 すでに領主は討ち死にし、
 この十石家の家臣団を率いるは、蝶よ華よと育てられた齢十四の美濃姫。
 姫は籠城戦を決意し、その間に民を隣国へ逃がす決断をする。
 だが、美濃姫には1人秘めたる覚悟があった……。
『国に必要な物~滅亡の愛姫~』
 第一章 籠城戦

■第一章『籠城戦』


 多野藩は山の中腹に建てられた十石城の大広間。
 上座に座するは多野藩藩主代行、十石美濃姫。左右に並ぶは家臣達だが、戦の真っ最中ゆえ誰もが甲冑姿であった。
「おもてを上げよ。『将軍直轄の伝習隊』なる呼称は恥ずかしながら聞いた事は無いが……お主等が持つ天下自在符が何よりの証拠、援軍に来て頂き心より感謝する」
 美濃姫が広間に片膝を付いて居並ぶ伝習隊(と自己紹介した)――猟兵達へと頭を下げる。
 頭首として軽々しく頭を下げてはいけないと家臣達が渋い顔をするも、次期藩主として育てられたわけではない美濃姫にとって猟兵達の申し入れは心から感謝に値する事だったのだろう。家臣達も渋い顔は一瞬だけで、今はそれすら姫の美徳だとすぐに表情を引き締める。
「失礼ながら、宜しいでしょうか」
「うむ。敵はすぐそこ、何か案があるなら好きに話してくれて構わぬ」
 姫が自由に発言して欲しいと促せば、最初に口火を切ったレイチェル・ケイトリンがそのまま続ける。
「まず、十石殿をはじめとする勇士の方々の死にお悔やみを。その志を継ぎ、民を守る姫君の力になる為わたし達は来ました。わたし達がこの多野の地へ参上いたしましたこと、それこそ幕府の意がここにあるとご安心ください」
 それは美濃姫を藩主代行ではなく、藩主として認めるという意味だ。
 姫本人はともかく、家臣達や十石の兵達にとってそれは重要な意味を持つ。僅かに喜びにどよめく空気が流れ。
「その上で……」
 そう言って言葉を継ぐは寺内・美月。
「すでに藩主美濃姫様の名で幕府へは援軍を要請してあります」
「なんと、さすがは幕府直轄の者達よ、先々まで手を回して頂き感謝する。だが籠城も今日を含めてあと三日……江戸より兵が立ち、ここまで来るには難しいのではないか?」
「はっ、その通りでございます。事実、私達は江戸よりの返事を待たずして馳せ参じましたゆえ……」
 姫の言葉――間に合わない――を素直に認めつつ。
「しかし、多少なりとも兵達の士気もあがりましょう」
「それは……確かに」
「ま、そこについては俺たちの働きっぷりを見て判断してくれ」
 そう姫の不安を拭うよう言葉をかぶせるは涼風・穹。
「俺たちは幕府に認められた天下自在符持ちだ。それぞれが一騎当千……とはいかなくとも、それに近い働きが出来ると自負してる。この後も、俺たちの仲間が援軍として此方に来るはずだ」
 天下自在符持ちの猟犬達が、普通の侍や兵とは一線を画する噂はここにも伝わっているのだろう、特に家臣達は僅かながら希望が出てきたとざわつき出し……だが、そこで穹は釘を刺す。
「おっと、先に言っとくぜ。特攻でもしようと考えているヤツはいないよな。もし居るならそいつに伝えておいてほしい。無駄死にする位なら生きて風向きが変わる時に備えておけ、とな」
「判り申した」
「必ずや兵達に伝えよう」
 希望が沸いてきたのか、心なしか明るく家臣達が是と頷く。
「宜しいでしょうか」
 話が一区切りしたのを見計らい挙手するは吹鳴管・五ツ音。美濃姫にそのまま続けるよう促され、コホンと咳払い一つし。
「はい。防衛線では我が物顔で攻め来たる敵兵を、いかにこちらの寡兵にて受け止め、その野望を砕きてもって臣民の盾となるか……その覚悟が大事なのであります。正しく身命を賭するに足るは、兵の本懐と言えましょう」
 家臣達も頷く。
「しかし姫君――美濃姫殿の目は軍人の其ではありませんな」
 真っ直ぐに美濃姫を見つめる五ツ音、対して姫は少し怒るように顔を赤くしーー五ツ音は即座に待って欲しいと手を出すと。
「いえ、覚悟を穢すつもりはないのであります。姫の瞳は戦場の狂乱に濁らせるには余りに惜しいのです。澄んだ、綺麗な目をしておられるので……」
 五ツ音の言葉に姫は言葉を飲みこむ。
 そして美濃姫が冷静さを取り戻したのを確認してから五ツ音は言う。
「ただ、我らの誇りはそうした美しいものを戦の狂騒から護るためにこそあると、覚え置き頂けたなら幸いであります」
「それは……あい解った。未熟な身なれど、そんな私の為に戦って貰えるのなら、藩主として旗頭として、父の跡を継いだかいもあると言うもの」
 納得するような美濃姫の言葉に美月が重ねる。
「ゆえに美濃姫様は城で一番安全な場所にて、最後まで堂々として頂きたいのです」
 美月の言葉には家臣達も賛同し、この籠城戦の3日間、美濃姫は天守閣に近い上階の部屋にて寝食を行なう事となった。
「戦は力で制し、力が無ければ奪われるのが世の常。私達が戦うのは同情しているからではありませんよ。人々を脅かすオブリビオンは猟兵である私達が戦う相手ですから」
 月舘・夜彦が淡々と……しかし情を持って美濃姫に想いを伝え。
「ま、心配するな! 俺達はあんたもこの地も護り抜くつもりだ。頑張りゃ勝てる……いや、勝とうぜ!」
 死絡・送が任せとけと自分を立てた親指で差し、自信に満ちた笑みを浮かべる。
「……そうか。うむ……今はお主らの言う通りやもしれぬな」
「ええ、安心して下さい」
「ああ、心配無用だ」
「それでは此度の籠城戦について、具体的なお話をして宜しいでしょうか」
 夜彦と送に代わり籠城戦について相談を始めるはヴィクトリア・アイニッヒ、自身等の目的は籠城戦を助ける事だが、もし敵の首魁が現れた場合は下手に兵で刺激せず、天下自在符を持つ自分たちの誰かにすぐ連絡する事、その上で敵首魁を討ち果たせるのが自分達以外にない事を説明する。
「敵の首魁はそこまで強いというのか?」
「残念ながら、父君様も相当な兵を伴い出陣なされたはず……しかし、その悉くの命を奪ったのは、恐れながら敵首魁の力と思われ……」
「………………」
 ヴィクトリアの言葉に美濃姫がギュゥと膝の上で握る。だが、それだけだ。藩主として気丈に振る舞わねば……と。だが、動揺したのは姫だけでなく家臣達もだった。ざわざわと周囲の空気が嫌なものへと変わっていく。だが、ヴィクトリアの言葉は決して的外れでは無いとその場に座する猟兵達には理解できた。ここまでの事を成す敵ーーその軍勢の首領はオブリビオン以外にありえないのだから。
「此度の籠城戦、お互い意思統一を果たさねば、この苦境を乗り越える事は難しいでしょう。私達の事を信じて頂けますでしょうか」
 胸に手を当て姫を見つめるヴィクトリアに、美濃姫は「もちろん」と頷き。
「元より藁にもすがる思いなのだ。幕府直下のお主らの事、もちろん信用しておる。……頼む、この地の民を救うため、力を貸して欲しい」
 含まれているのは震えるような少女の声、それに気付かぬ猟兵達では無い。だからこそ……自分達がやってきたのだ。
『ははーっ』
 姫の言葉に頭を下げる。助けたい……その想いは皆共通だった。
 相談はそのまま続き、だいたいの方針が出終わった所で、最後に伊美砂・アクアノートが「1つ、大事な事だから言わせて貰っていいかしら」と手を挙げる。
「なに、遠慮せず申してみよ」
 籠城戦における何か特別に大事な話かと皆が耳を傾ける中。
「生きて帰ったらでいいのよ。恩賞を出せないかな?」
『………………』
 思わず間ができてしまった事に伊美砂は言い訳するようバタバタと手を振りつつ。
「ほ、ほら、兵も貴女も、生きてこその物種よ? 死んだら、お洒落も恋もできないのだわ。生き残った後の事を考えるのはこの戦を乗りきる為には必要な事だと思わない? ね?」
 あまりの必死さに誰かが噴き出し。
「ふふふ……、いや、うむ、もちろん。もとよりこの城にある物は敵の手に落ちる事になるのじゃ、脱出する事が叶うならその時には好きな物を持っていくと良い」
 そう、先ほどまでの藩主然とした口調ではなく、少々砕けた口調で美濃姫が許可を出す。
 その笑顔は猟兵達が初めてみる素の美濃姫であった。

 美濃姫との謁見を終え、猟兵達は籠城の準備へと入っていた。
 送は兵達に適切な指示を出し、陣地構築のため塹壕を掘る。もちろん自身も一緒になって塹壕掘りだ。
 そんな送達の側を、大きな石がフワフワと宙に浮き城へと運び込まれていく光景が……。
 それをやっているのはレイチェルだった。得意のサイコキネシスの効果である。
「どんどん運ぶよ! 良い感じの石や岩があったら言ってね?」
 レイチェルの言葉に兵の1人が驚いたと言いつつ。
「そいつぁ助かる。しかし嬢ちゃんみたいのがどうして幕府のって思ったが……通りで納得たぁ、この事だ」
「ふふ、準備だけじゃないよ? 敵の大将だってわたし達が倒すからね。そしてこの戦、『姫様の勝利』にしたいんだ」
「心強い事言ってくれるじゃねぇか! その通りだ、ここに残ったのは家族を逃す為って奴も多い。でも、そいつらだって本当は生きて家族の元に帰りたいって思ってんだ。死を覚悟した籠城戦だって誰もが解ってるが、それでも勝って生きて帰れりゃ、それに勝るもんはねぇ!」
「あたしもそう思う。ここのお姫様、とてもいいひとだから、がんばってほしいもの」
「ああ! よぉし野郎ども! 午後には敵が来るはずだ、もうひと踏ん張り気合い入れていくぞ!」
 その言葉に周りの皆が声をあげる。
 手伝うだけでなく士気もそれなりにあがったようだ。
 一方、完成した竹束や竹柵、木板で作られた大盾を前線に準備するは伊美砂“達”であった。
『使えそうなモンはなんでも持って来てくれ!』
 2人の伊美砂の声がハモって響く。
 そう、伊美砂は≪オルタナティブ・ダブル≫を使用し分身を作ると、自分の分身と共に防衛線を作成していたのだ。
「(これで最低でも私は二人力)」
 その言葉の通り、途中からは役割分担。竹束や大盾の設置を担当する私と、穴を掘りブービートラップを作る俺とで効率よく準備が進んで行く。
「見てろよ、俺は多重人格の中でも性格が宜しくないんだぜ……ククク」
 伊美砂の俺が作ったトラップを見て、十石の兵はこの人が味方で良かったと安堵を浮かべるのだった。
 罠ではなく投石や弓矢と言った遠距離武器の準備や、純粋に武器の配置等を指示するのは夜彦だった。特に「武器は一カ所に纏めず場所を分けて配分するよう」との指示には、疑問を抱く兵もいたのだが。
「一カ所に纏めてしまうと、そこを狙われてしまえば不利になりましょう」
 との夜彦の説明に兵達は一斉に納得し、以降は夜彦を尊敬するようにテキパキと準備するようになった。
 さて、籠城戦で最も欠かせない事……それは兵糧、つまり食料事情である。
「兵員はこれだけ、であればその腹を満たす糧食は……と」
 五ツ音が算盤を弾きつつ必要最低限の食料について導き出し、そこに食糧庫と井戸周り、台所等を確認しに行っていた逢坂・宵とコノハ・ライゼが合流。在庫と必要数に対する計算を行う。
「籠城は3日間とのこと、とはいえ効率的に振り分けて行かねばなりません。反撃ののろしを上げるならなおのこと、食物がなければヒトは動けませんからね」
 宵の言葉に五ツ音も頷きつつ。
「兵站は基礎中の基礎でありますから……。思い出すでありますよ。ひもじかった塹壕の日々……」
 何か過去を思い出すように遠い目となる五ツ音。
「台所の方も見てきたけど、煮炊きはちゃんとできそうだったな。一応、なるべく温かいモンを兵に出せるよう台所頭には伝えておいたけど」
 コノハが食事は兵士の命綱だと言い、2人もまったく同意見だと頷く。
「水の方はどうでしたか?」
「一応、水瓶や井戸にもそれなりの量を確認はしたであります」
「城内の人数からするとギリ足りないかもな」
「食料の方もこの分では足りなくなりますね……」
 そう3人がどうしたものかと考え込んだ時だ。
 ガラガラガラと荷車を轢いて数人の兵達がやってくる。その先頭で荷車を引くはジェフリエイル・ロディタだ。
「兵糧集めに行ってきたよ。すでに避難した城下から、持ち出せてなかった分の食料と、井戸に溜めてあった水を……よっ、と」
 ジェフリエイルが荷車を止め、ふー、と肩を回して息を吐く、やけに輝かしいのは聖者なので仕方が無い。
 さっそく量を確認しだす五ツ音。
「一応、どの長屋から取って来たとか記録はつけておいたけど……ここのお姫様、城下の民の物を盗むなんて……とか思わないかな?」
「それは大丈夫だと思いますよ。ここは戦場になりますし、民達だってすぐには戻ってこられないです。食料や水が残っていても腐ってしまうのですから」
「そっか。確かに言われてみれば」
 あとで作ったリストを姫様に渡そうと思っていたが、どうやら必要なさそうだった。
「お、計算終わった? どうヨ?」
「集めてくれた兵糧と水で、ぎりぎり足りそうであります」
 ふぅ、と皆が一安心。
「とりあえず、兵站に関しては問題無さそうですね」
「余計な出資がなければ、でありますが……」
 と、そこにやってくるは伊美砂。
「すまない、前線で戦う兵用に米と塩をくれ」
「え?」
「え? じゃないだろう。籠城戦3日は長くは無いが、決して短いわけでもない。前線の兵は交代交代で少し休ませたいし、その際、ご飯も食べてほしいのだわ」
「それは……そうですね」
 宵とライゼとジェフリエイルがハモって呟き、横で五ツ音が算盤をジャッとリセット。
「それでは計算し直すであります」
 パチパチと再計算をするのだった。

 その日――1日目の午後は敵の姿こそ見え、それ以上動く気配は無く。敵軍が攻めてきたのは日が暮れ夜に入ってからであった。
 午後に攻めてくると思い気を張っていた兵士がほとんどであったろう、夜の、このタイミングでの襲撃はすでに戦っていないにも関わらずどの兵にも疲労の色が見えた。
「しっかり気張りや!」
 桐・権左衛門が檄を飛ばす。いや、檄だけではない。権左衛門は士気を少しでも上げようと花魁風の衣装で佇み、しかも多少着崩し色っぽい姿となっている。この程度で士気が上がるなら儲けものだ。
 そのまま昼間のうちに準備した地形を利用した罠――山の山腹にある事を利用した、城までの坂道での丸太転がし等の罠――を兵士たちと一緒に一斉に発動。
 斜面の罠を突破して城へと張り付いてくる武者たちには、送がぎりぎりまで引きつけて……バッと合図を送る。と同時、鬨の声が上がり一斉に城の石落が開くと煮え湯が一気に流しこまれーー。
 その夜の襲撃は朝日が昇ると共に終了した。敵軍が撤退して行ったのだ。
 城の外壁にこそ取りつかれるも、城内への侵入は許さず、無事1日目の籠城は成功したのだった。


 朝の冷たい空気の中、敵も味方も退き静まりかえった戦場の端で、宵は人差し指を天に立てここ数日の天候や気温が幾つだったかの記憶と照らし合わせる――つまり、持論の天気予測だ。
「やっぱアレが来るっぽいか?」
 ライゼが宵の横で空を仰ぎつつ聞けば。
「ええ、最終日に雨が来そうなのは変わらずですね……」
 夜通しの戦闘によって水の消費量が増えた為、このままでは微妙に足りなくなる可能性が出てきていた。だが、宵の予測通り最終日とはいえ雨が降って水が確保できれば、わざわざ今から別途用意しないで良くなるのでありがたいはありがたい……のだが、雨の中の戦闘は兵士達にとって厄介この上無く、一応美濃姫に伝えようかと宵が城へと向き直ったーーその時だ。
「大変や!」
 振り向けば情報収集に出ていた権左衛門であった。全速力でこちらへ駆けてくる。
「どうしました?」
「ひ、姫に、美濃姫様に、報告せなっ!」

 慌てて姫へと報告に上がる権左衛門と宵とライゼ。
 その報告を聞いてさすがの美濃姫も青ざめる。
「別の方角に別の軍団が現れた、だと」
「せや、ちょいと気になる事があって偵察に出とったら、たまたま見つけて……」
 権左衛門の言葉に家臣達がざわめく、猟兵達のおかげで籠城戦を耐えきるどころか勝つ事すら可能では……との気運が高まって来ていた所だったのだ。このタイミングでこの情報は士気が著しく低下してもおかしくない。
「その軍勢はもう攻めて来ているのですか?」
「いや、こっちに向かっては来てはるけど、あのスピードならあと4日……夜通し歩いても、せめて3日は必要やな」
「ぎりぎり……か」
 敵の援軍は間に合わない。ひとまずホッっとする美濃姫と家臣達。
 だが、それで敵本隊が手を抜いてくれる訳では無い。
 他の猟兵達の見立てでも、敵本隊は1日目と同じく夜に攻めてくるだろうとの事だった。
 もちろん昼間のうちに奇襲を仕掛けて来る可能性も十分あり、もしもの時の為、すでに美月に相談し、美月のユーベルコード≪前衛部隊召還≫を使用し彼女が見える範囲(城の前面)に大部隊を召喚、警戒行動を取るよう部隊に指示を出して貰っていた。
 美月自身はこの大部隊をいろいろな作業で使いたかったのだが、自身の視界から外れると効果が消える事と、徹夜での籠城戦に疲れ切っている兵に変わって防衛役が可能なのは、自分(と自分の召喚した大部隊)しかいない事も理解でき、相談された時に自ら日没までの警戒と防衛を買って出たのだった。
「昼間の防衛は寺内はんがしてくれはってるけど、本番は夜や」
「夜の戦は兵の疲労が昼間の何倍にもなります。まして僕の予測では最終日は雨が降る可能性がある……そうなれば疲労は更に増すでしょう」
 権左衛門と宵の言葉は、この籠城戦が日を増すごとに厳しくなる事実だった。
 美濃姫の顔に影がかかり、それを権左衛門は見逃さずふと気になっていた事を質問する。
「美濃姫様……まさか、敵に首を差し出すとか言わんよな?」
「……!?」
「国に必要なんは民だけやないで、姫も必要や」
 真摯な視線を真っ向から受け、美濃姫は権左衛門を見つめ返し。
「ご安心を。妾は死ぬつもりなどありません。今の妾の目的は、例え領民が散り散りになり、この城を敵に奪われようとも、いつの日かこの地を取り返し、お家再興を成し遂げる事ですから」
 美濃姫の言葉には重みがあった。真実の、彼女の本音である重みが。
「なら……ウチの思い違いや、気にせえんといて」
 一瞬、微妙な空気となるもそれを察してかライゼが権左衛門の肩に手をかけ、出来るだけ軽い口調で言う。
「みんな、健気な姫サンの為にってネ、だろ?」
 姫の側に控えていた家臣や権左衛門や宵も、その言葉に頷き、少しだけ場が和む。
 そうだ。ここにいる者は誰一人美濃姫の不幸を望んでいない。
 それだけは、間違いは無かった。

 多野藩は北に山々を擁する狒々堂藩、南に海を擁する犬神藩と2藩に挟まれた小藩である。そして、いざという時の為、多野藩は南北の両藩とそれぞれ同盟のような物を結んでいた。
 鎧武者の軍勢が最初に目撃されたのは多野藩の北の領地であり、当時領主の十石・上埜信(といし・かずのしん)は、狒々堂藩に挟撃の要請を行うも「江戸幕府のご時世にもう戦など」となかなか取り合って貰えず、結局上埜信は自藩の兵だけを従え鎧武者軍団に対して討って出る事となり……そして、帰らぬ人となった。
 敵の軍勢が現れた場所へと偵察に出ていた穹と権左衛門は、武者軍団の手がかりではなく新たなオブリビオンの軍勢が出現した事をいち早く知る事となり、2人で相談し穹はその場に残り調査ではなく敵陣地を偵察へ、権左衛門は急ぎ十石城へと戻る事とした。
 権左衛門が姿を消した後、穹は敵軍が進軍した方角ーー南へ南へと走り、やがて十石城が見える山の麓に敵が陣幕を張っているの発見する。
「敵は武者鎧を来た雑兵だけと思ったけど、時々生きた人間もいるのか……」
 生きている配下は見るからに柄が悪く、道中で出会い恐怖で従わせた野党や盗賊達と言った所だろう。とはいえその比率は少なく全体の2割程度であり、ほとんどは敵のオブリビオンに召喚された武者鎧の雑兵……つまりはオブリビオンに召喚された亡霊武者達であった。
 結局、穹は影の追跡者まで使用して敵陣の偵察を行うが、敵のほとんどは不眠不休が可能な亡霊共であり、それがわざわざ夜に襲撃をかけてきたのはオブリビオンの戦前の記憶……というか戦の運び方に由来するのか、それとも怒りから来る生者を休ませないとのえげつない策略か……。
 権左衛門は「何で突如武者の大群が発生したか」「山間の領地を襲う意味」が気になると言っていたが、穹はこれ以上の深追いは危険と判断、夜が来て城へと進軍を開始する鎧武者軍団の騒音に紛れ、そそくさとその場を離れるのだった。

 2日目の夜は想像を絶する激闘となった。
 それでも、昼間のうちに休んでいられたおかげで兵士達に活力が戻っており、城に籠もって襲い来る敵を迎撃し追い返す事はできた。もちろん、猟兵達の準備が的確だった事で、兵士達が効率よく戦うことが出来た事も大きい。結果として十石城の兵達は、なんとか無事に3日目の朝を迎える事ができたのだった……。


 十石の城の中はまるで腐乱死体が並んでいるように、兵士達がそこかしこに転がったまま眠っていた。もちろん起きて警邏に出ている者もいるが、総じてその足取りは重い。
 今宵もきっと敵の襲撃はある。そこを乗り越えなければ自分たちに未来は無い。
 その事で思う所があり、広間で美濃姫と謁見するはヴィクトリアと夜彦、ジェフリエイルの3人。
「姫様、私達はこの世に混乱を引き起こす者を討つため此の地に派遣されました。ですが、私個人としては……敵を討つ事よりも此の地に生きる人々を護る事こそが最も大事なことなのです。脱出する民も、城に籠もり奮起する兵も、指揮をとる将も、そして……美濃姫様も」
 ヴィクトリアが代表して自分たちの想いを伝え、夜彦がそこに続くように。
「美濃姫は若く戦いも知らぬ方……ですが、戦いを知ることは人々を守ることにもなるのです」
「つまり……妾に戦いを知れ、そう言うのか」
 言葉通りの意味に理解する姫に対し、猟兵は首を横に振り。
「勝利を得られても皆が死しては、私達にとっては片手落ちの結果なのです。もちろん、それは姫様であっても然り。どうか、皆が生きる為に。我らを信じて頂けませんか」
「信じる、とは?」
「今宵の籠城戦、途中から戦場に出るは我らのみとして頂きたいのです」
 夜彦はそう言うと驚く姫を手で制し。
「美濃姫様や家臣、兵の方々に至っても、順次夜陰に紛れ脱出して頂きたいのです」
「………………それが、妾の戦い方、だと」
 美濃姫の言葉に3人が頷く。
 昨夜の戦いっぷりを見るに、疲労困憊の今夜は確実に死者の数が跳ね上がるだろう。それに明日の朝になって昼間に脱出するのは敵に見つかる可能性も高い。もし逃げるにしても明日の朝と今夜では兵達の疲労度も違う……つまり、今夜逃げた方がもし敵に追撃されたとしても迎撃する余力が残っていると言う事だ。
「美濃姫様、迷うのはわかるけど……」
 ずっと黙っていたジェフリエイルが口を開く。
「さっき彼女が言った事の繰り返しになっちゃうけど……今ここには僕らがいる。僕らを、信じて欲しい」
「信じる……か」

 3日目の夜が来る。
 空は曇天の曇り空、宵の予想通り今にも雨が降りそうな空模様だった。
 案の定、日が落ちると共に城へと攻め込んできた敵の攻撃は、2日目よりも尚激しさを増し、逆に十石の兵達はいつ撤退の連絡がくるか、どこかそわそわしているようで……。
 そして、1刻も経たないうちにその合図は回って来る。
「(撤退だ)」
 1人、2人、と少しずつ戦っている人数が減っていき、やがて……籠城している十石城には猟兵達12人だけが残る。
 そう、美濃姫は籠城戦の最後を、猟兵達へと任せる決断をしたのだ。
 もちろん猟兵達の誰もがこの案に反対する者はいなかった。
 籠城戦の細工は流流、これだけ完璧に下準備が出来上がっているのなら、猟兵達の力を持ってすれば、例えたった12人でもーー。
 そうして、覚悟を決めた猟兵達が最後の時間稼ぎと十石城で籠城を続けるのであった。

 さて、時間を少しだけ巻き戻す。
 すでに城のあちこちで最後の戦いに向け準備が進み、また途中で離脱する為の荷物の用意なども兵達はしはじめていた。
 籠城戦の間のみ美濃姫が寝食を行う事となった天守閣より幾つか下がった部屋。ここは元々骨董品置き場の倉庫であったが、兵達への報酬として解放してより残っているのは二束三文のガラクタと、持ち運びに不便なかさばるものばかりであった。
 美濃姫は布団を畳むと机を出し紙を広げ、筆で何かをしたためる。短文なのかすぐに書き終えると蛇腹に紙を折り、自らの頭から古風な櫛を引き抜きその櫛に折った紙を巻き付け……コトリ、と机の上に目立つように置く。
「ごめんなさい」
 そう呟くと護身用の小刀を一度抜き、その刃を確かめると再び鞘へしまって腰に差す。
 その顔は何かを決意したように覚悟の色に彩られていた。
「(あの姫さん……まさか……)」
 その姿をじっと動かず観察する猟兵がいた。彼は身動ぎせず気配を殺し、姫の行動をじっと見守っていた。
 やがて、美濃姫はごそごそと部屋の壁際へとやってくると板の木目をいくつか触りーーカコンーーと音がし、板の一枚が奥へと沈んで人間1人が通れるだけの隙間が現れる。
 それはいざという時に作られた脱出口……隠し通路だった。だが、それなら美濃姫は1人でここから安全に脱出するのだろうか……?
「(いや、そんな事ならあんな覚悟ば決めた顔はしねぇ……)」
 一部始終を見ている彼は、決して姫が保身から隠し通路を使おうとしている訳では無いと察し……それならば。
「美濃姫よ。たった1人でどこに行くつもりだ」
「だ、誰!?」
 唐突に響いた声に美濃姫が小刀を抜く。だが、その構えももちろん素人のそれだが、ガタガタと恐怖に震える様は立派な藩主などではなく、自分では何もできない童女のような危うさしかない。
「驚かしせてしまいすまないな、十石の姫よ。我は佐田権現の遣い、鬼面の忌猿である」
 声のする方へ視線を向ければ、部屋のガラクタに紛れ、目の部分のみの鬼の半面(ベネチアンマスク等と呼ばれる形の仮面)が飾ってあった。
「そう、その鬼面こそ我よ」
 ふわりと鬼面の佐田・忌猿が浮かび、姫と同じ視線に浮遊する。
「忌猿とやら、すまぬが妾のことをどうか見逃して欲しい……妾は、妾はどうしてもやらねばならぬ事があるのじゃ」
 忌猿は仮面が本体であり、そこに瞳は浮かんでいない……が、美濃姫はその瞳がある場所をじっと見つめる。その瞳には力があり、譲れない信念が感じられた。
 だから、だろうか……。
「その行動は、この地の民を救う為であるな」
「その通りじゃ」
「そして、姫は決して死に酔ってるわけでは無い……」
「無論じゃ、妾が死してどうにかなるものでは無い事は、この数日で理解した。それに、こんな妾の事を皆が信じてくれて、たった数日とはいえ、妾の事を、この国の事を、必死になって守ってくれる皆がいた……その想いを、無駄には出来ぬ」
 忌猿がこの部屋に飾られたのは偶然であった。眠っているうちに装飾品として勝手に飾られたのだ。おかげで籠城戦には何一つ関われなかったが、美濃姫の結末に関して言うなら大成功すら上回る結果だったと言える。
「忌猿とやら、どうかこの場は……」
 見逃してーーそう姫が言おうとした時だった。隠し通路の向こう側から、黒い影が数人飛び出して来たのだ。
「きゃああ!」
「姫よ!」
 忌猿が美濃姫に体当たりし、黒い影達から伸びた手が空を切る。
 それは忍びであった。数にして3体。如何にして隠し通路を見つけたのか知らないが、どうやらそれを利用して逆に城内に忍び込む予定だったようだ。
『姫を寄越せ……』
『美濃姫を……』
『奪え、攫え、奪え、攫え……』
 明らかに通常の忍者達では無い、オブリビオンの息の掛かった者達だ。
 忌猿は姫と忍び達の間で浮遊しつつ、背後の美濃姫に向かって声をかける。
「民を救いたい……その気持ちは我にも伝わってきた。死なぬ覚悟もな……」
 正直、忌猿は今だ美濃姫が何をしようとしているか解っていない。だが、その行動が決して私利私欲でも自暴自棄でも無い事は信じられた。
 だから、だろう。
 忌猿は言う事にしたのだ。
 あの言葉をーー。

「ならば、力を貸そう」

 美濃姫の顔に鬼の半面が合体するのと、忍び達が一斉に姫を誘拐しようと手を伸ばしたのは同時だった。
 カッ!
 銀光一閃――。
『ぐあぁぁあ!?』
 悲鳴が上がるは忍び達の方、姫の手には小刀が逆手に握られ、繰り出された3体の手を全て受け流し、そのまま小刀にて斬り裂いたのだ。
「え、これは……どういう事じゃ?」
「姫よ、今この時は我の持つ武人としての能力、暗殺用の罠の知識、我の全てが姫の物だ。この力、存分に振るうとよい」
「それは……」
「共に行こうぞ、十石美濃姫」
「忌猿」
 鬼の半面を被った美濃姫が明らかに常人離れした力を得た事に感づいたか、忍び達もスチャリと腰裏に装備した忍者刀を抜き襲い掛かってくる。誘拐などと甘い考えは捨て、確実に殺しに来たのだ。
 たぶん、忌猿と共に戦う事に慣れていたのなら、またはもう少し早く出会っていたのなら、3体の忍びが相手でもギリギリ生き延びられただろう。
 だが、忌猿の技を使え忌猿自身がフォローできるとはいえ、美濃姫は未だ実戦経験が無くこれが初めての命の取り合いだった……結果、その差は大きなスキとなって横たわる。
『覚悟』
 2体の忍びが露払いと姫の体勢を崩し、3体目の忍びが必殺の一撃を放つ。その一撃を美濃姫は回避する術を持たず――。
 思わず目を瞑った姫が忌猿の声で目を開けた時、そこには紫雲の空の髪を持つ背の高い男がいた。
「姫サンの顔色がちぃと悪すぎると思って、こりゃ何かあると思っちゃいたが……こいつぁどういう事かな?」
 それはライゼだった。必殺の一撃を受け切ったナイフで牽制し、忍者が飛び退る。
「ライゼ……お主、どうしてここに」
「アンタの事が気にかかってネ。でも、どうやらゆっくり話す時間は無さそうデショ」
 新たな邪魔者たるライゼに襲い掛かってくる忍び達、それを万象映す刃で打ち払って姫に近づけさせないライゼ。
「民や臣下を想えど、ソレで国に影が落ちちゃぁヨシとは言えんデショ……その影が落ちる肝心要は姫サン、アンタだ。アンタの意気はこの国全員の意気に繋がる。何をしようとしてるか知らねぇケド、ここはオレに任せてさっさと行きな!」
 忍び達を牽制しつつ叫ぶライゼ。
「美濃姫よ、今の姫なら屋根伝いに跳躍して逃げる事も可能だ。どうする」
「しかし、ライゼが……」
「心配してくれんの? なあに大丈夫、この程度でくたばるオレじゃぁないデショ」
「美濃姫よ」
「わかった! ライゼ、その机の上に妾直筆の書状がある。母上から貰った簪に巻いてある故、それを家臣の誰かに見せれば妾の真意は伝わるはずじゃ」
 そういうとバッと廊下に出る扉に手をかけ。
「ライゼ、死ぬな」
「無論デショ。あとで仲間と共に追いつくから……それまで姫サンも無茶しないよう。鬼面君、頼むよ?」
「承知した」
 そうして美濃姫は廊下に飛び出しそのまま開いている窓から外へ――。
 屋根を伝って城から脱出していく。
 途中、戦っている猟兵達に何事かと見られたが、事情は後でライゼか手紙を見た家臣から聞かされるだろう。
 今は……敵に見つかり囲まれる前に、少しでも早く目的地へ……。

 多野藩から犬神藩へ避難する人々に寄り添い、その道程での護衛を買って出たのはレッグ・ワートだった。
 最初こそ異様な風貌にとまどう人もいたが、そこは猟兵として誰でも備えた違和感を打ち消す力により、すぐに人々はレッグを受け入れてくれた。
 もちろん、どんな姿形であろうと、人々の事を考え子供やお年寄りを優先し、全体のペース管理を行ない、山賊や盗賊の排除まで行ってくれるレッグは、すぐに信頼を得たであろうが……。
 今も2人の幼児を危ないからとレッグは背におぶるよう縛り付け運んでいる。子供達もなぜか慣れたものでキャッキャと楽しそうだ。
「この山を越えれば犬神藩が見えてくるようだ」
 地図を再度チェックし山を登って行くも、すぐに暗くなって来てしまい、広く開けた場所を見つけそこで野営をする事に……。
 その夜は避難民の間で残った家臣達や兵士として戦っている家族、藩主代行を買って出た美濃姫の噂で持ち切りだった。籠城戦も今日で3日目、明日の朝には残った者達が城を捨てて犬神藩へと逃げてくる算段だったからだ。
 やがて噂話にも疲れ、それぞれが眠りにつき夜の山に静寂が訪れる。
 そして、誰もが夢を見ている頃……。
「おい! 大変だ!」
 誰かが起きたのか大声をあげる。レッグも他の避難民も声に驚き目を覚ます。
 そしてレッグたちが見たのは……。
「北の空が紅いだよ……見ろ、十石城が……燃えてる」

 美濃姫は宵闇の中かなりの距離を走った。
 息切れしないのが不思議だったが、これも忌猿の力なのかもしれない。
 もし姫が死を覚悟している事に気が付かなかったなら、姫は殺されていただろう。
 もし姫が死を覚悟している事に気が付いたとしても、それだけなら誘拐されていただろう。
 もし姫が死を覚悟している事に気が付き、姫の信頼を得たならば……もしかしたら姫から1人で脱出したいとの相談を受けていたかもしれない。
 だが、現実はそのどれでも無かった。
 自らの道は自ら切り開くとばかりに……。
 ふと、背後が明るくなった気がして振り向けば十石城が燃えていた。
 敵を足止めする最後の策として、城に火を放ったのだろう。
 生まれ育った城での生活が走馬灯のように頭の中を駆け抜け、自然と涙が溢れていた。
 もう平和だった頃へは戻れない。幸せだったあの頃には……。
「忌猿……もう少しだけ付き合ってもらえるじゃろうか」
「ああ、構わねぇべ」
 思わず地が出てしまった忌猿が、あっ、と言い直そうとするも、先に「それがお主の素か」と姫に笑われる。
「ま、まぁ、今更姫さに隠す事もねぇな。笑いたきゃ笑え」
「ううん、すまぬ。そうか……心を許してくれたのじゃな。ありがとう」
「照れくせぇべ……そんだら事より、これからどうするべさ?」
 美濃姫は忌猿の言葉にスッと燃える十石城に背を向け、キッと睨むは敵が本陣を張っている山の麓。
「取り返しに行く」
「何をだべ」
「国の証、妾の家に代々伝わる……赤磊刀を」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『奪還して欲しいモノがある』

POW   :    力尽くで奪い返す。人なら殴り倒し、金庫なら殴り壊す。

SPD   :    素早く気づかれずに奪い返す。人からなら早業で、金庫なら鍵開けで。

WIZ   :    知的にだまして奪い返す。人からなら言いくるめで、金庫なら暗証番号解読で。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第二章予告

 民が逃げ切るまで籠城戦にて耐えきった多野の兵達。
 最後の瞬間、自分達も生き永らえるため次々と城から脱出するも、
 そこに美濃姫の姿は無かった。
 父親が討ち死にした際、敵に奪われた名刀・赤磊刀。
 この刀こそ多野藩藩主の証。
 美濃姫は、1人でもそれを取り戻しに行く覚悟であった。

『国に必要な物~滅亡の愛姫~』

 第ニ章 覚悟
■第二章『覚悟』


 曇天の雲に覆われ星明りすら無い山の麓を鬼の半面を付けた姫が走っていく。
 通常なら宵闇の中を歩く事すら難しいのだが、今は猟兵であり力ある仮面でもある佐田・忌猿の力を借り受け、常人ではありえない動きができていた……。
 燃える十石城に攻め込む敵の鎧武者達とその本陣を回り込むように、やがて忌猿を付けた美濃姫はある場所へとやって来ていた。そこへはある目的の為、そしてその目的のうち半分を美濃姫は達成する……。
「父上……」
 そこは美濃姫の父、十石・上埜信(といし・かずのしん)が兵を率いて武者軍団とぶつかった戦場であった。そして姫の目の前には無残にも殺された上埜信が横たわっており……。
「いつ敵が来るかもわがんねぇ」
「……うむ、わかっておる」
 いっぱいに溜まった涙をぽろぽろと流しつつ、死体を埋葬する暇すら無い事を姫も理解しており、せめてと髷を斬り取り布に包んで懐へしまう。
「父上……このまま残していく親不孝を許して欲しいのじゃ……」
 そう言って最後に手を合わせる。
 数秒だろうか、黙祷が終わった頃に忌猿が姫へと語り掛ける。
「姫は民も逃がし、上に立つ者として十分以上のことをなしただ……。もういいでねが?」
「……駄目じゃ。ここに無かったという事は敵に持ち去られたのじゃと思う」
「その赤磊刀とかいう刀がが?」
「最初は、父上の跡を継いだ藩主の責任として、多野藩の証たる石磊刀を『命を賭して見つけないと』と思っておった……。じゃが皆に、天下自在符を持ったお主の仲間達の言葉に、妾自身も生きねばならぬと知った。……だから、無理はしないつもりだったのじゃが……」
 手を合わせたまま語る美濃姫の目にもう涙は無かった。
「妾1人ではきっとあの時、忍びどもに討ち取られておったのじゃ……妾は、妾が思っておるより遥かに無力だった」
 ここに落ちているだろう赤磊刀を取りに来るぐらいは、自分1人でも出来ると思っていたが、その考え自体が甘かったと今なら解る。
 だから――。
 スッと立ち上がり美濃姫が僅かに鬼の半面に手をかざし言う。
「もう少しだけ、妾に力を貸してくれるか?」
 見据えるは敵大将が居座るであろう敵本陣が建つ方角。
「我に人の事は分からねぇが……姫さがやるなら付き合うべ」
「うむ、感謝するぞ忌猿」
 素直に美濃姫から感謝され、その瞬間、忌猿の中で何かがすとんと腑に落ちる。
 この姫がやろうとしている事は愚行だと言う事は理解している。
「(我は所詮、人の世から外れた身、人の志は理解できない……できない、が)」
 それでも、総身に力が漲ってくるのを感じ。
 2人は敵本陣へと向かうのだった。
吹鳴管・五ツ音
敵本陣のほど近く……ということは、敵方も相応の備えはしているのでありましょう

……忍びを放ってまで美濃姫殿の身柄を「攫う」ことを意図した点も気にかかることでありますし……

自分は、敵軍の陽動を
刀の奪還に向かわれる皆さんの邪魔立てはさせません

起床呼集、吹鳴。

真っ向から敵陣に向かい、遭遇した敵兵に小銃の一斉射を加えて戦闘の意思を印象づけたら、寡兵がゆえに押し返されたと見せつつ赤磊刀の奪還に向かわれるのとは反対側の山裾へ

錬成カミヤドリで遠隔に操る複数の喇叭の音と山の木立を利用して、虚実織り交ぜた小銃の斉射で敵陣をかき乱すであります

ーーまさか山の反対側のこっちに本命の刀が…なんてことはありませんよね?




 叭ッ叭喇叭♪ 叭ッ叭喇叭♪――。
 多野藩の山間に木霊するは起床を告げる喇叭の音。
「(起きろよ起きろ、皆起きろ。起きなきゃ隊長さんに叱られる……でありますよ!)」
 叭ッ叭喇叭♪ 叭ッ叭喇叭♪――。
 そう喇叭を吹き鳴らすは吹鳴管・五ツ音。
 しかも錬成カミヤドリで複数の喇叭を遠隔操作し山の反響も利用し響かせているのだ。敵からしたら複数人によって派手に喇叭を吹かれていると思ってもおかしくない。
 タタタタタッ!
 さらに偵察にきた敵の武者には小銃の一斉掃射で攻撃、最初は大勢の伏兵が攻めてきたと思わせ――すぐに敵の本隊も五ツ音の方へと向かって来たと見るや、今度は小銃での攻撃は牽制に使い、まるで敵に押し返され少しずつ後退しているように喇叭も動かす。
 五ツ音が後退していくのは十石城と敵本陣とを二等辺三角形に結ぶ頂点だ。少しずつ少しずつ敵を本陣からも十石城から引き離していく。
 それは自ら買って出た敵軍の陽動だった。
「(刀の奪還に向かわれる皆さんの邪魔立てはさせません)
 さて、これで多少なりとも皆への注意がそらせればよいのだが……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐田・忌猿
姫は民も逃がし、上に立つ者として十分以上のことをなした。
その上で姫はまだやる事があると言う。
忌猿も所詮は人の世から外れた身であり、人の志は理解できない。

「我に人の事は分からねぇが。姫さがやるなら付き合うべ」

この愚行に最期まで付き合うと決めた。
そう口にすれば、すとんと何かが腑に落ちて、総身に力が漲るのを感じた。

■行動方針
・姫の体力と気質を考慮し力ずくで取り返しに行く。
・最初は【暗殺】メイン。
・正面対決が不可避になれば【挑発】で目立ってジャスティス・ペインを発揮。格闘と武器受けで戦い抜きながら、他の猟兵の活躍に望みを繋ぐ。

「我は佐田の忌猿。十石の姫がここにあるぞ。死にたい者よりここに来い!」


死絡・送
姫様は仲間の誰かと、敵の大将の所へ行ったと考えて追いかける。
降魔化身法で化身忍者死絡に変身し己を強化し真正面から敵陣へ
向かい光子魚雷一万発発射!!で無数の光子魚雷をぶっ放し敵軍を
蹴散らし




「光子魚雷一万発発射!!」
 化身忍者死絡にて変異した死絡・送が無数の光子魚雷をぶっ放し、周囲に群がって来た敵の武者たちを蹴散らす。
「すまぬな、助かった」
 姫の身体を借る佐田・忌猿が感謝を述べる。
「敵本陣に向かったと思ったが……まさか正面から力づくとは思わなかったぜ?」
 送の言う通り、忌猿と美濃姫は力づくで本陣へと乗り込んでいた。
 もし五ツ音の陽動が無かったらどうなっていたことか。
 正直、今も残った敵兵に囲まれかなりピンチだが、未だ苦戦と言える状態にあるのは陽動に釣られた敵兵がかなり大勢いたおかげだった。
 雑兵の武者たちは戦場で死亡した足軽とでもいうような姿形をしていた。
 刀を振り、槍を突き出し、時に弓を射かけてくる……。
 近寄って来る武者を忌猿が投げ飛ばし、槍を小刀で斬り払い、飛んで来る矢は送が撃ち落とし、そのまま遠距離にいる敵を砲撃。だが、いくら陽動で敵の数が減っていようと敵本陣にて戦っているのが自分達だけなら、残っていた敵が集まって来るのは必定。
 斬り払えない刀が、矢が、手数に押し負けるようにして忌猿と送に傷を蓄積させる。
 そして忌猿に傷がいくという事は――。
「きゃっ!?」
 動きこそ忌猿のおかげで猟兵のそれと同等だが、美濃姫自身の精神まで強化されるわけではない。僅かに腕を刀が掠って斬られた事にも動揺の悲鳴を上げる。
「それぐれぇ大丈夫だ」
 忌猿が声をかけ、肉体の主導権をガッチリ握り動揺から隙が生じぬよう立ち回る。
「う、うむ」
 姫自身も今はそれどころではないと理解しているのか、できるだけ冷静に務めるよう気を張る。しかし忌猿も送も今の状況が決して良くないのはわかっていた。このままでは……。
 ジリジリと間を詰めてくる敵武者たち。
 忌猿は覚悟を決め叫ぶ。
「我は佐田の忌猿。十石の姫がここにあるぞ。死にたい者よりここに来い!」
 それは自身が性格に合わせ不利に陥る事で身体能力を上昇させる技だった。
 だが、それでももって数分。
 背中合わせに戦う2人に、その後を考える余裕はなかった……。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

涼風・穹
焼け落ちる城から逃げる前に、行き掛けの駄賃として攻めてきた軍勢の中で地位のありそうなオブリビオンに影の追跡者の召喚で暫く追跡させておく
次にどう動くのかの情報が欲しいし、相手の本陣の様子が分かればなお良し

それと可能なら軍勢の中の生きた人間を捕縛しておきたい
説得(物理含む)して話を聞いてみたいからな
(美濃姫の行動や赤磊刀についての情報を得ているのなら)
捕縛した盗賊だかの着ていたものを拝借して変装して武者軍団の本陣への潜入を試みる
……わざわざオブリビオンが美濃姫を浚おうとした所を見ると美濃姫には利用価値があるんだろう
……例えば美濃姫と赤磊刀とが揃うと何か物騒な事が出来る、とかじゃないと良いんだけど…



「忌猿、死絡殿、もう良い。これ以上はお主等の命が……妾を置いて逃げよ」
 美濃姫の言葉に忌猿と送の2人は同時に異を唱える。
「じゃが、このままでは……!?」
 美濃姫の中にやはり巻き込むべきではなかったとの悔恨の念が生まれ、強引にでも鬼の半面(忌猿)をはがすべきか、と考えた――その時だ。
 バタバタバタ、と敵の武者たちが倒れる。
 それもまるで道ができるよう1つの方角の武者たちが、だ。
 即座に送が砲撃し出来た道が再び敵によって埋められぬよう牽制し、忌猿は姫と意識を合わせ一目散に出来た道に飛び込み敵の囲いをすり抜ける。
 もちろんすでに集まって来ている敵兵達だ、囲みを抜けてもすぐに再び囲もうと集まってくるが。
「走れ! 走り続けろ!」
 そう助言しつつ美濃姫達に並走するは敵兵と同じ鎧姿の男。
「……お主!?」
「潜入目的で潜り込んだんだけどな……困った姫さんだ」
 それは涼風・穹だった。
 穹は焼け落ちる城から逃げる直前、行き掛けの駄賃として攻めてきた軍勢の中で生きた人間を捕縛し、その身包みを剥いで敵に変装、武者軍団の本陣へと潜入していたのだ。
「雑兵ばかりで影の追跡者が使えなかった分、自分で潜入して情報をって思ったんだが……まさか姫さん達が襲われてるのを見つけるとは思わなったぜ」
 ちなみに衣装を拝借した人間の敵は、美濃姫や赤磊刀については何も聞かされてはいなかった。
 だが、それでも敵本陣に潜入し自由に動き回れた功績は大きく、自分以外にこっそり敵本陣に侵入した仲間とも穹は連絡を取る事に成功していた。
「姫さん、この先の陣幕の1つに宝物用と思われる金庫を発見したと他の仲間が言ってたぜ」
「本当かぇ!?」
 驚く美濃姫だが未だ追って来る多くの敵兵に、そこに向かうのが難しいのではと……言おうと思った、瞬間。
 穹は足を止め――。
「ここは俺がなんとかする。姫さんはさっき言った陣幕へ向かえ! すでに何人かそこにいるはずだ」
「ならば、俺も残ろう」
 穹に続き送も敵兵の足止めに残ろうとその場で反転、砲塔を敵へと向ける。
『行けっ!!!』
 敵に群がられる2人を背に、鬼の半面を被った美濃姫は指示された陣幕へと疾走するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



 敵を本陣とも十石城とも違う場所へ陽動で引き寄せ続けている五ツ音だったが、自分の予感が斜め上に――しかも悪い方に当たった事を知り、即座に出現させていた小隊を消し(無論自身の喇叭も止め)、息を殺してその場で隠れる。
「(まさか別のオブリビオン達……しかも、あれは大将首レベルであります)」
 そういえば、偵察に出ていた仲間が別のオブリビオンの軍勢が時間差がやって来る、との報告をしていたのを思い出す。あれが、そうなのだろうか……。
 陣幕を張っているオブリビオンの仲間なのか、それとも、多野の領地が荒れだした事に集まって来たのか、それは解らない……。ただ、そのオブリビオン達は真っ直ぐ、未だ燃えている十石城に向かって進んでいた。
 突如山間に現れ攻めてきた武者軍団、その大将を取れば、あわよくばこの国はすぐに復興できるのでは……そう思っていた何人もの猟兵達は、その考えを改めねばならなかった。
 敵陣幕にいるオブリビオンの大将首を取っても、それで終わりではないのだ。
「(陽動は十分……ひとまず、ここは転進し情報を伝える事を最優先するであります)」
 そう心の中でつぶやくと、五ツ音は山の地形を利用しつつ秘密裏に敵の軍勢から逃げのびたのだった。
レイチェル・ケイトリン
お姫さまの刀さがしのおてつだい、ちからづくでいくよ。

とはいってもわたしの力って心の力、得意な念動力技能でつかうサイコキネシスなんだけどね。

とおくから精密な操作もできるから体をもちあげて足音させないでうごいたり、壁とかとびこえたり、みつけられたらとおくから刀をひょいってとりもどしたりもするよ。

敵がでてきたり金庫にはいってたら、うん、もちろんちからづくで。さっさとこわすよ。

わたしの力は心の力だから心のたいせつさ、わかるもの。

その刀はひとびとの心のささえになるものなんだとおもうから。

じょうずにやりたいから「手段は選ぶ」けど「容赦はしない」よ。


トゥール・ビヨン
【SPD】
美濃姫に追いついたら事情を聞いて赤磊刀を取り戻すのを手伝うよう申し出るよ。
信頼を得るために目の前でパンデュールから降りてきちんと挨拶を行わないとね。
「初めまして美濃姫様。ボクも将軍直轄の伝習隊の一人、トゥールと言います。」

取り返す対象が人ならパンデュールに乗った状態で接触し、対象がよそ見をするなどした瞬間ハッチから出て鍵を回収【フェイント】
すぐに離脱してパンデュールに搭乗し何事もなかったように鍵を持ち帰ろう【逃げ足】

対象が金庫なら鍵を開け行うよ。任せて、機械いじりは得意なんだ【鍵開け】


逢坂・宵
人の世には、これをもってしてその職とするものがあるそうです
物語の勇者の剣などがその最たるものでしょう
その刀が、多野藩におけるそれなのですね

人の上に立つ者は、それを象徴として持つのが
人心掌握的にも大変効果的であるといいます
であれば、選択肢はひとつですね

僕はあまり口が上手い方ではないので
ほかの猟兵のみなさんと協働して動くといたしましょう
例えば見張りや敵兵の気を逸らしたり
金庫に眠っているのなら、敵兵の会話を聞いて
暗証番号を推測し、開錠するなど
こういうのは何かの記念日や
敬う方の特別な日を設定している場合が多いのでは

……しかし、木を隠すなら森、と申します
金庫という「いかにも」に、隠すでしょうか




『貴様、何も――』
 見えない何かに殴られ警備役の武者鎧が何もできずにその場に倒れる。
「見張りがたった1人なのはぶようじんだよね」
 見えない何か……得意のサイコキネシスで警備を昏倒させたレイチェル・ケイトリンが陣幕の中に入りつつそう呟く。
 その陣幕内には先ほど昏倒させた警備の武者鎧が1人だけおり、それ以外はいくつかの錠のついた木箱が置いてあるだけだった。
「不用心と言っても、ここは敵の本陣の一部ですからね。ここまで入り込んでくる者がいると思っていなかったのでしょう」
 そう考えを述べるは逢坂・宵。事実、ここまで簡単に潜入できたのはレイチェルのサイコキネシスを利用し、敵がいる場所では足音をさせずに僅かに浮遊して移動したり、別の場所で物音を出し敵の気を反らしたりと、細心の注意を払ってやってきたからこそである。もちろん、レイチェルにしても宵が金庫のありかを盗み聞いていなければここに辿りつく事はできなかったので協力した結果と言える。
「この金庫は……」
 宵が千両箱のような箱にかかっている錠前を見てみるが、ダイヤル式でも暗証番号式でも無い。和錠と呼ばれる日本独自の錠前だった。
「参りましたね。いくつか暗証番号等になりそうな数字を推理しておいたのですが……」
 この形状では純粋に開錠の為の鍵が無い限り開ける事ができない。
「それじゃあ、わたしの力でちからづくでこわすよ?」
 レイチェルが再びサイコキネスを使おうかと提案――その時だった。陣幕の幕を持ち上げて2m程の大柄なロボットと、そのロボに小脇に抱えられた少女がやってくる。
 一瞬、敵かと思いレイチェルと宵が攻撃体勢に入るも、その小脇に抱えられた女性に気が付き声をあげる。
「お姫さま?」
「美濃姫様!?」
 そう、ロボに抱えられていたのは美濃姫であった。ロボは片膝を付いて姫を優しく降ろすと、そのままバシュと中から人が降りてくる。
「や、ボクの名前はトゥール・ビヨン、近くの見張りはノシておいたから心配しないで。ああ、こいつはボクの相棒で超常機械鎧『パンデュール』って言うんだ」
 降りてきたトゥール・ビヨンが横のロボを手で触りつつ自己紹介する。
「金庫なる物を発見した場所へ向かえ言われ走っている途中、この者――トゥールに助けられてな」
「それで、その木箱の山が金庫って事?」
 トゥールの言葉にレイチェルと宵が頷く。するとトゥールはポケットから大きめの鍵を取り出し。
「途中で鍵を持ってる敵を見つけてさ。奪っておいたんだ」
 ウィンクしつつ開錠するため木箱に近づいて行くトゥール。
「よかった……これで赤磊刀を取り戻せるのだな」
 安堵するよう美濃姫が呟く。その言葉に姫の本心を見た気がして宵が思わず言葉を口にする。
「人の世には、これをもってしてその職とするものがあるそうです。物語の勇者の剣などがその最たるものでしょう。そして美濃姫様、その赤磊刀という刀が多野藩におけるソレなのですね」
「うむ……その通りだ。赤磊刀は代々多野藩の藩主に伝わる由緒ある名刀、藩主交代の際にはこの刀の所有権譲渡の儀式も行われる。ただの刀だと言う声もあるだろうが、妾にはそう言った想いを繋げていく事も大事だと思うておる」
「わかるよお姫さま、わたしの力は心の力だから心のたいせつさ、わかるもの。その刀はひとびとの心のささえになるものなんだとおもうから」
「レイチェル……ありがとう、そう言って貰えると助かる」
「僕もその刀を持ち帰れるなら持ち帰った方が効果的だと思いますよ。人の上に立つ者は、そのような謂れの物を象徴として持つ方が、人心掌握的にも大変効果的であると思いますしね」
 もちろん宵としてはそれだけでないのも解っている。その刀は美濃姫にとって父親の唯一の形見なのだから……。
 やがて和錠を開けていたトゥールが「駄目だ」と声をあげる。
 何があったとレイチェルも宵もトゥールが開けた木箱に近寄るも。
「小判に銀貨に銅貨……入っているのは貨幣ばかりだね」
 つまり純粋に貨幣をしまっておく木箱と和錠だったらしい。
「ほかの木箱もそうなの?」
 レイチェルに言われてトゥールが他の箱も次々に開けるも、中に入っているのは似たような物ばかりだ。
 4人が落胆した……その時だった。
『侵入者……』
『殺す、殺す、殺す』
『誰だ……排除する……』
 少し時間をかけ過ぎたか、鎧武者の敵兵たちがぞろぞろと宝箱のある陣幕へと入って来る。
 即座に動いたのはレイチェルとトゥールだ。
「止まれー!」
「パンデュール!」
 レイチェルがサイコキネシスで敵兵の動きを一瞬止め、その隙にトゥールが超常機械鎧『パンデュール』に乗り込み鎧武者達に接敵。
「姫様は今のうちに」
 そう宵に逃げるよう言われるも、ここに無かったのならどこに……と迷う美濃姫、その表情を読み取ったか。
「木を隠すなら森、と申します。金庫という『いかにも』な場所には隠すはずがないと思ってはいましたが……」
 宵の言葉に美濃姫がピンを来る。
「木を隠すなら……そうか、つまり刀を集めている場所にある、という事か」
「はい。行って下さい。ここは私達が抑えます」
 宵はそういうと星の意匠が施された杖を構える。
「すまぬ……お主等も、死ぬでないぞ!」
 そう言うと美濃姫は鬼の半面を被り、鎧武者達が来た幕と反対側の幕を斬り裂き脱出するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レッグ・ワート
お姫様が逃げない?マジか。
避難面々から合流に活かせる話が聞けてるなら使い時。俺一人なら未整地だろうが最低限の幅と高ささえありゃ宇宙バイク走らせるよ。障害物は鉄骨で払うかジャンプで躱す。近道するし、開けたらゴッドスピードライドも使うわ。バイク無理なら走るしかないわな。
もし遠目からでも前領主の戦場が見えたら少し見ておく。気持ち的に大切だろうから言わないが、命賭ける刀か?
とまれお姫様か仲間に会えたら、敵の攻撃捌きながら運ぶ足と足止めとどっちが良いか聞くかね。人命優先。囲まれる前に突破したいが、連携で勝機があるなら無茶に乗ってもいい。何にせよ敵やその攻撃は鉄骨やカーボン糸で受けたり払ったり纏めたりだ。


ジェフリエイル・ロディタ
【WIZ】お城から出た後はこっそり動かないと危ないね。
オブリビオン達が通った後の村や、登れば死角の見通し悪い樹があれば、
見つからないように布でも被って息を潜めているよ。

動きを探りに行くなら昼間に動こう。
もし見つかったら堂々と、置いて行かれたって言おうかな。
何で置いて行かれたのかわからないよね僕はこんなに輝いているのに!
前線で無しに人手がいるところがあるなら手伝いたいとも申し出よう。
ダメそうなら、疑念や殺意、疲労の歌を歌うよ。進軍疲れはあるだろう?
興味が惹ける程度に、でも最大限手は抜く。

味方に会えたら、決意や覚悟を励まし支える、
そんな気持ちを込めて奏で歌おう。歌うなら断然こちらが楽しい!


寺内・美月
目標 城に向かって侵攻中の敵別働隊(以下E2)の撃砕もしくは遅滞と漸減。
1,『戦闘団召喚』にて三個歩兵大隊と砲兵大隊を召喚する。
2,E2に対し、『準備砲撃『地獄雨』発動』を行う。前衛が崩れ次第、二個歩兵大隊を突入させる。
3,二個歩兵大隊が血路を開いた場所に残りの一個歩兵大隊と『共鳴する双刀の魂』で呼び出した白黒の鎧武者を突入させる。
4,砲兵大隊は歩兵部隊の支援をしつつ、敵に反撃する時間を与えないように砲撃する。
5,劣勢になった場合は両方のコードを解除して撤退する。
6,これを美濃姫達が赤磊刀を奪還するまで繰り返す。




「(こんな事になるとは……!?)」
 山中の木を背に隠れつつ、寺内・美月は心の中で敵兵達に対して毒づく。
 十石城に向かって来ていた別のオブリビオンを首領とするであろう軍勢を相手に、自身のユーベルコードにて出現させた各部隊を使い順次攻撃を開始したのは四半刻も前だっただろうか。敵兵にとっては予想外の迎撃者に対し最初こそ浮足立っていたのだが、敵オブリビオン首領の指示が発揮されたのか、すぐに体勢を立て直し鶴翼の陣を敷くかのように美月の部隊は押され始め――。
「(おかしい、明らかに途中からブーストされてる気がする……そんな能力があちらにはあるのか!?)」
 戦闘の中、気が立ち、いつもより口調が荒くなるがそれも仕方が無い。
 ブーストと言っても大して強化されたわけでも無いが、微差でも祖語が出れば戦術の狂いを生む。
 一番の問題は劣勢になるや否や撤退する予定が、ボス級がいたであろう事による立て直しの速さ、ブーストによる戦術の狂い、それらが合わさり撤退のタイミングを逃した事だった。
 今、ここでユーベルコードの部隊達を解除すれば、敵に包囲され捕まる可能性が高い。
 もちろん……だからと言ってこのまま戦い続けても勝機どころか生存の希望すら無いのだが……。
「くそっ」
 今度は思わず口に出る。
 が、絶望の中でこそ諦めなければ道は開かれる。
 敵陣の方で何かあったのか、わずかに敵兵の動きにばらつきが出て連携が途切れる。
 今がチャンスと美月はユーベルコードを解除し、一目散に敵から離れるよう山の中を走る。
 だが、すぐに徒歩でない何か機械音が後を追ってくるのに気が付き――。
 迎撃するか、それとも隠れてやり過ごすか……僅かな逡巡、その瞬間。
 ドシュンッ! 頭上を何かが飛び越える。
 それはサムライエンパイアには存在しない宇宙バイク、つまり、同胞だ。
「おっと、見逃す所だったぜ」
 宇宙バイクに乗ったウォーマシンが美月に気が付き、着地と同時にドリフトし美月の前へとバイクを滑らせ止まらせる。
「あの部隊相手に孤軍奮闘していたのはお前だな。あの数相手にやるじゃないか。だがそろそろ潮時だろう、乗れ! 逃がしてやる」
「感謝する」
 即断で宇宙バイクに乗る美月、ウィーマシン――レッグ・ワートは再びバイクをスピンさせ方向転換すると、再び敵の軍団から逃げる方向へとバイクをかっ飛ばす。
 レッグは多野藩の民が犬神藩へと逃れる護衛を勝って出ていたのだが、後から合流した家臣団から姫だけ大事な刀とやらを取りに行ったと聞かされ、姫を逃がす為に敵本陣へと向かっていた所だと言う。
 だが、その途中に敵の別動隊を発見、さらにその敵陣から明らかに猟兵が操るような美しい歌声が響いているのを聞いてしまい、もしや仲間がと思って救出に向かった結果――。
「で、こいつを拾った」
「隠れてはいたんだけど見つかってしまってね」
 宇宙バイクには先客がおり、やけに目立つ(眩しい?)男――ジェフリエイル・ロディタが美月に挨拶する。
「味方に置いていかれたと説明したのだけどね。どうにも殺されそうになったので疑念や殺意、疲労の歌を歌ってなんとか殺されずにいたんだ。先ほどなんて戦闘が開始され歌を歌うよう強制されてね……もちろん、仲間が戦っていると思ったから最大限手は抜いたけど」
 お前か、と思わず美月はジト目になるが、ジェフリエイルも運が無かっただけで悪意があったわけではない。それに――。
「せっかく仲間に会えたんだ。2人に会えた喜びの気持ちを込めて奏で歌おうか! 歌うならやはり仲間の為、その方が断然楽しいしね!」
「いや、逃げてるんだから静かにして欲しいんだが……」
 レッグに冷静にツッコまれ、なぜかやれやれというジェスチャーを返すジェフリエイル。
 美月やジェフリエイルが起こした騒動は戦術面でいうなら失敗したと言える。
 だが、戦略として見た場合……。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

月舘・夜彦
奪われた刀は国の宝であり、父君の形見でもありましょう
物の価値は見た目だけではなく、持ち主との関わりにも見出される
命を賭けてでもと人の心を動かす程の存在
……だからこそ、私達のように物から生まれる者も居るのでしょうね
必ず、取り戻しましょう

美濃姫の情報から鞘の色等、刀の見た目を知る
戦において討ち取った証として相手の武器を奪う事もあります
何者かが所持しているのならば、見た目が大きい者
装備が周囲よりも整っている者を確認
所持されていないのならば荷車等の物に纏められている可能性もあります
抜刀術『風斬』は敵が所持しているならば【残像】併せ攻撃回数重視
荷物を破壊する必要があるのならば攻撃力重視


ヴィクトリア・アイニッヒ
【POW】を使用
桐・権左衛門(f04963)と行動を共にする。

…何故、もっと私達を頼ってくださらなかったのですか。
一言本心を零す、それだけ動く者もいたでしょうに。
…いえ、今は姫の手助けが最優先です。この危険な場所に、長く居させる訳には行きませんから。

戦場で失われたのであれば、まずは彼の地へ赴くのが一番。
そこで見つからないのであれば…落ち武者狩りを図る者か、敵将の手に落ちたか。
…この状況、時間は掛けられません。
本位ではありませんが、手早く探す為に…手荒いことも、必要でしょう。

戦闘に発展した場合は、敵の攻撃を引きつけつつ無敵城塞で防御。
攻撃や奇計の類は、同行するゴンちゃんさんにお任せしましょう。


桐・権左衛門
ヴィクトリア(f00408)と行動を共に

討ち死時に奪われたか…相手は人間やない気ぃするな
相手が人間なら【言いくるめ1】口八丁で自信はあるで

姫は取り戻しに…って事は目安はついてるんか
信じひン訳やないけど【情報収集1】【第六感2】で裏方面から当たるで
情報が少なすぎて判断できん

美濃姫を無事やったら頬っぺた抓っちゃる、赤ぅなるまで抓っちゃる
腹立つんは相談もせん事や、友人や戦友にしても…
次そないな行動をしたら乳揉むからな!(指ワキワキ

ん?武者大軍発生した位置と山間の領地を襲う意味が赤磊刀を奪って誘き出し、姫さんをこの状態をする事を目的としてたなら…?

姫さん、実はこのキナ臭い背後気付いてるんとちゃう?


コノハ・ライゼ
色々お偉いさんに任せ姫の後を追う
すぐ追いつく言うたデショ?

イイ?アンタの役目はその身その覚悟を必ず持ち帰るコト
敵どうこうはオレらの役目
その上で今一度聞く、アンタはどう動く

待つなら其が一番
オレは陣へ潜入し非常時の敵排除に努める

だが共に行くと言ったら
「ココの誰を犠牲にしてでも生きて、戻るか
勿論傷ひとつ負わせナイしやられもしねぇケド

すぐ姫を『かばう』事の出来る立ち位置保持
姫に耳飾り渡し【鈴透】発動
鬼面クン着けてても平気だろうか
可能な限りの忍び足で姫を安全に連れ安全に帰す事に専念

戦闘避けられねば
「柘榴」「氷泪」使い『生命力吸収』しつつ
『2回攻撃』で確実に『傷口をえぐる』
傷受けても『激痛耐性』で悟らせず


紺屋・霞ノ衣
アタシ達が行かなかったら姫さんは一人でも行くつもりだったのかい
その結果は流石に分かるじゃないか、死ぬよ
取り戻せないくらいなら死んだ方がいいと思ってる?
それとも自分の土地を守れなかった責任を感じてる?
どちらにしても野暮な事はするんじゃないよ
力が無いなら頼れば良い、取り戻したい物があるなら何をしても奪い返せ
あんたの父親はあんたに綺麗に死んで欲しくて生かしたんじゃない
生きて戦うのさ!絶対に諦めない限り、アタシ等はあんたの味方さ

目標が敵にしても、金庫にしてもぶち壊すまでだね!
羅刹旋風、味方の動きを確認しながら武器を回しておき
【捨て身の一撃】で決めるよ
のこのこと宝奪って帰るんじゃないよ
さあ、反撃の時間さ




「敵の鎧武者達が減ったように感じるのぅ……」
 物陰に隠れながら移動していた美濃姫は、ふと敵の鎧武者達の数が減った事に気が付き顔を出す。
 もちろん、それは別の部隊で騒ぎが起こった事で、こちらの兵力のいくらかがそちらに援軍として回された……というのが真実なのだが、美濃姫はそれを知る由もない。ただ――。
「行くなら今しかないのじゃ」
 そう立ち上がって走りだろそうとした瞬間、背後に気配を感じて鬼の半面の――忌猿の力で咄嗟に小刀を抜く。だがその腕を軽々と掴んで「しー」と声を出さない様に告げるはコノハ・ライゼだった。
「お主は!?」
「すぐ追いつく言うたデショ?」
 再び姫を物陰に押し込むと同時、すぐそばを鎧武者が走って行った。先ほど飛び出していたら危なかっただろう。
「す、すまぬ」
「いいってコト、それより……アンタの役目はその身その覚悟を必ず持ち帰るコト、敵どうこうはオレらの役目。その上で今一度聞く、アンタはどう動く。ここは敵陣の真っただ中、見つかればタダじゃすまない……解ってるデショ?」
「それは……無論、解っておる」
 美濃姫は震えだす身体を抑えつけるよう拳を握り、鬼の半面に手をやると。
「それでも、妾は赤磊刀を取り戻す……取り戻したいのじゃ」
 前半は藩主として、しかし後半の口調は姫本人の本音であろう。それが解ったからこそコノハは自分の耳飾りの片方を外して美濃姫へと渡す。
「これは……?」
「ココの誰を犠牲にしてでも生きて戻る……約束だ」
 勿論傷ひとつ負わせナイしやられもしねぇケド……そう心の中で呟き、耳飾りを付けるよう言うコノハ。
 美濃姫が耳飾りを付けると、コノハは自身のユーベルコード≪鈴透≫を発動。それは自身と同じ耳飾りを付けた対象を透明化する力だった。
「なんと……これなら!」
 驚く姫だったが、どうやら対象は1人だけらしく鬼の半面だけが宙に浮いて見えてしまう。
 敵陣の中で透明でいられる事は最大限の有利に繋がる。忌猿の身体能力強化はありがたいが、今は前者を優先するべきだろう。
 美濃姫は忌猿をコノハに預けると、完全に見えなくなった状態で声だけ。
「忌猿を頼む」
「それじゃあ付いて来て」
 コノハは頷き忌猿を受け取ると、武器を集めてある陣幕を仲間が発見したから付いてくるよう姫に言い、最大限警戒しつつその陣幕へと向かったのだった。

 その陣幕へと辿りついた時、すでに中の見張りは倒され月舘・夜彦だけが立っていた。
 コノハは敵が来ないよう外で見張っていると姫だけを中へやり、美濃姫はそこで耳飾りを外し姿を現す。
「美濃姫!?」
 突如現れた姫の姿に、さすがの夜彦も驚くが。
「コノハの力で姿を消しておったのだ。……すまぬ、刀や武器が纏まっているのを見つけたと聞いたのだが」
「はい。戦において討ち取った証として相手の武器を奪う事もありますので……」
 そこには荷車に積まれた大量の刀や槍、武者鎧が置いてあった。夜彦の言う通り戦場で敵から奪った武具なのであろう。
「その赤磊刀とは国の宝であり、父君の形見でもありましょう」
「うむ」
「ならばこそ、物の価値は見た目だけではなく、持ち主との関わりにも見出される。命を賭けてでもと人の心を動かす程の存在……だからこそ、私達のように物から生まれる者も居る」
 そう言って僅かに美濃姫へ微笑むと。
「必ず、取り戻しましょう」
「うむ、感謝する」
 頷き合い、夜彦は濃姫から鞘の色や刀の見た目等を教えて貰い、一緒に集まった武具の山から目的の赤磊刀を探し始めるのだった。
 そうして2人で探し始め少し経った頃、武器を集めたこの陣幕の幕をバッとまくり3人の人物が入って来る。
 それは桐・権左衛門と、ヴィクトリア・アイニッヒ、そして紺屋・霞ノ衣だった。
「やぁっと見つけたわ」
 ここを探り当て2人を導いた権左衛門がはぁと息を吐く。だが、それより早くツカツカと美濃姫に詰め寄ったのはヴィクトリアだ。
「……何故、何故もっと私達を頼ってくださらなかったのですか」
「そ、それは……」
「姫が一言、本心を零してさえくれれば、ただそれだけで動く者も大勢いたでしょう……」
「………………」
 黙る美濃姫にさらに何かを言おうとするヴィクトリアの肩を、権左衛門が叩き。
「ヴィクトリア……」
「ええ、そうね……今は姫の手助けが最優先です。この危険な場所に、長く居させる訳には行きませんから。私達にもその刀の詳細を教えて下さい」
 そうして5人で一緒に探し出せば、さすがに人の手が多いだけありすぐに目的の赤磊刀が見つかる。
「見つけた。これぞ多野藩に伝わる名刀・赤磊刀」
 喜ぶ美濃姫だが、そこまで黙っていた霞ノ衣が口を開く。
「無事見つかったから、野暮と解っていても言わせてもらうよ……あんた、アタシ達が来なくても一人でこれをやるつもりだったのかい?」
 刀を見つけ喜んでいた美濃姫は、真剣な表情で霞ノ衣を見つめ「はい」と答える。
 霞ノ衣はわしゃわしゃと髪をかき。
「もしそうしてたら、その結果は流石に分かるじゃないか……あんた、死んでたよ」
 それはヴィクトリアや権左衛門も思っていた事だ、だから敵陣のど真ん中だろうと霞ノ衣の言葉を邪魔する事なく静かに事の成り行きを見守る。
「取り戻せないくらいなら死んだ方がいいと思ってたかい? それとも、自分の土地を守れなかった責任を感じてるのかい?」
「妾は……」
 一度言葉を詰まらせ、しかし何かを飲み込んだ後、美濃姫はうつむいたまま話し出す。
「妾は皆がこの地へ来るまで、民を逃したら機を見て赤磊刀を取り戻しに行かねばならぬと思っておった……例えそれが死地に赴く事になろうと、それは藩主としての責任だと思っておったから……」
 そこで姫はクッと顔を上げ霞ノ衣を見つめると。
「だが、それは違っていた。皆に諭され、妾が死ぬわけにはいかぬと……そう思うようになった」
 それは姫の心を変えた猟兵達の言葉の結果だ。もしそれが無ければ美濃姫は誰にも何も言わず落城と共に死地へ一人向かっていただろう。そこまで言うと、姫は僅かに表情を和らげ。
「しかし……だからこそ、縁も縁もないお主等を、無関係の妾と我が地を全力で救おうとしてくれるお主等を……巻き込むわけにはいかぬと思ったのだ……」
 死ぬ覚悟を持っていた事以外に、更に何をするつもりか追及出来ていれば……または純粋に姫と親交を深める事に尽力していたのなら、美濃姫は全てを語っていたのかもしれない。だが、切羽詰まった籠城戦の中、そこまでやれたかと言われると難しかったのが現実だ。
「お主達にも……妾は、死んで欲しくなかったから……」
 美濃姫の頬に光る物が流れる。縁も縁も無いと姫は言った。だが、その姫もまた縁も縁も無い猟兵達の事を大切に思ったのだ。だからこそ――。
「あぅ」
 本格的に泣き出そうとする姫の両頬っぺを権左衛門が軽く抓り、強引に笑顔にする。
「それやったら素直にそない言えば良かってん。腹立つんは相談もせん事や、そこまで思うてくれてとん、すでに友人やろが!」
「え、ええ!?」
「次そないな行動をしたら乳揉むからな!」
 冗談か解らないが指をワキワキ動かす権左衛門に、思わず胸を隠す美濃姫。
「まったく、私は我慢したんですよ?」
「はは」
 ヴィクトリアが権左衛門に不平を漏らすも、笑ってすます権左衛門。中々に良いコンビのようだ。

 ドガッ!!!

 陣幕の外から何か激しい音がしたと思えば、何かが陣幕内へと勢いよく吹き飛ばされて来て、刀や槍、武者鎧の山へと突っ込む。
 何事か、と皆がそちらを見る。それはコノハだった、生きてはいるようだがかなりの一撃を貰ったのか武器や鎧に埋まったまま動けないでいる。皆が助けようかと動こうとした――次の瞬間。
 大柄な影が陣幕内に落ちる。
 殺気を感じて誰もが振り向く中、すでに大刀を振り下ろしにかかっていた敵の大将は躊躇せず刀を振り抜く。
 狙いは……無論、美濃姫。
 だが――。

 ガッギンッ!

 重たい音が響き、敵の大刀を無敵城塞と化したヴィクトリアが防ぐ。
「美濃姫様は後ろへ!」
「こっちはウチらがやるで!」
 即座に夜彦と権左衛門が戦闘態勢を取りつつ、背後に美濃姫を庇う。
『ほう、まさか美濃姫直々にここに来られていたか……これは、わざわざ首を取りに向かう手間が省けたと言うもの』
 ブンッと大刀を振り抜き、美濃姫を見定める鎧武者大将。
 それが発する重圧は雑兵のそれとは比較にならなかった。相対しているだけで身の毛がよだつほどだ。
 これが、こいつが……突如現れ多野藩を襲撃した鎧武者軍団の首魁、大将たるオブリビオンだとここにいる全員が理解する。
 さらに大将のオブリビオンが現れた時に破った陣幕の切れ目から、ドタドタと計6人の雑兵達が現れる。
『愛らしい姫だと噂されているようだから、まずは攫ってと思ったが……やはり、反逆の目は潰しておくに限る。今ここで、我自らすり潰してくれるわ!』
 轟と大将の身体から邪悪なオーラが立ち昇り、そのオーラに引き寄せられるかのように陣幕内に積んであった刀や槍、そして武者鎧が次々と大将オブリビオンに吸収され、合体していく。
 その姿はもはやロボットと形容してもおかしくない巨大な武者鎧のロボであった。
 圧倒的な力を前にし、更に姫の事もあり皆が二の足を踏む中、逆に一歩踏み出し無骨な斧を構えるは霞ノ衣。
 さらに背を向けたまま美濃姫に向かって叫ぶ。
「取り戻したい物があるなら何をしても奪い返せ! あんたの父親はあんたに綺麗に死んで欲しくて生かしたんじゃない、生きて戦え! それがあんたの父親の願いであり、アタシ達猟兵全員の思いだ!」
「霞ノ衣……」
「あんたに力が無いなら頼れば良い! 絶対に諦めない限り、アタシ等はあんたの味方だ。さあ、反撃の時間じゃないかい? 何か言うべき事があるんじゃないか、なあ! お姫様!」
 霞ノ衣の言葉にギュッと赤磊刀を握りしめつつ美濃姫は叫ぶ。
「皆、頼む! 妾と一緒に、仇を討ってくれ!!!」
 その言葉を待っていたと、猟兵達の心に力が漲る。
そうして、最終戦の幕が切って落とされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『戦国武将』

POW   :    合戦具足
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の城の一部もしくは武者鎧】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    乱世斬
【日本刀による衝撃波を伴う斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    戦国兵団
【自分に従う兵士達】の霊を召喚する。これは【火縄銃】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●最終章予告

 手に入れた藩主の証、名刀・赤磊刀。
 だが、美濃姫がそれを手にした瞬間、陣幕を切り裂き巨漢の鎧武者が現れる。
「貴様がこの国の藩主か……のこのこ現れるとは都合が良い」
 この鎧武者こそ多野藩に侵攻したオブリビオン軍団の首領であった。
 美濃姫を背に庇い、猟兵達は最終決戦へと挑む。

『国に必要な物~滅亡の愛姫~』

 最終章 仇討戦
レイチェル・ケイトリン
都合がいい……
そう、これからはじまる「藩主と首領のたたかい」で勝者がきまる。
だから……

「ごめんなさい。こわいでしょうけど、お姫さまもたたかってください」

「わたしはこれからもうまもることしかできない。
でも、それだけはやりとげてみせます」

「だから、示してください。お姫さまのたたかいの在り方を」

そう言ってわたしが得意な念動力技能で「まもりぬく心」をつかうよ。

まだ狭い範囲しかまもれない、未完成のちっちゃな力だけど
首領の攻撃だろうが、火縄銃だろうが、弓矢だろうが、ふせぎきる。

でも、それで首領がお姫さまころすのあきらめて逃げようとしたとき、
それを足止めするのはお姫さまの言葉しかないもの。

逃がせないものね。


死絡・送
いざ決戦、仲間達と力を合わせて戦うぜ。
アームドフォートで砲撃しつつ、敵が巨大化したり雑兵を出して来たり
広範囲攻撃をしてきたら「そいつは読んでいたぜこれでも喰らえ!!」
とその度に光子魚雷1万発発射!!を使いカウンターで対消滅を挑み
反撃の機会を作る「姫様もこの国も助けて見せる!!」
と言い、忍者らしく手裏剣で敵の大将の関節を狙って攻撃もする。
倒れても立ち上がり何度でも攻撃を続ける、諦めないのが死絡流の忍道
なのでただひたすらに勝利を目指して目標に挑み続ける。
勝てたら姫に「再興頑張ってな、何かあったら駆けつけるぜ。」
と言います。


佐田・忌猿
「姫はやっぱ立派だべなぁ。安心したべ。後は……オブリビオン滅すべし」
巨兵を見やり臆さぬ姫を見やり安堵すると、一転し低い声で告げる。
コノハに頼んで敵武者の近くで放ってもらい
「六妖転身」
妖魔をもって形作った、姫には見せない禍々しい化身忍者の姿を露わにする。

・【行動方針】
・炎を纏って跳躍しながら、手刀や蹴りで雑兵を蹴散らし、苦無の影縫いで動きを封じつつ武将を目掛けて駆けよう。
・戦闘では挑発しつつ正面戦闘を担当。巨大な日本刀を側面からの吹き飛ばし打撃で逸らして武器受け。隙を見ては全身を使って炎を纏う打撃を入れる。
・勝機があれば相手の頭上に跳躍して合戦具足にUCを叩き込み、城部分の地形破壊を行いたい。


トゥール・ビヨン
パンデュールに搭乗し戦闘に参加

ボクは美濃姫様を護衛することに力を注ぐよ。
姫様の近くまで行ったらパンデュールの首元の宝石に触れて貰い、ルーム・オブ・エクランを発動
そこなら、ボク達と一緒に戦える
そこで見届けてくれ!

以後はドゥ・エギールでの武器受けやパンデュールの掌からのエネルギー盾で盾受けを行い、防衛主体で戦おう
何としても美濃姫様の命は守らせて貰うよ!

敵に伝えたいことがあればそのまま声を届けて貰う

どうしても美濃姫様が自分で戦いたいと意志を示し説得に応じなかった場合は、勝算がある場合に限り仲間に合図を行いながら援護射撃で最大限援護を行って美濃姫様に仇を討って貰おうか


逢坂・宵
美濃姫様、心のお備えを……できているようですね
人の上に立つものたるもの、
常に臣下を安心させ、鼓舞し、そして慕われる存在でなければならないと書は説いています
貴方がそうである必要はありませんが、主とはそうあるものでございます
大丈夫、今の貴方はもう強い
さあ、武器を手に取りなされませ
我らが猟兵、貴方のために力を振るいましょう

「属性攻撃」、「全力魔法」を用いて戦います
もし可能であれば「2回攻撃」、「破魔」なども狙っていきましょう
仲間と協調し、敵についての情報を共有しつつ
臨機応変に戦っていきましょう
天撃アストロフィジックスで攻撃を行います


コノハ・ライゼ
……ちょっとぉ、イケメンに傷が付いたらどうしてくれンのサ

【WIZ】
は、それ位分かり易くねぇとなあ
もー頭使って疲れちゃったしぃ

『高速詠唱』で【月焔】発動
敵数分に分散させた炎を撃ち込み、『2回攻撃』で首領前へ飛び込む
「柘榴」で『傷口をえぐる』ように斬りつけ『生命力吸収』
炎は牽制兼ね敵と姫を隔てるように撃ち続け
柘榴で首領、届かなければ手近な雑兵から血を啜りと繰り返す事で
地味に嫌ぁな障害となろう

反撃には特に留意し炎や柘榴で攻撃弾いたり
斬撃は『捨て身の一撃』で迎え撃ちながら姫が傷付かぬ様『かばう』

『激痛耐性』で傷は負えど痛みを露わにはしない
やられないっつったデショ
さぁ、次喰われたいのはドレだ?


吹鳴管・五ツ音
よもや刀のみならず敵本陣の大将首まで狙うとは、豪儀な方でありますなぁ
(苦笑と共に、美しい華が戦場に咲いてしまったことを惜しむようにか、そのつもりはなくとも姫の覚悟を見くびっていたことを恥じ入るようにか、伏せた目を隠すように軍帽を目深に被り直し)

ならば今は眼前の敵の撃滅を
各個撃破はされるよりもする方が望ましくありますから

複数の陣幕が置かれたことから見ても敵方の野戦陣地構築は十分、といったところでしょうか

であればまずは地の利を奪うことから始めましょう

多勢に恃むか、大柄な体を振り回すか
敵勢の強みを潰すよう

猟兵一同の邪魔にならぬよう
知識と技術と経験とを総動員して、敵陣を掘り返しましょう

砲兵、撃ち方始め


ヴィクトリア・アイニッヒ
桐・権左衛門(f04963)と行動。

流石は首魁。その威圧感は並の雑兵とは一線を画する、と言った所でしょうか。
ですが、私達は負けません。美濃姫様の願い、叶えてみせましょう!

とは言え、まずは美濃姫様の身の安全の確保が最優先。
攻撃に専念し過ぎて彼女の護りが薄くなった所を狙われてしまう可能性もあるでしょう。
…私が、護りを引き受けます。この身で全ての攻撃を、引き受けましょう。


紺屋・霞ノ衣
うちの姫さんがね、仇を討ってくれって言ったんだ
アタシが戦う理由はそれで十分さ、大満足なのさ

最初は家族も国の人間も土地も奪われて、己の死さえ考えた
仇を討ちたくても戦う術がなく、悔しくて悔しくて仕方なかったろうさ
今は猟兵という術を、生きて立ち向かう意志を得た
力に抑圧されたあの子はもう居ない
……いいねぇ、アタシはそういうの大好きだよ!

小細工は無しだ
曲がりなりにも相手は国を落としたボス
武器を振り回しながら敵の間合いを確認
敵の攻撃の直後、または味方の動きの隙を見て
【捨て身の一撃】で【羅刹旋風】
あんたの鎧が壊れるまで何度でもぶち込んでやるさ

戦いが終わっても、生きていれば人生は続く
姫さん、次はどうしたい?


月舘・夜彦
やるべき事は一つ、首領を討ち取るのみ
美濃姫は私達に任せて一人で待つ事も出来たでしょうが
あのお方は単身でも向かおうとしていたのです
立ち向かう勇気と責務を果たそうとする意志は誰よりも強い

一国の主の望み、私達が応えてみせます
そして心配をかける訳にはいきません
皆、生きて帰るのもあの方の望みです
繋いだ縁は我等と共に在る
この先も、きっと

敵からの攻撃は主に【残像】【見切り】を活用
変形時はかなり大きくなる分、威力も高いでしょうから回避を重視
抜刀術『神風』にて遠くから攻撃をしながら距離を詰めていきます
兵士の霊を召喚した場合はそちらを優先
【2回攻撃】を活かして、速やかに排除しましょう


寺内・美月
主力が敵将と戦っている間に【戦国兵団】で発生した敵を此方も【戦闘団召喚】で残った歩兵大隊を召喚して相殺する。【戦国兵団】を駆逐したら敵将に二式小銃で攻撃を与えつつ、【SSW式治療レーザー】で味方を治療する。


桐・権左衛門
ヴィクトリア・アイニッヒ(f00408)と供に行動

あの姫さんはまた無理するやろし、なんとかしたらなあかんな

ヴィクトリアはんが盾にになって防いでくれるんならウチは矛となるで

狐火の真髄見せたるで!
【範囲攻撃1】を最大火力で撃ち込んだる

撃ち漏らした相手は狐火を小分けにして撃ち込んだるわ
射撃戦もそこそこ得意やしな

【マヒ攻撃】も試したい所やけど、なんか効果薄そうやな、無理やったら【捨て身攻撃】で今までのお礼させて貰おかー!

最後の一撃は美濃姫にさせてあげたいけど…そないな余裕あるやろか

美濃姫にはこれで貸し一つやね!乳…揉ませて…やなくてツケさせて貰うで?
先ずは民とか藩とかでやる事山積みやろうしな。


涼風・穹
(姫さんを先に行かせたものの、気になって姫さんに影の追跡者の召喚を使用して様子を伺っていた)
……不味い…
直ぐに向かいたいけど、だからといって目の前の方々を放っておけば鎧武者大将の増援に向かうのは火を見るより明らかだし…
……やるしかないか…
「ここから先は通行止めだ、どうしても通りたければ俺を倒してから進むんだな」

レプリカクラフトで俺が見た事のある金属で一番硬そうなもの、スペースシップワールドの宇宙戦艦の装甲板を、厚さはそこそこに縦横の面積を最大にしたものを作成、敵軍に向けて倒します
鉄でも18立方メートルの重量は140トン超え
厚さは薄かろうと壊せなければ潰されるだけ
さっさと姫さんの助太刀に向かうぜ


ジェフリエイル・ロディタ
【WIZ】
改めて謝ったしお礼も言った。歌っていいよね!
輝き増す皆へと他者への労りと鼓舞の歌を響かせよう。
筋は決めてるけれど、戦いの中でも皆の気持ちを聞いて、
シンフォニック・キュアに取り入れるつもりさ。

乱戦では配下がお姫様達へ射かける矢を念動力で浚う。
誤射させたいけれど、数が多いならただ地面に向けるまでにするね。
隙を見て武装を奪い折ったり、強化に使われないよう遠くに放るよ。
近づかれても逃げ足には自信があるし、念動力で刃を逸らしてみよう。
誰か助けて。

この輝ける僕を放っておくなら別にいいんだよ気にはするけど。
何にせよ、仇討で終えたい話じゃない。
君達が共感し得ない、試練の先を往く為の歌を聴くと良い。


レッグ・ワート
【POW】お姫様の無事確認して即撤収の空気じゃないなこれ。とりま全体の立ち位置見て、ボスと手下で人手が少ない方に加勢するぜ。お姫様の話色々聞いた身としちゃ無事に合流して欲しいんで、ヒーローが助けるにしろ護衛がいなけりゃフォローに回る。護衛につくなら対象近く、違うなら前に出るさ。
先ずは鉄骨で殴って衝撃通るか試して、駄目なら背面や脇や足元狙いに切り替えだ。敵の攻撃は、風切りや踏み込み音を覚えて見切って避けるか、鉄骨や装甲で受けたり払ったりしてくよ。後は俺が庇ったり皆が仕掛け易くなるような距離調節も考えてる。
もし警告があったり、敵が今までと違う構えをしたら「無敵城塞」で後方被害を防ぎにかかるぜ。



―――

■最終章『仇討戦』


 空は曇天、星灯りすら無い薄暗い空の下、陣幕内に置かれた篝火だけが火の粉を散らす。
 敵本陣にある陣幕の1つで、敵大将たるオブリビオンと対峙するは美濃姫と猟兵達。
 武器や鎧甲冑を取り込み巨大化した武者鎧のオブリビオンは猟兵達を睥睨し。
『猟兵どもと美濃姫、その首まとめて斬り飛ばしてくれよう』
 左右の手に持つ野太刀のごとく長くなった打刀のうち、右手の刀をブンッと薙ぎ払う。
 ガッ!
 仲間達を薙ぎ払おうとする刃を、斧槍で受け止めるはヴィクトリア・アイニッヒ。
「流石は首魁。その威圧感と膂力は並の雑兵とは一線を画する、と言った所でしょうか」
 自身の身長以上の刃を受けきり、逆にそこから押し返しつつヴィクトリアは言う。
「ですが、私達は負けません。美濃姫様の願いを、叶える為に!」
『それを戯言と言うのだ』
 オブリビオンの言葉は押し負けた事で焦った風でなく、冷徹さを持っていた。
 轟ッ!
 ヴィクトリアと鍔迫り合いしている右手でなく、ほぼ同時の時間差で振りかぶっていた左の一刀が、逆側から美濃姫達へと迫っていたからだ。
 その時、陣幕へと疾走する影が1つ。
「(最初は家族も国の人間も土地も奪われて、己の死さえ考えた)」
 影は、その陣幕を目指す他の仲間達から1歩先んじて走り込む。
「(仇を討ちたくても戦う術がなく、悔しくて悔しくて仕方なかったろうさ)」
 影は、敗れた幕の切れ目に跳躍し飛び込む。
「(だが、今は猟兵という術を、生きて立ち向かう意志を得た)」
 今まさに、敵大将の大刀の二振り目が姫の首へと――。
「(力に抑圧されたあの子はもう居ない)」

 ガキンッ!

「……いいねぇ、アタシはそういうの大好きだよ!」
 飛び込んで来た影――紺屋・霞ノ衣が、無骨な斧でニ刀目の刃を受けきる。
『何だと!?』
「アタシだけじゃないよ?」
 霞ノ衣に続けと次々に陣幕内へと飛び込んでくる猟兵達。
『おのれ……我が命により冥府より参じよ、我が馬廻り衆よ!』
 オブリビオンの掛け声と共に、大地から染み出すように武者鎧の亡霊たちが現れる。陣幕に現れた際に連れて来ていた数名と合わせ猟兵達と同数にはなっただろうか。
『こやつ等を雑兵どもと一緒にするでないぞ……さあ、行け者共! 我が敵の首を刎ねよ!』
 亡霊の馬廻り衆が一斉に刀を抜き、最初から引き連れていた兵達が弓を構える。
 陣幕内が一気に乱戦状態になり、猟兵達も慌てて――臨機応変に陣形を整える。
「お姫さま!」
 敵の矢をサイコキネシスで弾きつつレイチェル・ケイトリンが美濃姫へと近づき。
「ごめんなさい。こわいでしょうけど、お姫さまもたたかってください」
「う、うむ」
 言われ震える手で赤磊刀を抜こうとするも、その手を抑えレイチェルは言う。
「いいえ、これからはじまるのは藩主と首領のたたかいです。だから……」
「そう、姫様には姫様の戦い方がある……この首元の宝石に触れてくれないかな」
 レイチェルの言葉を引き継ぐようにパンデュールに搭乗したトゥール・ビヨンが膝を付き美濃姫の目の前に首元の宝石がくるよう高さを調整する。
「これに……触れれば良いのか? きゃっ!?」
 言われるままに宝石に触れた瞬間、レイチェル達の目の前で美濃姫の姿が消える。
「ここは……どこじゃ!?」
 だが、美濃姫の声だけは聞こえ――。
「≪ルーム・オブ・エクラン≫、今、姫様はパンデュールの中にいるんだ。そこならボク達と一緒に戦える。だから、そこで見届けて欲しい。藩主として、雌雄を決する……この戦いを!」
「し、しかし、妾はそれで……よいのか?」
 パンデュールの外に聞こえてくる姫の声に答えるのはレイチェルだ。
「戦いはわたしたちが……それはわたしたちがやりとげてみせます。だから、お姫さまは、お姫さまとして、見とどけて。それがきっと、上にたつ人の戦いかただから」
 その言葉に美濃姫はコクリと頷き、同時、身体の震えが止まる。
「うむ、承知した。多野藩藩主十石美濃として、此度の戦いしかと見届けようぞ」
 美濃姫のその言葉は陣幕内で戦う全ての猟兵の耳に、心に届き。
 それはもちろん、その中でも一番長く姫と共にここまで来た鬼の半面たる佐田・忌猿へも届いていた。
「(まったく姫には……まったく)」
 どこか誇らしい気持ちになりつつ忌猿は自身を持つ者の名を呼ぶ。
「コノハ! いつまで寝ている!」
「うっさいッショ……ったく、イケメンに傷が付いたらどうしてくれンのサ」
 陣幕の外から吹き飛ばされ、武器の山へと突っ込んでいたコノハ・ライゼがガラガラと武器をどかしつつ起き上がる
「頼む、我をあの敵武者に向かって投げてくれ!」
「知らねぇケド……ほらよ!」
 上半身を起こした状態のまま、懐から鬼の半面を掴むと敵のオブリビオンに向かって投げつけるコノハ。
 鬼の半面――忌猿は空中を回転しつつ自身の中に燻り続ける憎悪を燃やし。
「オブリビオン滅すべし――六妖転身!」
 掛け声と同時、自身がかつて封印した六体の妖を基に、腕を脚を胴を頭を……肉体が再構成される。それはまさに禍々しい化身忍者の姿であり、その肉体に鬼の半面が合体。瞬間、ボッと脚に炎を纏い、投げられたそのままの勢いでオブリビオンへと炎の飛び蹴りを直撃させる。
 唐突に横から来た衝撃にオブリビオンの首が90度横を向くも、グキッと自身の首を持ち正面へ戻すと肉体を得た忌猿の足を掴み、そのまま大地に叩きつけようと――するも、咄嗟に敵の腕へと投げたクナイによってオブリビオンの手が緩んだ隙をつき脱出する忌猿。
『なかなかやるようだ。ふむ、なるほど猟兵よ、さすがと言える。だが美濃姫を逃さぬのは愚策、いや愚かとしか言えぬな』
「そんな事はありません。私達がやるべき事は一つ……ただ、あなたを討ち取るのみなのですから」
 そう言って夜天に移す銀の月――愛刀・夜禱を抜き構える月舘・夜彦。
「美濃姫は私達に任せて一人で待つ事も出来たでしょう……しかし、あのお方は単身でも向かおうとしていたのです。それはつまり――」
『その話の続きはあの世でするがいい!』
 夜彦の言葉を遮って大刀を大上段より振り下ろしてくるオブリビオン。その斬撃は語っていた夜彦を真っ二つにする。『他愛もない』とニヤリと笑うも――。
「――それはつまり、立ち向かう勇気と責務を果たそうとする意志は誰よりも強いという事」
『何!?』
 真っ二つになった夜彦がじょじょに消えて行く。
「ならば、一国の主の望み、私達が応えてみせます」
 残像の夜彦が完全に消え去った後、その向こうで攻撃の準備をしていた者の姿が露わとなる。
「その通り……オレらはそれぐらいわかり易くねぇとな」
 それはコノハだった。その周囲には二十にもなる冷たき月白の炎が浮遊する。
「っつーわけで、頭使って疲れちゃったしぃ……手前ぇはさっさと退場しろや! 行くぜ月焔!!!」
 コノハの宣言と同時、二十もの炎がそれぞれランダムな軌道を描きつつオブリビオンへと命中。
 ドドドドドドドドドッ!
 着弾と同時にたくさんの爆音が響き、火柱が立つ。
 だが、オブリビオンはその火柱の中からゆっくり歩み出て。
『調子に乗るな猟兵ども。ここがどこか解ってないようだな、ここは我が城攻めの為に造った陣、すぐに他の陣幕から我が兵士達が集まって来るだろう。圧倒的な数の利、数の暴力を、すぐに貴様等へ教えてくれる!』


「よもや刀のみならず敵本陣の大将首まで狙うとは、豪儀な方でありますなぁ」
 そう苦笑するは吹鳴管・五ツ音。それは美しい華が戦場に咲いてしまったことを惜しむようにか、いや、それとも姫の覚悟を見くびっていたことを恥じ入るようにか……五ツ音は伏せた目を隠すように軍帽を目深に被り直し。
「ならば今は眼前の敵の撃滅を、各個撃破はされるよりもする方が望ましくありますから」
 そう言って自分達の元へと向かってくる数十、いやその十倍はゆうにいるであろう敵鎧武者軍団に視線を向ける。
「敵地のど真ん中だ。敵の数は言うに及ばん」
 数える事を放棄し五ツ音の横に並び立つ寺内・美月がそう呟く。
 向かってくる敵兵は今も次々に陣幕から飛び出し数を増していく。
 五ツ音と美月の目的は、仲間が主力オブリビオンと戦っている間、その戦場に他の雑兵達が増援として現れないよう足止めする事だった。ここは敵地のど真ん中なのだ、放っておけば敵オブリビオンが1つの行動を行なう度、戦場に敵の増援が逐次(もしかしたら都度その数を増やして)来てもおかしくないのだ。
「複数の陣幕が置かれたことから見ても敵方の野戦陣地構築は十分、といったところでしょう……であれば、まずは地の利を奪うことから始めましょう」
 そう言って五ツ音は口許に喇叭を当て渾身の喇叭吹鳴。戦場に鳴り響く喇叭の音。
「撃ち方始め、であります。さぁ、思う様に敵陣を耕してやりましょう」
 喇叭の音に屍の砲兵隊が目覚め五ツ音の前へと並び、それらが一斉に射撃を開始。
 一方、美月の方も――。
「全隊に命令……行動開始」
 戦闘団の霊を召喚、野戦砲大隊の各種火器を使って敵鎧武者達に向かって一斉に攻撃を開始する。
 砲撃の爆音が響き、地形が抉れ、次々に鎧武者軍団を吹き飛ばしていく。
 だが……。
「寺内殿、敵が回り込んでおります。背面を頼めるでありますか!?」
 美濃姫達がいる陣幕はけっして敵陣の端っこという訳ではない。正面からくる敵だけを防いでおけば、美濃姫達のいる陣幕へ敵が入っていかないと思ったら大間違いである。
「わかった」
 美月は即座に五ツ音の考えを理解し、自身の戦闘団を連れ陣幕の背後へと急ぎ回り込む。
 だが、美月に背後に回って貰っても五ツ音の表情は晴れない。
 それはそうだろう、陣幕へのルートは前と後ろだけではない、ある程度は2人によって妨害可能だが、それぞれ自身の眼前の敵を最優先で足止めする必要がある為、どうしても陣幕の左右から入り込もうとする輩まで100%防ぐ事はできないのだ。
 正直、敵オブリビオンとの戦闘という事態に際しても、敵陣のど真ん中での戦闘……つまり敵の増援が大量に攻めこんでくる状況を冷静に見破った2人は称賛に値する。この足止めが完璧に機能すればオブリビオンの戦術計算は完全に狂っていただろう。
 だが――。
「寺内殿! 三時の方向より敵兵……くっ!?」
 五ツ音が叫ぶも、どうやら美月の方も手一杯なのか反応が無い。五ツ音と美月だけでなくあと2人……せめてあと1人居て3面背合わせの防御陣が敷けていれば……。その時にはすでに敵鎧武者達が数体、横から陣幕へと向かって走って来ており、五ツ音にもそれを止める術は無く――。
 その時だ。
「あれは……何でありますか!?」
 突如、三時の方角に現れたのは巨大な鉄の壁。
 それがゆっくり敵兵達の上へと倒れて行き――ズズーンッ!
 十体近い鎧武者を、陣幕に走り込んでいた数体を巻き込みつつ押し潰したのだ。
 それは宇宙戦艦に使われる装甲版だった。それを作ったのは――。
「姫さんの元にすぐに向かいたいけど、この鎧武者軍団を放っておくわけにはいきませんからね」
 そう言って自身が≪レプリカクラフト≫で出現させた装甲版の上に立つは涼風・穹。
 そのまま跳躍し陣幕右側の前に立つとスチャッと刀を抜き放ち。
「ここから先は通行止めだ、どうしても通りたければ俺を倒してから進むんだな」
 鎧武者達を牽制する。
 ゴッ、バキッ、ドガッ、ズガンッ!
 穹が装甲版と共に現れた方と真逆の側でも、何か重い金属物が鎧武者達を殴り倒すような音が響く。
「お姫様の話を色々聞いた身としちゃ、避難させた人等に無事に合流して欲しいんで……とりま、加勢するぜ」
 それは鉄骨を振り回し鎧武者達をなぎ倒す身長2m半はある長身のウォーマシン、レッグ・ワートだった。
「これなら……!」
 五ツ音が再び喇叭を吹き鳴らす。
 この陣形なら、鼠一匹美濃姫達が敵大将と戦っている陣幕へ鎧武者の雑兵を通す事は無い。
 それは敵の予定していた逐次増援――つまり、数的有利が完璧に4人によって阻害されたという事だった。


 陣幕内。
 敵オブリビオンの大刀は、大振り気味だが当たれば一撃必殺の威力を備えており、振るわれる度に風を轟々と切り裂きながら猟兵達へ迫るも、それを紙一重で見切り回避する猟兵達。だが、猟兵達も戦闘開始時から美濃姫が戦場にいた為、かなりの人数が姫を守る事を優先するよう準備して来ており、オブリビオンへのダメージはそこまで大きく蓄積できる者が少なく決め手に欠けていた。
 もちろん、オブリビオンの戦術としては周囲からすぐに援軍の鎧武者達が現れるはずだったので、このまま長期戦に突入する事はやぶさかではなかったのだが……。
『(どういう事だ! なぜ来ない! どうして1人もここへ援軍にやって来ない!?)』
 大刀を振り回しつつ、顔を覆う総面の下で焦るオブリビオン。
 さらにオブリビオンを焦らせるのは――。
「戦場にて舞う蝶たちよ、敵は1人、刺せ蜂たちよ、我ら義憤の勇士たち、光が皆を照らすから、前だけ向いて剣を取れ」
 それは輝き増す仲間達への労わりと鼓舞の歌。
 事実、ジェフリエイル・ロディタの歌は聞いた仲間達を同時に癒し、オブリビオンが付けた大小さまざまな傷を少しずつ回復していく。
『ちまちまと……!』
 援軍は来ず、敵は回復し、大将たるオブリビオンが焦らない訳も無く。
『ならば……一気に勝負を決めるまで!』
 両手の二刀を左右から弧を描くように上段の構えへ、呼気を大きく吐き、腰溜めに構えを取る。
 それはオブリビオンが必殺の一撃として持っていた切り札なる技。
『まとめて逝け、猟兵共! 秘技、乱世斬ッ!!!』
 二刀を勢いよく振り抜くと共に、即座に今度は下段から中段へ、中段から上段へ、そして再び上段から振り抜き……その場で何度も刀を振るう。その間、僅かコンマ秒。
 ズババババババッ!
 瞬後、無数の衝撃波がカマイタチとなって陣幕内にいる全ての猟兵へと迫る。
「そいつは読んでいたぜ?」
 だが、オブリビオンの必殺技に対してニヤリと笑みを浮かべ皆より一歩前に出るは死絡・送。
 送のアームドフォートにはこの時を待っていたかのように光が凝縮されており――。
「これでも喰らえ!!」
 ドドドドドドドドドドドドッ!!!
 アームドフォートから無数の光子魚雷が発射され、オブリビオンの放った衝撃波をことごとく撃ち落とす。
「今だ! 行けっ!!」
 オブリビオンと送の中間地点で大爆発を起こし爆風と衝撃が押し寄せる中、送は仲間へ叫ぶ。
 今がチャンスだ、と
「廻れ、星のように!」
 逢坂・宵が右に持つ星の意匠が凝らされた魔杖――アストロ・ステッキを振るい星属性の魔法を発動、さらに左に持つアストロ・グリモワールから同じ魔法を連続発動、二重螺旋を描いて攻性魔法が爆炎を貫きオブリビオンを撃つ。
 だが、爆炎を魔法で貫いた事で一瞬だけ視界が通り、その隙をオブリビオンは逃さず躊躇せず突貫。
『なめるでないわ!』
 爆炎を越え迫ってくる武者大将、だが、それが良かった。オブリビオンは狭い視界のまま猪突猛進しており――今だ――とオブリビオンのすぐ横に異様なる忌猿が現れ、忌猿に気が付いた時にはオブリビオンは真横に吹っ飛んでいた。忌猿が側面から奇襲をかけたのだ。
『お、のれ……!』
 ぐぐぐっと大きな巨体を持ち上げ起き上がるオブリビオンだが、その時、何者かが懐へと入り込み、流れるような動きで先ほど宵に穿たれた魔法の傷へ万色なりしナイフの刃が滑り込む。
『ぐあっ!』
 そのまま抉るコノハの技に思わず苦悶の声を出すオブリビオン。
 だが――。
『ぬんっ』
「何!?」
 刀を持ったままの両腕で懐のコノハを鯖折りのように締め上げオブリビオンは反転、コノハを鎧武者達の矢面に立たせ『矢を放て!』と叫ぶ。
 間髪入れず兵士達が矢を放つ。弧を描いてコノハに迫る矢。
『まずは1人……』
 なんとか逃れようとするコノハだが、オブリビオンの膂力は凄まじく自力での脱出は不可能そうだった。
 目の前に迫る矢に覚悟を決めた、その瞬間。
 スパスパスパスパ……次々に矢が避けて大地へと刺さる。
「雨あられと降る矢すら、英雄には届かない」
 ラーラー♪ と唄声が響きジェフリエイルの念動力が歌に乗って矢をそらしたのだ。
『貴様!』
「この輝ける僕を放っておくからだよ。ま、近づかれても逃げ足には自信あるんだけどね」
 ジェフリエイルの言葉に怒りと共に意識がいき、その隙に仲間達が連続で攻撃、コノハも救出される。

 オブリビオンと猟兵達の戦いは一進一退を繰り返しながら長期戦化していた。
 すでに猟兵達はぼろぼろ、癒しの歌もあるがそれでも間に合わなくなりつつある。
 だが、それは敵オブリビオンも同じだった。鎧の各所に切り傷が付けられ、端々は斬り飛ばされていた。
 双方ともにボロボロになりつつあり……。
 その時だった、まさにベストなタイミングで陣幕内に美月が入って来たのは。
「負傷者の治療を開始する」
 傷の深い仲間から優先的に治療を開始、さらに外は3人に三角状の陣でここを守るよう戦って貰っているが、そろそろきつくなってきた旨を皆に伝える。
『足止め要員を用意していたか……』
 援軍が来ない理由がわかり、さらに怒りを増すオブリビオン
 そしてその矛先は……。
『戦は敵の大将首を取れば終わりよ……つまり』
 大地を蹴り美濃姫が乗るパンデュールへと斬りかかるオブリビオン。すでにパンデュールもボロボロになっており、エネルギーシールドも展開しようとするがエネルギー不足か光の盾は出現せず――ガッ! トゥールの判断で強引にパンデュール自身の腕で大刀を受け切る――だが、オブリビオンの方が勢いがあったか、姫が乗る宝石の寸前までその刃はパンデュールの装甲を斬り裂いていた。
「姫様っ!」
「お姫さま!」
「姫さん!」
 皆が一応に美濃姫の心配をするも、パンデュールの中から「わ、妾は、大丈夫じゃ。そ、それより皆も無理はするでない!」と姫の声が響き胸を撫で下ろす。
 とはいえ、声にかなりの焦りの色が出ていた事を皆は見逃さない。もしかしたら美濃姫は乗る宝石の中で実はピンチになっているのかもしれない……。
 そんな姫の声を聞き、夜彦はゆらりとオブリビオンへ近づいて行く。
「美濃姫様に心配をかけさせる訳にはいきません」
 歩を進めつつ愛刀夜禱を鞘に納め。
「私達は、皆で生き残る……姫様がそう望むのなら、それに応えてみせましょう」
 ピタリ、まだ敵まで距離があるというのに夜彦は歩を止め。

 一閃――。

「是は空さえも斬り裂く刃也」
 チン……鞘に刃をしまう音だけが響き、神速の抜刀術が敵オブリビオンの胴を深々と斬り裂く。
『ぐあああああああっ!』
 今までで一番大きな悲鳴を上げるオブリビオン。
『お、お、おのれ……』
 ちらり、陣幕内の戦場を確認、そして――。
『貴様だーー!』
 再び狙われたのはボロボロになっているパンデュール、突貫しそのまま二刀を振りかぶるオブリビオン。
 先ほどでギリギリだったのだ、今回も食らったら中の美濃姫は……。
 ズブッ――右手の大刀を捨て身で受け切りパンデュールを――姫様を庇ったのはコノハだった。深々と貫かれた腹からは大刀の先が貫通していた。
「やられないっつったデショ」
 コノハが血を吐きながら笑みを浮かべる。
 ガギン――さらに左手の大刀は斧槍を構えた無敵城塞モードのヴィクトリアによって阻まれて。
「私が護りは引き受けます。ご安心を」
 そうして必殺の二刀を防がれた瞬間、パンデュールの前に降り立った桐・権左衛門が宙に浮かした十数個の狐火を、指差し一つで操り――「狐火の真髄みせたるで!」
 掛け声と同時、一気に狐火達がオブリビオンに着弾、大きな炎を巻き上げる。
『まさか猟兵達がこれほどとは……』
 爆炎のたたらを踏み後退しつつオブリビオンが言う。


「敵の動きが変わった……な」
 レッグの言う通り、今まで陣幕外の鎧武者達は四方八方からオブリビオンの援軍に駆け付けるべく陣幕へと突入して来ていたのだが、ここにきて敵兵力がすべて前方側へと移動、攻撃を集中し始めたのだ。
 もちろん、それに合わせてレッグも穹も左右から五ツ音のいる前方寄りに陣を変えているのだが……。
「どうやら敵は一点集中で一気にこちらを排除するつもりのようであります」
 五ツ音の言葉にレッグと穹が2人してコクリと頷き。
「何をするでありますか!?」
 五ツ音の前に立つ2人。
「あんたはさっさと姫さんの助太刀に向かえ」
「ここは俺らがなんとかするさ」
 穹が再び宇宙船の装甲版を出現させ、レッグが無敵城塞モードに可変しつつ言う。
 五ツ音が躊躇したのは一瞬だった、どちらにせよこのままではここは破られる、ならば、少しでも早く敵首魁を倒さなければならない。
 くるりと2人に背を向け「ご武運を」と呟き五ツ音は陣幕内へと入っていくのだった。


 陣幕内に慌てて入って来た五ツ音は、すでに両者がボロボロになっている状況に思わず息を飲む。
 わずかな隙で誰が死んでもおかしくない。
 思っていたより戦況は終盤に来ていたようだ。
「お前、どうして」
 五ツ音に気が付いた美月が言うも、すぐに五ツ音がここに来たという事は……と状況を理解する。もちろん、美月以外の何人かの猟兵は同じように状況を理解し――そしてそれは、運の悪い事にオブリビオンも理解するのだった。
 ジリジリと五ツ音が入って来た方の幕へと後退していくオブリビオン。
 その狙いにいち早く気が付いたのはレイチェルだった。
 また、その上で、それを力づく止められる者がボロボロの猟兵達の中にはいない事も……。
「(だれかにお願いしたら、その人がすごいきけんになっちゃう……)」
 狙いに気づきつつ、誰にも頼れない。
 いや、その時レイチェルは気が付く。猟兵達の中にはいないが、ただ1人それができる人がいる事を。
 しかもその場合は力づくでなく……。
 リスクはある、だが――レイチェルは覚悟を決めボロボロのパンデュールに向かって走り、声をかける。
 オブリビオンは僅かに残っていた配下に猟兵を牽制させつつ、さらにジリジリと後退。
 そこでやっと他の猟兵達も敵の狙いに気が付く。
 そう、敵は、首魁たる大将のオブリビオンは、撤退……逃走する事に決めたのだ。
 だがここで足止めに向かえばオブリビオンは必死の一撃で迎え撃ってくるだろう、それはボロボロのこちらも受けた場合のリスクが大きく……しかし、幾人かはここで逃がすくらいならと、覚悟を決めて敵に飛びかかろうと――した瞬間。戦場に凛とした声が響く。
「逃げるのか! 卑怯者!!」
 皆の視線が集まる。それはレイチェルによって説得された美濃姫だった。
 姫はパンデュールを降り、自らの足で地に立ち、赤磊刀を胸にぎゅうと抱いていた。
 そんな美濃姫の側に立ったレイチェルが小声で。
「大丈夫、わたしの力は、まだ狭い範囲しかまもれない未完成のちっちゃな力だけど……首領の攻撃だろうが、銃だろうが、弓矢だろうが、ぜんぶ、ぜんぶふせぎきるから」
「レイチェル……」
「だから、示してください。お姫さまのたたかいの在り方を」
 僅かに刀を抱く力が緩み、先ほどより大きく息が吸え、驚いたように止まったままのオブリビオンに。
「妾を狙っていたのだろう。妾はここだ。手の届く所に妾がおっても手も足も出ず逃げるのか!」
『言わせておけば……ならば、父親と同じくあの世へ送ってくれるわ!!!』
 自身を守らせていた手勢を蹴散らすよう一気に美濃姫へ大ジャンプし二刀を振り下ろすオブリビオン。
 さすがに恐怖が勝ったか目を瞑り、刀を落として腕で顔を守る美濃姫。
 だが、刀が姫へと触れる寸前!
 バギッ!!!
 見えない壁が二刀を防ぐ。
「わたしはまもることしかできない。でも、それだけはやりとげるよ」
 美濃姫を守った見えない壁はレイチェルの力だった。
 だがレイチェルの力はまだ弱いのか、透明な壁をバリバリと二刀で押し砕こうと力を込め出すオブリビオン。
 敵のオブリビオンが美濃姫を殺すのを諦めて逃げようとしていると気が付いた時、この状況でそれを足止めできるのは姫様の言葉しかないとレイチェルは理解した。してしまった。
 だから、美濃姫の身が危ないと解りつつこの方法を頼んだ。
 だから、だからこそ、自分は絶対にお姫さまを守らないといけない。
「ぜったい、ぜったいまもるの!」
 バチンッ!
 レイチェルの見えない壁に押し負け、二刀が弾かれる。
『なん……だと……っ!?』
 1歩、2歩、とたたらを踏み、僅かに体勢を崩すオブリビオン。
 それを見逃さなかったのは化身忍者と化していた忌猿だ。
「(本当、感心するべ)」
 自身の内心をすぐにキッと真剣に戻し、オブリビオンの頭上から落下しつつ。
「天より下されし廣矛の御魂をここに……オブリビオン滅すべし!!」
 武者鎧の首の付け根にピンポイントで全ての衝撃を上空から叩き込む忌猿必殺のニードロップ。
 その威力はオブリビオンがそのまま大地に叩きつけられ、その大地が僅かにクレーター化した事で推して知るべし、だろう。
『お、おの、れー! やはり一人でも多く、ここで貴様等を血祭りに――』
 首を抑えつつ何とか立ち上がるオブリビオンだったが、即座にガクリと膝を付く。
『何!?』
 何事かと見れば膝の関節に手裏剣がめり込んでいるではないか!?
「血祭に上げられるのはお前だ……」
 それは送の一撃。
 諦めない事が死絡流の忍道なのだ。
 その一撃が例え小さな物でも、いつかは大きな事を為す。
「俺は、俺達は……姫様も、この国も、全て助けて見せる!」
 そして送が作った絶対的なチャンスに、タイミングを合わせるように権左衛門が大量の狐火を解き放つ。
「今までのお礼させて貰おかー!」
 全員炎に包まれ苦しみだすオブリビオン、そして権左衛門が攻撃した瞬後、呪文を唱え終わるのは宵。
「太陽は地を照らし、月は宙に輝き、星は天を廻る。そして時には、彼らは我々に牙を剥くのです。さあ、宵の口とまいりましょう――天撃アストロフィジックス」
『ぐああああああああああああああああっ!?』
 100本近くの魔法の矢が流星となってオブリイオンを滅多打ちにする。
『そ、そんな……この我が、我が……こんな所で……』
 もはや腕を持ち上げる力も無いのか、仁王立ちのまま二刀を持つ手すらだらりと下げたままのオブリビオンが絶望的に言う。
 そんなオブリビオンの前に斧をぶんぶん回しつつ近づくは霞ノ衣。
 オブリビオンは僅かに目を開き、霞ノ衣に聞く。
『なぜだ……なぜお前達は我を倒す。オブリビオンの天敵たる……猟兵ゆえの、本能か……? 我はどうして……滅ぼされる……』
「さぁな、もしかしたらそういう理由で戦った奴もいたのかもしれねーが……」
 霞ノ衣はこちらを見守る美濃姫をチラリと見て。
「大概の奴はアタシと同じだろうさ」
『そ、それは……いったい……?』
 霞ノ衣は最後の一回しをしつつ斧を振りかぶる。
 最大値まで高まった羅刹旋風、この一撃でトドメは刺せるだろう。
「うちの姫さんがね、仇を討ってくれって言ったんだ」
『何……――』
 ズドンッ!
 霞ノ衣の斧が袈裟切りにオブリビオンを両断すると、振り抜いた斧を再び担ぎ直し。
「アタシ達が戦う理由はそれで十分、それで大満足なのさ」
 そうして美濃姫の、多野藩元藩主の仇は塵となって消滅していったのだった……。


 鎧武者軍団の首魁たる大将オブリビオンを倒した事で、敵陣内にいた鎧武者達は全員消滅していった。残ったのは1割にも満たない力で従わされていた盗賊や野党たちだったが、彼らも自分達の主がいなくなったと悟るといつの間にかその姿を消していた。猟兵達も皆ボロボロであり、その場で座り込んだり倒れたり、思い思いに休息を取り……いつしか空の雲は去り、漆黒の夜は薄紫色へと変わってきていた。
 長い夜が明けようとしているのだ。
 喇叭叭叭―! 喇ッ叭叭叭叭―!
 五ツ音が喇叭を吹き、皆に旅立ちの合図を送る。
 自然、美濃姫の周りに集まって来る猟兵達。
 最初に別れを告げるのは五ツ音だ。喇叭を口から離し。
「美濃姫殿の覚悟、正直見くびっていたであります。今は自分の人を見る目の無さに恥じるばかり」
 敬礼する五ツ音に、美濃姫は「そんな事は無いのじゃ! 妾はずっと怖くて……」と皆がいなくなる事をなんとなく察してか、五ツ音の手を握り必死に……。そんな姫に問いかけるのは霞ノ衣だ。
「なぁ姫さん、戦いが終わっても、生きていれば人生は続く。あんた、次はどうしたいんだい?」
「妾は……」
 なぜか言いよどむ姫。そんな姫の肩をポンとコノハが叩き。
「イイ? アンタの役目はその身その覚悟を民の元へ必ず持ち帰るコト。想像してみ? アンタが逃がした民や家臣達の顔を……。で、その上で今一度聞く、アンタはどうしたい?」
 再び同じ質問をされ、しかし言われた通り民や家臣の事を思い出し、スッと目を開けた美濃姫は、迷いなくその言葉を継げる。
「妾は……家を、妾達の家を再興したい。いつの日になるか……わからぬけど……」
 その答えに霞ノ衣とコノハは満足げに笑みを浮かべ。
「姫はやっぱ立派だべなぁ。安心したべ!」
「大丈夫、きっと美濃姫様なら出来るよ」
 鬼の半面たる忌猿と、パンデュールを降りているトゥールがそう言うと、レッグが茶化すように。
「逃げたくなったらいつでも言いな、どんな所からでも逃がしてやるぜ?」
 冗談口調で言うと、美濃姫も「その時はお願いするのじゃ」と笑みを浮かべ、釣られるように美月や穹も笑う。
 スッと前に出て来て握手をするはレイチェル、サムライエンパイアに握手の風習は無いのか微妙にぎこちない美濃姫だが、レイチェルの手をしっかり握ってくれ、レイチェルも握り返し。
「家のさいこう、きっとできるよ。お姫さまはつよいから」
 レイチェルに言われれば「レイチェルの方が強いじゃろう……ありがとう」と微笑み合う。
 と、いつの間にかジェフリエイルが歌を歌っていた。その歌は仇討の歌ではなく、これから試練の道を進む事になる美濃姫への、試練の先を行くための歌だった。
 ジェフリエイルが歌を歌う中、宵が姫の前へ出て言う。
「美濃姫様、心のお備えは……できているようですね」
「うむ」
「人の上に立つものたるもの、常に臣下を安心させ、鼓舞し、そして慕われる存在でなければならないと書は説いています。貴方がそうである必要はありませんが、主とはそうあるものでございます」
 宵の言葉に少し不安そうな顔をする姫だったが、宵はフッと微笑み。
「大丈夫、今の貴方はもう強い。さあ、武器を手に取りなされませ」
 戦いの中取り落していた赤磊刀を美濃姫へ差し出し、それを受け取る姫。
 宵はそのまま敬服するように膝を付き。
「我らが猟兵、また困った時はいつでも呼んで下さい。その時は、再び貴方のために力を振るいましょう」
「うむ、その時はまた、力を貸してくれ」
 コクリと頷く宵。
「今度は、素直に頼ってくれそうですね」
「ヴィクトリア……そう意地悪を言わんで欲しいのじゃ」
 少し拗ねたように美濃姫が言い、ヴィクトリアが微笑めば、その相棒たる権左衛門が。
「ま、今回の事は貸し一つやね! 乳揉ませて……やなくて、ツケさせて貰うで?」
「ツケ……かぇ?」
 小首をかしげる姫にビシッと指を突きつけ。
「先ずは民とか藩とかでやる事山積みやろう?」
 権左衛門にウィンクされ、その通りだと美濃姫も頷く。
 多野藩を突如襲った鎧武者の軍団は倒す事に成功した。だが、何人かが見た通り、多野藩の領地は別のオブリビオンが軍勢を連れて闊歩している。すぐに民と共に戻りお家再興という訳にはいかないだろう。
 避難した民に追いつくため、美濃姫を犬神藩まで送るのは宇宙バイクを駆るレッグが行なう事となり……。
「再興頑張ってな、何かあったら駆けつけるぜ」
 送がバイクに乗った姫に言い、そして夜彦が最後に。
「再会の約束は必ず果たせます……繋いだ縁は我等と共にある、この先も……きっと」
 いつの間にか完全に朝日が顔を出し、朝焼けの中、多くの猟兵達に見送られ美濃姫は旅立って行った。

 美濃姫の夢――家の再興までの苦難の旅路は、これから始まるのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月05日


挿絵イラスト